ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M |
---|---|
管理番号 | 1334810 |
審判番号 | 不服2016-9993 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-01 |
確定日 | 2017-11-22 |
事件の表示 | 特願2013-524953号「非ルアーコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日国際公開、WO2012/024370、平成25年 9月 2日国内公表、特表2013-534174号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、2011年(平成23年)8月17日(パリ条約による優先権主張:2010年(平成22年)8月17日、アメリカ合衆国;2011年(平成23年)8月16日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年5月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月2日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲等について補正がなされたが、平成28年2月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成28年7月1日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲等についてさらに補正がなされ、その後同年12月27日に上申書が提出されたものである。 第2 平成28年7月1日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年7月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 平成28年7月1日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成27年9月2日付けで補正された特許請求の範囲等をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。 (1)<補正前> 「 【請求項1】 雌の非ルアーコネクタに接続するための雄の非ルアーコネクタであって、 遠位壁を含む開口した遠位端と、流体を保持するための流体チャンバを画定する内面を含む側壁と、前記遠位壁から遠位方向に延びる細長い先端とを有する容器を備え、前記細長い先端が、前記チャンバへの出入りを可能にする開口部、外面、および遠位端を含み、前記外面が、0.1545インチ(3.925mm)以下の、非円周の断面の縁上の2点間の距離の最大である外側の断面の寸法を有することを特徴とする非ルアーコネクタ。」 (2)<補正後> 「 【請求項1】 雌の非ルアーコネクタに接続するための雄の非ルアーコネクタであって、 遠位壁を含む開口した遠位端と、流体を保持するための流体チャンバを画定する内面を含む側壁と、前記遠位壁から遠位方向に延びる細長い先端とを有する容器を備え、前記細長い先端が、前記チャンバへの出入りを可能にする開口部、外面、および遠位端を含み、前記外面が、0.1545インチ(3.925mm)以下の、非円周の断面の縁上の2点間の距離の最大である外側の断面の寸法を有し、前記細長い先端は、標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長いまたは短いことを特徴とする非ルアーコネクタ。」 2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の(「容器」が備える)「細長い先端」について、「標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長いまたは短い」点を付加するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。 (1)補正発明 補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「非ルアーコネクタ」であると認める。 (2)刊行物 これに対して、原審の平成27年5月22日付け拒絶の理由に引用された、本件の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-187141号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の発明が記載されていると認められる。 ア 刊行物1に記載された事項 刊行物1には、「使い捨て注射器」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 (ア)特許請求の範囲 「【請求項1】 流体を保持するチャンバを画成する内面を有するバレルであって、開口基端部、末端部、および、前記末端部から延在し前記チャンバと流体連通する通路を有する細長い先端を有し、前記先端がその末端部において約3.8mmより小さい直径と4%から8%の逓減率で基端方向および外側に向けて先細った側壁とを有する、バレルと、 プランジャロッドであって、基端部と末端部と前記末端部におけるストッパとを有する細長い本体部分を含み、前記ストッパが前記バレル内に液密に係合されて摺動可能に位置され、細長い突起が前記プランジャロッドの前記末端部から末端方向および外側に向けて延在し、前記細長い突起が前記細長い先端の前記通路に嵌合するよう形作られ、前記本体部分が前記バレルの前記開口基端部から外側に向けて延在するプランジャロッドと、 前記通路を通って流体を放出するための前記ストッパの末端方向への移動の後に、前記バレルに対する前記プランジャロッドの基端方向への移動を防止する手段と、を備えることを特徴とする作動可能な注射器アセンブリ。」 (イ)「【0004】ニードル・カニューレに取付けられたハブを有するニードル・アセンブリを使用する使い捨て注射器においては、該ニードル・アセンブリが他の注射器または流体取扱い装置とともに再び使用されないように、使い捨て注射器とともに使用された後の該ニードル・アセンブリの再使用防止に役立つ必要がある。」 (ウ)「【0011】図1乃至16に言及するに、使い捨て特性を有する注射器アセンブリ20は、流体を保持するためのチャンバ23を画成する内面22を有するバレル21を含む。バレル21は、開口基端部25と末端バレル終端部27を有する。細長い先端29はバレルの末端部から末端方向および外側に向けて延在し、チャンバ23と流体連通する通路28を備える。この先端は、図15に寸法Eとして図示される3.8mmより小さい直径を末端部に有する。該先端はまた、4%から8%の逓減率で基端方向および外側に向かってテーパ付けられた側壁31も有する。」 (エ)「【0012】好ましくは、注射器アセンブリ20には、基端部102と末端部103とそれを通る空腔104を有するカニューレ101を含むニードル・アセンブリ100が設けられる。ハブ105は、先細った空洞107を備える開口基端部106と、空腔がハブの空洞と流体連通するように該カニューレの基端部と接続された末端部108とを有する。先細った空洞107は、4%から8%の逓減率で末端方向内側にむかって先細った側壁109を含む。該空洞は、図14に寸法Aとして図示されるような約3.85mmより小さい直径を開口基端部に有する。ニードル・アセンブリ100が注射器バレル21に接続される時、該バレルの細長い先端29は、該ハブの空洞107の中に位置される。」 (オ)「【0013】国際標準化機構は、世界中の医療機器および流体移送装置の製造業者により守られる注射器およびニードル用のルアー逓減率の標準規格を提供している。この標準規格、ISO594/1は、本明細書中に、参照されることにより組み込まれている。ルアー嵌合の標準化は、同一または異なる製造業者によって製造された多様な流体取扱い構成部品の接続を許容することにより、健康管理および研究所において大きな利点となる。例えば、注射器を充填させるための大きなニードルやその後、注入のために使用されるそれよりも小さなニードルのような数種のニードルが一つの注射器に使用されることが可能である。注射器は、流体を閉鎖されたシステムに供するために、カテーテル取付具および停止コックに係合する。さらに、ほとんど全てのニードルの寸法が様々な使用のための注射器の寸法と組み合わせることができるので、最も有効且つ効率のよい使用のために組み合わせをあつらえることができる。しかしながら、使い捨てにのみ意図されている皮下注射装置の薬物乱用および接触伝染病の感染に寄与する多数回の使用については、ルアー取付具の標準規格化は問題の一部である。ごみ箱からみつけられるか、または健康管理者によって誤用された皮下ニードルのほとんどはほとんどの注射器に嵌合することができ、薬の移送および/または病気の感染の組み合わせを生じさせる。本発明の主な効果はここにある。本発明のニードル・アセンブリは、基端部に約3.85mmより小さなハブ空洞直径を有する。ISO標準規格は、最も普通の注射器材料であるプラスティック等の半剛性材料について、注射器先端の末端部に3.925mmから4.027mmの範囲の先端直径を規定している。従って、本発明のニードル・アセンブリは、大きい標準規格のISOルアー先端には嵌合しない。同様に、本発明の注射器のルアー先端の末端部は、3.8mmより小さい直径Eを有するが、一方、雌型円錐ルアー取付具の開口部のISO標準規格直径は4.270mmから4.315mmの範囲にあるので、標準規格の皮下ニードルは本発明の注射器には正しく係合しない。しかしながら、本発明の注射器が使い捨て注射器であり再使用できないため、ニードル・ハブの直径は最も重要且つ調整的である。」 (カ)「【0014】ISO標準規格ではルアー円錐状取付具の逓減率は6%と特定されている。