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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1334847
審判番号 不服2015-12518  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-02 
確定日 2017-11-21 
事件の表示 特願2011-527823「修飾を有するdsRNAによる遺伝子発現の特異的な阻害のための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月25日国際公開、WO2010/033225、平成24年2月23日国内公表、特表2012-504389〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年9月17日(パリ条約による優先権主張 2008年9月22日 (US)アメリカ合衆国 2件)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月19日付けで拒絶査定がされ、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成29年5月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
i)第1の鎖、および、
ii)第2の鎖、を含む単離された二重鎖RNA(dsRNA)であって、
前記第1の鎖は、長さが25?67ヌクレオチドであり;
前記第2の鎖は、長さが19?27ヌクレオチドであり;
前記第1および第2の鎖は、長さが19?23塩基対である二重鎖を形成し;
前記第1の鎖は、前記二重鎖に隣接する、1?20塩基対の第二の二重鎖を形成し;
前記第1の鎖は、前記第二の二重鎖に隣接するテトラループを含み;
前記第2の鎖は、前記第1の鎖の5'末端とブラントエンドを形成するか、または1、2、3もしくは4ヌクレオチドからなる3'オーバーハングを含み;
前記dsRNAは、第1の鎖の末端と第2の鎖の末端との間に不連続を含み;および
前記dsRNAは、哺乳動物細胞において標的遺伝子発現を減少させる、単離された二重鎖RNA。」(以下、この発明を「本願発明1」という。)

第3 引用例の記載
平成29年1月25日付けの当審による拒絶理由通知において引用した本願の優先日前に頒布された、「二本鎖オリゴヌクレオチド」という名称の発明を記述する特表2005-515780号公報(以下、「引用例6」という。)には以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

1 特許請求の範囲
(1) 「【請求項1】 以下の構造:
【化1】

[式中,
(1)Nは長さが等しい相補的オリゴヌクレオチド鎖中のヌクレオモノマーであり,Nの配列は標的遺伝子配列に対応しており,そして
(2)XおよびYはそれぞれ独立して以下から成る群から選択される:存在しない;約1から約20ヌクレオチドの5'オーバーハング;約1から約20ヌクレオチドの3'オーバーハング;および約4から約20ヌクレオモノマーから成るループ構造(ここでヌクレオモノマーはGおよびAから成る群から選択される)]を有する二本鎖オリゴヌクレオチド組成物。」
(2) 「【請求項2】 以下の構造:
【化2】

[式中,
(1)oligoAはある数のヌクレオモノマーのオリゴヌクレオチドであり;
(2)oligoBはoligoAと同数のヌクレオモノマーを有し,oligoAに相補的であるオリゴヌクレオチドであり;
(3)oligoAまたはoligoBのいずれかは標的遺伝子配列に対応しており;
(4)Xは以下から成る群から選択され:(a)存在しない;(b)oligoAの5'末端に共有結合して5'オーバーハングを構成する約1から約20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド;(c)oligoBの3'末端に共有結合して3'オーバーハングを構成する約1から約20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド;および(d)oligoBの3'末端とoligoAの5'末端に共有結合してループ構造を構成する約4から約20ヌクレオモノマーのオリゴヌクレオチド(ここでヌクレオモノマーはGおよびAから成る群から選択される);そして
(5)Yは以下から成る群から選択される:(a)存在しない;(b)oligoBの5'末端に共有結合して5'オーバーハングを構成する約1から約20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド;(c)oligoAの3'末端に共有結合して3'オーバーハングを構成する約1から約20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチド;および(d)oligoAの3'末端とoligoBの5'末端に共有結合してループ構造を構成する約4から約20ヌクレオモノマーのオリゴヌクレオチド(ここでヌクレオモノマーはGおよびAから成る群から選択される)]を有する二本鎖オリゴヌクレオチド組成物。」
(3) 「【請求項8】 XまたはYがループを形成する約4から約20ヌクレオモノマーの配列であり,ヌクレオモノマーがGおよびAから成る群から選択される,請求項2記載の組成物。」
(4) 「【請求項9】 2つの隣接するNが結合していない,請求項8記載の組成物。」

2 発明の概要
(1) 「本発明は,少なくとも一部は,アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび保護オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチドが遺伝子機能を阻害する能力を有するという発見に基づいている。」(段落【0004】)
(2) 「ある観点では,本発明は以下の構造を有する二本鎖オリゴヌクレオチド組成物に関する:
【化7】

[式中,(1)Nは長さが等しい相補的オリゴヌクレオチド鎖中のヌクレオモノマーであり,Nの配列は標的遺伝子配列に対応しており,(2)XおよびYは以下の群からそれぞれ独立して選択される:存在しない;約1から約20ヌクレオチドの5'オーバーハング;約1から約20ヌクレオチドの3'オーバーハング;および約4から約20ヌクレオモノマーから成るループ構造(ここでヌクレオモノマーはGおよびAから成る群から選択される)]。
“オーバーハング”は二本鎖オリゴヌクレオチド分子の5'-または3'-ヒドロキシル末端上の相対的に短い1本鎖ヌクレオチド配列である(“伸長鎖”,“突出末端”,または“接着末端”とも呼ばれる)。
・・・
1つの態様においては,Nのうち2つは未結合である,すなわち2つのヌクレオモノマー間にはホスホジエステル結合が存在しない。」(段落【0006】?【0010】)

3 発明の詳細な説明
(1) 二本鎖オリゴヌクレオチド組成物
ア 「本発明の二本鎖オリゴヌクレオチド組成物は標的遺伝子にコードされる標的蛋白質の合成を阻害する能力を有する。」(段落【0026】)

イ 「“オリゴヌクレオチド”という用語は,結合(例えばホスホジエステル)または置換結合によって互いに共有結合した2つ以上のヌクレオモノマーを含む。・・・例えば1つの態様においては,オリゴヌクレオチドはセンスまたはアンチセンス配列中にニックを含んでもよい。」(段落【0028】)

ウ 「ニックはオリゴヌクレオチド中の2つの非結合ヌクレオモノマーである。ニックはセンスまたはアンチセンスヌクレオチド配列沿いのいずれかの位置に含まれる。好ましい態様では,ニックはセンス配列中に存在する。別の好ましい態様では,ニックはオリゴヌクレオチドのデュープレックス領域の末端から少なくとも約4ヌクレオモノマーである(例えばオリゴヌクレオチドの5'もしくは3'末端から,またはループ構造から少なくとも約4ヌクレオモノマー離れて存在する)。」(段落【0033】)

エ 「1つの態様においては,本発明の二本鎖デュープレックスコンストラクトをヌクレアーゼに対して更に安定化するために,コンストラクトのセンスまたはアンチセンス鎖の5'または3'末端にループ構造を形成させることができる。例えばコンストラクトは以下のような形態であってもよい:
【化13】

[式中,Nは長さが等しい(例えば約12から約40ヌクレオチド長の)相補的オリゴヌクレオチド鎖中のヌクレオモノマーであり(すなわち上段のN鎖は下段のN鎖と相補的である),XおよびYはそれぞれ独立して以下から成る群から選択される:存在しない(すなわちコンストラクトはループおよびオーバーハングを有さない平滑末端コンストラクトである);約1から約20ヌクレオチドの5'オーバーハング;約1から約20ヌクレオチドの3'オーバーハング;GAAAループ(テトラループ);および約4から約20ヌクレオモノマーから成るループ(ここでヌクレオモノマーは全てGまたはAである)]。
Nの配列は標的遺伝子配列に対応する(例えば標的遺伝子配列に対してセンスまたはアンチセンスであるヌクレオチド配列と相同または同一である)が,ループ構造のヌクレオチド配列は標的遺伝子配列に対応しない。
例えば,それらのループはGおよびAのみを含有し,約4から約20ヌクレオチド長であってもよい。1つの態様においては,それらのループは配列GAAAを有するテトラループであってもよい。
【化14】

1つの態様においては,Nの数は約27である。
コンストラクトの一端または両端がループで1つの態様においては,オリゴヌクレオチドに“ニック”(センスまたはアンチセンス鎖のいずれか(しかし好ましくはセンス鎖)の位置にある2つの結合していないヌクレオモノマー)を含有させて分割することができる。好ましくは,ニックはデュープレックス領域の最も近い末端から少なくとも4塩基離れている(十分な熱力学的安定性を得るために)。」(段落【0094】?【0098】)

(2) 疾病または疾患の治療
「本発明のオリゴヌクレオチド組成物は,遺伝子の発現を阻害することにより,蛋白質の発現が関与する任意の疾病を治療するために用いることができる。」(段落【0235】)

第4 当審の判断
1 引用例6に記載された発明
前記第3より、引用例6には、以下の構造:【化1】

を有する二本鎖オリゴヌクレオチドであって、遺伝子の発現を阻害する能力を有する二本鎖オリゴヌクレオチド組成物が記載されているところ、特に前記第3の3(1)ウ及びエより、上記【化1】で示される構造式において、Xが存在せず、Yが配列GAAAを有するテトラループで、Nが27の標的遺伝子配列に対応する配列を有し、かつ、3'-oligo(N)-5'(センス鎖)の3'末端から少なくとも4ヌクレオモノマー、及び、3'-oligo(N)-5'(センス鎖)の5'末端、すなわち、ループ構造から少なくとも4ヌクレオモノマー離れて存在するニックを有する二本鎖オリゴヌクレオチド組成物が記載されているものと認められる。(以下、この構造を有する二本鎖オリゴヌクレオチドのことを、「引用発明」という。)

2 本願発明1と引用発明の対比・判断
本願発明1と引用発明を対比する。
両者は、第1の鎖及び第2の鎖を含み、第1の鎖の末端と第2の鎖の末端との間に不連続を含み、かつ、標的遺伝子発現を減少させる単離された二重鎖RNAである点において共通し、本願発明1において、第1の鎖の長さが35?39ヌクレオチドであり、第2の鎖の長さが19?23ヌクレオチドであり、第1及び第2の鎖が長さ19?23塩基対である二重鎖を形成し、第1の鎖は前記二重鎖に隣接する4?8塩基対の第二の二重鎖を形成し、第1の鎖は前記第二の二重鎖に隣接する配列GAAAを有するテトラループを含み、第2の鎖は第1の鎖の5'末端とブラントエンドを形成する場合は、引用発明におけるニックが、3'-oligo(N)-5'の5'末端、すなわち、テトラループから4?8ヌクレオモノマー離れて存在する場合に相当する。
このように、本願発明1と引用発明に相違点はなく、両者は、同一の発明である。

3 審判請求人の主張について
請求人は、引用例6の前記第3の3(1)イないしエの記載を根拠に、引用例6は、その全体にわたって、分子の鎖の中にニックがある態様、すなわち、標的遺伝子配列に対応する鎖が不連続を含む態様を開示しているのに対し、本願発明は、第1の鎖の末端と第2の鎖の末端との間に不連続を含む点において相違する旨を主張する。
しかし、本願の発明の詳細な説明には、「本明細書に使用される、『ガイド鎖』は、標的RNAのものに対して相補的な配列を有し、かつ標的RNAに対する結合によってRNA干渉を生じるdsRNAの一本鎖核酸分子をいう。DicerによるdsRNAの切断の後、ガイド鎖の断片は、RISCと会合したままで、RISC複合体の成分として標的RNAに結合して、RISCによる標的RNAの切断を促進する。本明細書に使用される、ガイド鎖は、必ずしも連続した一本鎖核酸をいうわけではなく、好ましくはDicerによって切断される部位にて不連続を含んでいてもよい。ガイド鎖は、アンチセンス鎖である。」(段落【0039】)と記載されているところ、本願の特許請求の範囲には、第1の鎖と第2の鎖で形成される長さが19?23塩基対である二重鎖の部分のみが、標的遺伝子配列(標的RNA)に対応する配列である旨の特定はなく、不連続を挟んで上記二重鎖に隣接する長さが1?20塩基対の第二の二重鎖の部分も、標的遺伝子配列に対応する配列であることを本願発明1は許容するものである。
このように、本願発明1も標的遺伝子配列に対応する分子の鎖の中に不連続(ニック)がある態様も包含することから、請求人の上記主張は失当である。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例6に記載された発明であることから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-20 
結審通知日 2017-06-26 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2011-527823(P2011-527823)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北田 祐介  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 高堀 栄二
大宅 郁治
発明の名称 修飾を有するdsRNAによる遺伝子発現の特異的な阻害のための組成物および方法  
代理人 相原 礼路  

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