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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09G
管理番号 1334379
異議申立番号 異議2017-700327  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-04 
確定日 2017-10-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6079239号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6079239号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6079239号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成25年1月4日に特許出願され、平成29年1月27日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 特許業務法人にじいろ特許事務所により特許異議の申立てがなされたものである。

2 本件発明
特許第6079239号の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。」)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
光束を出力するレーザ光源部と、
主走査方向及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部と、
画像データに基づいて前記レーザ光源部を駆動させる光源駆動部と、
前記画像データを構成する画素の輝度値を調整するビットシフト処理部と、
前記ビットシフト処理部により減光処理された前記画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理部と、
を備えた画像表示装置。

【請求項2】
前記減光処理部は、
主走査方向の走査線であって前記走査ミラー部の往路または復路のいずれか一方の走査線の輝度値を0として表示させる制御を行う、
請求項1に記載の画像表示装置。

【請求項3】
前記減光処理部は、
主走査方向の走査線上において、前記画素の輝度値を一つ置きに0として表示させる制御を行う、
請求項1に記載の画像表示装置。

【請求項4】
前記減光処理部は、
主走査方向の往路の走査線と主走査方向の復路の走査線とで、輝度値が0となる画素が縦方向に並ばないように表示させる制御を行う、
請求項3に記載の画像表示装置。」

3 申立ての理由の概要
特許異議申立人 特許業務法人にじいろ特許事務所は、証拠として、特開2003-43975号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開2005-208259号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び、特開2005-106930号公報(以下、「刊行物3」という。)を提出し、
(1)本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明、及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件特許発明2は、刊行物1に記載された発明、刊行物2の記載及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件特許発明3は、刊行物1に記載された発明、及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件特許発明4は、刊行物1に記載された発明、及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
から、本件特許発明1-4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、本件特許発明1-4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4 刊行物の記載
(1)刊行物1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入力画素データに応じて変調された光ビームを走査させることによりスクリーン上に画像を表示する光走査型画像表示装置及びその画像表示方法に関する。」


イ 「【0016】請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の光走査型画像表示装置の画像表示方法において、少なくとも1つ以上置きとなるように分離された前記主走査方向の画素を表示させる順番を副走査方向の各ライン毎に異ならせるようにした。」

ウ 「【0036】
【発明の実施の形態】本発明の第一の実施の形態を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施の形態の光走査型画像表示装置及びその画像表示方法は、装置自体としては、一般的な光走査型プロジェクタに適用可能である。図1はその一般的な光走査型プロジェクタの構成例を示し、(a)は側面図、(b)はその一部の平面図である。
【0037】その概略構成及び作用について説明する。まず、各々R,G,Bで示す3原色のレーザ光を発生するレーザ光源1r,1g,1bが設けられている。これらのレーザ光源1r,1g,1bとしてはガスレーザや半導体レーザ等を適宜用い得る。これらのレーザ光源1r,1g,1bからの各レーザ光は光変調器2r,2g,2bにより各色に対応する入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて変調される。光変調器2r,2g,2bとしては例えばAOM(音響光学変調器)などが用いられる。変調されたレーザ光はミラー3r,3b,ダイクロイックプリズム等の合成光学素子4により合成され、1本の走査レーザ光(光ビーム)が生成される。
【0038】合成されたレーザ光はポリゴンミラー5に入射される。ポリゴンミラー5はポリゴンモータドライブ信号PMDに基づきポリゴンモータ6により高速回転されて入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させる。ポリゴンミラー5によって反射(偏向走査)されたレーザ光はガルバノミラー7に入射される。ガルバノミラー7は、ガルバノモータドライブ信号GMDに基づきガルバノモータ8により揺動回動されて入射するレーザ光に対して直交する方向に往復運動するミラーであり、これにより入射するレーザ光を垂直方向に副走査させる。ガルバノミラー7によって反射されたレーザ光はスクリーン9に導かれ、結果的にスクリーン9上に画像が2次元的に表示される。
【0039】このような基本的な構成において、本実施の形態では、光ビームを扁平形状にして隣接画素間での走査光のOFF期間を短くしても応答速度の高速化を必要としない方法を提供するものであり、まず、本実施の形態による画像表示方法の原理を図2を参照して説明する。
【0040】図2は、光ビームの走査に関連してのON/OFFの様子を示すタイミングチャートであり、(a)は前述した公報例による場合の光ビームのON/OFFの様子を示し、(b)は本実施の形態による方法として例えば主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては1画素置きとなるように、1フレームを2つのサブフレームに分離(時分割)して順次表示させる場合のON/OFFの様子を示している。なお、図2(b)に関しては、図示の都合上、同時に2つのサブフレームを表示しているように描いているが、実際には時間的に分割されており、1サブフレーム分の時間差がある。即ち、各サブフレームでは1画素毎の間引き表示となる。
【0041】図2(a)において、例えば光利用効率が90%になるように1画素表示期間Tp中におけるOFF期間をTp/10とすると、この短いパルス幅Tp/10に応答しなければならなくなるためにレーザ光源としては10倍以上の高速な応答速度が必要となる。一方、図2(b)に示すような本実施の形態の方法においては、フレーム周波数を一致させるために1画素表示期間を1/2としたとしても、一方のサブフレーム表示中には表示画素が1画素置きとされ、1フレームにおける隣接画素用のTp/10に加えて他方のサブフレーム分の10Tp/10なるOFF期間を含むため、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度としては短い方のON期間、即ち、9Tp/10を考慮すればよく、応答速度は10/9≒1.1倍にしかならない。
【0042】従って、基本的に、主走査方向の一連の画素を、各サブフレーム内では1画素置きとなるように1フレームを複数、ここでは、2つのサブフレームに時分割して表示させることにより、隣接画素が干渉し合うのを防止するために隣接画素間に走査ビームのOFF期間を設け、かつ、光利用効率を上げるために光ビームの断面形状を主走査方向に扁平形状とする状況下に、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度を特に高速化する必要がなく、結果として、低コストで低消費電力の光走査型画像表示装置の画像表示方法を提供することができる。
【0043】次に、このような原理に基づき画像表示を行なわせるための構成例について、図3及び図4に示すブロック図を参照して説明する。図3は図1中に示す表示画像制御回路10中の入力画素信号ARoを生成出力するための回路構成例を示す。ここでは、サブフレーム数を3個とした場合の構成例を示しており、また、入力画素信号AGo,ABoに関しても全く同様であるため、表示画像制御回路10中のこれらの入力画素信号AGo,ABoに関しての構成例は省略する。
【0044】まず、赤色R用のアナログ入力画素信号Riを適当なレベルに増幅するアンプ11が設けられている。また、入力画素信号に対応する垂直及び水平の入力同期信号VD,HDに基づきアナログ入力画素信号Riの同期クロックRCKを再生出力する同期信号抽出回路12が設けられている。アンプ11による画素信号Riの増幅出力ARiはA/D変換器13に入力され、同期クロックRCKに同期してデジタル画素信号DRiに変換されて、画像処理部14に出力される。
【0045】ここに、画像処理部14はサブフレーム数=3に対応させて3つのサブフレームメモリ15a,15b,15cを有し、A/D変換器13から出力されるデジタル画素信号DRiを画素分離制御回路16による制御の下に2画素置きにこれらのサブフレームメモリ15a,15b,15cに分離する画素分離手段としての画素分離回路17と、表示制御回路18による制御の下にサブフレームメモリ15a,15b,15cに格納されたサブフレームの各画素を順次選択してD/A変換器19に出力させる表示制御手段としてのサブフレーム選択回路20とが設けられている。」

エ 「【0052】サブフレーム選択回路20は、サブフレームメモリ15a,15b,15cからの出力中から一つを表示制御信号S2に基づき選択し表示画像信号DRoとして出力する。このサブフレーム選択回路20から出力される表示画像信号DRoはD/A変換器19に入力され、アナログ画素信号ARoに変換されて出力される。
【0053】このアナログ画素信号ARoは、G,Bの同様の出力AGo,ABoとともに前述の通り、光変調器2r,2g,2bに入力され(図1)、各レーザ光源1r,1g,1bからのレーザ光を変調する。なお、レーザ光源1r,1g,1bとして、例えば半導体レーザのように直接変調可能なものを使用した場合であれば、これらのアナログ画素信号ARo,AGo,ABoをレーザ光源1r,1g,1bに直接入力させて変調するようにしてもよい。」

オ 「【0055】前述の実施の形態においては、個々の画素に着目してみると表示されていないサブフレーム周期の期間が生じるために、輝度が低下するという懸念がある。そこで、本実施の形態では、副走査方向に複数本の光ビームを設けて同時に走査させることによりフレーム周波数を高くすることで輝度の低下防止ないしは輝度の向上を図れるようにしたものである。」

カ 「【0074】
【発明の効果】請求項1記載の発明の光走査型画像表示装置の画像表示方法によれば、光ビームを変調させる主走査方向の一連の画素を、各サブフレーム内では少なくとも1つ以上の画素置きとなるように1フレームを複数のサブフレームに時分割して表示させるようにしたので、隣接画素間の干渉を防止するために光ビームに短いOFF期間を持たせるようにしても、個々のサブフレームの個々の画素においては他のサブフレーム用のOFF期間を利用することができるため、時間的な余裕があり、レーザ光源等の応答速度を特に高速化する必要なく、光の利用効率を向上させることができ、よって、低コストで低消費電力で済む画像表示方法を提供することができる。」

以上より、次の技術事項を読み取ることができる。
(ア) 段落【0001】には、「入力画素データに応じて変調された光ビームを走査させることによりスクリーン上に画像を表示する光走査型画像表示装置」が記載されている。

(イ)段落【0036】?【0037】、及び段落【0053】より、「光走査型画像表示装置は、光走査型プロジェクタに適用可能であり、光走査型プロジェクタには、各々R,G,Bで示す3原色のレーザ光を発生するレーザ光源1r,1g,1bが設けられ、レーザ光源1r,1g,1bからの各レーザ光は光変調器2r,2g,2bにより各色に対応する入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて変調されるが、レーザ光源1r,1g,1bとして半導体レーザを使用した場合には、入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて直接変調可能であり、変調されたレーザ光は合成光学素子4により合成され、1本の走査レーザ光(光ビーム)が生成される。」との技術事項を読み取ることができる。

(ウ)段落【0038】より「合成されたレーザ光はポリゴンミラー5に入射され、ポリゴンミラー5は、入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させ、ポリゴンミラー5によって反射(偏向走査)されたレーザ光はガルバノミラー7に入射され、ガルバノミラー7は、揺動回動されて入射するレーザ光に対して直交する方向に往復運動するミラーであり、これにより入射するレーザ光を垂直方向に副走査させ、ガルバノミラー7によって反射されたレーザ光はスクリーン9に導かれ、結果的にスクリーン9上に画像が2次元的に表示される。」との技術事項を読み取ることができる。

(エ)段落【0040】?【0042】には、「主走査方向の一連の画素を、各サブフレーム内では1画素置きとなるように1フレームを2つのサブフレームに時分割して表示させること」が記載され、段落【0043】?【0045】には、「サブフレーム数を3個とした場合」が記載されているから、両記載を総合すると、上記各段落より、「主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるように、1フレームを少なくとも2つ以上のサブフレームに分離(時分割)して順次表示させ、各サブフレームでは、少なくとも1つ以上の画素毎の間引き表示となることにより、隣接画素間に走査ビームのOFF期間を設け、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度を特に高速化する必要がない、光走査型画像表示装置。」との技術事項を読み取ることができる。

よって、上記(ア)-(エ)より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「入力画素データに応じて変調された光ビームを走査させることによりスクリーン上に画像を表示する光走査型画像表示装置であって、
光走査型画像表示装置は、光走査型プロジェクタに適用可能であり、光走査型プロジェクタには、各々R,G,Bで示す3原色のレーザ光を発生するレーザ光源1r,1g,1bが設けられ、レーザ光源1r,1g,1bからの各レーザ光は光変調器2r,2g,2bにより各色に対応する入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて変調されるが、、レーザ光源1r,1g,1bとして半導体レーザを使用した場合には、入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて直接変調可能であり、変調されたレーザ光は合成光学素子4により合成され、1本の走査レーザ光(光ビーム)が生成され、
合成されたレーザ光はポリゴンミラー5に入射され、ポリゴンミラー5は、入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させ、ポリゴンミラー5によって反射(偏向走査)されたレーザ光はガルバノミラー7に入射され、ガルバノミラー7は、揺動回動されて入射するレーザ光に対して直交する方向に往復運動するミラーであり、これにより入射するレーザ光を垂直方向に副走査させ、ガルバノミラー7によって反射されたレーザ光はスクリーン9に導かれ、結果的にスクリーン9上に画像が2次元的に表示され、
主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるように、1フレームを少なくとも2つ以上のサブフレームに分離(時分割)して順次表示させ、各サブフレームでは、少なくとも1つ以上の画素毎の間引き表示となることにより、隣接画素間に走査ビームのOFF期間を設け、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度を特に高速化する必要がない、
光走査型画像表示装置。」

(2)刊行物2には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence )ディスプレイ装置の駆動装置および駆動方法に関する。」

「【0006】
また、有機ELディスプレイ装置において、画素の輝度を低下させる方法が種々知られ
ている。例えば、パルス幅変調方式(PWM:Pulse Width Modulation)が知られている。PWMでは、選択期間中に有機薄膜(信号電極と選択行走査電極との間の有機薄膜)に定電流を流す時間を短縮することによって画素の輝度を低下させる。また、PWMによって中間調表示を行うこともできる。すなわち、選択期間における画素の発光時間の割合(有機薄膜に定電流を流す時間の割合)を変化させることで、階調を変化させることができる。
【0007】
また、パルス高さ変調方式(PHM:Pulse Height Modulation )では、有機薄膜に流す電流の電流値(電流の大きさ)を低下させることによって画素の輝度を低下させる。また、フレームレートコントロール(FRC:Frame Rate Control)では、あるフレームで画素を発光させ、他のフレームでその画素を発光させないようにして、その画素の輝度を低下させる。なお、一般に、FRCにはフリッカが生じやすいという問題がある。」

「【0011】
車載用ナビゲーションシステムの表示装置等では、周囲が明るいときに高輝度で画像を表示し、周囲が暗いときには低輝度で画像を表示するように切り替える。このような切り替えにおいて、高輝度での表示を通常表示と記すことにする。また、低輝度での表示をディミング表示と記すことにする。なお、通常表示の場合も、ディミング表示の場合も、それぞれPWMによって中間調表示を行うことができる。」

「【0014】
ディミング表示に切り替えたときの輝度を、より低い輝度にすることが求められている。しかし、以上のように、PHMによる場合であっても、PWMによる場合であっても、ディミング表示に切り替えたときの輝度をある程度よりも低くすることは困難であった。また、その結果、ディミング比をある程度より低くすることも困難であった。ディミング比とは、通常表示時の輝度に対するディミング表示時の輝度の割合である。
【0015】
また、ディミング表示時において、画素を確実に発光させることが好ましい。
【0016】
そこで、本発明は、通常表示からディミング表示に切り替えた時の輝度をより低くすることを目的とする。また、ディミング表示時において画素を確実に発光させることができるようにすることを目的とする。」

「【0072】
[実施の形態2]第1の実施の形態では、ディミング表示時に、発光させるべき画素に流す定電流を低下させ、かつ、その定電流を流す時間を短縮することにより、ディミング表示時における輝度を従来よりも低くすることを可能とした。第2の実施の形態では、さらにFRCを組み合わせることにより、ディミング表示時における輝度をより低くする。
【0073】
本発明の第2の実施の形態の構成は、図1に例示する第1の実施の形態の構成と同様である。また、通常表示時における動作も、第1の実施の形態における動作と同様である。
【0074】
また、ディミング表示時において、信号電極ドライバ4が、コントローラ2の制御および取得した表示データに基づいて行う動作も、第1の実施の形態と同様である。すなわち、信号電極ドライバ4は、ディミング表示時に通常表示時よりも低い定電流(第2の定電流)を画素に流すようにし、また、画素を最大輝度で表示するために選択期間内で電流を流す時間を、通常表示時よりも短い時間T2に短縮する。
【0075】
ただし、ディミング表示時に、メモリ2aは、一つの画像を表すために複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データを記憶する。この表示データは、外部MPU6がメモリ2aに記憶させればよい。そして、コントローラ2は、その複数フレーム分の表示データを、フレーム毎に表示させる。最後のフレームに対応する表示データに基づいて表示を行ったならば、次のフレームからは再び最初のフレームに対応する表示データから順に表示していけばよい。
【0076】
また、一つの画像を表すために複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データにおいて、個々の画素に対応するデータは、それぞれ、複数フレームのうちの少なくとも一部のフレームでオフ表示とされるように定められている。
【0077】
図9は、一つの画像を表すために複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データの例を示す説明図である。図9では、簡便のため、3行4列分の画素に応じた表示データを例にしている。また、図9において、画素毎に示した数値は階調を表している。本例では、第0階調(オフ表示)から第3階調(最大輝度)までの4階調で表示を行うものとする。また、図9に示す表示データのうち、階調が示されていない箇所は、その箇所に対応する画素がオフ表示になることを表している。
【0078】
図9(a)は、奇数列の各画素をいずれかの階調で表示し、偶数列の画素を第0階調にすることを示している表示データである。また、図9(b)は、偶数列の各画素をいずれかの階調で表示し、奇数列の画素を第0階調にすることを示している表示データである。図9に示す例において、個々の画素に対応するデータは、それぞれ、複数のフレーム(本例では2つのフレーム)のうちの少なくとも一部のフレームでオフ表示とされている。コントローラ2は、図9(a)に示す表示データに基づく表示と、図9(b)に示す表示データに基づく表示とを、フレーム毎に順に実行させる。すると、オフ表示以外の第1階調から第3階調のいずれかが指定されている画素の輝度は、指定された輝度の1/2の輝度で表示される。」

「【0082】
図9では、各フレーム毎に表示する表示データにおいて、第0階調とする画素を列毎にまとめる場合を示した。個々の画素に対応するデータが、それぞれ、複数フレームのうちの少なくとも一部のフレームでオフ表示とされるように定められていれば、第0階調とする画素が列毎にまとめられていなくてもよい。例えば、図11に示す二つの表示データのように、一方の表示データでは、偶数行奇数列の画素および奇数行偶数列の画素を第0階調とし、もう一方の表示データでは、奇数行奇数列の画素および偶数行偶数列の画素を第0階調とするようにしてもよい。また、例えば、図12に示す二つの表示データのように、一方の表示データでは偶数行の画素を第0階調とし、もう一方の表示データでは奇数行の画素を第0階調とするようにしてもよい。図11に例示する二つの表示データをフレーム毎に交互に用いて表示した場合であっても、表示データで定められた階調の1/2の階調の表示として観察者に認識される。図12に例示する二つの表示データを用いた場合も同様である。
【0083】
なお、図9、図11および図12では、2種類の表示データを順に表示する場合の表示データの組を例示した。複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データの組は、3フレーム分以上の表示データの組であってもよい。」

よって、刊行物2には、「第2の実施の形態」として、次の技術(以下、「刊行物2に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる(括弧内の段落番号は、認定の根拠とした段落番号である。)。

「有機EL(Electroluminescence )ディスプレイ装置の駆動装置および駆動方法(【0001】)であって、高輝度での表示を通常表示と記し、低輝度での表示をディミング表示と記す(【0011】)と、通常表示からディミング表示に切り替えた時の輝度をより低くする(【0016】)ため、ディミング表示時に、発光させるべき画素に流す定電流を低下させ、かつ、その定電流を流す時間を短縮し、さらにFRC(あるフレームで画素を発光させ、他のフレームでその画素を発光させないようにして、その画素の輝度を低下させる(【0007】))を組み合わせ(【0072】)、
一つの画像を表すために複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データにおいて、個々の画素に対応するデータは、それぞれ、複数フレームのうちの少なくとも一部のフレームでオフ表示とされるように定め(【0076】)、
一つの画像を表すために複数フレームに渡って表示される複数フレーム分の表示データ(【0077】)は、奇数列の各画素をいずれかの階調で表示し、偶数列の画素を第0階調にすることを示している表示データ(以下、「図9(a)に示す表示データ」という。)(【0078】)、及び、偶数列の各画素をいずれかの階調で表示し、奇数列の画素を第0階調にすることを示している表示データ(以下、「図9(b)に示す表示データ」という。)であり(【0078】)、
個々の画素に対応するデータは、それぞれ、複数のフレーム(本例では2つのフレーム)のうちの少なくとも一部のフレームでオフ表示とされ、図9(a)に示す表示データに基づく表示と、図9(b)に示す表示データに基づく表示とを、フレーム毎に順に実行させ、オフ表示以外の第1階調から第3階調のいずれかが指定されている画素の輝度は、指定された輝度の1/2の輝度で表示され(【0078】)、
二つの表示データは、一方の表示データでは、偶数行奇数列の画素および奇数行偶数列の画素を第0階調とし、もう一方の表示データでは、奇数行奇数列の画素および偶数行偶数列の画素を第0階調とするようにしてもよく、また、一方の表示データでは偶数行の画素を第0階調とし、もう一方の表示データでは奇数行の画素を第0階調とするようにしてもよく、表示データで定められた階調の1/2の階調の表示として観察者に認識される【0082】)、
有機EL(Electroluminescence )ディスプレイ装置の駆動装置および駆動方法。」

(3)刊行物3(特開2005-106930号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。
「【0001】
本発明は、入力される画像データを表示手段に応じた信号に変換して出力する表示信号変換装置に関する。」

「【0002】
工業生産の自動化が進み、個々の製造装置がコントローラによって制御され、さらに複数のコントローラがコンピュータによって集中管理されるような複雑なシステムが多く使用されるようになってきている。・・・(中略)・・・従って、収集した情報、緊急情報、作業に必要な情報などを、誤認されることなく分かりやすく提示するために、表示装置もカラー表示、多諧調表示などの高機能化が要求されている。例えば、緊急時や、重要な情報を提示するときに、提示情報を強調するために、画面の輝度を2段階に周期的に変化させる(以下、ブリンクと記す)表示が行われている(下記の特許文献1参照)。」

「【0007】
即ち、本発明に係る表示信号変換装置装置(1)は、ブリンク制御信号及びマルチプレクサ制御信号を出力するCPU-IF部と、該CPU-IF部からの出力データが入力されるブリンク処理部と、入力データを所定の映像信号に変換して出力するディスプレイIF部とを備え、前記ブリンク処理部が、前記ブリンク制御信号から、垂直ブランキング期間中に信号レベルが反転するブリンククロックを生成するブリンククロック生成部と、前記ブリンククロックに応じて、入力される画像データを第1のブリンク画像データとして出力する白黒ブリンク信号生成部と、入力される前記画像データを所定のビット数だけビットシフトしてビットシフト画像データを生成し、前記ブリンククロックに応じて、入力される前記画像データと前記ビットシフト画像データとを交互に第2のブリンク画像データとして出力する減光ブリンク信号生成部と、前記マルチプレクサ制御信号に応じて、前記第1のブリンク画像データ及び前記第2のブリンク画像データの何れかを選択して、前記ディスプレイIF部に出力するマルチプレクサとを備えていることを特徴としている。
上記表示信号変換装置(1)によれば、ブリンク機能をハードウェアで実現することができ、CPUの負荷を軽くすることができ、比較的低性能の安価なCPUを使用することが可能になる。」

「【0015】
ブリンク表示機能が指定されている場合、ブリンク処理部10が、入力される画像データの各画素データを、所定の周期で変化させて、ディスプレイIF部13に出力する。ディスプレイIF部13は、入力される画像データを、表示部5に応じた映像信号に変換して表示部5に出力する。これによって、所定の周期でブリンクする画像が表示される。」

【0021】
減光ブリンク信号生成部21は、入力される画像データdata_inのビットシフトを行った後、上記したブリンククロックbs_clkに応じて信号出力する。例えば、画像データdata_inが所定のビット数のRGB信号として入力され、R、G、B各色のデータビットの下位方向に輝度が低くなるとすると、下位ビット側に1ビットシフトする。例えば、1画素のRデータを5ビットとし、各ビット値をRi(i=4?0)で表す場合、入力されたR画像データRin=(R4,R3,R2,R1、R0)を右側に1ビットシフト(最上位ビットには“0”をセットする)して、データRout=(“0”,R4,R3,R2,R1)を生成する。その後、データRoutは、例えば、ブリンククロックbs_clkがハイレベルの間は、減光ブリンク信号生成部21から出力され、ブリンククロックbs_clkがローレベルの間は出力されない。G、Bのデータに関しても同様に処理される。これによって、表示部5に表示された場合に、元画像の約1/2の輝度となる画像データが生成される。」

「【0023】
以上によって、選択信号(B_EN,BSET)に応じて、ブリンクの有無及びブリンクの種類を決定することができ、画素クロックINDCLK、垂直同期信号VSYNC、基準クロックPWM0、及びブリンク周期設定情報bs1[1:0]によって決定されるブリンククロックbs_clkの周期で、フレームに同期したブリンク表示が可能となる。例えば、減光ブリンクが指定された場合には、元画像と、その約1/2の輝度の画像とが、ブリンククロックbs_clkに従って、交互に表示部5に表示される。また、白黒ブリンクが指定された場合には、元画像と、黒画像(画像表示なし)とが、ブリンククロックbs_clkに従って、交互に表示部5に表示される。

以上より、刊行物3には、次の技術が記載されているものと認められる(括弧内の段落番号は、認定の根拠とした段落番号である。)。
「緊急時や、重要な情報を提示するときに、提示情報を強調するために、画面の輝度を2段階に周期的に変化させる(以下、ブリンクと記す)表示が行われるよう(【0002】)、減光ブリンク信号生成部(【0007】)で、入力される画像データをビットシフトし(例えば、下位方向に輝度が低くなるとすると、下位ビット側に1ビットシフトする)、表示部に表示された場合に、元画像の約1/2の輝度となる画像データが生成され(【0007】、【0021】)、ブリンク表示機能が指定されている場合、ブリンク処理部が、入力される画像データの各画素データを、所定の周期で変化させて、所定の周期でブリンクする画像が表示され(【0015】)、減光ブリンクが指定された場合には、元画像と、その約1/2の輝度の画像とが、交互に表示部5に表示される(【0023】)、技術。」

5 対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「各々R,G,Bで示す3原色のレーザ光を発生するレーザ光源1r,1g,1b」と「レーザ光」を「合成」し、「1本の走査レーザ光(光ビーム)」を「生成」する「合成光学素子4」とが、本件特許発明1における「光束を出力するレーザ光源部」に相当する。

イ 引用発明1において、「ポリゴンミラー5は、入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させ、ポリゴンミラー5によって反射(偏向走査)されたレーザ光はガルバノミラー7に入射され、ガルバノミラー7は、揺動回動されて入射するレーザ光に対して直交する方向に往復運動するミラーであり、これにより入射するレーザ光を垂直方向に副走査させ」ている。
よって、引用発明1における「ポリゴンミラー5」及び「ガルバノミラー7」と、本件特許発明1における「主走査方向及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部」とは、「主走査方向に駆動され、及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部」の点で共通する。

ウ 引用発明1では、「レーザ光源1r,1g,1bからの各レーザ光は光変調器2r,2g,2bにより各色に対応する入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて変調されるが、レーザ光源1r,1g,1bとして半導体レーザを使用した場合には、入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて直接変調可能であり、変調されたレーザ光は合成光学素子4により合成され、1本の走査レーザ光(光ビーム)が生成され」るとされている。
よって、引用発明1における、「入力画素信号ARo,AGo,ABoに基づいて」「レーザ光源1r,1g,1bからの各レーザ光」を「変調」する「光変調器2r,2g,2b」、または「レーザ光源1r,1g,1bとして半導体レーザを使用した場合」の「直接変調」のための回路が、本件特許発明1における「画像データに基づいて前記レーザ光源部を駆動させる光源駆動部」に相当する。

エ 引用発明1において「主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるように、1フレームを少なくとも2つ以上のサブフレームに分離(時分割)して順次表示させ、各サブフレームでは、少なくとも1つ以上の画素毎の間引き表示となる」ようにする理由は、「隣接画素間に走査ビームのOFF期間を設け、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度を特に高速化する必要がない」ようにするためであって、これにより結果的に「個々の画素に着目してみると表示されていないサブフレーム周期の期間が生じるために、輝度が低下するという懸念がある。」(刊行物1の段落【0055】参照。)とされていることから、減光処理を目的としたものでないことは明らかである。
よって、引用発明1において「主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるように、1フレームを少なくとも2つ以上のサブフレームに分離(時分割)して順次表示させ、各サブフレームでは、少なくとも1つ以上の画素毎の間引き表示となる」ようにすることと、本件特許発明1における「前記画像データを構成する画素の輝度値を調整するビットシフト処理部と、前記ビットシフト処理部により減光処理された前記画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理部」とは、「前記画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う処理部」の点で共通する。

よって、本件特許発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「光束を出力するレーザ光源部と、
主走査方向に駆動され、及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部と、
画像データに基づいて前記レーザ光源部を駆動させる光源駆動部と、
画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う処理部と、
を備えた画像表示装置。」

(相違点1)
本件特許発明1では、主走査方向に光束を反射させる走査ミラー部が「主走査方向に往復駆動」されているのに対し、引用発明1では、「ポリゴンミラー5は、入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させ」ている点。

(相違点2)
本件特許発明1では、画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う処理部が「減光処理部」であって、「減光処理部」は、「前記画像データを構成する画素の輝度値を調整するビットシフト処理部」により「減光処理された前記画像データに対して」処理を行なっているのに対し、引用発明1では、主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるようにしているものの、該処理は「減光」のための処理ではなく、さらに、引用発明1では、入力画素データの輝度値を調整するビットシフト処理部を備えておらず、ビットシフト処理部により減光処理された画像データに対して、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるようにすることも示されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
走査ミラー部を、主走査方向に「往復駆動」させる構成は、刊行物2、3の何れにも記載されていない。
よって、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成は、当業者といえども、刊行物2、3の記載に基づいて、容易になし得たものではない。

(イ)相違点2について
a 引用発明1は、「フレーム周波数を一致させるために1画素表示期間を1/2としたとしても、一方のサブフレーム表示中には表示画素が1画素置きとされ、1フレームにおける隣接画素用のTp/10に加えて他方のサブフレーム分の10Tp/10なるOFF期間を含むため、レーザ光源1r,1g,1bの応答速度としては短い方のON期間、即ち、9Tp/10を考慮すればよく、応答速度は10/9≒1.1倍にしかならない。」(刊行物1段落【0041】)と記載されているとおり、「レーザ光源「1r,1g,1bの応答速度を特に高速化する必要がな」(刊行物1段落【0042】)いようにすることを目的として発明であって、表示画像の輝度の調整を目的とした発明ではなく、かえって、刊行物1の段落【0055】に「前述の実施の形態においては、個々の画素に着目してみると表示されていないサブフレーム周期の期間が生じるために、輝度が低下するという懸念がある。」と記載されているとおり、引用発明1では、その実施により輝度が低下することが懸念されているのであるから、引用発明1において、主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるようにする処理を、減光のための処理とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。

b 刊行物3に示された技術を再掲すれば、次のとおりである。
「緊急時や、重要な情報を提示するときに、提示情報を強調するために、画面の輝度を2段階に周期的に変化させる(以下、ブリンクと記す)表示が行われるよう、減光ブリンク信号生成部で、入力される画像データをビットシフトし(例えば、下位方向に輝度が低くなるとすると、下位ビット側に1ビットシフトする)、表示部に表示された場合に、元画像の約1/2の輝度となる画像データが生成され、ブリンク表示機能が指定されている場合、ブリンク処理部が、入力される画像データの各画素データを、所定の周期で変化させて、所定の周期でブリンクする画像が表示され、減光ブリンクが指定された場合には、元画像と、その約1/2の輝度の画像とが、交互に表示部5に表示される、技術。」
よって、入力される画像データのビットシフトを行い(例えば、下位方向に輝度が低くなるとすると、下位ビット側に1ビットシフトする)、表示部に表示された場合に、元画像の約1/2の輝度となる画像データを生成する技術は、周知技術であると認められる。
しかし、引用発明1における「主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるように、1フレームを少なくとも2つ以上のサブフレームに分離(時分割)して順次表示させ、各サブフレームでは、少なくとも1つ以上の画素毎の間引き表示となる」処理(以下、単に「処理」という。)は、上記aで述べたとおり、表示画像の輝度の調整を目的とした処理ではなく、かえって、輝度が低下するという懸念が表明されている処理である以上、仮に、引用発明1に上記周知技術を適用し、引用発明1において、入力画素データのビットシフトにより元画像の約1/2の輝度となった画像データを生成したとしても、引用発明1における上記処理を、ビットシフトにより元画像の約1/2の輝度となった画像データをさらに「減光」するための処理(つまり、本件特許発明1でいう、「ビットシフト処理」により「減光処理された」「画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理」)とすることまでは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、上記周知技術を考慮したとしても、引用発明1において、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

c 以上のとおり、本件特許発明1は、上記引用発明1及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の構成を備えるものである。
そして、刊行物2にも、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の構成は記載されていないから、本件特許発明2は、上記本件特許発明1について述べたのと同様の理由により、上記引用発明1、刊行物2に記載された技術、及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明3-4について
本件特許発明3-4は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の構成を備えるものである。
よって、本件特許発明3-4は、上記本件特許発明1について述べたのと同様の理由により、上記引用発明1及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)以上のとおり、本件特許発明1、3-4は、引用発明1及び周知技術(刊行物3)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許発明2は、引用発明1、刊行物2に記載された技術、及び周知技術(刊行物3)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)異議申立て人の主張について
ア 本件特許発明1について
(ア)特許異議申立人は、本件特許発明1と刊行物1に記載された発明とは、「主走査方向及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部」を備える点で共通するとしている(異議申立書第10頁第11-19行)が、上記「5」のとおり、刊行物1におけるポリゴンミラー5は、入射するレーザ光に対して水平方向に回転する多面鏡であり、入射するレーザ光をその回転に伴ない水平方向に主走査させるものであって、主走査は、往復駆動ではない。
そして、刊行物2、3の何れにも、主走査方向に往復駆動される走査ミラー部は、記載されていない。

(イ)特許異議申立人は、
a 本件特許発明1と刊行物1に記載された発明とは、「画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理部」を備える点で共通する。
b 表示する画像の輝度を調整するために、画像の基となる画像データの値を調整することは慣用技術であり、画像データ値を調整する具体的方法として画像データをビットシフトさせることは、例えば刊行物3に記載されているように、周知技術であるから、該周知技術を刊行物1に記載された発明に適用することは、適宜なされることである。
c そして、刊行物1に記載された発明において、表示する画像の輝度を調整するためのビットシフト処理部を適用した場合には、本件特許発明1の構成となる。
d 本件特許発明1により得られる作用効果も、刊行物1に記載された発明及び周知技術から得られる範囲のものであり、格別な作用効果ではない。

旨主張している(異議申立書第11頁第2-16行、同第13頁第7-9行)。

しかし、引用発明1において、主走査方向の一連の画素を、1つのサブフレーム内においては、少なくとも1つ以上の画素置きとなるようにする処理が、減光のための処理とはいえないこと、また、引用発明1において、仮に周知技術(刊行物3)を適用したとしても、引用発明1における上記処理を、ビットシフトにより元画像の約1/2の輝度となった画像データをさらに「減光」するための処理(つまり、本件特許発明1でいう、「ビットシフト処理」により「減光処理された」「画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理」)とすることまでは、当業者が容易に想到し得たことではないことは、上記「(1)」「(イ)相違点2について」で述べたとおりである。

よって、本件特許発明1についての異議申立人の主張は、採用できない。

イ 本件特許発明2-4について
特許異議申立人は、本件特許発明2-4について、当業者が容易になし得たものである旨主張している(異議申立書第11頁第17行-第13頁第6行、同第13頁第7-9行)が、本件特許発明1についての特許異議申立人の主張に理由のないことは、上記「ア」で述べたとおりであるから、本件特許発明1を更に減縮した本件特許発明2-4についての異議申立人の主張も、同様に、採用できない。

6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1-4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-16 
出願番号 特願2013-62(P2013-62)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G09G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
登録日 2017-01-27 
登録番号 特許第6079239号(P6079239)
権利者 株式会社JVCケンウッド
発明の名称 画像表示装置  
代理人 家入 健  

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