本発明の好ましい実施形態において、注射器バレルの先端の側壁は約6%の逓減率を有しており、ハブの空洞の側壁は約6%の逓減率を有している。6%のルアー逓減率を有する図14中のaおよび図15中のbの総含有角度は、ほぼ3.43度である。」 (キ)「【0015】図15を参照すると、ISO標準規格は3.925mmから4.027mmの先端直径Eと7.500mmの最小長さを唱えている。本発明は、望ましくは、3.8mmより小さい先端直径Eと、好ましくは,3.4mmの先端直径および約8.07mmの先端長、約3.82mmの根元直径Fを有する。好ましい実施形態において、本注射器先端の根元直径すなわち最大直径は、ISOによって雌型円錐取付具のために特定された最小直径4.270mmよりも小さい。」 (ク)「【0016】図14を参照するに、ISO標準規格は、雌型円錐取付具の開口端部において4.270mmから4.315mmの範囲の直径Aを要求しているが、本発明は、望ましくは、約3.85mm、好ましくは3.73mmより小さい開口直径Aを有するので、最も小さいISO特定のルアー先端部(3.925mm)でさえ本発明のニードル・アセンブリと嵌合しないであろう。ISOは、雌型円錐取付具の最小深さを7.500mmと特定しており、本発明の好ましい実施形態はISO標準規格の範囲内に相当するC7.92mmの深さを有している。縮小された直径のハブ空洞は、本発明の重要な特徴である。なぜならば、他の注射器に取付けてニードル・アセンブリを容易に再使用することを防止するのに役立つことにより多数回の使用にともなう問題から人々を保護するからである。」 (ケ)「【0041】 【発明の効果】本発明の注射器アセンブリは、・・・最後に、縮小された寸法のニードルハブとバレルの先端は、何れも標準規格のISO取付具には使用できないので、更なる使用を思いとどまらせる。特に、ニードル・アセンブリは、本発明の注射器にのみ接合可能であるため、更なる使用のためのニードルを誤用する誘引はない。ISO標準規格サイズの大きい穴に突き刺そうとした場合、該ニードルハブは、破壊されるように設計されることも可能である。・・・」 イ 刊行物1発明 (コ)上記記載事項(ウ)の「流体を保持するためのチャンバ23を画成する内面22を有するバレル21を含む。バレル21は、開口基端部25と末端バレル終端部27を有する。細長い先端29はバレルの末端部から末端方向および外側に向けて延在し」との記載を上記図2の図示内容に照らして合理的に解釈すれば、該「バレル21」は、“遠位壁を含む開口した末端バレル終端部27” 、“流体を保持するためのチャンバ23を画成する内面22を含む側壁” 、及び、“遠位壁から遠位方向に延びる細長い先端29”を有するということができる。 (サ)上記記載事項(ウ)の「細長い先端29はバレルの末端部から末端方向および外側に向けて延在し、チャンバ23と流体連通する通路28を備える」との記載、及び「この先端は、図15に寸法Eとして図示される3.8mmより小さい直径を末端部に有する。該先端はまた、4%から8%の逓減率で基端方向および外側に向かってテーパ付けられた側壁31も有する」との記載を上記図2及び図15の図示内容に照らして合理的に考えれば、該「細長い先端29」は、“チャンバ23への出入りを可能にする開口部、基端方向および外側に向かってテーパ付けられた側壁31、および遠位端を含”むものと認められる。 そこで、上記記載事項(ア)ないし(ケ)並びに上記認定事項(コ)及び(サ)を、技術常識を踏まえ補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「刊行物1発明」という。) 「先細った空洞107を備える開口基端部106を有するニードル・アセンブリ100に接続するための注射器アセンブリ20の細長い先端29であって、 遠位壁を含む開口した末端バレル終端部27と、流体を保持するためのチャンバ23を画成する内面22を含む側壁と、前記遠位壁から遠位方向に延びる細長い先端29とを有するバレル21を備え、前記細長い先端29が、前記チャンバ23への出入りを可能にする開口部、基端方向および外側に向かってテーパ付けられた側壁31、および遠位端を含み、前記細長い先端29は、3.8mmより小さい先端直径Eと約3.82mmの根元直径Fを有するニードル・アセンブリを使用する使い捨て注射器、における接続構造であって、 前記ニードル・アセンブリ100は、最も小さいISO標準規格特定のルアー先端部(3.925mm)でさえ嵌合しない3.73mmより小さい開口直径Aを有する、ニードル・アセンブリを使用する使い捨て注射器における接続構造。」 (3)対比 補正発明と刊行物1発明とを対比する。 まず、補正発明の「非ルアーコネクタ」との用語は医療機器分野の一般的な技術用語ではないところ、本件明細書に「【0032】本発明の態様は、他の不適合なまたは意図していない標準規格のルアーコネクタとの誤接続を防ぐ非ルアーコネクタに関連する。本明細書では、非ルアーコネクタは、上述のように、標準規格のルアーコネクタとは異なる形状、寸法または構造を有するコネクタとして定義されるものとする。」と記載されており、補正発明の「非ルアーコネクタ」とは、“標準規格のルアーコネクタとは異なる形状、寸法または構造を有するコネクタ”を指すものと考えられる。 そうすると、刊行物1発明の「先細った空洞107を備える開口基端部106を有するニードル・アセンブリ100」は、「最も小さいISO標準規格特定のルアー先端部(3.925mm)でさえ嵌合しない」ものであるから、補正発明の「雌の非ルアーコネクタ」に相当するということができる。そして、刊行物1発明の「注射器アセンブリ20の細長い先端29」は、「雌の非ルアーコネクタ」たる「ニードル・アセンブリ100」に接続するものであることを踏まえ、該「注射器アセンブリ20の細長い先端29」は、補正発明の「雄の非ルアーコネクタ」に相当するということができる。 また、刊行物1発明の「ニードル・アセンブリを使用する使い捨て注射器」「における接続構造」は、補正発明の「非ルアーコネクタ」に相当することになる。 次に、それぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、刊行物1発明の「末端バレル終端部27」は補正発明の「遠位端」に相当することは明らかであり、同様に「チャンバ23」は「流体チャンバ」又は「チャンバ」に、「画成」は「画定」に、「内面22」は「内面」に、「細長い先端29」は「細長い先端」に、「バレル21」は「容器」に、「基端方向および外側に向かってテーパ付けられた」「側壁31」は「外面」に相当することも明らかである。 さらに、刊行物1発明の「細長い先端29は、3.8mmより小さい先端直径Eと約3.82mmの根元直径Fを有」することは、補正発明の「細長い先端」の「外面が、0.1545インチ(3.925mm)以下の、非円周の断面の縁上の2点間の距離の最大である外側の断面の寸法を有」することと、“外面が0.1545インチ(3.925mm)以下の、断面の縁上の2点間の距離の最大である外側の断面の寸法を有”することである点において共通する。 したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「雌の非ルアーコネクタに接続するための雄の非ルアーコネクタであって、 遠位壁を含む開口した遠位端と、流体を保持するための流体チャンバを画定する内面を含む側壁と、前記遠位壁から遠位方向に延びる細長い先端とを有する容器を備え、前記細長い先端が、前記チャンバへの出入りを可能にする開口部、外面、および遠位端を含み、前記外面が0.1545インチ(3.925mm)以下の、断面の縁上の2点間の距離の最大である外側の断面の寸法を有する非ルアーコネクタ。」 そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。 <相違点1> 補正発明の細長い先端は、非円周の断面であるのに対し、刊行物1発明の細長い先端29は、(直径を有することから)円周形の断面である点。 <相違点2> 補正発明においては、細長い先端は、標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長いまたは短いのに対し、 刊行物1発明においては、ニードル・アセンブリ100(雌のルアーコネクタ)は、最も小さいISO標準規格特定のルアー先端部(3.925mm)でさえ嵌合しない3.73mmより小さい開口直径Aを有するものであるものの、細長い先端29の標準規格との長さの異同は明らかでない点。 (4)相違点の検討 上記各相違点につき検討する。 ア 相違点1について 相違点1に係る補正発明の構成に関し、本件明細書に「【0052】1つまたは複数の実施形態では、ハブ本体132の内面134が、先端332が空洞136内に配設されるように、ハブ本体132が、先端332の外面338上を滑ることを可能にするのに十分な大きさの内側の断面の寸法を有する場合でも、先端332の正方形の断面は、ハブ本体132の内面134が、先端332の外面338との締まり嵌め接続および/または液密封止を形成するのに十分な先端332の外面338との接触をするのを防ぐ。これは、内面134が曲がっており、先端332の外面338と接触しないからである。言い換えると、正方形の断面を有する先端332の角は、円形の断面を有するハブ、例えば、針ハブ130の内面と接触しない。1つまたは複数の代替的実施形態では、先端332は、標準規格の雌ルアーコネクタの内面、例えばルアーコネクタ133の内面134との十分な接触を防ぎ、それによってそれらの間の締まり嵌め接続および/または液密封止の形成を防ぐ三角形の断面または他の断面を有してもよい。」と記載されていることからすれば、相違点1に係る補正発明の構成の技術的意義は、雄ルアーコネクタの断面を非円形(非円周形)とすることによって、円形断面を有する標準規格の雌ルアーコネクタとの誤接続を防ぐことであると認められる。 ここで、医療機器における流体接続用のコネクタにおいて、雄のコネクターを非円周形として誤接続を防止することは、原査定において例示された米国特許出願公開第2009/99552号明細書(段落[0002]、[0026]?[0029]、図1等参照)、特開2008-73530号公報(段落【0002】、段落【0022】?【0024】、【図7】等参照)に示されるように従来周知の技術事項である。 そして、刊行物1発明において、標準規格の円形の雌ルアーコネクタとの誤接続を確実に防止するために上記従来周知の技術事項を適用して、細長い先端29を非円周形の断面として相違点1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。 イ 相違点2について 相違点2に係る補正発明の構成は、細長い先端を標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長く又は短くするものであるところ、これは、補正発明の細長い先端を非円周形の断面とすることに加え、細長い先端の長さも標準規格と異ならせることによって、標準規格のルアーコネクタとの誤接続をより確実に防止ならしめるためのものと考えられる。 一方、刊行物1発明は、「ニードル・アセンブリ100は、最も小さいISO標準規格特定のルアー先端部(3.925mm)でさえ嵌合しない3.73mmより小さい開口直径Aを有する」ものであるから、標準規格のルアーコネクタとの誤接続を防止することを目的の1つとすることは明らかである。 ここで、一般に雌雄部材の接続において、雌雄部材の長さを異ならせることにより誤接続を防止することは、例えば、特開2003-77582号公報(段落【0011】等参照)、特開平10-154552号公報(要約欄参照)に示されるように常套手段に過ぎない。 そして、補正発明において標準規格の雌のルアーコネクタとの誤接続を一層確実に防止するために、細長い先端29の長さを標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端と異ならせることも、上記常套手段に照らして当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得たことというべきである。 以上を総合すると、刊行物1発明において、上記常套手段を勘案して相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。 ウ 請求人の補正案について 請求人は、上記平成28年12月27日提出の上申書にて、特許請求の範囲の請求項1について、「・・・前記細長い先端の前記遠位方向の長さは、標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端の前記遠位方向の長さより長いまたは短い・・・」とする補正案を案示している。 そもそも「補正案」を検討する法的根拠はないが、念のため検討するに、補正発明における「細長い先端は、標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長いまたは短い」ことは、実質的に“遠位方向の長さ”について特定していたものである。したがって、仮に補正案のように補正したとしても、依然として進歩性が認められるとは考え難いから、結論に変わりはない。 エ 小括 したがって、補正発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成27年9月2日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「非ルアーコネクタ」であると認める。 2 刊行物 これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1であり、その記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。 3 対比・検討 本願発明は、実質的に、上記第2の2で検討した補正発明の「細長い先端」から、「標準規格の雄のルアーコネクタの細長い先端より長いまたは短い」点を削除したものである。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、上記第2の2(3)で示した一致点を有し、相違点1においてのみ相違する。そして、相違点1については、上記第2の2(4)で検討したとおりである。 したがって、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-26 |
結審通知日 | 2017-06-27 |
審決日 | 2017-07-13 |
出願番号 | 特願2013-524953(P2013-524953) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安田 昌司 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
平瀬 知明 長屋 陽二郎 |
発明の名称 | 非ルアーコネクタ |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |