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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1334728
審判番号 不服2017-2801  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-27 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2012-191486号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開、特開2014- 45951号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年8月31日に出願したものであって,平成27年7月24日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年10月5日に意見書及び手続補正書が提出され,平成28年3月10日付けで拒絶理由(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)が通知され,これに対し同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月17日付けで同年5月20日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ,それに対して,平成29年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ,同年5月31日付けで前置報告がなされ,同年7月4日付けで上申書が提出されたものである。

第2 平成29年2月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1に対する補正を含むものであり,平成27年10月5日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は本件補正の補正箇所を示す。)。

(補正前:平成27年10月5日付けの手続補正)
「【請求項1】
識別情報を変動表示可能な変動表示手段を有し,該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機であって,
未だ開始されていない変動表示を保留記憶として記憶可能な保留記憶手段と,
前記表示結果を前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第1変動パターン選択手段と,
前記決定手段によって前記表示結果を前記特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第2変動パターン選択手段と,
前記決定手段の決定,および,前記第1または前記第2変動パターン選択手段の選択に従い,前記変動表示手段で変動表示を実行する変動表示実行手段とを備え,
前記第1変動パターン選択手段は,前記識別情報の変動表示を開始するときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶の数である保留数が所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,通常リーチパターンを選択し,
前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数が前記所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,前記通常リーチパターンを選択し,
前記第1変動パターン選択手段および前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数にかかわらず,前記通常リーチパターンを選択可能である,遊技機。」

(補正後:本件補正である:平成29年2月27日付け手続補正)
「【請求項1】
第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の識別情報を変動表示可能な変動表示手段を有し,該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く,前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能な遊技機であって,
前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能な保留記憶手段と,
前記表示結果を前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する決定手段と,
前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第1変動パターン選択手段と,
前記決定手段によって前記表示結果を前記特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第2変動パターン選択手段と,
前記決定手段の決定,および,前記第1変動パターン選択手段または前記第2変動パターン選択手段の選択に従い,前記変動表示手段で変動表示を実行する変動表示実行手段とを備え,
前記第1変動パターン選択手段は,前記識別情報の変動表示を開始するときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報の数である保留数が所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,通常リーチに対応する特定変動パターンを選択し,前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高く,
前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数が前記所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,前記特定変動パターンを選択し,
前記第1変動パターン選択手段および前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数にかかわらず,前記特定変動パターンを選択可能である,遊技機。」

2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1について,以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「識別情報」に関して,「第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の」識別情報である旨の記載を追加する補正。

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機」に関して,「該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であ」る旨の記載を追加するとともに,「前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く,前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能」である旨の記載を追加する補正。

ウ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「未だ開始されていない変動表示を保留記憶として記憶可能な保留記憶手段」に関して,「前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能な保留記憶手段」とする旨の記載を追加する補正。

エ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「第1変動パターン選択手段」に関して,「前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高く,」という記載を追加する補正。

(2)補正の目的等についての検討
ア 補正事項アは,「識別情報」について「第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の」識別情報と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イは,「遊技機」について「前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く,前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 補正事項ウは,「保留記憶手段」が記憶するものについて「前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報」である「保留記憶情報」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

エ 補正事項エは,「第1変動パターン選択手段」に関し「前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高」いことを限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は,本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)の段落【0030】,【0032】,【0035】?【0036】,【0046】?【0047】,【0066】,【0072】?【0074】,【0099】,【0101】,【0161】,【図2】,【図5】?【図8】の記載に基づくものであるから,新規事項を追加するものではない。

なお,その他の補正事項は,実質的に請求項1に係る発明の内容を変更するものではない。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明
本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)は,上記「1 本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載した以下のとおりのものである(A?Mは,本願補正発明を分説するために当審で付した。)。

「A 第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の識別情報を変動表示可能な変動表示手段を有し,該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,
B 前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く,
C 前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能な遊技機であって,
D 前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能な保留記憶手段と,
E 前記表示結果を前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する決定手段と,
F 前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第1変動パターン選択手段と,
G 前記決定手段によって前記表示結果を前記特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第2変動パターン選択手段と,
H 前記決定手段の決定,および,前記第1変動パターン選択手段または前記第2変動パターン選択手段の選択に従い,前記変動表示手段で変動表示を実行する変動表示実行手段とを備え,
I 前記第1変動パターン選択手段は,前記識別情報の変動表示を開始するときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報の数である保留数が所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,通常リーチに対応する特定変動パターンを選択し,
J 前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高く,
K 前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数が前記所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,前記特定変動パターンを選択し,
L 前記第1変動パターン選択手段および前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数にかかわらず,前記特定変動パターンを選択可能である,
M 遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の平成28年3月10日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-62365号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0016】
以下,本発明の実施の形態を,図面を参照して説明する。まず,遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。
・・・
【0020】
遊技盤6における下部の左側には,識別情報としての第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aが設けられている。この実施の形態では,第1特別図柄表示器8aは,0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち,第1特別図柄表示器8aは,0?9の数字(または,記号)を可変表示するように構成されている。遊技盤6における下部の右側には,識別情報としての第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bが設けられている。第2特別図柄表示器8bは,0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち,第2特別図柄表示器8bは,0?9の数字(または,記号)を可変表示するように構成されている。」

(イ)「【0028】
また,第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には,遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14を有する可変入賞球装置15が設けられている。第2始動入賞口(第2始動口)14に入賞した遊技球は,遊技盤6の背面に導かれ,第2始動口スイッチ14aによって検出される。可変入賞球装置15は,ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15が開状態になることによって,遊技球が第2始動入賞口14に入賞可能になり(始動入賞し易くなり),遊技者にとって有利な状態になる。可変入賞球装置15が開状態になっている状態では,第1始動入賞口13よりも,第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。また,可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では,遊技球は第2始動入賞口14に入賞しない。従って,可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では,第2始動入賞口14よりも,第1始動入賞口13に遊技球が入賞しやすい。なお,可変入賞球装置15が閉状態になっている状態において,入賞はしづらいものの,入賞することは可能である(すなわち,遊技球が入賞しにくい)ように構成されていてもよい。」

(ウ)「【0040】
また,図1に示すように,可変入賞球装置15の下方には,特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は開閉板を備え,第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと,第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって,入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。大入賞口に入賞した遊技球はカウントスイッチ23で検出される。」

(エ)「【0048】
この実施の形態では,確変大当りであることや確変昇格演出(確変状態に昇格することを示す特別な演出)において確変に昇格したことを報知した場合には,遊技状態を高確率状態に移行するとともに,遊技球が始動入賞しやすくなる(すなわち,特別図柄表示器8a,8bや演出表示装置9における可変表示の実行条件が成立しやすくなる)ように制御された遊技状態である高ベース状態に移行する。また,遊技状態が時短状態に移行されたときも,高ベース状態に移行する。高ベース状態である場合には,例えば,高ベース状態でない場合と比較して,可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められたり,可変入賞球装置15が開状態となる時間が延長されたりして,始動入賞しやすくなる。」

(オ)「【0060】
また,遊技制御用マイクロコンピュータ560は,特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8b,普通図柄を可変表示する普通図柄表示器10,第1特別図柄保留記憶表示器18a,第2特別図柄保留記憶表示器18bおよび普通図柄保留記憶表示器41の表示制御を行う。」

(カ)「【0133】
ROMが記憶する決定テーブルには,図13(A)?(G)及び図14(A)?(E)に示す大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mが含まれている。大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mは,可変表示結果を「大当り」とする旨の判定がなされたときに,大当り種別の判定結果に応じて,変動パターン種別を,変動パターン種別判定用の乱数値MR3に基づいて複数種類のいずれかに決定するために参照されるテーブルである。各大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mは,例えば図14(F)に示すようなテーブル選択設定に従い,パチンコ遊技機1における遊技状態が通常状態,確変状態及び時短状態のいずれであるかや,大当り種別の判定結果,合計保留記憶数に応じて,使用テーブルとして選択される。各大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mは,大当り種別の判定結果が「通常」,「第1確変」?「第4確変」,「突確」のいずれであるかに応じて,変動パターン種別判定用の乱数値MR3を,ノーマルCA3-1,スーパーCA3-2?スーパーCA3-8,スーパーCB3-1?スーパーCB3-5,特殊CA4-1?特殊CA4-3,特殊CA5-1,特殊CA5-2,特殊CB4-1,特殊CB4-2,特殊CB5-1,特殊CC4-1?特殊CC4-3,特殊CC5-1,特殊CC5-2の変動パターン種別のいずれかに割り当てる決定用データなどから構成されている。
・・・
【0144】
ROMが記憶する決定テーブルには,図15(A)?(C)に示すリーチ決定テーブル134A?134Cが含まれている。リーチ決定テーブル134A?134Cは,可変表示結果を「ハズレ」とする旨の判定がなされたときに,演出図柄の可変表示状態をリーチ状態とするか否かを,リーチ判定用の乱数値に基づいて判定するために参照されるテーブルである。各リーチ決定テーブル134A?134Cは,例えば図15(D)に示すようなテーブル選択設定に従い,パチンコ遊技機1における遊技状態が通常状態,確変状態及び時短状態のいずれであるかに応じて,使用テーブルとして選択される。各リーチ決定テーブル134A?134Cは,リーチ判定用の乱数値を,非リーチHA1-1?非リーチHA1-5,非リーチHB1-1,非リーチHB1-2,非リーチHC1-1,非リーチHC1-2といったリーチ状態としない旨の判定結果や,リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1といったリーチ状態とする旨の判定結果のいずれかに割り当てる決定用データなどから構成されている。
・・・
【0146】
ROMが記憶する決定テーブルには,図16(A)?(C)に示すリーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cが含まれている。リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cは,演出図柄の可変表示状態をリーチ状態とする旨の判定がなされたときに,変動パターン種別を,変動パターン種別判定用の乱数値MR3に基づいて複数種類のいずれかに決定するために参照されるテーブルである。各リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cは,リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1といったリーチ状態とする旨の判定結果に応じて,使用テーブルとして選択される。すなわち,リーチHA2-1?リーチHA2-3の判定結果に応じてリーチ用変動パターン種別決定テーブル135Aが使用テーブルとして選択され,リーチHB2-1の判定結果に応じてリーチ用変動パターン種別決定テーブル135Bが使用テーブルとして選択され,リーチHC2-1の判定結果に応じてリーチ用変動パターン種別決定テーブル135Cが使用テーブルとして選択される。各リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cは,リーチ状態とする旨の判定結果がリーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1のいずれであるかに応じて,変動パターン種別判定用の乱数値MR3を,ノーマルCA2-1,スーパーCA2-2,スーパーCA2-3,スーパーCB2-1,スーパーCB2-2の変動パターン種別のいずれかに割り当てる決定用データなどから構成されている。」

(キ)「【0176】
遊技制御用マイクロコンピュータ560が備えるRAM102には,パチンコ遊技機1における遊技の進行などを制御するために用いられる各種のデータを保持する領域として,例えば図23に示すような遊技制御用データ保持エリア150が設けられている。図23に示す遊技制御用データ保持エリア150は,第1特図保留記憶部151Aと,第2特図保留記憶部151Bと,始動データ記憶部151Cと,遊技制御フラグ設定部152と,遊技制御タイマ設定部153と,遊技制御カウンタ設定部154と,遊技制御バッファ設定部155とを備えている。
【0177】
第1特図保留記憶部151Aは,普通入賞球装置14が形成する第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲーム(第1特別図柄表示装置8aによる第1特図を用いた特図ゲーム)の保留データを記憶する。一例として,第1特図保留記憶部151Aは,第1始動入賞口への入賞順に保留番号と関連付けて,その入賞による第1始動条件の成立に基づいてCPU103により乱数回路104等から抽出された大当り判定用乱数値を示す数値データや大当り種別判定用の乱数値を示す数値データを保留データとし,その数が所定の上限値(例えば「4」)に達するまで記憶する。
【0178】
第2特図保留記憶部151Bは,普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲーム(第2特別図柄表示器8bによる第2特図を用いた特図ゲーム)の保留データを記憶する。一例として,第2特図保留記憶部151Bは,第2始動入賞口への入賞順に保留番号と関連付けて,その入賞による第2始動条件の成立に基づいてCPU103により乱数回路104等から抽出された大当り判定用乱数値を示す数値データや大当り種別判定用の乱数値を示す数値データを保留データとし,その数が所定の上限値(例えば「4」)に達するまで記憶する。」

(ク)「【0187】
第1保留記憶数カウンタは,第1特図保留記憶部151Aにおける保留データの数である第1保留記憶数をカウントするためのものである。例えば,第1保留記憶数カウンタには,第1保留記憶数に対応したカウント値データが,第1保留記憶数カウント値として記憶され,第1保留記憶数の増減に対応して更新(例えば1加算あるいは1減算)される。第2保留記憶数カウンタは,第2特図保留記憶部151Bにおける保留データの数である第2保留記憶数をカウントするためのものである。例えば,第2保留記憶数カウンタには,第2保留記憶数に対応したカウント値データが,第2保留記憶数カウント値として記憶され,第2保留記憶数の増減に対応して更新(例えば1加算あるいは1減算)される。合計保留記憶数カウンタは,第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数をカウントするためのものである。例えば,合計保留記憶数カウンタには,合計保留記憶数に対応したカウント値データが,合計保留記憶数カウント値として記憶され,合計保留記憶数の増減に対応して更新(例えば1加算あるいは1減算)される。」

(ケ)「【0209】
図25は,主基板31に搭載される遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には,CPU56)が実行する特別図柄プロセス処理(ステップS26)のプログラムの一例を示すフローチャートである。上述したように,特別図柄プロセス処理では第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bおよび大入賞口を制御するための処理が実行される。特別図柄プロセス処理において,CPU56は,第1始動入賞口13に遊技球が入賞したことを検出するための第1始動口スイッチ13aまたは第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出するための第2始動口スイッチ14aがオンしていたら,すなわち始動入賞が発生していたら,始動口スイッチ通過処理を実行する(ステップS311,S312)。そして,ステップS300?S307のうちのいずれかの処理を行う。第1始動入賞口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aがオンしていなければ,内部状態に応じて,ステップS300?S307のうちのいずれかの処理を行う。
【0210】
ステップS300?S307の処理は,以下のような処理である。
【0211】
特別図柄通常処理(ステップS300):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は,特別図柄の可変表示が開始できる状態になると,保留記憶数バッファに記憶される数値データの記憶数(合計保留記憶数)を確認する。保留記憶数バッファに記憶される数値データの記憶数は合計保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また,合計保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ,第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。そして,内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS301に応じた値(この例では1)に更新する。なお,大当りフラグは,大当り遊技が終了するときにリセットされる。
【0212】
変動パターン設定処理(ステップS301):特別図柄プロセスフラグの値が1であるときに実行される。また,変動パターンを決定し,その変動パターンにおける変動時間(可変表示時間:可変表示を開始してから表示結果を導出表示(停止表示)するまでの時間)を特別図柄の可変表示の変動時間とすることに決定する。また,特別図柄の変動時間を計測する変動時間タイマをスタートさせる。そして,内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS302に対応した値(この例では2)に更新する。」

(コ)「【0247】
図30は,特別図柄プロセス処理における変動パターン設定処理(ステップS301)を示すフローチャートである。変動パターン設定処理において,CPU56は,大当りフラグがセットされているか否か確認する(ステップS91)。
【0248】
大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして,図14(F)に示すテーブル選択規則に従って,遊技状態にもとづいて大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択する(ステップS92)。そして,ステップS101に移行する。なお,CPU56は,遊技状態を,確変フラグおよび時短フラグの状態によって判定できる。
【0249】
大当りフラグがセットされていない場合には,パチンコ遊技機1における遊技状態が通常状態,確変状態および時短状態のいずれであるかにもとづいて,図15(D)に示すテーブル選択規則に従って,演出図柄の可変表示状態をリーチ状態とするか否かを判定するために使用するテーブルとして,リーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかを選択する(ステップS95)。また,ランダム2-2を生成するためのカウンタのカウント値を抽出することによってランダム2-2を抽出する(ステップS96)。そして,CPU56は,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,ランダム2-2の値と一致する値に対応したリーチ状態の有無を示すデータによって,リーチするか否かと,リーチしない場合の演出の種別またはリーチする場合のリーチの種別を決定する(ステップS97)。なお,ステップS97の処理で用いられる保留記憶数として,ステップS56の処理で-1される前の値を用いてもよい。
【0250】
リーチすることに決定した場合には,ステップS97の処理で決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択する(ステップS99)。リーチしないことに決定した場合には,ステップS97の処理で決定された演出の種別(非リーチHA1-1?非リーチHA1-5,非リーチHB1-1,非リーチHB1-2,非リーチHC1-1または非リーチHC1-2)に応じて,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして,非リーチ用変動パターン種別決定テーブル136A?136Cのいずれかを選択する(ステップS100)。そして,ステップS101に移行する。
【0251】
ステップS101では,CPU56は,ランダム3を生成するためのカウンタのカウント値を抽出することによってランダム3の値を抽出する。そして,抽出したランダム3の値にもとづいて,ステップS92,S94,S99またはS100の処理で選択したテーブルを参照することによって,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定する(ステップS102)。」

(サ)「【0663】
また,図13(A)?(G),図14(A)?(E)に示す大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132K,図15(A)?(C)に示すリーチ決定テーブル134A?134Cや,図16に示すリーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cの設定では,遊技状態が通常状態,確変状態,時短状態のいずれであるかによって,また,合計保留記憶数に応じて,ノーマルリーチに決定される割合が異なっている。このような構成によれば,いずれの所定条件(確変状態,時短状態,合計保留記憶数が所定数以上)が成立しているかに応じて,ノーマルリーチが実行されたときの大当りとなる割合が異なるので,遊技者がリーチ演出に注目するようになり,遊技の興趣が向上する。なお,この実施の形態では,可変表示結果が「ハズレ」である場合に,合計保留記憶数が所定数以上であるか否かによってノーマルリーチに決定される割合を異ならせることによって,ノーマルリーチが実行されたときの大当りとなる割合を異ならせるようにしていたが,可変表示結果が第4確変,突確以外の「大当り」である場合においても,合計保留記憶数が所定数以上であるか否かによってノーマルリーチに決定される割合を異ならせるようにしてもよい。例えば,可変表示結果が第4確変,突確以外の「大当り」である場合,合計保留記憶数が4以上であれば4未満である場合よりもノーマルリーチに決定されにくくなるようにしてもよい。」

(シ)上記(カ)【0133】の記載を参照すると,【図13】(A),(B),(F),(G)には,通常大当り,第1確変大当り,第3確変大当りのときには,変動パターンとしてノーマルCA3-1を選択可能であることが図示されている。

(ス)上記(カ)【0144】の記載を参照すると,【図15】(A)には「ハズレ」のときに,リーチ決定テーブル134Aを選択するとともに,リーチの種別を決定することが図示されており,リーチ決定テーブル134Aについて
・合計保留記憶数が2,3のときには,リーチとしてHA2-2を,19(=221?239)/239で選択すること
・合計保留記憶数が4のときには,リーチとしてHA2-3を,9(=231?239)/239で選択すること
が図示されている。
また,上記(カ)【0144】の記載を参照すると,【図15】(A)?(C)には,「ハズレ」のときに,合計保留記憶数が0?8のいずれであっても,リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1のいずれかを選択可能であることも図示されている。

(セ)上記(カ)【0146】の記載を参照すると,【図16】(A)には,リーチ用変動パターン種別決定テーブルとして,
・リーチがHA2-2であったときには,ノーマルCA2-1を170/241で選択すること
・リーチがHA2-3であったときには,ノーマルCA2-1を182/241で選択すること
が図示されている。
また,上記(カ)【0146】の記載を参照すると,【図16】(A)?(C)には,リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1のいずれも,ノーマルCA2-1を選択可能であることが図示されている。

上記記載事項(ア)?(サ)及び上記図示内容(シ)?(セ)より,以下の事項が導かれる。
なお,(a)?(m)は本願補正発明の構成A?Mに対応した事項を示している。

(a)上記段落【0020】には「第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aが設けられ」及び「第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bが設けられ」と記載され,上記段落【0040】には「第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと,第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)において・・・入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。」と記載されているから,刊行物1には,
第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aと,第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bとが設けられ,第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと,第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)において,入賞領域となる大入賞口が開放状態になることが記載されているといえる。

(c)上記段落【0048】には「確変大当りであること・・・を報知した場合には,・・・高ベース状態に移行する。」及び「高ベース状態である場合には,・・・可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められたり・・・して,始動入賞しやすくなる。」と記載され,上記段落【0028】には「可変入賞球装置15が開状態になっている状態では,第1始動入賞口13よりも,第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。」と記載され,上記段落【0016】には「パチンコ遊技機1」と記載されているから,刊行物1には,
確変大当りであることを報知した場合には,可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められ,第1始動入賞口13よりも第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい状態である高ベース状態に移行するパチンコ遊技機1が記載されているといえる。

また,上記段落【0177】には「第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲーム(第1特別図柄表示装置8aによる第1特図を用いた特図ゲーム)」と記載され,上記段落【0178】には「第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲーム(第2特別図柄表示器8bによる第2特図を用いた特図ゲーム)」と記載されている。
ここで刊行物1の上記段落【0177】,【0178】の両記載に接した当業者にとって,
・上記「第1特図」及び上記「第2特図」とは,それぞれ「第1特別図柄」及び「第2特別図柄」を意味すること
は明らかであって,更に,
・第1始動入賞口に遊技球が入賞することは,第1特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件であること
・第2始動入賞口に遊技球が入賞することは,第2特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件であること
も明らかである。

してみると,刊行物1には,
確変大当りであることを報知した場合には,可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められ,第1始動入賞口13に入賞し第1特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立するよりも,第2始動入賞口14に遊技球が入賞し第2特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立しやすい高ベース状態に移行するパチンコ遊技機1が記載されているといえる。

(d)上記段落【0177】には「第1特図保留記憶部151Aは,・・・第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲーム・・・の保留データを記憶する。」と記載され,上記段落【0178】には「第2特図保留記憶部151Bは,・・・第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲーム・・・の保留データを記憶する。」と記載され,上記段落【0187】には「第1特図保留記憶部151Aにおける保留データの数である第1保留記憶数」,「第2特図保留記憶部151Bにおける保留データの数である第2保留記憶数」及び「合計保留記憶数カウンタは,第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数をカウントするためのものである。」と記載されているから,刊行物1には,
第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第1特図保留記憶部151Aと,第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第2特図保留記憶部151Bと,これら両記憶部における保留データの数である第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数をカウントする合計保留記憶数カウンタとが記載されているといえる。

(e)上記段落【0211】には「遊技制御用マイクロコンピュータ560は,・・・第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。」と記載されているから,刊行物1には,
第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定し,大当りとする場合には大当りフラグをセットする遊技制御用マイクロコンピュータ560が記載されているといえる。

(f)上記段落【0249】には「大当りフラグがセットされていない場合には,・・・CPU56は,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,・・・リーチするか否かと,・・・リーチする場合のリーチの種別を決定する(ステップS97)。」と記載され,上記段落【0250】には「リーチすることに決定した場合には,ステップS97の処理で決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,・・・リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択する(ステップS99)。」と記載され,上記段落【0251】には「ステップS101では,CPU56は,・・・変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定する(ステップS102)。」と記載されているから,刊行物1には,
大当りフラグがセットされていない場合には,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,リーチするか否かと,リーチする場合のリーチの種別を決定し(ステップS97),この決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択し(ステップS99),変動パターン種別を複数種類のうちからいずれかに決定するCPU56が記載されているといえる。

(g)上記段落【0248】には「大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして,・・・大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択する(ステップS92)。そして,ステップS101に移行する。」と記載されている。また,上記のとおり,上記段落【0251】には「ステップS101では,CPU56は,・・・変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定する(ステップS102)。」と記載されているから,刊行物1には,
大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択し(ステップS92),変動パターン種別を複数のうちのいずれかに決定するCPU56が記載されているといえる。

(h)上記段落【0060】には「遊技制御用マイクロコンピュータ560は,特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8b,・・・の表示制御を行う。」と記載されているので,刊行物1には,
特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8bの表示制御を行う遊技制御用マイクロコンピュータ560が記載されているといえる。

(i)刊行物1には,上記(f)のとおり,
大当りフラグがセットされていない場合には,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,リーチするか否かと,リーチする場合のリーチの種別を決定し(ステップS97),この決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択し(ステップS99),変動パターン種別を複数種類のうちからいずれかに決定するCPU56が記載されている。
さて,上記(ス)?(セ)の【図15】,【図16】に図示された事項から,
・合計保留記憶数が2,3のときには,リーチとしてHA2-2を19/239で選択し,リーチとしてHA2-2が選択されたときには,ノーマルCA2-1を170/241で選択することからみて,結果的に,ノーマルCA2-1を,(19×170)/(239×241)=3,230/57,599で選択すること
・合計保留記憶数が4のときには,リーチとしてHA2-3を9/239で選択し,リーチとしてHA2-3が選択されたときには,ノーマルCA2-1を182/241で選択することからみて,結果的にノーマルCA2-1を,(9×182)/(239×249)=1,638/57,599で選択すること
は当業者にとって明らかである。

してみると,刊行物1には,
大当りフラグがセットされていない場合には,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,リーチするか否かと,リーチする場合のリーチの種別を決定し(ステップS97),この決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択し(ステップS99),変動パターン種別を複数種類のうちからいずれかに決定するCPU56を有し,当該CPU56において,
合計保留記憶数が4のときには,ノーマルCA2-1を1,638/57,599で選択し,
合計保留記憶数が2,3のときには,ノーマルCA2-1を3,230/57,599で選択すること
が記載されているといえる。

(k)刊行物1には,上記(g)のとおり,
大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択し(ステップS92),変動パターン種別を複数のうちのいずれかに決定するCPU56が記載されているといえる。
さて,上記段落【0663】には,「可変表示結果が・・・「大当り」である場合,合計保留記憶数が4以上であれば4未満である場合よりもノーマルリーチに決定されにくくなるようにしてもよい。」と記載されている。
ここで,刊行物1に接した当業者にとって,上記段落【0211】の記載を考慮すると,可変表示結果が「大当り」とする場合には大当りフラグがセットされることは明らかであるから,刊行物1には,
大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択し(ステップS92),変動パターン種別を複数のうちのいずれかに決定するCPU56を有し,当該CPU56において,
合計保留記憶数が4以上であれば,合計保留記憶数が4未満のときよりノーマルリーチに決定されにくくすること
が記載されているといえる。

(l)上記(シ)【図13】には,通常大当り,第1確変大当り及び第3確変大当りのときには,変動パターンとしてノーマルCA3-1を選択可能であることが図示されている。
また,上記(ス)【図15】及び上記(セ)【図16】には「ハズレ」の場合には,合計保留図柄数が0?8のいずれであっても,リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1,リーチHC2-1のいずれかを選択可能であり,これらリーチのいずれも,ノーマルCA2-1を選択可能であることが図示されている。
これら図示された事項を考慮すると,刊行物1に記載されたCPU56は,当りかハズレか(表示結果が特定表示結果か否か)によらず,また合計保留記憶数にもよらず,変動パターンとしてノーマルCA3-1またはノーマルCA2-1を選択する可能性があることが図示されているといえる。

してみると,刊行物1には,
大当たりかハズレかによらず,また合計保留記憶数にもよらず,変動パターンとしてノーマルを選択することが可能であることが記載されているといえる。

(m)上記(c)のとおり,刊行物1には,
パチンコ遊技機1が記載されているといえる。

上記記載事項(ア)?(サ),上記図示内容(シ)?(セ)及び上記の認定事項(a)?(m)から,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「a 第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aと,第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bとが設けられ,第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと,第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)において,入賞領域となる大入賞口が開放状態になり,
c’確変大当りであることを報知した場合には,可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められ,第1始動入賞口13に入賞し第1特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立するよりも,第2始動入賞口14に遊技球が入賞し第2特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立しやすい高ベース状態に移行するパチンコ遊技機1であって,
d 第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第1特図保留記憶部151Aと,第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第2特図保留記憶部151Bと,これら両記憶部における保留データの数である第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数をカウントする合計保留記憶数カウンタを有し,
e 第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定し,大当りとする場合には大当りフラグをセットする遊技制御用マイクロコンピュータ560を有し,
f,i 大当りフラグがセットされていない場合には,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,リーチするか否かと,リーチする場合のリーチの種別を決定し(ステップS97),この決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択し(ステップS99),変動パターン種別を複数種類のうちからいずれかに決定するCPU56を有し,当該CPU56において,
合計保留記憶数が4のときには,ノーマルCA2-1を1,638/57,599で選択し,
合計保留記憶数が2,3のときには,ノーマルCA2-1を3,230/57,599で選択するとともに,
g,k 大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択し(ステップS92),変動パターン種別を複数のうちのいずれかに決定するCPU56を有し,当該CPU56において,
合計保留記憶数が4以上であれば,合計保留記憶数が4未満のときよりノーマルリーチに決定されにくくし,
h 特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8bの表示制御を行う遊技制御用マイクロコンピュータ560を有し,
l 大当りかハズレかによらず,また合計保留記憶数にもよらず,変動パターンとしてノーマルを選択することが可能である
m パチンコ遊技機1」

(3)対比
(a)引用発明1の「第1特別図柄」及び「第2特別図柄」は,それぞれ本願補正発明の「第1識別図柄」及び「第2識別図柄」に相当し,また,引用発明1の「第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a」及び「第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器8b」は,本願補正発明の「第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の識別情報を変動表示可能な変動表示手段」に相当する。
そして,当業者にとって引用発明1の「入賞領域となる大入賞口が開放状態」となることは,遊技者にとって有利な有利状態であることは明らかである。
したがって,引用発明1の「第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aと,第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bとが設けられ,第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと,第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)において,入賞領域となる大入賞口が開放状態にな」ることは,本願補正発明の「第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の識別情報を変動表示可能な変動表示手段を有し,該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であ」ることに相当する。

(c’)引用発明1の「パチンコ遊技機1」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。
そして,引用発明1の「第1特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件」及び「第2特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件」は,それぞれ,本願補正発明の「前記第1識別情報の変動表示の始動条件」及び「前記第2識別情報の変動表示の始動条件」に相当する。
したがって,引用発明1の「確変大当りであることを報知した場合には,可変入賞球装置15が開状態となる頻度が高められ,第1始動入賞口13に入賞し第1特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立するよりも,第2始動入賞口14に遊技球が入賞し第2特別図柄を用いた特図ゲームの始動条件が成立しやすい高ベース状態に移行するパチンコ遊技機1」は,本願補正発明と「前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能な遊技機」である点で共通する。

(d)引用発明1の「第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲームの保留データ」,「第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲームの保留データ」及び「これら両記憶部における保留データの数である第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数」は,いずれも本願補正発明の「始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報」であって「保留記憶情報」に相当するといえる。
したがって,引用発明1の「第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1始動条件は成立したが第1開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第1特図保留記憶部151Aと,第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2始動条件は成立したが第2開始条件は成立していない特図ゲームの保留データを記憶する第2特図保留記憶部151Bと,これら両記憶部における保留データの数である第1保留記憶数と第2保留記憶数とを合計した合計保留記憶数をカウントする合計保留記憶数カウンタ」は,本願補正発明の「前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能な保留記憶手段」に相当する。

(e)引用発明1の「第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果」は,本願補正発明の「前記表示結果」に相当する。また,引用発明1において「大当りとするか否か」を決定することは,本願補正発明において「前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する」ことに相当する。
したがって,引用発明1の「第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定し,大当りとする場合には大当りフラグをセットする遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願補正発明の「前記表示結果を前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する決定手段」に相当する。

(f)引用発明1における「大当りフラグ」は,第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするときにセットされるものである。このことを考えると,引用発明1における「大当りフラグがセットされていない場合」とは,はずれのときであって,本願補正発明の「前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたとき」に相当する。
したがって,引用発明1の「大当りフラグがセットされていない場合には,選択したリーチ決定テーブル134A?134Cのいずれかにおける保留記憶数(保留記憶数カウンタの値)に応じた領域において,リーチするか否かと,リーチする場合のリーチの種別を決定し(ステップS97),この決定されたリーチの種別(リーチHA2-1?リーチHA2-3,リーチHB2-1またはリーチHC2-1)に応じて,リーチ用変動パターン種別決定テーブル135A?135Cのいずれかを選択し(ステップS99),変動パターン種別を複数種類のうちからいずれかに決定するCPU56」は,本願補正発明の「前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第1変動パターン選択手段」に相当する。

(g)引用発明1の「大当りフラグがセットされている場合には,変動パターン種別を複数種類のうちのいずれかに決定するために使用するテーブルとして大当り用変動パターン種別決定テーブル132A?132Mのいずれかを選択し(ステップS92),変動パターン種別を複数のうちのいずれかに決定するCPU56」は,本願補正発明の「前記決定手段によって前記表示結果を前記特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第2変動パターン選択手段」に相当する。

(h)上記(a)に示したように,引用発明1の「第1特別図柄表示器8a」及び「第2特別図柄表示器8b」は,本願補正発明の「変動表示手段」に相当する。
したがって,引用発明1の「特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8bの表示制御を行う遊技制御用マイクロコンピュータ560」は,本願補正発明の「前記決定手段の決定,および,前記第1変動パターン選択手段または前記第2変動パターン選択手段の選択に従い,前記変動表示手段で変動表示を実行する変動表示実行手段」に相当する。

(i)引用発明1の「合計保留記憶数」は,本願補正発明の「前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報の数である保留数」に相当する。
また,刊行物1に接した当業者にとって,ノーマルCA2-1がノーマルリーチ(通常リーチ)の変動パターンを意味することは明らかである。
そして,引用発明1においては,
・合計保留記憶数2,3のときには,ノーマルリーチであるノーマルCA2-1を1,638/57,599で選択
・合計保留記憶数4のときにはノーマルリーチであるCA2-1を3,230/57,599で選択
しており,合計保留記憶数が3以下の場合は,合計保留記憶数が3を越える場合よりも高い割合でノーマルリーチを選択しているということができるので,引用発明1における合計保留記憶数「3」が,本件補正発明の「所定数」に相当するといえる。
したがって,引用発明1の「当該CPU56において,
合計保留記憶数が4のときには,ノーマルCA2-1を1,638/57,599で選択し,
合計保留記憶数が2,3のときには,ノーマルCA2-1を3,230/57,599で選択する」ことは,本願補正発明の「前記第1変動パターン選択手段は,前記識別情報の変動表示を開始するときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報の数である保留数が所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,通常リーチに対応する特定変動パターンを選択」することに相当するといえる。

(k)遊技機の技術分野において,合計保留記憶数とは0以上の整数であることは技術常識である。
この技術常識に基づいて,引用発明1における「合計保留記憶数が4以上であれば,合計保留記憶数が4未満のときよりノーマルリーチに決定されにくく」していることは,合計保留記憶数が3以下の場合は,合計保留記憶数が3を越える場合よりも高い割合でノーマルリーチに決定していると言い換えることができる。そうすると,引用発明1における合計保留記憶数「3」は,本願補正発明の所定数に相当するといえる。
したがって,引用発明1の「当該CPU56において,
合計保留記憶数が4以上であれば,合計保留記憶数が4未満のときよりノーマルリーチに決定されにくく」することは,本願補正発明の「前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数が前記所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,前記特定変動パターンを選択」することに相当する。

(l)引用発明1の「大当りかハズレかによらず,また合計保留記憶数にもよらず,変動パターンとしてノーマルを選択することが可能である」ことは,本願補正発明の「前記第1変動パターン選択手段および前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数にかかわらず,前記特定変動パターンを選択可能である」ことに相当する。

(m)引用発明1の「パチンコ遊技機1」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(m)から,本願補正発明と引用発明とは,
[一致点]
「A 第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方の識別情報を変動表示可能な変動表示手段を有し,該変動表示手段において導出表示された表示結果が予め定められた特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能であり,
C’前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能な遊技機であって,
D 前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能な保留記憶手段と,
E 前記表示結果を前記特定表示結果とするか前記特定表示結果と異なる非特定表示結果とするかを決定する決定手段と,
F 前記決定手段によって前記表示結果を前記非特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第1変動パターン選択手段と,
G 前記決定手段によって前記表示結果を前記特定表示結果とすると決定されたときの前記識別情報の変動パターンを予め定めた複数種類の中から選択する第2変動パターン選択手段と,
H 前記決定手段の決定,および,前記第1変動パターン選択手段または前記第2変動パターン選択手段の選択に従い,前記変動表示手段で変動表示を実行する変動表示実行手段とを備え,
I 前記第1変動パターン選択手段は,前記識別情報の変動表示を開始するときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報の数である保留数が所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,通常リーチに対応する特定変動パターンを選択し,
K 前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数が前記所定数以下の場合は,前記所定数超の場合よりも高い割合で,前記特定変動パターンを選択し,
L 前記第1変動パターン選択手段および前記第2変動パターン選択手段は,前記保留数にかかわらず,前記特定変動パターンを選択可能である,
M 遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1](構成B)
本願補正発明では「前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く」なるのに対し,
引用発明1は,そのような構成であるか不明である点。

[相違点2](構成C)
「前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態」に関して,
本願補正発明では「前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで」制御可能であるのに対し,
引用発明1では,そのような構成であるか否か不明である点。

[相違点3](構成J)
本願補正発明では「前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高く」なるのに対し,
引用発明1ではそのような構成を有していない点。

(4)判断
ア 相違点1について
本願出願時の遊技機の技術分野において,第1特別図柄で当たるよりも第2特別図柄で当たる方が遊技者にとって有利であるように構成することは周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。
この周知技術1は,例えば,
特開2012-50814号公報(特に,段落【0013】に「第1の特別図柄で当たるか第2の特別図柄で当たるかにより,大当り時のラウンド数が異なってくる(第2の特別図柄の方がラウンド数の多い態様が選ばれやすい)。」と記載されている。)や,
特開2012-11022号公報(特に,段落【0161】に「本第3実施例では,第2特別図柄が大当り図柄で停止表示する場合の方が,第1特別図柄が大当り図柄で停止表示する場合に比べ遊技者にとって有利となっている。」と記載されている。)
に記載されている。
してみると,引用発明1に上記周知技術1を適用して,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2,3について
相違点2,3については,関連するのであわせて検討する。
本願出願時の遊技機の技術分野において,大当りの後に特定回数の変動表示が実行されるまで始動条件が成立しやすくするとともに,その特定回数の最後(特定回数目)の変動表示において変動時間を長くすることは周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。
この周知技術2は,例えば,
特開2005-6742号公報(特に,請求項1には,「所定条件が成立してから前記図柄表示手段(35)が所定回数変動するまでの所定期間,前記図柄始動手段(26)の開放時間と開放回数との少なくとも一方を増加させると共に前記図柄表示手段(35)による遊技図柄の変動時間を短縮する特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(58)とを備えた弾球遊技機において,前記所定期間満了前の最後の図柄変動における変動時間を,前記時短遊技状態中の他の図柄変動における変動時間よりも長く設定するように構成した」と記載され(下線は当審で付した。),段落【0083】に「時短遊技期間満了前の最後の図柄変動における変動時間を,時短遊技状態中の他の図柄変動における変動時間よりも長く設定するように構成されているため,時短遊技状態の終了時点で特別保留個数が上限保留個数に達する可能性が高くなり,遊技者は時短による利益を最大限享受できたものとして満足感を持って遊技を継続できる利点がある。」と記載されている。)や,
特開2011-156038号公報(特に,段落【0003】には「長当たりには,大当たり遊技終了後,特典遊技として,大当たりの当選確率が通常遊技(低確率遊技)よりも高い高確率遊技と,特別図柄の始動条件の成立確率を高めた時間短縮遊技(以下,「時短遊技」と称する)の両方を付与した高確率時短付長当たりや,大当たり当選確率は低確率遊技状態のままで,所定回数の時短遊技のみを付与した通常時短付長当たりがある。」と記載され,段落【0012】には「本発明では,特別図柄の変動時間テーブルとして,変動時間に特定演出を実行するための固定時間を含む第1変動時間テーブルと変動時間に固定時間を含まない第2変動時間テーブルとを設け,時短遊技が終了する際の特別図柄の変動時間を第1変動時間テーブルから設定するようにした。」と記載され,【図13】及び【図14】には,第1変動テーブルにおける変動時間は,第2変動テーブルにおける変動時間より固定時間[10秒]の分だけ長いことが図示されている。)
に記載されている。
してみると,引用発明1に上記周知技術2を適用して,上記相違点2,3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明1,上記周知技術1,2から,当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用発明1,上記周知技術1,2から,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は,平成29年7月4日付けの上申書において「審査官殿は,前置報告書において,本願発明と引用文献1,2の発明との相違点は,以下の3点であるとご指摘されました。」,
「・「有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,第2識別情報の変動表示の始動条件が第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能」な点。(相違点(2)とする。)
・「特別状態における特定回数目の変動表示では,特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高い」点。(相違点(3)とする。)」,
「また,相違点(2)及び(3)についても,当該技術分野において,従来周知の技術(例えば,特開2005-006742号公報の請求項1,段落0080,0083に,所定条件が成立してから図柄表示手段(35)が所定回数変動するまでの所定期間,図柄始動手段(26)の開放時間と開放回数との少なくとも一方を増加させると共に,図柄表示手段(35)による遊技図柄の変動時間を短縮する特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(58)とを備え,所定期間満了前の最後の図柄変動における変動時間を,時短遊技状態中の他の図柄変動における変動時間よりも長く設定する点が,記載されている。以下「周知技術(2)」とする。)であるとご指摘されました。
しかし,本願発明は,「特別図柄が2種類の遊技機」に特化した発明であるところ,引用文献1,引用文献2および周知技術(1)を示す文献は,「特別図柄が2種類の遊技機」についての文献であるのに対し,周知技術(2)を示す文献は,「特別図柄が1種類の遊技機」についての文献です。
このため,「特別図柄が1種類の遊技機」と「特別図柄が2種類の遊技機」とでは,「特別図柄が2種類の遊技機」に特化した発明に想到する過程における課題の共通性は無く,引用文献1および引用文献2の技術に,周知技術(2)を組合せる動機付けは生じ得ないと思料致します。」と主張(以下,「主張1」という。)している。

主張1を検討するにあたり,まず,上記周知技術2を開示する文献の1つである特開2005-6742号公報に関し検討する。
特開2005-6742号公報においては,確かに特別図柄が2種類存在する旨の記載はない。ただし,特開2005-6742号公報には,開放時間や開放回数が制御される図柄始動手段(26)を有する遊技機が記載されている(特に,請求項1参照。)。
ここで,特開2005-6742号公報に記載される技術的事項も引用発明1も,共に遊技機の技術分野に属するものであり,上記技術的事項における図柄始動手段(26)と,引用発明1における可入賞球装置15及び第2始動入賞口とは,開放時間等が制御可能な始動手段である点で作用,機能が共通しているといえる。
したがって,引用発明1における第2始動入賞口14に関し,特開2005-6724号に記載される周知技術を適用することについて,技術分野の関連性及び作用,機能の共通性から考えて,動機があるといえる。

次に,上記周知技術2を開示する文献の1つである特開2011-156038号公報に関し検討する。
特開2011-156038号公報には,特別図柄が2種類の遊技機であって,上記周知技術2を適用した遊技機が開示されている(特開2011-156038号公報の段落【0015】,【0016】には,第1始動口13と,第2始動口として機能する電チュー14とを有することが記載されている。)。
ここで,特開2011-156038号公報に記載される技術的事項と,引用発明1とは,共に遊技機の技術分野に属するものであり,特別図柄が2種類存在するという点で作用,機能が共通している。
してみると,引用発明1について,特開2011-156038号公報に記載される周知技術2を適用することについては,技術分野の関連性及び作用,機能の共通性から考えて,動機があるといえる。

よって,引用発明1に上記周知技術2を適用する動機があるといえるので,上記主張1は採用することはできない。

また,請求人は上記上申書において「審判の合議体での審理において,審判請求書での主張や上述した主張が受入れられず,仮に拒絶を維持するとご判断される場合は,出願人は,引用文献等との差異をより一層,明確にするための補正案を準備しております。」と主張(以下,「主張2」)している。
しかしながら,上記上申書には,検討段階の案しか提示されていないことからみても更なる通知をすべき特別な事情を見いだすことはできない。また,本願の審査段階の手続に瑕疵があったわけでもなく,審理の公平性の観点から考えても,上記主張2を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項にて準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明は,平成27年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

1.刊行物1
原査定の平成28年3月10日付け拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明1の認定については,上記「第2[理由]3(2)」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]1」で検討した本願補正発明から,実質的な変更にならない特定事項を除き,
ア 識別情報について「第1識別情報と第2識別情報との少なくともいずれか一方」である旨の限定
イ 遊技機について「前記第2識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示される方が前記第1識別情報の変動表示にて前記特定表示結果が導出表示されるよりも遊技者にとって有利度が高く,前記有利状態の終了後に特定回数の変動表示が実行されるまで,前記第2識別情報の変動表示の始動条件が前記第1識別情報の変動表示の始動条件よりも成立し易い特別状態に制御可能」である旨の限定
ウ 保留記憶手段について「前記第1識別情報と前記第2識別情報とのうち始動条件が成立した識別情報の変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶可能」である旨の限定
エ 第1変動パターン選択手段について「前記特別状態における前記特定回数目の変動表示では,前記特定回数目よりも前の変動表示と比較して,変動時間が長い変動パターンを選択する割合が高」い旨の限定
をそれぞれ省いたものである。

このような本願発明は,上記本願補正発明から,上記「第2[理由]3(3)」で示した本願補正発明と引用発明1の相違点である[相違点1]?[相違点3]に関する構成を省いたものといえる。
してみると,本願発明と引用発明1とは相違点はないので,本願発明は刊行物1に記載された発明といえる。

また,仮に刊行物1に記載された発明ではないとしても,本願発明は,引用発明1から当業者が容易に発明をすることのできるものである。

3 むすび
以上の通り,本願発明は,特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-15 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-03 
出願番号 特願2012-191486(P2012-191486)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人藤澤 和浩  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 瀬津 太朗
後藤 順也
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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