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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
管理番号 1334400
異議申立番号 異議2017-700808  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-28 
確定日 2017-11-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第6089017号発明「スロットマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6089017号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6089017号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年11月2日に出願した特願2010-246627号の一部を平成26年11月5日に新たな特許出願(特願2014-224891号)としたものであって、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月28日付けで特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社より請求項1について特許異議の申立てがされたものである。

第2 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当審において請求項1をA-Iに分説した。)。
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C 表示結果が導出される前に、特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、
D 前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかったときに、該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す特別決定持越手段と、
E 複数種類の遊技状態に制御する遊技状態制御手段と、
F 前記複数種類の遊技状態のうち前記特別決定持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている有利遊技状態において該有利遊技状態に固有の有利遊技状態演出を含む遊技状態演出を実行する遊技状態演出実行手段と、
G 所定の設定操作手段の操作に基づいて遊技者にとっての有利度を設定する有利度設定手段と、
を備え、
H 前記有利度設定手段により有利度が新たに設定された場合に、新たに設定された有利度に変更される一方で、前記遊技状態は該有利度の変更前の遊技状態が維持されるとともに、
I 前記遊技状態演出実行手段は、前記有利遊技状態において有利度が新たに設定され、該有利遊技状態が該有利度の変更後も維持される場合に、当該有利度の変更後、前記有利遊技状態演出を実行せず、前記有利遊技状態以外の遊技状態でも実行される共通遊技状態演出を実行する、
スロットマシン。」

2 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社は、証拠方法として甲第1-6号証を提出し、請求項1に係る発明について、以下のとおり主張している。
甲第1号証に記載される甲1発明は、本件発明の発明特定事項A-Iの全てを備えているので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
なお、本件発明の「有利遊技状態演出」が、発明特定事項Fにおける「特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている有利遊技状態」であって「有利度の変更前」の状態においては、少なくとも複数回に亘って実行される構成については請求項1には記載されていないものの、該構成でなければ作用効果を奏し得ないものであるので該構成について検討してみても、該構成については甲第2-6号証に記載のように周知慣用技術であり、本件発明は甲1発明の単なる設計的事項に過ぎないから、甲1発明と同一である。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2008-188075号公報
甲第2号証:特開2009-247801号公報
甲第3号証:特開2009-005967号公報
甲第4号証:特開2008-167993号公報
甲第5号証:特開2008-188223号公報
甲第6号証:特開2009-050727号公報

3 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
特許異議申立人により提出された甲第1号証(特開2008-188075号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。なお、甲第1号証は、本件特許の設定登録前の平成28年7月29日付の拒絶理由で通知された文献と同様のものである。

(ア)「【0002】
従来、複数の図柄が夫々の周面に配された複数のリールと、これら各リールに対応するように複数設けられ、前記各リールの周面に配された複数の図柄のうちの一部の図柄を遊技者が視認可能なように表示する表示窓と、メダルが投入されていることを条件に、遊技者による操作(以下「開始操作」という)を検出すると、各リールの回転の開始を要求する信号を出力するスタートスイッチと、遊技者による操作(以下「停止操作」という)を検出すると、リールの種別に応じて当該リールの回転の停止を要求する信号を出力するストップスイッチと、これらスタートスイッチ及びストップスイッチにより出力された信号に基づいて、ステッピングモータの動作を制御し、各リールの回転及びその停止を行う制御部と、を備えた遊技機、いわゆるパチスロが知られている。通常、このようなパチスロでは、前記複数の表示窓により表示される図柄の組合せに基づいて、入賞か否かが判別され、入賞と判別されるとメダルが払い出される。」

(イ)「【0013】
遊技機1が有する前面ドア2の正面には、略垂直面のパネル表示部2a、液晶表示部2b、及び固定表示部2cが形成されている。また、前面ドア2の背後には、複数種類の図柄が各々の外周面に描かれた3個のリール3L,3C,3Rが、回転自在に横一列に設けられている。各リール3L,3C,3Rは、一定の速度で回転する(例えば、80回転/分)。」

(ウ)「【0043】
実施例では、設定値変更操作及びリセットボタンの押圧操作が行われ、ボーナス遊技情報表示部16に表示される設定値が所望の設定値となったときにスタートレバー6の操作が行われることにより、所望の設定値を設定することができる。即ち、これらの操作により、設定値「1」?設定値「6」の6つの段階のうちから何れかの段階を設定値として決定することができる。」

