• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1334393
異議申立番号 異議2017-700677  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-11 
確定日 2017-11-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6059278号発明「窓シャッター装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6059278号の請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6059278号の請求項2に係る特許についての出願は、平成23年9月1日に出願された特願2011-190977号の一部を平成27年3月23日に新たな特許出願としたものであって、平成28年12月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人堀部直行(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


2 本件発明
特許第6059278号の請求項2の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものである。


3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出し、本件発明は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張している。

甲第1号証:特開2007-297798号公報
甲第2号証:特開2005-30123号公報
甲第3号証:特開平9-317360号公報
甲第4号証:特開2007-217987号公報
甲第5号証:特開2007-191921号公報
甲第6号証:特開2002-227571号公報
甲第7号証:特開2006-214193号公報
甲第8号証:特開2001-132363号公報
甲第9号証:特公平3-71556号公報
甲第10号証:特開昭61-75189号公報
甲第11号証:特開2004-232294号公報
甲第12号証:特開平11-247544号公報
甲第13号証:特開2004-169454号公報
甲第14号証:実願平2-33882号(実開平3-125192号)のマイクロフィルム
甲第15号証:特開2002-146949号公報
甲第16号証:特開2005-16150号公報
甲第17号証:実願昭63-16972号(実開平1-119792号)のマイクロフィルム

(1)甲第1号証
甲第1号証には、段落【0022】?【0034】、【0039】、【0056】、図1?図3を参照すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。(下記A?Hは、決定で付した。)

「A シャッタカーテン12の左右側部がガイドレール11に案内され、巻取ドラム14の付勢力に抗して引き出すことによりシャッタカーテン12を閉塞状態にするものであって、シャッタカーテン12の下端部の巾木16が枠部材21の下端部に係止状態に保持してシャッターカーテン12を閉じた状態となるシャッタ装置10において、
B 前記枠部材21の下辺を構成するアルミ材で構成した下枠26には、下枠26の上面から上方に延出する壁部27が配置され、前記下枠26上面の前記壁部27より後方で上方に延出する被係止部28が配置され、被係止部28の先端部が室内側に向かって屈曲することにより逆L字状とされた被係止片29とされ、
前記壁部27と前記被係止部28と下枠26の上面とで凹部が形成され、
C 前記巾木16のアルミの押し出し材として成形された巾木本体17は、水平な上辺部41とこの上辺部41の室外側端部から下方に垂設される室外側壁部42と、室外側壁部42の下端から室内側に水平に延出する下辺部43とから概略コ字状に形成され、
前記下辺部43には、その室内側端部と、室外-室内方向の中央部より僅かに室内側となる部分とから下方に二つの封止片47,48が垂設され、
窓開口部全閉状態において、前記封止片48は前記凹部内に位置し、前記下片部43の後端部は、その真下に位置する前記下枠26の前記被係止片29の上面に対向しており、
D 前記下枠26の前記被係止部28及び前記被係止片29の上面は、窓開口部を閉塞した状態において、前記壁部27及び前記封止片48の室内側に位置しており、
E 前記巾木16の前記巾木本体17の前記封止片48及び前記下辺部43は、窓開口部の閉塞した状態において、前記封止片48が前記凹部内に位置し、前記下辺部43が前記室外側壁部42及び前記封止片47から室内側に水平に延出しており、
F 窓開口部の閉塞状態において、前記巾木16の前記巾木本体17の前記封止片48と前記下枠26の前記被係止部28との間、前記下辺部43と前記下枠26の前記被係止片29の上面との間には間隙が形成されている、
H 窓の開口部を閉塞するシャッタ装置10。」

上記構成Bの「前記壁部27と前記被係止部28と下枠26の上面とで凹部が形成され」、上記構成Cの「窓開口部全閉状態において、前記封止片48は前記凹部内に位置し、前記下片部43の後端部は、その真下に位置する前記下枠26の前記被係止片29の上面に対向しており、」、及び上記構成D?上記構成Fは、図3より認定した。

(2)甲第2号証ないし甲第7号証
甲第2号証(図1及び図4、座板部材11)、甲第3号証(図1、図2及び図5、端板部13)、甲第4号証(図1、図4及び図6、端板部10)、甲第5号証(図3、操作バー4 )、甲第6号証(図2、巾木2)及び甲第7号証(図2及び図4、座板8)には、「シャッターカーテンの座板について、シャッターカーテンを全閉状態にしたときに係止する係止装置を室内側に有するとともに下枠の凹部内に下方部位を位置させる垂直状の部材と、当該垂直状の部材の室内側面部に形成された水平状の部材と、当該垂直状の部材の室外側面部から張り出して下方に折れ曲がる折曲部材とを備え、シャッターカーテンを全閉状態にしたときに下枠の上面から上方へ延びた室外側の壁部を前記垂直状の部材の下方部位と前記折曲部材との間に位置させたこと」(以下「周知技術1」という。)が、記載されている。
また、甲第2号証(図1、下枠40)、甲第3号証(図3及び図4、下枠10b)、甲第4号証(図2、下枠7c)には、本件発明の「下枠を建物外壁に対して持ち出し状に設けたこと」が記載されている。

甲第2号証ないし甲第7号証の記載事項は、実質的に、申立人が主張したとおりに認定した。以下、甲第8号証ないし甲第17号証についても同様。

(3)甲第8号証ないし甲第9号証
甲第8号証(図30、膨張体72)及び甲第9号証(第1図、第2パッキン9)には、「火災時の延焼を防止するために、シャッター等の下部と、その下にある部材との隙間を火災時の熱で膨張する熱膨張耐火部材で閉塞させること」(以下「周知技術2」という。)が記載されている。

