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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1334719
審判番号 不服2016-13954  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2014- 6400「ヒートシンク、及び、空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 90209〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日に出願した特願2012-79077号の一部を平成26年1月17日に新たな出願としたものであって、平成28年3月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月18日付けで手続補正がなされたが、同年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月16日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、当審の平成29年6月5日付け拒絶理由通知に対し、請求人からは何らの応答もなされなかったものである。

2.本願特許請求の範囲について
本願の特許請求の範囲は、平成28年9月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱交換器、ファンモータおよび前記ファンモータの軸に取り付けられたプロペラを備える送風機、圧縮機、電装箱が筐体の内部に収容され、前記電装箱に配置された基板の熱を放熱するヒートシンクを備える空気調和装置において、
前記ヒートシンクが、基材と、前記基材に連結された複数の独立したフィンとを備え、複数のフィンのうち隣接したフィン同士が複数の中間部で熱的に連結されて、当該フィンで囲まれた複数の通風路を格子状に備えて構成され、
前記ヒートシンクの基材が前記電装箱に配置された基板に熱的に接続され、
前記ヒートシンクが前記送風機の回転する領域の後方に位置し、前記格子状の通風路が前記ファンモータの軸方向に沿って延び、
前記送風機によって前記熱交換器を通って吸い込まれる空気が前記通風路に流れるように、前記送風機のプロペラと前記格子状の通風路とが、前記格子状の通風路が延びる方向において対向する位置に配置されていることを特徴とする空気調和装置。」

3.当審の拒絶の理由
当審において平成29年6月5日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

3-1.理由1(特許法第29条第2項)
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2011-127807号公報
2.欧州特許出願公開第2224199号明細書
3.米国特許第7147041号明細書

3-2.理由2(特許法第36条第6項第2号違反)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1において、「・・前記送風機の回転する領域・・」なる記載は意味不明確である。
(「・・前記送風機のプロペラが回転する領域・・」と正確に記載されたい。)

4.当審の判断
4-1.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用された特開2011-127807号公報(以下、「引用例」という。)には、「空気調和装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
側面に開口を有する筐体と、
前記筐体の内部に設置された圧縮機と、
インバータ回路を有して前記圧縮機を制御する制御装置と、
前記圧縮機の運転容量が所定値以下の部分負荷運転時に冷媒が流れる第1の熱交換器と、
前記部分負荷運転時に冷媒が流れない第2の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の上方に設けられて前記部分負荷運転時に前記第1の熱交換器に送風する第1の送風機と、
前記第2の熱交換器の上方に設けられて前記部分負荷運転時に停止する第2の送風機と、
前記第1の送風機の翼の端部の下方であって、前記筐体の上部に設けられた前記制御装置を冷却するヒートシンクと、
を備えたことを特徴とする室外機。」

イ.「【0001】
本発明は、制御装置を冷却するヒートシンクを有する室外機を備えた空気調和装置及び空気調和装置の運転方法に関する。」

ウ.「【0016】
実施の形態1.
図1乃至図3に基づいて本発明にかかる室外機10の構成について説明する。図1は本実施の形態1における室外機10の正面図、図2は室外機の上面図、図3は室外機10の側面図である。尚、図1は前面パネルを取外して室外機10の内部が前方から見える状態の正面図であり、図2は天板を取外して室外機10の内部が上から見える状態の上面図である。図中の矢印は風向きを表している。室外機10は略直方体形状をしており、底部に略長方形の底板12aであって、底板12aの上に熱源側熱交換器1a、1bや圧縮機2等が載っている。底板12aの四隅には4本の柱11aと、室外機10の前面中央部に柱11bが設けられており、4本の柱11aと柱11bの上に設置される天板12bを支持している。天板12bにはファンガード7a、7bが設けられおり、そのファンガード7a、7bの内側にファン6a、6bが配置されている。ファンガード7a、7bは上下に開口を有し通風可能であり、ファン6a、6bは順回転時には下から上に風を送風し、逆回転時には上から下に風を送風する。室外機10の側面は前面、左側面、右側面、背面とから構成されており、前面には前面パネル13が設けられている。左側面14a、右側面14b、背面15にはパネルが設けられておらず通風可能である。ファン6a、6bが順回転すると左側面14a、右側面14b、背面15から風を吸い込む。吸い込まれた風は熱源側熱交換器1a、1bを通過してファン6a、6bの上方へ送風する。尚、本実施の形態1では前面以外の側面にはパネルを設けていないが、フェンスやスリットなどの開口を有して通風可能なパネル等を設けてもよい。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0018】
略直方体の制御箱4が熱源側熱交換器1aの前方であって前面パネル13の内壁面と近接する位置に前面右側の柱11aと前面中央部の柱11bに挟持または前面右側の柱11aと前面中央部の柱11bで挟持された板の上に設置されている。制御箱4の内部には圧縮機2やファン6a、6bに可変周波数の交流電力を供給して駆動するインバータ回路を含む制御基板が設けられている。制御箱4の熱源側熱交換器1aと対面する面にはインバータ回路で発生する熱を放熱するヒートシンク5が貼り付けて設けられており、ヒートシンク5の上方をファン6aの回転する翼の端部が通過する。ファン6aの翼が最も制御箱4に近接したときにファン6aの翼の端部の下方近傍にヒートシンク5が位置している。
【0019】
図4には図3の制御箱4のAA線断面図を図示している。制御箱4は略直方体でヒートシンクの設置穴や配線の取り出し口が開いた筐体4aの内部の空間に制御基板4bとその一部にインバータ回路4cとが設置されている。インバータ回路4cはヒートシンク5のベース5aと接しており、インバータ回路4cの熱がベース5aに伝わる。ベース5aには複数枚の放熱フィン5bが平行に一体に成形されており、ベース5aに伝わった熱が放熱フィン5bで放熱される。尚、筐体4aは前面パネル13と対向する前面4dが開閉可能に構成されており、前面パネル13を取外して前面4dを開くと制御基板4bのメンテナンスを行うことができる。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0021】
図5にはファンの位置と風速の関係を図示している。図中の矢印の長さが風速を表しており、矢印が長いほど風速が大きい。図に示すとおり、ファンの翼の端ほど風速が大きい。また、ファンに近いほど風速が大きい。つまり、翼端の真下が最も風速が大きいので、ヒートシンク5を配置する位置は図3に図示するように底板12aから天板12bの間であって天板12bから1/2以内の高さであって、またファン6aの回転軸から翼の先端の間で翼の端から1/3以内の範囲であってファン6aの翼の直下にあることが望ましい。以上のような位置にヒートシンク5を配置することによりファン6aから送風される風を有効に利用してヒートシンク5を冷却することができる。」

・上記引用例に記載の「空気調和装置」は、上記「イ.」の記載事項によれば、制御装置を冷却するヒートシンクを有する室外機を備えた空気調和装置に関する。
・上記「ア.」の記載事項、及び図1?4によれば、室外機10は、筐体と、筐体の内部に設置された圧縮機2と、インバータ回路4cを有する制御箱4と、熱源側熱交換器1aと、熱源側熱交換器1aに送風するファン6aと、ファン6aの翼の端部の下方であって、筐体の上部に設けられた制御箱が有するインバータ回路4cで発生する熱を冷却するヒートシンク5と、を備えてなるものである。
・上記「ウ.」の段落【0016】、【0018】の記載事項、及び図1?3によれば、室外機10は、ファンガード7aが設けられた天板12bと、底板12aと、少なくとも前面には前面パネル13が設けられてなる4つの側面とから構成され、ファンガード7aも含めたこれらの内側には熱源側熱交換器1a、圧縮機2、ファン6a、制御箱4が設置されてなるものである。そして、ファン6aが順回転すると前面を除く側面から風が吸い込まれ、吸い込まれた風は熱源側熱交換器1aを通過してファン6aの上方へ送風される。
・上記「ウ.」の段落【0018】?【0019】の記載事項、及び図4によれば、制御箱4の内部にはインバータ回路4cを含む制御基板4bが設けられている。また、ヒートシンク5は、ベース5aと、ベース5aに対して一体に平行に(櫛歯状に)成形された複数枚の放熱フィン5bとから構成され、ヒートシンク5のベース5aがインバータ回路4cと熱的に接してなるものである。
・上記「ウ.」の段落【0018】、【0021】の記載事項、及び図1?4によれば、ヒートシンク5は、底板12aから天板12bの間であって天板12bから1/2以内の高さであって、ファン6aの回転軸から翼の先端の間で翼の端から1/3以内の範囲であってファン6aの翼の直下に配置される。

したがって、空気調和装置が備える「室外機」に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ファンガードが設けられた天板と、底板と、少なくとも前面には前面パネルが設けられてなる4つの側面とから構成され、前記ファンガードも含めたこれらの内部に熱源側熱交換器、熱源側熱交換器に送風する翼を有するファン、圧縮機、インバータ回路を含む制御基板が設けられた制御箱が設置されてなる筐体と、前記インバータ回路で発生する熱を冷却するヒートシンクと、を備える空気調和装置の室外機であって、
前記ファンが順回転すると前面を除く前記側面から風が吸い込まれ、吸い込まれた風は前記熱源側熱交換器を通過して前記ファンの上方へ送風され、
前記ヒートシンクは、ベースと、当該ベースに対して一体に平行に(櫛歯状に)成形された複数枚の放熱フィンとから構成され、
前記制御箱の内部には前記インバータ回路を含む前記制御基板が設けられ、前記ヒートシンクの前記ベースが前記インバータ回路と熱的に接してなり、
前記ヒートシンクは、前記底板から前記天板の間であって前記天板から1/2以内の高さであり、前記ファンの回転軸から翼の先端の間で翼の端から1/3以内の範囲であって前記ファンの翼の直下に配置される、空気調和装置の室外機。」

