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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1334359
異議申立番号 異議2016-700450  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-18 
確定日 2017-10-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5824171号発明「熱膨張性微小球の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5824171号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5824171号の請求項〔1-10〕に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5824171号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2014-561631号、以下「本願」という。)は、平成26年8月25日(優先権主張、平成25年8月28日、特願2013-176293号)を国際出願日とする、出願人・松本油脂製薬株式会社によりされた特許出願であり、平成27年10月16日に特許権の設定登録がされた。
本件特許につき平成28年5月17日付け(受理日:同年5月18日)で特許異議申立人・森川真帆(以下、「申立人」という。)により、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、同年9月27日付けで取消理由が通知され、同年11月21日付け(受理日:同年11月22日)で意見書及び訂正請求書が提出され、同年12月5日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年12月21日付け(受理日:同年12月22日)で申立人から意見書が提出された。
平成29年3月14日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月12日付け(受理日:同年5月15日)で意見書及び訂正請求書が提出され、同年7月28日付けで、申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月16日付け(受理日:同年8月17日)で申立人から意見書が提出された。
なお、平成28年11月21日付け(受理日:同年11月22日)でされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正請求について

平成29年5月12日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。

1 訂正内容

本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり請求項1ないし10(すなわち全請求項)について訂正するものであって、具体的な訂正事項(以下、「訂正事項1」という。)は以下のとおりである。(下線は、当審による。以下同様。)

<訂正事項1>
本件特許の特許請求の範囲請求項1に「・・を必須成分として含む、熱膨張性微小球の製造方法。」とあるのを、
「・・を必須成分として含み、
前記熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合が700ppm以下であり、
前記水系分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有し、
前記水系分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量が、前記重合性成分100重量部に対して、0.0003?0.1重量部である、熱膨張性微小球の製造方法。」に訂正する。

2 検討

(1)訂正の目的について

訂正事項1は、訂正前の請求項1において、熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合の上限値、並びに、水系分散媒の種類及びその含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮するものであるといえるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと

上記(1)で述べたとおり、訂正事項1は、熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合の上限値、並びに、水系分散媒の種類及びその含有量を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないといえるので、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること

熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合の上限値について、本件特許明細書の【0039】に、「特に限定はないが、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは800ppm以下、最も好ましくは400ppm以下である。残留モノマーの重量割合の好ましい下限については、0ppmである。」、及び、【0073】の【表1】の実施例5において、「700ppm」であることが記載されているから、残留モノマーの重量割合は0?2000ppmの連続的な数値範囲であると認められ、訂正事項1のとおり「700ppm以下」の上限値を設定することは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、水系分散媒の種類及びその含有量について、本件特許明細書の【0028】に、「水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。」及び「水系分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001?1.0重量部、さらに好ましくは0.0003?0.1重量部、特に好ましくは0.001?0.05重量部である。」と記載されているから、訂正事項1のとおり水系分散媒の種類及びその含有量を限定することは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内であるといえる。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)一群の請求項について

訂正前の請求項2ないし10は、訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1に係る訂正で訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし10は、一群の請求項である。
そして、訂正事項1は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第4項に適合する。

3 まとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第4項及び同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。

第3 本件発明について

第2で述べたとおり、本件訂正は適法であるから、訂正後の本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することで気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
重合性成分と、前記発泡剤と、理想活性酸素量が7.8%以上である過酸化物Aを必須とする重合開始剤とを含有する油性混合物を水系分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、前記油性混合物中の前記重合性成分を重合させる工程を含み、
前記重合性成分がニトリル系単量体を必須成分として含み、
前記熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合が700ppm以下であり、
前記水系分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有し、
前記水系分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量が、前記重合性成分100重量部に対して、0.0003?0.1重量部である、熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項2】
前記過酸化物Aがパーオキシエステルおよび/またはパーオキシケタールである、請求項1に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項3】
前記過酸化物Aが分子内に環状構造を有する化合物である、請求項1または2に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項4】
前記過酸化物Aの1分子当りの活性酸素の数が2?5である、請求項1?3のいずれかに記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項5】
前記過酸化物Aの分子量が275以上である、請求項1?4のいずれかに記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程をさらに含む、請求項6に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1?5のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球および請求項6または7に記載の製造方法により得られる中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを混合することにより得られる、組成物の製造方法。
【請求項9】
前記組成物が造膜性組成物である、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の製造方法により得られる組成物を成形して得られる、成形物の製造方法。」

第4 取消理由の概要

平成29年3月14日付けの取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。

<取消理由1>
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
<取消理由2>
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、いずれも、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるか、または、甲第2号証、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

<申立人提示の証拠方法>
甲第1号証:特開2004-155999号公報
甲第2号証:特開2011-168749号公報
甲第3号証:特開2004-196996号公報
甲第4号証:国際公開第2013/111688号
甲第5号証:特許第4937669号公報
甲第6号証:特許第4393377号公報
甲第7号証:特許第4362474号公報
甲第8号証:特開2010-132740号公報
甲第9号証:特開2011-46935号公報
甲第10号証:特開2001-113586号公報
甲第11号証:特開2001-96514号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲11」と略していう。)

第5 当審の判断

第4の取消理由について、以下検討する。

1 各甲号証の記載事項及び記載された発明

(1)甲1の記載事項及び記載された発明

ア 甲1の記載事項

甲1には、以下の(a1)ないし(a4)の事項が記載されている。

(a1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルポリマーがニトリル系モノマーを70重量%以上含有するモノマー成分から得られるポリマーであり、該ポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤を含む熱膨張性マイクロカプセルであって、ニトリル系モノマー成分に占めるアクリロニトリルの割合が40?85重量%であり、揮発性膨張剤に占める分岐鎖状または環状の構造をとる揮発性膨張剤の割合が30重量%以上であることを特徴とする熱膨張性マイクロカプセル。」

(a2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の目的は、広い温度領域で発泡させることができる熱膨張性マイクロカプセルを提供することにある。すなわち、低温で熱膨張させることができ、高温においても膨張したマイクロカプセルが収縮しにくい熱膨張性マイクロカプセルを提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
熱膨張性マイクロカプセルは軽量化を目的とした塗料やプラスチックの充填材など、種々の分野への用途展開が図られている。熱膨張性マイクロカプセルは、通常、揮発性膨張剤を熱可塑性樹脂によりマイクロカプセル化したものである。
このような熱膨張性マイクロカプセルは、水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造されてきた。重合反応が進むにつれて、生成する重合体によりシェルが形成され、その中に揮発性膨張剤が包み込まれ熱膨張性マイクロカプセルが得られる。
・・(中略)・・
【0004】
耐熱性に優れた熱膨張性マイクロカプセルを得る手段としては、例えば特許文1に記載されている手段があげられる。しかしながら、上記手法では耐熱性に優れたマイクロカプセルが得られるが、低温では発泡させることができないといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特許第2894990号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低温で熱膨張させることができ、高温においても膨張後のマイクロカプセルが再び収縮しにくく、広い温度領域で発泡させることができる熱膨張性マイクロカプセルを提供することにある。」

(a3)
「【0012】
本発明に係わるマイクロカプセルの壁材は上記の成分にさらに所望により重合開始剤を適宜配合することによって調製される。好適な重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキサイド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルワレロニトリル)、t-ブチルパーオキシビバレート、ジーsec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等があげられる。
【0013】
マイクロカプセルに内包される揮発性膨張剤は上記のモノマー成分から調製されるポリマーの軟化点(一般的には約120?150℃)以下の温度でガス状になる物質であり、例えばプロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、ブテン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、石油エーテル・・(中略)・・などの低沸点液体や、アゾイソブチロニトリル(AIBN)等の加熱により分解してガス状になる化合物が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる揮発性膨張剤は、分岐鎖状または環状の構造をとる揮発性膨張剤を30重量%以上含有する。好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。分岐鎖状または環状の構造を取る揮発性膨張剤とは、例えばイソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン、2,2-ジメチルヘキサンなどの、かさ高い立体構造を有する揮発性膨張剤である。分岐鎖状または環状の構造を有する揮発性膨張剤の割合が30重量%より少ないと、高温に加熱されたマイクロカプセルに「へたり」が生じてしまう。
【0015】
熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法は特に限定されない。特に好適な方法は、例えば特公昭42-26524号公報に記載されているような、モノマー、架橋剤、揮発性膨張剤、重合開始剤を混合し水性媒体中に分散させて懸濁重合する方法があげられる。懸濁重合に用いる水性媒体は特に限定されないがシリカ、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機分散剤を添加してもよく、ジエタノールアミン-アジピン酸縮合物、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル等の有機分散剤を添加してもよい。水性媒体としては脱イオン水が好ましく、酸を加えてpHを約3?4に調整しておくことが好ましい。」

(a4)
「【0016】
【実施例】
以下、「部」は重量部を表す。
(実施例1)
アクリロニトリル51部、メタクリロニトリル45部、メタクリル酸メチル1部、酢酸ビニル3部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.17部、イソペンタン25部、t-ブチルパーオキシビバレート1部、ジーsec-ブチルパーオキシジカーボネート0.3部、ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート1.2部からなる油相を作製した。次いで、脱イオン水7300部、コロイダルシリカ分散液(固形分20%)1260部、重クロム酸カリウム(2.5%水溶液)45部、ポリビニルピロリドン8部、塩化ナトリウム2200部、塩酸8.5部からなる水相を作成した。上記油相と水相を混合したのち、ホモジナイザーを使用し、6000rpmで5分間ミキシングを行ない、4?5kg/cm^(2)の加圧下、60℃で20時間反応させて熱膨張性マイクロカプセルを得た。セントルで予備脱水した後、40℃に保った静置乾燥機で得られた熱膨張性マイクロカプセルを乾燥し、粉体状の熱膨張性マイクロカプセルを得た。
・・(中略)・・
【0018】
(比較例1)
攪拌機付き重合反応器に脱イオン水100部、コロイダルシリカ分散液(固形分30重量%)15部を仕込み、ジエタノールアミンとアジピン酸縮合物(10%水溶液)2.5部を加えた。重クロム酸カリウム(2.5%水溶液)を加えたのちpH4に調整して水相を調製した。ついで、ネオペンタンを20重量%含むメチルメタクリレート100部及び過酸化ベンゾイル0.1部を混合し油相を調製した。この油相を水相に加え攪拌しながら反応させた。ついで濾過を行い熱膨張性マイクロカプセルを取り出した。
・・(中略)・・
【0026】
【表1】
(省略)
【0027】
【表2】
(省略)
【0028】
発泡開始温度、膨張性及び高温での「へたり」の評価方法
TAインスツルメンツ社製熱機械分析装置2940型(2940TMA)を使用し試料250μgを直径7mm深さ1mmの円筒状のアルミカップに入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で80℃から220℃まで5℃/分の昇温速度で加熱した際の加圧端子の垂直方向における変位量を測定した。ここで、変位が観測され始めた温度を発泡開始温度とした。また、最大変位量を下記基準で評価し発泡倍率が高いか膨張性を判断した。
[膨張性の評価基準]
◎:800μm以上
○:500μm以上
△:100μm以上
×:100μm以下
さらに、170℃における変位量を下記基準で評価し高温での「へたり」の程度を判断した。
[高温での「へたり」の評価基準]
◎:500μm以上
○:300μm以上
△:100μm以上
×:100μm以下
【0029】
実施例1?7、比較例1?7について評価結果を表2に示す
表2中のニトリル割合は、シェルポリマー中のニトリル系モノマーの含有割合を重量%で表す。表中のアクリロニトリル割合は、ニトリル系モノマーに占めるアクリロニトリルの含有割合を重量%で表す。また、分岐鎖状または環状膨張剤割合は揮発性膨張剤に占める分岐鎖状または環状の構造をとる揮発性膨張剤の含有割合を重量%で表す。
【0030】
実施例では低温でもマイクロカプセルを熱膨張させることができ発泡倍率も高い。また、高温でも「へたり」が生じなかった。したがって、低温から高温まで広い温度範囲で高い発泡倍率が得られることが確認された。
【0031】
一方、比較例1、2、6はニトリル系モノマーを含まないまたはわずかしか含まない為にシェルポリマーのガスバリア性がほとんどなく、ほとんど膨張しなかった。
また、比較例3、7はニトリル系モノマーが少なく、かつニトリル系モノマー中のアクリロニトリルの比率が少ない為に、シェルポリマーのガスバリア性が低く、低温でマイクロカプセルは熱膨張するものの発泡倍率は低く高温で「へたり」が生じた。
・・(中略)・・
【0034】
【発明の効果】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは広い温度領域で熱膨張させることができる。したがって、塗料組成物などの樹脂組成物に含有させた場合は広い温度領域で高い発泡倍率が得られる。また、オーブン等の加熱ムラが生じやすい加熱方法であっても加熱ムラに関係なく均一な発泡倍率の発泡体を得ることができる。」

イ 甲1に記載された発明

上記アで示した(a1)ないし(a4)(特に実施例1)の記載事項からみて、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「アクリロニトリル51部、メタクリロニトリル45部、メタクリル酸メチル1部、酢酸ビニル3部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.17部、イソペンタン25部、t-ブチルパーオキシビバレート1部、ジーsec-ブチルパーオキシジカーボネート0.3部、ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート1.2部からなる油相を作製し、脱イオン水7300部、コロイダルシリカ分散液(固形分20%)1260部、重クロム酸カリウム(2.5%水溶液)45部、ポリビニルピロリドン8部、塩化ナトリウム2200部、塩酸8.5部からなる水相を作成し、上記油相と水相を混合したのち、ホモジナイザーを使用し、ミキシングを行ない、加圧下、反応させて、セントルで予備脱水した後、静置乾燥機で得られた熱膨張性マイクロカプセルを乾燥することからなる、粉体状の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。」

(2)甲2の記載事項及び記載された発明

ア 甲2の記載事項

甲2には、以下の(b1)ないし(b4)の事項が記載されている。

(b1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性分散媒体に、重合性モノマー、揮発性液体及び重合開始剤を含有する油性物質を懸濁させる工程と、前記重合性モノマーを加熱して重合させる工程とを有する熱膨張性マイクロカプセルの製造方法であって、
前記重合性モノマーの重合温度を、前記重合性モノマーを重合させて得られる重合体のガラス転移温度以上の温度とする
ことを特徴とする熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。
・・(後略)」

(b2)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、高発泡倍率で発泡することのできる熱膨張性マイクロカプセルを製造することのできる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック発泡体は、発泡体の素材と形成された気泡の状態に応じて遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化等の機能を発現できることから、様々な用途で用いられている。プラスチック発泡体を製造する方法として、例えば、熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂と発泡剤とを含有する樹脂組成物、マスターバッチ等を、射出成形、押出成形等の成形方法を用いて成形し、成形時の加熱により発泡剤を発泡させる方法が挙げられる。
・・(中略)・・
【0004】
これに対し、例えば、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤を内包して得られる熱膨張性マイクロカプセルも用いられている。
熱膨張性マイクロカプセルとして、例えば、特許文献2には、熱可塑性ポリマーシェル及びその中に閉じ込められた噴射剤を含む熱発泡性微小球体であって、前記ポリマーシェルが85重量%以上のニトリル含有モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーからのホモポリマー又はコポリマーからつくられ、かつ前記噴射剤が少なくとも50重量%のイソオクタンを含む熱発泡性微小球体が開示されている。また、特許文献3には、重合体から形成された外殻内に発泡剤が封入された構造を持つ熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、該発泡剤がイソドデカンを含有する熱発泡性マイクロスフェアーが開示されている。
【0005】
熱膨張性マイクロカプセルは、加熱されると、揮発性膨張剤がガス状になるとともに、シェルポリマーが軟化して膨張する。しかしながら、加熱が高温又は長時間になると、膨張した熱膨張性マイクロカプセルの破裂又は収縮(いわゆる「へたり」と呼ばれる現象)、揮発性膨張剤のガス抜け等が生じ、高い発泡倍率が得られないことが問題である。従来の熱膨張性マイクロカプセルでは、このような「へたり」又はガス抜けの発生を充分に抑制し、充分に高い発泡倍率を実現するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-178372号公報
【特許文献2】特許第3659497号公報
【特許文献3】国際公開第06/030946号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性に優れ、高発泡倍率で発泡することのできる熱膨張性マイクロカプセルを製造することのできる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。
・・(中略)・・
【0009】
本発明者らは、水性分散媒体に、重合性モノマー、揮発性液体及び重合開始剤を含有する油性物質を懸濁させる工程と、前記重合性モノマーを加熱して重合させる工程とを有する熱膨張性マイクロカプセルの製造方法において、前記重合性モノマーの重合温度を所定範囲の温度とすることにより、得られる熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性及び発泡倍率を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法では、まず、水性分散媒体に、重合性モノマー、揮発性液体及び重合開始剤を含有する油性物質を懸濁させる工程を行う。
・・(後略)」

(b3)
「【0019】
上記重合性モノマーには、ニトリル系モノマーを含有させることが好ましい。上記重合性モノマーが上記ニトリル系モノマーを含有することにより、得られる熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性及びガスバリア性が向上する。
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル、及び、これらの混合物等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
・・(中略)・・
【0021】
上記重合性モノマーに上記他のモノマーを含有させる場合、上記他のモノマーの含有量は特に限定されないが、上記重合性モノマーの合計100重量部中の好ましい上限が50重量部である。上記他のモノマーの含有量が50重量部を超えると、相対的に上記ニトリル系モノマーの含有量が低下し、得られる熱膨張性マイクロカプセルは耐熱性及びガスバリア性が低下して、高発泡倍率で発泡することができないことがある。
・・(中略)・・
【0026】
上記重合性モノマーには、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を添加してもよい。
【0027】
上記揮発性液体は特に限定されないが、低沸点有機溶剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、石油エーテル・・(中略)・・等が挙げられる。これらのなかでは、速やかに発泡を開始し、高発泡倍率で発泡することができる熱膨張性マイクロカプセルを製造できることから、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、石油エーテルが好ましい。これらの揮発性液体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記揮発性液体として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を用いてもよい。
・・(中略)・・
【0029】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が挙げられる。なお、上記重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記過酸化ジアルキルは特に限定されず、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド等が挙げられる。
・・(中略)・・
【0031】
上記パーオキシエステルは特に限定されず、例えば、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
・・(中略)・・
【0053】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルの用途は特に限定されず、例えば、熱膨張性マイクロカプセルをマトリックス樹脂に配合し、射出成形、押出成形等の成形方法を用いて成形することにより、遮熱性、断熱性、遮音性、吸音性、防振性、軽量化等を備えた発泡成形体を製造することができる。本発明の熱膨張性マイクロカプセルの製造方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルは、耐熱性に優れ、高発泡倍率で発泡できることから、高温で加熱する工程を有する発泡成形にも好適に適用される。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、耐熱性に優れ、高発泡倍率で発泡することのできる熱膨張性マイクロカプセルを製造することのできる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法を提供することができる。」

(b4)
「【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0056】
(実施例1?6、比較例1?4)
重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製20重量%)20重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.2重量部と、1N塩酸0.7重量部とを投入し、水性分散媒体を調製した。次いで、表1に示した配合比の重合性モノマー100重量部と、重合開始剤1重量部と、揮発性液体としてトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5重量部、イソペンタン20重量部及びイソオクタン10重量部とからなる油性物質を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製した。得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧(0.5MPa)しながら表1に示した重合温度(Tp)で24時間反応させることにより、反応生成物を得た。得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することにより、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
【0057】
(評価)
実施例、比較例で得られた熱膨張性マイクロカプセルについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(1)耐熱性(Tmax)及び発泡倍率
得られた熱膨張性マイクロカプセルを、加熱発泡顕微装置(ジャパンハイテック社製)を用いて5℃/minで常温から280℃まで加熱した。任意の熱膨張性マイクロカプセル5点の画像から平均粒子径の変化を5℃ごとに計測し、最大発泡温度(Tmax)(℃)を測定して耐熱性を評価した。最大発泡温度が175℃以下であった場合を×とした。また、最大発泡温度が180?185℃であった場合を○、190℃以上であった場合を◎とした。
また、30℃における熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径に対する、最大発泡温度における熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径の比を発泡倍率とした。発泡倍率が2.9倍以下であった場合を×、3.0?3.9倍であった場合を○、4.0倍以上であった場合を◎とした。
なお、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、レーザー回折光散乱光度計(堀場製作所社製)によって測定した。
【0059】
【表1】



イ 甲2に記載された発明

上記アで示した(b1)ないし(b4)(特に実施例1)の記載事項からみて、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「重合反応容器に、水250重量部と、分散安定剤としてコロイダルシリカ(旭電化社製20重量%)20重量部及びポリビニルピロリドン(BASF社製)0.2重量部と、1N塩酸0.7重量部とを投入し、水性分散媒体を調製し、アクリロニトリル(AN)60重量部及びメタクリロニトリル(MAN)40重量部である重合性モノマー100重量部と、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチロパーオキシ)シクロへキシル)プロパンである重合開始剤1重量部と、揮発性液体としてトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5重量部、イソペンタン20重量部及びイソオクタン10重量部とからなる油性物質を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製し、得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧しながら反応させることにより、得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥することからなる、熱膨張性マイクロカプセルの製造方法。」

(3)甲3の記載事項

甲3には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は主たる発泡剤として化学発泡剤ではなく熱膨張性マイクロカプセルおよび熱膨張済みマイクロカプセルを含有する。なお、熱膨張済みマイクロカプセルとは、事前に加熱して発泡させた熱膨張性マイクロカプセルのことである。
【0008】
熱膨張性マイクロカプセルと熱膨張済みマイクロカプセルは同じ種類であっても異なっていてもよい。また、熱膨張済みマイクロカプセルは低比重となるため飛散しやすく取り扱いやすくするため、表面に炭酸カルシウム等の無機粉末を付着させたマイクロカプセルや、樹脂組成物を構成する任意の成分に含浸させて用いることが好ましい。」

(4)甲4の記載事項

甲4には、以下の事項が記載されている。
「[0074]〔中空粒子〕
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球および/または上記で説明した熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子である。
本発明の中空粒子は、軽量であり、組成物や成形物に含ませると材料物性に優れる。特に、接着剤組成物の成分として配合した場合に、硬化後の接着剤組成物が低硬度で高伸度となり、材料物性に優れる。
[0075] 中空粒子を得る製造方法としては、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等が挙げられる。加熱膨張させる温度は、好ましくは80?350℃である。
中空粒子の平均粒子径については用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、好ましくは0.1?1000μm、より好ましくは0.8?200μmである。また、中空粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは25%以下である。
[0076] 中空粒子の真比重については特に限定はないが、好ましくは0.010?0.5、さらに好ましくは0.015?0.3、特に好ましくは0.020?0.2である。
中空粒子(1)は、図2に示すように、その外殻(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)から構成されていてもよく、以下では、微粒子付着中空粒子(1)ということがある。
[0077] ここでいう付着とは、単に微粒子付着中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4および5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、微粒子付着中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。微粒子付着中空粒子では、使用時の作業性(ハンドリング)が向上する。
微粒子の平均粒子径については、用いる中空体本体によって適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001?30μm、さらに好ましくは0.005?25μm、特に好ましくは0.01?20μmである。
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。」

(5)甲5の記載事項

甲5には、以下の事項が記載されている。
「【0061】
[壁紙塗料組成物および発泡壁紙の製造例]
下記表1に示すように、EVAエマルジョンの固形分100重量部、熱膨張性中空球体10重量部、分散剤1.5重量部、無機フィラー(炭酸カルシウム)80重量部、消泡剤0.9重量部、ブロッキング防止剤0.5重量部、湿潤剤1.1重量部、無機顔料15重量部を配合して発泡壁紙用塗料組成物を調製し、 下記のようにして発泡壁紙を作製した。

基材:壁紙原紙、塗工量:140g/m2(ドライ)
乾燥条件:熱風乾燥機90℃×3分、発泡条件:180℃×30秒間。」

(6)甲6の記載事項

甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、加熱膨張させた膨張体に荷重15MPaを負荷したとき、荷重付与後の体積保持率が50%以上であるのが好ましい。さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上である。
本発明により得られた熱膨張性マイクロカプセル、あるいはその膨張体を用いて、各種樹脂へ練り込み成形を行うことができる。これにより軽量化された樹脂組成物を得ることができる。成形方法としては、例えばカレンダ加工、押出し成形、ブロー成形、射出成形など、従来既知の方法を用いることができる。
用いることができる樹脂としては、例えばゴムあるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどといった熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などといった熱硬化性樹脂を挙げることができる。」

(7)甲7の記載事項

甲7には、以下の事項が記載されている。
「【0033】
実施例7
実施例1の熱膨張性微小球を加熱することにより得られた膨張済み中空微小球(平均粒子径120μm、変動係数Cv27%、真比重0.020g/cc)5重量%を、PVC系ゾル塗料(比重1.4g/cm3)95重量%と混合し、基板に塗工後、パーフェクトオーブンにて160℃で30分間加熱ゲル化することによりシートを作成した。結果を表2に示す。」

(8)甲8の記載事項

甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0032】
この共重合反応はラジカル重合開始剤を用いて実施することができる。熱、紫外線、電子線、放射線などによってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤も使用できるが、反応温度における半減期が1時間以上のものが好ましい。
【0033】
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などのアゾ系化合物;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシドなどのケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシド類;1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシアゼレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロプルカーボネートなどのパーオキシカーボネート類;過酸化水素などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上併用しても良い。」

(9)甲9の記載事項

甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0038】
この前駆体A製造における共重合反応はラジカル重合開始剤を用いて実施することができる。熱、紫外線、電子線、放射線等によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤も使用できるが、反応温度における半減期が1時間以上のものが好ましい。
【0039】
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ-t-ブチルパーオキシアゼレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類;過酸化水素等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上併用しても良い。」

(10)甲10の記載事項

甲10には、以下の事項が記載されている。
「【0025】具体的には、重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系を用いることができる。より好ましくは、10時間半減期温度が60℃以上の重合開始剤が好ましく、60℃未満の場合には、押出成形時にα,β不飽和カルボン酸系モノマーが急速に高分子化して硬化し、押出成形性が低下することがある。
【0026】より具体的には、重合開始剤としては、例えば、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレイト、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-へキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジチメル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンチル-2-ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。」

(11)甲11の記載事項

甲11には、以下の事項が記載されている。
「【0042】重合開始剤としては、αβ不飽和カルボン酸系モノマーが加熱(または光)により重合するものであれば、いずれも使用可能である。
【0043】具体的には、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジポネート系、パーオキシエステル系のものが使用可能である。
【0044】さらに好ましい重合開始剤としては、10時間半減期温度が60℃以上のものである。60℃未満であると、押出成形時、アクリル酸エステルモノマーが急速に硬化しすぎて、押出成形性が低下する場合がある。
【0045】さらに具体的な重合開始剤としては、メチルアセトアセテイトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレイト、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシー3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチルー2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンチル-2-ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。」

(12)本件特許に係る出願(優先日)前の当業者の周知技術について

申立人が平成28年12月21日付け意見書に添付した参考資料1ないし6の開示からみて、ニトリル系単量体を含む熱可塑性樹脂からなる外壁(シェル)と加熱で気化する発泡剤を内包する熱膨張性微小球を水性懸濁重合により製造するにあたり、重合時の水系分散媒中に、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を、重合性成分100重量部に対して0.0001?1.0重量部の量比で存在させることは、本件特許に係る出願(優先日)前の当業者の周知技術であるものと認められ、当該化合物を上限値を超えて使用した場合、重合速度の低下及び重合性成分の残存量が低下することも当業者の周知技術であるものと認められる。(以下、「周知技術1」という。)

<申立人が添付した参考資料>
参考資料1:特開2012-140608号公報
参考資料2:特開2012-137180号公報
参考資料3:特開2012-136695号公報
参考資料4:特開2012-122025号公報
参考資料5:特開2012-17453号公報
参考資料6:特開平11-209504号公報

2 取消理由1について

取消理由1について、以下検討する。

(1)本件発明1について

ア 対比・検討

本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「アクリロニトリル51部、メタクリロニトリル45部、メタクリル酸メチル1部、酢酸ビニル3部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.17部、イソペンタン25部、t-ブチルパーオキシビバレート1部、ジーsec-ブチルパーオキシジカーボネート0.3部、ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート1.2部からなる油相」と「水相」を「混合したのち」、「反応させて」、「得られた」「熱膨張性マイクロカプセル」の外殻は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル及びペンタエリスリトールヘキサアクリレートから構成される熱可塑性樹脂であるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる外殻」に相当する。
甲1発明の「イソペンタン」は、本件発明1の「発泡剤」に相当する。
甲1発明の「アクリロニトリル」、「メタクリロニトリル」、「メタクリル酸メチル」、「酢酸ビニル」及び「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、本件発明1の「重合性成分」に相当する。
甲1発明の「アクリロニトリル」及び「メタクリロニトリル」は、本件発明1の「ニトリル系単量体」に相当する。
甲1発明の「熱膨張性マイクロカプセル」は、本件発明1の「熱膨張性微小球」に相当する。
甲1発明の「油相と水相を混合したのち、ホモジナイザーを使用し、ミキシングを行ない、加圧下、反応させ」ることは、本件発明1の「油性混合物を水系分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、前記油性混合物中の前記重合性成分を重合させる工程」に相当する。
甲1発明の「t-ブチルパーオキシビバレート」、「ジーsec-ブチルパーオキシジカーボネート」及び「ジーt-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート」と、本件発明1の「重合開始剤」とは、過酸化物という点で一致している。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、下記の点で相違し、その余の点で一致するものと認められる。

<相違点1>
本件発明1では、「理想活性酸素量が7.8%以上である過酸化物Aを必須とする重合開始剤」であるのに対して、甲1発明では、「t-ブチルパーオキシビバレート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート及びジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレートからなる重合開始剤」であり、理想活性酸素量が特定されていない点。

<相違点2>
本件発明1では「前記熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合が700ppm以下であ」るのに対して、甲1発明では、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」について特定されていない点。

<相違点3>
本件発明1では「前記水系分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有し、」「前記水系分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量が、前記重合性成分100重量部に対して、0.0003?0.1重量部である」のに対して、甲1発明では、上記「水溶性化合物」の使用及び使用量比につき特定されていない点。

<相違点4>
甲1発明では、「セントルで予備脱水した後、静置乾燥機で得られた熱膨張性マイクロカプセルを乾燥すること」が特定されているが、本件発明1ではそのような特定はない点。

事案に鑑み、上記相違点2につき検討する。
平成29年5月12日付け意見書及びこれに添付された実験成績証明書によれば、特許権者は、甲1の実施例1(甲1発明)、実施例2?7の再現実験を行い、その「熱膨張性マイクロカプセル」の残留モノマーの重量割合は、実施例1(甲1発明)は3700ppm、実施例2?7は3200?3850ppmであることが示されている。
また、本件特許明細書の実施例1?5は、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合が700ppm以下となっているとしても、熱膨張性微小球の製造方法において、水系分散媒は、本件特許明細書の実施例1?5では「エチレンジアミン四酢酸・4Na塩」であるのに対して、甲1の実施例1?7では、「重クロム酸カリウム」であり異なっているから、油性混合物を水系分散媒に分散させた水系懸濁液から重合され、製造される熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合について両者が同じ程度になるとはいえない。
そうすると、甲1発明の製造方法による熱膨張性マイクロカプセルは、残存重合性成分量が700ppm以下であるとはいえないから、相違点2は、実質的な相違点である。

よって、本件発明1は、少なくとも相違点2の点で、甲1発明とは異なっているから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

次に、相違点2が当業者が容易に想到し得ることであるか否かについて、検討する。
甲1発明の課題は、「低温で熱膨張させることができ、高温においても膨張後のマイクロカプセルが再び収縮しにくく、広い温度領域で発泡させることができる熱膨張性マイクロカプセルを提供すること」(上記甲1の摘示(a2))であるが、甲1には、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」についての記載がなく、ましてや、当該発明の課題との関係において、当該残留モノマーの重量割合を設定することは記載も示唆もされていない。
そして、申立人が提示した甲3ないし7においても、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」について記載ないしも示唆もされていない

そうすると、相違点2は、甲1発明、及び、甲3ないし7の記載事項をもってしても、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ 本件発明1の効果について

本件発明1の効果は、「熱膨張性微小球の製造方法は、耐溶剤性が高い熱膨張性微小球を効率よく製造することができる」ことである(本件特許明細書の【0008】、【0073】の【表1】)。
上記意見書及びこれに添付された実験成績証明書によれば、特許権者は、甲1の実施例1(甲1発明)、実施例2?7の再現実験を行い、その「熱膨張性マイクロカプセル」の耐溶剤性が、本件発明1よりも劣っていること、すなわち、本件発明1の「熱膨張性マイクロカプセル」の耐溶剤性が、甲1の実施例1?7よりも格別顕著であることを示しているから、本件発明1の効果は、甲1から当業者が予期し得ない格別顕著な効果を奏しているといえる。

ウ 小括

したがって、本件発明1は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、甲1発明及び甲3ないし7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。

(2)本件発明2ないし10について

本件発明2ないし10は、本件発明1を限定するものであるが、上記相違点2については何ら限定していないので、本件発明1と同様に判断される。
よって、本件発明2ないし10は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、甲1発明及び甲3ないし7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。

(3)取消理由1についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件発明1ないし10は、いずれも、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえないから、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消されるべきものではない。

3 取消理由2について

取消理由2について、以下検討する。

(1)本件発明1について

本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明の「アクリロニトリル(AN)60重量部及びメタクリロニトリル(MAN)40重量部である重合性モノマー100重量部と、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチロパーオキシ)シクロへキシル)プロパンである重合開始剤1重量部と、揮発性液体としてトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5重量部、イソペンタン20重量部及びイソオクタン10重量部とからなる油性物質を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製し」、「反応させることにより」、「得られた」「熱膨張性マイクロカプセル」の外殻は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから構成される熱可塑性樹脂であるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂からなる外殻」に相当する。
甲2発明の「揮発性液体として」の「トリメチロールプロパントリメタクリレート」、「イソペンタン」及び「イソオクタン」は、本件発明1の「発泡剤」に相当する。
甲2発明の「アクリロニトリル(AN)」及び「メタクリロニトリル(MAN)」である「重合性モノマー」は、本件発明1の「重合性成分」に相当する。
甲2発明の「アクリロニトリル(AN)」及び「メタクリロニトリル(MAN)」は、本件発明1の「ニトリル系単量体」に相当する。
甲2発明の「熱膨張性マイクロカプセル」は、本件発明1の「熱膨張性微小球」に相当する。
甲2発明の「油性物質を水性分散媒体に添加し、懸濁させて、分散液を調製し、得られた分散液をホモジナイザーで攪拌混合し、窒素置換した加圧重合器内へ仕込み、加圧しながら反応させること」は、本件発明1の「油性混合物を水系分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、前記油性混合物中の前記重合性成分を重合させる工程」に相当する。
甲2発明の「2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチロパーオキシ)シクロへキシル)プロパンである重合開始剤」と、本件発明1の「重合開始剤」とは、過酸化物という点で一致している。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、下記の点で相違し、その余の点で一致するものと認められる。

<相違点1’>
本件発明1では、「理想活性酸素量が7.8%以上である過酸化物Aを必須とする重合開始剤」であるのに対して、甲2発明では、「2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチロパーオキシ)シクロへキシル)プロパンである重合開始剤」であり、理想活性酸素量については特定されていない点。

<相違点2’>
本件発明1では「前記熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合が700ppm以下であ」るのに対して、甲2発明では、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」について特定されていない点。

<相違点3’>
本件発明1では「前記水系分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有し、」「前記水系分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量が、前記重合性成分100重量部に対して、0.0003?0.1重量部である」のに対して、甲2発明では、上記「水溶性化合物」の使用及び使用量比につき特定されていない点。

<相違点4’>
甲2発明では、「得られた反応生成物について、ろ過と水洗を繰り返した後、乾燥すること」が特定されているが、本件発明1ではそのような特定はない点。

事案に鑑み、上記相違点2’につき検討する。
平成29年5月12日付け意見書及び添付されて実験成績証明書によれば、特許権者は、甲2の実施例1(甲2発明)、実施例2?6の再現実験を行い、甲2の実施例1?6に記載されているとおりの重合温度で24時間反応させたが、いずれの実施例においても凝集が生じ、「熱膨張性マイクロカプセル」は得られなかったこと、すなわち、残留モノマーの重量割合は測定不能であることが示されている。
また、本件特許明細書の実施例1?5は、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合が700ppm以下となっているとしても、熱膨張性微小球の製造方法において、水系分散媒は、本件特許明細書の実施例1?5では「エチレンジアミン四酢酸・4Na塩」であるのに対して、甲2の実施例1?6では、水系分散媒が使用されていないから、「熱膨張性マイクロカプセル」が得られないと考えられるし、当然、製造される熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合について両者が同じ程度になるとはいえない。
そうすると、甲2発明の製造方法によっては、熱膨張性マイクロカプセル自体が得られないものでるし、当然、その残存重合性成分量が700ppm以下とはならないから、相違点2’は、実質的な相違点である。

よって、本件発明1は、少なくとも相違点2’の点で、甲2発明とは異なっているから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。

次に、相違点2’が当業者が容易に想到し得ることであるか否かについて、検討する。
甲2発明の課題は、「耐熱性に優れ、高発泡倍率で発泡することのできる熱膨張性マイクロカプセルを製造することのできる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法を提供すること」(上記甲2の摘示(b2))であるが、甲2には、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」についての記載がなく、ましてや、当該発明の課題との関係において、当該残留モノマーの重量割合を設定することは記載も示唆もされていない。
そして、申立人が提示した甲3ないし7においても、「熱膨張性マイクロカプセルに含まれる残留モノマーの重量割合」について記載ないしも示唆もされていない

そうすると、相違点2’は、甲2発明、及び、甲3ないし7の記載事項をもってしても、当業者が容易に想到し得ることではない。

イ 本件発明1の効果について

本件発明1の効果は、「熱膨張性微小球の製造方法は、耐溶剤性が高い熱膨張性微小球を効率よく製造することができる」ことである(本件特許明細書の【0008】、【0073】の【表1】)。
上記意見書及びこれに添付された実験成績証明書によれば、特許権者は、甲2の実施例1(甲2発明)、実施例2?6の再現実験を行ったが、「熱膨張性マイクロカプセル」は得られなかったこと、すなわち、本件発明1の「熱膨張性マイクロカプセル」の耐溶剤性が、甲2の実施例1?6よりも格別顕著であることを示しているから、本件発明1の効果は、甲2から当業者が予期し得ない格別顕著な効果を奏しているといえる。

ウ 小括

したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、甲2発明及び甲3ないし7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。

(2)本件発明2ないし10について

本件発明2ないし10は、本件発明1を限定するものであるが、上記相違点2については何ら限定していないので、本件発明1と同様に判断される。
よって、本件発明2ないし10は、甲2発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、甲2発明及び甲3ないし7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえない。

(3)取消理由2についてのまとめ

以上のとおりであるから、本件発明1ないし10は、いずれも、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとはいえないから、同法第113条第2号の規定に該当せず、取り消されるべきものではない。

第6 申立人の主張について

申立人は、平成29年8月16日付け意見書において、概略以下のとおり主張している。

上記実験成績証明書の「5.実験内容」における、実験内容は、甲1及び甲2の記載を機械的にほとんどそのままコピーしたものであり、実際にこの実験内容のとおりに実験が行われたかについては疑問の余地があること、このように実験成績証明書の実験内容及び実験結果は、十分に信用するに足りるものとはいえないので、実験成績証明書の結果に基づいて、取消理由が覆るものではない。
実験成績証明書における実験が、そこに記載された実験内容のとおりに行われ、実験結果が十分に信頼できるものであるとしても、本件発明のように、熱膨張性微小球を製造する際に、特定の水溶性化合物を、重合性成分に対して特定量含有することは、参考資料1ないし5に記載されているように周知であるから、当業者が容易に行い得ることである。
熱膨張性マイクロカプセルに製造における、水溶性化合物を適正量用いる必要性、及び水溶性化合物として重クロム酸カリウムの使用を避ける必要性についても参考資料6に開示されている。
熱膨張性マイクロカプセル残留モノマーの重量割合が2000ppm以下であるとの事項についても、上記水溶性化合物の種類・使用量により自ずと達成されるものに過ぎないし、本願当初明細書には、水溶性化合物の種類・使用量が、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合に及ぼす影響については何ら開示されておらず、ましてや、水溶性化合物として特定の化合物を選択し、その使用量として特定の範囲を選択することにより、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合が2000ppm以下というように低減できることについては何ら開示されていない。

申立人の主張について検討する。
まず、実験成績証明書の実験内容の信憑性については、甲1及び甲2の記載を機械的にほとんどそのままコピーしたものであるとしても、甲1及び甲2の記載どおり行えば、そのようにするのが当然であるし、上記実験成績証明書の信用性を減ずる、或いは、上記実験成績証明書の内容に反する、申立人の実験成績証明書は何ら提出されていない。
参考資料1ないし5において、水溶性化合物として、「水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類」(本件特許明細書の実施例で使用されている「エチレンジアミン四酢酸・4Na塩」に相当)と甲1の実施例で使用されている「重クロム酸カリウム」とは同列に列挙されており、参考資料6に水溶性化合物を適正量用いる必要性、及び水溶性化合物として重クロム酸カリウムの使用を避ける必要性が記載されているとしても、実験成績証明書の実験内容には、残留モノマーの重量割合は、本件特許明細書の「エチレンジアミン四酢酸・4Na塩」を含有する実施例は700ppm以下であり、甲1の「重クロム酸カリウム」を含有する実施例は3200?3850ppmであることが示されており、これは顕著な効果の差異であり、甲1、甲2及び参考資料1ないし6の記載から当業者が予測し得るものではない。
また、本願当初明細書の実施例には、水溶性化合物として、「水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類」である「エチレンジアミン四酢酸・4Na塩」を特定量で使用したものであって、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合が低いことが記載されているから、特定の水溶性化合物と、その使用量として特定の範囲を選択することにより、熱膨張性微小球の残留モノマーの重量割合が低減できることが開示されているといえる。

したがって、申立人の主張を採用することができない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1-10に係る特許を取り消すことができない。
そして、他に請求項1-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することで気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の製造方法であって、
重合性成分と、前記発泡剤と、理想活性酸素量が7.8%以上である過酸化物Aを必須とする重合開始剤とを含有する油性混合物を水系分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、前記油性混合物中の前記重合性成分を重合させる工程を含み、
前記重合性成分がニトリル系単量体を必須成分として含み、
前記熱膨張性微小球に含まれる残留モノマーの重量割合が700ppm以下であり、
前記水系分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有し、
前記水系分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量が、前記重合性成分100重量部に対して、0.0003?0.1重量部である、熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項2】
前記過酸化物Aがパーオキシエステルおよび/またはパーオキシケタールである、請求項1に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項3】
前記過酸化物Aが分子内に環状構造を有する化合物である、請求項1または2に記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項4】
前記過酸化物Aの1分子当りの活性酸素の数が2?5である、請求項1?3のいずれかに記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項5】
前記過酸化物Aの分子量が275以上である、請求項1?4のいずれかに記載の熱膨張性微小球の製造方法。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程をさらに含む、請求項6に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1?5のいずれかに記載の製造方法により得られる熱膨張性微小球および請求項6または7に記載の製造方法により得られる中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを混合することにより得られる、組成物の製造方法。
【請求項9】
前記組成物が造膜性組成物である、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の製造方法により得られる組成物を成形して得られる、成形物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-27 
出願番号 特願2014-561631(P2014-561631)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村松 宏紀平井 裕彰  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 原田 隆興
小柳 健悟
登録日 2015-10-16 
登録番号 特許第5824171号(P5824171)
権利者 松本油脂製薬株式会社
発明の名称 熱膨張性微小球の製造方法  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  
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