(4)甲第10号証ないし甲第11号証
甲第10号証(第1図、耐火膨張材17)及び甲第11号証(図1及び図2、加熱膨張材9)には、「火災時の延焼を防止するために、扉体と下枠との間隙に熱膨張耐火部材を配置すること」(以下「周知技術3」という。)が記載されている。

(5)甲第12号証ないし甲第15号証
甲第12号証(図8、熱膨張シール材72)、甲第13号証(図3、図4及び図5、耐火断熱材8a)、甲第14号証(第2図、防火性発泡材7、11)及び甲第15号証(図4、熱感応型発泡材26)には、「建物の開口部を可動して閉塞する閉塞体において、火災時の熱で膨張する熱膨張耐火部材を可動する閉塞体に設けて、折れ曲がって形成される間隙を閉塞させるようにすること」(以下「周知技術4」という。)が記載されている。

(6)甲第16号証
甲第16号証(図1、図2、図4、下枠8、本体板部26、後水平部29)には、本件発明の「下枠を建物外壁に対して持ち出し状に設けたこと」、及び「座板の本体の長さ方向両端部位がガイドレール内に位置し、水平片の長さ方向両端は、ガイドレール内に位置していないこと」が記載されている。

(7)甲第17号証
甲第17号証(図3、水切板5)には、本件発明の「下枠を建物外壁に対して持ち出し状に設けたこと」が記載されている。


4 当審の判断
(1)対比
本件発明と甲1発明を対比すると、以下の4点で相違している。
相違点1:下枠について、本件発明は、建物外壁に対して持ち出し状に設けられているのに対し、甲1発明は、建物外壁に対してどの様に設けられているか不明な点。
相違点2:座板の本体について、本件発明は「垂直状」であるのに対し、甲1発明は、「概略コ字状」に形成され、下辺部43の下方に「封止片48」が垂設されている点。
相違点3:本件発明は、座板の本体の長さ方向両端部位がガイドレール内に位置し、水平片の長さ方向両端は、ガイドレール内に位置していないのに対し、甲1発明は、封止片48及び下辺部43の長さ方向両端部位がガイドレールの内か外か不明な点。
相違点4:本件発明は、「窓開口部全閉状態において、前記座板の垂直状の本体の下方部位と前記下枠の室内側の垂直面との間、前記前記水平片と前記下枠の上面との間に形成された間隙は、」「室外側で発生した火災時に当該間隙が維持され、火災時の熱で膨張した熱膨張耐火部材によって少なくとも部分的に閉鎖される空間であり、前記座板において、前記垂直状の本体の下方部位の水平片の下方に位置する室内側面部、あるいは/および、当該水平片の下面には、窓開口部全閉状態における火災時に前記間隙の少なくとも一部を閉塞するように、火災時の熱で膨張する前記熱膨張耐火部材が設けてある」のに対して、甲1発明は、当該間隙が、室外側で発生した火災時に維持されるか不明であって、熱膨張耐火部材が設けてあるかも不明な点。

(2)判断
上記各相違点のうち、少なくとも、本件発明の相違点4に係る構成とすることは、申立人が提示した文献には記載も示唆もされておらず、当業者が容易になし得たことではない。
その理由を以下に述べる。
ア 申立人は、甲第8号証ないし甲第15号証には、周知技術2、周知技術3及び周知技術4が記載され(上記3の(3)?(5)参照。)、甲1発明の巾木本体17と下枠26との間に形成される間隙について周知技術3及び周知技術4を適用して巾木本体側に熱膨張耐火材を設けることは、当業者であれば容易になし得ることであり、また、周知技術である熱膨張耐火部材をどこに配置するかは、どの隙間を閉塞したいかによって適宜選択されるべきものといえ、火災時に熱の影響を受けにくい部位に熱膨張耐火部材を設ける点も当業者が容易に想到することができたものであり、さらに加えて、連結部分は、火災時に火の通り道になりやすいなどの弱点となることは当業者にとって明らかであるので、甲1発明に周知技術2乃至4を適用する際に、上記連結部分よりも室内側の封止片48と被係止部28との間及び下片部43と被係止片29との間の間隙に少なくとも熱膨張耐火部材を設けて当該間隙を閉塞させようとすることは、当業者であれば容易に成し得ることである旨、主張している(特許異議申立書38頁13行?39頁24行)。

イ しかしながら、熱膨張耐火部材を設ける位置について、申立人が主張するように、どの隙間を閉塞したいかによって適宜選択されるべきものだとしても、火災時に熱の影響を受けにくい部位を選択し、その上さらに、「前記座板において、前記垂直状の本体の下方部位の前記水平片の下方に位置する室内側面部、あるいは/および、当該水平片の下面」との特定の位置とすることは、申立人が提示する各証拠には示唆する記載は無い。
そして、本件発明は、「・・・かかる隙間は、室外側で発生した火災の熱の影響を比較的受けにくい室外側空間に面しない部位によって形成されているため、火災時に係る間隙が維持され(仮に間隙を形成する部材が溶融したような場合には、間隙が大きくなって熱膨張耐火部材で閉塞することが困難になり得る)、その維持された間隙を膨張した熱膨張耐火部材が良好に閉塞することで、火炎の回りを規制することができる。」(段落【0012】)との効果を奏するものであるから、甲1発明に周知技術2ないし4を適用することにより、相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第17号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項2に係
る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-25 
出願番号 特願2015-60181(P2015-60181)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 美紗子  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6059278号(P6059278)
権利者 三和シヤッター工業株式会社
発明の名称 窓シャッター装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