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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1334770
審判番号 不服2017-3615  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-10 
確定日 2017-12-18 
事件の表示 特願2013-555552「マップ作成」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/116160、平成26年 4月10日国内公表、特表2014-509017、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年2月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年2月23日、2011年12月2日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月22日付けで意見書が提出され、平成28年5月12日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月23日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成28年11月7日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年3月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年11月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-6に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引 用 文 献 等 一 覧>
1.特開2002-32773号公報
2.特開2008-224251号公報
3.特開2001-243595号公報
4.特開2004-78546号公報
5.特開2000-99519号公報
6.米国特許出願公開第2005/0114354号明細書


第3 本願発明

本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成28年8月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、及び本願発明14は以下のとおりの発明である。


「【請求項1】
1つ以上のクライアントプラットフォームにプラットフォーム独立GISデータセットを提供するためのシステムであって、前記システムは、1つ以上のプロセッサ(140)を含み、
前記1つ以上のプロセッサ(140)は、
個別のソースフォーマットにおいてエンコードされたGISデータセットを受信するための第1の手段(310)であって、各GISデータセットは、1つ以上のマップアセットと1つ以上のメタデータとを含み、各メタデータは、個別のマップの特徴、特性、または要素を記述している、第1の手段(310)と、
前記GISデータセットをプラットフォーム独立フォーマットに変換するための第2の手段(312)であって、前記プラットフォーム独立フォーマットは、前記ソースフォーマットとは異なる、第2の手段(312)と、
前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段であって、前記第3の手段は、前記メタデータを第1の低遅延非持続的メモリに記憶し、かつ前記マップアセットを第2の持続的記憶装置内に記憶する、第3の手段と、
前記プラットフォーム独立フォーマットにおける前記変換されたGISデータセットおよびその個別のマップアセットを前記1つ以上のクライアントプラットフォーム(160)に提供するための第4の手段(314)と
を提供するように構成される、システム。

【請求項14】
1つ以上のクライアントプラットフォームにプラットフォーム独立GISデータセットを提供するためのコンピュータ実装方法であって、
前記方法は、
個別のソースフォーマットにおいてエンコードされたGISデータセットを受信することであって、各GISデータセットは、1つ以上のマップアセットと1つ以上のメタデータとを含み、各メタデータは、個別のマップの特徴、特性、または要素を記述している、ことと、
前記GISデータセットをプラットフォーム独立フォーマットに変換することであって、前記プラットフォーム独立フォーマットは、前記ソースフォーマットとは異なる、ことと、
前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶することと、
受信された個別のGISデータセットにおける欠けているマップアセットおよびメタデータを識別することと、
前記欠けているマップアセットおよびメタデータの少なくとも一部分を遠隔ソースから読み出すことと、
前記プラットフォーム独立フォーマットにおける前記変換されたGISデータセットおよびその個別のマップアセットを前記1つ以上のクライアントプラットフォームに提供することと
を含み、
前記受信すること、前記変換すること、前記抽出すること、前記識別すること、および前記提供することは、1つ以上のプロセッサを用いて行われる、方法。」

なお、本願発明2-13、15の概略は以下のとおりである。

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明6は、本願発明1のシステムを、方法に置き換えた発明である。

本願発明7-13は、本願発明6を減縮した発明である。

本願発明15は、本願発明14を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

ア.「【0019】まず、実施形態の構成の説明に入る前に、この実施形態で用いられている本発明に従う幾つかの地図データの処理手法を説明する。
【0020】第1の処理手法は、地図データを標準化する技術である。前述したように、様々な形式で作られた多種多様な地図データが存在する。これら異種の地図データの差分抽出や融合を行うためには、それら地図データを共通の標準形式に変換して統一する必要がある。一般に、地図データはどの形式であっても、多数の地図要素(例えば、道路、建物、河川、海、等高線などの)のデータの集合である。個々の地図要素データは形状、(狭義の)属性及び関係という3つの(広義の)属性を表す基本データを持ち、各基本データは更に細かい項目から構成されている。
【0021】地図データの標準化作業では、まず、形状、属性及び関係の各基本データを、それを構成する細項目に分解し、それら細項目の中から同一性解析(異種地図データ間で同一の地物に対応するデータがどれであるかを判断すること)に使用できる項目を選択する。
【0022】例えば、図1に示すように、現実世界の或る地物E1は、地図データ上で次式のデータ構成をもつ地図要素Q1として表現される。
【0023】
【数1】

ここで形状Kとは、地図要素の形状を決める点の位置を示す座標k(x,y,z)の集まりであり、地図要素の地図中での形状と位置を示す。(狭義の)属性Aとは、例えば道路の場合、道路名称、制限速度、車線数、幅員幅などであり、地図要素のもつ(広義の)属性のうち形状と関係以外の各種事項を示している。関係Rとは、他の地図要素との関連を記述する物で、例えば道路の場合、接続する交差点や規制関係を表現する。どの種類の地図データも論理的にはこれらの情報を内包しているが、実際のデータ表現形式は地図毎に異なる。そこで、最初に異種類の地図の論理的な関係を定義する。これを標準化地図データディクショナリとし、各地図データを標準化する為の変換ルールを集めたものをルールベースとして定義しておく。これらを基に、実際に地図を標準化地図データとして作成する。この事で様々な地図を同一に扱う事が可能となる。
【0024】すなわち、次式(2)の中央に示すような変換ルールをルールベース内に地図の種類毎に用意しておく。
【0025】
【数2】

そして、(2)式のように、或る種類の地図データQ内の或る地図要素Q1に、その地図種類に対応する変換ルールを適用することで、その地図要素Q1は、(2)式中で矢印で示すように、次式(3)で示す標準化地図データPの形式で表現された地図要素P1に変換される。
【0026】
【数3】

地図データの全ての地図要素にこの変換を施すことで、その地図データは標準化地図データPに標準化される。このようにして、どの種類の地図データに、ルールベース内の対応する変換ルールを適用することで、共通形式の標準化地図データPに標準化できる。」

イ.「【0094】図16は、上述した本発明に従う各種装置を組み合わせて構成された地図データ作成・流通装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0095】図16に示すように、地図提供者側の地図データ作成・流通装置90は、地図融合装置91と、地図差分作成装置95と備える。地図融合装置91は、図8、10及び13?15に示した装置を組み合わせたものであり、人による調査などで得られた各種の独自形式の地図データ92や人工衛星93から送られてくる独自形式の地図データを受けとり、それらの地図データを標準化して、それらを融合したり又はそれらで地図データベース94内の古い地図データを更新したりして、最新の地図データを作成し地図データベース94に格納する。
【0096】地図差分作成装置95は、図10、13及び図14の装置を組み合わせたものであり、地図データベース94内の最新の地図データと、ユーザが持っている例えばカーナビゲーション装置用又はパーソナルコンピュータ電子地図プログラム用などの地図データ96との差分を解析し、ユーザの地図データ96を最新の地図データに更新するための更新指示データを作成して、この更新指示データを差分データベース97に格納する。
【0097】各ユーザは、それぞれ、自動車に搭載されたカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101などから、公衆回線網98を通じて、差分データベース97にアクセスして、自分がもつカーナビゲーション装置用又はパーソナルコンピュータ電子地図プログラム用の地図データを更新するための更新指示データをダウンロードする。カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101には、それぞれ、図15に示したような地図更新装置100、102が搭載されていて、各地図更新装置100、102が、ダウンロードされた更新指示データを用いて、それぞれのユーザ地図データを最新の地図データに更新する。
【0098】このようにして、地図データそのものよりデータ量がずっと小さい更新指示データを通信するだけで、各ユーザの地図データを更新することができる。」

・上記ア.の段落【0020】には、標準化は、様々な形式で作られた多種多様な地図データを共通の標準形式に変換して統一することである、と記載されている。
さらに、段落【0023】には、地図要素の形状を決める点の位置を示す座標k(x,y,z)の集まりであり、地図要素の地図中での形状と位置を示す形状Kと、例えば道路の場合、道路名称、制限速度、車線数、幅員幅などであり、地図要素のもつ(広義の)属性のうち形状と関係以外の各種事項を示している(狭義の)属性Aと、他の地図要素との関連を記述する物で、例えば道路の場合、接続する交差点や規制関係を表現する関係Rとを、どの種類の地図データも論理的には内包しているが、実際のデータ表現形式は地図毎に異なっており、そのため、異種類の地図の論理的な関係を標準化地図データディクショナリとし、各地図データを標準化する為の変換ルールを集めたものをルールベースとして定義しておく、ことが記載されている。
さらに、段落【0026】には、各種類の地図データに、ルールベース内の対応する変換ルールを適用することで、共通形式の標準化地図データPに標準化する、ことが記載されている。
したがって、引用文献1には、地図データ毎に異なったデータ表現形式で有する形状K、(狭義の)属性A、関係Rを、標準形式に変換して統一する変換ルールを集めたものをルールベースとして定義し、各地図データに、ルールベース内の対応する変換ルールを適用することで、共通形式の標準化地図データPに標準化すること、さらに、
形状Kは、地図要素の形状を決める点の位置を示す座標k(x,y,z)の集まりであり、地図要素の地図中での形状と位置を示すものであり、(狭義の)属性Aは、例えば道路の場合、道路名称、制限速度、車線数、幅員幅などであり、地図要素のもつ(広義の)属性のうち形状と関係以外の各種事項を示しており、関係Rは、他の地図要素との関連を記述する物で、例えば道路の場合、接続する交差点や規制関係を表現するものである、
ことが記載されているといえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉

「地図融合装置91と、地図差分作成装置95と備える、地図データ作成・流通装置90であって、
前記地図融合装置91は、人による調査などで得られた各種の独自形式の地図データ92や人工衛星93から送られてくる独自形式の地図データを受けとり、それらの地図データを標準化して、それらを融合したり又はそれらで地図データベース94内の古い地図データを更新したりして、最新の地図データを作成し地図データベース94に格納するものであり、
前記地図差分作成装置95は、地図データベース94内の最新の地図データと、ユーザが持っている例えばカーナビゲーション装置用又はパーソナルコンピュータ電子地図プログラム用などの地図データ96との差分を解析し、ユーザの地図データ96を最新の地図データに更新するための更新指示データを作成して、この更新指示データを差分データベース97に格納するものであり、
前記標準化は、地図データ毎に異なったデータ表現形式で有する、形状K、(狭義の)属性A、関係Rを、標準形式に変換して統一する変換ルールを集めたルールベースを定義し、各地図データに、ルールベース内の対応する変換ルールを適用することで、共通形式の標準化地図データPとすることであり、
前記形状Kは、地図要素の形状を決める点の位置を示す座標k(x,y,z)の集まりであり、地図要素の地図中での形状と位置を示すものであり、前記(狭義の)属性Aは、例えば道路の場合、道路名称、制限速度、車線数、幅員幅などであり、地図要素のもつ(広義の)属性のうち形状と関係以外の各種事項を示しており、前記関係Rは、他の地図要素との関連を記述する物で、例えば道路の場合、接続する交差点や規制関係を表現するものであり、
各ユーザは、それぞれ、自動車に搭載されたカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101などから、公衆回線網98を通じて、差分データベース97にアクセスして、自分がもつカーナビゲーション装置用又はパーソナルコンピュータ電子地図プログラム用の地図データを更新するための更新指示データが、カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101に搭載されている地図更新装置100、102にダウンロードされ、ダウンロードされた更新指示データを用いて、それぞれのユーザ地図データを最新の地図データに更新できる、
地図データ作成・流通装置90。」


2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0019】
以上の処理を図に示すと図2のようになる。この例では、2社のナビゲーションメーカのナビゲーションシステム1A、1Bで地図データの更新を行う場合である。まず、元の更新用の地図データ”X”を各ナビゲーションメーカで共通のフォーマットに変換し、”XX”を生成する。そして、生成した共通フォーマットの更新地図データ”XX”を放送局に送って、そこから各ナビゲーション1A、1Bに向けて配信する。各ナビゲーション1A、1Bは、放送局を介して配信された共通フォーマットの更新地図データを受信した後、自社フォーマットに変換して現在の地図データと合併する。」


3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、車載用ナビゲーション装置のメーカーが提供する電子地図データは、各社毎にデータのフォーマットが異なっている。また、同じメーカーであっても、ナビゲーション装置の型式や電子地図のバージョンによってフォーマットが異なる場合もある。このように、電子地図にはメーカー、バージョン、地図データ読出装置(ナビゲーション装置等)の機種等に応じた複数の独自フォーマットが存在するので、サーバから送られてきた電子地図データが、車載用ナビゲーション装置で使用できないという不具合の発生が考えられる。」

イ.「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の電子地図配信システムを示す模式図である。サービスセンタには、電子地図データベース10とサーバ(コンピュータ)12とが設けられている。電子地図データベース10には、複数の電子地図データ11a,11b,11cが含まれている。これらの電子地図データ11a,11b,11cは、相互に異なる独自フォーマットのデータである。また、サーバ12には、各電子地図データ11a,11b,11cにそれぞれ個別に対応したフォーマット変換部13a,13b,13cが設けられている。これらのフォーマット変換部13a,13b,13cはソフトウエアにより実現されている。
【0011】一方、クライアントは、通信回線を介してサービスセンタに接続可能なパーソナルコンピュータ21a及び車両に搭載されたナビゲーション装置21b等である。以下、本実施の形態の地図配信システムにおける電子地図の配信について,図2に示すフローチャートを参照して説明する。但し、ここでは、クライアントが、車両に搭載されたナビゲーション装置21bであるとする。」

ウ.「【0015】例えば、電子地図データ11aからデータを読み出した場合は、フォーマット変換部13aで共通フォーマットの電子地図データに変換する。また、電子地図データ11bからデータを読み出した場合はフォーマット変換部13bで共通フォーマットの電子地図データに変換し、電子地図データ11cからデータを読み出した場合はフォーマット変換部13cで共通フォーマットの電子地図データに変換する。
【0016】その後、サーバ12は共通フォーマットに変換された電子地図データをクライアント(ナビゲーション装置21b)に送信する(ステップS15)。共通フォーマットの電子地図データを受信したナビゲーション装置21bは、受信した電子地図データを使用して地図画像を描画して表示装置に表示する(ステップS16)。また、ナビゲーション装置21bは、受信した電子地図データを使用して、車両を目的地まで案内する。」


4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0059】
まず、図6を参照して地図表示プロセスを説明する。
【0060】
カードスロット103はCPU130および信号処理部120にバスで接続されており、ステップS601でGPS釦が押されたと判定されたらこのカードスロットに装填されたカードメモリへのアクセスが開始される。ステップS602ではカードメモリが装填されているかどうかが判定され、カードメモリが装填されていなかったらNoと判定されてステップS602が繰り返される。カードが装填されたら、あるいはカードが装填されていたらステップS602でYesと判定されて、次のステップS603へと移行する。このステップS603でメモリカードへのアクセスが開始されて、まず地図データの中の多数の属性データが取得され、前述したRAMに一旦記憶される。この属性データは住所、名称、緯度、経度といったデータからなり、この属性データが多数、RAMに読み込まれたら、その多数の属性データに基づいて住所の検索などが行なわれる。ステップS604では検索を行ないたい名刺を表示画面に表示させ、その表示されたデータに基づいて住所一致の検索が行なわれている。ステップS605で表示画面に表示されている住所と一致する住所が属性データの中から検索されたら、ステップS606で属性データの中からその住所に対応する緯度、経度データがその取得される。ステップS607ではその緯度、経度に対応する地図をあらわすデータがメモリカードから読み出され、その読み出された地図をあらわすデータが信号処理部で表示可能な画像データに変換されて表示画面に表示される。その緯度、経度に対応する地図が多数ある場合には、十字キーを操作することによりその緯度、経度に対応する別の地図が表示される。」


5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0030】ハードディスク26には、さらに、地図表示特定データ記憶部26c、地図データ記憶部26dを有する。地図表示特定データ記憶部26cには、図5に示すように地図表示特定データが記憶されている。地図表示特定データは、カテゴリ別に区分して、表示状況を示す表示状況フラグおよびインデックスデータが記憶されている。インデックスデータは、各カテゴリを構成している個別地図を特定するためのデータであり、各個別地図の領域範囲および実データアドレスで構成されている。
【0031】地図データ記憶部26dには、カテゴリ別に個別地図の実データが記憶されている。カテゴリNo1の地図はデータファイル26d1に、カテゴリNo2の地図はデータファイル26d2に、カテゴリNo3の地図はデータファイル26d3に記憶されている。」

イ.「【0036】CPU23は、まず、ハードディスク26の地図表示特定データ記憶部26cに記憶された地図表示特定データの表示状況フラグを参照にして、表示状況フラグがONのカテゴリに属する個別地図について、そのインデックスデータを主メモリ27の領域73(図6参照)に読み込む(ステップST1)。この場合、カテゴリ1?3について表示状況フラグが全てONであるので、カテゴリ1?3のインデックスデータが主メモリ27の領域73に読み込まれる。」


上記引用文献4,5の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献4,5には以下の技術(以下、「周知の技術」という。)が開示されていると認められる。

「地図データに対するアクセス(検索)をより高速に行うために、各地図データのメタデータを低遅延非持続性メモリに記録すること」


6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0084】Provisioning Maps
【0085】MVPP is a web-based system for provisioning maps to users based on a levels of security, for example, maps with a private level are available only to privileged users, maps with a public level are available to any user. MVPP defines different types of system users based on, for example, their ability to publish and provision maps and/or their ability to view and access maps. MVPP defines a publisher-to-viewer duality which enables a powerful system for the creation, organization, and control over web-based map publishing and provisioning and map viewing. For example, Map Publishers create maps from the data they upload and provision maps with levels of security granted to groups and their members. Map Viewers are the map-viewing audience, for example, a member of the public who wants to view a tourist map of San Francisco or a member of an organization who needs to view service calls by area.
【0086】User are not granted access to maps individually, rather, they are first assigned to groups. Groups are categories of users who share a need for a common set of maps, for example, Telecommunications Engineers who need call-quality and network maps of their service area. In this example, call-quality and network maps are assigned to the group “Telecom Engineering” consisting of members from the engineering team. The advantages of provisioning maps by group rather than by user are:
【0087】1) The improved efficiency in simultaneously managing an entire group of users vs. individual users.
【0088】2) The ability to organize and categorize users into functional areas based on map and spatial information needs.
【0089】3) The ability to define group-based levels of security for maps and spatial information.
【0090】FIG.10 shows the relationship between users134, groups136, and maps138.」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101」は、本願発明1の「1つ以上のクライアントプラットフォーム」に相当する。
イ.引用発明の「人による調査などで得られた各種の独自形式の地図データ92や人工衛星93から送られてくる独自形式の地図データ」は、本願発明1の「個別のソースフォーマットにおいてエンコードされたGISデータセット」に相当し、そして、引用発明の「地図融合装置91」は、これらの「地図データ」を「受けと」るものであるから、本願発明1の「個別のソースフォーマットにおいてエンコードされたGISデータセットを受信するための第1の手段(310)」に相当する。
さらに、引用発明の「地図データ」の「形状K」は、「地図要素の地図中での形状と位置を示すものであ」るから、本願発明1の「1つ以上のマップアセット」に相当し、引用発明の「地図データ」の「(狭義の)属性A」は、「例えば道路の場合、道路名称、制限速度、車線数、幅員幅などであ」るから、本願発明1の「個別のマップの特徴、特性、または要素を記述している」「1つ以上のメタデータ」に相当する。
ウ.引用発明の「標準化」は、「地図データ毎に異なったデータ表現形式」を「変換ルールを適用することで、共通形式の標準化地図データPとすることであり」、「標準化」された「共通形式」の「標準化地図データ」は、「人による調査などで得られた各種の独自形式の地図データ92や人工衛星93から送られてくる独自形式の地図データ」とは異なる形式であることは明らかであるから、引用発明の「共通形式」は、引用発明の「前記ソースフォーマットとは異なる」「プラットフォーム独立フォーマット」に相当する。
そして、引用発明の「地図融合装置91」は、「地図データを標準化」するものであるから、引用発明の「地図融合装置91」は、本願発明1の「前記GISデータセットをプラットフォーム独立フォーマットに変換するための第2の手段(312)であって、前記プラットフォーム独立フォーマットは、前記ソースフォーマットとは異なる、第2の手段(312)」にも相当する。
エ.引用発明の「地図データ作成・流通装置90」は、「各ユーザ」が「それぞれ、自動車に搭載されたカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101などから、公衆回線網98を通じて、差分データベース97にアクセスして、自分がもつカーナビゲーション装置用又はパーソナルコンピュータ電子地図プログラム用の地図データを更新するための更新指示データが、カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101に搭載されている地図更新装置100、102にダウンロード」されるものであるから、該「地図データ作成・流通装置90」は、「カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101」に、「更新地図データ」を「ダウンロード」するための何らかの提供手段を有することは明らかであり、該提供手段は、本願発明1の「前記プラットフォーム独立フォーマットにおける前記変換されたGISデータセットおよびその個別のマップアセットを前記1つ以上のクライアントプラットフォーム(160)に提供するための第4の手段(314)」に相当する。
そして、引用発明の「地図データ作成・流通装置90」は、本願発明1の「1つ以上のクライアントプラットフォームにプラットフォーム独立GISデータセットを提供するためのシステム」に相当し、さらに、引用発明の「地図融合装置91」、「地図差分作成装置95」、及び上記提供手段がプロセッサを含むことは明らかである。

よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「1つ以上のクライアントプラットフォームにプラットフォーム独立GISデータセットを提供するためのシステムであって、前記システムは、1つ以上のプロセッサ(140)を含み、
前記1つ以上のプロセッサ(140)は、
個別のソースフォーマットにおいてエンコードされたGISデータセットを受信するための第1の手段(310)であって、各GISデータセットは、1つ以上のマップアセットと1つ以上のメタデータとを含み、各メタデータは、個別のマップの特徴、特性、または要素を記述している、第1の手段(310)と、
前記GISデータセットをプラットフォーム独立フォーマットに変換するための第2の手段(312)であって、前記プラットフォーム独立フォーマットは、前記ソースフォーマットとは異なる、第2の手段(312)と、
前記プラットフォーム独立フォーマットにおける前記変換されたGISデータセットおよびその個別のマップアセットを前記1つ以上のクライアントプラットフォーム(160)に提供するための第4の手段(314)と
を提供するように構成される、システム。」

(相違点)
本願発明1は、「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段であって、前記第3の手段は、前記メタデータを第1の低遅延非持続的メモリに記憶し、かつ前記マップアセットを第2の持続的記憶装置内に記憶する、第3の手段」を有するのに対して、引用発明は、そのような手段を有していない点。


(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記引用文献4,5にも記載されるように、地図データに対するアクセス(検索)をより高速に行うために、各地図データのメタデータを低遅延非持続性メモリに記録することは周知の技術と認められる。
しかしながら、引用発明のものは、更新指示データをカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101(本願の「クライアントプラットフォーム」)側に提供し、カーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101で、更新指示データを用いてそれぞれの地図データを最新の地図データに更新するものであり、地図データはカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101側が保持するものであり、「メタデータ」もカーナビゲーション装置99やパーソナルコンピュータ101側で保持するものであるから、引用発明において「地図データ作成・流通装置90」側で、「後のアクセスのために前記メタデータを記憶する」必要性が認められず、上記周知の技術を引用発明に適用する動機付けはない。
また、引用文献2,3,6には、本願発明1の上記相違点に係る構成に関しては記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5は、請求項1をさらに限定するものであって、本願発明1の「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段」を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明7-13について
本願発明7-13は、請求項6をさらに限定するものであって、本願発明1の「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5.本願発明14について
本願発明14も、本願発明1の「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6.本願発明15について
本願発明15は、請求項14をさらに限定するものであって、本願発明1の「前記GISデータセットの少なくとも一部分から前記メタデータを抽出し、かつ1つ以上のクライアントプラットフォームによる後のアクセスのために前記メタデータを記憶するための第3の手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-15に係る発明は、当業者が引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-30 
出願番号 特願2013-555552(P2013-555552)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
山澤 宏
発明の名称 マップ作成  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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