• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1334201
審判番号 不服2016-15708  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-20 
確定日 2017-11-08 
事件の表示 特願2015- 23233「電池を充電するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開,特開2015-133904〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2008年(平成20年) 5月 9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年 5月10日,ニュージーランド,2007年 7月20日,ニュージーランド)を国際出願日とする特願2010-507347号の一部を平成27年 2月 9日に新たな特許出願(外国語書面出願)としたものであって,平成27年 3月 9日に翻訳文が提出されるとともに手続補正がなされ,同年11月27日付けで拒絶理由を通知し(発送日:同年12月 1日),平成28年 5月26日に意見書,手続補正書が提出されたが,同年 6月17日付けで拒絶査定(送達日:同年 6月21日)がなされ,これに対して,同年10月20日に本件拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされた。そして,平成29年 2月23日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年10月20日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年10月20日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正前の平成28年 5月26日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲は,以下のとおりである。
「【請求項1】
電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置であって,
前記電池を10kW?500kWの間の充電レートを有している高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段と,
前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段と
を備えており,
接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えており,
電力が,共振誘導による電力伝達によって前記ピックアップパッドと充電パッドの間で伝達される,装置。
【請求項2】
前記ピックアップパッドと前記充電パッドが非接触により電力を伝送する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の手段が,前記電池へと電気的に接続されたソケットを備えている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の手段が,いつプラグが前記ソケットに組み合わされたかを決定するための手段を備えている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の手段が,いつ前記車両が,前記ピックアップパッドが前記充電パッドの上方に位置し,あるいは前記充電パッドに作動可能に隣接するような位置に位置したかを決定するための手段を備えている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電池が充電中である旨を知らせる通知手段を備えている請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ピックアップパッドが,
第1の層に配置されている2枚以上の透過性磁気素材の厚板と,
導体の少なくとも一巻きを有しており,前記厚板の前記第1の層に平行な第2の層に配置されているコイルと,
前記厚板と平行な第3の層を画定する背板を備え,前記背板が前記コイルにより生じた磁束を該背板に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材とを含む,請求項1に記載の装置。
【請求項8】
分離可能な無線電力受信機に対して無線で電力を伝達する誘導電力伝達パッドであって,
導体の少なくとも一巻を有して第1層にあるコイルと,
前記コイルと実質的に平行な第2の層に配置され,前記コイルの径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔を空けて前記コイルの周りに配置された複数の透過性磁気素材の厚板とを含む,誘導電力伝達パッド。
【請求項9】
少なくとも幾つかの前記透過性磁気素材の厚板が,その長さが共通の点から放射状に延び,しかしながら該点から離れて配置されている請求項8に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項10】
前記コイルは円形であり,全ての前記透過性磁気素材の厚板が,その長さが円形の前記コイルの中心から放射状に延び,しかしながら該中心から離れて配置されている請求項8または9に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項11】
前記少なくとも幾つかの透過性磁気素材の厚板が,前記透過性磁気素材の厚板の第1の部分集合であり,
前記透過性磁気素材の厚板の第2の部分集合が,その長さが別の共通の点から放射状に延び,しかしながら該点から離れて配置され,
前記透過性磁気素材の厚板の第3の部分集合が,前記共通の点をつなぐ仮想の直線の方向に対して垂直に整列するとともに該仮想の直線から離れて配置されている請求項9または10に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項12】
前記透過性磁気素材の厚板の第3の部分集合が,前記仮想の直線の各側において同じように,該仮想の直線から同じ距離だけ離れて,該仮想の直線の長さ方向において等間隔に位置している請求項11に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項13】
前記コイルが,各厚板を各厚板の全長のほぼ中央において通過するように,前記共通の点の周囲を巡るように配置されている請求項8に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項14】
前記透過性磁気素材の厚板が,フェライトである請求項8?13の何れか1項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項15】
請求項8に記載の誘導電力伝達パッドを2つ備えており,該2つの誘導電力伝達パッドが組み合わせて使用され,一方のパッドがピックアップパッドとして使用され,他方のパッドが充電パッドとして使用される誘導電力伝達システム。」
これに対し,本件補正により,特許請求の範囲は,以下のように補正された。
「【請求項1】
電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置であって,
前記電池を10kW?500kWの間の充電レートを有している高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段と,
前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段と
を備えており,
接続するための前記第2の手段が,前記電池へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えており,
電力が,誘導による電力伝達によって前記ピックアップパッドへ充電パッドから伝達されるとともに,
前記ピックアップパッドが背板を備えたシールド部材を含み,前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている,装置。
【請求項2】
前記ピックアップパッドと前記充電パッドが非接触により電力を伝送する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の手段が,前記電池へと電気的に接続されたソケットを備えている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の手段が,いつプラグが前記ソケットに組み合わされたかを決定するための手段を備えている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の手段が,いつ前記車両が,前記ピックアップパッドが前記充電パッドの上方に位置し,あるいは前記充電パッドに作動可能に隣接するような位置に位置したかを決定するための手段を備えている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記電池が充電中である旨を知らせる通知手段を備えている請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ピックアップパッドが,
第1の層に配置されている2枚以上の透過性磁気素材の厚板と,
導体の少なくとも一巻きを有しており,前記厚板の前記第1の層に平行な第2の層に配置されているコイルと,
前記厚板と平行な第3の層を画定する背板を備え,前記背板が前記コイルにより生じた磁束を該背板に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材とを含む,請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記より低出力の電源が,0.5kW?2.5kWの間の充電レートを有している請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記より低出力の電源が,1.0kW?2.2kWの間の充電レートを有している請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記充電パッドを地面から昇降させ,または前記ピックアップパッドを前記車両の下面から昇降させる昇降手段を有する請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記充電パッドと前記ピックアップパッドとの間の整列を知らせる通知手段を備えている請求項1に記載の装置。」(当審にて,補正された箇所に下線を付した。)。

