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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1334286
審判番号 不服2016-10206  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-06 
確定日 2017-11-10 
事件の表示 特願2014-544279「通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日国際公開、WO2013/137420、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-510284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、2013年(平成25年)3月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月16日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成27年7月28日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年10月2日付けで手続補正がされたが、平成28年3月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年7月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成28年7月6日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年7月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願請求項1
平成28年7月6日付け手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを前記LTEネットワークから受信する手段と、
前記受信した前記パラメーターセットを格納する手段と、
該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段と、
前記LTEネットワークから前記選択されたパラメーターセットが対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記選択されたパラメーターセットを用いて、通信を行う手段と、
を備える、移動通信デバイス。」(下線は、手続補正書に記載のとおり。)

2 補正前の本願請求項1
本件補正前である拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1(平成27年10月2日付け手続補正書)は、以下のとおりである。
「 【請求項1】
LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークに対するパラメーターセットを受信する手段と、
該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段と、
前記LTEネットワークから前記選択されたパラメーターセットが対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記選択されたパラメーターセットを用いる手段と、
を備える、移動通信デバイス。」

3 新規事項
本件補正後の請求項1に記載された「前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを前記LTEネットワークから受信する手段」(下線は当審により付与。)との発明特定事項について検討する。
ここで、「各CDMAネットワークに対応するパラメータセット」とは、外国語書面の翻訳文(以下、「当初明細書など」という。)の段落0039に記載された事業者Aのモビリティパラメータ「MP_A」、事業者Bのモビリティパラメータ「MP_B」に対応する発明特定事項と考えられる。
そして、当初明細書などの段落0040には、「パラメーターは、事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され」と、また段落0048には、「LTE eNB3は、2つのモビリティパラメーターセットMP_A及びMP_Bを事業者A及びBのそれぞれから、LTEコアネットワーク2を介して受信する。」と記載されているが、複数のCDMAネットワークで各CDMAネットワークに対するパラメーターセットが生成されたとする事項が記載も示唆もされているとはいえない。
また、当初明細書などの段落0052には、
「 LTE基地局3が共有C2K事業者を認識する代わりに、更なる代替では、LTE基地局3は、共有C2K事業者の存在を認識していなくてもよい。この場合、CDMA基地局6、7は、それらのモビリティパラメーターをトランスペアレントコンテナで電話8に送信することができる。これは、LTE基地局3が単に、受信情報を、その内容を知らずに電話8に転送することを意味する。これは、CDMA基地局6、7からCDMAネットワーク4、5、LTEネットワーク2、及びLTE基地局3を介して移動電話8に送信される既存のメッセージを拡張することによって達成することができる。拡張可能なメッセージの一例は、A21 1xparametersメッセージ(この詳細は、A.S0009-C v4.0第5.1.8.3章に見出すことができ、この内容は引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)であり、これは、CDMA基地局によって生成され、コアネットワークを介して移動電話8に向けて送信される。」(下線は当審にて付与。)と、モビリティパラメーターを送信するための拡張可能なメッセージがCDMA基地局によって生成される事項が記載されているが、複数のCDMAネットワークで各CDMAネットワークに対するパラメータセット自体が生成されたとする事項が記載されているとも、示唆されているともいえない。
したがって、本件補正後の請求項1に記載された発明特定事項は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

4 補正の目的の適否
上述のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、さらに補正の目的の適否について検討を進める。
請求人は審判請求書において補正の目的について言及していないが、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された事項に対して、「受信したパラメーターセットを格納する手段」という新たな発明を特定するために必要な事項を付加する補正であり、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定する補正とはいえないから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する補正とはいえない。
また、前記「受信したパラメーターセットを格納する手段」との事項は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2ないし25にも記載されていないから、本件補正は、請求項の削除を目的とした補正ともいえず、また、本件補正が、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものではないことは明らかである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

5 独立特許要件
上述のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定、及び、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが、さらに進めて、本件補正後の請求項1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1) サポート要件
上記「3 新規事項」で検討した、本件補正後の請求項1に記載された「前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを前記LTEネットワークから受信する手段」(下線は当審により付与。)との発明特定事項について検討する。
ここで、「各CDMAネットワークに対応するパラメータセット」とは、発明の詳細な説明の段落0039に記載された事業者Aのモビリティパラメータ「MP_A」、事業者Bのモビリティパラメータ「MP_B」に対応する発明特定事項と考えられる。
そして、発明の詳細な説明の段落0040には、「パラメーターは、事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され」と、また段落0048には、「LTE eNB3は、2つのモビリティパラメーターセットMP_A及びMP_Bを事業者A及びBのそれぞれから、LTEコアネットワーク2を介して受信する。」と記載されているが、複数のCDMAネットワークで各CDMAネットワークに対するパラメーターセットが生成されたとする事項が記載も示唆もされているとはいえない。
また、発明の詳細な説明の段落0052には、
「 LTE基地局3が共有C2K事業者を認識する代わりに、更なる代替では、LTE基地局3は、共有C2K事業者の存在を認識していなくてもよい。この場合、CDMA基地局6、7は、それらのモビリティパラメーターをトランスペアレントコンテナで電話8に送信することができる。これは、LTE基地局3が単に、受信情報を、その内容を知らずに電話8に転送することを意味する。これは、CDMA基地局6、7からCDMAネットワーク4、5、LTEネットワーク2、及びLTE基地局3を介して移動電話8に送信される既存のメッセージを拡張することによって達成することができる。拡張可能なメッセージの一例は、A21 1xparametersメッセージ(この詳細は、A.S0009-C v4.0第5.1.8.3章に見出すことができ、この内容は引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)であり、これは、CDMA基地局によって生成され、コアネットワークを介して移動電話8に向けて送信される。」(下線は当審にて付与。)と、モビリティパラメーターを送信するための拡張可能なメッセージがCDMA基地局によって生成される事項が記載されているが、複数のCDMAネットワークで各CDMAネットワークに対するパラメータセット自体が生成されたとする事項が記載されているとも、示唆されているともいえない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2) 明確性
本件補正後の請求項1に記載された「前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを前記LTEネットワークから受信する手段」(下線は当審にて付与。)との記載において、下線が付された方の「前記LTEネットワークから、」が何を修飾しているのか明らかでないから、本件補正後の請求項1に係る発明は明確とはいえない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3) 進歩性
ア 本願補正発明
上記「(1)サポート要件」及び「(2)明確性」で検討したとおり、本件補正後の請求項1に記載された「前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセット」との発明特定事項は、発明の詳細な説明に記載されておらず、明確ともいえないが、本件補正後の請求項1に記載された「前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークで生成された各CDMAネットワークに対するパラメーターセット」を、明細書の段落0037の
「【0037】
LTEネットワークは、パケット交換データ通信のみを可能にし、回線交換音声通話をサポートしないため、移動電話8(又は別のユーザー端末)のユーザーがLTEネットワークで音声通話を行いたい場合、電話は、LTEネットワークと一緒に存在し、音声通話をサポートする、CDMAネットワーク等の代替のネットワークに「フォールバック」する。図1に示されるシステム例では、2つのCDMAコアネットワーク4、5は、LTEコアネットワーク2と一緒に存在し、CDMAコアネットワーク4は事業者Aによって提供され、CDMAコアネットワーク5は事業者Bによって提供される。図1は、事業者Aによって提供されるCDMA基地局6と、事業者Bによって提供されるCDMA基地局7も示す。」(下線は当審にて付与。)との記載、明細書の段落0040の
「【0040】
後述する実施形態は、以下のように、移動電話8(又は他のUE)に、モビリティ目的で必要とされるパラメーターを提供することができる3つの幅広い手法を提供する:
(a)図2に示されるように、パラメーターは、事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3は、どの事業者のモビリティパラメーターを移動電話8に送信するかを選択し、
(b)図4に示されるように、パラメーターは、事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3は、両事業者のモビリティパラメーターを移動電話8に送信し、次に、移動電話8がどれを用いるかを選択し、又は
(c)図6に示されるように、パラメーターは、O&M(運営及び管理)ノード10によって選択され、LTEコアネットワーク2及びLTE基地局3を介して移動電話8に送信される。
」(下線は当審にて付与。)との記載、及び段落0048の
「【0048】
[手法(b)・・・LTE eNBが両事業者のモビリティパラメーターを移動電話に送信し、次に、移動電話がどれを用いるかを選択する]
図4は、移動電話8がどの事業者に関連付けられているかをLTE eNB基地局3が知らない通信システム1を示す。この例では、LTE基地局3は、基地局3を共有するC2K事業者を認識しており、両事業者のパラメーターを、選択のために電話8に送信する。前の手法と同様に、このシステムでは、LTE eNB3は2つのモビリティパラメーターセットMP_A及びMP_Bを事業者A及びBのそれぞれから、LTEコアネットワーク2を介して受信する。湾曲した矢印を用いて示されるように、パラメーターMP_Aは、事業者AのCDMA基地局6から事業者AのCDMAコアネットワーク4を介してLTEコアネットアーク2に提供される。パラメーターMP_Bは、事業者BのCDMA基地局7から事業者BのCDMAコアネットワーク5を介してLTEコアネットワーク2に提供される。当業者は理解するように、パラメーターMP_A及びMP_Bは、CDMAコアネットワーク4及び5とLTEコアネットワーク2との間の他の中間ノードを介してルーティングすることもでき、又はそのような中間ノードによって処理することもできる。」(下線は当審にて付与。)との記載に基づいて、「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され」、eNB3により「LTEコアネットワーク2を介して受信」された各CDMAネットワークに対するパラメータセットを意味するものとして請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)を下記のとおり認定して進歩性について検討する。
「 【請求項1】
LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された各CDMAネットワークに対するパラメータセットを前記LTEネットワークから受信する手段と、
前記受信した前記パラメーターセットを格納する手段と、
該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段と、
前記LTEネットワークから前記選択されたパラメーターセットが対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記選択されたパラメーターセットを用いて、通信を行う手段と、
を備える、移動通信デバイス。」(下線は、当審での解釈を示す。)


イ 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された「Alcatel-Lucent,CDMA interworking in shared LTE networks[online], 3GPP TSG-RAN WG2#77 R2-120620,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_77/Docs/R2-120620.zip>,2012年 2月 6日」(以下、「引用例1」という。)には次の事項が開示されている。(下線は、当審にて付与。)
(ア) 「1 Introduction
SIB8 provides the necessary information for inter-working with CDMA. However, there is only one set of parameters that can be broadcast over SIB8. If the LTE network is shared and the LTE shared operators have different CDMA networks, the single set of parameters broadcast over SIB8 in LTE today cannot reflect the different CDMA parameters of these CDMA networks.
This document looks at the issue on more detail and discusses what parameters need to be duplicated.」(1ページ7ないし12行、当審訳:「1 イントロダクション
SIB8はCDMAとのインターワーキングに必要な情報を提供する。ただし、SIB8でブロードキャストできるパラメーターは1セットだけである。LTEネットワークが共有され、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、今日のLTEにおいてSIB8によりブロードキャストされる単一のパラメータセットは、これらのCDMAネットワークの異なるCDMAパラメーターを反映できない。
この文書では、この問題をより詳細に注目し、どのパラメーターが二重化される必要があるかについてディスカッションする。」)

(イ) 「2 Discussion
In order to cater for different CDMA networks, it would be necessary to support different set of parameters, one for each CDMA operator, over SIB8. This is specially an issue for CDMA (compared to other RATs) because we provide parameters such as HRPD pre-registration required etc. which could be different in different CDMA networks. It is hence proposed that:
Proposal #1: Enhance SIB8 to support inter-working of shared LTE network with different CDMA operators.」(1ページ13ないし19行、当審訳:「2 ディスカッション
異なるCDMAネットワークに対応するため、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをSIB8がサポートする必要がある。異なるCDMAネットワークにおいて異なる可能性のあるHRPD事前登録要求などのパラメーターを提供するため、(他のRATと比較して)CDMAにとって特に問題である。
提案#1:異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークのインターワーキングをサポートするようにSIB8を強化する。」)

(ウ)「2.1 What to duplicate
The set of parameters that needs to be duplicated per CDMA PLMN is examined in this section.

A high level analysis of the SIB8 parameters that could be different between operators that would need duplication is given in the table below.

One obvious approach to avoid duplication of the entire SIB8 information per PLMN would have been to provide only the deltas with the current SIB8 for each PLMN. However, this does not seem possible in some parameters since absence of a field in SIB8 also conveys some information(such as something not supported). With a "delta" signalling, it would not be possible differentiate between the absence value and the original SIB8 value. This aspect is also discussed in the last column in the table. However, there are still some fields that are always the same for all PLMNs that definitely do not need duplication.」(1ページ20ないし30行、当審訳:「2.1 二重化するもの
このセクションでは、CDMA PLMNごとに二重化する必要があるパラメータのセットについて検討される。
二重化が必要となる、事業者間で異なる可能性のあるSIB8パラメータの高レベルの分析が、以下の表に示される。
PLMNごとのSIB8情報全体の二重化を避けるための一つの明白なアプローチは、各PLMNについて現行のSIB8とデルタのみを提供することであった。しかし、SIB8にフィールドが存在しない場合でも、何らかの情報(サポートされていないものなど)を伝達するので、これは一部のパラメータでは不可能と思われる。「デルタ」シグナリングでは、不在値と元のSIB8の値を区別することはできない。この側面については、表の最後の列でも説明する。それでも、すべてのPLMNでフィールドが同じとなり、二重化を必要としないフィールドがいくつかある。」)

(エ)




(表の最初の行についての当審訳:「
フィールド I 事業者間で共通 I コメント I オプショナル/必須(PLMN固有のフィールドがない場合、現行のSIB8の共通の値を使用できるか?)」、
CSFB registration parameters 1xRTTについて(表の6行目)の当審訳:「CSFB登録パラメータ1xRTT I いくつかは共通で、いくつかは共通でない I オペレータごとにフィールド全体を二重化するのは、フィールドの一部が共通するため、無駄である。 I 1x情報が存在する場合は必須である。フィールドが存在しない場合は現行の値を使用できる。)」、
Cell reselection parameters 1x including neighbour cell listについて(表の8行目)の当審訳:「近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1x I 共通でない I しかし、共通の(スーパーセット)リストを使用することができる。 I (空欄)」、「I」は、表の縦の区切りを示す。)

(オ) 「2.2 Handling legacy UEs
When including PLMN specific SIB8 configurations, legacy UEs will only be able read the current SIB8. This implies that the legacy UEs will assume that the current SIB8 corresponds to the CDMA network that is to interwork with.

When the CDMA parameters for the different PLMNs are introduced, we would also need to indicate which CDMA PLMN the Rel-8 SIB8 corresponds to. This brings the notion of a "primary" CDMA network that corresponds to the current SIB8 fields with which legacy UEs will interwork.
Another option would have been to provide values for all PLMNs in new fields and use the current field to provide values targeted for legacy UEs. But it would be difficult to come up with some common values that could be applicable for all CDMA operators that would allow legacy UEs to interwork with the different CDMA PLMNs.

Proposal #3: It sould be possible to assign the current SIB8 parameters to specific CDMA PLMN towards which legacy UEs will inter-work.

It should be noted that this SIB8 extension has no impact on legacy networks that do not support this feature.」(3ページ3ないし17行、当審訳:「2.2 レガシーUEの取扱い
PLMN固有のSIB8構成を含めても、レガシーUEは現行のSIB8のみを読み取ることしかできない。これは、現行のSIB8が、インターワークするCDMAネットワークと対応していると、レガシーUEが想定することを意味する。
異なるPLMNのためのCDMAパラメータが導入されるとき、どのCDMA PLMNがRel-8 SIB8に対応するかを示す必要がある。これは、レガシーUEがインターワーキングする、現行のSIB8フィールドに対応する「プライマリー」CDMAネットワークの概念をもたらす。
別の選択肢は、すべてのPLMNのための値を新たなフィールドで提供し、現行のフィールドでレガシーUEを対象とする値を提供することであっただろう。しかし、レガシーUEが異なるCDMA PLMNとインターワークすることを可能にする、すべてのCDMA事業者に使用可能ないくつかの共通の値を思いつくことは困難であろう。

提案#3:レガシーUEがインターワークする特定のCDMA PLMNに現行のSIB8パラメータを割り当てることが可能でなければならない。

このSIB8の拡張機能が、この特徴をサポートしていないレガシーネットワークに影響しないことは明記されるべきだ。」)

ウ 引用発明
(ア) 上記「イ(ア)」の「SIB8はCDMAとのインターワーキングに必要な情報を提供する。」及び「LTEネットワークが共有され、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、今日のLTEにおいてSIB8によりブロードキャストされる単一のパラメータセットは、これらのCDMAネットワークの異なるCDMAパラメーターを反映できない。」との記載、上記「イ(イ)」の「異なるCDMAネットワークに対応するため、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをSIB8がサポートする必要がある。異なるCDMAネットワークにおいて異なる可能性のあるHRPD事前登録要求などのパラメーターを提供するため、(他のRATと比較して)CDMAにとって特に問題である。
提案#1:異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークのインターワーキングをサポートするようにSIB8を強化する。」との記載、及び上記「イ(ウ)」と上記「イ(エ)」の表の6行目と8行目の、二重化が必要となる、事業者間で異なる可能性のあるSIB8パラメータとしての「CSFB登録パラメータ1xRTT」と「近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1x」との記載から、強化されたSIB8は、異なるCDMAネットワークにおいて異なる可能性のあるHRPD事前登録要求、CSFB登録パラメータ1xRTT、近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1xなどのパラメーターを提供するため、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをサポートし、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークのインターワーキングをサポートする情報といえる。
(イ) 上記「イ(ア)」の「SIB8はCDMAとのインターワーキングに必要な情報を提供する。ただし、SIB8でブロードキャストできるパラメーターは1セットだけである。LTEネットワークが共有され、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、今日のLTEにおいてSIB8によりブロードキャストされる単一のパラメータセットは、これらのCDMAネットワークの異なるCDMAパラメーターを反映できない。」との記載、及び上記「イ(オ)」の「PLMN固有のSIB8構成を含めても、レガシーUEは現行のSIB8のみを読み取ることしかできない。」との記載から、引用例1において、強化されたSIB8に対して、今日の現行のSIB8は、CDMAとのインターワーキングに必要な情報であり、ブロードキャストされ、レガシーUEにより受信され、読み取られる情報といえる。
そして、今日の現行のSIB8に対して、強化されたSIB8は、異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークのインターワーキングをサポートするUE(以下、「非レガシーUE」という。)により読み取られる情報であることは明らかであるから、引用例1には、強化されたSIB8を受信し、読み取る「非レガシーUE」が記載されているのも同然といえる。
(ウ) 上記「イ(ア)」の「ただし、SIB8でブロードキャストできるパラメーターは1セットだけである。LTEネットワークが共有され、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、今日のLTEにおいてSIB8によりブロードキャストされる単一のパラメータセットは、これらのCDMAネットワークの異なるCDMAパラメーターを反映できない。」との記載により、今日の現行のSIB8はLTEにおいてブロードキャストされる情報であり、対する、強化されたSIB8も同様にLTEにおいてブロードキャストされる情報であることは明らかである。
(エ) 上記「イ(ウ)」と上記「イ(エ)」の表の6行目と8行目の、二重化が必要となる、事業者間で異なる可能性のあるSIB8パラメータとしての「CSFB登録パラメータ1xRTT」と「近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1x」は、それぞれ、UEがハンドオーバーを行う際に必要なパラメータであるから、引用例1において強化されたSIB8を受信する「非レガシーUE」が、LTEネットワークから事業者が異なるCDMAネットワークのうちいずれかへのハンドオーバーを行うことを前提としていることは明らかである。
そして、一般に、ハンドオーバーを行う際に、UEがハンドオーバーに必要なパラメータを用いて通信を行うことが技術常識であることを踏まえると、引用例1記載の、強化されたSIB8を受信する「非レガシーUE」が、LTEネットワークから事業者が異なるCDMAネットワークのうちのいずれかにハンドオーバーする際に、強化されたSIB8に含まれる「CSFB登録パラメータ1xRTT」又は「近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1x」を用いて通信を行うことは引用例1に記載されているのも同然の事項といえる。

以上を踏まえると、引用例1には
「LTEにおいてブロードキャストされ、異なるCDMAネットワークにおいて異なる可能性のあるHRPD事前登録要求、CSFB登録パラメータ1xRTT、近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1xなどのパラメーターを提供するため、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをサポートし、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークのインターワーキングをサポートするように強化されたSIB8を受信する非レガシーUEであって、
LTEネットワークから事業者が異なるCDMAネットワークのうちいずれかにハンドオーバーする際に、強化されたSIB8に含まれるCSFB登録パラメータ1xRTT、又は近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1xを用いて通信を行う非レガシーUE」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

エ 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2011-130173号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに開示されている。
「【0001】
本発明は、移動局装置及びPLMN選択方法に関し、特に、複数の利用可能な公衆陸上移動ネットワーク(PLMN:Public Land Mobile Network)から1つのPLMNを選択する移動局装置及びPLMN選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの標準規格である3GPP(3rd Generation Partnership Project)の仕様書3GPP TS 23.251などにおいては、ネットワークシェアリング(NWシェアリング)という方式が規定されている。NWシェアリングにおいては、複数のオペレータにより特定のネットワークオペレータ(オペレータ)の無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)を共有することにより、移動通信サービスの提供を新規に始める事業者のインフラ設置のコストが大幅に低減される。NWシェアリングが適用されているネットワーク(シェアリングNW)のセルに移動局装置(UE:User Equipment)が在圏すると、RANを共有する全てのオペレータが運用する公衆陸上移動ネットワーク(PLMN)を示すリストが報知情報としてUEに送信される。なお、このリストには、PLMNを運用するオペレータの識別情報を含めることも可能である。UEにおいて、後述する自動ネットワーク選択モード又は手動ネットワーク選択モードによりPLMNが選択されると、RANを介して選択されたPLMNのコアネットワーク(CN:Core Network)に位置登録要求が送出される。CNで位置登録要求が許容されると、UEにおいて当該PLMNを運用するオペレータから通信サービスの提供を受けることが可能となる。
【0003】
UEがPLMNを選択する方式として、自動ネットワーク選択モード又は手動ネットワーク選択モードが規定されている(3GPP TS 23.122)。自動ネットワーク選択モードにおいては、契約するオペレータやユーザの定めた優先度に従ってUEにより自発的に利用するPLMNが選択される。一方、手動ネットワーク選択モードにおいては、UEのユーザによるユーザインタフェース(UI:User Interface)の手動操作によって利用するPLMNが選択される。この手動ネットワーク選択モードにおいては、UEにより利用可能なPLMNの検索が行われ(セルサーチ)、該当するPLMNがディスプレイ上にリスト表示される。そして、このリスト表示されたPLMNから、所望のPLMNがユーザにより選択される。」(下線は当審にて付与。)

契約するオペレータが事業者を意味することは明らかであることを踏まえ、上記記載によると、「UEが複数の利用可能な公衆陸上移動ネットワーク(PLMN:Public Land Mobile Network)から1つのPLMNを選択する方法として、自動ネットワーク選択モードにおいては、契約する事業者にしたがってUEにより自発的に利用するPLMNが選択される」ことは公知技術といえる。

オ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア) LTEやCDMAが属する技術分野においてUE(User Equipment)が移動通信デバイスを意味することは技術常識であり、また、引用発明の非レガシーUEは、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークとのインターワーキングをサポートするUEであるから、引用発明の「非レガシーUE」は、本願補正発明の「LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイス」に対応するといえる。
(イ) 引用発明の、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをサポートする強化されたSIB8は、「各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを」サポートしているといえ、また強化されたSIB8は、LTEにおいてブロードキャストされるものであり、UEがこれを受信する手段を備えていることは当然であるから、引用発明の非レガシーUEは、本願補正発明と「各CDMAネットワークに対するパラメーターセットをLTEネットワークから受信する手段」を備えている点で一致する。
ここで、本願補正発明は「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された各CDMAネットワークに対するパラメータセットを前記LTEネットワークから受信する手段」を備える移動通信デバイスの発明であるが、本願補正発明で移動通信デバイスが受信するのは「各CDMAネットワークに対するパラメーターセット」であり、各CDMAネットワークに対するパラメータセットについての「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された」との事項が移動通信デバイスを特定する事項とはいえないから、各CDMAネットワークに対するパラメータセットが「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された」との事項は、いずれも「各CDMAネットワークに対するパラメーターセットをLTEネットワークから受信する手段」を備える移動通信デバイスの発明である本願補正発明と引用発明を対比した場合に相違点とはいえない。
(ウ) 引用発明は、「LTEネットワークから事業者が異なるCDMAネットワークのうちのいずれかにハンドオーバーする際に、強化されたSIB8に含まれるCSFB登録パラメータ1XRTT、又は近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1Xを用いて通信を行う」ものであるから、本願補正発明と引用発明とは、「前記LTEネットワークから前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記パラメーターセットを用いて、通信を行う手段」を備える点で共通する。

以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「 LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
各CDMAネットワークに対するパラメーターセットを前記LTEネットワークから受信する手段と、
前記LTEネットワークから前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記パラメーターセットを用いて、通信を行う手段と、
を備える、移動通信デバイス。」

【相違点】
相違点1:本願補正発明が「受信したパラメーターセットを格納する手段」を備えているのに対して、引用発明では、受信したパラメータセットを格納する手段について明らかにしていない点。

相違点2:本願補正発明では、「該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段」を備え、通信を行う手段が、「前記選択されたパラメーターセットを用いて」、「前記選択されたパラメーターセット」が対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーするのに対し、引用発明では、そのような発明特定事項を備えていない点。

カ 判断
上記相違点について検討する。
相違点1:
受信した情報を後に利用するために、当該受信した情報を一度格納することは常套手段といえるから、ハンドオーバーする際に、受信した強化されたSIB8でサポートされたパラメーターを利用する引用発明において、「受信したパラメーターセットを格納する手段」を備えることは当業者が適宜なし得る事項といえる。

相違点2:
上記「エ」に記載したとおり、「UEが複数の利用可能な公衆陸上移動ネットワーク(PLMN:Public Land Mobile Network)から1つのPLMNを選択する方法として、自動ネットワーク選択モードにおいては、契約する事業者にしたがってUEにより自発的に利用するPLMNが選択される」ことは公知技術である。
また、LTEやCDMAが属する技術分野において、SIMカードによりUEと関連付けられた加入者情報に含まれる事業者との契約内容に基づいて通信ネットワークと接続すること、及び、ネットワーク識別情報が通信ネットワークを運営する事業者と対応付けられていることはいずれも技術常識であるから、移動通信デバイスが、ネットワーク識別情報と対応付けられた事業者との契約内容を含む加入者情報と関連付けられていることは一般的な事項といえる。
そして、上記「ウ(エ)」で述べたとおり、強化されたSIB8を受信した引用発明の非レガシーUEが、事業者が異なるCDMAネットワークのうちのいずれかにハンドオーバーを行うことを前提としていることは明らかであるところ、引用発明において、上記公知技術を採用して、契約する事業者に基づいて接続先のCDMAネットワークの選択を行い、選択されたCDMAネットワークに対してハンドオーバーを行うことは当業者が容易に想到し得る事項といえ、その際、前記強化されたSIB8に含まれるパラメータセットのうちからハンドオーバー先のCDMAネットワークに対応するパラメータセットを選択し、当該選択されたパラメータセットを用いて当該選択されたパラメータセットが対応するCDMAネットワークにハンドオーバーすればよいことは明らかであり、また上記技術常識を踏まえ、契約する事業者の情報として、非レガシーUEと関連付けられた、ネットワーク識別情報と対応付けられた事業者との契約内容を含む加入者情報、すなわち「該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報」を用いることは、LTEやCDMAが属する技術分野において当業者が適宜なし得る事項といえる。

なお、上記「オ(イ)」での対比の際に相違点でないとした本願補正発明の「各CDMAネットワークに対するパラメーターセット」が「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された」ものなのに対し、引用発明では、どのように得られたものなのか明らかにされていない点を相違点としても、LTEにおいてブロードキャストされる強化されたSIB8によりサポートされる引用発明の「それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセット」について、各パラメータセットがそれぞれのCDMA事業者により管理されていることは明らかであり、一方、通信ネットワーク同士がコアネットワークを介して互いに接続され、必要な情報をコアネットワークを介して通信することが技術常識といえることを踏まえると、引用発明において、それぞれの事業者が管理する、異なるCDMAネットワークにおいて異なる可能性のあるパラメーターを、それぞれの事業者からLTEコアネットワークを介して受信されたものとし、「それぞれCDMAコアネットワークを提供する事業者A及び事業者Bの両方によってLTE eNB3に提供され、eNB3によりLTEコアネットワーク2を介して受信された」ものとすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。

そして、これらの相違点を総合的に考慮しても当業者が容易になし得ることといえ、一方、本願補正発明の奏する効果は、技術常識を踏まえれば、引用発明、及び、上記公知技術から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、引用例2記載の上記公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年7月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年10月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークに対するパラメーターセットを受信する手段と、
該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段と、
前記LTEネットワークから前記選択されたパラメーターセットが対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記選択されたパラメーターセットを用いる手段と、
を備える、移動通信デバイス。」

2 引用例・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、引用例2、及び、これらの記載事項は、前記「第2 5(3)イないしエ」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア LTEやCDMAが属する技術分野においてUE(User Equipment)が移動通信デバイスを意味することは技術常識であり、また、引用発明の非レガシーUEは、LTEを共有している事業者が異なるCDMAネットワークを有する場合、異なるCDMA事業者により共有されたLTEネットワークとのインターワーキングをサポートするUEであるから、引用発明の「非レガシーUE」は、本願発明の「LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイス」に対応するといえる。
イ 引用発明の、それぞれのCDMA事業者に対する異なるパラメータセットをサポートする、強化されたSIB8は、「複数のCDMAネットワークに対するパラメーターセットを」サポートしているといえ、また強化されたSIB8は、LTEにおいてブロードキャストされるものであり、UEがこれを受信する手段を備えていることは当然であるから、引用発明の非レガシーUEは、本願発明と「LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークに対するパラメーターセットを受信する手段」を備えている点で一致する。
ウ 引用発明は、「LTEネットワークから事業者が異なるCDMAネットワークのうちのいずれかにハンドオーバーする際に、強化されるSIB8に含まれるCSFB登録パラメータ1XRTT、又は近隣セルリストを含むセル再選択パラメータ1Xを用いて通信を行う」ものであるから、本願発明と引用発明とは、「前記LTEネットワークから前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記パラメーターセットを用いる手段」を備える点で共通する。

以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
「LTEネットワーク及びCDMAネットワークと通信可能な移動通信デバイスであって、
前記LTEネットワークから、複数のCDMAネットワークに対するパラメーターセットを受信する手段と、
前記LTEネットワークから前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、前記パラメーターセットを用いる手段と、
を備える、移動通信デバイス。」

【相違点】
相違点1: 本願発明が、「該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報に基づいて、前記パラメーターセットのうちの1つを選択する手段」を備え、「前記選択されたパラメーターセット」が対応する前記CDMAネットワークにハンドオーバーする際に、「前記選択されたパラメーターセット」を用いる手段を備えるのに対し、引用発明では、そのような発明特定事項を備えていない点。

(2) 判断
相違点1:
前記「第2 5(3)エ」に記載したとおり、「UEが複数の利用可能な公衆陸上移動ネットワーク(PLMN:Public Land Mobile Network)から1つのPLMNを選択する方法として、自動ネットワーク選択モードにおいては、契約する事業者にしたがってUEにより自発的に利用するPLMNが選択される」ことは公知技術である。
また、LTEやCDMAが属する技術分野において、SIMカードによりUEと関連付けられた加入者情報に含まれる事業者との契約内容に基づいて通信ネットワークと接続すること、及び、ネットワーク識別情報が通信ネットワークを運営する事業者と対応付けられていることはいずれも技術常識であるから、移動通信デバイスが、ネットワーク識別情報と対応付けられた事業者との契約内容を含む加入者情報と関連付けられていることは一般的な事項といえる。
そして、本願補正発明について前記「第2 5(3)カ相違点2」で判断したとおり、強化されたSIB8を受信した引用発明の非レガシーUEが、事業者が異なるCDMAネットワークのうちのいずれかにハンドオーバーを行うことを前提としていることは明らかであるところ、引用発明において、上記公知技術を採用して、契約する事業者に基づいて接続先のCDMAネットワークの選択を行い、選択されたCDMAネットワークに対してハンドオーバーを行うことは当業者が容易に想到し得る事項といえ、その際、強化されたSIB8に含まれるパラメータセットのうちからハンドオーバー先のCDMAネットワークに対応するパラメータセットを選択し、当該選択されたパラメータセットが対応するCDMAネットワークにハンドオーバーすればよいことは明らかであり、また、上記技術常識を踏まえ、契約する事業者の情報として、非レガシーUEと関連付けられた、ネットワーク識別情報と対応付けられた事業者との契約内容を含む加入者情報、すなわち「該移動通信デバイスに関連付けられたネットワーク識別情報を含む加入者情報」を用いることは、LTEやCDMAが属する技術分野において当業者が適宜なし得る事項といえる。
一方、本願発明の奏する効果は、技術常識を踏まえると、引用発明、及び、引用例2記載の上記公知技術から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、引用例2記載の上記公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-06 
結審通知日 2017-09-13 
審決日 2017-09-26 
出願番号 特願2014-544279(P2014-544279)
審決分類 P 1 8・ 562- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 清水 祐樹
松永 稔
発明の名称 通信システム  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  
代理人 松田 順一  

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