(2)対比
そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
(なお、本願請求項1の8行目の「・・前記送風機の回転する領域・・」なる記載は、正確には「・・前記送風機のプロペラが回転する領域・・」であると解釈する。)
ア.引用発明における「ファンガードが設けられた天板と、底板と、少なくとも前面には前面パネルが設けられてなる4つの側面とから構成され、前記ファンガードも含めたこれらの内部に熱源側熱交換器、熱源側熱交換器に送風する翼を有するファン、圧縮機、インバータ回路を含む制御基板が設けられた制御箱が設置されてなる筐体と、前記インバータ回路で発生する熱を冷却するヒートシンクと、を備える空気調和装置の室外機であって」によれば、
(a)引用発明における「熱源側熱交換器」、「ファン」、ファンの「翼」、「圧縮機」、「制御箱」、「制御基板」、「筐体」、「ヒートシンク」が、それぞれ本願発明でいう「熱交換器」、「送風機」、「プロペラ」、「圧縮機」、「電装箱」、「基板」、「筐体」、「ヒートシンク」に相当する。
(b)引用発明にあっても、「ヒートシンク」は、インバータ回路で発生する熱を冷却するためのものであり、当該インバータ回路を含む制御基板の熱を放熱するためのものであるとみることができる。
(c)また、引用発明の「ファン」にあっても、翼が取り付けられる軸を有するファンモータを備えることは技術常識といえることである。
(d)そして、引用発明における、空気調和装置の「室外機」が、本願発明でいう「空気調和装置」に相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「熱交換器、ファンモータおよび前記ファンモータの軸に取り付けられたプロペラを備える送風機、圧縮機、電装箱が筐体の内部に収容され、前記電装箱に配置された基板の熱を放熱するヒートシンクを備える空気調和装置」である点で一致する。

イ.引用発明における「前記ヒートシンクは、ベースと、当該ベースに対して一体に平行に(櫛歯状に)成形された複数枚の放熱フィンとから構成され」によれば、
引用発明のヒートシンクにおける「ベース」、ベースに対して一体に平行に(櫛歯状に)成形された複数枚の「放熱フィン」が、それぞれ本願発明でいう「基材」、複数の独立した「フィン」に相当し、
引用発明のヒートシンクにおける、複数枚の「放熱フィン」は、その表面と接触する空気(の流れ)に対して放熱するものであることは自明であり、隣接する2つの放熱フィン間は、本願発明でいう「通風路」に対応するとみることができる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ヒートシンクが、基材と、前記基材に連結された複数の独立したフィンとを備え、複数の通風路を備えて構成され」ている点で共通するといえる。
ただし、本願発明では、「複数のフィンのうち隣接したフィン同士が複数の中間部で熱的に連結され」、複数の通風路が「当該フィンで囲まれ」、「格子状に」構成されてなる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。

ウ.引用発明における「前記制御箱の内部には前記インバータ回路を含む前記制御基板が設けられ、前記ヒートシンクの前記ベースが前記インバータ回路と熱的に接してなり」によれば、
引用発明においても、ヒートシンクのベースがインバータ回路に熱的に接しているということは、当該インバータ回路を含む制御基板とも熱的に接しているといえるから、
本願発明と引用発明とは、「前記ヒートシンクの基材が前記電装箱に配置された基板に熱的に接続され」ている点で一致する。

エ.引用発明における「前記ファンが順回転すると前面を除く前記側面から風が吸い込まれ、吸い込まれた風は前記熱源側熱交換器を通過して前記ファンの上方へ送風され、・・・・前記ヒートシンクは、前記底板から前記天板の間であって前記天板から1/2以内の高さであり、前記ファンの回転軸から翼の先端の間で翼の端から1/3以内の範囲であって前記ファンの翼の直下に配置される・・」によれば、
引用発明においても、ヒートシンクが、ファンの翼が回転する領域の後方(風が流れる方向に対して後方)に位置し、隣接する2つの放熱フィン間に形成される複数の通風路がファンの回転軸方向に沿って延び、ファンによって熱源側熱交換器を通って吸い込まれる空気が通風路に流れるように、ファンの翼と通風路とが、当該通風路が延びる方向において対向する位置に配置されているということができる(引用例の図1?4も参照)。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ヒートシンクが前記送風機の(プロペラが)回転する領域の後方に位置し、前記通風路が前記ファンモータの軸方向に沿って延び、前記送風機によって前記熱交換器を通って吸い込まれる空気が前記通風路に流れるように、前記送風機のプロペラと前記格子状の通風路とが、前記通風路が延びる方向において対向する位置に配置されている」点で共通するといえる。

よって、本願発明と引用発明とは、
「熱交換器、ファンモータおよび前記ファンモータの軸に取り付けられたプロペラを備える送風機、圧縮機、電装箱が筐体の内部に収容され、前記電装箱に配置された基板の熱を放熱するヒートシンクを備える空気調和装置において、
前記ヒートシンクが、基材と、前記基材に連結された複数の独立したフィンとを備え、複数の通風路を備えて構成され、
前記ヒートシンクの基材が前記電装箱に配置された基板に熱的に接続され、
前記ヒートシンクが前記送風機の(プロペラが)回転する領域の後方に位置し、前記通風路が前記ファンモータの軸方向に沿って延び、
前記送風機によって前記熱交換器を通って吸い込まれる空気が前記通風路に流れるように、前記送風機のプロペラと前記格子状の通風路とが、前記通風路が延びる方向において対向する位置に配置されていることを特徴とする空気調和装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
ヒートシンクについて、本願発明では、「複数のフィンのうち隣接したフィン同士が複数の中間部で熱的に連結され」、複数の通風路が「当該フィンで囲まれ」、「格子状に」構成されてなる旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
例えば当審の拒絶の理由に引用された欧州特許出願公開第2224199号明細書(特に段落[0021]?[0022]、[0025]?[0026]、Fig.1?3を参照)や、同じく当審の拒絶の理由に引用された米国特許第7147041号明細書(特に、「ABSTRACT」の欄、3欄56行?4欄7行、8欄20?33行、Fig.1?2を参照)に見られるように、ヒートシンクを、基材に連結された複数のフィンの隣接したフィン同士を複数の中間部で熱的に連結し、フィンで囲まれた複数の通風路が格子状となるように構成することは周知といえる技術事項であり、引用発明におけるヒートシンクについても、かかる技術事項を採用して相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)予備的見解
上記(2)及び(3)での検討では、引用発明における「ファンガード」も本願発明でいう「筐体」の一部を構成し、引用発明における「ファン」も本願発明でいう「筐体」の内部に収容されているものとして認定したが、引用発明における「ファンガード」は本願発明でいう「筐体」の一部を構成するものではなく、引用発明における「ファン」は本願発明でいう「筐体」の内部に収容されていないと解釈した場合についても検討しておく。
この場合、さらに以下の相違点がある。
[相違点2]
プロペラを備えた送風機の配置について、本願発明では、筐体の「内部に収容」されている旨特定するのに対し、引用発明では、天板の上部に設置され、筐体の内部に収容されていない点。

そこで上記相違点2について検討すると、
例えば特開2010-196926号公報(特に段落【0036】、図1を参照)、特開2009-270732号公報(特に段落【0034】、図2?4を参照)に見られるように、室外機の筐体(ケーシング)の内部にファンを収容した配置とすることは周知の技術事項であり、引用発明においても、かかる周知の技術事項を採用し、ファンを筐体の内部に収容した配置とすることは当業者が適宜なし得ることである。

4-2.理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
上記「3-2.」の(1)のとおりの記載不備に関する指摘に対して、請求人は特許請求の範囲について何ら補正することなく、また、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが提出されず、何ら反論もなされていない。
よって依然として、上記(1)の指摘事項に関する記載不備は解消しておらず、請求項1に係る発明は明確なものでない。

したがって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

5.その他
なお、請求人は平成29年2月14日付け上申書において補正案を提示しているが、当審の拒絶理由通知でも指摘したとおり、
補正案は要するに、本願発明のヒートシンクにおける「複数の通風路」について、その全ての通風路が送風機のプロペラが回転する領域の後方に位置することを特定しようとしているものと解される。
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、複数の通風路の全てが送風機のプロペラが回転する領域の後方に位置することの記載はなく、図面をみても、図2の斜視図では送風機のプロペラとヒートシンクとの位置関係が不明確である〔むしろ図2では、ヒートシンクの一部が、ファンの径方向(ラジアル方向)において対向しているようにも見えるし、本願請求項1の記載のように、ヒートシンクがファンのプロペラが回転する領域の後方に位置するものとしても、複数の通風路の全てが送風機のプロペラが回転する領域の後方に位置するとまではみて取れない。基材に近い部分における通風路の一部は送風機のプロペラが回転する領域から外側方に外れているとみるのが自然である〕し、ましてや正面図や上面図もないことから、かかる補正案は新規事項の追加に該当するといえ、認められないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-12 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-02 
出願番号 特願2014-6400(P2014-6400)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 安藤 一道
井上 信一
発明の名称 ヒートシンク、及び、空気調和装置  
代理人 特許業務法人クシブチ国際特許事務所  

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