2.新規事項
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項に,「前記ピックアップパッドが背板を備えたシールド部材を含み,前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」ことを付加する補正(以下,「補正事項」という。)を含むものである。
上記補正事項が,特許法第36条の2第8項の規定により明細書,特許請求の範囲,又は図面とみなされた同条の2第2項に規定された外国語書面の翻訳文(以下,「翻訳文等」という。)に記載した事項の範囲内のものか否かを検討する。
(1)翻訳文等の上記補正事項に関連する記載事項は,以下のとおりである(当審にて,特に注目すべき記載に下線を付した。)。
・「【請求項1】
導体の少なくとも一巻きを有しているコイルと,
1枚以上の強磁性体厚板と,
前記コイルおよび前記強磁性体厚板の両方の周囲に配置され,使用時に電磁束を導くシールド部材と,
を備えている,誘導電力伝達パッド。」
・「【請求項9】
前記強磁性体厚板の部分集合が,共通の点から放射状に,しかしながら該点から離れて延びており,
前記強磁性体厚板のさらなる部分集合が,別の共通の点から放射状に,しかしながら該点から離れて延びており,
前記強磁性体厚板のまたさらなる部分集合が,前記共通の点をつなぐ仮想の直線の方向に対して垂直に整列し,該仮想の線の各側において同じように,該仮想の線から同じ距離だけ離れて,該仮想の線の長さ方向において等間隔に位置している請求項6に記載の誘導電力伝達パッド。」
・「【請求項17】
前記背板が,磁束の通過を実質的に妨げる材料から形成されている請求項12に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項18】
前記背板が,アルミニウムから形成されている請求項17に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項19】
前記シールド部材が,端部がリングを形成すべく接合された材料の小片から形成されている請求項1に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項20】
前記シールド部材が,アルミニウムから形成されている請求項1?19のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項21】
前記シールド部材が,前記背板へと接続されている請求項1?20のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。」
・「【請求項28】
前記カバー板および前記背板が,それぞれ当該パッドのハウジングの前壁および後ろ壁をもたらし,横壁が,前記シールド部材によってもたらされ,該シールド部材が,好ましくは前記背板から前記カバー板へと延びるように構成されている請求項12および26に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項29】
請求項1?28のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッドを2つ備えており,該2つの誘導電力伝達パッドが組み合わせて使用され,一方のパッドがピックアップパッドとして使用され,他方のパッドが充電パッドとして使用される誘導電力伝達システム。
【請求項30】
前記充電パッドが,電源へと接続可能であり,負荷へと接続することができる前記ピックアップパッドへと誘導によって電力を伝達する請求項29に記載の誘導電力伝達システム。
【請求項31】
前記充電パッドと前記ピックアップパッドとの間の結合が,当該システムからの磁束の漏れが少ないような結合である請求項30に記載の誘導電力伝達システム。
【請求項32】
電動またはハイブリッド電動車両の電池を充電するための装置であって,
前記電池を高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段と,
前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段と,
を備えており,
前記第2の接続手段が,前記電池へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えており,電力が,誘導による電力伝達によって充電パッドから前記ピックアップパッドへと伝達される,装置。」
・「【請求項45】
電動またはハイブリッド電動車両の電池を充電するための方法であって,
前記電池を高出力の電源またはより低出力の電源へと選択的に接続するステップを含んでおり,
前記より低出力の電源へと前記電池を接続するステップが,前記電池に電気的に接続された誘導電力伝達ピックアップパッドを,誘導電力伝達充電パッドに近接して位置させるステップを含んでいる,方法。」
・「【請求項47】
前記誘導電力伝達ピックアップパッドが,車両の下面へと接続され,前記誘導電力伝達充電パッドが,地面に設けられ,前記電池を前記より低出力の電源へと選択的に接続するステップが,前記車両を前記ピックアップパッドが前記充電パッドの上方に位置し,あるいは前記充電パッドに作動可能に隣接して位置するような位置へと走行させるステップを含んでいる請求項45に記載の方法。」
・「【0013】
本発明の第1の態様によれば,導体の少なくとも一巻きを有しているコイルと,1枚以上の強磁性体厚板と,前記コイルおよび前記強磁性体厚板の両方の周囲に配置され,使用時に電磁束を導くシールド部材と,を備えている誘導電力伝達パッドが提供される。」
・「【0022】
あるいは,別の実施形態においては,IPTパッドが複数の強磁性体厚板を備えており,それら強磁性体厚板の部分集合が,共通の点から放射状に,しかしながらこの点から離れて延びており,強磁性体厚板のさらなる部分集合が,別の共通の点から放射状に,しかしながらこの点から離れて延びており,強磁性体厚板のまたさらなる部分集合が,前記共通の点をつなぐ仮想の直線の方向に対して垂直に整列し,該仮想の線の各側において同じように,該仮想の線から同じ距離だけ離れて,該仮想の線の長さ方向において等間隔に位置している。」
・「【0029】
好ましい実施形態によれば,前記背板が,磁束の通過を実質的に妨げる材料から形成される。一実施形態においては,この材料が,アルミニウムである。
【0030】
好ましくは,前記シールド部材が,リングを形成するように端部が接合された材料の小片から形成されている。
【0031】
好ましくは,前記シールド部材が,アルミニウムから形成されている。
【0032】
好ましくは,前記シールド部材が,前記背板へと接続されている。」
・「【0037】
好ましい実施形態によれば,前記カバー板および前記背板が,当該IPTパッドのハウジングの前壁および後壁をもたらし,横壁が,前記シールド部材によってもたらされ,該シールド部材が,好ましくは前記背板から前記カバー板へと延びるように構成されている。
【0038】
この第1の態様によるIPTパッドは,充電パッドからの磁束の流れを導くことによって,使用時に優れた性能を提供する。さらに詳しくは,前記背板および前記シールド部材が,磁束を前記背板の平面から上向きに案内し,前記背板の平面における磁束の広がりおよび前記背板の平面に平行な磁束の広がりを少なくするように機能する。これが,誘導結合を改善するだけでなく,使用時に望ましくない物体が誘導磁界にさらされる機会も少なくする。漏れが抑制されない場合,そのような物体の損傷につながりかねない点に,注意することが重要である。例えば,電動車両の場合には,そのような漏れが,車輪の軸受の腐食につながる可能性がある。
【0039】
本発明のIPTパッドは,より伝統的なIPTピックアップと比べて比較的薄型である点でも,有益である。これは,ピックアップパッドが電動車両の下面へと接続される場合にとくに重要である。なぜならば,地面とのすき間を保つことが重要だからである。
【0040】
第2の態様によれば,2つの誘導電力伝達パッドを備える誘導電力伝達システムが提供され,2つの誘導電力伝達パッドが組み合わせて使用され,一方のパッドがピックアップパッドとして使用され,他方のパッドが充電パッドとして使用される。
【0041】
好ましくは,前記充電パッドが,電源へと接続可能であり,電池などの負荷へと接続することができる前記ピックアップパッドへと誘導によって電力を伝達する。
【0042】
第3の態様によれば,電動またはハイブリッド電動車両の電池を充電するための装置であって,前記電池を高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段と,前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段と,を備えており,前記第2の接続手段が,前記電池へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えており,電力が,誘導による電力伝達によって充電パッドから前記ピックアップパッドへと伝達される装置が提供される。」
・「【0084】
図1が,充電時の充電パッド20および車両10の好ましい相対位置を示している。ピックアップパッド(図示されていない)は,好ましくは充電パッド20と同じ形状および構成であり,車両10が駐車されたときに充電パッド20の実質的に直上に位置するように,車両10の下面に配置されている。充電パッド20によって生成される磁束が,2つのパッドを結び付ける。機能的には,ピックアップパッドが車両の下部に位置する必要はないが,審美的な理由および車両への後付け設置の容易さゆえ,これが好ましい。
【0085】
図2?5が,本発明の好ましい実施形態による充電パッド20の別の斜視図を示している。さらに詳しくは,図2が,パッドの外側ハウジングを示しており,図3が,パッドを内部の詳細を見せるために外側ハウジングの一部を切除して示しており,図4が,図3に対応する図であって,構成要素の内部配置のさらなる詳細を提示するために外側の造作が透視として示されており,図5は,上部カバーを取り除いた状態のパッドを示している。ピックアップパッドが充電パッド20と同じ構成であり,充電パッド20の説明が,充電パッド20が電気の供給(例えば,送配電線からの電気の供給)へと接続され,ピックアップパッドが負荷(すなわち,充電対象である車両の電池)へと取り付けられる点を除き,ピックアップパッドにも当てはまることに,注意すべきである。
【0086】
パッド20は,好ましくは,8本のフェライトバー22をお互いに対して45°ずつずらして有している金属製の背板21(好ましい実施形態においては,アルミニウムから形成される)など,磁束の通過を実質的に制限する材料から形成される物体に配置される。
バー22は,ゴム状の成形品23によって所定の位置に保持される。リッツ線からなるコイル27(図5を参照)が,フェライトバー22を通過する磁束によって結び付けられる。好ましくは,リッツ線からなるコイル27が,コイルがバー22の長さのほぼ中間までパッドのおおむね円形の本体を巡って巻かれるように,パッド20の領域24においてフェライトバー22上に位置している。アルミニウム小片25が,生成される磁束のパターンの制御を助けるために,背板21へと接続され,あるいは背板21に一体に形成される。カバー28が,パッドの主たる円形の本体の上部へと接続される。カバー28は,PVCまたは好ましくは毒性のないプラスチックなど,磁束の通過を妨げることのない材料から形成される。ここに示した特定の構成によれば,パッドを比較的薄型にすることができ,このことは,既存の車両へと後付けされる場合のピックアップパッドにとって,地面とのすき間を保つためにとくに重要である。
【0087】
さらに詳しくは,背板21および小片25が,充電パッドによって生成される磁束を背板21に実質的に垂直な方向にカバー28を通って案内すべく協働し,磁束が背板21におおむね平行な方向に広がることによって生じる漏れを少なくして,充電パッドとピックアップパッドとの間の優れた結合をもたらすように,適切に組み合わせられる。背板21および小片25は,本発明の一実施形態においては,電気的に接続される。」
・「【0089】
これらの図に示されているように構成され,400mmの直径および22mmの厚さを有しているパッドを使用し,最大2kWの速度での電力の伝達が,最大で+/-50mmの横方向の整列ずれ,および25mm?75mmの垂直方向の隔たりにおいて,容易に達成可能である。さらに大きな許容範囲での電力の伝達も可能であるが,それには,より大きなパッドが必要であり,コストが高くなる。充電パッドが,車両の下面のピックアップパッドと結合するように床に設けられる場合,これらの許容範囲は,車両の駐車位置の許容範囲と言い換えられる。運転者を補助して正しい位置に駐車させるために,比較的簡単な方法を使用することができる。例えば,ひもに取り付けたボールを天井からぶら下げ,車両が正しい位置にあるときのフロントガラス上の点に整列させることができる。」