(エ)「【0050】
上記乱数値の抽出に基づく内部抽籤処理(後述の図47)により内部当籤役を決定すると、CPU31は、遊技者が停止ボタン7L,7C,7Rを操作したタイミングで停止スイッチ7LS,7CS,7RSから送られる入力信号に基づいて、リール3L,3C,3Rの回転の停止を指示する信号をモータ駆動回路39に送る。
・・・
【0052】
図5を参照して、CPU31が後述の内部抽籤テーブルの種別及び抽籤回数を決定するときに用いる内部抽籤テーブル決定テーブルについて説明する。
【0053】
内部抽籤テーブル決定テーブルは、遊技状態に対応して、内部抽籤テーブルの種別の情報及び抽籤回数の情報を規定している。実施例では、遊技状態として、一般遊技状態とRT1遊技状態とRT2遊技状態とRT3遊技状態とRT4遊技状態とRB1遊技状態とRB2遊技状態とが設けられている。RT1遊技状態とRT2遊技状態とRT3遊技状態とRT4遊技状態とを総称して、以下「RT遊技状態」という。RB1遊技状態とRB2遊技状態とを総称して、以下「RB遊技状態」という。
・・・
【0056】
内部抽籤テーブルは、当籤番号に対応して、抽籤値の情報とデータポインタの情報とを規定している。当籤番号は、サンプリング回路37により抽出された一の乱数値に基づいて行われる抽籤に係る複数種類の結果の各々をCPU31が識別するために設けられた番号である。実施例では、予め定められた複数種類の内部当籤役を、入賞に係る内部当籤役及び再遊技に係る内部当籤役とボーナスゲームに係る内部当籤役とに区分し、夫々の区分に対応して小役・リプレイ用データポインタ及びボーナス用データポインタを設けている。」

(オ)「【0096】
図23の(2)は、持越役に係るデータが格納される持越役格納領域を示す。例えば、内部抽籤処理(後述の図47)において内部当籤役としてBB1が決定された場合には、持越役格納領域のビット7に「1」が格納される。即ち、持越役格納領域に「10000000」が格納される。ここで、持越役は、内部抽籤処理(後述の図47)において決定された内部当籤役に係る図柄の組合せが有効ラインに沿って表示されることが一又は複数のゲームにわたり許容される場合に、当該内部当籤役をCPU31が識別するために設けられた情報である。」

(カ)「【0131】
図35の(1)に示した演出構成テーブル(映像)は、画像制御マイコン81により行われる演出として、演出表示領域23に出力される映像の内容を示している。演出構成テーブル(映像)に示すように、画像制御マイコン81は、スタート(即ち、開始操作)、第1停止操作、第2停止操作、第3停止操作、表示役(即ち、全リール3L,3C,3Rの停止)、メダル投入(即ち、投入操作)を契機として、演出番号に対応した内容の映像を演出表示領域23に出力する。」

(キ)「【0168】
このように、CPU31は、設定値変更操作の検出が行われると、基本的に、RAM33に記憶されている情報のうち、設定値格納領域、RT遊技状態フラグ格納領域、及びRT遊技数カウンタ格納領域に格納された情報を除いた情報の初期化を行う。ただし、バックアップチェックデータが正常に格納されていない場合には、RAM33に記憶されている全ての情報の初期化を行う。
【0169】
ここで、RT遊技状態フラグ格納領域、及びRT遊技数カウンタ格納領域に格納される情報には、遊技者にとって不利な遊技状態であるRT4遊技状態に係る情報(不利状態情報)が格納されていることがある。即ち、CPU31は、設定値変更操作の検出が行われると、情報記憶手段により記憶されている情報のうち所定の格納領域に格納された不利状態情報を除いた情報の初期化を行う初期化手段である。」

(ク)「【0294】
実施例では、RB遊技状態(RB遊技状態により構成されるビッグボーナスゲームを含む)、RT1遊技状態、及びRT3遊技状態が有利な遊技状態であり、一般遊技状態、RT2遊技状態、及びRT4遊技状態が不利な遊技状態である。ここで、機械割の大小と遊技状態の作動が終了する条件とにより、遊技状態の有利さの度合を定めると、最も有利さの度合が大きい遊技状態は、RB遊技状態であり、RT1遊技状態とRT3遊技状態とは、有利さの度合が同程度である。他方、機械割の大小と遊技状態の作動が終了する条件とにより、遊技状態の不利さの度合を定めると、最も不利さの度合が大きい遊技状態は、RT4遊技状態である。次いで不利さの度合が大きい遊技状態は、一般遊技状態である。そして、不利さの度合が最も小さい遊技状態は、RT2遊技状態である。
【0295】
次に、複数種類の遊技状態の移り変わりについて、遊技状態が変遷する条件(1)?(14)に基づいて説明する。遊技状態の変遷は、CPU31(状態作動手段)により行われる。
【0296】
BBに係る図柄の組合せが対応付けられた内部当籤役が決定されること(1)又は(14)を契機として、RT2遊技状態の作動が開始する。即ち、状態作動手段は、ボーナスゲームに係る図柄の組合せが対応付けられた内部当籤役が決定されると、ボーナスゲームに係る図柄の組合せが表示されることが許容される状態(ボーナス許容状態)の作動を行う。」

