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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1334882
審判番号 不服2016-16248  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-31 
確定日 2017-11-24 
事件の表示 特願2015-518263「端子金具の接続構造」拒絶査定不服審判事件〔2014年11月27日国際公開、WO2014/189054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、2014年5月20日(優先権主張2013年5月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月8日付けで拒絶査定(発送日:同年8月16日)がされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において平成29年4月6日付けで拒絶の理由を通知し、同年6月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

そして、本願の請求項1?5に係る発明は、平成29年6月5日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
複数の第1の電線が接続される第1の端子金具と、
複数の第2の電線が接続される第2の端子金具と、を備え、
前記第1の端子金具又は前記第2の端子金具の一方を単独で相手側端子接続部あるいは接地部に接続固定可能な端子金具の接続構造であって、
前記第1の端子金具と前記第2の端子金具とを組み合わせて前記相手側端子接続部あるいは接地部に接続固定する端子金具の接続構造であり、
前記第1の電線又は前記第2の電線のうち、
一方の電線は、銅(銅合金を含む)電線単独で構成され、
他方の電線は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)電線単独で構成され、
前記第1の端子金具は、
取付孔を有する平板状の前記第1の端子本体と、
前記取付孔から離れた前記第1の端子本体の外縁部から延出すると共に複数の前記第1の電線が接続される第1の電線接続部と、を備え、
前記第2の端子金具は、
寸法及び形状が前記第1の端子本体と略同一の平板状に形成されて前記第1の端子本体に積層可能な第2の端子本体と、
前記第1の端子金具の前記第1の電線接続部とは前記取付孔を挟んで逆側に位置する前記第2の端子本体の外縁部から延出すると共に複数の前記第2の電線が接続される第2の電線接続部と、を備え、
前記第1の端子金具と前記第2の端子金具とを積層して前記相手側端子接続部あるいは前記接地部に接続固定する端子金具の接続構造であり、
前記第1の端子本体と前記第1の電線接続部との境界部分の表面には、前記第1の電線接続部の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断用溝が形成され、
前記第2の端子本体と前記第2の電線接続部との境界部分の表面には、前記第2の電線接続部の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断用溝が形成された、端子金具の接続構造。」

第2 引用文献及びその記載事項
1 当審の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平8-250165号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「アース構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 互いに間隔を空けて設けられた複数本のアース用のスタッドに機器側からのアース電線をアース接続するものにおいて、
前記各スタッドに嵌合されて固定可能な複数のアース端子部と、これらアース端子部間を連ねる渡り導通部とを一体に有する複合端子金具と、この複合端子金具の各アース端子部に重ねた状態で前記スタッドに嵌合固定され前記機器側からのアース電線が接続された接続端子金具とを備えてなるアース構造。」

(2)「【0010】
【実施例】
<実施例1>以下、本発明を具体化した実施例1を図1乃至図3を参照して説明する。接地されたアース用のパネル(図示せず)には、例えば30ミリ程度の予め設定された所定間隔を空けて2つの雌ねじ孔(図示せず)が形成されており、その各雌ねじ孔には、夫々、雄ネジ部30Aと鍔部30Bとを有するスタッドボルト30がねじ込みによって取り付けられるようになっている。そして、このスタッドボルト30が取り付けられる2つの位置がアース端子となる。
【0011】このスタッドボルト30に嵌合されるアース用の端子金具として、1枚の複合端子金具10と2枚の接続端子金具20とが用いられる。複合端子金具10は、2つのアース端子部11,11と、この両アース端子部11,11を連結する渡り導通部17と、電線接続部19とから構成される。各アース端子部11は、互いに間隔を空けて平行に配された板状をなす2つの取付部12,12と、この両取付部12,12の一方の端部同士の間に差し渡すように配された板状をなす係止部13と、両取付部12,12の係止部13とは反対側の端部同士の間に差し渡すように配された板状をなす受け部14とからなる。両取付部12,12は互いに同一面上にあり、係止部13と受け部14とは互いに同一面上にある。そして、この係止部13と受け部14は両取付部12,12に対して板厚分だけ段差を設けた高さに設定されている。
・・・(中略)・・・
【0014】渡り導通部17は長方形状の平坦な板状をなし、この渡り導通部17の両端部の一方の側縁が、各アース端子部11の一方の取付部12の係止部13側の端部の外側縁に連続しており、これによって渡り導通部17と上記2つのアース端子部11,11とが一体をなしている。この渡り導通部17で連結された両アース端子部11,11は、その受け部14,14が互いに反対方向を向き、且つ、嵌合孔16,16の中心間の距離が上記2つのアース端子間の距離と一致するような位置関係となっている。
・・・(中略)・・・
【0017】また、電線接続部29は、一方の取付部22の係止部23側の端部においてその係止部23とは反対側の外側縁を延出した部分に設けられていて、複合端子金具10の電線接続部19と同じく、機器側からのアース電線Wの樹脂被覆Waに圧着されるインシュレーションバレル29Aと、アース電線Wの芯線Wbに圧着されるワイヤバレル19Bとからなる。」

(3)「【0029】<実施例4>次に、本発明を具体化した実施例3(当審注:「実施例3」は、「実施例4」の誤記。)を図7及び図8を参照して説明する。本実施例4は、上記実施例1において複合端子金具と接続端子金具のアース端子部の形状を異ならせたものである。他の構成は上記実施例1と同じであるため、同一構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0030】複合端子金具60のアース端子部61と接続端子金具70のアース端子部71は、共に、正方形をなし、スタッドボルト30が嵌入可能な円形の嵌合孔66,76が形成されている。また、複合端子金具60のアース端子部61には一対の弾性押圧片62,62がオーバーハングするように形成され、この弾性押圧片62には下側(アース端子部61の上面側)に突出する突起63が形成されている。一方、接続端子家具70のアース端子部71には、突起63と対応する係止孔72が形成されている。
【0031】かかる複合端子金具60と接続端子金具70を用いてアース電線Wをアース接続する際には、複合端子金具60に対して外側から接続端子金具70をスライドさせて弾性押圧片62を弾性撓みさせつつ組付けると、嵌合孔66,76同士が整合したところで突起63と係止孔72とが嵌合し、この嵌合状態は弾性押圧片62の弾力によって保持される。これにより、複合端子金具60と接続端子金具70とは一体に組み付けられるから、これをアース用パネルに載置してその雌ネジ孔に嵌合孔66,76を整合させ、そこにスタッドボルト30をねじ込む。」

(4)上記記載事項及び【図7】を参照すると、接続端子金具70又は複合端子金具60は、一方を単独でアース用のスタッドに接続固定可能であること、電線接続部29は、嵌合孔76から離れたアース端子部71の外側縁から延出していること、並びに渡り導通部17及び電線接続部19は、接続端子金具70の電線接続部29とは嵌合孔76を挟んで逆側に位置するアース端子部61の外側縁から延出していることが、看取される。

上記の記載事項、認定事項、及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、実施例4として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数の芯線Wbが接続される接続端子金具70と、
複数の芯線Wbが接続される複合端子金具60と、を備え、
前記接続端子金具70又は前記複合端子金具60の一方を単独でアース用のスタッドに接続固定可能な端子金具のアース構造であって、
前記接続端子金具70と前記複合端子金具60とを組み合わせて前記アース用のスタッドに接続固定する端子金具のアース構造であり、
前記接続端子金具70は、
嵌合孔76を有する平板状のアース端子部71と、
前記嵌合孔76から離れたアース端子部71の外側縁から延出すると共に複数の芯線Wbが接続される電線接続部29と、を備え、
複合端子金具60は、
寸法及び形状が前記接続端子金具70と略同一の平板状に形成されて前記接続端子金具70に積層可能なアース端子部61と、
前記接続端子金具70の前記電線接続部29とは前記嵌合孔76を挟んで逆側に位置する前記アース端子部61の外側縁から延出すると共に複数の前記芯線Wbが接続される渡り導通部17及び電線接続部19と、を備え、
前記接続端子金具70と前記複合端子金具60とを積層して前記アース用のスタッドに接続固定する端子金具のアース構造。」

2 当審の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2013-55030号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「防食機能付きコネクタ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0002】
従来、導体を有する電線の端末には、その導体を構成する金属と同系の金属(一般には銅または銅合金)からなる端子が装着されるのが一般的であったが、近年、軽量なアルミニウム系材料からなる導体を有する、いわゆるアルミ電線の使用に伴い、当該電線の導体を構成する金属と端子を構成する金属との相違に起因する腐食、すなわち、異種金属同士が接触することによる腐食が問題となっている。例えば、電線に含まれるアルミニウム製導体に銅製の端子が圧着された場合、銅の標準電極電位は+0.34Vであり、アルミニウムの標準電極電位は-1.66Vであることから、前記導体と前記端子との間に2.00Vもの大きな標準電極電位差が存在することになる。従って、両者の接触部位に、例えば雨天時の走行や洗車、或いは結露などによって水分が付着すると、電気的に卑であるアルミニウム導体のイオン化が進行してその腐食が進行することになる。
【0003】
このような腐食を防ぐための手段として、従来は、異種金属同士の接触部位に対し、耐水性の塗装、熱収縮チューブの被着、あるいは樹脂のインサートモールド成形を施すことで、その接触部位への水分の付着を方防止する技術が知られている。」

(2)「【0018】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態では、本発明に係る防食機能付コネクタとして図略の雄コネクタと結合可能な雌コネクタを開示するが、本発明はこれに限定されない。例えば、雄コネクタや、複数の電線同士を短絡させるためのジョイントコネクタ、複数のアース用電線をアース部位に一括接続するためのアース用コネクタなどにも本発明は適用可能である。
【0019】
図1?図12は、第1の実施の形態に係るコネクタを示し、このコネクタは、複数の雌型の端子10と、これらの端子10を一括して収容するハウジング20と、防食体30と、リテーナ40とを備える。
【0020】
前記各端子10は、導体52及びこれを被覆する絶縁被覆54を有する複数の電線50の端末にそれぞれ装着されるとともに、当該導体52を構成する金属と異なる金属により構成される。この実施の形態では、電線50としてその導体がアルミニウムからなる、いわゆるアルミニウム電線が用いられるのに対し、前記各端子10は銅または銅合金からなる板材により構成される。」

(3)「【0048】
本発明に係るコネクタは、その端子として、当該端子が装着される電線の導体と異なる金属からなるものを少なくとも含んでおればよく、これに該当しない端子も併せて含むものを除外する趣旨ではない。例えば、本発明に係るコネクタは、装着されるべき電線を構成する導体と異なる金属からなる複数の端子(例えばアルミニウム製導体を有する電線に装着される銅製または銅合金製の複数の端子)と、装着されるべき電線を構成する導体と同じ金属からなる端子(例えば銅または銅合金製導体を有する電線に装着される銅または銅合金製の端子)とを併有するものであってもよい。」

3 当審の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭55-96584号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「アルミニウム導体電線の端子付方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「しかしながら、自動車などの軽量化要求などの理由で、電線導体としてアルミニウム線を用いたい場合などには、アルミニウム電線固有の、表面に絶縁性酸化皮膜を形成しやすい特性や黄銅などの銅合金端子材料との熱膨張率の差が大きいことや、応力緩和が発生しやすい特質のために、このような自動車内配線用電線のような小電力用細物電線の接続については、圧着法による端子付法では、種々の工夫がなされてきたにも拘らず、その電気的接続という点で不充分なものであった。
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、従来の銅線圧着に劣らず高能率で、かつ信頼性の高い端子付を行う方法を提供せんとするもので、さらに配線に用いられる電線に銅導体電線とアルミニウム導体電線が混用されても、少なくとも端子金具のオス型又はメス型形状の電気接続部が従来の銅線用端子と同一形状で、銅線用端子とアルミニウム線用端子が相互に互換性を有する圧着端子金具が使用できる端子付方法を提供せんとするものである。」(1ページ右下欄3行?2ページ左上欄2行)

(2)「本発明方法は、配線に用いられる電線に銅導体とアルミニウム導体が混用されても、同じ型の圧着端子金具を使用することができ、相互に互換性を有するので、端子付作業上便利である利点を有する。」(3ページ右下欄2行?6行)

4 本願優先日前に頒布された刊行物である特開2003-132970号公報(以下、「周知文献A」という。)には、「組み合わせアース端子」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1乃至図8は第1実施形態を示す。第1実施形態の組み合わせアース端子は第1アース端子10と第2アース端子20とからなり、自動車に配索される異なるワイヤハーネスの電線w1、w2の端末に、夫々第1アース端子10、第2アース端子10が圧着接続されている。これら上記第1アース端子10と第2アース端子20を重ねて車体PにまとめてボルトBで締め付け固定して、車体にアース接続される。車両解体時において、車体からワイヤハーネスを取り除く時には、1つのボルトBにより車体に固定されている電線w1と電線w2は異なるワイヤハーネスの電線であるため、別個に引っ張れることとなる。
【0015】第1アース端子10、第2アース端子20の基板は略L形状で、一側部に幅方向の両側より絶縁被覆バレル19A、29Aと芯線バレル19B、29Bを突設して電線接続部19、29とし、側方に屈折した部分を車体固定部11、21としている。この車体固定部11、21の中央にボルト穴H1、H2を設け、その両側に重ね合わせる相手方の車体固定部とのロック片13、14、23、24と係止溝15、25とを設けている。
【0016】車体固定部11は、詳しくは、段差部13b、14bを設けて下方に突出させたロック片13、14を電線接続部19の軸線と垂直方向に設け、該ロック片13の上面に形止爪13aを突設し、該ロック片14には形止孔14aを穿設している。車体固定部21は、詳しくは、段差部23b、24bを設けて上方に突出させたロック片23、24を電線接続部29の軸線と垂直方向に設け、該ロック片23に形止孔13aを穿設し、該ロック片14の下面には形止爪14aを突設している。
【0017】上記電線接続部19、29から車体固定部11、21が屈曲する根元部分17、27には、その両端縁を折り返して補強リブ18、28を設け、補強リブ18、28は電線接触部19の軸線方向Xと平行な外端縁に沿って突出している。
【0018】上記根元部分17には、第1アース端子10の車体固定部11と第2アース端子20の車体固定部21とを重ね合わせた状態で、相手方アース端子10(20)の車体固定部11(21)の外縁に沿うと共に該車体固定部11(21)に隠れずに外部から見える位置に断面V形状の薄肉部26(16)からなる易破壊部を設けている。上記相手方アース端子10(20)の車体固定部の外縁に沿う位置は、基板の屈曲部内端位置から、補強リブ18(28)に沿って先端まで位置するL字状の横断ラインとなる。上記薄肉部16、26は上記L字状の横断ラインに沿って位置し、根元部分17、27の一端から他端にかけて延在する。
【0019】第1アース端子10と第2アース端子20との組み合わせ手順は、第2アース端子20のロック片24が第1アース端子10の挿通孔H1に位置するように第2アース端子20を第1アース端子10の下方より重ねる。その状態で、第1・第2アース端子10、20を近接方向にスライドさせると、図2に示すように、段差部13b、14b、23b、24bと形止溝15、25とが互いに嵌合されると共に、係止爪13a、24aが係止孔14a、23aに互いに係止された状態で、第1アース端子10と第2アース端子20とが積層固定される。」

(2)「【0023】図7(A)に示すように、第1アース端子10に圧着されたアース線w1が引っ張られると、ボルトBにより締結固定された車体固定部11の根元部分17と電線w1により引っ張られる電線接続部19との間に設けられた薄肉部16に応力が集中し、図4(B)に示すように、薄肉部16で容易に破断することによりアース線w1は根元部分17と共に離脱する。この際、薄肉部16はワッシャRに覆い被されずにワッシャRの押圧力が作用せず、かつ、電線接続部19と同一軸線方向の補強リブ18で根元部分17の剛性を高めていることにより、薄肉部16に応力が集中し、薄肉部16は容易に破断する。よって、アース線w1に接続された電線接続部19はボルトBで固定された車体固定部11から分離され、アース線w1を車体より完全に取り外すことができる。」

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、周知文献Aには、次の事項が記載されている(以下、「周知文献Aに記載された事項」という。)。
「第1アース端子10は、
ボルト穴H1を有する平板状の車体固定部11と、
前記ボルト穴H1から離れた前記車体固定部11の外縁から延出すると共に複数の電線w1が接続される根元部分17及び電線接続部19と、を備え、
第2アース端子20は、
寸法及び形状が前記車体固定部11と略同一の平板状に形成されて前記車体固定部11に積層可能な車体固定部21と、
前記第1アース端子10の前記根元部分17及び電線接続部19とは前記ボルト穴H1を挟んで逆側に位置する前記車体固定部21の外縁から延出すると共に複数の電線w2が接続される根元部分27及び電線接続部29と、を備え、
前記第1アース端子10と前記第2アース端子20とを積層して車体Pに接続固定する組み合わせアース端子であり、
前記車体固定部11と前記根元部分17及び電線接続部19との境界部分の表面には、前記根元部分17及び電線接続部19の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる薄肉部16からなる易破壊部が形成され、
前記車体固定部21と前記根元部分27及び電線接続部29との境界部分の表面には、前記根元部分27及び電線接続部29の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる薄肉部26からなる易破壊部が形成すること。」

5 本願優先日前に頒布された刊行物である特開2003-203687号公報(以下、「周知文献B」という。)には、「端子金具」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0076】(第2実施形態)以下、本発明にかかる端子金具の第2実施形態について図5?図8を参照して説明する。なお、上記実施形態と同一構成部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図5は、本発明にかかる端子金具の第2実施形態を示す斜視図、図6は、図5に示す端子金具に形成されている締結部を一体とした状態の斜視図、図7は、図6に示す端子金具を車体に固定した状態の平面図である。
【0077】本実施形態の端子金具41は、図5?図7に示すように、複数の電線(不図示)にそれぞれ加締められる電線加締め部5を有した板状の複数の金具本体43a,43bと、これらの金具本体43a,43bにそれぞれ破断可能な破断部45,45を介して連結され、締結具であるボルト7を挿通する挿通孔47を有した複数の締結部49a,49bと、これらの締結部49a,49bにそれぞれ設けられて複数の締結部49a,49bを相互に係止可能とする係止部51,51とを備えている。
【0078】金具本体43a,43bは、図5に示すように、並列に配置したときに相互に線対称となる形状に形成され、同一構成である。したがって、ここでは、一方の金具本体43aについて説明し、他方の金具本体42bについては、一方の金具本体43aと同一構成部分に同一符号を付しておく。金具本体43aは、長尺板状の金属板からなり、長手方向の一側に端面から長手方向に沿って突出部53が突設され、他側に電線加締め部5が設けられている。
【0079】突出部53は、図5?図7に示すように、幅方向の一側縁および他側縁が金具本体43aの長手方向に沿って設けられている。この突出部53の一側縁は、金具本体43a,43bの並列状態で金具本体42bの突出部53の一側縁と相互に対向するようになっている。また、突出部53の一側縁は、基端側が長手方向の中間部分まで次第に突出部53の幅方向の寸法を小さくするように湾曲している。
【0080】一方、突出部53の幅方向の他側縁には、長手方向に沿って形成されてボルト7の締結方向に対する反対側である上方に突出した棒状のリブ55が設けられており、そのリブ55により突出部53の剛性が向上されている。
【0081】このような金具本体43a,43bは、長手方向の一側にそれぞれ破断部45,45を介して締結部49a,49bが連結されている。破断部45,45および締結部49a,49bは、図5に示すように、金具本体43a,43bの並列状態で点対称となる同一構成であり、金具本体43a,43bと同様に一方の破断部45および締結部49aについて説明し、他方の破断部および締結部49bについは、一方の破断部45および締結部49aと同一構成部分に同一符号を付しておく。
【0082】破断部45は、図5?図7に示すように、突出部53の一側縁に沿って設けられている。すなわち、破断部45は、基端側で一部が湾曲した状態となっている。また、破断部45は、突出方向の中間部分の上下面がそれぞれ凹状に形成され、金具本体43aの板厚に対して薄肉状で可撓性を有している。そして、破断部45は、金具本体43aと後述する締結部49aとの間でそれぞれ上下に引っ張られることにより破断力である剪断力が発生するようになっている。
【0083】上述した締結部49aは、略矩形板状に形成され、幅方向の一側が破断部45に連結されており、他側に挿通孔47を挟んで金具本体43aの長手方向に対向する対向板部57a,57bを有している。この締結部49aは、金具本体43aの一側に配置された対向板部57aの端縁が突出部53の先端縁と略面一となっている。そして、締結部49aは、対向板部57a,57b間に係止部51が設けられている。
・・・(中略)・・・
【0087】このように構成された端子金具41を用いる場合には、予め被覆を剥離された複数の電線の端末にそれぞれ電線加締め部5,5を加締めておき、締結部49a,49bを係止部51,51により相互に係止して一体とする。そして、一体とされた締結部49a,49bを上記実施形態と同様にしてボルト7により車体13に締結する。
・・・(中略)・・・
【0091】このように車体13に固定された端子金具41を車体13から取り外すときには、金具本体43a,43bの他側を矢印のようにそれぞれ上方に引っ張る。金具本体43a,43bの他側を上方に引っ張ると、金具本体43a,43bが、締結部49a,49bとの間で破断部45,45を撓ませながら車体13に当接している突出部53,53の先端を支点として他側が上方に移動し、締結部49a,49bに対して回動することとなる。
【0092】そして、破断部45,45は、金具本体43a,43bの回動に応じて締結部49a,49bと突出部53,53との間で上下に引っ張られ、突出部53,53の基端側から剪断力が発生してその剪断力により突出部53,53の基端側から先端側に向けて次第に破断していく。」

(2)【図5】を参照すると、図面左側の端子金具41(以下、「一方の端子金具41」という。)と、図面右側の端子金具41(以下、「他方の端子金具41」という。)とを備えた端子金具41が看取される。

上記記載事項、認定事項及び図面(特に、【図5】?【図8】を参照。)の記載を総合すると、周知文献Bには、第2実施形態として、次の事項が記載されている(以下、「周知文献Bに記載された事項」という。)。
「一方の端子金具41は、
挿通孔47を有する平板状の締結部49aと、
前記挿通孔47から離れた前記締結部49aの長手方向の一側から延出すると共に複数の電線が接続される金具本体43aと、を備え、
他方の端子金具41は、
寸法及び形状が前記締結部49aと略同一の平板状に形成されて前記締結部49aに積層可能な締結部49bと、
前記一方の端子金具41の前記金具本体43aとは前記挿通孔47を挟んで逆側に位置する前記締結部49bの長手方向の一側から延出すると共に複数の電線が接続される金具本体43bと、を備え、
前記一方の端子金具41と前記他方の端子金具41とを積層して車体13に接続固定する端子金具であり、
前記締結部49aと前記金具本体43aとの境界部分の表面には、前記金具本体43aの延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断部45が形成され、
前記締結部49bと前記金具本体43bとの境界部分の表面には、前記金具本体43bの延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断部45が形成されること。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「接続端子金具70」は、本願発明の「第1の端子金具」に相当する。
以下同様に、接続端子金具70に接続される「芯線Wb」は、「第1の電線」に、
「複合端子金具60」は、「第2の端子金具」に、
複合端子金具60に接続される「芯線Wb」は、「第2の電線」に、
「アース用のスタッド」は、「相手側端子接続部あるいは接地部」に、
「嵌合孔76」は、「取付孔」に、
「アース端子部71」は、「第1の端子本体」に、
「電線接続部29」は、「第1の電線接続部」に、
「アース端子部61」は、「第2の端子本体」に、
「渡り導通部17及び電線接続部19」は、「第2の電線接続部」に、
「端子金具のアース構造」は、「端子金具の接続構造」に、それぞれ相当する。

引用発明の「アース端子部71の外側縁」と、本願発明の「第1の端子本体の外縁部」とは、「第1の端子本体の外縁の部分」である点で共通する。
また、引用発明の「アース端子部61の外側縁」と、本願発明の「第2の端子本体の外縁部」とは、「第2の端子本体の外縁の部分」である点で、共通する。

以上のことから、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
「複数の第1の電線が接続される第1の端子金具と、
複数の第2の電線が接続される第2の端子金具と、を備え、
前記第1の端子金具又は前記第2の端子金具の一方を単独で相手側端子接続部あるいは接地部に接続固定可能な端子金具の接続構造であって、
前記第1の端子金具と前記第2の端子金具とを組み合わせて前記相手側端子接続部あるいは接地部に接続固定する端子金具の接続構造であり、
前記第1の端子金具は、
取付孔を有する平板状の前記第1の端子本体と、
前記取付孔から離れた前記第1の端子本体の外縁の部分から延出すると共に複数の前記第1の電線が接続される第1の電線接続部と、を備え、
前記第2の端子金具は、
寸法及び形状が前記第1の端子本体と略同一の平板状に形成されて前記第1の端子本体に積層可能な第2の端子本体と、
前記第1の端子金具の前記第1の電線接続部とは前記取付孔を挟んで逆側に位置する前記第2の端子本体の外縁の部分から延出すると共に複数の前記第2の電線が接続される第2の電線接続部と、を備え、
前記第1の端子金具と前記第2の端子金具とを積層して前記相手側端子接続部あるいは前記接地部に接続固定する端子金具の接続構造。

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明では、「前記第1の電線又は前記第2の電線のうち、一方の電線は、銅(銅合金を含む)電線単独で構成され、他方の電線は、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)電線単独で構成され」ているのに対して、
引用発明では、接続端子金具70に接続される芯線Wbの材質、及び複合端子金具60に接続される芯線Wbの材質は、いずれも明らかでない点。

[相違点2]
本願発明では、「前記第1の端子金具は、取付孔を有する平板状の前記第1の端子本体と、前記取付孔から離れた前記第1の端子本体の外縁部から延出すると共に複数の前記第1の電線が接続される第1の電線接続部と、を備え、前記第2の端子金具は、寸法及び形状が前記第1の端子本体と略同一の平板状に形成されて前記第1の端子本体に積層可能な第2の端子本体と、前記第1の端子金具の前記第1の電線接続部とは前記取付孔を挟んで逆側に位置する前記第2の端子本体の外縁部から延出すると共に複数の前記第2の電線が接続される第2の電線接続部と、を備え、前記第1の端子金具と前記第2の端子金具とを積層して前記相手側端子接続部あるいは前記接地部に接続固定する端子金具の接続構造であり、前記第1の端子本体と前記第1の電線接続部との境界部分の表面には、前記第1の電線接続部の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断用溝が形成され、前記第2の端子本体と前記第2の電線接続部との境界部分の表面には、前記第2の電線接続部の延出方向側の端部から前記延出方向と反対の方向に向けて延びる破断用溝が形成され」との構成を備えているのに対して、
引用発明では、「前記接続端子金具70は、嵌合孔76を有する平板状のアース端子部71と、前記嵌合孔76から離れたアース端子部71の外側縁から延出すると共に複数の芯線Wbが接続される電線接続部29と、を備え、複合端子金具60は、寸法及び形状が前記接続端子金具70と略同一の平板状に形成されて前記接続端子金具70に積層可能なアース端子部61と、前記接続端子金具70の前記電線接続部29とは前記嵌合孔76を挟んで逆側に位置する前記アース端子部61の外側縁から延出すると共に複数の前記芯線Wbが接続される渡り導通部17及び電線接続部19と、を備え、前記接続端子金具70と前記複合端子金具60とを積層して前記アース用のスタッドに接続固定する端子金具のアース構造」である点。

第4 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
従来、銅製の導体からなる電線が銅製の端子に装着されるのが一般的であったが、近年、軽量なアルミニウム製の導体からなる電線が銅製の端子に装着することが行われている(前記「第2 2(1)及び(2)」を参照)。
ここで、各々の端子に接続される導体の材質は、各々の端子に接続する機器側からのアース電線の材質、軽量化の必要性、コスト等々に応じて定める設計事項である。
そして、アルミニウム製導体からなる電線と、銅製導体からなる電線の併用も、一般に行われている事項(以下、「周知技術1」という。)である(前記「第2 2(3)」、及び前記「第2 3」を参照。)。
そうすると、引用発明において、上記周知技術1を適用して、アルミニウム製導体からなる電線に装着される銅製の端子と、銅製導体からなる電線に装着される銅製の端子との併用により、接続端子金具70に接続される芯線Wbの材質を銅(又はアルミニウム)とし、複合端子金具60に接続される芯線Wbの材質をアルミニウム(又は銅)とすることにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
周知文献Aに記載された事項の「第1アース端子10」は、本願発明の「第1の端子金具」に相当する。
以下同様に、「ボルト穴H1」は、「取付孔」に、
「車体固定部11」は、第1の端子本体」に、
「外縁」は、「外縁部」に、
「電線w1」は、「第1の電線」に、
「根元部分17及び電線接続部19」は、「第1の電線接続部」に、
「第2アース端子20」は、「第2の端子金具」に、
「車体固定部21」は、「第2の端子本体」に、
「電線w2」は、「第2の電線」に、
「根元部分27及び電線接続部29」は、「第2の電線接続部」に、
「車体P」は、「相手側端子接続部あるいは接地部」に、
「組み合わせアース端子」は、「端子金具の接続構造」に、
「薄肉部16からなる易破壊部」は、第1の端子金具の「破断用溝」に、
「薄肉部26からなる易破壊部」は、第2の端子金具の「破断用溝」に、それぞれ相当する。
そうすると、周知文献Aには、上記相違点2に係る本願発明の構成が記載されている。

また、周知文献Bに記載された事項の「一方の端子金具41」は、「第1の端子金具」に相当する。
以下同様に、「挿通孔47」は、「取付孔」に、
「締結部49a」は、「第1の端子本体」に、
「長手方向の一側」は、「外縁部」に、
一方の端子金具41の「電線」は、「第1の電線」に、
「金具本体43a」は、突出部53及び電線加締め部5が設けられているから、「第1の電線接続部」に、
「他方の端子金具41」は、「第2の端子金具」に、
「締結部49b」は、「第2の端子本体」に、
他方の端子金具41の「電線」は、「第2の電線」に、
「金具本体43b」は、突出部53及び電線加締め部5が設けられているから、「第2の電線接続部」に、
「車体13」は、「相手側端子接続部あるいは接地部」に、
「端子金具」は、「端子金具の接続構造」に、
「破断部45」は、「破断用溝」に、それぞれ相当する。
そうすると、周知文献Bには、上記相違点2に係る本願発明の構成が記載されている。

また、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2011-222317号公報(特に、【図2】を参照。)にも、上記相違点2に係る本願発明の構成が記載されている。

このように、上記相違点2に係る本願発明の構成は、本願優先日前に周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であったといえる。
そうすると、引用発明において、上記周知技術2を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、並びに周知技術1及び2から当業者が予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
以上のことから、本願発明は、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-22 
結審通知日 2017-09-26 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2015-518263(P2015-518263)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 端子金具の接続構造  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  

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