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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1334667
審判番号 不服2017-1474  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-01 
確定日 2017-12-06 
事件の表示 特願2014-557291「部品内蔵基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月24日国際公開、WO2014/112108、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年1月18日を国際出願日とする出願であって、平成28年9月16日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に手続補正がされ、同年12月7日付け(発送日:12月14日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年3月1日に前置報告され、当審において同年9月6日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月21日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1 請求項1について
引用文献1(特に、段落【0019】ないし【0030】参照)には、片面銅張積層板20上に、開口部32Aを設けたプリプレグ32αを積層し、開口部32A内にチップコンデンサを配置し、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグ34αを載置して加熱プレスし、さらにレーザによってチップコンデンサ30の端子へ至るバイアホール36Dを形成し、デスミア処理をして、めっきによってビアを形成した部品内蔵基板が記載されている。
すると、引用文献1に記載の発明は、ビアが、大径部と小径部が段差を介して接続された構成で、かつ大径部はガラスクロスを貫通して形成されている構成でない点、及びコア基板が流動体及び剛性体で形成されておらず、流動体の厚みがコア基板の厚みに対して30%?90%である旨の特定がなされていない点で、請求項1に係る発明と相違する。
しかし、引用文献2(特に、段落【0022】、【0028】ないし【0029】、【0034】?【0035】、図18参照)には、ガラスクロスにエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させた絶縁層にレーザによってビアホールを形成すると、当該ビアホールは、ガラスクロスの位置に段差39が形成され、段差39を介して、ビアホールの径が小さくなる構成が記載されている。そして、引用文献1及び引用文献2に記載の発明は、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させた絶縁層にレーザによってビアホールを形成する構成である点で共通である。また、ビアの密着性を高めることは、当業者が通常考慮することである。してみると、引用文献1に記載の発明のバイアホール36Dを、引用文献2に記載された構成と同様の段差を有する構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、開口部を備えるコア基板を流動体(プリプレグ)及び剛性体で形成することは、引用文献3(特に、段落【0017】、段落【0018】、図6参照)及び引用文献4(特に、段落【0059】、段落【0060】、図13参照)にみられるように周知技術である。すると、開口部を備えるコア基板をプリプレグのみで形成する引用文献1に記載の発明において、当該コア基板を流動体(プリプレグ)及び剛性体で形成する構成とすることは、周知技術の単なる転換であるから、当業者が容易になし得ることである。さらに、プリプレグのみからなるコア基板を流動体(プリプレグ)及び剛性体からなるコア基板に置き換えることによる、「剛性体8があることにより、押圧した際に部品4を適切に埋設できる」(本願明細書段落【0023】参照)との効果は、当業者が当然に予測し得るものである。なお、剛性体の厚みをコア基板の厚みに対して10%?70%の数値範囲を満たす(すなわち、流動体の厚みをコア基板の厚みに対して30%?90%の数値範囲を満たす)ものとすることに対する格別の効果は、本願明細書及び図面の全体を参酌しても特に記載されているとはいえず、当該数値範囲に臨界的意義が存在するとは認められない。

2 請求項2ないし4について
引用文献1に記載の発明は、上記した点に加えて、基板を支える、剛性を有する支持板について言及されていない点、ビアが導電体の充填で形成されていない点、及びコア基板が流動体及び剛性体で形成されていない点で、請求項2ないし4に係る発明と相違する。
しかし、多層基板の積層を、剛性を有する支持基板上で行うこと、及びビアホールに導電体を充填してビアを形成することは、特に例示するまでもなく慣用技術であるから、引用文献1に記載の発明において、そのような構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。さらに、コア基板を流動体及び剛性体で形成することは、当業者が適宜になし得ることであるし、当該流動体と当該剛性体の厚みの比を請求項2に記載の数値範囲とすることは、格別の効果を奏することでもなく、当業者が適宜になし得る設計的事項である。

3 請求項5ないし8について
引用文献1に記載の発明は、ガラスクロスの位置、積層工程で加わる圧力、大径ビア及び小径ビアの厚み、及び端子の厚みが、それぞれ所定の数値範囲となることが特定されていない点で、請求項5ないし8に係る発明と相違する。
しかし、請求項5ないし8に係る発明おいて特定されている数値範囲は、それぞれ、多層基板の技術分野において格別の数値範囲ではなく、当該数値範囲を特定することで格別の効果を奏するものでもない。してみると、引用文献1に記載の発明において、ガラスクロスの位置、積層工程で加わる圧力、大径ビア及び小径ビアの厚み、及び端子の厚みを、それぞれ各請求項において特定された数値範囲に含まれるものとすることは、当業者が適宜になし得る設計的事項である。

4 まとめ
よって、請求項1ないし8に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明、及び引用文献3及び4にみられる周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-194382号公報
2.特開2009-246358号公報
3.国際公開第2012/042667号(周知技術を示す文献)
4.特開2010-128934号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成29年9月21日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。

「【請求項1】
剛性を有する支持板上に金属膜を貼り付け、該金属膜上に電気又は電子的な部品を搭載する搭載工程と、
前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体の前記貫通孔に前記部品を通し、シート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を前記貫通孔を塞ぐ位置に配するレイアップ工程と、
前記孔あき絶縁体及び前記孔なし絶縁体とを互いに押圧して加熱することにより絶縁層を形成し、該絶縁層内に前記部品を埋設する積層工程と、
前記絶縁層の外側から前記部品が有する端子に到達するビアを形成するビア形成工程と、
前記絶縁層の表面に導体パターンを形成し、かつ前記ビア内に前記導体パターンと前記端子とを電気的に接続するための導電体を充填して導通ビアを形成するパターン形成工程と
を含み、
前記レイアップ工程にて、前記孔あき絶縁体を流動性を有する流動体及び剛性を有する剛性体で形成し、前記流動体の厚みは前記孔あき絶縁体の厚みに対して30%?90%とし、
前記ビア形成工程にて、前記ガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射により大径の大径ビアを形成した後、前記第1のレーザー照射よりも低いパワーである第2のレーザー照射により前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記端子に到達する前記大径ビアより小径の小径ビアを形成することを特徴とする部品内蔵基板の製造方法。
【請求項2】
前記ビア形成工程にて、前記ビア内に突出する前記ガラスクロスをガラスエッチング処理にて除去することを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項3】
前記レイアップ工程にて、前記孔なし絶縁体の溶融開始温度が前記孔あき絶縁体の溶融開始温度よりも高いものを用いることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程の後、前記導体パターンの外側から絶縁樹脂材料からなる外側絶縁体を押圧して積層して多層基板を形成する外側積層工程をさらに行い、
該外側積層工程で前記大径ビア及び前記小径ビアからなる前記導通ビア1個あたりに加わる圧力を50gf以下とすることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項5】
前記パターン形成工程の後、前記導体パターンの外側から絶縁樹脂材料からなる外側絶縁体を押圧して積層して多層基板を形成する外側積層工程をさらに行い、
前記大径ビア及び前記小径ビアの厚みは、前記多層基板の厚みに対して15%以下であることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。
【請求項6】
前記パターン形成工程の後、前記導体パターンの外側から絶縁樹脂材料からなる外側絶縁体を押圧して積層して多層基板を形成する外側積層工程をさらに行い、
前記小径ビアが到達する前記端子の厚みを12μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の部品内蔵基板の製造方法。」

第4 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1(特開2009-194382号公報)には、図面(特に図1ないし図3参照)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)「【0015】
[第1実施例]
以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。先ず、本発明の第1実施例に係る多層基板50の構成について、図3(C)を参照して説明する。
多層基板50は、第1樹脂層22、第2樹脂層32及び第3樹脂層34の3つの樹脂層からなり、第2樹脂層32の開口部32Aにチップコンデンサ30が収容されている。第3樹脂層の第2面に導体回路46が、第1樹脂層の第1面に導体回路44が形成されている。第1樹脂層には、ビア導体42Dが形成されていて、ビア導体42Dはチップコンデンサの端子30A、30Bと第1樹脂層の導体回路44とを接続している。また、第3樹脂層には、ビア導体42Uが形成されていて、ビア導体42Uはチップコンデンサの端子30A、30Bと第3樹脂層の導体回路46とを接続している。また、多層基板には、第1樹脂層の導体回路44と第3樹脂層の導体回路46の電気的導通を取るスルーホール導体43が形成されている。
ここで、第1樹脂層22の第2面は、チップコンデンサと向かい合っている面であって、第1面は第2面と反対側の面である。
第2樹脂層32の第1面は、第1樹脂層の第1面と向かい合っている面であって、第2面は第1面とは反対側の面である。
第3樹脂層34の第1面は、第2樹脂層の第2面と向かい合っている面であって、第2面は第1面と反対側の面である。」

(2)「【0018】
引き続き、図3(C)を参照して上述したプリント配線板の製造方法について、図1?図3を参照して説明する。
【0019】
(1)厚さ0.1mmのガラスクロス等の心材にBT(ビスマレイミドトリアジン)やエポキシなどの樹脂を含浸させて硬化させた第1樹脂基板22の片面に厚み18μmの銅箔24がラミネートされている片面銅張積層板(積層体)20を出発材料とする(図1(A)参照)。ここで、銅箔がラミネートされている側が、第1樹脂層(第1樹脂基板)の第1面である。そして、第1面と反対側の面が第2面である。
【0020】
(2)厚さ0.4mmのプリプレグ32αを準備する。次いで、プリプレグ32αにチップコンデンサを収容するための開口部32Aを形成する。
次いで、片面銅張積層板20である第1樹脂基板22上に、プリプレグ32αを積層する(図1(B)。プリプレグ32αは、ガラスクロス等の心材にエポキシ等の樹脂を含浸させた未硬化な樹脂層である。
次いで、片面銅張積層板とプリプレグ32αとを加熱プレスする。加熱プレスすることで、プリプレグ32αは、硬化して、第2樹脂基板(第2樹脂層)32となる。また、第1樹脂基板と第2樹脂基板が強固に接合される。
片面銅張積層板(第1樹脂基板)20と第2樹脂基板32とからなる途中基板の製法は、銅箔とプリプレグ(硬化後、第1樹脂基板となる)と開口部を有する硬化済の第2樹脂基板とを加熱プレスしてもよい。また、硬化済の片面銅張積層板と開口部を有する硬化済の第2樹脂基板との間にプリプレグを介在させて加熱プレスしてもよい。
【0021】
(3)片面銅張積層板(第1樹脂基板)20と第2樹脂基板とからなる途中基板の四隅に位置決め用の貫通孔26(アライメントマーク27)をレーザにより穿設する(図1(C)参照)。位置決め用の通孔はドリルによる穿設でもよい。
なお、アライメントマークの形成位置は、開口部32Aにより露出している積層体に形成してもよい。この場合、アライメントマークが電子部品の近くに形成されているため、電子部品を搭載する位置精度やバイアホールを形成する位置の精度が高くなる。アライメントマークは、積層体を貫通する貫通孔や第1樹脂層の第1面上に形成された導体からなっていてもよい。アライメントマークが導体からなる場合、導体の周りの金属膜は除去されている。
【0022】
(4)次いで、開口部により露出している第1樹脂層上に接着剤層28を形成する(図1(D)参照)。接着剤層を形成する位置は、位置決め用の貫通孔26を用いて決められる。接着剤層は、塗布やポッティングなどで形成できる。これにより、後述するようにチップコンデンサ30と第1樹脂基板22との隙間を充填することが可能となる。
【0023】
(4)次いで、チップコンデンサ30が、片面銅張積層板上に接着剤層を介して搭載される(図1(E)参照)。チップコンデンサを搭載する位置は、位置決め用の貫通孔26を用いて決められる。チップコンデンサ30は、1個でも複数個でもよいが、複数個のチップコンデンサ30を用いることにより、コンデンサの高集積化が可能となる。
【0024】
(5)次に、ガラスクロス等の心材にBTやエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグ34α(厚さ0.1mm)を第2樹脂基板32の上に載置する(図2(A)参照)。これにより、多層基板50内にチップコンデンサ30を収容することが可能となり、ループインダクタンスを低減させることができる。
【0025】
(6)そして、重ね合わせた基板は加熱プレスされる。
ここでは、加熱プレスすることで、先ず、プリプレグ34αからエポキシ樹脂(絶縁性樹脂)等が開口部32A内に押し出される。そして、押し出された樹脂が開口部32Aとチップコンデンサ30との間の隙間を充填する。次いで、エポキシ樹脂が硬化し、プリプレグ34αが第3樹脂基板(第3樹脂層)となる。また、開口部内に押し出された樹脂が硬化して、開口部32Aとチップコンデンサ30との間の隙間を充填する充填樹脂となる。
第1樹脂基板と第2樹脂基板、第3樹脂基板が、強固に接着され、チップコンデンサ30を収容する多層基板50となる(図2(B)参照)。
第1樹脂層と第3樹脂層の厚みは略等しいことが好ましい。
なお、本実施例では、プリプレグから出るエポキシ樹脂により、開口32A内の隙間を充填したが、この代わりに、開口32A内に充填材を配置しておくことも可能である。更に、プリプレグ32の代わりに硬化させた樹脂基板を用いることもできる。