(2)これらの摘記した事項及び図6の記載からすると,翻訳文等には,「ピックアップパッドが充電パッド20と同じ構成であり,充電パッド20の説明が,充電パッド20が電気の供給(例えば,送配電線からの電気の供給)へと接続され,ピックアップパッドが負荷(すなわち,充電対象である車両の電池)へと取り付けられる点を除き,ピックアップパッドにも当てはまること」「背板21および小片25が,充電パッドによって生成される磁束を背板21に実質的に垂直な方向にカバー28を通って案内すべく協働し,磁束が背板21におおむね平行な方向に広がることによって生じる漏れを少なくして,充電パッドとピックアップパッドとの間の優れた結合をもたらすように,適切に組み合わせられる」ことの記載は認められるものの,この補正事項のピックアップパッドの「前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を」「前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」ことについて明示的に開示するものではなく,また,この補正事項について示唆するところもない。
したがって,かかる補正事項を含む本件補正は,翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものと認めることができない。
よって,本件補正は,翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(3)小括
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.目的要件について
本件補正が,特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」は,特許法第36条第6項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られる。
そして,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
(1)本件補正前の請求項1?7に記載された発明は「装置」に係るものであり,本件補正前の請求項8?14に記載された発明は「誘導電力伝達パッド」に係るものであり,本件補正前の請求項15に記載された発明は,「誘導電力伝達システム」に係るものである。
そして,本件補正前の請求項1?7に記載された発明も,本件補正後の請求項1?7に記載された発明も,「装置」に係るものであり,本件補正前の請求項2?7において本件補正前の請求項1を直接的あるいは間接的に限定する発明も,本件補正後の請求項2?7において本件補正後の請求項1を直接的あるいは間接的に限定する発明も,補正された請求項1の部分を除いて何ら補正されておらず,引用関係を含めた記載も全く同じであるから,本件補正前の請求項1?7が本件補正後の請求項1?7にそれぞれ対応するものとして検討する。
(1-1)本件補正前の請求項1に記載された発明の「共振誘導」という発明特定事項を本件補正後の請求項1に記載された発明では,「誘導」という発明特定事項に補正した。
そして,「共振誘導」とは「誘導」するものの内で「共振」を用いるものであって,本件補正後の請求項1の記載全体を参照しても「誘導」が「共振誘導」に限られると解することはできない。
そうすると,この補正は,「共振誘導」における「共振」という限定を削除するものであるから,「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正には該当しない。
また,この補正は,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないことも明らかである。
(1-2)本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するための必要な事項に,「前記ピックアップパッドが背板を備えたシールド部材を含み,前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」ことを付加する補正をした。
この補正は,ピックアップパッドが「背板を備えたシールド部材を含」むだけでなく,「前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」とまで限定された構成とするものであって,背板の配置については本件補正前の請求項1には何ら記載されていない上に,この補正により「第1の手段に危険な電流を生じさせることなく,第2の手段を作動させることができる」(審判請求書第5ページ下から8行?下から5行)という発明が解決しようとする新たな課題が生じるものである。
そうであれば,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一である「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。
また,この補正は,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないことも明らかである。
(2)先に述べたように本件補正前の請求項8?14に係る発明は,「誘導電力伝達パッド」に係るものであり,本件補正前の請求項15に係る発明は,「誘導電力伝達システム」に係るものである。
本件補正後の請求項8?11に係る発明は,補正後の請求項1を引用する「装置」に係るものである。先に述べたように,本件補正前の請求項1?7の「装置」の発明が本件補正後の請求項1?7の「装置」の発明にそれぞれ対応するものであり,本件補正後の請求項8?11に係る発明は,本件補正前の請求項1?7の発明に対して,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものではないから,本件補正前の「装置」の発明に対して,いわゆる増項補正にあたる。
そうすると,この補正は,「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。
また,この補正は,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものではないことも明らかである。
(3)したがって,上記(1-1),(1-2),(2)の補正を含む本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

4.小括
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定,及び,同法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

5.独立特許要件について
本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると仮定して,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本願補正発明の「前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」という構成について
ア.まず,本願明細書【0085】に「ピックアップパッドが充電パッド20と同じ構成であり,充電パッド20の説明が,充電パッド20が電気の供給(例えば,送配電線からの電気の供給)へと接続され,ピックアップパッドが負荷(すなわち,充電対象である車両の電池)へと取り付けられる点を除き,ピックアップパッドにも当てはまることに,注意すべきである。」と記載されている様に,「充電パッド20の説明が・・ピックアップパッドにも当てはまる」のは,「充電パッド20が電気の供給(例えば,送配電線からの電気の供給)へと接続され,ピックアップパッドが負荷(すなわち,充電対象である車両の電池)へと取り付けられる点を除」いてのことである。
そうすると,本願明細書【0087】の「背板21および小片25が,充電パッドによって生成される磁束を背板21に実質的に垂直な方向にカバー28を通って案内すべく協働し,磁束が背板21におおむね平行な方向に広がることによって生じる漏れを少なくして,充電パッドとピックアップパッドとの間の優れた結合をもたらすように,適切に組み合わせられる。」は,電力伝達する側である充電パッドについて「充電パッドによって生成される磁束を・・・案内」とされるものであって,電力伝達される側のピックアップパッドにおいて「・・パッドによって生成される磁束を・・・案内」なる概念は存在しない。
してみれば,電力伝達するための磁束を生成する概念のない,電力伝達される側のピックアップパッド(すなわち,本願補正発明の「第2の手段が,前記電池へと電気的に接続されたピックアップパッドを備え」とされたピックアップパッド)において,「第2の手段により生じた電磁束を・・案内する」とした,本願補正発明の構成は,発明の実施例を参照しても,その技術的な内容が明確でないとともに,明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても,当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていない。
イ.さらに,「第2の手段により生じた電磁束」が,本願補正発明の「電力が,誘導による電力伝達によって前記ピックアップパッドへ充電パッドから伝達される」ための電磁束を意味すると解しても,電磁束は,車のピックアップパッドと床の充電パッドとの間で上下方向に生じるものと解されるから,図6における第1の手段が電池51と電源52を接続するための電池51へと電気的に接続されたソケット又はケーブル53であるとして,電磁束は第1の手段に対して,近づく方向にも発生しているから,背板が第2の手段により生じた電磁束を第1の手段から離れる方向に案内するように配置されているものとは認められない。
そうすると,本願補正発明の「前記背板が前記第2の手段により生じた電磁束を該背板に実質的に垂直であるとともに前記第1の手段から離れる方向に案内するように配置されている」という構成は,明細書の発明の詳細な説明の実施例を参照しても,その技術的な内容が明確でないとともに,明細書の発明の詳細な説明の記載を参照しても,当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されていないと言わざるを得ない。
(2)よって,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしておらず,発明の詳細な説明の記載は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから,この出願は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(3)小括
以上のとおり,本件補正は,仮に特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年10月20日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?15に係る発明は,平成28年 5月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される,「第2 1.」の本件補正前の請求項1?15に記載されたとおりのものと認められる(以下,本件補正前の請求項1に係る発明を「本願発明1」,本件補正前の請求項8に係る発明を「本願発明8」という。)。

