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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1334275
審判番号 不服2016-18998  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-19 
確定日 2017-11-09 
事件の表示 特願2014-205481「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 73428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成26年10月6日の出願であって、平成27年10月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年12月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成28年5月24日に意見書が提出されたところ、平成28年10月31日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成28年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲に係る手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成29年6月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年8月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
平成29年8月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、その請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。(下線部は補正箇所を示す。また、A?Hは、分説するために当審にて付した。)

「【請求項1】
A 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
B 前記特別遊技判定の結果に基づいて、図柄を図柄表示手段にて変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
C 前記特別遊技判定が行われる前に前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
D 前記図柄が変動表示されているときに演出を行う演出制御手段と、を備え、
E 前記演出制御手段は、
前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出を実行可能であり、
F 所定の通常演出を行うときと、前記事前判定の結果に基づいて、複数回の前記図柄の変動表示に渡って実行される事前判定演出であって、前記通常演出よりも前記特別遊技への期待度が高いことを示唆する第1の事前判定演出及び前記第1の事前判定演出よりも前記期待度が更に高いことを示唆する第2の事前判定演出のいずれかを実行するときと、があり、前記通常演出、前記第1の事前判定演出及び前記第2の事前判定演出の夫々は前記保留表示演出とは異なる演出であり、
G 前記特別遊技が行われる確率が、前記第1の事前判定演出が実行されたときの方が前記通常演出が実行されたときよりも高くなるよう、且つ、前記第2の事前判定演出が実行されたときの方が前記第1の事前判定演出が実行されたときよりも更に高くなるようにし、
H 前記事前判定の結果に基づいた前記第1の事前判定演出の実行是非の判定と前記第2の事前判定演出の実行是非の判定の内、前記第2の事前判定演出の実行是非の判定を先に行う
ことを特徴とする遊技機。」

3 拒絶理由通知の概要
平成29年6月19日付け拒絶理由通知は、本願発明は、特開2013-000142号公報に記載された発明であるか、あるいは、特開2013-000142号公報に記載された発明から当業者が容易に想到することができた発明であって、特許法第29条第1項第3号、あるいは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4 刊行物1に記載された発明
本願の出願日前に頒布され、平成29年6月19日付け拒絶理由通知で引用された刊行物である特開2013-000142号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。

(1-a) 「【0027】
第1実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は本体枠(外枠)11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図3参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠(内枠)12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15が取り付けられている。」

(1-b) 「【0042】
第1特図表示器51と第2特図表示器52における特図変動表示ゲームは、例えば変動表示ゲームの実行中、即ち、表示装置41において飾り特図変動表示ゲームを行っている間は、中央のセグメントを点滅駆動させて変動中であることを表示する。そして、ゲームの結果が「はずれ」のときは、はずれの結果態様として例えば中央のセグメントを点灯状態にし、ゲームの結果が「大当り」のときは、当りの結果態様(特別結果態様)としてはずれの結果態様以外の結果態様(例えば「3」や「7」の数字等)を点灯状態にしてゲーム結果を表示する。」

(1-c) 「【0098】
よって、例えば、特図変動表示ゲームに対応して表示装置に表示される飾り特図変動表示ゲームが、表示装置における左、中、右の変動表示領域の各々で所定時間複数の識別情報を変動表示した後、左、右、中の順で変動表示を停止して結果態様を表示するものである場合、左、右の変動表示領域で、特別結果態様となる条件を満たした状態(例えば、同一の識別情報)で変動表示が停止した状態がリーチ状態となる。またこの他に、すべての変動表示領域の変動表示を一旦停止した時点で、左、中、右のうち何れか二つの変動表示領域で特別結果態様となる条件を満たした状態(例えば、同一の識別情報となった状態、ただし特別結果態様は除く)をリーチ状態とし、このリーチ状態から残りの一つの変動表示領域を変動表示するようにしても良い。そして、このリーチ状態には複数のリーチ演出が含まれ、特別結果態様が導出される可能性が異なる(信頼度が異なる)リーチ演出として、ノーマルリーチ、スペシャル1リーチ、スペシャル2リーチ、スペシャル3リーチ、プレミアリーチ等が設定されている。なお、信頼度は、リーチなし<ノーマルリーチ<スペシャル1リーチ<スペシャル2リーチ<スペシャル3リーチ<プレミアリーチの順に高くなるようになっている。また、このリーチ状態は、少なくとも特図変動表示ゲームで特別結果態様が導出される場合(大当りとなる場合)における変動表示態様に含まれるようになっている。即ち、特図変動表示ゲームで特別結果態様が導出されないと判定すると(はずれとなる場合)における変動表示態様に含まれることもある。よって、リーチ状態が発生した状態は、リーチ状態が発生しない場合に比べて大当りとなる可能性の高い状態である。」

(1-d) 「【0126】
次に、これらの制御回路において行われる遊技制御について説明する。
遊技制御装置100の遊技用マイコン111のCPU111Aでは、普図始動ゲート34に備えられたゲートスイッチ34aからの遊技球の検出信号の入力に基づき、普図の当り判定用乱数値を抽出してROM111Bに記憶されている判定値と比較し、普図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行う。そして、普図表示器(図示省略)に、識別図柄を所定時間変動表示した後、停止表示する普図変動表示ゲームを表示する処理を行う。この普図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、普図表示器に特別の結果態様を表示するとともに、普電ソレノイド37cを動作させ、普通変動入賞装置37の可動部材37b、37bを所定時間(例えば、0.3秒間)上述のように開放する制御を行う。
なお、普図変動表示ゲームの結果がはずれの場合は、普図表示器にはずれの結果態様を表示する制御を行う。
【0127】
また、始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき始動入賞(始動記憶)を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値を抽出してROM111Bに記憶されている判定値と比較し、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行う。
また、普通変動入賞装置37に備えられた始動口2スイッチ37aからの遊技球の検出信号の入力に基づき始動記憶を記憶し、この始動記憶に基づき、第2特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値を抽出してROM111Bに記憶されている判定値と比較し、第2特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行う。
【0128】
そして、遊技制御装置100のCPU111Aは、上記の第1特図変動表示ゲームや第2特図変動表示ゲームの判定結果を含む制御信号(演出制御コマンド)を、演出制御装置300に出力する。そして、特図1表示器51や特図2表示器52に、識別図柄を所定時間変動表示した後、停止表示する特図変動表示ゲームを表示する処理を行う。
また、演出制御装置300では、遊技制御装置100からの制御信号に基づき、表示装置41で特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームを表示する処理を行う。
さらに、演出制御装置300では、遊技制御装置100からの制御信号に基づき、スピーカ19a,19bからの音の出力、各種LEDの発光を制御する処理等を行う。
【0129】
そして、遊技制御装置100のCPU111Aは、特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、特図1表示器51や特図2表示器52に特別結果態様を表示するとともに、特別遊技状態を発生させる処理を行う。
特別遊技状態を発生させる処理においては、CPU111Aは、例えば、大入賞口ソレノイド38bにより特別変動入賞装置38の開閉扉38cを開放させ、大入賞口内への遊技球の流入を可能とする制御を行う。
そして、大入賞口に所定個数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば、25秒又は1秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば、15回又は2回)継続する(繰り返す)制御(サイクル遊技)を行う。
また、特図変動表示ゲームの結果がはずれの場合は、特図1表示器51や特図2表示器52にはずれの結果態様を表示する制御を行う。」

(1-e) 「【0152】
図25に示すように、特図ゲーム処理において、遊技制御装置100の遊技用マイコン111は、先ず、始動口1スイッチ36a及び始動口2スイッチ37aの入賞を監視する始動口スイッチ監視処理(ステップA1)を行う。
始動口スイッチ監視処理では、始動入賞口36、第2始動入賞口をなす普通変動入賞装置37に遊技球の入賞があると、各種乱数(大当り乱数など)の抽出を行い、当該入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行う。」

(1-f) 「【0182】
そして、設定された変動パターンの前半変動番号に対応する始動口入賞演出コマンド(MODE)を算出して準備する(ステップA245)とともに、後半変動番号の値を始動口入賞演出コマンド(ACTION)として準備し(ステップA246)、コマンド設定処理(ステップA247)を行う。続けて、入賞演出図柄コマンド領域から始動口入賞演出図柄コマンドをロードして準備し(ステップA248)、コマンド設定処理(ステップA249)を行って、特図保留情報判定処理を終了する。」

(1-g) 「【0183】
次に、演出制御装置300での制御について説明する。上述したように演出制御装置300は、主制御用マイコン(1stCPU)311と、該主制御用マイコン311の制御下で映像制御を行う映像制御用マイコン(2ndCPU)312とを備えている。
・・・
【0197】
さらに、始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの結果等を当該特図変動表示ゲームの実行前に事前に判定する先読み処理の結果を含む事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づく処理を行う先読み予告設定処理(ステップB79)を行う。
・・・
【0199】
〔先読み予告設定処理〕
図31には、図30に示した1stシーン制御処理における先読み予告設定処理(ステップB79)を示した。この先読み予告設定処理では、まず、事前判定コマンドを受信したか否かを判定する(ステップB101)。
ここで、事前判定コマンドを受信していないと判定した場合(ステップB101;No)は、先読み予告設定処理を終了する。一方、事前判定コマンドを受信したと判定した場合(ステップB101;Yes)は、事前判定コマンドの内容を対応する始動記憶領域にセーブする(ステップB102)。
【0200】
次いで、先読み予告を実行中であるか否かを判定する(ステップB103)。
ここで、既に先読み予告の実行中であると判定された場合(ステップB103;Yes)は、先読み予告設定処理を終了する。一方、先読み予告の実行中でないと判定された場合(ステップB103;No)は、始動口入賞演出コマンドから当該始動記憶のリーチ系統情報を取得し(ステップB104)、当該リーチ系統情報がスペシャル(SP)リーチ3に関するものか否かを判定する(ステップB105)。
【0201】
ステップB105で、SPリーチ3に関するものでないと判定された場合(ステップB105;No)は、ステップB108へ移行する。一方、SPリーチ3に関するものであると判定された場合(ステップB105;Yes)は、特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行う(ステップB106)。なお、特別先読み予告実行抽選において、当該抽選の対象である始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの結果が大当りである場合には、当該抽選に当選する、すなわち特別先読み予告を実行する確率が高くなるように設定しても良い。特別先読み予告の実行態様については後述する。
【0202】
そして、特別先読み予告実行抽選の結果に基づき、特別先読み予告を実行するか否かを判定する(ステップB107)。
ここで、特別先読み予告を実行しないと判定された場合(ステップB107;No)は、始動口入賞演出図柄コマンドから当該始動記憶の図柄情報を取得し(ステップB108)、当該図柄情報に基づき特図変動表示ゲームの結果がはずれであるか否かを判定する(ステップB109)。
【0203】
ステップB109で、特図変動表示ゲームの結果がはずれであると判定された場合(ステップB109;Yes)は、先読み予告態様を振り分けるための先読み予告振分テーブル1(図32(a)参照)をセットする(ステップB110)。一方、特図変動表示ゲームの結果がはずれでないと判定された場合(ステップB109;No)は、先読み予告振分テーブル2(図32(b)参照)をセットする(ステップB111)。なお、先読み予告振分テーブル1及び2内の「先読み予告態様」は、例えば図32(c)のように定義される。
【0204】
その後、始動口入賞演出コマンドから当該始動記憶のリーチ系統情報を取得し(ステップB112)、設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択する(ステップB113)。そして、対象となる始動記憶表示に選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行い(ステップB114)、先読み予告設定処理を終了する。なお、ステップB114で、選択された先読み予告態様が「変化なし」の場合は、先読み予告態様の設定は行わない。
・・・
【0206】
次に、上述した特別先読み予告の実行態様について図33を用いて説明する。
図33(a)は、通常の先読み予告態様を示す図であり、同図(b)は、特別先読み予告の実行態様を示す図である。また、図33(c)は、特別先読み予告がなされた始動記憶に基づく特図変動表示ゲームが実行されたときの態様を示す図である。
【0207】
図33(a)に示すように、通常の先読み予告(例えばSPリーチ3発生の予告)が実行されたときは、対象となる始動記憶(消化順序が3番目の始動記憶)の表示色を、例えば期待度が高いことを示唆する赤色(図32(c)参照)に設定して表示する(ステップB114;図31参照)。なお、このとき視認状態変換部材は視認不可能状態にあり、視認窓部16からは装飾図柄Dを視認できないようになっている。
【0208】
一方、図33(b)に示すように、特別先読み予告(例えばSPリーチ3発生の予告)が実行されたときは、視認状態変換部材を視認可能状態とし、視認窓部16から装飾図柄(例えばトラのキャラクタ)Dが視認できるようにする。また、対象となる始動記憶(消化順序が3番目の始動記憶)の表示態様を、例えば装飾図柄Dと同一のトラのキャラクタ図柄に設定して表示する(ステップB116;図31参照)。」

(1-h) 「【0214】
また、第1実施形態の遊技機10によれば、識別情報を変動表示する特図変動表示ゲームと、該特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出と、を表示可能な表示装置41と、遊技領域32内に設けられ、特図変動表示ゲームに関連する予告演出を行う演出装置と、特図変動表示ゲームにおける表示演出及び演出装置による予告演出を制御する演出制御手段(演出制御装置300)と、を備え、表示手段(装飾図柄D、可動役物装置90)は、遊技領域32外に設けられるとともに、演出制御手段に制御される特図変動表示ゲームの表示演出又は演出装置による予告演出に関連する内容を表示するものとしたこととなる。」

(1-i) 「【0222】
また、第1実施形態の遊技機10によれば、始動入賞領域(特図始動口36、普通変動入賞装置37)への遊技球の入賞に基づき、特図変動表示ゲームの実行に関連する乱数を抽出し該特図変動表示ゲームの実行権利となる始動記憶として所定数を上限に記憶する始動入賞記憶手段(遊技制御装置100)と、始動入賞記憶手段に始動記憶として記憶されている乱数から、該始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの実行情報を該特図変動表示ゲームが実行されるよりも前に判定する事前判定手段(遊技制御装置100)と、を備え、表示手段(装飾図柄D、可動役物91)及び視認窓部16は遊技機上部に設けられ、変換制御手段(演出制御装置300)は、事前判定手段の判定結果に応じて、視認状態変換手段(視認状態変換部材)を視認不可能状態から視認可能状態に変換したこととなる。」

(1-j) 「【0226】
また、第1実施形態の遊技機10によれば、始動入賞記憶手段(遊技制御装置100)に記憶されている始動記憶に対応する始動記憶情報を表示装置41に表示する始動記憶表示制御手段(演出制御装置300)を備え、始動記憶表示制御手段は、事前判定手段(遊技制御装置100)によって、特定の表示演出が実行されると判定された場合に、当該判定がなされた始動記憶に対応する始動記憶情報を特定の表示演出において表示される表示形態の少なくとも一部と同様の表示形態で表示装置41に表示可能としたこととなる。」

上記(1-a)?(1-j)の記載事項から、以下(1-k)?(1-s)の事項が導かれる。

(1-k)上記記載事項(1-d)には、「始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき始動入賞(始動記憶)を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値を抽出してROM111Bに記憶されている判定値と比較し、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行う。」(段落【0127】)と記載されているから、始動記憶は大当り判定用乱数値を含むといえる。
また、上記記載事項(1-d)より、「遊技制御装置100の遊技用マイコン111のCPU111Aでは」(段落【0126】)、「始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき始動入賞(始動記憶)を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの大当り判定用乱数値を抽出してROM111Bに記憶されている判定値と比較し、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行」(段落【0127】)い、「遊技制御装置100のCPU111Aは、特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は」、「特別遊技状態を発生させる処理を行う」(段落【0129】)から、刊行物1には、始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき大当り判定用乱数値を含む始動記憶を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行い、特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、特別遊技状態を発生させる処理を行う機能を有する遊技制御装置100が記載されているといえる。

(1-l)上記記載事項(1-d)より、「遊技制御装置100のCPU111Aは」、「判定結果を含む制御信号(演出制御コマンド)を、演出制御装置300に出力する。そして、特図1表示器51や特図2表示器52に、識別図柄を所定時間変動表示した後、停止表示する特図変動表示ゲームを表示する処理を行う」(段落【0128】)ものであり、また、上記記載事項(1-b)より、「第1特図表示器51と第2特図表示器52における特図変動表示ゲームは」、「ゲームの結果が「はずれ」のときは、はずれの結果態様として例えば中央のセグメントを点灯状態にし、ゲームの結果が「大当り」のときは、当りの結果態様(特別結果態様)としてはずれの結果態様以外の結果態様(例えば「3」や「7」の数字等)を点灯状態にしてゲーム結果を表示する」(段落【0042】)ものであり、さらに、「ゲームの結果」は、上記記載事項(1-d)の「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理」(段落【0127】)により判定された結果であることは明らかであるから、刊行物1には、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理の結果に基づいて、特図1表示器51に、識別図柄を所定時間変動表示した後、第1特図変動表示ゲームの当たり又ははずれの結果態様で停止表示する特図変動表示ゲームを表示する処理を行う機能を有する遊技制御装置100が記載されているといえる。

(1-m)上記記載事項(1-e)より、「遊技制御装置100の遊技用マイコン111は」、「始動口スイッチ監視処理(ステップA1)を行」い、「始動口スイッチ監視処理では、始動入賞口36、第2始動入賞口をなす普通変動入賞装置37に遊技球の入賞があると」、「当該入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行」(段落【0152】)い、また、上記記載事項(1-f)より、「設定された変動パターンの前半変動番号に対応する始動口入賞演出コマンド(MODE)を算出して準備する(ステップA245)とともに、後半変動番号の値を始動口入賞演出コマンド(ACTION)として準備し(ステップA246)、コマンド設定処理(ステップA247)を行う」(段落【0182】)から、刊行物1には、始動入賞口36に遊技球の入賞があると、当該入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行い、始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンドを設定する機能を有する遊技制御装置100が記載されているといえる。

(1-n)上記記載事項(1-h)には、「該特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出と、を表示可能な表示装置41」及び「特図変動表示ゲームにおける表示演出及び演出装置による予告演出を制御する演出制御手段(演出制御装置300)」(段落【0214】)との記載があるから、刊行物1には、特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出の表示装置41への表示を制御する演出制御装置300が記載されているといえる。

(1-o)上記記載事項(1-j)には、「始動入賞記憶手段(遊技制御装置100)に記憶されている始動記憶に対応する始動記憶情報を表示装置41に表示する始動記憶表示制御手段(演出制御装置300)」(段落【0226】)と記載され、また、上記記載事項(1-i)には、「該特図変動表示ゲームの実行権利となる始動記憶として所定数を上限に記憶する始動入賞記憶手段(遊技制御装置100)」(段落【0222】)と記載されており、さらに、上記認定事項(1-k)より始動記憶は、大当り判定用乱数値を含むといえるから、刊行物1には、演出制御装置300は、変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を表示装置41に表示する機能を備える点が記載されているといえる。

(1-p)上記記載事項(1-g)より、刊行物1には、「演出制御装置300での制御」(段落【0183】)において行う「事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づく処理を行う先読み予告設定処理」(段落【0197】)に関して、「対象となる始動記憶表示に選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行い」、「選択された先読み予告態様が「変化なし」の場合は、先読み予告態様の設定は行わない」(段落【0204】)、「通常の先読み予告(例えばSPリーチ3発生の予告)が実行されたときは、対象となる始動記憶(消化順序が3番目の始動記憶)の表示色を、例えば期待度が高いことを示唆する赤色(図32(c)参照)に設定して表示する」(段落【0207】)、及び、「特別先読み予告(例えばSPリーチ3発生の予告)が実行されたときは」、「対象となる始動記憶(消化順序が3番目の始動記憶)の表示態様を、例えば装飾図柄Dと同一のトラのキャラクタ図柄に設定して表示する」(段落【0208】)と記載されているから、刊行物1には、演出制御装置300は、事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づき、対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するときと、対象となる始動記憶の表示色を期待度が高いことを示唆する色に設定して表示する通常の先読み予告を実行するときと、対象となる始動記憶の表示態様を、トラのキャラクタ図柄に設定して表示する特別先読み予告を実行するときと、がある点が記載されているといえる。

(1-q)上記認定事項(1-p)より、対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するときと、対象となる始動記憶の表示色を期待度が高いことを示唆する色に設定して表示する通常の先読み予告を実行するときと、対象となる始動記憶の表示態様を、トラのキャラクタ図柄に設定して表示する特別先読み予告を実行するときとがあるから、上記認定事項(1-o)より、刊行物1には、演出制御装置300は、変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を、先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として表示装置41に表示する機能を備える点が記載されているといえる。

(1-r)上記記載事項(1-g)には、「特図変動表示ゲームの結果がはずれであると判定された場合(ステップB109;Yes)は、先読み予告態様を振り分けるための先読み予告振分テーブル1(図32(a)参照)をセットする(ステップB110)。一方、特図変動表示ゲームの結果がはずれでないと判定された場合(ステップB109;No)は、先読み予告振分テーブル2(図32(b)参照)をセットする(ステップB111)。なお、先読み予告振分テーブル1及び2内の「先読み予告態様」は、例えば図32(c)のように定義される。」(段落【0203】)と記載されている。
また、「通常の先読み予告(例えばSPリーチ3発生の予告)が実行されたときは、対象となる始動記憶(消化順序が3番目の始動記憶)の表示色を、例えば期待度が高いことを示唆する赤色(図32(c)参照)に設定して表示する」(段落【0207】)及び「選択された先読み予告態様が「変化なし」の場合は、先読み予告態様の設定は行わない」(段落【0204】)との記載より、図32(a)(b)(c)は、通常の先読み予告における始動記憶の表示色を示すものであり、図32(a)(b)において「変化なし」が選択されたときは、先読み予告態様の設定は行わないときであるといえる。
そして、図32(a)(b)には、リーチ系統情報がSP3の場合、大当たりの場合(図32(b))は変化なしが50%に対して、はずれの場合(図32(a))は変化なしが70%と高く、リーチ系統情報がSP2の場合、大当たりの場合(図32(b))は変化なしが40%に対して、はずれの場合(図32(a))は変化なしが70%と高く、リーチ系統情報がSP1の場合、大当たりの場合(図32(b))は変化なしが60%に対して、はずれの場合(図32(a))は変化なしが70%と高く、リーチ系統情報がNリーチの場合、大当たりの場合(図32(b))は変化なしが90%に対して、はずれの場合(図32(a))は変化なしが98%と高いから、はずれの場合は、変化なしが選択されることが多い、すなわち、通常の先読み予告は、先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高いといえる。
また、上記記載事項(1-g)には、「SPリーチ3に関するものであると判定された場合(ステップB105;Yes)は、特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行う」及び「特別先読み予告実行抽選において、当該抽選の対象である始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの結果が大当りである場合には、当該抽選に当選する、すなわち特別先読み予告を実行する確率が高くなるように設定しても良い。」(段落【0201】)と記載されているから、特別先読み予告は、SPリーチ3となる場合においてのみ実行され、さらに、特図変動表示ゲームの結果が大当りである場合には実行する確率が高くなるように設定されるものであり、また、上記記載事項(1-c)の「なお、信頼度は、リーチなし<ノーマルリーチ<スペシャル1リーチ<スペシャル2リーチ<スペシャル3リーチ<プレミアリーチの順に高くなるようになっている。」(段落【0098】)との記載より、SPリーチ3は、通常の先読み予告が実行される図32(a)(b)に記載されたリーチの中で最も大当たりの確率が高いものであるから、刊行物1に記載の特別先読み予告は、通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高いものであることは、明らかである。
したがって、刊行物1には、通常の先読み予告は、先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高く、特別先読み予告は、通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高い点が記載されているといえる。

(1-s)上記記載事項(1-g)には、「先読み予告設定処理」において、「事前判定コマンドを受信したと判定した場合」(段落【0199】)、「当該リーチ系統情報がスペシャル(SP)リーチ3に関するものか否かを判定」(段落【0200】)し、「SPリーチ3に関するものであると判定された場合(ステップB105;Yes)は、特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行」(段落【0201】)い、「特別先読み予告実行抽選の結果に基づき、特別先読み予告を実行するか否かを判定」し、「特別先読み予告を実行しないと判定された場合」(段落【0202】)、「設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択」し、「対象となる始動記憶表示に選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行」(段落【0204】)う点が記載されているから、刊行物1には、事前判定コマンドを受信したと判定した場合、始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行い、特別先読み予告実行抽選の結果に基づき特別先読み予告を実行しないと判定された場合、設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から通常の先読み予告態様を選択し、選択された通常の先読み予告態様の表示がなされる設定を行う点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び(1-k)?(1-s)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。(a?hは、本願発明のA?Hに対応させて付した。)

「a 始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき大当り判定用乱数値を含む始動記憶を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行い、特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、特別遊技状態を発生させる処理を行う機能と、(認定事項(1-k))
b 第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理の結果に基づいて、特図1表示器51に、識別図柄を所定時間変動表示した後、第1特図変動表示ゲームの当たり又ははずれの結果態様で停止表示する特図変動表示ゲームを表示する処理を行う機能と、(認定事項(1-l))
c 始動入賞口36に遊技球の入賞があると、当該入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行い、始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンドを設定する機能と、
を有する遊技制御装置100と、(認定事項(1-m))
d 特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出の表示装置41への表示を制御する演出制御装置300と、を備え、(認定事項(1-n))
e 演出制御装置300は、
変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を、先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として表示装置41に表示する機能を備え、(認定事項(1-q))
fg 事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づき、対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するときと、対象となる始動記憶の表示色を期待度が高いことを示唆する色に設定して表示する通常の先読み予告を実行するときと、対象となる始動記憶の表示態様を、トラのキャラクタ図柄に設定して表示する特別先読み予告を実行するときと、があり、通常の先読み予告は、先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高く、特別先読み予告は、通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高く、(認定事項(1-p)、認定事項(1-r))
h 事前判定コマンドを受信したと判定した場合、始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行い、特別先読み予告実行抽選の結果に基づき特別先読み予告を実行しないと判定された場合、設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から通常の先読み予告態様を選択し、選択された通常の先読み予告態様の表示がなされる設定を行う、(認定事項(1-s))
遊技機10。(段落【0027】)」

5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(h)は、刊行物1発明の構成に対応している。)。

(a)刊行物1発明において、「始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力」があることは、本願発明の「始動条件の成立」に相当する。また、刊行物1発明において、「特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、特別遊技状態を発生させる処理」が行われるから、刊行物1発明の「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理」は、本願発明の「特別遊技を行うか否かの特別遊技判定」に相当する。
したがって、刊行物1発明における「始動入賞口36に備えられた始動口1スイッチ36aからの遊技球の検出信号の入力に基づき大当り判定用乱数値を含む始動記憶を記憶し、この始動記憶に基づき、第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理を行い、特図変動表示ゲームの結果が当りの場合は、特別遊技状態を発生させる処理を行う機能」を有する「遊技制御装置100」は、本願発明における「始動条件の成立により特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段」としての機能を有するといえる。

(b)刊行物1発明の「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理の結果」、「特図1表示器51」、「識別図柄」、「変動表示」及び「停止表示」は、それぞれ本願発明の「前記特別遊技判定の結果」、「図柄表示手段」、「図柄」、「変動表示」、及び、「停止表示」に相当する。
したがって、刊行物1発明における「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理の結果に基づいて、特図1表示器51に、識別図柄を所定時間変動表示した後、第1特図変動表示ゲームの当たり又ははずれの結果態様で停止表示する特図変動表示ゲームを表示する処理を行う機能」を有する「遊技制御装置100」は、本願発明における「前記特別遊技判定の結果に基づいて、図柄を図柄表示手段にて変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段」としての機能を有するといえる。

(c)刊行物1発明の「入賞に基づく遊技結果」の「事前」の「判定」は、本願発明の「前記特別遊技を行うか否かの事前判定」に相当する。また、刊行物1発明において、「遊技結果事前判定」は、「特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定」するものであるから、「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理」の前に行われることは、当業者にとって自明である。
したがって、刊行物1発明における「始動入賞口36に遊技球の入賞があると、当該入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前の段階で入賞に基づく遊技結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行い、始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンドを設定する機能」を有する「遊技制御装置100」は、本願発明における「前記特別遊技判定が行われる前に前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段」としての機能を有するといえる。

(d)刊行物1発明の「特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出」は、本願発明の「前記図柄が変動表示されているとき」に行われる「演出」に相当する。
したがって、刊行物1発明における「特図変動表示ゲームの進行に関連する表示演出の表示装置41への表示を制御する演出制御装置300」は、本願発明における「前記図柄が変動表示されているときに演出を行う演出制御手段」に相当する。

(e)刊行物1発明において、「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶」における「変動表示ゲーム」は、まだ実行されておらず、保留されているものであることは明らかである。また、刊行物1発明において、「変動表示ゲーム」は、「大当たり乱数を含む始動記憶」に基づき「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する処理」(構成a)が行われるものであるから、「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶」は、「第1特図変動表示ゲームの当り外れを判定する」権利が保留されていることを示すものといえる。そして、刊行物1発明における「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報」として表示される「先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄」は、本願発明の「前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄」に相当する。また、「表示装置41」における「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報」が「先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として」表示される部分は、本願発明における「保留表示手段」に相当する。
また、刊行物1発明における「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を、先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として表示装置41に表示する」演出は、本願発明における「前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出」に相当し、刊行物1発明における「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を、先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として表示装置41に表示する」「演出制御装置300」は、当該演出を実行可能であるといえる。
したがって、刊行物1発明における、「演出制御装置300は」、「変動表示ゲームの実行権利となる大当たり乱数を含む始動記憶に対応する始動記憶情報を、先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様、期待度が高いことを示唆する色に設定した態様、または、トラのキャラクタ図柄として表示装置41に表示する機能を備え」ることは、本願発明における、「前記演出制御手段は」、「前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出を実行可能であ」ることに相当する。

(f)刊行物1発明において、「対象となる始動記憶」の「表示」が、当該「始動記憶」に関する「特図変動表示ゲーム」が行われるまで、複数回の変動表示にわたって実行されることは、当業者にとって自明である。また、構成cより、「始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド」は、「遊技結果事前判定」を行い設定されるものであるから、刊行物1発明の「事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づき」実行するときがある「対象となる始動記憶の表示色を期待度が高いことを示唆する色に設定して表示する通常の先読み予告」及び「対象となる始動記憶の表示態様を、トラのキャラクタ図柄に設定して表示する特別先読み予告」は、本願発明の「前記事前判定の結果に基づいて、複数回の前記図柄の変動表示に渡って実行される事前判定演出」と、事前判定の結果に基づいて、複数回の図柄の変動表示に渡って実行される先読み演出である点で共通する。また、刊行物1発明の「対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するとき」の演出は、通常の演出であるといえる。
さらに、刊行物1発明の「通常の先読み予告」は、「先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高」いから、「対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するとき」よりも大当たりの期待度が高いことを示唆する第1の先読み演出といえ、刊行物1発明の「特別先読み予告」は、「通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高」いから、「通常の先読み予告」を行う演出よりも大当たりの期待度が更に高いことを示唆する第2の先読み演出といえる。
したがって、刊行物1発明において、「事前判定コマンド(始動口入賞演出コマンド、入賞演出図柄コマンド)に基づき、対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するときと、対象となる始動記憶の表示色を期待度が高いことを示唆する色に設定して表示する通常の先読み予告を実行するときと、対象となる始動記憶の表示態様を、トラのキャラクタ図柄に設定して表示する特別先読み予告を実行するときと、があり、通常の先読み予告は、先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高く、特別先読み予告は、通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高」いことは、本願発明の構成Fと、所定の通常の演出を行うときと、事前判定の結果に基づいて、複数回の図柄の変動表示に渡って実行される先読み演出であって、通常の演出よりも特別遊技への期待度が高いことを示唆する第1の先読み演出及び第1の先読み演出よりも期待度が更に高いことを示唆する第2の先読み演出のいずれかを実行するときとがある点で共通する。

(g)刊行物1発明において、「通常の先読み予告は、先読み予告を行わないときよりも大当たりのときの選択率が高く、特別先読み予告は、通常の先読み予告よりも大当たりのときの選択率がさらに高」いことは、本願発明の構成Gと、特別遊技が行われる確率が、第1の先読み演出が実行されたときの方が通常の演出が実行されたときよりも高くなるよう、且つ、第2の先読み演出が実行されたときの方が第1の先読み演出が実行されたときよりも更に高くなるようにしている点で共通する。

(h)刊行物1発明の「始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選」及び「設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択し、選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行う」ことは、上記(f)、(g)によると、それぞれ、第2の先読み演出の実行是非の判定、及び、第1の先読み演出の実行是非の判定といえる。また、刊行物1発明の「始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選」及び「設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択し、選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行う」ことは、「事前判定コマンドを受信したと判定した場合」に行われ、また、「始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報」を用いているから、「遊技結果事前判定」の結果に基づいた判定であるといえる。
また、刊行物1発明は、「特別先読み予告を実行しないと判定された場合、設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択し、選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行う」から、「始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選」を「設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択し、選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行う」よりも先に行うといえる。
したがって、刊行物1発明において、「事前判定コマンドを受信したと判定した場合、始動口入賞演出コマンドから取得したリーチ系統情報がSPリーチ3に関するものか否かの判定及び特別先読み予告を実行するか否かを決定するための特別先読み予告実行抽選を行い、特別先読み予告を実行しないと判定された場合、設定した先読み予告振分テーブル及びリーチ系統情報から先読み予告態様を選択し、選択された先読み予告態様の表示がなされる設定を行う」ことは、本願発明の構成Hと、事前判定の結果に基づいた第1の先読み演出の実行是非の判定と第2の先読み演出の実行是非の判定の内、第2の先読み演出の実行是非の判定を先に行う点で共通する。
また、刊行物1発明の「遊技機10」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

以上、(a)?(h)の対比より、本願発明と刊行物1発明とは、

「A 始動条件の成立により特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
B 前記特別遊技判定の結果に基づいて、図柄を図柄表示手段にて変動表示させてから停止表示させる図柄表示制御手段と、
C 前記特別遊技判定が行われる前に前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
D 前記図柄が変動表示されているときに演出を行う演出制御手段と、を備え、
E 前記演出制御手段は、
前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出を実行可能であり、
F’所定の通常の演出を行うときと、前記事前判定の結果に基づいて、複数回の前記図柄の変動表示に渡って実行される先読み演出であって、前記通常の演出よりも前記特別遊技への期待度が高いことを示唆する第1の先読み演出及び前記第1の先読み演出よりも前記期待度が更に高いことを示唆する第2の先読み演出のいずれかを実行するときと、があり、
G’前記特別遊技が行われる確率が、前記第1の先読み演出が実行されたときの方が前記通常の演出が実行されたときよりも高くなるよう、且つ、前記第2の先読み演出が実行されたときの方が前記第1の先読み演出が実行されたときよりも更に高くなるようにし、
H’前記事前判定の結果に基づいた前記第1の先読み演出の実行是非の判定と前記第2の先読み演出の実行是非の判定の内、前記第2の先読み演出の実行是非の判定を先に行う
遊技機。」

である点で一致し、構成F?Hに関して次の点で相違する。

(相違点)「通常演出」、「第1の事前判定演出」、「第2の事前判定演出」に関して、本願発明では、「前記通常演出、前記第1の事前判定演出及び前記第2の事前判定演出の夫々は前記保留表示演出とは異なる演出」であると特定されており(構成F)、「演出制御手段」は「前記特別遊技判定の権利が保留されていることを示す保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出」(構成E)に加えて「通常演出」、「第1の事前判定演出」及び「第2の事前判定演出」のいずれかを実行するときがあるのに対し、刊行物1発明では、「対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するとき」、「通常の先読み予告」、及び「特別先読み予告」と特定されているとともに、これらの先読み予告は保留表示演出とは異なる演出ではなく、刊行物1発明の「演出制御装置300」は保留表示演出のみを実行可能である点。

6 判断
上記相違点について検討する。
予告保留表示演出とは異なる事前判定演出を行う遊技機において、通常演出、期待度の異なる第1の事前判定演出又は第2の事前判定演出を行うことは、周知技術にすぎない(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2012-152335号公報(特に、段落【0044】、【0099】、【0103】、図3参照)には、キャラクタ画像KAを画面中央に表示させる内容パターンPAによる連続演出、内容パターンPAと比較して大当たりの期待度を高くしたキャラクタ画像KBを画面中央に表示させる内容パターンPBによる連続演出、あるいは、連続演出を実行しない内容パターンPNによる演出を行う点が記載されている。また、特開2014-18433号公報(特に、段落【0357】、【0358】、【0380】、【0383】、【0398】参照)には、背景画像を切り換える演出であり、大当たり当選の期待度が対応付けられた複数の先読み演出モードによる変動演出を行う、あるいは、先読み演出モードではない演出モードによる変動演出を行う点が記載されている。)。
そして、刊行物1発明と上記周知技術1とは、通常の演出、複数回の図柄の変動表示に渡って実行され、期待度の異なる第1の先読み予告、または、第2の先読み予告を行うときがある遊技機に関する点で共通するものである。
さらに、遊技機の技術分野において、保留図柄を保留表示手段に表示させる保留表示演出に加えて、保留表示演出とは異なる演出である事前判定演出を行うことは、本願出願前における周知技術にすぎない(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2013-48719号公報(特に、段落【0091】、図4参照)には、保留の色変化を行う連続予告演出に加えて、画面360内に稲妻の予告画像362を出現させる連続予告演出を行う点が記載されている。また、特許第5544558号公報(特に、段落【0263】?【0265】、図18参照)には、保留3の始動情報に基づく先読み予告による保留表示293の表示に加えて、保留2の始動情報に基づく先読み予告による殿ゾーンと表示された背景画像の表示を行う点が記載されている。)ことから、刊行物1発明における「保留表示演出」に加えて、事前判定演出を行うことについての動機付けは十分にある。
これらのことを勘案すれば、刊行物1発明において、保留表示演出に加えて、「対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するとき」、「通常の先読み予告」、及び「特別先読み予告」の演出に、上記周知技術1を適用し、保留表示演出とは別に設けた異なる演出である通常演出、第1の事前判定演出、及び、第2の事前判定演出とすることは当業者が容易に想到し得たことである。また、その際に、事前判定演出においても、刊行物1発明における「対象となる始動記憶を先読み予告態様の設定は行わない「変化なし」態様で表示するとき」、「通常の先読み予告」、及び「特別先読み予告」を行う保留表示演出と同様に、特別遊技が行われる確率が、第1の事前判定演出が実行されたときの方が通常演出が実行されたときよりも高くなるよう、且つ、第2の事前判定演出が実行されたときの方が第1の事前判定演出が実行されたときよりも更に高くなるようにすると共に、事前判定の結果に基づいた第1の事前判定演出の実行是非の判定よりも第2の事前判定演出の実行是非の判定を先に行うようにし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

また、上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明及び上記周知技術1、2から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

なお、平成29年8月9日付けの意見書において、請求人は、「・そして、補正後の本願請求項1では、“前記通常演出、前記第1の事前判定演出及び前記第2の事前判定演出の夫々は前記保留表示演出とは異なる演出であり”と限定されていますので、拒絶理由通知書に示されたような対応付けは、もはや成立しません。・・・本願請求項1に係る遊技機では、刊行物1に示されたような既存の保留表示演出とは別に、特徴FTにて規定された特性にて、通常演出、第1の事前判定演出、第2の事前判定演出を実行可能となっています。・このため、保留表示演出とは別の事前判定演出にて特別遊技への期待感を煽ることができ、以って遊技の興趣向上が図られます。保留表示演出と事前判定演出とで、特別遊技への期待感を重畳的に煽ることも可能となります。」(第4頁第15?37行)との主張をしているが、上記の通り、保留表示演出とは異なる演出である事前判定演出として、通常演出、第1の事前判定演出、第2の事前判定演出を実行可能とすることは、周知技術に過ぎず(上記周知技術1)、上記保留表示演出とは別の事前判定演出にて特別遊技への期待感を煽るとの効果は、上記の通り刊行物1発明に周知技術1を適用した際に当然に発揮し得る効果であるし、また、当該効果は、上記周知技術2によっても達成し得る効果であって格別なものではないから、請求人の上記主張は採用できない。

よって、本願発明は当業者が刊行物1発明及び周知技術1、2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-07 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2014-205481(P2014-205481)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤澤 和浩  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 萩田 裕介
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  

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