充填樹脂は、熱硬化性樹脂と無機フィラーとからなることが好ましい(ガラス繊維やアラミド繊維は有していない)。無機フィラーには、たとえば、Al2O3、MgO、BN、AlNまたはSiO2などを用いることができ、その場合の無機フィラー量は、30?60wt%であることが好ましい。熱硬化性樹脂には、たとえば、耐熱性が高いエポキシ樹脂、フェノール樹脂またはシアネート樹脂が好ましく、この中でも、耐熱性が優れるエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0026】
ここで、多層基板50の両面が平滑な第1樹脂基板22、第3樹脂基板34なので、多層基板50の平滑性が損なわれず、後述する工程で、多層基板の上に導体回路44、46、ビア導体42U、42Dを適切に形成することができ、プリント配線板の不良品発生率を低下させることができる。また、多層基板50に十分な強度を得ることができる。
【0027】
(7)次いで、位置決め用の貫通孔26(アライメントマーク27)を用いて、銅箔24、第1樹脂基板(第1樹脂層)22及び接着剤層28に、レーザによりチップコンデンサの端子30A、端子30Bへ至るビア導体用のバイアホール36Dを形成する。また、充填樹脂、第3樹脂基板34に、チップコンデンサの電極に至るビア導体用のバイアホール36Uを形成する。なお、チップコンデンサの電極と第3樹脂基板間に充填樹脂が存在しない場合は、バイアホール36Dは、第3樹脂基板に形成すればよい。また、銅箔24、第1樹脂基板22、第2樹脂基板32及び第3樹脂基板34へ貫通孔37を形成する(図2(C)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行う。或いは、過マンガン酸等の薬液処理を行ってもよい。
バイアホールを形成する位置は、コンデンサを搭載するときに用いたアライメントマークを基準にして決定されている。そのため、バイアホールが、コンデンサの端子(電極)に対し、位置ずれすることなく、高精度に形成することができる。
プリプレグから染み出した樹脂が貫通孔26を充填して、アライメントマークの認識が困難となる場合がある。そのような場合、アライメントマークをカメラやX線などで認識して、新たな第2アライメントマークを形成してもよい。この時、バイアホール36U、36Dは、第2アライメントマークを基準にして形成されることが好ましい。第2アライメントマークは、多層基板(ベース基板)50を貫通する貫通孔などであって、アライメントマーク27を基準にして形成することができる。
【0028】
(8)次に、市販(例えば上村工業社製)の無電解銅めっき水溶液中に、触媒を付与した多層基板50を浸漬して、バイアホール36D、36Uと貫通孔37の内壁を含む多層基板50の表面に厚さ0.6?3.0μmの無電解めっき膜(無電解銅めっき膜)38を形成する(図2(D))。
〔無電解めっき条件〕
34℃の液温度で40分
【0029】
(9)そして、市販(例えば、上村工業社製)の電解めっき液に多層基板50を浸漬し、無電解銅めっき膜38を介して電流を流し、以下の条件で電解めっきを施して電解銅めっき膜40を形成する(図3(A)参照)。
【0030】
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/Dm^(2)
時間 120分
温度 22±2℃
【0031】
(10)電解めっき膜上に所定パターンのエッチングレジストを形成し、エッチングレジスト非形成部を溶解除去する。その後エッチングレジストを除去する(図3(B))。続いて、導体回路表面をソフトエッチングすることにより、導体(電解銅めっき膜)表面に粗化面48を形成する(図3(C))。これにより、多層基板50の上面側(第3樹脂層の第2面上)に無電解銅めっき膜38及び電解銅めっき膜40から成る導体回路46を形成し、第3樹脂層にビア導体42Uを形成する。下面側(第1樹脂層の第1面上)に銅箔24、無電解銅めっき膜38及び電解銅めっき膜40から成る導体回路44を形成し、第1樹脂層にビア導体42Dを形成する。同時に、スルーホール導体43を形成する(図3(B)参照)。導体回路44、46、ビア導体42U、42D及びスルーホール43導体の形成方法は上記に限定されるものではなく、一般的に配線形成に用いられるSAP(セミアディティブ)法を用いることができる。導体回路とビア導体は同時に形成されることが好ましい。」

(3)図2(A)から、プリプレグ34αは孔なしであること、及びプリプレグ34αは開口部32Aを塞ぐ位置に配されることが看取される。

(4)段落【0023】の「(4)次いで、チップコンデンサ30が、片面銅張積層板上に接着剤層を介して搭載される」との記載、及び図1(B)ないし図1(E)から、プリプレグ32αの開口部32Aは貫通孔であると認められる。

(5)段落【0025】の記載及び図2(B)から、第1樹脂層22、第2樹脂層32、第3樹脂層34、及び充填樹脂からなる層に、チップコンデンサ30が埋設されることが看取される。

(6)段落【0027】段落の記載及び図3(C)から、導体回路46とチップコンデンサ30の電極がビア導体42Uにより接続されることが看取される。

(7)プリプレグのガラスクロスがシート状であることは技術常識であるから、プリプレグ34αに内蔵されるガラスクロスもシート状であると認められる。

上記記載事項及び図面の図示内容を総合して、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「片面銅張積層板20である第1樹脂基板22の上に、チップコンデンサ30が収容される貫通孔である開口部32Aが予め形成されたプリプレグ32αを積層するとともに、前記開口部32Aを通して前記チップコンデンサ30を搭載する第1の工程と、
シート状のガラスクロスが内蔵された孔なしのプリプレグ34αを前記開口部32Aを塞ぐ位置に配する第2の工程と、
前記プリプレグ32α及び前記プリプレグ34αとを互いに加熱プレスすることにより第1樹脂層22、第2樹脂層32、第3樹脂層34、及び充填樹脂からなる第1の層を形成し、該層内に前記チップコンデンサ30を埋設する第3の工程と、
前記第1の層の外側から前記チップコンデンサ30の電極に至るバイアホール36Uを形成する第4の工程と、
前記第1の層の表面に導体回路46を形成し、かつ前記バイアホール36U内に前記導体回路46と前記電極とを電気的に接続するための無電解銅めっき膜38及び電解銅めっき膜40を充填してビア導体42Uを形成する第5の工程と
を含むプリント配線板の製造方法。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献2(特開2009-246358号公報)には、図面(特に図8、図9、図18参照)とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0024】
上記構成のコアレス配線基板10は例えば以下の手順で作製される。」

(2)「【0028】
そして、図8に示されるように、レーザ加工を施すことによって樹脂絶縁層21に複数のビア穴32を形成する(ビア穴形成工程)。このとき、樹脂絶縁層21中のガラスクロス36もレーザ加工により焼失されることで切断される。またこのとき、切断されたガラスクロス36の先端36Aは、レーザ加工時の熱エネルギーによって溶け、その後固まることで丸みを帯びた形状となる。さらに、ビア穴形成時において、レーザ光の一部がガラスクロス36で散乱するため、そのガラスクロス36の上方と下方とでレーザ加工性が変化することにより、ガラスクロス36が存在する位置に対応して段差39が形成される。」

(3)「【0035】
より詳しくは、図18に示されるように、ビア穴32における段差39は、樹脂絶縁層21?24においてガラスクロス36が存在する深さ位置に対応して形成されている。また、ビア穴32において、段差39を境界としてビア開口側領域(図18では上方の領域)とビア底部側領域(図18では下方の領域)とで区分した場合、ビア底面64を基準としたビア開口側領域の傾斜角度θ1は、ビア底面64を基準としたビア底部側領域の傾斜角度θ2よりも大きくなっている(θ1>θ2)。」

(4)段落【0035】及び図18から、大径のビア開口側領域に対して段差39を形成しつつ小径のビア底部側領域が形成させることが看取される。また、段落【0035】、図8、図9、図18から、レーザ光の照射がビア開口側領域の上部からなされることを考慮すれば、ビア開口側領域の形成後に段差を形成しつつ積層金属シート体42に到達するビア底部側領域が形成されることも明らかである。

上記記載事項、認定事項、及び図面の図示内容を総合して、本願発明1の記載ぶりに倣って整理すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されている。

「ビア穴形成工程にて、ガラスクロス36を切断するパワーのレーザ光の照射により大径のビア開口側領域を形成した後、前記レーザ光の照射により前記大径のビア開口側領域に対してガラスクロス36が存在する深さ位置に対応して段差39を形成しつつ積層金属シート体42に到達する前記大径のビア開口側領域より小径のビア底部側領域を形成するコアレス配線基板10の製造方法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「片面銅張積層板20である第1樹脂基板22」は、前者の「剛性を有する支持板」に相当し、以下同様に、後者の「チップコンデンサ30」は電気的な部品の一種であるから、前者の「電気又は電子的な部品」に、「チップコンデンサ30が収容される貫通孔である開口部32A」は「部品が貫通する貫通孔」に、プリプレグは絶縁体であるから、「プリプレグ32α」は「孔あき絶縁体」に、「プリプレグ34α」は「孔なし絶縁体」に、
後者の「加熱プレス」は前者の「押圧して加熱すること」に、後者の第1樹脂層22、第2樹脂層32、第3樹脂層34、及び充填樹脂は全て絶縁体であるから、「第1樹脂層22、第2樹脂層32、第3樹脂層34、及び充填樹脂からなる第1の層」は「絶縁層」に、後者の第3の工程では層を積層しているから、「第3の工程」は「積層工程」に、
後者の「電極」は前者の「端子」に、「バイアホール36U」は「ビア」に、後者の第4の工程ではバイアホール36Uを形成しているから、「第4の工程」は「ビア形成工程」に、
後者の「導体回路46」は前者の「導体パターン」に、「無電解銅めっき膜38及び電解銅めっき膜40」は「導電体」に、「ビア導体42U」は「導通ビア」に、後者の第5の工程ではパターンを形成しているから、「第5の工程」は「パターン形成工程」に、
後者のプリント配線板はチップコンデンサ30を内蔵しているから、後者の「プリント配線板の製造方法」は前者の「部品内蔵基板の製造方法」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「片面銅張積層板20である第1樹脂基板22上に」「チップコンデンサ30を搭載」することは、本願発明1の「剛性を有する支持板上に金属膜を貼り付け、該金属膜上に電気又は電子的な部品を搭載する」ことと、「剛性を有する支持板上に、電気又は電子的な部品を搭載」する限りで共通する。
引用発明の「第1の工程」と、本願発明の「搭載工程」及びそれに続く「レイアップ工程」の中の「前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体の前記貫通孔に前記部品を通し」までの工程とは、支持板上に、電気又は電子的な部品を搭載するとともに、孔あき絶縁体の貫通孔に前記部品を通した状態で配置する点で共通するといえる。そうすると、引用発明の「第1の工程」及び「第2の工程」は、本願発明1の「剛性を有する支持板上に金属膜を貼り付け、該金属膜上に電気又は電子的な部品を搭載する搭載工程と、前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体の前記貫通孔に前記部品を通し、シート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を前記貫通孔を塞ぐ位置に配するレイアップ工程」と、「剛性を有する支持板上に電気又は電子的な部品を搭載するとともに、前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体を支持板上に配置し、シート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を前記貫通孔を塞ぐ位置に配する工程」である限りで共通する。

したがって、両者は、
「剛性を有する支持板上に電気又は電子的な部品を搭載するとともに、前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体を支持板上に配置し、シート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を前記貫通孔を塞ぐ位置に配する工程と、
孔あき絶縁体及び前記孔なし絶縁体とを互いに押圧して加熱することにより絶縁層を形成し、該絶縁層内に前記部品を埋設する積層工程と、
前記絶縁層の外側から前記部品が有する端子に到達するビアを形成するビア形成工程と、
前記絶縁層の表面に導体パターンを形成し、かつ前記ビア内に前記導体パターンと前記端子とを電気的に接続するための導電体を充填して導通ビアを形成するパターン形成工程とを含む部品内蔵基板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、剛性を有する支持板上に「金属膜を貼り付け、該金属膜上に」電気又は電子的な部品を搭載するのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

〔相違点2〕
本願発明1は、剛性を有する支持板上に金属膜を貼り付け、該金属膜上に電気又は電子的な部品を搭載する搭載工程と、「前記部品が貫通する貫通孔が予め形成された孔あき絶縁体の前記貫通孔に前記部品を通し、」シート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を前記貫通孔を塞ぐ位置に配するレイアップ工程を有するのに対して、引用発明は、片面銅張積層板20である第1樹脂基板22の上に、チップコンデンサ30が収容される貫通孔である開口部32Aが予め形成されたプリプレグ32αを積層するとともに、前記開口部32Aを通して前記チップコンデンサ30を搭載する第1の工程と、シート状のガラスクロスが内蔵された孔なしのプリプレグ34αを前記開口部32Aを塞ぐ位置に配する第2の工程とを有する点。

〔相違点3〕
本願発明1は、「前記レイアップ工程にて、前記孔あき絶縁体を流動性を有する流動体及び剛性を有する剛性体で形成し、前記流動体の厚みは前記孔あき絶縁体の厚みに対して30%?90%と」するのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

〔相違点4〕
本願発明1は、「前記ビア形成工程にて、前記ガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射により大径の大径ビアを形成した後、前記第1のレーザー照射よりも低いパワーである第2のレーザー照射により前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記端子に到達する前記大径ビアより小径の小径ビアを形成する」のに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4について先に検討する。

本願発明1と引用文献2に記載された事項とを対比すると、後者の「ビア穴形成工程」は前者の「ビア形成工程」に相当し、以下同様に、「ガラスクロス36」は「ガラスクロス」に、「ガラスクロス36を切断するパワーのレーザ光の照射」は「ガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射」に、「大径のビア開口側領域」は「大径ビア」に、「段差39」は「段差部」に、それぞれ相当する。

また、引用文献2に記載された事項における「前記大径のビア開口側領域より小径のビア底部側領域」は、本願発明1における「前記端子に到達する前記大径ビアより小径の小径ビア」と、「前記大径ビアより小径の小径ビア」という限りで共通し、
引用文献2に記載された事項における「前記レーザ光の照射により前記大径のビア開口側領域に対して段差39を形成しつつ前記大径のビア開口側領域より小径のビア底部側領域を形成する」ことは、本願発明1における「前記第1のレーザー照射よりも低いパワーである第2のレーザー照射により前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記端子に到達する前記大径ビアより小径の小径ビアを形成する」ことと、「レーザー照射により前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記大径ビアより小径の小径ビアを形成する」という限りで共通し、
引用文献2に記載された事項における「コアレス配線基板10」は、本願発明1における「部品内蔵基板」と、「基板」という限りで共通する。

したがって、引用文献2に記載された事項を本願発明1の用語を用い、その記載ぶりに倣って整理すると次のように表現できる。

「ビア形成工程にて、ガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射により大径の大径ビアを形成した後、レーザー照射により前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記大径ビアより小径の小径ビアを形成する基板の製造方法。」

してみると、引用文献2に記載された事項は、ガラスクロス36を切断するパワーのレーザ光がガラスクロス36により散乱することで段差39が形成されるものであって、積層金属シート体42に到達するまで同じパワーのレーザ光が照射されるものであり、相違点4に係る発明特定事項のうち、少なくとも、ビア形成工程にて、ガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射により大径の大径ビアを形成した後、「前記第1のレーザー照射よりも低いパワーである第2のレーザー照射により」前記大径ビアより小径の小径ビアを形成したものではない。
そして、本願発明1は、大径ビアを形成する際にガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射を用い、小径ビアを形成する際にガラスクロスを貫通するパワーの第1のレーザー照射よりも低いパワーの第2のレーザー照射を用いることにより、ガラスクロスを貫通しつつも、基板に内蔵された部品を傷つけないという顕著な効果を奏するものである。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献3(国際公開第2012/042667号)や、引用文献4(特開2010-128934号公報)にも、相違点4に係る本願発明1の発明特定事項についての記載はない。

そうしてみると、引用発明に引用文献2、引用文献3、及び引用文献4に記載された事項を適用して、相違点4に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、相違点1、2及び3を検討するまでもなく、引用発明、引用文献2、引用文献3、及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2、引用文献3、及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、引用文献3、及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
平成29年9月21日の手続補正により補正された請求項1は、ビア形成工程にて、前記ガラスクロスを貫通する「パワーの第1のレーザー照射により」大径の大径ビアを形成した後、「前記第1のレーザー照射よりも低いパワーである第2のレーザー照射により」前記大径ビアに対して段差部を形成しつつ前記端子に到達する前記大径ビアより小径の小径ビアを形成するとの事項を備えるものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明、引用文献2、引用文献3、及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1 当審では、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。

ア 請求項1について
(ア)請求項1には、「流動性を有する流動体及び剛性を有する剛性体からなる孔あき絶縁体、並びにシート状のガラスクロスが内蔵された孔なし絶縁体を形成材料として押圧・加熱してなる絶縁層」、及び「絶縁樹脂材料を含む絶縁層」との記載がある。
上記各「絶縁層」は記載の整合性から判断すると、実際には同一のものを示すはずであるが、あたかも別のものを示すように記載されており、不明確である。

(イ)請求項1には、「前記導通ビアは、前記導体パターンから前記端子に向けて大径の大径ビアに導電体が充填された大径部と、前記大径ビアの形成時と比較して低いパワーのレーザー照射によって形成され且つ前記大径ビアより小径の小径ビアに導電体が充填された小径部とで形成され」るとの記載がある。
上記における、特に大径ビアの形成時と比較して低いパワーのレーザー照射によって小径ビアを形成することが、部品内蔵基板の製造方法であるか否かを検討すると、明細書、特許請求の範囲、図面の記載及び技術常識を考慮しても、当該製造方法が物(部品内蔵基板)のどのような構造若しくは特性を表しているのか明らかではないから、上記は物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当する。
ここで、物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に、その請求項の記載が「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時においてその物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情が存在するときに限られるところ、請求項1に係る発明においては上記事情が存在しないことは明らかであるから、上記記載は明確ではない。

(ウ)請求項1には、「孔あき絶縁体において、前記流動体の厚みは前記孔あき絶縁体の厚みに対して30%?90%であ」るとの記載がある。
しかしながら、上記「孔あき絶縁体」の「流動体」は部品内蔵基板の製造中に変形し、その厚みは最終的な生成物としての「部品内蔵基板」の構成には反映されない。したがって、上記記載は部品内蔵基板を構成するものとは認められない。

これに対して、平成29年9月21日の手続補正により、請求項1は削除された結果、この拒絶理由は解消した。

イ 請求項5について
請求項5には、「前記孔あき絶縁体及び前記孔なし絶縁体の厚みに対して40%?90%の間で前記ガラスクロスの位置を制御することを特徴とする請求項2に記載の部品内蔵基板の製造方法」との記載がある。
しかしながら、上記記載の意味が、明細書、特許請求の範囲、図面の記載及び技術常識を考慮しても不明である。

これに対して、平成29年9月21日の手続補正により、請求項5は削除された結果、この拒絶理由は解消した。

2 当審では、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。

請求項4には、「前記レイアップ工程にて、前記孔なし絶縁体の溶融開始温度が前記孔あき絶縁体の溶融開始温度と同じかそれよりも高いものを用いる」との記載がある。
しかしながら、レイアップ工程にて、孔なし絶縁体の溶融開始温度が孔あき絶縁体の溶融開始温度と同じものを用いることは、発明の詳細な説明(発明を実施するための形態)には記載がない。

これに対して、平成29年9月21日の手続補正により、請求項4を前記レイアップ工程にて、前記孔なし絶縁体の溶融開始温度が前記孔あき絶縁体の溶融開始温度「よりも」高いものを用いると変更した結果、この拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、いずれも、引用発明、引用文献2、引用文献3及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-21 
出願番号 特願2014-557291(P2014-557291)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 大介  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 小関 峰夫
滝谷 亮一
発明の名称 部品内蔵基板の製造方法  
代理人 長門 侃二  

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