2.引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-252810号公報(以下「刊行物1」という。)には,「バッテリ車の車載側充電装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている(下線は,当審により付与した。)。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電気自動車等,バッテリの電源を駆動源するとバッテリ車において,そのバッテリを充電する充電装置のうち,車両に搭載される車載側充電装置に関するものである。」
・「【0003】このような充電装置は,地上等に設置される据置側充電装置と自動車側に設けられる車載側充電装置とに分離され,充電作業を行う際には据置側充電装置に設けた送電カプラと車載側充電装置に設けた受電カプラとを結合させて行うようになっている。
【0004】その際,送電カプラと受電カプラとの分離,結合は,充電作業を行う作業者が人為的に行っていた。(以下,この充電作業の作業方式をマニュアル方式という。)このようなマニュアル方式で充電作業を行う充電装置の場合,据置側充電装置を安価に製造することができるとともに,該据置側充電装置を広く普及させることができるという特徴を備えていた。
【0005】これに対し,近年,据置側充電装置から延びるアームの先に送電カプラを設け,自動車を駐車した後,そのアームを自動的に自動車側の受電カプラに結合させるようにした全自動充電システムが開発されている。このような充電システムによれば,作業者による送電カプラと受電カプラとの分離,結合が不要となり,充電作業の利便性が高くなるという特徴を備えている。(以下,自動的にカプラ同士を結合させる充電作業の作業方式をオート方式という。)」
・「【0008】本発明は上記の問題を解決するためになされたものであって,その第1の目的は,安価に製造することができるとともに,広く普及させることができる据置側充電装置と,充電作業の利便性を高くすることができる据置側充電装置との両装置に対応し,どちらの装置からでも充電作業を行うことのできるバッテリ車の車載側充電装置を提供することにある。」
・「【0023】図1は,地上等に設置される第1の据置側充電装置1及び第2の据置側充電装置2と,電気自動車に搭載される車載側充電装置3とからなる充電システム4の電気的構成を示している。
【0024】前記第1の据置側充電装置1において,充電用電源としての商用交流電源Eは,整流回路5に接続されている。このため,前記商用交流電源Eはこの整流回路5によって直流電源に整流される。整流回路5は力率改善回路6に接続されており,前記直流電源は力率改善回路6に供給される。この力率改善回路6は第1のコントローラ7からの駆動信号S1に基づいて駆動され,その駆動によって前記直流電源はその力率が調整されるとともに,昇圧される。力率改善回路6には共振型インバータ回路8が接続されており,力率の調整及び昇圧された直流電源は,その共振型インバータ回路8に供給される。この共振型インバータ回路8も前記第1のコントローラ7からの駆動信号S2に基づいて駆動され,その駆動によって高周波の交流電源が生成される。共振型インバータ回路8はトランス9の一次コイル9aに接続されており,この交流電源はトランス9の一次コイル9aに供給される。
【0025】このトランス9は,一次コイル9a及び二次コイル9bを備えている。一次コイル9aと二次コイル9bとの巻比は,本実施形態では1対1となっている。そして,一次コイル9aに供給される交流電源は,トランス9にて電力変換されて二次コイル9bから誘導電圧として出力される。二次コイル9bは整流回路10に接続されており,この整流回路10によって前記誘導電圧は直流電圧に整流される。
【0026】前記車載側充電装置3にはバッテリBが設けられており,この直流電源がこのバッテリBに印加され,それにより,バッテリBは充電される。トランス9に接続された前記整流回路10と前記バッテリBとの間には,互いに分離,結合可能な第1の送電側結合部としての第1の送電カプラ11と第1の受電側結合部としての第1の受電カプラ12とが設けられている。第1の送電カプラ11は整流回路10に接続され,第1の受電カプラ12はバッテリBに接続されている。両カプラ11,12を分離させた状態では,第1の送電カプラ11は第1の据置側充電装置1に設けられ,第1の受電カプラ12は車載側充電装置3に設けられている。そして,両カプラ11,12を結合させると,両カプラ11,12にそれぞれ設けられている接点を介して整流回路10とバッテリBとが電気的に接続される。この結合状態で,前記力率改善回路6及び共振型インバータ回路8を駆動させれば,バッテリBは充電されるようになっている。従って,第1の受電カプラ12が第1の送電カプラ11と結合した際の充電回路は,第1の受電カプラ12とバッテリBとを接続する接続線から構成されている。
【0027】このようなカプラの結合方式は,コンダクティブ方式と呼ばれている。そして,前記両カプラ11,12の分離,結合は作業者によって行われるように構成されており,車載側充電装置3のバッテリBに対し,第1の据置側充電装置1を用いて行う充電作業はマニュアル方式となっている。
【0028】一方,前記第2の据置側充電装置2には,前記第1の据置側充電装置1と同様,商用交流電源Eに整流回路13が接続され,その整流回路13には力率改善回路14が接続されている。この力率改善回路14は第2のコントローラ15からの駆動信号S3に基づいて駆動される。力率改善回路14にはインバータ回路16が接続されており,力率の調整及び昇圧された充電用直流電源は,インバーター回路16に供給される。このインバータ回路16は前記第2のコントローラ15からの駆動信号S4に基づいて駆動され,その駆動によって高周波の交流電源が生成される。インバータ回路16はトランス17の一次コイル17aに接続されており,この高周波交流電源はトランス17の一次コイル17aに供給される。
【0029】このトランス17は,前記第1の据置側充電装置1のトランス9と同様,巻比が1対1となっている一次コイル17a及び二次コイル17bを備えている。そして,一次コイル17aに供給される交流電源は,トランス17にて電力変換されて二次コイル17bから誘導電圧として出力される。
【0030】前記車載側充電装置3には整流回路18が設けられており,前記二次コイル17bに接続されている。このため,二次コイル17bに発生した誘導電圧はこの整流回路18に供給され,直流電圧に整流される。この整流回路18は前記バッテリBに接続されており,前記直流電源が前記バッテリBに印加されて同バッテリBは充電される。
【0031】前記トランス17は,その一次コイル17aと二次コイル17bとが互いに分離,結合可能な構造となっている。即ち,トランス17の一次コイル17aが第2の送電側結合部としての第2の送電カプラ19に設けられ,二次コイル17bが第2の受電側結合部としての第2の受電カプラ20に設けられている。両カプラ19,20が分離した状態では,第2の送電カプラ19は第2の据置側充電装置2に設けられており,第2の受電カプラ20は車載側充電装置3に設けられている。そして,両カプラ19,20を非接触の状態で結合させると,カプラ19,20に設けられた一次コイル17aと二次コイル17bとによってトランス17が形成される。この結合状態で,前記力率改善回路14及びインバータ回路16を駆動させれば,バッテリBは充電されるようになっている。従って,第2の受電カプラ20が第2の送電カプラ19と結合した際の充電回路は,二次コイル17bと整流回路18とを接続する接続線,整流回路18及びその整流回路18とバッテリBとを接続する接続線から構成されている。
【0032】このようなカプラの結合方式は,インダクティブ方式と呼ばれている。そして,前記両カプラ19,20の分離,結合は自動的に行われるように構成されており,車載側充電装置3のバッテリBに対し,第2の据置側充電装置2を用いて行う充電作業はオート方式となっている。
【0033】又,前記車載側充電装置3にはECU31が設けられている。このECU31は,前記バッテリBに接続されており,ECU31によってバッテリBの温度,残存容量等の各種データが検出されるようになっている。又,ECU31は,信号線L1を介して第1の受電カプラ12と接続されている。信号線L1は,第1の受電カプラ12と前記第1の送電カプラ11とが結合されたときに,同送電カプラ11と第1のコントローラ7との間に接続された信号線L2と接続される。従って,第1の送電カプラ11と第1の受電カプラ12とが結合されると,ECU31と第1のコントローラ7との間で互いに接続された信号線L1,L2を介してデータ通信が行われる。そして,ECU31は,バッテリBが最適の状態で充電されるように前記力率改善回路6及び共振型インバータ回路8を駆動するべく,信号線L1,L2を介して前記第1のコントローラ7に制御信号S5を出力する。
【0034】更に,前記ECU31には通信回路32が接続されており,この通信回路32から送信される信号を受信可能な受信回路33が前記第2のコントローラ15に設けられている。そして,ECU31は,通信回路32,33を介して第2のコントローラ15との間で第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20とを自動的に結合させるための公知のデータ通信を行う。そして,第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20とが結合されると,ECU31は,バッテリBが最適の状態で充電されるように前記力率改善回路14及びインバータ回路16を駆動するべく,通信回路32から前記第2のコントローラ15に制御信号S6を送信する。
【0035】前記ECU31は,運転席等に設けられた選択手段としての操作スイッチ34と接続されている。操作スイッチ34はマニュアル方式の前記第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うか,オート方式の第2の据置側充電装置2を使用してバッテリBへの充電を行うのかを選択するスイッチである。
【0036】ECU31は,操作スイッチ34にてマニュアル方式の第1の据置側充電装置1を使用した充電作業が選択されると,第1の据置側充電装置1の第1のコントローラ7との間でバッテリBに対する充電作業のための処理動作を実行する。又,ECU31は,操作スイッチ34にてオート方式の第2の据置側充電装置2を使用した充電作業が選択されると,第2の据置側充電装置2の第2のコントローラ15との間でバッテリBに対する充電作業のための処理動作を実行する。
【0037】次に,この充電システム4の作用について説明する。まず,第1の据置側充電装置1を用いてバッテリBを充電する場合,即ちマニュアル方式によって充電作業を行う場合について説明する。
【0038】作業者が第1の据置側充電装置1に設けられた第1の送電カプラ11を,車載側充電装置3に設けられた第1の受電カプラ12に結合する。これにより,ECU31が信号線L1,L2を介して第1のコントローラ7との間でデータ通信を行うことが可能となる。ここで,操作スイッチ34にてマニュアル方式の第1の据置側充電装置1を使用した充電作業を選択すると,ECU31はバッテリBが最適の状態で充電されるように信号線L1,L2を介して第1のコントローラ7に制御信号S5を出力する。第1のコントローラ7は,この制御信号S5の入力に基づいて力率改善回路6及び共振型インバータ回路8に駆動信号S1,S2を出力する。
【0039】すると,力率改善回路6は,商用交流電源Eを整流回路5にて整流した直流電源の力率を調整するとともに,昇圧する。そして,共振型インバータ回路8はこの直流電源を交流電源に変換し,トランス9の一次コイル9aに供給する。トランス9は一次コイル9aに供給された交流電源を電力変換し,二次コイル9bには誘導電圧が発生する。この誘導電圧は整流回路10にて整流されて直流電源となる。その直流電源はバッテリBに印加されて同バッテリBが充電される。
【0040】又,第2の据置側充電装置2を用いてバッテリBを充電する場合,即ちオート方式によって充電作業を行う場合について説明する。操作スイッチ34にてオート方式の第2の据置側充電装置2を使用した充電作業を選択すると,第2の据置側充電装置2に設けられた第2の送電カプラ19は,車載側充電装置3に設けられた第2の受電カプラ20に自動的に結合する。すると,両カプラ19,20はトランス17を形成する。次に,ECU31はバッテリBが最適の状態で充電されるように通信回路32,33を介して第2のコントローラ15に制御信号S6を出力する。第2のコントローラ15は,この制御信号S6の受信に基づいて力率改善回路14及びインバータ回路16に駆動信号S3,S4を出力する。
【0041】すると,力率改善回路14は,商用交流電源Eを整流回路13にて整流した直流電源の力率を調整するとともに,昇圧する。そして,インバータ回路16はこの直流電源を交流電源に変換し,トランス17の一次コイル17aに供給する。トランス17は一次コイル17aに供給された交流電源を電力変換して二次コイル17bには誘導電圧が発生する。この誘導電圧は整流回路18にて整流されて直流電源となる。その直流電源はバッテリBに印加されて同バッテリBが充電される。
【0042】以下,上記第1実施形態における特徴的な作用効果を述べる。
(1)上記第1実施形態の車載側充電装置3は,マニュアル方式によって送電カプラを受電カプラに結合させる第1の据置側充電装置1に対応し,その装置に設けられた第1の送電カプラ11とコンダクティブ方式によって結合可能な第1の受電カプラ12を備えている。加えて,オート方式によって送電カプラを受電カプラに結合させる第2の据置側充電装置2に対応し,その装置に設けられた第2の送電カプラ19とインダクティブ方式によって結合可能な第2の受電カプラ20を備えている。このため,この車載側充電装置3は,マニュアル方式で送電カプラを受電カプラに結合させることから,安価に製造できるとともに,広く普及させることができる第1の据置側充電装置1と,オート方式で送電カプラを受電カプラに結合させることから,充電作業の利便性を高くすることができる第2の据置側充電装置2との両装置に対応することができる。つまり,車載側充電装置3のバッテリBには,このどちらの装置からでも充電することができる。
【0043】(2)上記第1実施形態では,バッテリBへの充電を行うのに,マニュアル方式の前記第1の据置側充電装置1を使用して行うのか,オート方式の第2の据置側充電装置2を使用して行うのかを選択することが可能な操作スイッチ34をECU31に接続した。ECU31は,この接続スイッチ34での選択に基づいて,第1のコントローラ7又は第2のコントローラ15との間でバッテリBに対する充電作業のための処理動作を実行する。このため,その処理動作の実行を正確に行うことができる。」
・段落【0026】,【0035】,【0037】?【0039】の下線部の記載事項と,図1の図示内容からみて,バッテリBを整流回路10にて整流された直流電源へ接点を介して接続するための,第1の送電カプラ11と第1の充電カプラ12,及び,第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うことを選択する操作スイッチ34が理解できる。
・段落【0040】には,操作スイッチ34により第2の据置側充電装置を使用したバッッテリBヘの充電を選択すると,第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20が自動的に結合されることが記載されており,この記載と合わせて,段落【0031】,【0041】の下線部の記載事項を考慮することにより,バッテリBを一次コイル17aに供給された交流電源へ選択的に非接触の状態で結合するための,第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20,および,第2の据置側充電装置2を使用してバッテリBヘの充電を行うことを選択する操作スイッチ34が理解できる。
・段落【0031】の記載事項からみて,第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有し,第2の送電カプラ19はトランス17の一次コイル17aを有することが理解できる。

これらの事項に基づいて,本願発明1の表現に倣って充電装置を車載側のものに限って解して整理すると,刊行物1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「電気自動車等のバッテリ車のバッテリを充電する車載側充電装置であって,
バッテリBを整流回路10にて整流された直流電源へ接点を介して接続するための,第1の充電カプラ12,及び,第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うことを選択する操作スイッチ34と,
バッテリBを一次コイル17aに供給された交流電源へ選択的に非接触の状態で結合するための,第2の受電カプラ20,及び,第2の据置側充電装置を使用してバッテリBヘの充電を行うことを選択する操作スイッチ34と,
第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有し,
第2の送電カプラ19はトランス17の一次コイル17aを有し,
両カプラ19,20の分離・結合は自動的に行われ,
カプラ19,20の結合方式はインダクティブ方式である,車載側充電装置。」

また,これらの事項に基づいて,本願発明1の表現に倣って充電装置を車載側のもののみに限らないと解して整理すると,刊行物1には,以下の発明(以下,「引用発明1’」という。)が記載されていると認められる。
「電気自動車等のバッテリ車のバッテリを充電する充電装置であって,
バッテリBを整流回路10にて整流された直流電源へ接点を介して接続するための,第1の送電カプラ11と第1の充電カプラ12,及び,第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うことを選択する操作スイッチ34と,
バッテリBを一次コイル17aに供給された交流電源へ選択的に非接触の状態で結合するための,第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20,及び,第2の据置側充電装置を使用してバッテリBヘの充電を行うことを選択する操作スイッチ34と,
第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有し,
第2の送電カプラ19はトランス17の一次コイル17aを有し,
両カプラ19,20の分離・結合は自動的に行われ,
カプラ19,20の結合方式はインダクティブ方式である,充電装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-136588号公報(以下「刊行物2」という。)には,「電動車両の充電システム」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電動モータ付き自転車などの電動車両に搭載されたバッテリを充電するための充電システムに関するものである。」
・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記の充電方法においては,充電装置の出力端子をワイヤーによってバッテリー(3)の充電端子に接続する作業が必要であり,この作業が面倒である問題がある。これに対し,電気的接続によらず,一次コイルと二次コイルの電磁結合によって,充電装置から自転車本体のバッテリーへ充電電流を供給する方式が考えられるが,この方式においては,一次コイルと二次コイルの間の電磁結合にエネルギー損失が伴い,特に充電電流が大きくなると,エネルギー効率が低下する問題がある。
【0005】そこで本発明の目的は,充電作業を行なうべき場所,時刻,その他の状況に応じて,エネルギー効率は多少低くとも電気接続のための作業が不要な第1の充電方式と,電気接続のための作業が必要であってもエネルギー効率の高い第2の充電方式の何れかを,任意に選択出来る充電システムを提供することである。」
・「【0015】第1実施例
図4乃至図7は,自宅或いは駐輪場の所定位置に設置した充電装置(4)によって,自転車本体(1)のバッテリー(図示省略)を充電している状態を表わしている。充電装置(4)は,自転車本体(1)の後輪(11)の位置決め溝(44)が凹設されたベース(41)を具え,該ベース(41)上には,スタンド受け部材(42)が設けられている。スタンド受け部材(42)には,自転車本体(1)を支えるスタンド脚(12)の接地部(13)を係合させるべき凹部(43)が形成され,該凹部(43)を包囲して一次コイル装置(51)が埋設されると共に,後述の通常充電一次回路を構成すべき他の回路素子が内蔵されている。又,ベース(41)からは,商用電源のコンセントに接続すべき電源コード(45)が伸びている。一方,自転車本体(1)のスタンド脚(12)の接地部(13)には,二次コイル装置(61)が内蔵されており,該二次コイル装置(61)は,スタンド脚(12)及びフレーム(14)に沿わせて張設した線路(図示省略)を介して前記バッテリーと接続され,該線路中に介在する他の回路素子と共に,後述の充電二次回路を構成している。」
・「【0018】上記の通常充電一次回路(5)において,商用電源(53)から得られる交流の電流は,全波整流回路(54)を経て整流され,更にコンデンサ(55)によって平滑化された後,一次コイル(50)へ供給される。ここで,トランジスタ(56)は,ドライブ回路(57)からのドライブ信号によってスイッチングされる。この結果,一次コイル(50)から高周波の磁力線が発生し,該磁力線が充電二次回路(6)の二次コイル(60)を貫通して,一次コイル(50)と二次コイル(60)とが互いに電磁結合することになる。
【0019】上記電磁結合によって,二次コイル(60)から高周波のパルス電流が得られ,該パルス電流はコンデンサ(63)によって平滑化され,略直流の充電電流となって,バッテリー(3)に供給される。この結果,バッテリー(3)が充電されることになる。
【0020】急速充電一次回路(7)は,上述の通常充電一次回路(5)よりも大きな充電電流をバッテリー(3)へ供給して,比較的短時間(例えば100分間)で充電を施すためのものである。急速充電一次回路(7)は,従来の充電一次回路と同様の構成であって,商用電源(71),全波整流回路(72),平滑用のコンデンサ(73),スイッチング用のトランジスタ(74),トランジスタ(74)へドライブ信号を供給するドライブ回路(75),絶縁トランス(70),平滑用のコンデンサ(76),充電オン/オフ用のトランジスタ(77),トランジスタ(77)をオン/オフ制御する充電制御回路(78)等から構成され,その出力部は前記コネクター(66)によって充電二次回路(6)と接続される。充電制御回路(78)には,コネクター(66)からバッテリー(3)の両端電圧が供給され,充電制御回路(78)は,バッテリー(3)の両端電圧が所定の閾値を下回っているとき,トランジスタ(77)をオンとして充電を継続し,バッテリー(3)の両端電圧が一旦所定の閾値を越えると,トランジスタ(77)をオフとして,充電を停止する。
【0021】上記の急速充電一次回路(7)において,商用電源(71)から得られる交流の電流は,全波整流回路(72)を経て整流され,更にコンデンサ(73)によって平滑化された後,絶縁トランス(70)の一次巻線へ供給される。ここで,トランジスタ(74)はドライブ回路(75)からのドライブ信号によってスイッチングされる。この結果,絶縁トランス(70)の二次巻線から高周波のパルス電流が得られ,該パルス電流はコンデンサ(76)によって平滑化され,略直流の充電電流となってトランジスタ(77)及びコネクター(66)を通過し,バッテリー(3)に供給される。この結果,バッテリー(3)が充電されることになる。尚,急速充電一次回路(7)において,バッテリー(3)へ供給すべき充電電流は,通常充電一次回路(5)による充電電流よりも大きく設定されており,これによって,短時間で充電が完了することになる。
【0022】図1に示す充電システムによれば,自転車本体(1)のバッテリー(3)を充電するに際して,充電に時間がかかっても簡便に充電を行なわんとする場合は,図4及び図5の如く自転車本体(1)の後輪(11)を充電装置(4)上に設置して,スタンド脚(12)をスタンド受け部材(42)に係合させれば,充電装置(4)に設けた通常充電一次回路(5)と自転車本体(1)に設けた充電二次回路(6)とが互いに磁気的に接続され,バッテリーを充電することが出来る。従って,従来の如きワイヤーによる接続は不要であり,便利である。
【0023】これに対し,短時間で充電を完了せんとする場合は,図1に示すコネクター(66)を用いて,自転車本体の充電二次回路(6)に急速充電一次回路(7)を接続する。これによって,急速充電一次回路(7)と充電二次回路(6)とが互いに電気的に接続され,バッテリーを短時間で充電することが出来る。又,通常充電一次回路(5)による充電に比べて,高いエネルギー効率でバッテリー(3)を充電することが出来る。」

そうすると,刊行物2には,
「電動モータ付き自転車などの電動車両に搭載されたバッテリを充電するための充電システムであって,
充電に時間がかかっても簡便に充電を行なわんとする場合は,充電装置4に設けた通常充電一次回路5と充電二次回路6とが互いに電磁結合により磁気的に接続され,バッテリーを充電することが出来,
短時間で充電を完了せんとする場合は,コネクター66を用いて,充電二次回路6に急速充電一次回路7を電気的に接続し,通常充電一次回路5による充電に比べて,高いエネルギー効率でバッテリー3を充電することが出来る,充電システム。」
が記載されている。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特表平11-503599号公報(以下「刊行物3」という。)には,「誘導結合による牽引用バッテリー充電」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「 発明の分野
本発明は,電気車両バッテリーを急速再充電するための装置および方法に関する。本発明は,特に車両に搭載されている充電制御装置の種類が何であろうと,電気車両用バッテリーに充電エネルギーを供給することができる,車両用バッテリーを充電するための充電ステーションおよび方法を提供する。より詳細に説明すると,本発明は,10kHZから200kHzの範囲の交流充電エネルギーを,充電ステーションから電気車両に供給する充電ステーションおよび方法を提供する。充電エネルギーの供給量の制御は,車両に搭載されているバッテリー充電制御モジュールの性質および改良の度合い,または充電ステーションに設置されている充電制御モジュールの制御によって決まる種々の基準により違ってくる。」(公報第10ページ3?12行)
・「 本発明は,非常に短時間の間に安全で効率的な再充電の必要性,そしてもちろん充電ステーションが10-20分間に電気車両のバッテリーに20-50kWhを充電できるようにするために,100-300kW程度の高い電力を持たなければればならないことを実際に証明する。」(公報12ページ26?29行)

(4)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-246248号公報(以下「刊行物4」という。)には,「非接触カプラ」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている。
・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は磁気結合方式の非接触カプラに関し,たとえば電気自動車等の電気機器への給電もしくは充電を非接触で行うのに利用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】電気自動車や電気自転車,あるいはその他の電気機器への給電や充電を非接触で行う手段として,磁気結合方式の非接触カプラが提供されている。」
・「【0022】一次側のコア部材1A,1B,1Cと二次側のコア部材1A,1B,1Cはそれぞれ,開磁面側同士で近接対向させられて環状の閉磁路Bを形成することにより,一次コイルL1と二次コイルL2間で交流(高周波)の電力伝達を行わせる非接触カプラを形成する。この場合,一次側と二次側の両コア部材1A-1A,1B-1B,1C-1Cはそれぞれに対をなして磁気結合されることにより,同図の(D)または(E)に示すようなトランス等価回路を形成する。」
・「【0024】各コア部材1A,1B,1Cの非対向側コーナ部はあらかじめ面取り形成されている。符合3はその面取り部を示す。この面取り部3を形成したことにより,コア1,1はさらに軽量化されるとともに,コア縁端部での折損が生じにくくなっている。コア部材は加圧成型および焼成によって製造されるフェライト磁性体が主に使用されるが,このフェライト磁性体は概して脆いため,その製造や運搬あるいは組立時等に縁端部が折損しやすいという難点があるが,上記面取り部3はその折損の予防にも有効である。さらに,大型のフェライトコアは,加圧成型時の加圧を均一に行うことが難しいとともに,焼成時に亀裂が生じやすいといった製造上の困難があるが,これらの困難は,上述のようにコアを分割形成することによって解消することができる。」
・「【0032】図5は本発明による非接触カプラの第2実施例を示す。前記第1の実施例との相違に着目して説明すると,この第2実施例の非接触カプラは,同図の(A)(B)に示すように,一次側と二次側の磁気コア1,1がそれぞれ放射状に円陣配置された複数の長形コア部材11で形成されている。各長形コア部材11は,図6に示すように,全体(A,B,D部)が一様な厚みを有する板状に形成されている(t1=t2=t3)。このような形状のコア部材11は,加圧成型を均一に行うのに有利であり,したがって,成型および焼成時の条件等を最適化してコア部材の均質性および特性の安定性を向上させることができる。また,各コア部材11はそれぞれにU字状の開磁路を形成するが,そのU字状開磁路の両端面での面積(t1×A,t2×B,t3×C)を同じに揃える(t1×A=t2×B=t3×C)ことにより,コア部材11内での磁路バランスを最適化してコア損失を低減させることができる。」
・段落【0032】の記載事項と図5(A)(B)の図示内容からみて,長形コア部材11の凹んだ部分の上部に配置される前記一次コイルL1に対して長形コアの凹んだ部分より下側にある部分と同じ高さの部分は平行な位置にあるといえるから,少なくとも1巻を有していて各長形コア11の凹んだ部分の上部に配置される一次コイルL1と,前記一次コイルL1に対して実質的に平行な位置に配置され,前記一次コイルL1の径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔をあけて前記一次コイルL1の周りに配置された複数の長形コア部材11を含んだ,磁気結合により電力伝達を行う一次側の部材が理解できる。

そうすると,これらの事項に基づいて,本願発明8の表現に倣って整理すると,刊行物4には,以下の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「二次側に対して非接触で電力伝達を行わせる非接触カプラの1次側の部材であって,
少なくとも1巻を有して各長形コア11の凹んだ部分の上部に配置される一次コイルL1と,
前記一次コイルL1に対して実質的に平行な位置に配置され,前記一次コイルL1の径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔をあけて前記一次コイルL1の周りに配置された複数のフェライト磁性材からなる長形コア部材11を含んだ,磁気結合による電力伝達を行う一次側の部材。」

3.本願発明1と引用発明1との対比
(1)本願発明1の「電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置」を,車両側の装置のみに限るものとして,検討する。
本願発明1と引用発明1とを対比すると,後者の「電気自動車等のバッテリ車」は前者の「電動またはハイブリッド車両」に相当し,以下同様に,「バッテリ」又は「バッテリB」は「電池」に,電気自動車等のバッテリを「充電する車載側充電装置」は「充電するための装置」に,「整流回路10にて整流された直流電源」は「電源」に,「車載側充電装置」は「装置」に,それぞれ相当する。
後者の「バッテリBを整流回路10にて整流された直流電源へ接点を介して接続するための,第1の充電カプラ12,及び,第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うことを選択する操作スイッチ34」及び「バッテリBを一次コイル17aに供給された交流電源へ選択的に非接触の状態で結合するための,第2の受電カプラ20,及び,第2の据置側充電装置を使用してバッテリBヘの充電を行うことを選択する操作スイッチ34」と前者の「前記電池を10kW?500kWの間の充電レートを有している高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段」及び「前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段」とは,「前記電池を電源へと選択的に接続するための第1の手段」及び「前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段」において共通する。
後者の「第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有」することは,「第2の受電カプラ20」が接続するための前記第2の手段の一部であるとともに,「トランス17の二次コイル17b」は交流電源に非接触で結合された,つまり前記電源に電気的に接続されているから,前者の「接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えて」いることとは,「接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続された部材を備えて」いることにおいて共通する。
後者の「第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有し,第2の送電カプラ19はトランス17の一次コイル17aを有し,両カプラ19,20の分離・結合は自動的に行われ,カプラ19,20の結合方式はインダクティブ方式である」ことと,前者の「電力が,共振誘導による電力伝達によって前記ピックアップパッドと充電パッドの間で伝達される」こととは,「電力が,誘導による電力伝達によって二部材の間で伝達される」ことにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置であって,
前記電池を電源へと選択的に接続するための第1の手段と,
前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段と
を備えており,
接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続された部材を備えており,
電力が,誘導による電力伝達によって二部材の間で伝達される,装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
前記電池を電源へと選択的に接続するための第1の手段に関して,電源が,本願発明1では,「10kW?500kWの間の充電レートを有している高出力の電源」であるのに対して,引用発明1では,そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段に関して,電源が,本願発明1では,「低出力の電源」であるのに対して,引用発明1では,そのような特定がなされていない点。
<相違点3>
接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続された部材を備えていることに関して,「部材」が,本願発明1では,「ピックアップパッド」であるのに対して,引用発明1では,「トランス17の二次コイル17b」である点。
<相違点4>
電力が,誘導による電力伝達によって二部材の間で伝達されることに関して,本願発明1では,「誘導」が「共振誘導」であり,「二部材」が「ピックアップパッド」と「充電パッド」であるのに対して,引用発明1では,共振誘導であるか否かは特定されておらず,「二部材」がトランス17の「二次コイル17b」と「一次コイル17a」である点。

(2)また,仮に本願発明1の「電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置」が車両側の装置のみに限らないものとして,予備的に検討する。
本願発明1と引用発明1’とを対比すると,後者の「電気自動車等のバッテリ車」は前者の「電動またはハイブリッド車両」に相当し,以下同様に,「バッテリ」又は「バッテリB」は「電池」に,電気自動車等のバッテリを「充電する装置」は「充電するための装置」に,「整流回路10にて整流された直流電源」は「電源」に,「充電装置」は「装置」に,それぞれ相当する。
後者の「バッテリBを整流回路10にて整流された直流電源へ接点を介して接続するための,第1の送電カプラ11と第1の充電カプラ12,及び,第1の据置側充電装置1を使用してバッテリBへの充電を行うことを選択する操作スイッチ34」及び「バッテリBを一次コイル17aに供給された交流電源へ選択的に非接触の状態で結合するための,第2の送電カプラ19と第2の受電カプラ20,及び,第2の据置側充電装置を使用してバッテリBヘの充電を行うことを選択する操作スイッチ34」と前者の「前記電池を10kW?500kWの間の充電レートを有している高出力の電源へと選択的に接続するための第1の手段」及び「前記電池をより低出力の電源へと選択的に接続するための第2の手段」とは,「前記電池を電源へと選択的に接続するための第1の手段」及び「前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段」において共通する。
後者の「第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有」することは,「第2の受電カプラ20」が接続するための前記第2の手段の一部であるとともに,「トランス17の二次コイル17b」は交流電源に非接触で結合された,つまり前記電源に電気的に接続されているから,前者の「接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続されたピックアップパッドを備えて」いることとは,「接続するための前記第2の手段が,前記電源へと電気的に接続された部材を備えて」いることにおいて共通する。
後者の「第2の受電カプラ20はトランス17の二次コイル17bを有し,第2の送電カプラ19はトランス17の一次コイル17aを有し,両カプラ19,20の分離・結合は自動的に行われ,カプラ19,20の結合方式はインダクティブ方式である」ことと,前者の「電力が,共振誘導による電力伝達によって前記ピックアップパッドと充電パッドの間で伝達される」こととは,「電力が,誘導による電力伝達によって二部材の間で伝達される」ことにおいて共通する。
そうすると,両者は,上記(1)における一致点と同様の一致点で一致し,上記(1)における相違点1?4と同様の相違点で相違すると認められる。

4.本願発明1の相違点の検討
<相違点1,2について>
刊行物2に記載された事項の「電動モータ付き自転車などの電動車両」は本願発明1の「電動またはハイブリッド車両」に相当し,以下同様に,「バッテリ」及び「バッテリー3」は「電池」に,「充電システム」及び「充電装置4」は「装置」に,「電磁結合により磁気的に接続」するものは「第2の手段」に,「コネクタ66」は「第1の手段」に,それぞれ相当する。
刊行物2に記載された事項の「急速充電一次回路7」は,「通常充電一次回路5」による充電に比べて高いエネルギー効率(より大きな充電電流)でバッテリー3を充電出来るから,本願発明1の「高出力の電源」に相当し,刊行物2に記載された事項の「通常充電一次回路5」は本願発明1の「より低出力の電源」に相当する。
刊行物2に記載された事項の「充電二次回路6」には「バッテリー3」があり,本願発明1の「電池」とは「電池を含む回路」において共通する。
そうすると,刊行物2には,本願発明1の表現に倣うと,
「電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置であって,
充電に時間がかかっても簡便に充電を行なわんとする場合は,装置に設けたより低出力の電源と電池を含む回路とが互いに接続されて第2の手段を介して電池を充電することが出来,
短時間で充電を完了せんとする場合は,第1の手段を用いて,電池を含む回路に高出力の電源を電気的に接続し,より低出力の電源による充電に比べて,高いエネルギー効率で電池を充電することが出来る,装置」が開示されているといえる。
引用発明1と刊行物2に開示された事項とは,「電動車両の電池を充電する充電装置であって,前記電池を電源へ直接接触して接続する第1の手段と,前記電池を電源に非接触の状態で結合する第2の手段とを備えた充電装置」において共通するものであって,刊行物2に記載された「【0005】・・・エネルギー効率は多少低くとも電気接続のための作業が不要な第1の充電方式と,電気接続のための作業が必要であってもエネルギー効率の高い第2の充電方式の何れかを,任意に選択出来る」ことは,引用発明1においても内在し得る課題であるから,引用発明1に刊行物2に開示された事項の「電動またはハイブリッド車両の電池を充電するための装置であって,充電に時間がかかっても簡便に充電を行なわんとする場合は,装置に設けたより低出力の電源と電池を含む回路とが互いに接続されて第2の手段を介して電池を充電することが出来,短時間で充電を完了せんとする場合は,第1の手段を用いて,電池を含む回路に高出力の電源を電気的に接続し,より低出力の電源による充電に比べて,高いエネルギー効率で電池を充電することが出来る,装置」を適用して,「前記電池を電源への選択的に接続するための第1の手段」における引用発明1の電源を「高出力の電源」とし,「前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段」における引用発明1の電源を「より低出力の電源」とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
そして,刊行物3には,電気車両のバッテリーに,短時間で充電するためには,充電ステーション(電源)が100-300KW程度の高い電力が持たなければならないことが開示されているように,短時間で充電するためには100-300KW程度の充電レートとすることは常套手段であるから,当該常套手段に基づいて,急速充電の際に,10kW?500kWの間の充電レートを有するようにすることも,当業者が適宜採用可能な事項にすぎない。
そうすると,「前記電池を電源への選択的に接続するための第1の手段」における引用発明1の電源を「高出力の電源」とし,その際に「10kW?500kWの間の充電レートを有する」ようにして,相違点1に係る本願発明1の構成とすること,及び,「前記電池を電源へと選択的に接続するための第2の手段」における引用発明1の電源を「より低出力の電源」として相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3,4について>
共振誘導を用いた電力伝達は,原出願の優先日前に非接触給電の技術分野において周知の事項にすぎない(必要があれば,査定時に提示した国際公開第2007/008646号の第1ページ29行?第2ページ第12行の「電磁エネルギー転送装置(electromagnetic energy transfer device.)が第1の共振器(first resonator structure) と第2の共振器(second resonator structure)を備える」旨の記載参照,特表2002-508916号公報の「応用例3A:道路に取り付けられた中間ループを経て電力が供給される車両
図5は,コンデンサ506と,好ましくは,供給源からの磁束を効果的に途中で捕らえるように強磁性コアを配置しているインダクタンス507とから成る共振ピックアップ回路から交流電力を受け取る1組の電動機制御回路508から給電される電動機509が,少なくとも1つの車輪を駆動する車両500(例えばレール装置501に沿って走行できる)を示している。軌道にほぼ平行に走っている一次導線503は,随意に1個,または複数個の個別インダクタンス504と同調コンデンサ505を含む電線ループ(大きい共振電流を流すことができるという理由で,好ましくはリッツ線)を,中間結合装置として備えている。インダクタンス504は,次の2つの機能を持っている。すなわち,このインダクタンスは,そのループをシステム全体の共振周波数にて電気的に共振させるのに役立ち,また,このインダクタンスは,車両が受け取る誘導磁界の集中した源の働きをする。」(第19ページ第20行?第20ページ第4行,図1,図5,図6を参照。)
そして,非接触給電の分野において,誘導電力を伝達する扁平形状の部材を「パッド」とすることは,原出願の優先日前において周知の事項である(必要があれば,特開2004-350465号公報の請求項7,段落【0001】,図3,特開2005-6441号公報の段落【0014】,図1を参照のこと。)から,引用発明1においてトランスを構成する「二次コイル17b」と「一次コイル17a」に上記周知の事項を適用して,それぞれを「ピックアップパッド」と「充電パッド」として相違点3,4における本願発明1の構成とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。

そして,本願発明1の効果について検討しても,引用発明1(又は引用発明1’),刊行物2の記載事項,上記常套手段,及び上記周知の事項からみて格別顕著なものがもたらされるものではない。

以上を総合すると,本願発明1は,引用発明1(又は引用発明1’),刊行物2の記載事項,上記常套手段,及び,上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

5.本願発明8と引用発明4との対比
本願発明8と引用発明4とを対比すると,後者の「非接触で電力伝達を行わせる」態様は前者の「無線で電力を伝達する」態様に相当し,以下同様に,「一次コイルL1」は「コイル」に,「フェライト磁性材」は「透過性磁気素材」に,「長形コア部材11」は「厚板」に,それぞれ相当する。
後者の「二次側」は非接触で電力を受信するものであるとともに一次側に対して分離可能でもあるから,前者の「分離可能な無線電力受信機」に相当する。
後者の「一次側の部材」は,「非接触で電力伝達を行わせる」ものであるから,前者の「誘導電力伝達パッド」とは,「誘導電力伝達部材」であることにおいて共通する。
「一次コイルL1」は導体であるから,後者の「少なくとも1巻を有して各長形コア11の凹んだ部分の上部に配置される一次コイルL1」は前者の「導体の少なくとも1巻を有して第1層に配置されるコイル」に相当する。
「一次コイルL1」は「長形コア部材11の凹んだ部分の上部に配置される」から,一次コイルL1を第一層とすると,長形コア部分11における一次コイルL1より下に設けられた部分と同じ高さの部分は一次コイルL1と実質的に平行な第2の層といえるから,後者の「前記一次コイルL1に対して実質的に平行な位置に配置され,前記一次コイルL1の径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔をあけて前記一次コイルL1の周りに配置された複数のフェライト磁性材からなる長形コア部材11を含んだ,磁気結合による電力伝達を行う一次側の部材」と前者の「前記コイルと実質的に平行な第2の層に配置され,前記コイルの径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔を空けて前記コイルの周りに配置された複数の透過性磁気素材の厚板とを含む,誘導電力伝達パッド」とは,「前記コイルと実質的平行な第2の層に配置され,前記コイルの径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔を空けて前記コイルの周りに配置された複数の透過性磁気素材の厚板とを含む,誘導電力伝達部材」であることにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「分離可能な無線電力受信機に対して無線で電力を伝達する誘導電力伝達部材であって,
導体の少なくとも1巻を有して第1層に配置されるコイルと,
前記コイルと実質的に平行な第2の層に配置され,前記コイルの径方向長さを横切って延びる長さで互いに間隔を空けて前記コイルの周りに配置された複数の透過性磁気素材の厚板とを含む,誘導電力伝達部材。」
である点で一致し,以下の点で相違するとも認められる。
<相違点>
誘導電力伝達部材に関し,本願発明8では,「誘導電力伝達パッド」であるのに対して,引用発明4では,一次側の部材であり,誘導電力伝達パッドと特定されていない点。

6.本願発明8の相違点の検討
非接触給電の分野において,誘導電力を伝達する扁平形状の部材を「充電パッド」と称することは,原出願の優先日前において周知の事項である(必要があれば,特開2004-350465号公報の請求項7,段落【0001】,図3,特開2005-6441号公報の段落【0014】,図1を参照のこと。)。
そうすると,引用発明4の誘導電力を伝達する部材として周知のパッド形態として,相違点に係る本願発明8の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願発明8の効果について検討しても,引用発明4及び上記周知の事項からみて格別顕著なものがもたらされるものではない。

以上を総合すると,本願発明8は,引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

7.むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用発明1(又は引用発明1’),刊行物2の記載事項,上記常套手段,及び,上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また,本願発明8は,引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-08 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2015-23233(P2015-23233)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
P 1 8・ 537- Z (H02J)
P 1 8・ 57- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 562- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 俊介  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 藤井 昇
堀川 一郎
発明の名称 電池を充電するための装置  
代理人 片岡 憲一郎  
代理人 杉村 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