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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1334718
審判番号 不服2016-13571  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-09 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2015-228637「写真シール作成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開,特開2016- 66087〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
1 出願までの経緯
特願2015-228637号(以下,「本件出願」という。)の出願までの経緯は,以下のとおりである。
(1)特願2012-098716号は,平成24年4月24日(優先権主張平成24年2月9日)の特許出願である。
(2)上記(1)の特許出願の一部は,特許法44条1項の規定に基づいて,平成26年6月18日に,新たな特許出願(特願2014-125780号)とされた。
(3)上記(2)の特許出願の一部は,特許法44条1項の規定に基づいて,平成27年7月2日に,新たな特許出願(特願2015-133932号)とされた。
(4)上記(3)の特許出願の一部は,特許法44条1項の規定に基づいて,平成27年11月24日に新たな特許出願とされた。この出願が,本件出願である。

2 出願後の手続の経緯
本件出願の出願後の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年12月24日付け:拒絶理由通知書
平成28年 3月 7日差出:意見書,手続補正書
平成28年 5月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成28年 9月 9日差出:審判請求書

第2 本願発明について
1 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項7に係る発明は,平成28年3月7日付け手続補正書により補正された,特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「利用者を被写体として撮影し,得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ,前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって,
ズームリングを回転させることで,カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部と,
前記カメラ部による撮影に合わせて発光するカメラストロボと,
前記カメラ部において,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合と,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整された場合とで,異なる縦横比のトリミング枠でトリミングされた前記撮影画像を,前記カメラ部に取り込まれた画像から取得する取得手段と
を備え,
前記カメラ部は,前記カメラ部が前傾するように,レンズの光軸と水平面とのなす角度である前傾角度が調整可能とされ,
前記前傾角度は,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整される場合,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整される場合の第1の角度より大きい第2の角度になるように調整され,
前記取得手段は,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合,縦長長方形状の第1のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の顔および上半身が写るアップ画像を取得し,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整され,かつ,前記前傾角度が前記第2の角度になるように調整された場合,前記第1のトリミング枠より縦長長方形状の第2のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の全身が前記利用者の前方斜め上から撮影されたように写る全身画像を取得する
写真シール作成装置。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前の特許出願であって,その優先日後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特願2011-177326号(特開2013-42314号公報。以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件出願の出願の時において,その出願人が先願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができない,というものである。

第3 先願
1 先願の記載
先願には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,先願発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は,写真撮影遊戯機に関し,さらに詳しくは,複数の合成画像を印刷用紙に印刷する写真撮影遊戯機に関する。
【背景技術】
【0002】
写真撮影遊戯機は,カメラ撮影により生成された写真画像上にタッチペンで落書き画像等の編集画像を入力し,写真画像と編集画像とを合成した合成画像を印刷用紙であるシール紙に印刷する。シール紙は複数の区分に分けられ,各区分に1つの合成画像が印刷される。プレイヤは,はさみやカッタを用いて各区分ごと(各合成画像ごと)に切り取り,写真シールを完成する。このような写真撮影遊戯機は,ゲームセンタ等に設置され,主として女子中高生の間で人気がある。
【0003】
しかしながら,最近のプレイヤは,このような従来の写真シールに満足しなくなってきている。そのため,今までにない斬新な写真シールが求められる。
【0004】
たとえば,特開2003-134425号公報(特許文献1)に開示された写真プリント装置は,シールシートに同一の写真画像を複数配置し,それぞれの写真画像に異なる編集処理を施すことができる。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
・・・(略)・・・
【0008】
本発明の目的は,複数の合成画像が配置されたシート画像であって,デザイン性の高いシート画像を生成できる,写真撮影遊戯機を提供することである。」

(3)「【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明による写真撮影遊戯機は,カメラとプリンタとを備える。写真撮影遊戯機は,撮影制御手段と,第1イメージ決定手段と,第2イメージ決定手段と,合成画像生成手段と,シート背景決定手段と,シート画像生成手段とを備える。撮影制御手段は,カメラを制御して被写体を撮影し,第1合成画像用の複数の第1写真画像と,第1合成画像よりもサイズの大きい第2合成画像用の第2写真画像とを生成する。第1イメージ決定手段は,複数の第1写真画像と合成される複数の第1背景画像を決定する。第2イメージ決定手段は,第2写真画像と合成される第2背景画像を決定する。合成画像生成手段は,複数の第1写真画像と複数の第1背景画像とを合成して複数の第1合成画像を生成し,第2写真画像と第2背景画像とを合成して第2合成画像を生成する。シート背景決定手段は,第2合成画像のデザインに基づいて,複数の第1合成画像及び第2合成画像の配置領域と配置領域以外の領域であって背景画像が配置されるデザイン領域とを含むシートレイアウトのうちの,デザイン領域に配置される背景画像を決定する。シート画像生成手段は,シートレイアウトに基づいて,生成された第1合成画像及び第2合成画像と,シート背景決定手段により決定された背景画像とを合成してデザインシート画像を生成する。印刷制御手段は,プリンタを制御して,デザインシート画像を印刷用紙に印刷する。
【0010】
本発明による写真撮影遊戯機は,シート画像のデザインの統一性を高めることができる。」

(4)「【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は,本発明の実施の形態による写真撮影遊戯機の撮影ブース側から見た斜視図である。
【図2】図2は,図1に示す写真撮影遊戯機を編集ブース側から見た斜視図である。
【図3】図3は,図1に示す写真撮影遊戯機の撮影ブース内に設置された撮影装置の斜視図である。
・・・(略)・・・
【図7A】図7Aは,図1に示す写真撮影遊戯機で生成されるデザインシート画像の一例を示す模式図である。
・・・(略)・・・
【図12】図12は,図1に示す写真撮影遊戯機で生成される合成画像の模式図である。
・・・(略)・・・
【図16】図16は,図3に示すカメラの撮影条件を制御する撮影条件制御装置の斜視図である。
【図17】図17は,図16に示す撮影条件制御装置の背面図である。」

(5)「【0036】
[外観構成]
図1及び図2を参照して,写真撮影遊戯機1は,撮影を行う撮影ブース2と,撮影により得られた写真画像の編集を行う2つの編集ブース3と,印刷用紙である写真シール紙の印刷中にプレイヤが待機する印刷待機ブース5とを備える。撮影ブース2には,撮影装置4が配置される。編集ブース3には,編集装置8が配置される。編集装置8は,筐体状の本体800を備え,本体800の正面及び背面にはそれぞれ画像編集部80が設けられている。つまり,編集装置8は2つの画像編集部80を備える。各画像編集部80は編集ブース3に属する。編集装置8の一方の側面は撮影装置4と隣接する。編集装置8の他方の側面には,写真シール紙を排出するシール紙排出装置70が取り付けられている。」

(6)「【0039】
[撮影ブース]
図1及び図2を参照して,撮影ブース2は,撮影筐体521と,撮影装置4とを備える。撮影筐体521は,両側壁に開口520を有する。撮影の被写体となるプレイヤは,開口520から,撮影ブース2内に出入り可能である。以下,開口520を「出入口」520という。撮影筐体521の正面内壁には,図3に示す撮影装置4が配設される。そして,撮影筐体521の背面内壁には,図4に示す背面パネル526が配置される。背面パネル526は,クロマキー合成用のパネルである。背面パネル526の代わりに,クロマキー合成用の1又は複数のカーテンを設けてもよい。
【0040】
図3を参照して,撮影装置4の正面の右下部分(出入口520近傍部分)には,コインを投入するためのコイン投入口31が設けられる。写真撮影遊戯機1を利用する場合,プレイヤは撮影ブース2に入って,コイン投入口31にコインを投入した後,撮影装置4に向かって撮影操作を行う。撮影終了後,プレイヤは撮影筐体521を出て,写真撮影遊戯機1が指定するどちらかの編集ブース3に移動する。そして,プレイヤは,編集装置8の画像編集部80に向かって画像編集操作(落書き処理操作)を行う。具体的には,フレーム,スタンプ,ペン書きの文字や図形などの編集画像を入力する。
【0041】
カメラ10はプレイヤを被写体として撮影するもので,一般にデジタルカメラが用いられる。図3ではカメラ10は1台であるが,カメラ10は複数台設けられてもよい。本例では,カメラ10は,画角及び角度を変更することができる。これにより,カメラ10は被写体のアップを撮影することができ,被写体の全身を撮影することもできる。
【0042】
撮影用ディスプレイ11は,自身が被写体となるプレイヤ用の確認モニタで,表示画面が見えやすいようにプレイヤに向けられている。撮影用ディスプレイ11は,カメラ10で撮影されている映像を左右反転してライブ映像(動画)としてリアルタイムで表示する。したがって,プレイヤは鏡のように映る自分の姿を見ながら撮影を行うことができる。さらに,その表示画面上には透明なタッチパネルが貼り付けられており,撮影用ディスプレイ11は,タッチパネルを介してプレイヤの入力操作を受け付ける。図3では,プレイヤは自分の指を用いて撮影用ディスプレイ11をタッチする。図3には図示していないが,撮影用ディスプレイ11には,プレイヤによる種々の操作をタッチパネル上で入力するためのタッチペンが設けられてもよい。
【0043】
撮影用ディスプレイ11はライブ映像の他,確認用の撮影済み画像を表示する(プレビュー表示)。また,各種案内画面,操作ボタンなども表示する。本実施の形態では,撮影用ディスプレイ11がライブ映像の表示及びプレイヤの入力操作の受け付けの両方を行うが,ライブ映像を表示するディスプレイと,プレイヤの入力操作を受け付けたり,案内表示をしたりするディスプレイとを別個に設けてもよい。
・・・(略)・・・
【0045】
撮影装置4の正面の内壁にはカメラ10が設けられ,その下方には撮影用ディスプレイ11が設けられる。さらにカメラ10及び撮影用ディスプレイ11を取り囲むようにして,リング状の照明装置9Aが設けられる。照明装置9Aは,撮影筐体521の正面側から被写体を照射する。撮影筐体521の正面側の内壁522は,照明装置9Aの左右方向に配置される一対の壁面523と,上下方向に配置される一対の壁面527とを含む。図3を参照して,壁面523の領域をハッチングで示す。一対の壁面523の明度は,一対の壁面527の明度よりも小さい。壁面523の色はたとえば,灰色である。
【0046】
また,図3及び図4を参照して,複数の照明装置9Bが,撮影筐体521の天井や,背面及び側面に配置される。複数の照明装置9Bは,撮影筐体521の上方及び後方から被写体を照射する。
【0047】
照明装置9A,9Bは,その内部に,蛍光灯などの常灯照明と,ストロボなどの閃光照明(フラッシュ)とを有する。ストロボは,プレイヤから撮影の開始が指示され,カメラ10が撮影しているライブ映像を画像(静止画)として取り込む瞬間に発光し,被写体を強く照明する。照明装置9A,9Bとは別の照明装置が,被写体の側方に設けられてもよい。」

(7)「【0051】
[編集ブース及び印刷待機ブース]
図2に示すとおり,編集ブース3には,編集装置8が配置される。図5を参照して,編集装置8の上部正面及び上部背面にはそれぞれ画像編集部80が配置される。つまり,2つの画像編集部80は互いに背中合わせに配置される。編集装置8の側面上部にはシール紙排出装置70が取り付けられ,その正面700には印刷待機部90が配置される。編集装置8の側面下部には,開閉可能な排出扉600が設けられており,その内部にプリンタ601(図6参照)が収納される。編集装置8の側面のうち,シール紙排出装置70が取集ブース3に属し,印刷待機部90は印刷待機ブース5に属する。
【0052】
[画像編集部]
各画像編集部80は,撮影装置4で得られた写真画像を編集するための装置である。画像編集部80の正面中央には編集用ディスプレイ40が設けられる。編集用ディスプレイ40は,撮影装置4で生成された複数の写真画像を表示する。さらに,編集用ディスプレイ40の表示画面上には透明なタッチパネルが貼り付けられており,タッチパネルを介してプレイヤの編集操作を受け付ける。編集用ディスプレイ40の両側には,ペン画像やスタンプ画像といった編集画像をディスプレイ40で入力するためのタッチペン42が設けられる。画像編集部80は,プレイヤの編集操作に応じて写真画像上に編集画像を入力する。本例ではタッチペン42が用いられるが,タッチペン42の代わりにプレイヤの指が直接用いられてもよい。編集終了後,写真撮影遊戯機1は写真画像と編集画像とを合成し,合成画像を生成する。
【0053】
[排出扉周辺]
図5を参照して,排出扉600の内部には,プリンタ601が収納される。プリンタ601は,排出扉600を開くことで外部に取り出し可能である。プリンタ601は,たとえば,USBケーブル等により後述するコンピュータ装置101(図6参照)と接続されており,コンピュータ装置101からの命令に基づいて,画像編集部80で生成された合成画像を印刷用紙であるシール紙に印刷する。プリンタ601はさらに,合成画像を印刷されたシール紙を所定の長さで切断する。プリンタ601は,内部にマイコン及び周知のカッタを備え,カッタによりシール紙を切断する。排出扉600の下部には,排出口602が設けられる。プリンタ601で印刷されたシール紙は,排出口602に排出される。
【0054】
[印刷待機部]
プレイヤが画像編集部80を用いて写真画像を編集した後,プレイヤは,印刷用紙が排出口602から排出されるまで,印刷待機ブース5で待機する。印刷待機部90は,待機中のプレイヤの携帯端末のメールアドレスを受け付けたり,印刷用紙が排出されるまでの時間を使ってプレイヤにミニゲームを提供したりする。また,プリンタ601やシール紙排出装置70に異常が生じたとき(たとえば,消耗品切れや故障等),その旨を表示してプレイヤに案内する。印刷待機部90はシール紙排出装置70の正面に設けられる。
【0055】
印刷待機部90の正面中央には待機用ディスプレイ95が設けられる。待機用ディスプレイ95は,アドレス入力画面や,ミニゲーム画面等を表示する。待機用ディスプレイ95の画面上には透明なタッチパネルが貼り付けられており,待機用ディスプレイ95は,タッチパネルを介してプレイヤの操作を受け付ける。本例では,携帯電話機に代表される携帯端末のアドレス等の入力に,プレイヤの指が用いられる。なお,プレイヤの指の代わりにタッチペンを用いてもよい。」

(8)「【0056】
[機能構成]
図6を参照して,写真撮影遊戯機1は,写真撮影遊戯機1全体を制御するコンピュータ装置101と,動作中のコンピュータ装置101からの指示を受け付けて,接続されている各種装置を制御する制御基板102と,クロマキーキャプチャボード17とを備える。これらは写真撮影遊戯機1の制御装置100として機能する。制御装置100は撮影装置4に搭載されていてもよいし,編集装置8に搭載されていてもよい。
・・・(略)・・・
【0060】
クロマキーキャプチャボード17は,カメラ10で撮影されている映像を所定の時間間隔(たとえば30フレーム/秒)でデジタルデータ(静止画像)として取り込み,取り込んだ静止画像の中からクロマキー技術により被写体以外の領域を検出し,その検出した領域に選択された所望の背景画像を合成する。コンピュータ装置101はさらに,必要に応じて映像をトリミングする。具体的には,所定の時間間隔で取り込まれた静止画像の所定の領域をトリミングして,トリミングされた画像を撮影用ディスプレイ11に順次表示する。」

(9)「【0070】
[動作概要]
[デザインシート画像]
本実施の形態による写真撮影遊戯機1は,統一感のあるデザインで複数の合成画像が配置されたシート画像が印刷された写真シール紙を提供する。以下,このようなシート画像を,「デザインシート画像」と呼ぶ。
【0071】
従来のシート画像(以下,通常シート画像という)では,ほとんど隙間のない状態で,複数の合成画像がシート画像全体に配列されている。これに対して,デザインシート画像では,複数の合成画像の間にデザイン領域が存在し,所定のデザイン(模様)を有する背景画像や,デザインされた文字等がデザイン領域に描かれる。このため,デザインシート画像を一体的に一つの作品として楽しむことができるようになる。
【0072】
デザインシート画像の一例を図7Aに示す。デザインシート画像810は,たとえば,印刷用紙である写真シール紙に印刷される。デザインシート画像810は,コラージュ合成画像820と,複数の通常合成画像830A?830Fと,背景画像845とを含む。デザインシート画像810は,シートレイアウト840に基づいて生成される。シートレイアウト840は,コラージュ合成画像820が配置される配置領域841と,複数の通常合成画像が配置される配置領域842と,背景画像845が配置されるデザイン領域843とを含む。また,図7Bに示すように,コラージュ合成画像820の輪郭を描画しなくてもよい。
・・・(略)・・・
【0076】
図7A及び図7Bを参照して,通常合成画像830A?830Dには,被写体の上半身又は顔を撮影した写真画像650が配置される。通常合成画像830E,830Fには,被写体の全身を撮影した写真画像650が配置される。
【0077】
図9に,通常合成画像の一例として,通常合成画像830Dを示す。通常合成画像830Dは,被写体で構成される通常写真画像650と,背景画像831と,編集画像832とを含む。つまり,通常合成画像830A?830F(以下,通常合成画像830A?830Fを総称して,「通常合成画像830」と呼ぶ。)には,一つの通常写真画像650が配置される。編集画像832は,いわゆる落書き画像であり,プレイヤが入力した文字列に基づいて作成された文字列画像や,ユーザがタッチペン42を用いて描いた画像などである。編集画像832は,配置されなくてもよい。
・・・(略)・・・
【0084】
図10を参照して,プリンタ601は,2つのデザインシート画像810が合成されたプリント画像850をシール紙に印刷する。プリンタ601は,図示しないカッターを用いて,プリント画像850が印刷されたシール紙を一点鎖線Lで切断する。これにより,2人のプレイヤは,デザインシート画像810が印刷されたシール紙を分けることができる。左右のデザインシート画像810は,コラージュ合成画像820と,通常合成画像830の配置パターンが異なる。本実施の形態の写真撮影遊戯機1では,プレイヤが,コラージュ合成画像820や通常合成画像830の配置レイアウトを選択可能である。これにより,各プレイヤは,合成画像を数多く配置したい場合,図10の右側のシートレイアウト840を選択し,大きい合成画像を配置したい場合,図10の左側のシートレイアウト840を選択するなどして,自身の好みに応じたデザインシート画像810を作成できる。」

(10)「【0092】
[通常写真画像の生成処理]
写真撮影遊戯機1は,図12(A)及び(B)に示すように,各辺の長さがほぼ等しい正方形状の通常合成画像830に使用される通常写真画像を生成する。ここでいう正方形状とは,各辺の長さの差が±5%以内,好ましくは±3%以内,さらに好ましくは±1%以内の矩形をいう。図12(A)に示す通常合成画像830は,正方形状の通常写真画像650が全体に配置されるため,被写体のアップ写真を通常合成画像830全体に描画するのに適している。
【0093】
図12(B)に示すように,通常写真画像650が配置された写真領域301と,それ以外の余白領域302とを含む通常合成画像830を生成することもできる。余白領域302には通常写真画像650が描画されないため,ペン画像等によりメッセージを入力すれば,通常写真画像650上に入力する場合よりもより明確に,見やすく描画できる。本実施の形態では,写真撮影遊戯機1が,図12(A)に示す通常合成画像830を作成する場合を例にして,通常写真画像650の生成処理を説明する。
【0094】
写真撮影遊戯機1はさらに,図12(C)に示すように,長方形状の通常合成画像830を生成できる。この場合,被写体の一部を示す通常写真画像650ではなく,被写体のほぼ全身(たとえば,膝から上の被写体部分)を示す通常写真画像650を表示できる。図12(C)には縦長の画像を示すが,横長の長方形状の通常合成画像830も生成できる。
【0095】
CPU103は,カメラ10で被写体となるプレイヤを複数回撮影して通常写真画像650を生成する。本例では,プレイヤを4回撮影し,正方形状の通常合成画像830用の4枚の通常写真画像650を生成する。CPU103はさらに,プレイヤを2回撮影し,長方形状の通常合成画像830用の2枚の通常写真画像650を生成する。以下,通常写真画像650の生成処理の詳細を説明する。
・・・(略)・・・
【0106】
本例では,第1?第4回目までの撮影では,正方形状の通常合成画像830用に撮影が行われる。そのため,CPU103は,プレイヤに図14に示されるサンプル画像512を4回選択させる。図14に示すサンプル画像は,図12(A)に示す通常合成画像830に対応する。サンプル画像512は,モデル等を被写体とする通常写真画像650と,背景画像831とを含む。したがって,サンプル画像512が選択されれば,サンプル画像512に属する背景画像831も決定される。選択(決定)されたサンプル画像512(背景画像831)はメモリ105に記憶される。
【0107】
続いて,CPU103は,選択されたサンプル画像512に基づいて,つまり,生成される通常合成画像の種類に応じて,カメラ10の撮影モードを変更する(S9)。上述のように,サンプル画像512は,正方形状であるため,サンプル画像512には,被写体の上半身や顔の写真画像が配置される。このため,CPU103は,カメラ10の焦点距離及び撮影方向を,被写体の上半身や顔の撮影に適した撮影モードに変更する。
【0108】
図15は,ステップS9の動作の詳細を示すフロー図である。図15を参照して,CPU103は,選択されたサンプル画像512の種類に応じて,上半身撮影モード及び全身撮影モードのどちらで撮影するかを決定する(S81)。具体的には,選択されたサンプル画像512には,撮影モードを特定する情報が設定されている。図14に示すサンプル画像512は,被写体の上半身や顔が撮影された写真画像650を配置するのに適した正方形状であるため,上半身撮影モードを示す情報を有する。このため,CPU103は,上半身撮影モードの使用を決定する(S81でYes)。
【0109】
上半身撮影モードは,被写体の上半身又は顔を撮影するときに用いられる。上半身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100(図16参照)の焦点距離が所定距離X1(たとえば24mm)に調整される。カメラ10の撮影方向は,全身撮影モードに比べて上向きに調整される。全身撮影モードとは,被写体の全身を撮影するときに用いられる。具体的には,図12(C)に示す長方形状の通常合成画像830を作成する際に,全身撮影モードが用いられる。全身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離が,上半身撮影モードに比べて広角(所定距離X2,たとえば18mm)に調整される。全身撮影モードではさらに,カメラ10の撮影方向が,上半身撮影モードに比べて下向きに調整される。
【0110】
撮影モードが上半身撮影モードであるため(S81でYes),CPU103は,上半身撮影モードに合わせてカメラ10の撮影条件を調整する(S82)。具体的には,ズームレンズ1100の焦点距離が所定距離X1に調整される。カメラ10の撮影方向(上下方向)が,床部材525が映らない向きに調整される。
【0111】
図16は,カメラ10の撮影条件を制御する撮影条件制御装置10Aを前方から見た斜視図である。図16を参照して,焦点距離の調整について詳述する。カメラ10は,支持台28に固定される。支持台28は,直線Aを回転軸として,固定台29に対して回転可能に取り付けられる。固定台29は,撮影筐体521に動かないように固定される。
【0112】
カメラ10のズームレンズ1100には,円環状のズーム規制ギヤ25がはめ込まれている。トルクリミッタ22が,モータ21とともに回転する。トルクリミッタ22の回転は,ギヤ23及び24を介して,ズーム規制ギヤ25に伝えられる。ズームレンズ1100がモータ21の回転に応じて回転することにより,ズームレンズ1100の焦点距離が変更される。CPU103は,使用する撮影モードに応じて,モータ21の回転方向を変化させる。トルクリミッタ22は,所定値以上のトルクを検出した場合,回転を停止する。これにより,ズームレンズ1100に過負荷がかかることを防止する。
【0113】
図17は,図16に示す撮影条件制御装置10Aを矢印C方向から見た背面図である。図17を参照して,カメラ10の撮影方向の調整について説明する。支持台28の背面には,突起281が取り付けられており,突起281は,カム26の上に載せられている。カム26は,直線B(図16参照)を回転軸として回転可能に固定台29に取り付けられている。カム26は,回転中心から円周までの距離が一定でない円盤状の物体である。
【0114】
CPU103は,撮影モードに応じてカム26の回転位置を変化させるために,モータ27を回転させる。カム26がモータ27とともに回転することにより,固定台29を基準とした突起281の高さが変化する。支持台28は,固定台29に対して回転可能に取り付けられているため,突起281の高さの変化に応じて,カメラ10の撮影方向が変化する。
【0115】
このように,カメラ10の焦点距離及び撮影方向は,被写体の顔の撮影に適した撮影条件に制御される。これにより,従来のように,被写体の全身を撮影した写真画像から,被写体の顔部分を切り出す場合に比べて,被写体の顔を高画質で撮影することができる。
【0116】
再び,図13を参照して,撮影処理を説明する。撮影用ディスプレイ11にライブ映像を表示するための処理を実行する(S10及びS11)。具体的には,クロマキーキャプチャボード17は,カメラ10で撮影されている映像を取り込む。このとき,カメラ10から得られる映像(元画像)は縦長の長方形である。そこで,CPU103は,元画像の下部分をトリミングによりカットして,ステップS8で選択されたサンプル画像512に対応した画像を取り込む(S10)。
【0117】
より具体的には,以下の処理が実行される。CPU103は,第1回目撮影用のサンプル画像512(背景画像831)をメモリ105から読み出す。CPU103は,カメラ10から得られる元画像をトリミングにより正方形状にする。
【0118】
CPU103はさらに,得られた画像からクロマキー技術により被写体以外の領域を検出し,検出した領域に,ステップS5で選択された第1回目用のサンプル画像512の背景画像831を合成する。そして,背景が合成された画像を撮影用ディスプレイ11に表示する(S11)。
・・・(略)・・・
【0120】
CPU103はカウントダウンを開始して,所定時間経過後にシャッタ動作を行い(S92),トリミングされた映像から画像を固定して通常写真画像650を生成し,生成された通常写真画像650をメモリ105やHDD104に保存する。
・・・(略)・・・
【0122】
第1回目の撮影が終了したとき,CPU103は,ステップS8で2番目に選択されたサンプル画像に基づいて,カメラ10の撮影モードを変更する(S95)。このとき,撮影モードに変更がなければ,ステップS95は省略される。CPU103は,カメラ10から得られる映像をトリミングし(S96),トリミングされた映像に背景画像831及び余白領域603の画像を合成して撮影用ディスプレイ11に表示する(S97)。そして,CPU103は,第2回目の撮影動作を行う(S91?S94)。第3回目?第6回目の撮影時も同様の処理を実行する(S91?S97)。
【0123】
ただし,第5回目及第6回目の撮影において,CPU103は,サンプル選択パレット511に長方形状のサンプル画像512を表示する。これにより,第1回目?第4回目までは,正方形状の通常写真画像650が生成され,第5回目及び第6回目では,長方形状の通常写真画像650が生成される。
・・・(略)・・・
【0165】
具体的には,CPU103は,写真画像821に対して比率変更処理を行う(S311)。比率変更処理(S311)とは,長方形状の写真画像を処理対象としており,写真画像の所定の下側領域において,縦方向と横方向のサイズの比率を変更する処理である。全身撮影モードで写真画像821を撮影する場合,上から見下ろすようにして被写体の全身を撮影するために,写真画像821の被写体の脚が短く見えるという問題がある。そこで,写真画像821において,所定の下側領域の縦方向のサイズを横方向に対して大きくすることにより,被写体の脚が短く見えることを防止している。このため,全身撮影モードで撮影された写真画像に対して比率変更処理(S311)が行われる。」

(11)「【図1】


【図2】


【図3】


【図7A】


【図12】


【図16】


【図17】



2 先願発明
上記1によると,先願には,図12から看取されるような,上半身撮影モードでは正方形状の通常写真画像650が生成され,全身撮影モードでは長方形状の通常写真画像650が生成される写真撮影遊技機1として,以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「撮影を行う撮影ブース2と,撮影により得られた写真画像の編集を行う編集ブース3と,写真シール紙の印刷中にプレイヤが待機する印刷待機ブース5を備える写真撮影遊戯機1であって,
撮影ブース2には,撮影装置4が配置され,撮影装置4の正面の内壁にはカメラ10が設けられ,その下方には撮影用ディスプレイ11が設けられ,カメラ10及び撮影用ディスプレイ11を取り囲むようにして,リング状の照明装置9Aが設けられ,撮影用ディスプレイ11はライブ映像を表示し,
リング状の照明装置9Aは,ストロボを有し,ストロボは,プレイヤから撮影の開始が指示され,カメラ10が撮影しているライブ映像を画像(静止画)として取り込む瞬間に発光し,
写真撮影遊戯機1は,写真撮影遊戯機1全体を制御するコンピュータ装置101を備え,コンピュータ装置101はさらに,必要に応じて映像をトリミングし,
被写体の上半身又は顔を撮影するときに用いられる上半身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離がたとえば24mmに調整され,カメラ10の撮影方向は,全身撮影モードに比べて上向きに調整され,
被写体の全身を撮影するときに用いられる全身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離が,上半身撮影モードに比べて広角(たとえば18mm)に調整され,全身撮影モードではさらに,カメラ10の撮影方向が,上半身撮影モードに比べて下向きに調整され,
カメラ10のズームレンズ1100には,円環状のズーム規制ギヤ25がはめ込まれ,モータ21とともに回転するトルクリミッタ22の回転は,ギヤ23及び24を介して,ズーム規制ギヤ25に伝えられ,ズームレンズ1100がモータ21の回転に応じて回転することにより,ズームレンズ1100の焦点距離が変更され,
上半身撮影モードでは正方形状の通常写真画像650が生成され,全身撮影モードでは長方形状の通常写真画像650が生成される
写真撮影遊技機1。」

第4 対比
1 本願発明と先願発明とを対比する。
(1)「写真シール作成装置」について
先願発明の「写真撮影遊技機1」は,「撮影を行う撮影ブース2と,撮影により得られた写真画像の編集を行う編集ブース3と,写真シール紙の印刷中にプレイヤが待機する印刷待機ブース5を備える」。
先願発明の上記構成からみて,先願発明の「写真撮影遊技機1」と本願発明の「写真シール作成装置」は,「利用者を被写体として撮影し,得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ,前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置」の構成において一致する。

(2)「回転部を有するカメラ部」について
先願発明は「撮影ブース2には,撮影装置4が配置され」,「撮影装置4の正面の内壁にはカメラ10が設けられ」,「カメラ10のズームレンズ1100には,円環状のズーム規制ギヤ25がはめ込まれ,モータ21とともに回転するトルクリミッタ22の回転は,ギヤ23及び24を介して,ズーム規制ギヤ25に伝えられ,ズームレンズ1100がモータ21の回転に応じて回転することにより,ズームレンズ1100の焦点距離が変更され」という構成を備える。
先願発明の上記構成からみて,先願発明の「写真撮影遊技機1」と本願発明の「写真シール作成装置」は,「ズームリングを回転させることで,カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部」を備える点で一致する。

(3)「カメラストロボ」について
先願発明の「写真遊技機1」は,「カメラ10及び撮影用ディスプレイ11を取り囲むようにして,リング状の照明装置9Aが設けられ」,「リング状の照明装置9Aは,ストロボを有し,ストロボは,プレイヤから撮影の開始が指示され,カメラ10が撮影しているライブ映像を画像(静止画)として取り込む瞬間に発光し」という構成を備える。
先願発明の上記構成からみて,先願発明の「写真撮影遊技機1」と本願発明の「写真シール作成装置」は,「前記カメラ部による撮影に合わせて発光するカメラストロボ」を備える点で一致する。

(4)「カメラ」の「焦点距離」及び「角度」について
先願発明の「写真撮影遊技機1」は,「被写体の上半身又は顔を撮影するときに用いられる上半身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離がたとえば24mmに調整され,カメラ10の撮影方向は,全身撮影モードに比べて上向きに調整され」,「被写体の全身を撮影するときに用いられる全身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離が,上半身撮影モードに比べて広角(たとえば18mm)に調整され,全身撮影モードではさらに,カメラ10の撮影方向が,上半身撮影モードに比べて下向きに調整され」,「上半身撮影モードでは正方形状の通常写真画像650が生成され,全身撮影モードでは長方形状の通常写真画像650が生成される」という構成を備える。
先願発明の上記構成からみて,先願発明の「写真撮影遊技機1」と本願発明の「写真シール作成装置」は,「前記カメラ部において,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合と,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整された場合とで,異なる縦横比の」「前記撮影画像を,前記カメラ部に取り込まれた画像から取得する取得手段」を備える点で共通する。また,先願発明の「写真撮影遊技機1」と本願発明の「写真シール作成装置」は,「カメラ部」について,「レンズの光軸と水平面とのなす角度である」「角度が調整可能とされ」る点で共通する。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
上記1を踏まえると,本願発明と先願発明は,次の構成で一致する。
「利用者を被写体として撮影し,得られた撮影画像に対して利用者に編集入力を行わせ,前記撮影画像を所定のシール紙に印刷する写真シール作成装置であって,
ズームリングを回転させることで,カメラ本体の焦点距離を調整する回転部を有するカメラ部と,
前記カメラ部による撮影に合わせて発光するカメラストロボと,
前記カメラ部において,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合と,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整された場合とで,異なる縦横比の前記撮影画像を,前記カメラ部に取り込まれた画像から取得する取得手段と
を備え,
前記カメラ部は,レンズの光軸と水平面とのなす角度である角度が調整可能とされる
写真シール作成装置。」

(2)相違点
本願発明と先願発明とは,以下の点で一応相違する。
(相違点1)
「カメラ部」について,本願発明は,「前記カメラ部は,前記カメラ部が前傾するように,レンズの光軸と水平面とのなす角度である前傾角度が調整可能とされ」,「前記前傾角度は,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整される場合,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整される場合の第1の角度より大きい第2の角度になるように調整され」るのに対して,先願発明は,上記下線部の構成が,一応,明らかではない点。

(相違点2)
「取得手段」について,本願発明は,「前記カメラ部において,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合と,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整された場合とで,異なる縦横比のトリミング枠でトリミングされた前記撮影画像を,前記カメラ部に取り込まれた画像から取得する取得手段」であるのに対して,先願発明は,上記下線部の構成が,一応,明らかではない点。
また,「取得手段」について,本願発明は,「前記取得手段は,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合,縦長長方形状の第1のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の顔および上半身が写るアップ画像を取得し,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整され,かつ,前記前傾角度が前記第2の角度になるように調整された場合,前記第1のトリミング枠より縦長長方形状の第2のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の全身が前記利用者の前方斜め上から撮影されたように写る全身画像を取得する」のに対して,先願発明は,この構成が,一応,明らかではない点。

第5 判断
1 相違点1について判断する。
先願発明の「写真撮影遊技機1」は,「撮影装置4の正面の内壁にはカメラ10が設けられ,その下方には撮影用ディスプレイ11が設けられ,カメラ10及び撮影用ディスプレイ11を取り囲むようにして,リング状の照明装置9Aが設けられ,撮影用ディスプレイ11はライブ映像を表示し」という構成を備える。当該構成に接した当業者ならば,撮影用ディスプレイ11が顔の正面の高さにあるように設計され,カメラ10は顔より上にあるように設計されていることを理解可能である。あるいは,先願発明は主に女性が利用することを念頭においた「写真撮影遊技機1」であるから,そのカメラアングルは,顔の輪郭が美しく見開かれた眼で撮影されるように,前傾しているとも解される。そうしてみると,先願発明のカメラ10は,顔よりも高い位置に設けられ,常に前傾して撮影を行うものと解される。したがって,先願発明のカメラ10は,前傾するように,前傾角度が調整可能とされるものである。
また,写真シール作成装置において,上半身のアップ画像を取得する際に,下向きに前傾させたカメラを用いて撮影することは,本件出願の優先日において周知技術である(例えば,本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2009-169207号公報の段落【0052】,【0059】,【0080】,【0088】,図6,図8,図16,図17,特開2008-46491号公報の段落【0027】,図3を参照。)。そうしてみると,仮に先願発明が,「上半身撮影モード」において「カメラ10」を前傾させていないものであったとしても,当該構成は,上記周知技術の付加あるいは上記周知技術による転換にすぎない。
また,先願発明では,「全身撮影モードではさらに,カメラ10の撮影方向が,上半身撮影モードに比べて下向きに調整され」る。すなわち,全身撮影モードにおける前傾角度は,上半身撮影モードにおける前傾角度よりも大きい。そして,先願発明の「被写体の上半身又は顔を撮影するときに用いられる上半身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離がたとえば24mmに調整され」,「被写体の全身を撮影するときに用いられる全身撮影モードでは,カメラ10のズームレンズ1100の焦点距離が,上半身撮影モードに比べて広角(たとえば18mm)に調整され」という構成も踏まえるならば,先願発明は,「前記前傾角度は,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整される場合,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整される場合の第1の角度より大きい第2の角度になるように調整され」という構成を具備している。
以上より,相違点1は相違点ではない。

2 相違点2について
(1)先願発明のカメラ10に取り込まれる画像の縦横比は,カメラ10の撮像素子等の仕様によって決定されることが技術常識である。そうしてみると,先願発明では,上半身撮影モード及び全身撮影モードのいずれにおいても,カメラ10が取り込んだ画像が,先願発明の「正方形状の通常写真画像」又は「長方形状の通常写真画像」に適した縦横比の画像にトリミングされているものと解される。

(2)縦長長方形状について
ア 本件出願の発明の詳細な説明には,「縦長長方形状」という用語がないので,本願発明の「第1のトリミング枠」に関する「縦長長方形状」という用語は,通常の意味で解するべきであるところ,縦長長方形状とは,横の辺の長さよりも縦の辺の長さが長い長方形状のことであると解される。
一方,先願の段落【0092】には,先願発明の上半身撮影モードにおける「正方形状」という用語について,「ここでいう正方形状とは,各辺の長さの差が±5%以内,好ましくは±3%以内,さらに好ましくは±1%以内の矩形をいう。」という記載がなされている。そうしてみると,先願発明における「正方形状」には,縦の長さが横の長さよりも,5%まで長い縦長長方形状も含まれている。当該事項と上記(1)で指摘した事項を踏まえると,先願発明の上半身撮影モードは,「縦長長方形状の第1のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の顔および上半身が写るアップ画像を取得」するものと解される。
また,先願発明では,「上半身撮影モードでは正方形状の通常写真画像650が生成され,全身撮影モードでは長方形状の通常写真画像650が生成される」。当該構成より,全身撮影モードでは,上半身撮影モードにおけるトリミング枠よりも縦長の長方形状のトリミング枠を用いているものと解される。更に,上記1で指摘したように,先願発明のカメラ10は,全身撮影モードにおいても前傾しているから,「利用者の前方斜め上から撮影されたように写る全身画像」を撮影するものといえる。
以上より,先願発明は,「前記取得手段は,前記カメラ本体の焦点距離がズームインするように調整された場合,縦長長方形状の第1のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の顔および上半身が写るアップ画像を取得し,前記カメラ本体の焦点距離がズームアウトするように調整され,かつ,前記前傾角度が前記第2の角度になるように調整された場合,前記第1のトリミング枠より縦長長方形状の第2のトリミング枠でトリミングされた,前記利用者の全身が前記利用者の前方斜め上から撮影されたように写る全身画像を取得する」ものである。
したがって,相違点2は相違点ではない。

イ あるいは,本願発明の「前記利用者の顔および上半身が写るアップ画像を取得」する際の「縦長長方形状の第1のトリミング枠」について,本件出願の明細書の段落【0241】には,「下カメラアップ画像の縦横比を1.2:1と・・・してもよい。」と記載されている。そこで,仮に,本願発明の「縦長長方形状の第1のトリミング枠」が,「縦横比1.2:1」のトリミング枠と解するものとした場合について,検討する。
本件出願の優先日において,写真シール作成装置が上半身を写すアップ画像を取得する際に用いるトリミング枠として,顔と落書きとをバランスよく配置するために,1.2:1の縦長長方形状を用いることは,周知技術である(例えば,本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である月刊アミューズメント・ジャーナル2011年7月号の65頁左下部分を参照。)。先願発明の「写真撮影遊技機1」も,その「上半身撮影モード」において「被写体の上半身又は顔を撮影する」ものであり,更に,「プレイヤ」に「撮影により得られた写真画像の編集を行」わせるものである。そうしてみると,相違点2に係る本願発明の構成は,上記周知技術による転換にすぎず,新たな効果を奏するものではないから,課題解決のための具体化手段における微差である。
したがって,相違点2は実質的な相違点ではない。

3 請求人の主張について
審判請求書中で請求人は,「先願1の構成においては,上半身撮影モードでは,元画像をトリミングにより正方形に限りなく近い矩形にすることが好ましいことになり,元画像をトリミングにより縦長長方形状にすることは予定されておらず,むしろ,好ましいことではないと認められる。」と主張する。しかし,上記2に記した判断により,当該主張は採用できない。
また,審判請求書中では,「焦点距離がズームアウトするように調整されたときだけでなく,ズームインするように調整されたときにも,カメラ部が前傾するように,レンズの光軸と水平面とのなす角度である前傾角度が調整されることも,先願1には開示も示唆もされていないと思料される。」とも主張される。しかし,上記1に記した判断により,当該主張も採用できない。

第6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-15 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-04 
出願番号 特願2015-228637(P2015-228637)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 佐藤 秀樹
清水 康司
発明の名称 写真シール作成装置  
代理人 三浦 勇介  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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