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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B |
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管理番号 | 1334261 |
審判番号 | 不服2016-8380 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-07 |
確定日 | 2017-11-09 |
事件の表示 | 特願2012-14319「コンクリート、及び、コンクリートのプレミックス材」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月15日出願公開、特開2013-155049〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年1月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年 8月25日付け:拒絶理由の通知 同年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月26日付け:拒絶理由の通知(最後) 平成28年 1月22日 :意見書、手続補正書の提出 同年 4月28日付け:補正の却下の決定、拒絶査定 同年 6月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成29年 5月31日付け:当審による拒絶理由の通知 同年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出 2.本願発明 本件出願の請求項1、2に係る発明は、平成29年7月27日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 【請求項1】 15重量部以上50重量部未満(20重量部以上50重量部未満を除く)の早強ポルトランドセメントと、 80より大きく85重量部以下の高炉スラグ微粉末を含む結合材と、 を有し、 前記結合材として再生微粉末は含まれておらず、 前記結合材以外の混和材が含まれていない ことを特徴とするコンクリート。 3.当審による拒絶理由の概要 平成29年5月31日付けで当審が通知した拒絶理由の一つは、概ね以下のとおりである。 本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用例:特開平3-69534号公報 4.引用例の記載事項 本願の出願日(平成24年1月26日)前に頒布された刊行物である引用例には、以下の記載がある。 a 「ガラス質高炉スラグの粉末度をブレーン比表面積で3,000?10,000cm^(2)/g(石膏添加5%以下)とし、各種ポルトランドセメントへの配合率を40?90%とすることを特徴としセメントの水和熱(cal/g)と圧縮強さ(kgf/cm^(2))の比を7日で0.43?0.13、28日で0.24?0.1まで調整する方法。」(特許請求の範囲) b 「課題を解決するための手段 本発明は、ガラス質高炉スラグの粉末度をブレーン比表面積で3,000?10,000cm^(2)/gとし、各種ポルトランドセメントへの配合率を40?90%とすることを特徴とするセメントの水和熱および強度の比を調整する方法、である。 本発明において、特にガラス質高炉スラグの粉末度および各種ポルトランドセメントへの配合割合について限定した理由については、次の通りである。 一般にガラス質高炉スラグの使用効果は、配合率40%未満では、水和熱の低減に効果はなく、これを超えて、大きくなるほど顕著となる。しかし、90%を超えると、強度が発現しにくく、従って、養生その他で特別の水和促進の手段が必要となる。 粉末度については、ブレーン比表面積3000cm^(2)/g未満では実用上の強度が維持しにくく、 10000cm^(2)/gを超えると、水和反応がはや過ぎコンクリートにしたとき、練混ぜ、輸送が困難になる。 ガラス質高炉のスラグの粉末度を上記範囲において任意に変え、各種ポルトランドセメントへの配合分量を変化させることにより、用途に応じ経済的に水和熱/圧縮強さ比の小さい理想的なセメントの製造が可能となった。」 (第3ページ左上欄第5行?右上欄第9行) c 「 」 d 「 」 5.引用発明 摘示箇所dより、引用例には、ベースを早強ポルトランドセメントとし、ガラス質高炉スラグの分量を80%としたセメントが記載されている。 そして、摘示箇所cには、ベースを普通ポルトランドセメントとして、ガラス質高炉スラグの分量を40%、50%、60%としたものがJISの品種で「B種」と記載され、70%としたものが「C種」と記載されていることから、JIS R 5211(高炉セメント)より、上記「ガラス質高炉スラグの分量」が、質量基準でポルトランドセメントの内割りでの置換率を意味することは当業者に明らかである。 以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ベースを早強ポルトランドセメントとし、内割りで80質量%をガラス質高炉スラグで置換したセメント。」 6.対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「ガラス質高炉スラグ」、「セメント」は、それぞれ本願発明1の「高炉スラグ微粉末」、「結合材」に相当する。 そして、引用発明の「セメント」は、ベースの早強ポルトランドセメントと、これと置換するガラス質高炉スラグとからなるものであるから、本願発明1の「結合材として再生微粉末は含まれておらず、」という要件を満たしている。 以上のことから、本願発明1と引用発明とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。 ・一致点 「早強ポルトランドセメントと、高炉スラグ微粉末を含む結合材と、 を有し、 前記結合材として再生微粉末は含まれておらず、」を満たす点。 ・相違点1 本願発明1の「結合材」は、「15重量部以上50重量部未満(20重量部以上50重量部未満を除く)の早強ポルトランドセメントと、80より大きく85重量部以下の高炉スラグ微粉末を含む」ものであるのに対し、引用発明の「セメント」は、内割りで80質量%をガラス質高炉スラグで置換したものであるから、「20質量%の早強ポルトランドセメントと、80質量%のガラス質高炉スラグからなる」ものである点。 ・相違点2 本願発明1は、「前記結合材以外の混和材が含まれていないことを特徴とするコンクリート」であるのに対し、引用発明は「セメント」である点。 7.判断 (1)相違点1について 引用例の摘示箇所bには、ガラス質高炉スラグの配合率を高めると、水和熱の低減に効果があることが記載され、摘示箇所a、bには、ポルトランドセメントへの配合率を最大で90%とすることが記載されている。 してみれば、引用発明の「セメント」において、水和熱をより低減するため、ガラス質高炉スラグの配合率をさらに高め、例えば、「15質量%の早強ポルトランドセメントと、85質量%のガラス質高炉スラグからなるセメント」とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 (2)相違点2について 引用例の摘示箇所bには、「粉末度については、・・・コンクリートにしたとき、練混ぜ、輸送が困難になる。」と記載されており、引用発明の「セメント」をコンクリートに用いることも、引用例に記載されているといえる。(下線部は当審において付した。) してみれば、上記摘示箇所bの記載に基づいて、引用発明の「セメント」を用いて、「コンクリート」を製造することは、当業者であれば容易になし得ることである。 また、コンクリートは、結合材(セメント)、細骨材、粗骨材、水を含有するものであって、混和材は必要に応じて配合される任意成分にすぎないから、上記「コンクリート」を「結合材以外の混和材が含まれていないことを特徴とする」ものとすることは、当業者であれば適宜なし得る程度の設計事項にすぎない。 (3)本願発明1の効果について 本願明細書【0014】などの記載からみて、本願発明1は、CO_(2)の排出量の低減と強度発現との両立を図り、施工性に優れ、中性化速度が遅いセメント組成物(コンクリート)を提供するという効果を奏するものと認められる。 これに対し、引用発明の奏する効果について検討すると、製造時にCO_(2)を排出するセメントを、産業廃棄物であるガラス質高炉スラグに置換すれば、CO_(2)の排出量が低減することは当業者に明らかである。 また、早強ポルトランドセメントが、普通ポルトランドセメントよりも28日圧縮強度に優れ、中性化速度が遅いことも当業者の技術常識といえる。 したがって、本願発明1の奏する効果は、いずれも引用発明の構成と技術常識に基づいて、当業者であれば予測し得る程度のものである。 上記のとおりであるから、本願発明1は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 8.むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-06 |
結審通知日 | 2017-09-12 |
審決日 | 2017-09-25 |
出願番号 | 特願2012-14319(P2012-14319) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 武 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
永田 史泰 後藤 政博 |
発明の名称 | コンクリート、及び、コンクリートのプレミックス材 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |