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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02F
管理番号 1334801
審判番号 不服2017-5874  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2013-80396「ホイールローダ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-202002、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年4月8日の出願であって、平成28年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月22日に意見書、並びに、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成29年1月17日付けで拒絶査定がされたが、これに対して平成29年4月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年1月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

●理由(特許法第29条第2項)について

・請求項 1
・引用文献等 1-5
引用文献1には、作業機械の車体フレーム(120)と、車体フレーム(120)に搭載されるエンジン(301)と、エンジン(301)の上部を覆い、支柱(161)を介して車体フレームに固定されるエンジンカバー(140)と、排気装置(320)と、排気装置を保持してエンジンカバーの下面に取り付けるブラケット(150)とを備え、排気装置をエンジンカバーの下方で固定する作業機械(特に段落[0008]-[0016]、[0023]-[0025]、[0029]-[0030]及び[0037]並びに図5-11及び17参照。)に加えて、ブラケット(150)が、エンジンカバー(140)の下面に取り付けられた取付座(特に図8(b)及び段落[0014]参照)と、排気装置を保持する保持部(153)及び取付座が取り付けられた本体部(上記の取付座に対応する部分以外の右側側板151及び左側側板152)とを有する点も記載されている。
引用文献2には、筒状の外観を呈する第1の排気装置(25)と、筒状の外観を呈し、第1の排気装置とは機能が異なる第2の排気装置(24)と、上部保持部(45)で第1の排気装置を保持し、下部保持部(44a、44b)で第2の排気装置を保持するブラケット(42)とを備え、ブラケットが上方から見たときに第1の排気装置の延在方向と第2の排気装置の延在方向とが略平行に、かつ、上方から見たときに第1の排気装置の一部と第2の排気装置の一部とが重なり合うように第1および第2の排気装置を一体的に保持する構成(特に段落[0035]-[0048]及び図2-6参照。)に加えて、エンジンがターボチャージャ(41)を有し、ターボチャージャと第1の排気装置(25)とを接続し蛇腹管を有する排気配管(37)を備える点(特に図2及び段落[0039]参照)、及び第2の排気装置(24)が第1の排気装置(25)よりも低い位置に配設される点(特に図2及び段落[0035]参照)も記載されている。
また、異なる機能を有する2つの排気装置を備えたものにおいて、一方の排気装置の出口部と同じ側に他方の排気装置の入口部を配置することは、引用文献3(特に段落[0047]-[0050]及び図3-5参照)、引用文献4(特に段落[0017]-[0019]及び図2-4参照)、及び引用文献5(特に段落[0012]及び図1参照)に記載されるように、周知技術である。
そして、引用文献1に記載の作業機械において、ブラケットを、引用文献2に記載のもののように第1及び第2の排気装置を保持するように構成することは、当業者にとって容易である。また、その際に、上記周知技術を参酌して、第2の排気装置が、第1の排気装置の出口部と同じ側に入口部を有するように構成することは、当業者における通常の創作能力の発揮にすぎない。
よって、請求項1に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明及び引用文献3-5に記載された周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-184602号公報
2.国際公開第2011/152306号
3.特開2009-103016号公報
4.特開2011-43078号公報
5.特開2007-222819号公報

第3 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年4月24日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲の記載、並びに、出願当初の図面からみて、次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
前部車体と後部車体とから構成されセンタピンにより互いに回動自在に連結された車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されターボチャージャを上部に有するエンジンと、
前記エンジンの上部を覆い、支柱を介して前記車体フレームに固定されたエンジンカバーと、
前記エンジンの上方に配置され、前記車体フレームの一方側に出口部を有する筒状の第1の排気装置と、
前記第1の排気装置に接続され、前記第1の排気装置の出口部と同じ側に入口部を有し、前記第1の排気装置よりも低く、かつ前記エンジンの上方の位置に配設された、前記第1の排気装置とは異なる機能を有する筒状の第2の排気装置と、
前記第1の排気装置を保持する上部保持部と、前記第2の排気装置を保持する下部保持部と、前記エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座と、前記上部保持部、前記下部保持部及び前記取付座が取り付けられた本体部とを有するブラケットと、
前記ターボチャージャと前記第1の排気装置とを接続し蛇腹管を有する排気配管とを備え、
前記ブラケットは、上方から見たときに前記第1の排気装置の延在方向と前記第2の排気装置の延在方向とが平行に、かつ、上方から見たときに前記第1の排気装置の一部と前記第2の排気装置の一部とが重なり合うように前記第1および第2の排気装置が一体的に保持されており、
前記第1および第2の排気装置は、前記取付座を介して前記エンジンカバーの下方で固定されていることを特徴とするホイールローダ。」

第4 引用文献

1 引用文献1の記載事項

原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開2012-184602号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。

(1)「【0008】
図1?25を参照して、本発明による作業機械の一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例であるホイールローダの側面図であり、図2は、このホイールローダ100の平面図である。図3は、ホイールローダ100の正面図であり、図4は、ホイールローダ100の背面図である。ホイールローダ100は、アーム111,バケット112,タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121,機械室(エンジン室)122,タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。エンジン室122は、建屋カバー130とエンジンフード140とで覆われている。後部車体120の後方にはカウンタウェイト124が取り付けられている。エンジン室122の前方には、作動油タンク125が設けられている。
【0009】
アーム111はアームシリンダ117の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。説明の便宜上、本実施の形態では各図に記載したように前後左右方向および上下方向を規定する。また、本実施の形態では、各図において、ホイールローダ100を構成する部材のうち説明のために記載を省略する必要があるものについては、その一部または全部についての記載を省略している。
【0010】
図5は、後部車体120を左側面から見た図であり、左側面の建屋カバー130および後述する排気ガス浄化装置マウントブラケット150の左側の側板を取り外した状態を示している。図6は、作動油タンク125よりも後方の後部車体120を正面から見た図であり、建屋カバー130を取り外した状態を示している。エンジン室122内で、エンジン301は後部車体120のエンジン取り付け用ブラケット120aに取り付けられている(図6)。なお、エンジン301にはEGRクーラ303等、様々な補機類が取り付けられているが、符号302を付した過給器(ターボチャージャ)も補機の1つである。
【0011】
エンジン室122内で、エンジン301の上方には、エアクリーナ310と、排気ガス浄化装置320とが設けられている。エンジン室122の上方には、上述したようにエンジンフード140が設けられている。図7(a),(b)に示すように、エンジンフード140は、略矩形形状に組まれた枠部材141と、エンジンフード140を補強する補強部材142と、枠部材141および補強部材142の上部に取り付けられた天板143とを備えている。枠部材141は、左右に延在する前側の部材(前側部材)141aと、左右に延在する後側の部材(後側部材)141bと、前後に延在する右側の部材(右側部材)141cと、前後に延在する左側の部材(左側部材)141dとを有する。」(段落【0008】ないし【0011】)

(2)「【0014】
図8(a),(b)に示すように、エンジンフード140の下面には、排気ガス浄化装置マウントブラケット150が取り付けられている。排気ガス浄化装置マウントブラケット150は、排気ガス浄化装置320を下方から支持するための部材であり、排気ガス浄化装置320が載置されて取り付けられる支持板153と、支持板153をエンジンフード140で吊り下げるための右側側板151と、左側側板152とを有する。」(段落【0014】)

(3)「【0015】
図9(a),(b)に示すように、エンジンフード140は、前側部材141aが作動油タンク125で、後側部材141bが建屋カバー支持部材160で支持される。建屋カバー支持部材160は、後部車体120にそれぞれ立設される左右一対の支柱161と、それぞれの支柱161の上端に掛け渡された梁162とを有する。支柱161は、下端が後部車体120に取り付けられて、略鉛直上方に向かって延在する下支柱161aと、下支柱161aの上端から上方に向かって左右方向斜め内側に延在する中支柱161bと、中支柱161bの上端から略鉛直上方に向かって延在する上支柱161cとを有する。すなわち、支柱161は、上部が左右方向の内側に向かって湾曲した形状を呈している。」(段落【0015】)

(4)「【0023】
---排気ガス浄化装置320について---
図12?14に示すように、排気ガス浄化装置320は、略筒形状を呈しており、排気ガスの流れに沿って上流から順に接続された酸化触媒部321と、DPF部322と、消音部323とを有する。排気ガス浄化装置320には、取り付け用の座320aが設けられている。酸化触媒部321には、不図示の酸化触媒が収容されている。DPF部322には、不図示の粒子状物質除去フィルタが収容されている。消音部323は、エンジン301が発する排気音を低減する装置である。消音部323の排気ガスの出口には、排気管324が取り付けられている。図14に示すように、排気管324と、開口カバー170に取り付けられたテールパイプ171との間には隙間がある。」(段落【0023】)

(5)上記(1)ないし(4)及び図面の記載より分かること

ア 上記(1)の段落【0010】及び図6の記載によれば、エンジン301は、上部にターボチャージャ302を有することが分かる。

イ 上記(1)の段落【0008】、【0011】、上記(3)、図9(a)及び図9(b)の記載によれば、エンジンフード140は、エンジン301の上方を覆い、支柱161を介して後部車体120に取り付けられていることが分かる。

ウ 上記(2)、上記(4)及び図10ないし12の記載によれば、消音部323の排気ガスの出口は、排気ガス浄化装置320の出口であり、該出口は、排気ガス浄化装置320において、後部車体120の前側に有することが分かる。

エ 上記(2)、図8(a)及び図8(b)の記載によれば、排気ガス浄化装置マウントブラケット150は、右側側板151と左側側板152の上端に、エンジンフード140の下面に取り付けられた取付部分を有すること、及び、排気ガス浄化装置320は、上記取付部分を介して、エンジンフード140の下方で取り付けられていることが分かる。

(6)引用発明

上記(1)ないし(5)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「センタピン101により互いに回動自在に連結された前部車体110及び後部車体120と、
後部車体120に取り付けられターボチャージャ302を上部に有するエンジン301と、
エンジン301の上方を覆い、支柱161を介して後部車体120に取り付けられたエンジンフード140と、
エンジン301の上方に設けられ、後部車体120の前側に出口を有する略筒形状の排気ガス浄化装置320と、
排気ガス浄化装置320を載置し取り付ける支持板153と、エンジンフード140の下面に取り付けられた右側側板151及び左側側板152の取付部分とを有する排気ガス浄化装置マウントブラケット150とを備え、
排気ガス浄化装置320は、右側側板151及び左側側板152の取付部分を介してエンジンフード140の下方で取り付けられているホイールローダ100。」

2 引用文献2の記載事項

原査定で引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/152306号(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「本発明の一実施形態に係る作業車両100を図1に示す。この作業車両100は、油圧ショベルであり、車両本体1と作業機4とを備えている。
車両本体1は、走行体2と旋回体3とを有している。走行体2は、一対の走行装置2a,2bを有する。各走行装置2a,2bは、履帯2d,2eを有している。走行装置2a,2bは、後述するエンジン21(図2参照)からの駆動力によって履帯2d,2eが駆動されることによって、作業車両100を走行させる。なお、以下の説明において、前後方向とは、車両本体1の前後方向を意味する。また、左右方向、或いは、側方とは、車両本体1の車幅方向を意味する。
旋回体3は、走行体2上に載置されている。旋回体3は、走行体2に対して旋回可能に設けられている。また、旋回体3の前部左側位置には運転室5が設けられている。旋回体3は、燃料タンク14と作動油タンク15とエンジン室16とカウンタウェイト18とを有している。燃料タンク14は後述するエンジン21を駆動するための燃料を貯留する。燃料タンク14は、作動油タンク15の前方に配置されている。作動油タンク15は、後述する油圧ポンプ23(図2参照)から吐出される作動油を貯留する。作動油タンク15は、燃料タンク14と前後方向に並んで配置されている。エンジン室16は、後述するようにエンジン21や油圧ポンプ23などの機器を収納する。エンジン室16は、運転室5、燃料タンク14および作動油タンク15の後方に配置されている。エンジン室16の上方は、エンジンフード17によって覆われている。エンジンフード17は、エンジン室16を開閉可能なように、車体に取り付けられている。エンジンフード17には孔が形成されており、後述する排気管34(図2参照)に取り付けられる終端部19が孔を通って上方へ突出している。カウンタウェイト18は、エンジン室16の後方に配置されている。」(段落[0028]ないし[0030])

(2)「エンジン室16の内部構造を図2に示す。エンジン室16には、車体フレーム20、及び、各種の機器が配置されている。各種の機器には、エンジン21、フライホイールハウジング22、油圧ポンプ23、第1の排気ガス処理装置としての第1処理装置25、第2の排気ガス処理装置としての第2処理装置24などがある。なお、図2において、矢印Fは作業車両100にとっての前方を示している。また、矢印Rは作業車両100にとっての後方を示している。
車体フレーム20は、上述したエンジン21及び油圧ポンプ23などの機器の周囲に配置されている。車体フレーム20は、複数の支柱部材20a-20cと、複数の梁部材20d,20eとを有する。支柱部材20a-20cは、上述した機器の周囲に配置されており、旋回体3のメインフレーム(図示せず)上に立設されている。梁部材20d,20eは、水平方向に沿って配置されており、支柱部材20a-20cの上端に連結されている。具体的には、梁部材20dはエンジン21の前方に配置されている。梁部材20eは、エンジン21の後方に配置されている。」(段落[0032]及び[0033])

(3)「第1処理装置25は、エンジン21からの排気ガスを処理する装置であって、ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter)型の処理装置である。第1処理装置25は、排気ガス中に含まれる粒子状物質をフィルターによって捕集し、捕集した粒子状物質をフィルターに付設されたヒータによって焼却する。第1処理装置25は、概ね円筒状の外形を有する。第1処理装置25の中心軸は、前後方向に沿って配置されている。従って、第1処理装置25の中心軸は、エンジン21と油圧ポンプ23とが並んでいる方向に対して概ね垂直に配置されている。また、第1処理装置25の中心軸は、第2処理装置24の中心軸と概ね平行に配置されている。第1処理装置25の中心軸は、車幅方向において第2処理装置24の中心軸とエンジン21との間に配置されており、第2処理装置24の中心軸よりも上方に位置している。第1処理装置25は、第2処理装置24よりもエンジン21に近く、且つ、第2処理装置24よりも上方に配置されている。また、図3に示すように、第1処理装置25の右側部は、第2処理装置24の上方に位置している。従って、図4に示すように、第1処理装置25は、上面視において第2処理装置24と部分的に重なって配置されている。また、第1処理装置25は、第2処理装置24に対して前後方向にずれて配置されている。具体的には、第1処理装置25の前端部は、第2処理装置24の前端部よりも後方に位置している。また、第1処理装置25の後端部は、第2処理装置24の後端部よりも後方に位置している。
第1処理装置25は、第1接続口36と第2接続口35とを有する。第1接続口36には、第1接続配管37が接続される。第1接続口36は、第1処理装置25の側面の後端部に設けられている。第1接続口36は、第1処理装置25の側面から左側且つ斜め上方へ向けて突出するように設けられている。第2接続口35は、後述する第2接続配管33に接続されている。第2接続口35は、第1処理装置25の側面の前端部に設けられている。第2接続口35は、第1処理装置25の側面から右側へ向けて突出するように設けられている。第2接続口35は、後述する第2処理装置24の第4接続口32よりも後方に位置している。このため、第2接続口35に接続される第2接続配管33が、第2処理装置24上において排気管34を避けて、排気管34と前後方向に並んで配置される。これにより、第2接続配管33が排気管34と干渉しないようにされている。
第2処理装置24は、エンジン21からの排気ガスを処理する装置であって、尿素を加水分解して選択的に窒素酸化物NOxだけを還元する選択還元触媒型(Selective Catalytic Reduction)の処理装置である。第2処理装置24は、概ね円筒状の外形を有する。第2処理装置24の中心軸は、前後方向に沿って配置されている。従って、第2処理装置24の中心軸は、エンジン21と油圧ポンプ23とが並んでいる方向に対して概ね垂直に配置されている。第2処理装置24は、油圧ポンプ23の上方に配置されている。すなわち、第2処理装置24は、上面視において油圧ポンプ23と重なって配置されている。また、第2処理装置24の底部は、エンジン21の上面よりも下方に位置している。すなわち、第2処理装置24の少なくとも底部は、側面視においてエンジン21と重なって配置されている。
また、図2及び図4に示すように、第2処理装置24は、第3接続口31と第4接続口32とを有する。なお、図4は、図3に示した機器の一部の上面図である。第3接続口31には、第2接続配管33が接続される。第3接続口31は、第2処理装置24の上面に設けられている。具体的には、第3接続口31は、第2処理装置24の上面の後端部に設けられている。第3接続口31は、第2処理装置24の上面から上方へ向けて突出するように設けられている。第4接続口32は、第2処理装置24の上面の前端部に設けられている。第4接続口32は、第2処理装置24の上面から上方へ突出するように設けられている。第4接続口32には、排気管34が接続される。なお、図2?5では省略されているが、排気管34には、上述したエンジンフード17から上方へ突出する終端部19が接続される。」(段落[0035]ないし[0038])

(4)「第1接続配管37は、エンジン21と第1処理装置25を連結している。第1接続配管37の一端は、第1処理装置25の側面に接続されている。また、第1接続配管37の他端は、ターボチャージャー41を介してエンジン21の排気ポートに接続される。第1接続配管37は、エンジン21の上方を通るように配置されている。第1接続配管37の前側部分は、ターボチャージャー41へ向けて車幅方向に折り曲げられている。また、第1接続配管37の後側部分は、第1処理装置25の第1接続口36へ向けて車幅方向に折り曲げられている。第1接続配管37の中間部分は、水平方向に対して傾斜して配置されている。また、第1接続配管37の中間部分は、エンジン21や第1処理装置25の振動を吸収するようにジャバラ状に形成されている。」(段落[0039])

(5)「図5に示すように、第1処理装置25と第2処理装置24とは連結フレーム42によって連結されている。これにより、第1処理装置25と第2処理装置24と連結フレーム42とは、一体化されて、排気ガス処理ユニット40を構成している。排気ガス処理ユニット40は、連結フレーム42が車体フレーム20に固定されることにより、車体フレーム20に取り付けられる。また、連結フレーム42の車体フレーム20への固定を解除することにより、排気ガス処理ユニット40が車体フレーム20から取り外される。
連結フレーム42は、図6に示すように複数のフレーム部材43a-43cと、第1ブラケット45と、一対の第1ブラケット44a,44bとを有する。フレーム部材43a-43cは、第1処理装置25と第2処理装置24とを囲むように、屈曲した形状に組み合わされている。図5に示すように、フレーム部材43a-43cは、ゴムなどの弾性体からなる振動吸収部材46を介して車体フレーム20に固定される。具体的には、図2に示すように、フレーム部材43aは、梁部材20eに固定される。また、図示されていないが、フレーム部材43cは、梁部材20dに固定される。
図5に示すように、第1ブラケット45は、第1処理装置25をフレーム部材43a-43cに取り付けるための部材である。第1ブラケット45は、フレーム部材43aとフレーム部材43cとに亘って設けられている。第1処理装置25の底部は、フレーム部材43a-43cよりも上方に位置しており、第1処理装置25は、第1ブラケット45上に載置されるように固定される。
図5に示すように、第2ブラケット44a,44bは、第2処理装置24をフレーム部材43a-43cに取り付けるための部材である。第2ブラケット44a,44bは、第2処理装置24の軸方向に互いに距離を隔てて配置され、第2処理装置24の軸方向における端部にそれぞれ固定される。第2処理装置24の底部は、フレーム部材43a-43cよりも下方に位置しており、第2ブラケット44a,44bの一部は、第2処理装置24の上方に配置される。このため、第2処理装置24は、第2ブラケット44a,44bに吊り下げられるように固定される。また、図6に示すように、第2ブラケット44a,44bの端部には、第2接続配管33及び排気管34との干渉を避けるように、それぞれ凹部47a,47bが設けられている。」(段落[0042]ないし[0045])

(6)上記(1)ないし(5)及び図面の記載より分かること

ア 上記(3)、図3及び図4の記載から、第1処理装置25は、エンジン21の上方に配置されていること、及び、第1処理装置25の第2接続口35は、第1処理装置25の前端部、すなわち、車体フレーム20の前側に設けられていることが分かる。

イ 上記(3)及び図4の記載から、第2処理装置24の第3接続口31は、第1処理装置25の第2接続口35と前後方向で反対側にあることが分かる。

ウ 上記(3)の記載から、第2処理装置24は、第1処理装置25とは異なる機能を有することが分かる。

エ 上記(4)及び図2の記載から、エンジン21は、上部にターボチャージャ41を有することが分かる。

(7)引用文献2技術

上記(1)ないし(6)を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。

<引用文献2技術>

「ターボチャージャ41を上部に有するエンジン21と、
エンジン21の上方に配置され、車体フレーム20の前側に第2接続口35を有する概ね円筒状の第1処理装置25と、
第1処理装置25に接続され、第1処理装置の第2接続口35と前後方向で反対側に第3接続口31を有し、第1処理装置25よりも下方にあり、かつ底部がエンジン21の上面よりも下方に位置する、第1処理装置25とは異なる機能を有する略円筒状の第2処理装置24と、
第1処理装置25を取り付ける第1ブラケット45と、第2処理装置24を取り付ける第2ブラケット44a、44bと、車体フレーム20に取り付けられたフレーム部材43a-43cとを有する連結フレーム42と、
ターボチャージャ41と第1処理装置25とを接続しジャバラ状の中間部分を有する第1接続配管37とを備え、
連結フレーム42は、第1処理装置25の中心軸と第2処理装置24の中心軸とが概ね平行に、かつ、上面視で第1処理装置25は第2処理装置24と部分的に重なるように第1処理装置25及び第2処理装置24が連結されている、作業車両100。」

第5 対比・判断

1 本願発明について

本願発明と引用発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明における「センタピン101」は、本願発明における「センタピン」に相当し、以下同様に、「前部車体110」は「前部車体」に、「後部車体120」は「後部車体」に、「前部車体110」及び「後部車体120」は「車体フレーム」に、「取り付けられ」ることは「搭載され」ること又は「固定され」ることに、「ターボチャージャ302」は「ターボチャージャ」に、「エンジン301」は「エンジン」に、「上方」は「上部」に、「支柱161」は「支柱」に、「エンジンフード140」は「エンジンカバー」に、「設けられ」ることは「配置され」ることに、「出口」は「出口部」に、「略筒形状」は「筒状」に、「排気ガス浄化装置320」は「第1の排気装置」に、「載置し取り付ける」ことは「保持する」ことに、「支持板153」は「上部保持部」に、「右側側板151及び左側側板152の取付部分」は「取付座」に、「ホイールローダ100」は「ホイールローダ」に、それぞれ相当する。
引用発明における「前部車体110」及び「後部車体120」については、車体が前部車体110と後部車体120とから構成されるのは明らかであるから、引用発明における「センタピン101により互いに回動自在に連結された前部車体110及び後部車体120」は、本願発明における「前部車体と後部車体とから構成されセンタピンにより互いに回動自在に連結された車体フレーム」に相当する。
また、引用発明における「後部車体120に取り付けられ」ることは、本願発明における「車体フレームに搭載され」ることに相当し、引用発明における「後部車体120の前側」は、本願発明における「車体フレームの一方側」に相当する。
そして、引用発明における「排気ガス浄化装置320を載置し取り付ける支持板153と、エンジンフード140の下面に取り付けられた右側側板151及び左側側板152の取付部分とを有する排気ガス浄化装置マウントブラケット150」と本願発明における「第1の排気装置を保持する上部保持部と、第2の排気装置を保持する下部保持部と、エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座と、前記上部保持部、前記下部保持部及び前記取付座が取り付けられた本体部とを有するブラケット」とは、「第1の排気装置を保持する上部保持部と、エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座とを有するブラケット」という限りにおいて一致する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「前部車体と後部車体とから構成されセンタピンにより互いに回動自在に連結された車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されターボチャージャを上部に有するエンジンと、
前記エンジンの上部を覆い、支柱を介して前記車体フレームに固定されたエンジンカバーと、
前記エンジンの上方に配置され、前記車体フレームの一方側に出口部を有する筒状の第1の排気装置と、
前記第1の排気装置を保持する上部保持部と、前記エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座とを有するブラケットとを備え、
前記第1の排気装置は、前記取付座を介して前記エンジンカバーの下方で固定されているホイールローダ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「第1の排気装置に接続され、前記第1の排気装置の出口部と同じ側に入口部を有し、前記第1の排気装置よりも低く、かつエンジンの上方の位置に配設された、前記第1の排気装置とは異なる機能を有する筒状の第2の排気装置」を備えるのに対し、引用発明は、かかる構成を有しない点(以下、「相違点1」という。)。

(相違点2)
「第1の排気装置を保持する上部保持部と、エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座とを有するブラケット」に関して、本願発明は、「第1の排気装置を保持する上部保持部と、第2の排気装置を保持する下部保持部と、エンジンカバーの下面に取り付けられた取付座と、前記上部保持部、前記下部保持部及び前記取付座が取り付けられた本体部とを有するブラケット」であるのに対し、引用発明は、「排気ガス浄化装置320を載置し取り付ける支持板153と、エンジンフード140の下面に取り付けられた右側側板151及び左側側板152の取付部分とを有する排気ガス浄化装置マウントブラケット150」である点(以下、「相違点2」という。)。

(相違点3)
本願発明は、「ターボチャージャと第1の排気装置とを接続し蛇腹管を有する排気配管」を備えるのに対し、引用発明は、かかる構成を有するのか不明である点(以下、「相違点3」という。)。

(相違点4)
本願発明は、「ブラケットは、上方から見たときに第1の排気装置の延在方向と第2の排気装置の延在方向とが平行に、かつ、上方から見たときに前記第1の排気装置の一部と前記第2の排気装置の一部とが重なり合うように前記第1および第2の排気装置が一体的に保持されて」いるのに対し、引用発明は、かかる構成を有しない点(以下、「相違点4」という。)。

(相違点5)
本願発明は、「第2の排気装置」が、取付座を介してエンジンカバーの下方に固定されているのに対し、引用発明は、「排気ガス浄化装置320」が、「右側側板151及び左側側板152の取付部分を介してエンジンフード140の下方に取り付けられ」ている点(以下、「相違点5」という。)。

そこで、事案に鑑み、先に相違点2について検討する。

本願発明及び引用文献2技術は、作業車両という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明1と引用発明2とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献2技術における「ターボチャージャー41」は、本願発明における「ターボチャージャ」に相当し、以下同様に、「エンジン21」は「エンジン」に、「車体フレーム20」は「車体フレーム」に、「前側」は「一方側」に、「第2接続口35」は「出口部」に、「概ね円筒状」は「筒状」に、「第1処理装置25」は「第1の排気装置」に、「第3接続口31」は「入口部」に、「第2処理装置24」は「第2の排気装置」に、「取り付ける」ことは「保持する」ことに、「第1ブラケット45」は「上部保持部」に、「第2ブラケット44a、44b」は「下部保持部」に、「フレーム部材43a-43c」は「取付座」に、「ジャバラ状の中間部分」は「蛇腹管」に、「第1接続配管37」は「排気配管」に、「中心軸」は「延在方向」に、「概ね平行」は「平行」に、「上面視で」は「上方から見たときに」に、「第1処理装置25は第2処理装置24と部分的に重なるように」は「第1の排気装置の一部と第2の排気装置の一部とが重なり合うように」に、「第1処理装置25及び第2処理装置24が連結されている」ことは「第1および第2の排気装置が一体的に保持されて」いることに、それぞれ相当する。
引用文献2技術における「第1処理装置25の中心軸と第2処理装置24の中心軸とが概ね平行」は、上面視でもこれらの中央軸が概ね平行であることは明らかであるから、本願発明における「上方から見たときに第1の排気装置の延在方向と第2の排気装置の延在方向とが平行」に相当する。
また、引用文献2技術における「連結フレーム42」と、本願発明における「ブラケット」とは、「第1の排気装置を保持する上部保持部と、第2の排気装置を保持する下部保持部と、取付座とを有するブラケット」という限りにおいて一致し、引用文献2技術における「作業車両100」と、本願発明における「ホイールローダ」とは、「作業車両」という限りにおいて一致する。

してみると、引用文献2技術は本願発明の用語を用いると、以下の事項を有するものといえる。

「ターボチャージャを上部に有するエンジンと、
前記エンジンの上方に配置され、前記車体フレームの一方側に出口部を有する筒状の第1の排気装置と、
前記第1の排気装置に接続され、前記第1の排気装置の出口部と反対側に入口部を有し、前記第1の排気装置よりも低く、かつ底部が前記エンジンの上面よりも下方に位置する、前記第1の排気装置とは異なる機能を有する筒状の第2の排気装置と、
前記第1の排気装置を保持する上部保持部と、前記第2の排気装置を保持する下部保持部と、前記車体フレームに取り付けられた取付座とを有するブラケットと、
前記ターボチャージャと前記第1の排気装置とを接続し蛇腹管を有する排気配管とを備え、
前記ブラケットは、上方から見たときに前記第1の排気装置の延在方向と前記第2の排気装置の延在方向とが平行に、かつ、上方から見たときに前記第1の排気装置の一部と前記第2の排気装置の一部とが重なり合うように前記第1および第2の排気装置が一体的に保持されている作業車両。」

してみると、引用発明及び引用文献2技術は、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のうち、ブラケットが、「上部保持部、下部保持部及び取付座が取り付けられた本体部」を有するものではない。

また、原査定で引用され、本願の出願前に頒布された特開2009-103016号公報(以下、「引用文献3」という。)、特開2011-43078号公報(以下、「引用文献4」という。)、及び、特開2007-222819号公報(以下、「引用発明5」という。)には、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項については何ら記載されておらず、その示唆もない。

そして、仮に、引用文献2技術が「上部保持部、下部保持部及び取付座が取り付けられた本体部」を有していたとしても、引用発明に引用文献2技術を適用するには、引用文献1におけるエアクリーナ310を他の場所に移し、排気ガス浄化装置320とは別の排気装置を更に設けることが必要となるが、引用文献1におけるエアクリーナ310を他の場所に移すことの必要性があるとは認められず、また、排気ガス浄化装置320は、引用文献2技術における第1処理装置25と第2処理装置24とを併せたものに相当する構成を有しているから、引用文献2技術を適用する必要性があるとは認められない。また、引用発明における排気ガス浄化装置マウントブラケット150は、エンジンフード140の下面に取り付けられるのに対し、引用文献2技術における連結フレーム42は、車体フレーム20に取り付けられるものであって、引用発明とは構造が異なるものである。
したがって、引用発明に引用文献2技術を適用する動機付けがあるとは認められない。

よって、本願発明1は、相違点1、3ないし5を検討するまでもなく、引用発明、引用文献2技術、引用文献3、引用文献4及び引用文献5に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定についての判断
平成29年4月24日の手続補正により補正された請求項1に係る発明は、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を有するものであり、当業者であっても、原査定における引用発明、引用文献2技術、引用文献3、引用文献4及び引用文献5に記載の事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。よって、原査定の理由を維持することができない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-27 
出願番号 特願2013-80396(P2013-80396)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 八木 誠
金澤 俊郎
発明の名称 ホイールローダ  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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