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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1334885 |
審判番号 | 不服2016-17784 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-29 |
確定日 | 2017-11-24 |
事件の表示 | 特願2013-548212「樹脂組成物、プリプレグ及び積層板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年6月13日国際公開、WO2013/084819〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月30日(優先権主張 平成23年12月7日)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月22日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年8月24日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年11月29日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月6日付けで前置報告がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年11月29日に提出された手続補正書により適法に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したシアン酸エステル化合物(A)、エポキシ樹脂(B)及び無機充填材(C)を少なくとも含有し、 前記無機充填材(C)が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、10?300質量部含まれる、 プリプレグ用樹脂組成物。」 第3 原査定の理由 原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし11に係る発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。 第4 特許法第29条第2項(進歩性) 1.引用例の記載 本願の優先日前に頒布された下記の刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加した。 (1)特開昭52-154857号(原査定で引用された引用文献1と同じ。以下、「引用例」という。) (1ア)「1. シアン酸エステル樹脂(A)にフェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)を配合した樹脂組成物であって、前記シアン酸エステル化物(B)は樹脂組成物全量に対し20乃至80重量%の範囲の量で配合されている熱硬化性のシアン酸エステル樹脂含有組成物 2. フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂がフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂である特許請求の範囲1に記載されたシアン酸エステル樹脂含有組成物」(特許請求の範囲) (1イ)「本発明者らは、シアン酸エステル樹脂硬化物の吸湿性を改良すべく種々な検討を行なった結果、耐湿性向上に著しい効果を発揮する配合材料を見出し、本発明に達した。すなわち、フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物をシアン酸エステル樹脂に配合させた後に硬化させれば、得られる硬化物は、シアン酸エステル樹脂硬化物が本来持っている耐熱性、誘電特性等の諸特性がそこなわれることなく吸湿性が改良され、したがって、シアン酸エステル樹脂の実用化に資するところが大きいことを見い出したのである。」(2頁左上欄6?17行) (1ウ)「本発明の樹脂組成物には、所望により金属塩化物、アミン類、イミダゾール類、フェノール類、有機金属塩類、金属キレート類などの硬化用触媒が添加される。さらには、所望によりエポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビスマレイミドなどのその他の樹脂類が配合されてもよく、プロモコールなどの耐燃剤を添加したり、その他の添加剤を加えることは随意行なえばよい。変性剤としてモノシアナート類を添加した樹脂組成物も用いることができる。」(2頁右下欄11?20行) (1エ)「実際的な使用態様の一つである積層板用含浸樹脂としてみると、本発明のシアン酸エステル樹脂含有組成物をガラス布に含浸させ、積層成形して得られたものは、十分に吸湿率が低く、誘電特性、耐熱性、銅箔との接着力等に優れ、積層板として実用に耐えるものであった。 このように吸湿性、吸水性、さらには誘電特性、耐熱性等に優れた硬化物を与える本発明のシアン酸エステル樹脂含有組成物は、従来のシアン酸エステル樹脂がごく限られた用途での応用に限られていたのに反して、積層板、塗料、注型物、接着剤、成形材料、フィルムなどの多くの用途に広い分野で実用化され得るものである。」(3頁右上欄7?20行) (1オ)「以下、実施例により本発明の組成物の特性を説明する。部および%は、通常、重量基準である。 実施例 1 市販されているフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(三菱瓦斯化学製造、商品名「ニカノールP-100」,平均分子量約860)をメチルエチルケトンに溶解し、トリエチルアミンの存在下臭化シアンと反応させフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物を得た。他方、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンを部分的に重合させて得られたB-ステージ状態のシアン酸エステル樹脂(数平均分子量約520)の所定量を120℃に加熱して溶融状態としておき、そこに上記シアン酸エステル化物の所定量を加え十分に攪拌混合した。得られた樹脂組成物に硬化触媒としてオクチル酸亜鉛を添加した後アルミ箔製の型枠に注型した。120℃に保った真空乾燥器中に入れて加熱脱泡した後昇温して、170℃で2時間、さらに200℃で5時間加熱処理した。強靭なすぐれた機械的強度を有する硬化成形物が得られた。 この硬化成形物を30mm×30mm×2mmの試験片に切断し、吸湿性の試験を行なった。実施した吸湿性に関する試験は以下の通りである。(以下のいずれの実施例においても同じ試験を行なった。) 吸湿性試験(1) 温度40℃、相対湿度90%の恒温・恒湿槽に200時間放置した場合の重量増加率を測定した。 吸湿性試験(2) 100℃沸とう水中に6時間浸した後の重量増加率を測定した。 吸湿性試験(3) 100℃沸とう水中に6時間浸した後に260℃の大豆油中に30秒浸した場合の外観変化を観察した。 また動的粘弾性率の測定によりガラス転移温度を求めた。シアン酸エステル樹脂とシアン酸エステル化物との配合割合を表に示すごとく種々変化させそれぞれについて上述の諸性能を測定した。各測定結果を第1表に示す。 」(3頁左下欄1行?4頁右上欄) (1カ)「実施例 3 実施例1で用いた2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンを部分的に重合させて得られたシアン酸エステル樹脂50部と、市販のフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(平均分子量約900)のシアン酸エステル化物50部をメチルエチルケトンに溶解し、さらにオクチル酸亜鉛0.2部、カテコール0.1部、2-エチル-4-メチルイミダゾール0.1部を添加して十分に攪拌混合して樹脂ワニスを得た。これをガラス布に含浸し、加熱乾燥して半硬化状態のプリプレグを作った。このプリプレグ5枚と銅箔を重ねて、温度190℃、圧力30Kg/cm^(2)で2時間熱圧着し銅張り積層板を得た。この積層板の特性を以下に示す。 吸湿性試験(1) 0.36% 同 上 (2) 0.45% 同 上 (3) 変化なし 誘電率(1MHz) 常態: 4.2 ;D-48/50:4.2 誘電正接(1MHz) 常態:0.0029;D-48/50:0.0035 銅箔接着強度 1.9Kg/cm」(4頁右下欄下から13行?5頁左上欄10行) (2)特開2004-182850号(原査定で引用された引用文献2と同じ。以下、「周知例1」という。) (2ア)「【請求項1】 非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)40?80重量%、下記一般式(1) 【化1】 (R1はベンゼン環又はビフェニル基、R2は水素又はフェニルシアネート基、R3は水素又はフェニルシアネート基、R4は水素又はメチル基、mは0又は1、nは0?10の整数) に示す構造単位を有するシアン酸エステル樹脂(B)15?50重量%、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂(C)5?20重量%、無機充填剤を(D)必須成分として含有する樹脂組成物と基材(E)からなるプリプレグ。 【請求項2】 非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1記載のプリプレグ。 【請求項3】 シアン酸エステル樹脂(B)が、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、3官能フェノール型シアン酸エステル樹脂からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1乃至2記載のプリプレグ。 【請求項4】 無機充填剤(D)が、水酸化アルミニウム、ベーマイト、焼成タルク、シリカ類、ガラス微粉末類からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1?3記載のプリプレグ。 【請求項5】 無機充填剤(D)の配合量が、非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)とシアン酸エステル樹脂(B)とビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂(C)の合計量 100重量部に対し、10?150重量部であることを特徴とする請求項1?4記載のプリプレグ。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のプリプレグを硬化して得られるプリント配線板材料用の積層板及び金属箔張り積層板。」(特許請求の範囲請求項1?6) (2イ)「本発明における非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)の配合量は40?80重量%の範囲であり、より好ましくは45?75重量%の範囲である。非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)の配合量が40重量%未満では、得られる積層板の耐湿性などが低下し、80重量%を超えると耐熱性などが低下し、本発明の目的に合致しない。」(段落【0012】) (2ウ)「無機充填剤(D)の配合量は、非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)とシアン酸エステル樹脂(B)とビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂(C)の合計量100重量部に対し、10?150重量部、好ましくは20?130重量部である。無機充填剤(D)の配合量が10重量部未満では耐燃性の向上効果が乏しく、150重量部を超えると基材への塗布性やハンダ耐熱性が低下し、本発明の目的に合致しない。」(段落【0022】) (3)特開2009-35728号(原査定で引用された引用文献3と同じ。以下、「周知例2」という。) (3ア)「【請求項1】 一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂(A)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)、シリコーンゴムパウダー(C)および無機充填材(D)からなる樹脂組成物。 【化1】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。) 【請求項2】 前記無機充填材(D)が溶融シリカであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項3】 前記無機充填材(D)の配合量がシアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対し、50?150部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項4】 ビスマレイミド化合物(F)をさらに含む請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1に記載の樹脂組成物と基材(E)とからなるプリプレグ。 【請求項6】 請求項5に記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。 【請求項7】 請求項5に記載のプリプレグと金属箔との積層物を硬化して得られる金属箔張り積層板。」(特許請求の範囲請求項1?7) (3イ)「積層板の熱膨張率を小さくする方法としては、無機フィラーを充填させる方法がある。無機フィラーの充填量が多くなると、得られた樹脂組成物が脆くなり、プリント配線板の層間接続で必要となるスルーホールを形成するドリル加工品質を低下させる。また、加工に用いるドリルビットの摩耗が早く、加工の生産性を著しく低下させるという問題があった。」(段落【0005】) (3ウ)「これらの中でも溶融シリカが低熱膨張性に優れるため好ましい。…無機充填剤(D)の配合量は、シアン酸エステル樹脂(A)と非ハロゲン系エポキシ樹脂(B)の合計配合量100重量部に対して、50?150重量部が好ましい。無機充填剤の配合量が多すぎると成形性が低下することがあることから、50?140重量部が特に好ましい。」(段落【0015】) (4)特開2004-175925号(原査定で引用された引用文献4と同じ。以下、「周知例3」という。) (4ア)「【請求項1】 非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)40?80重量%、下記一般式(1) 【化1】 (R1はベンゼン環又はビフェニル基、R2は水素又はフェニルシアネート基、R3は水素又はフェニルシアネート基、R4は水素又はメチル基、mは0又は1、nは0?10の整数) に示す構造単位を有するシアン酸エステル樹脂(B)20?60重量%、無機系難燃剤(C)を必須成分として含有する樹脂組成物と基材(D)からなるプリプレグ。 【請求項2】 非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1記載のプリプレグ。 【請求項3】 シアン酸エステル樹脂(B)が、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂、3官能フェノール型シアン酸エステル樹脂からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1乃至2記載のプリプレグ。 【請求項4】 無機系難燃剤(C)が、水酸化アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛からなる群から選択された1種もしくは2種以上であることを特徴とする請求項1?3記載のプリプレグ。 【請求項5】 無機系難燃剤(C)の配合量が、非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)とシアン酸エステル樹脂(B)の合計量 100重量部に対し、5?150重量部であることを特徴とする請求項1?4記載のプリプレグ。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のプリプレグを硬化して得られるプリント配線板材料用の積層板及び金属箔張り積層板。」(特許請求の範囲請求項1?6) (4イ)「本発明における非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)の配合量は40?80重量%の範囲であり、より好ましくは50?75重量%の範囲である。非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)の配合量が40重量%未満では、得られる積層板の耐湿性などが低下し、80重量%を超えると耐熱性などが低下し、本発明の目的に合致しない。」(段落【0012】) (4ウ)「本発明において使用される無機系難燃剤(C)とは、高分子材料に併用し、難燃効果を示す無機物であれば、特に限定されるものではない。代表的な無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛などのモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛などが挙げられ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。より好適なものとしては、水酸化アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛が挙げられる。この内、モリブデン酸亜鉛としては、モリブデン酸亜鉛を炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルクに担持したもの(ケムガード911A、B、C、シャーウィン・ウィリアムズ製)が好適である。 …無機系難燃剤(C)の配合量は、非ハロゲン系エポキシ樹脂(A)とシアン酸エステル樹脂(B)との合計量100重量部に対し、5?150重量部、好ましくは20?130重量部である。