(ケ)「【0417】
実施例では、設定値変更操作の検出が行われると、情報記憶手段により記憶されている情報のうち所定の格納領域に格納された不利状態情報を除いた情報の初期化を行うが、これに限られるものではない。例えば、設定値変更操作の検出が行われると、情報記憶手段により記憶されている情報のうち所定の格納領域に格納された不利状態情報及び所定の格納領域とは異なる特定の格納領域に格納された持越情報(持越役格納領域に格納されている情報)を除いた情報の初期化を行ってもよい。・・・」

(コ)【図28】には、「RT2遊技状態」で「演出状態番号」が「1」の場合、「演出選択テーブル 選択テーブル」は「F」であることが図示されている。

(サ)【図31】(2)には、「演出選択テーブル 選択テーブル F」では、「演出選択テーブル」は「63」であることが図示されている。

(シ)【図34】には、「演出選択テーブル」が「63」の場合、「演出番号」は「19」であることが図示されている。

(ス)【図35】(1)には、「演出番号」「19」は、「スタート」時に「鳥・犬登場」、「第1停止」時に「にらみ合い」、「第2停止」時に「犬が振りかぶる」、「第3停止」時に「犬が投げる」、「表示役」時に「ホームラン」、次ゲームの「メダル投入」時に「ボーナス確定」である演出構成が図示されている。

上記(ア)-(ケ)の記載事項及び上記(コ)-(ス)の図示内容から、以下のことがいえる。
なお、(a)-(i’)は、本件発明の構成A-Iに対応した事項を示している。

(a)上記【0013】には、複数種類の図柄が各々の外周面に描かれた3個のリール3L,3C,3Rが記載されている。

(b)上記【0002】には、スタートスイッチ及びストップスイッチにより出力された信号に基づいて、ステッピングモータの動作を制御し、各リールの回転及びその停止を行い、複数の表示窓により表示される図柄の組合せに基づいて、入賞か否かが判別され、入賞と判別されるとメダルが払い出されるパチスロが記載されているといえる。

(c)上記【0050】に「内部抽籤処理(後述の図47)により内部当籤役を決定すると、CPU31は、遊技者が停止ボタン7L,7C,7Rを操作したタイミングで停止スイッチ7LS,7CS,7RSから送られる入力信号に基づいて、リール3L,3C,3Rの回転の停止を指示する信号をモータ駆動回路39に送る。」と記載されているから、リール3L,3C,3Rの回転の停止前に内部当籤役を決定されているといえる。
また、上記【0052】に「CPU31が後述の内部抽籤テーブルの種別及び抽籤回数を決定する」と記載されているから、CPU31が内部当籤役を決定しているといえる。
そして、上記【0056】に「予め定められた複数種類の内部当籤役を、入賞に係る内部当籤役及び再遊技に係る内部当籤役とボーナスゲームに係る内部当籤役とに区分し」と記載されているから、ボーナスゲームに係る内部当籤役が複数種類の内部当籤役に含まれているといえる。
これらのことから、上記【0050】、【0052】、【0056】には、リール3L,3C,3Rの回転の停止前に、ボーナスゲームに係る内部当籤役を含む内部当籤役を決定するCPU31が記載されているといえる。

(d)上記【0096】に「内部抽籤処理(後述の図47)において内部当籤役としてBB1が決定された場合には、持越役格納領域のビット7に「1」が格納される。即ち、持越役格納領域に「10000000」が格納される。ここで、持越役は、内部抽籤処理(後述の図47)において決定された内部当籤役に係る図柄の組合せが有効ラインに沿って表示されることが一又は複数のゲームにわたり許容される場合に、当該内部当籤役をCPU31が識別するために設けられた情報である。」と記載されているから、内部当籤役としてBB1が決定された場合には、持越役格納領域のビット7に「1」が格納され、持越役格納領域に情報が格納されていることで、決定された内部当籤役に係る図柄の組合せが有効ラインに沿って表示されることが一又は複数のゲームにわたり許容されるので、持越役格納領域によりBB1に係る内部当籤役が発生しなかったときには、BB1に係る内部当籤役を次ゲーム以降に持ち越されているといえる。
このことから、上記【0096】には、ボーナスゲームに係る内部当籤役が決定された場合、ボーナスゲームに係る内部当籤役が発生しなかったときには、ボーナスゲームに係る内部当籤役を次ゲーム以降に持ち越すための持越役格納領域が記載されているといえる。

(e)上記【0053】、【0295】には、遊技状態として、一般遊技状態とRT1遊技状態とRT2遊技状態とRT3遊技状態とRT4遊技状態とRB1遊技状態とRB2遊技状態とが設けられ、遊技状態の変遷を行うCPU31が記載されているといえる。

(f)上記【0296】に「BBに係る図柄の組合せが対応付けられた内部当籤役が決定されること(1)又は(14)を契機として、RT2遊技状態の作動が開始する。」と記載され、【図28】には、「RT2遊技状態」で「演出状態番号」が「1」の場合、「演出選択テーブル 選択テーブル」は「F」であること、【図31】(2)には、「演出選択テーブル 選択テーブル F」では、「演出選択テーブル」は「63」であること、【図34】には、「演出選択テーブル」が「63」の場合、「演出番号」は「19」であること、【図35】(1)には、「演出番号」「19」は、「スタート」時に「鳥・犬登場」、「第1停止」時に「にらみ合い」、「第2停止」時に「犬が振りかぶる」、「第3停止」時に「犬が投げる」、「表示役」時に「ホームラン」、次のゲームの「メダル投入」時に「ボーナス確定」である演出構成が図示されているから、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出は、次のゲームの「メダル投入」時の演出であることから、本ゲームでボーナスゲームに係る内部当籤役は発生せずに次ゲーム持ち越されている状態に行われている演出であって、「演出番号」「19」の演出に含まれる演出であるので、BBに係る図柄の組み合わせが対応付けられた内部当選役が決定されている状態であって、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態に行われる演出であるといえる。
また、上記【0131】に「図35の(1)に示した演出構成テーブル(映像)は、画像制御マイコン81により行われる演出として、演出表示領域23に出力される映像の内容を示している。演出構成テーブル(映像)に示すように、画像制御マイコン81は、スタート(即ち、開始操作)、第1停止操作、第2停止操作、第3停止操作、表示役(即ち、全リール3L,3C,3Rの停止)、メダル投入(即ち、投入操作)を契機として、演出番号に対応した内容の映像を演出表示領域23に出力する。」と記載されている。
これらのことから、上記【0296】、【0413】、【図28】、【図31】(2)、【図34】、【図35】(1)には、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を行うことを含む「演出番号」「19」の演出を実行する画像制御マイコン81が記載されているといえる。

(g)上記【0043】には、設定値変更操作及びリセットボタンの押圧操作が行われ、ボーナス遊技情報表示部16に表示される設定値が所望の設定値となったときにスタートレバー6の操作が行われることにより、所望の設定値を設定する手段が記載されているといえる。

(h)上記【0168】に「CPU31は、設定値変更操作の検出が行われると、基本的に、RAM33に記憶されている情報のうち、設定値格納領域、RT遊技状態フラグ格納領域、及びRT遊技数カウンタ格納領域に格納された情報を除いた情報の初期化を行う」、【0169】に「CPU31は、設定値変更操作の検出が行われると、情報記憶手段により記憶されている情報のうち所定の格納領域に格納された不利状態情報を除いた情報の初期化を行う初期化手段である。」と記載され、【0294】に「実施例では、RB遊技状態(RB遊技状態により構成されるビッグボーナスゲームを含む)、RT1遊技状態、及びRT3遊技状態が有利な遊技状態であり、一般遊技状態、RT2遊技状態、及びRT4遊技状態が不利な遊技状態である。」と記載されているから、RT遊技状態の不利な遊技状態であるRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるときに設定値変更の操作をすると、RT遊技状態フラグ格納領域には設定値変更前の不利な遊技状態情報が残されていることが明らかであるので、RT遊技状態の不利な遊技状態であるRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるときに、設定値変更操作により新たな設定値が設定される場合、遊技状態は設定値変更前のRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるが維持されるといえる。
このことから、上記【0168】、【0169】、【0294】には、RT遊技状態の不利な遊技状態であるRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるときに、設定値変更操作により新たな設定値が設定される場合、新たな設定値に変更される一方で、遊技状態は設定値変更前のRT2遊技状態またはRT4遊技状態が維持されることが記載されているといえる。

(i’)上記【0417】に「設定値変更操作の検出が行われると、情報記憶手段により記憶されている情報のうち所定の格納領域に格納された不利状態情報及び所定の格納領域とは異なる特定の格納領域に格納された持越情報(持越役格納領域に格納されている情報)を除いた情報の初期化を行ってもよい。」と記載されているから、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において設定値変更操作が行われると、持越情報は初期化されずに持越役格納領域に格納されたままであるから、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態は維持されているといえる。
このことから、上記【0417】には、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において設定値変更操作が行われ、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態は設定値の変更後も維持されていることが記載されているといえる。

上記(ア)-(ケ)の記載事項、(コ)-(ス)の図示内容及び上記(a)-(i’)の認定事項から、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(当審において甲1発明をa-i’に分説した。)。
「a 複数種類の図柄が各々の外周面に描かれた3個のリール3L,3C,3Rを備え、
b スタートスイッチ及びストップスイッチにより出力された信号に基づいて、ステッピングモータの動作を制御し、各リールの回転及びその停止を行い、複数の表示窓により表示される図柄の組合せに基づいて、入賞か否かが判別され、入賞と判別されるとメダルが払い出されるパチスロにおいて、
c リール3L,3C,3Rの回転の停止前に、ボーナスゲームに係る内部当籤役を含む内部当籤役を決定するCPU31と、
d ボーナスゲームに係る内部当籤役が決定された場合、ボーナスゲームに係る内部当籤役が発生しなかったときには、ボーナスゲームに係る内部当籤役を次ゲーム以降に持ち越すための持越役格納領域と、
e 遊技状態として、一般遊技状態とRT1遊技状態とRT2遊技状態とRT3遊技状態とRT4遊技状態とRB1遊技状態とRB2遊技状態とが設けられ、遊技状態の変遷を行うCPU31と、
f 持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を行うことを含む「演出番号」「19」の演出を実行する画像制御マイコン81と、
g 設定値変更操作及びリセットボタンの押圧操作が行われ、ボーナス遊技情報表示部16に表示される設定値が所望の設定値となったときにスタートレバー6の操作が行われることにより、所望の設定値を設定する手段と、
を備え、
h RT遊技状態の不利な遊技状態であるRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるときに、設定値変更操作により新たな設定値が設定される場合、新たな設定値に変更される一方で、遊技状態は設定値変更前のRT2遊技状態またはRT4遊技状態が維持されるとともに、
i’ 持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において設定値変更操作が行われ、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態は設定値の変更後も維持されている、
スロットマシン。」

(2)甲第2号証
特許異議申立人により提出された甲第2号証(特開2009-247801号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0254】
特別役の当選を示す電源投入コマンドを受信した場合には、特別役の当選を報知するための特別役告知パターンが参照される。すなわち、特別役の当選を示す電源投入コマンドを受信すると特別役の当選を報知する告知演出が実行されることとなる。なお、特別役の当選を報知する告知演出は、一度実行されると、当該特別役が入賞した旨を示す入賞判定コマンドを受信するまで継続するようになっている。」

(3)甲第3号証
特許異議申立人により提出された甲第3号証(特開2009-005967号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0208】
初めに、画像制御マイコン81は、BBが内部当籤しているか否かを判別する(ステップS111)。この判別がYESのときは、ステップS112に移り、NOのときは、図24のステップS107に移る。ステップS112では、液晶表示部2bによりボーナス確定演出中であるか否かを判別する。この判別がYESのときは、図24のステップS107に移り、NOのときは、ステップS113に移る。ステップS113では、ボーナス確定演出(後述の図30)及びWIN画面(後述の図31)に対応する演出データをセットし、図24のステップS107に移る。」

(4)甲第4号証
特許異議申立人により提出された甲第4号証(特開2008-167993号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0111】
また、演出パターンには、特別役の当選確定を意味する特別役当選確定演出パターンが設けられている。特別役当選確定演出パターンが選択されたときは、演出制御手段60bは、例えば画像表示装置23に「特別役当選確定!」等の文字を画像表示し、次遊技以降、演出パターンの選択を行わない(次遊技以降では画像表示内容は変化しない。)。
そして、特別役に当選したが、演出パターン群Z1からいずれかの演出パターンが選択される前に特別役当選確定演出パターンが選択されたときは、演出制御手段60bは、上記と同様に、ソフトウェア乱数を用いた抽選によって、いずれかの相手キャラクタKを選択するとともに、その相手キャラクタKに係る演出パターンを特定演出パターンとして記憶し、その特別遊技の終了後から次の特別遊技が行われるまでの間の遊技では、選択禁止とする。」

(5)甲第5号証
特許異議申立人により提出された甲第5号証(特開2008-188223号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【0117】
なお、ボーナスの内部当選を契機にして再遊技役の確率を向上させた再遊技確率変動状態は、ボーナスの入賞までその状態が継続することから、この状態では、メダル等の遊技媒体を獲得する期待値が1以下、つまり、遊技媒体を総じて減少する程度の確率に設定することが望ましい。本実施形態では、後述するボーナス確定演出中において、遊技媒体の獲得期待値が1ゲームに対して少なくとも1以下となるように、抽選データの再遊技確率が設定されている。」
(イ)「【0212】
また、図28は、副制御部400が主制御部300から受信するコマンドと、副制御部400が演出ユニット制御部500に送信するコマンドの流れを示した図である。本実施形態では、副制御部400は、主制御部300から受信した演出状態選択コマンドの内容に応じて、通常状態、3次元モード状態、連動演出状態、確定告知演出状態、ボーナス状態(BB中状態、RB中状態)のいずれかの演出状態に設定される。なお、同図に示す「コマンド内容」の項目は、副制御部400が主制御部300から受信する他のコマンドの一例であり、副制御部400は主制御部300から受信したコマンドの内容に応じて、効果音データやランプ点灯パターンデータなどの演出データを、スピーカ483や装飾ランプなどの各デバイスに設定すると共に、制御コマンドを演出ユニット制御部500に送信する。この制御コマンドを受信した演出ユニット制御部500は、副制御部400から受信した制御コマンドと、自身が有する、演出画像データや扉移動データなどの演出ユニット制御データに応じて、上述の演出ユニットAの制御を行う。」

(6)甲第6号証
特許異議申立人により提出された甲第6号証(特開2009-050727号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0042】
特定の賞に内部当り状態が設定された場合において行われる可能性報知及び確定報知は、その特定の賞に入賞するまでの間においては行なわれ得るが、その特定の賞に入賞した後は行なわれない。」

4 当審の判断
(1)対比・判断
本件発明と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「図柄」、「リール3L,3C,3R」は、本件発明の「識別情報」、「可変表示部」にそれぞれ相当する。
このことから、甲1発明の「複数種類の図柄が各々の外周面に描かれた3個のリール3L,3C,3R」は、本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部」に相当する。

(b)甲1発明の「スタートスイッチ及びストップスイッチにより出力された信号に基づいて、ステッピングモータの動作を制御し、各リールの回転及びその停止を行」うこと、「パチスロ」は、本件発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止すること」、「スロットマシン」にそれぞれ相当する。
このことから、甲1発明の「スタートスイッチ及びストップスイッチにより出力された信号に基づいて、ステッピングモータの動作を制御し、各リールの回転及びその停止を行い、複数の表示窓により表示される図柄の組合せに基づいて、入賞か否かが判別され、入賞と判別されるとメダルが払い出されるパチスロ」は、本件発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(c)甲1発明の「ボーナスゲーム」、「CPU31」は、本件発明の「特別入賞」、「事前決定手段」にそれぞれ相当する。
このことから、甲1発明の「リール3L,3C,3Rの回転の停止前に、ボーナスゲームに係る内部当籤役を含む内部当籤役を決定するCPU31」は、本件発明の「表示結果が導出される前に、特別入賞を含む入賞について発生を許容するか否かを決定する事前決定手段」に相当する。

(d)甲1発明の「持越役格納領域」は、本件発明の「特別決定持越手段」に相当する。
このことから、甲1発明の「ボーナスゲームに係る内部当籤役が決定された場合、ボーナスゲームに係る内部当籤役が発生しなかったときには、ボーナスゲームに係る内部当籤役を次ゲーム以降に持ち越すための持越役格納領域」は、本件発明の「前記特別入賞の発生を許容する旨が決定され、該特別入賞が発生しなかったときに、該特別入賞の発生を許容する旨の決定を次ゲーム以降に持ち越す特別決定持越手段」に相当する。

(e)甲1発明の「CPU31」は、本件発明の「遊技状態制御手段」に相当する。
このことから、甲1発明の「遊技状態として、一般遊技状態とRT1遊技状態とRT2遊技状態とRT3遊技状態とRT4遊技状態とRB1遊技状態とRB2遊技状態とが設けられ、遊技状態の変遷を行うCPU31」は、本件発明の「複数種類の遊技状態に制御する遊技状態制御手段」に相当する。

(f)甲1発明の「持越情報が持越役格納領域に格納されている状態」、「次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出」、「「演出番号」「19」の演出」、「画像制御マイコン81」は、本件発明の「有利遊技状態」、「該有利遊技状態に固有の有利遊技状態演出」、「遊技状態演出」、「遊技状態演出実行手段」に相当する。
このことから、甲1発明の「持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を行うことを含む「演出番号」「19」の演出を実行する画像制御マイコン81」は、本件発明の「前記複数種類の遊技状態のうち前記特別決定持越手段により特別入賞の発生を許容する旨の決定が持ち越されている有利遊技状態において該有利遊技状態に固有の有利遊技状態演出を含む遊技状態演出を実行する遊技状態演出実行手段」に相当する。

(g)甲1発明の「所望の設定値を設定する手段」は、本件発明の「有利度設定手段」に相当する。
このことから、甲1発明の「設定値変更操作及びリセットボタンの押圧操作が行われ、ボーナス遊技情報表示部16に表示される設定値が所望の設定値となったときにスタートレバー6の操作が行われることにより、所望の設定値を設定する手段」は、本件発明の「所定の設定操作手段の操作に基づいて遊技者にとっての有利度を設定する有利度設定手段」に相当する。

(h)甲1発明の「設定値」は、本件発明の「有利度」に相当する。
このことから、甲1発明の「RT遊技状態の不利な遊技状態であるRT2遊技状態またはRT4遊技状態であるときに、設定値変更操作により新たな設定値が設定される場合、新たな設定値に変更される一方で、遊技状態は設定値変更前のRT2遊技状態またはRT4遊技状態が維持される」ことは、本件発明の「前記有利度設定手段により有利度が新たに設定された場合に、新たに設定された有利度に変更される一方で、前記遊技状態は該有利度の変更前の遊技状態が維持される」ことに相当する。

(i’)上記(f)で言及したように甲1発明の「持越情報が持越役格納領域に格納されている状態」は、本件発明の「有利遊技状態」に相当するから、甲1発明の「持越情報が持越役格納領域に格納されている状態において設定値変更操作が行われ、持越情報が持越役格納領域に格納されている状態は設定値の変更後も維持されている」ことは、本件発明の「前記有利遊技状態において有利度が新たに設定され、該有利遊技状態が該有利度の変更後も維持される」点に相当する。
しかしながら、甲1発明では、例えば不利な遊技状態であるRT2の遊技状態であって、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を含む演出を実行している際に設定値の変更を行うとすると、設定値の変更前後ではRT2の遊技状態は変更されず、設定値の変更後もRT2の遊技状態に関する演出が実行されることから、RT2の遊技状態に関する演出に含まれる、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を含む演出を実行しないとはいえないので、甲1発明が、本件発明の構成Iの「前記遊技状態演出実行手段は、」「当該有利度の変更後、前記有利遊技状態演出を実行せず、前記有利遊技状態以外の遊技状態でも実行される共通遊技状態演出を実行する」構成を有しているとはいえない。

また、特許異議申立人は、特許異議申立書第42頁第7、8行において「甲1発明は、本件特許発明1の発明特定事項A?Iの全てを備えている。」と主張し、発明特定事項Iに関して、特許異議申立書第33頁第27行目-第34頁第18行目において、「よって、これら段落0125、0147、0168、0169、0294、0320、0409、0410、0412、0413及び図35(1)の記載からすると、甲第1号証には、「カーテン演出のうちの演出番号「18」の演出が実行された後、設定変更により新たな設定値が設定されると、メインRAMに記憶された持越情報は維持されるものの、段落0320に記載のように、S435では、サブRAMの遊技状態情報は初期化された変更履歴がクリアされ、図62及び図63に基づくことにより、遊技状態格納領域及び変更履歴格納領域には一般遊技状態を示す「0」が格納される」構成について記載されている。・・・したがって、甲第1号証に係るスロットマシンは、「ボーナスゲームが内部当籤役として当籤している状態において、設定値が新たに設定され、持越情報が設定値の変更後も維持される場合に、当該設定値の変更後、ボーナス確定演出を実行せず、一般遊技状態やRT4遊技状態でも実行される共通の演出を実行する」ものであることが認められる。」と主張している。
しかしながら、甲第1号証には、上記第2の3(1)(h)及び(i’)で検討した点に加え、同(ス)の【図35】(1)に「演出番号」「19」は、「スタート」時に「鳥・犬登場」、「第1停止」時に「にらみ合い」、「第2停止」時に「犬が振りかぶる」、「第3停止」時に「犬が投げる」、「表示役」時に「ホームラン」、次ゲームの「メダル投入」時に「ボーナス確定」である演出構成も図示されているから、甲第1号証には、不利な遊技状態であるRT2の遊技状態であって、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を含む演出を実行している際に設定値が新たに設定される場合、当該設定値の変更直後は、初期化されないRT2遊技状態の情報や持越情報はRAM33に記憶されていることが記載されているといえる。
また、甲第1号証の【0320】に「ステップS434では、画像制御マイコン81は、設定値変更コマンド受信時であるか否かを判別する。このとき、設定値変更コマンド受信時である場合には、画像制御マイコン81は、各種格納領域をクリアし(ステップS435)、次に、図63のステップS411の処理を行う。・・・ここで、ステップS435では、画像制御マイコン81は、CPU31により設定値変更操作の検出が行われると、ワークRAM84により記憶されている全ての情報の初期化を行う。」と記載されているから、甲第1号証には、設定値の変更直後は、ワークRAM84により記憶されている全ての情報は初期化されることが記載されているといえる。
そして、甲第1号証の【図43】に「初期化処理」後に「スタートコマンドを送信」することが図示され、【0156】に「次に、CPU31は、スタートコマンドを副制御回路72に送信する(ステップS9)。スタートコマンドは、遊技状態、内部当籤役などの情報を含み、副制御回路72に送信される。」と記載されているから、甲第1号証には、当該設定値の変更直後は、初期化処理の後にすぐさまRAM33に記憶されている情報で初期化されないRT2遊技状態の情報や持越情報が含まれるスタートコマンドが主制御回路71から副制御回路72に送信されることが記載されているといえる。
さらに、甲第1号証の【0306】に「画像制御マイコン81は、コマンドの受信を行う(ステップS401)。続いて、画像制御マイコン81は、コマンドの種別を抽出する(ステップS402)。続いて、画像制御マイコン81は、前回とは異なるコマンドを受信したか否かを判別する(ステップS403)。このとき、前回とは異なるコマンドを受信した場合には、画像制御マイコン81は、メッセージキューにメッセージ(例えば、主制御回路71から送信されたコマンドの情報)を格納し(ステップS404)、再び、ステップS401の処理を行う。」、【0308】に「画像制御マイコン81は、メッセージキューからメッセージを取り出す(ステップS411)。続いて、画像制御マイコン81は、メッセージがあるか否かを判別する(ステップS412)。このとき、メッセージがある場合には、画像制御マイコン81は、続いて、ステップS413の処理を行う。」、【0309】に「ステップS413では、画像制御マイコン81は、メッセージから遊技情報を複写する。例えば、画像制御マイコン81は、表示役コマンドから表示役のデータを所定の格納領域に複写する。続いて、画像制御マイコン81は、各遊技情報を更新(遊技状態変更履歴の更新等)する(ステップS414)。例えば、画像制御マイコン81は、取り出したメッセージに遊技状態に係る情報が含まれていると、この遊技状態に係る情報と遊技状態変更履歴格納領域に格納されている前回の遊技状態に係る情報とを比較する。このとき、一致していない場合には、画像制御マイコン81は、前々回の遊技状態に係る情報を格納する領域に前回の遊技状態に係る情報を格納し、前回の遊技状態に係る情報を格納する領域に取り出した遊技状態に係る情報を格納する。続いて、画像制御マイコン81は、後で図64を参照して説明する演出内容決定処理を行う(ステップS415)。この処理では、主制御回路71から送信されたコマンドに応じて、演出に係る演出データの登録などが行われる。例えば、画像制御マイコン81は、映像データの登録を行うことにより、演出に係る映像を演出表示領域23に出力することができる。また、画像制御マイコン81は、音データの登録を行うことにより、演出に係る音をスピーカ9L,9Rから出力することができる。」と記載されているから、甲第1号証には、画像制御マイコン81のワークRAM84のサブCPU用遊技状態格納領域には、初期化されなかった設定値変更前のRT2遊技状態の情報が格納されて演出内容を決定することになることが記載されているといえる。
よって、上記記載事項、図示内容及び認定事項から、甲第1号証には、不利な遊技状態であるRT2の遊技状態であって、次のゲームの「メダル投入」時の「ボーナス確定」演出を含む演出を実行している際に設定値が新たに設定される場合、当該設定値の変更直後は、ワークRAM84により記憶されている全ての情報は初期化されるものの、すぐさまRAM33に記憶されている情報で初期化されないRT2遊技状態の情報や持越情報が含まれるスタートコマンドが主制御回路71から副制御回路72に送信されて、画像制御マイコン81のワークRAM84のサブCPU用遊技状態格納領域には、初期化されなかった設定値変更前のRT2遊技状態の情報が格納されて演出内容を決定することになることが記載されているといえる。
すなわち、異議申立人が主張するようにS435でサブRAMの遊技状態情報は初期化された変更履歴がクリアされ、遊技状態格納領域及び変更履歴格納領域には一般遊技状態を示す「0」が一時的には格納されるものの、すぐさまRAM33に記憶されている情報で初期化されていないRT2遊技状態の情報や持越情報が含まれるスタートコマンドが主制御回路71から副制御回路72に送信されて、画像制御マイコン81のワークRAM84のサブCPU用遊技状態格納領域等には、初期化されなかった設定値変更前のRT2遊技状態を示すデータ「2」が格納されて演出内容を決定することになり、当該設定値の変更後は、RT2遊技状態に関する演出が実行され、異議申立人が主張するようなボーナス確定演出を実行せず、一般遊技状態やRT4遊技状態でも実行される共通の演出を実行することに限られないから、異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)まとめ
したがって、甲第1号証には、本件発明1の構成Iについて、記載も示唆もされていない。
また、本件発明1の構成Iは、甲第2-6号証にも記載も示唆もされていない。
よって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由及び提出された証拠方法によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-06 
出願番号 特願2014-224891(P2014-224891)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡崎 彦哉  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 青木 洋平
藤田 年彦
登録日 2017-02-10 
登録番号 特許第6089017号(P6089017)
権利者 株式会社三共
発明の名称 スロットマシン  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 大久保 岳彦  
代理人 石川 好文  
代理人 重信 和男  
代理人 林 修身  
代理人 溝渕 良一  

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