無機系難燃剤(C)の配合量が5重量部未満では難燃性の向上効果が乏しく、150重量部を超えると基材への塗布性やハンダ耐熱性が低下し、本発明の目的に合致しない。」(段落【0017】?【0018】) (5)国際公開2010/098037号(当審で新たに引用するもの。以下、「周知例4」という。) (5ア)「[請求項1] ガラスクロス(A)と、シアン酸エステル樹脂(B)、非ハロゲン系エポキシ樹脂(C)及び無機充填材(D)を含む樹脂組成物とから構成されるプリプレグにおいて、 前記ガラスクロス(A)は、1m^(2)当りの重量をW(g/m^(2))、厚みをt(μm)、縦糸の1インチ当りの打ち込み本数をX(本/インチ)、横糸の1インチ当りの打ち込み本数をY(本/インチ)とした時、XとYの合計が150?240であり、tが17?35であり、見かけ密度であるW/tの値が1.1?1.5であって、プリプレグ中のガラスクロス(A)の体積含有率が32%?42%であることを特徴とするプリプレグ。 [請求項2] 前記シアン酸エステル樹脂(B)が下記一般式(1)で示されるシアン酸エステル樹脂である請求項1に記載のプリプレグ。 【化1】 (式中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。) [請求項3] 請求項1又は2に記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。 [請求項4] 請求項1又は2に記載のプリプレグと金属箔との積層物を硬化して得られる金属箔張り積層板。」(請求の範囲請求項1?4) (5イ)「また、無機充填材(D)の配合量は、プリプレグを構成する樹脂組成物の33重量%?60重量%であることが好ましく、33重量%?57重量%であることがより好ましい。無機充填材(D)の配合量がプリプレグを構成する樹脂組成物の60重量%を超えると成形性が低下することがあり、一方、33重量%より小さいと熱膨張率が大きくなることがある。」(段落[0021]) (6)特開2009-161769号(当審で新たに引用するもの。以下、「周知例5」という。) (6ア)「【請求項1】 シアネート樹脂と、無機充填材とを含む樹脂組成物を基材に含浸して得られるプリプレグであって、 前記プリプレグを硬化して得られる硬化物の厚さ方向の膨張率(α_(1))が25ppm/℃以下となることを特徴とするプリプレグ。 【請求項2】 前記硬化物のガラス転移温度が210℃以上となる請求項1に記載のプリプレグ。 【請求項3】 更に、エポキシ樹脂を含むものである請求項1または2に記載のプリプレグ。 【請求項4】 更に、フェノール樹脂を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載のプリプレグ。 【請求項5】 前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物中30?80重量%である請求項1ないし4のいずれかに記載のプリプレグ。 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載のプリプレグを1枚以上有することを特徴とする積層板。」(特許請求の範囲請求項1?6) (6イ)「…前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物全体の30?80重量%が好ましく、特に40?70重量%が好ましく最も50?65重量%が好ましい。無機充填材の含有量が前記範囲内であると低熱膨張、低吸水とすることができる。」(段落【0016】) (6ウ)「前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1?55重量%が好ましく、特に2?40重量%が好ましく、最も5?20重量%が好ましい。樹脂が前記下限値未満では、シアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下する場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。」(段落【0028】) (7)特開2007-9217号(当審で新たに引用するもの。以下、「周知例6」という。) (7ア)「【請求項1】 シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマー、エポキシ樹脂および無機充填材を必須成分とする樹脂組成物。 【請求項2】 前記シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーは、ノボラック型シアネート樹脂及び/またはそのプレポリマーである請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項3】 前記シアネート樹脂は、樹脂組成物全体の5?60重量%である請求項1または2に記載の樹脂組成物。 【請求項4】 前記エポキシ樹脂は、アリールアルキレン型エポキシ樹脂である請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項5】 前記無機充填材は、平均粒径2μm以下の球状溶融シリカである請求項1または4のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項6】 前記無機充填材は、樹脂組成物全体の30?80重量%である請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸してなるものであるプリプレグ。 【請求項8】 請求項7に記載のプリプレグに金属箔を積層し、加熱加圧成形してなるプリント配線板。」(特許請求の範囲請求項1?8) (7イ)「前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1?55重量%が好ましく、特に2?40重量%が好ましい。樹脂が前記下限値未満では、シアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したり場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。」(段落【0016】) (7ウ)「前記無機充填材の含有量は、樹脂組成物全体の30?80重量%が好ましく、特に40?70重量%が好ましい。無機充填材が前記範囲内であると低熱膨張、低吸水とすることができる。」(段落【0018】) (8)特開2010-174242号(当審で新たに引用するもの。以下、「周知例7」という。) (8ア)「【請求項1】 下記式(1)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。 【化1】 [式中 R_(1)、及びR_(2)は、それぞれH、CH_(3)、またはC_(2)H_(5)である。] 【請求項2】 ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させて得られることを特徴とするビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。 【請求項3】 請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を必須成分とする樹脂組成物。 【請求項4】 請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を必須成分とする樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、および無機充填材を必須成分とする樹脂組成物。 【請求項6】 前記無機充填材は、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類である請求項5に記載の樹脂組成物。 【請求項7】 請求項3ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ 【請求項8】 請求項7に記載のプリプレグを1枚以上成形してなる積層板。 【請求項9】 請求項3ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層をフィルム上、または金属箔上に形成してなる樹脂シート。 【請求項10】 請求項7に記載のプリプレグ、または請求項9に記載の樹脂シートを請求項8に記載の積層板より作製された内層回路板の片面または両面に重ね合わせて加熱加圧成形してなる多層プリント配線板。 【請求項11】 請求項10に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。」(特許請求の範囲請求項1?11) (8イ)「前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1?55重量%が好ましく、特に2?40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。」(段落【0027】) (8ウ)「前記無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の20?80重量%が好ましく、特に30?70重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化物は、特に低熱膨張性に優れ、低吸水性である。」(段落【0037】) 2.引用例に記載された発明 引用例には、「実際的な使用態様の一つである積層板用含浸樹脂としてみると、本発明のシアン酸エステル樹脂含有組成物をガラス布に含浸させ、積層成形して得られたものは、十分に吸湿率が低く、誘電特性、耐熱性、銅箔との接着力等に優れ、積層板として実用に耐えるものであった」(摘示1.(1)(1エ))及び「樹脂ワニスを得た。これをガラス布に含浸し、加熱乾燥して半硬化状態のプリプレグを作った。このプリプレグ5枚と銅箔を重ねて、温度190℃、圧力30Kg/cm^(2)で2時間熱圧着し銅張り積層板を得た。」(摘示1.(1)(1カ))と記載されているから、引用例に係る樹脂組成物をプリプレグに用いることが記載されているといえる。 そして、このことと、引用例の摘示1.(1)(1ア)において、請求項2の記載を請求項1を引用しないで表現することとを総合すれば、引用例には、 「シアン酸エステル樹脂(A)にフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)を配合した樹脂組成物であって、前記シアン酸エステル化物(B)は樹脂組成物全量に対し20乃至80重量%の範囲の量で配合されている熱硬化性のプリプレグ用シアン酸エステル樹脂含有組成物。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3.周知例1?7の記載から導き出される事項 (1)周知例1?7の記載から導き出される事項(その1) 周知例1?7の上記摘示(1.(2)(2ア)、(3)(3ア)、(4)(4ア)、(5)(5ア)、(6)(6ア)、(7)(7ア)及び(8)(8ア))の特に下線部の記載から、「プリプレグ用樹脂組成物において、シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)とエポキシ樹脂とを併用すること」が広く知られており、さらに同じく上記摘示(1.(2)(2イ)、(4)(4イ)、(6)(6ウ)、(7)(7イ)及び(8)(8イ))の特に下線部の記載から、「エポキシ樹脂を配合することにより、耐湿性等に優れるものとなること」が広く知られていたことが認められる。 そうすると、これらの記載を総合すると、周知例1?7の記載から、「プリプレグ用樹脂組成物において、シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)に対し、耐湿性の向上を目的として、エポキシ樹脂を配合すること」が広く知られていたことが導き出されると認められる(以下、当該事項を「周知事項1」という。)。 (2)周知例1?7の記載から導き出される事項(その2) そして、周知例1?7の上記摘示(1.(2)(2ア)、(3)(3ア)、(3イ)、(4)(4ア)、(5)(5ア)、(6)(6ア)、(7)(7ア)及び(8)(8ア))の特に下線部の記載から、「シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)(とエポキシ樹脂と)を配合してなるプリプレグ用樹脂組成物において、無機充填材を配合すること」が広く知られており、さらに同じく上記摘示(1.(2)(2ウ)、(3)(3ウ)、(4)(4ウ)、(5)(5イ)、(6)(6イ)、(7)(7ウ)及び(8)(8イ))の特に下線部の記載から、「無機充填材を配合することにより、難燃性や低熱膨張性、低吸水性等に優れるものとなること」が広く知られていたということが認められる(なお、周知例3においては、「無機系難燃剤」と記載されているものの、効果において難燃性を挙げている点で他の周知例の「無機充填材」と共通するものであると認められることから、他の周知例と併せ含めた。)。 そうすると、これらの記載を総合すると、周知例1?7の記載から、「シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)(とエポキシ樹脂と)を配合してなるプリプレグ用樹脂組成物において、難燃性や低熱膨張性、低吸水性の向上を目的として、無機充填材を配合すること」が広く知られていたことが導き出されると認められる(以下、当該事項を「周知事項2」という。)。 (3)周知例1?7の記載から導き出される事項(その3) また、周知例1?3の上記摘示(1.(2)(2ウ)、(3)(3ア)及び(4)(4ア))の特に下線部の記載から、「シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)とエポキシ樹脂と無機充填材とを配合してなるプリプレグ用樹脂組成物において、無機充填材の配合割合が、シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)とエポキシ樹脂との合計100重量部に対し、50?150重量部程度であること」が広く知られており、さらに同じく周知例1?7の上記摘示(1.(2)(2ウ)、(3)(3ウ)、(4)(4ウ)、(5)(5イ)、(6)(6イ)、(7)(7ウ)及び(8)(8イ))の特に下線部の記載から、「無機充填材の配合割合により、少なすぎれば耐燃性、熱膨張性等に劣り、多すぎれば成形性、基材への塗布性やハンダ耐熱性が低下すること」や「無機充填材の配合割合を所定の範囲内とすれば、低熱膨張性に優れ、低吸水性であること」が広く知られていたことが導き出されると認められる(以下、当該事項を「周知事項3」という。)。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)」は本願発明における「フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したシアン酸エステル化合物(A)」に相当する。 そして、引用発明において「シアン酸エステル樹脂(A)」を含有する点は、本願発明においては、「フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したシアン酸エステル化合物(A)、エポキシ樹脂(B)及び無機充填材(C)を少なくとも含有し」と特定されており、他の成分を含有することを除外するものではないし、むしろ、本願明細書には、「本実施形態の樹脂組成物は、上述したシアン酸エステル化合物(A)以外のシアン酸エステル化合物(以下、『他のシアン酸エステル化合物』ともいう。)を含有していてもよい。他のシアン酸エステル化合物としては、一般式R-O-CNで表される化合物(式中、Rは有機基である。)であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールF型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールE型シアン酸エステル化合物、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、クレゾールノボラック型シアン酸エステル化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型シアン酸エステル化合物、テトラメチルビスフェノールF型シアン酸エステル化合物、ビフェノール型シアン酸エステル化合物、フェノールアラルキル型シアン酸エステル化合物、キシレノールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及びこれらのプレポリマー等が挙げられるが、これらに特に限定されない。」(段落【0035】)と記載されていることからも、相違点ではない。 そうすると、両者は、 「フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂をシアネート化したシアン酸エステル化合物(A)を少なくとも含有する、 プリプレグ用樹脂組成物。」 である点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。 [相違点1] 本願発明では「エポキシ樹脂(B)」「を少なくとも含有し」と特定するものであるのに対して、引用発明では当該化合物を含有することに関し特に特定されていない点。 [相違点2] 本願発明では「無機充填材(C)を少なくとも含有し」「前記無機充填材(C)が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計100質量部に対して、10?300質量部含まれる」と特定するものであるのに対して、引用発明では当該化合物を当該配合比で含有することに関し特に特定されていない点。 5.判断 (1)相違点1について 引用例には、「本発明の樹脂組成物には、…所望によりエポキシ樹脂…などのその他の樹脂類が配合されてもよく」(摘示1.(1)(1ウ))と記載されているから、引用発明において、さらにエポキシ樹脂を添加することが示唆されている。 また、プリプレグ用樹脂組成物において、耐湿性の向上を目的として、シアン酸エステル樹脂とエポキシ樹脂とを併用することは、上記3.(1)で述べたとおり周知事項1として認められることである。 そうすると、引用発明において、シアン酸エステル樹脂の一種であるフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)に、耐湿性の向上を目的として、当該周知事項1を適用して、さらにエポキシ樹脂を配合することは、周知技術に基いて当業者が容易になし得ることであるといえ、その効果についても格別のものであるとはいえない。 (2)相違点2について 引用例には、引用発明に係る樹脂組成物に対し、さらに充填剤を添加することに関し明記はされていないものの、「本発明の樹脂組成物には、…その他の添加剤を加えることは随意行なえばよい」(摘示1.(1)(1ウ))と記載されているとおり、引用発明において、さらにその他の添加剤を添加することが示唆されている。 そして、シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)(とエポキシ樹脂と)を配合してなるプリプレグ用樹脂組成物において、難燃性や低熱膨張性、低吸水性の向上を目的として、無機充填材を配合することは、上記3.(2)で述べたとおり周知事項2として認められることである。 そうすると、引用発明に係るシアン酸エステル樹脂の一種であるフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)に、難燃性や低熱膨張性、低吸水性の向上を目的として、当該周知事項2を適用して、さらに無機充填材を配合することは、周知技術に基いて当業者が容易になし得ることであるといえ、その際、当該無機充填材の配合量を特定するに際し、上記3.(3)で述べたとおりの周知事項3を適用して、シアン酸エステル樹脂(シアネート樹脂)とエポキシ樹脂との合計100重量部に対し、50?150重量部程度とすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 そして、その効果についても格別のものであるとはいえない。 (3)相違点1と相違点2とを総合しての検討 相違点1と相違点2とを総合して以下に検討する。 引用発明において、相違点1における構成とすること及び相違点2における構成とすることは、(1)及び(2)で述べたとおり、何れも当業者が適宜なし得ることにすぎないものであり、それらの相違点における構成を同時に満たすことは何ら矛盾したり、相反したりするものではなく、むしろ、好ましい周知の態様といえるものであることは、3.で認定した周知事項1ないし3からみても明らかである。 そうすると、相違点1と相違点2とを総合して検討しても、依然として当業者が適宜なし得ることにすぎないものである。 そして、本願発明における効果について以下に検討する。 本願明細書の実施例と比較例とを比較すると、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル(以下、「GLPC」という。)を用いた実施例1及び2における硬化物の吸水率が0.3wt%であるのに対して、GLPCに代えて他のシアン酸エステル化合物を用いた比較例1ないし3における硬化物の吸水率が0.4又は0.5wt%であって劣っている(比較例1ではさらに難燃性に劣り、比較例2ではメチルエチルケトンに対する溶解性に劣る。)ことが理解でき、それによれば、GLPCを用いたことにより吸水率(実施例では、121℃、2気圧で3時間吸水させた後の重量増加から算出している。)が低い硬化物が得られることが理解できる。 一方、引用例には、「…シアン酸エステル樹脂硬化物の吸湿性を改良すべく種々な検討を行なった結果、耐湿性向上に著しい効果を発揮する配合材料を見出し…フェノール変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物をシアン酸エステル樹脂に配合させた後に硬化させれば、得られる硬化物は、シアン酸エステル樹脂硬化物が本来持っている耐熱性、誘電特性等の諸特性がそこなわれることなく吸湿性が改良され…」(摘示1(1)(1イ))と記載されており、実施例の第1表においてもシアン酸エステル化物の含有割合が多くなるに従って吸湿性(例えば、吸湿性試験(2) では、100℃沸とう水中に6時間浸した後の重量増加率を測定している。)が改良することがみてとれる(摘示1(1)(1オ))。 そうすると、本願発明における吸水率が低い硬化物を得るという効果は、引用例における吸湿性が改良された硬化物を得るという効果と同じものと認められるから、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂のシアン酸エステル化物(B)を必須成分として配合する引用発明において既に奏されている効果にすぎないものであるといえる。 仮にそれ以外の成分(エポキシ樹脂及び無機充填材)が吸水率(吸湿性)に寄与する部分があるとしても、エポキシ樹脂については、(1)で述べたとおり、耐湿性が向上する成分であること、及び、無機充填材については、(2)で述べたとおり、吸水性が低下する成分であることは、何れも周知技術であるから、これらの成分によって吸水率(吸湿性)が向上することは、当業者が予測し得ることにすぎない。 6.小括 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 付記 平成29年9月19日に提出された上申書を検討したが、当該上申書の内容は審決の結論に影響を及ぼすものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項について更に検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-28 |
結審通知日 | 2017-09-29 |
審決日 | 2017-10-11 |
出願番号 | 特願2013-548212(P2013-548212) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 勲、楠 祐一郎、海老原 えい子 |
特許庁審判長 |
福井 美穂 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 渕野 留香 |
発明の名称 | 樹脂組成物、プリプレグ及び積層板 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |