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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1334938
審判番号 不服2016-14359  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-26 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2011-204987「アライメントシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月14日出願公開、特開2012-112933、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する特許出願(以下、「本願」という。)は、2010年(平成22年)11月22日にアメリカ合衆国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して平成23年9月20日にされたものである。そして、平成27年6月15日付けで拒絶理由が通知され、同年12月16日に特許請求の範囲及び明細書についての補正がされ、平成28年5月16日付けで拒絶査定がされ、同24日に査定の謄本が送達された。
これに対して、平成28年9月26日に拒絶査定不服審判が請求された。

第2 原査定の概要
本願の請求項1及び請求項4ないし請求項12に係る発明は、いずれも、例えば下記の引用文献1ないし引用文献4に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項2及び請求項3に係る発明は、いずれも、例えば下記の引用文献1ないし引用文献5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平7-270525号公報
引用文献2:国際公開第2009/134751号
引用文献3:特開昭57-47200号公報
引用文献4:特開昭60-27867号公報
引用文献5:特開平4-142478号公報

第3 本願の各請求項に係る発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第2サブシステムに対する第1サブシステムのアライメントを判定するシステムであって、
第1周波数のデルタパターン放射ビームと、前記第1周波数とは異なる第2周波数のサムパターン放射ビームとを同時に送信する第1アンテナシステムと、
第1周波数のデルタパターン放射ビームと、第2周波数のサムパターン放射ビームとを受信する第2アンテナシステムと、
受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定するプロセッサと、
を含み、
サムパターン放射ビームのピークが第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心され、
デルタパターン放射ビームのヌルが、第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心されるシステム。
【請求項2】
第1アンテナシステムが、第1周波数のデルタパターン放射ビーム及び第2周波数のサムパターン放射ビームの双方を送信する4線式ヘリックスアンテナを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1アンテナシステムが、多線式平面アンテナシステム、コニカルスパイラルアンテナシステム、マルチラジアルストリップアンテナシステム、マルチラジアルスロットアンテナシステム、スロット式平面アンテナシステム、またはアレーアンテナである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
プロセッサが、受信した第1周波数のデルタパターン放射ビーム及び受信した第2周波数のサムパターン放射ビームの各振幅から所定のアライメント基準の合否を判定する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
第1アンテナシステムが送信手段に連結され、第2アンテナシステムが受信手段に連結される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
直線偏光ビームを第1アンテナシステムが送信し、第2アンテナシステムが受信し、各ビームの偏光が同じである請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
第1アンテナシステムが円形偏光ビームを送信し、第2アンテナシステムが直線または円形の偏光ビームを受信する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
第2サブシステムに対する第1サブシステムのアライメントを判定する方法であって、
第1アンテナシステムからの第1周波数のデルタパターン放射ビームと、前記第1周波数とは異なる第2周波数のサムパターン放射ビームとを第1アンテナシステムから同時に送信すること、
第1周波数のデルタパターン放射ビームと、第2周波数のサムパターン放射ビームとを第2アンテナシステムで受信すること、
受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理して第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定すること、
を含み、
サムパターン放射ビームのピークが第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心され、
デルタパターン放射ビームのヌルが、第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心される方法。
【請求項9】
第2アンテナシステムが、第1アンテナシステム方向に向けた無指向性、または広幅ビームアンテナである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
所定のアライメント基準の合否を、受信した第1周波数のデルタパターン放射ビーム及び受信した第2周波数のサムパターン放射ビームの相対振幅に基づき判定する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
受信した第2周波数のサムパターン放射ビームの振幅が、受信した第1周波数のデルタパターン放射ビームの振幅よりも所定閾値大きい場合に、所定のアライメント基準が満たされていると判定する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1アンテナシステムに連結した送信手段から第1周波数のデルタパターン放射ビーム及び第2周波数のサムパターン放射ビームを送信すること、
受信手段に連結した第2アンテナシステム位置で、デルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを受信すること、
を含む請求項8に記載の方法。」

なお、本願発明2ないし本願発明7は、いずれも本願発明1の構成を全て含む。また、本願発明8は、本願発明1に係るシステムの動作を方法の発明として表現したものであり、本願発明9ないし本願発明12は、いずれも本願発明8の構成を全て含む。

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献2
(1)引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。原文の引用の後に、日本語訳を記載する。日本語訳は、引用文献2に対応する公表特許公報(特表2011-519250号公報)によったが、原文に合わせて体裁や訳文を変更した箇所がある。下線は、当審が付したものであり、引用文献2に記載された発明を認定する際に特に着目した箇所を示す。

「SUMMARY OF THE INVENTION
[0006] In accordance with the concepts described herein, an
interrogator antenna system includes pyramidal horn antenna and two
sectored, canted horn antenna assemblies. With this particular
arrangement, a relatively small and highly directive antenna array,
appropriate for combat identification use, is provided. The
pyramidal and sectored horn antennas are arranged in a sum-
difference antenna architecture. The sum pattern is established with
the optimal pyramidal horn antenna while the difference pattern is
established with the two sectored and canted horn assemblies. The
sum and difference patterns are thus achieved with only three horn
antennas. This leads to an interrogator antenna system having a size
and weight which is significantly reduced compared with conventional
interrogator antenna systems. This size and weight reduced
interrogator antenna also operates at milli-meter wave (mmW)
frequencies in the Ka frequency band around 37 GigaHertz (GHz).
Moreover, required azimuth discrimination angles as well as usable
range performance of this three-horn interrogator antenna system is
maintained by using the optimal and sectored horn antennas in a sum-
difference antenna architecture. This combination of horn antennas
(aka horn radiators) placed in a specific form to achieve specific
sum and difference azimuth radiation characteristics whereby the sum
response is greater than the difference response only at the
boresight angular region. Grating lobes that will cause the
difference pattern to intrude into the sum pattern at various other
azimuth angles are suppressed such that other than boresight, the
difference pattern will always be greater than the sum pattern. In
one embodiment, the pyramidal horn antenna may be provided as an
optimal pyramidal horn antenna.」
「発明の概要
[0006]本明細書において説明される概念によれば、呼び掛け機アンテナシステムは、1つの錐体ホーンアンテナ及び2つの傾斜したセクターホーンアンテナのアセンブリを備える。この特定の構成を用いて、戦闘識別用途に適した比較的小型で指向性の高いアンテナアレイが提供される。錐体ホーンアンテナ及びセクターホーンアンテナは、和-差アンテナアーキテクチャで配置される。和パターンは最適な錐体ホーンアンテナを用いて確立され、一方、差パターンは2つの傾斜したセクターホーンアセンブリを用いて確立される。このため、和パターン及び差パターンは、3つのホーンアンテナのみを用いて達成される。これによって、従来の呼び掛け機アンテナシステムと比較して大幅に低減されたサイズ及び重量を有する呼び掛け機アンテナシステムとなる。このサイズ及び重量が低減された呼び掛け機アンテナは、37ギガヘルツ(GHz)付近のKa周波数帯内のミリメートル波(mmW)周波数でも動作する。さらに、この3ホーン呼び掛け機アンテナシステムの要求される方位識別角度及び使用可能な範囲性能は、和差アンテナアーキテクチャにおいて最適なセクターホーンアンテナを使用することによって維持される。ホーンアンテナ(ホーン放射体としても知られる)のこの組み合わせは、特定の和方位放射特性及び差方位放射特性を達成するために特定の形で設置される。これによって、ボアサイト角領域においてのみ和応答が差応答よりも大きくなる。差パターンを様々な他の方位角において和パターンに侵入させるグレーティングローブは、ボアサイト以外で差パターンが常に和パターンよりも大きくなるように抑制される。1つの実施の形態では、錐体ホーンアンテナが最適な錐体ホーンアンテナとして設けられ得る。」

「[0009] The three horn interrogator antenna system described herein
is provided having a size and weight which is reduced compared with
the size and weight of prior art interrogator antenna systems while
at the same time having similar azimuth discrimination and range
capability. Thus, the antenna array described herein provides crew-
served, light-weight vehicles, and potentially dismounted soldiers
with a means of friend-or-unknown identification.」
「[0009]本明細書において説明される3ホーン呼び掛け機アンテナシステムは、従来技術の呼び掛け機アンテナシステムのサイズ及び重量と比較して低減されたサイズ及び重量を有し、一方で同時に、同様の方位識別及び射程能力を有して提供される。このため、本明細書において説明されるアンテナアレイは、要員操作型軽量車両及び潜在的には降車歩兵に、味方又は見知らぬ者の識別手段を提供する。」

「[0011] The three horn interrogator array described herein,
however, has a smaller physical and electrical aperture than
conventional arrays, but the efficiency of the smaller aperture
makes this three horn interrogator array perform equally to the
larger and heavier conventional ID antenna systems. Thus, the
electrical performance characteristics of the three horn
interrogator array described herein are substantially equal to the
electrical performance characteristics of conventional ID antenna
systems while at the same time having a smaller size and weight than
conventional ID antenna systems.」
「[0011]一方、本明細書において説明される3ホーン呼び掛け機アレイは、従来のアレイよりも小さい物理的及び電気的開口を有するが、このより小さな開口の効率性によって、この3ホーン呼び掛け機アレイは、より大型で重い従来のIDアンテナシステムと同等に機能する。このため、本明細書において説明される3ホーン呼び掛け機アレイの電機性能特性は、従来のIDアンテナシステムの電機性能特性に実質的に等しく、一方で同時に、従来のIDアンテナシステムよりも小さいサイズ及び重量を有する。」

「[0013] Two sectored horn antennas are used to produce the
difference pattern. By canting these horns inward toward each other,
grating lobe occurrences in the resulting difference pattern are
significantly suppressed and pragmatically eliminated. Thus, grating
lobe suppression is a primary feature afforded by this three horn
interrogator antenna system.」
「[0013]2つのセクターホーンアンテナは、差パターンを生成するのに使用される。これらのホーンを互いに向かって内側に傾斜させることによって、結果としての差パターンにおけるグレーティングローブの発生が大幅に抑制され、実際的に除去される。このため、グレーティングローブ抑制は、この3ホーン呼び掛け機アンテナシステムによってもたらされる主な特徴である。」

「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS
[00018] The foregoing features of this invention, as well as the
invention itself, may be more fully understood from the following
description of the drawings in which:
[0019] Fig. 1 is an exploded isometric view of an interrogator
system;
[0020] Figs. 2 - 2B are isometric views of an array antenna;
…(中略)…
[0022] Figs. 3 and 4 are isometric views of a prototype of a three
horn antenna array;
[0023] Fig. 3A is a top view of the sector horn antenna of Fig. 3;
…(中略)…
[0030] Figs. 11 - 11C are a series of plots of azimuth sum and
difference patterns from a 10λ optimal pyramidal and sectored horn
antenna structure;
…(中略)…
[0033] Fig. 14 is an antenna radiation pattern plot which
illustrates how sum, difference and omni-directional antenna
patterns are time domain multiplexed to establish a criteria for a
reply.」
「図面の簡単な説明
[0018]本発明の上記の特徴及び本発明自体は、図面の以下の説明からさらに十分に理解されることができる。
[0019]図1は、呼び掛け機システムの組立分解等角図である。
[0020]図2?2Bは、アレイアンテナの等角図である。
…(中略)…
[0022]図3及び4は、3ホーンアンテナレイの典型の等角図である。
[0023]図3Aは、図3のセクターホーンアンテナの上面図である。
…(中略)…
[0030]図11?11Cは、10λの最適な錐体ホーンアンテナ及びセクターホーンアンテナ構造からの方位和パターン及び方位差パターンの一連のプロットである。
…(中略)…
[0033]図14は、和アンテナパターン、差アンテナパターン、及び全指向性アンテナパターンが時間領域多重化されて返答に関する判断基準をいかに確立するかを示すアンテナ放射パターンプロットである。」

「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS
[0034] Referring now to Fig. 1, a light weight vehicle Crew Served
Combat ID (CSCID) 10 includes a chassis 12 having a miniaturized
control interface electronics module (MCM) 14 coupled thereto. The
MCM 14 directs a transceiver, 16, an antenna matching network 21,
22, a horn antenna assembly 20, and a polarizer/cover 24 to transmit
either a sum pattern by directing the transceiver output to a sum
port of the matching network 21, 22 or a difference pattern, by
directing the transceiver output to a difference port of the
matching network 21, 22. In one particular embodiment, the output of
transceiver 16 is coupled to the matching network sum port via a
direct connection between the transceiver and the sum horn. The sum
and difference patterns are sequenced with a specific time duration
for each which is controlled by the MCM 14.
[0035] Transceiver 16 is coupled to the MCM 14 and horn antenna
assembly 20 is coupled to transmit signals to/from MCM 14 and
antenna matching networks 21 , 22 are coupled to the horn antenna
assembly 20. In the exemplary embodiment shown in Fig. 1, the
antenna matching networks 21, 22 are coupled to provide RF energy to
the horn antenna assembly 20.
[0036] Front cover and polarizer 24 is disposed over a radiating
aperture 20a of horn antenna assembly 20. As will become apparent
form the description provided herein below in conjunction with
Fig. 2, it should be appreciated that aperturte 20a comprises three
separate aperatures 26a (Fig. 2), 28a (Fig. 2), 30a (Fig. 2).
[0037] As will be described in detail further below, horn antenna
assembly 20 comprises three horn antenna structures. Typically, when
two horn antennas are placed side-by-side and fed 180°out of phase,
a difference pattern results and a fairly deep null is observed at a
bore-sight position (both in the azimuth and elevation planes). For
pyramidal horns, their shortest aperture dimension is several
wavelengths long. When placing such antennas close together so as to
establish a difference pattern, in addition to a deep null at bore-
sight, other deep nulls will occur at regularly spaced angular
intervals. This phenomenon is known as grating. For some
applications (including the above described interrogation antenna
application), such "grating lobes" are unwelcome. Similarly, two
horn antenna structures closely spaced and fed in phase will also
exhibit "grating lobes"; however, their depth will not be as
pronounced as compared to the difference pattern. To minimize the
generation of grating lobes for the sum pattern, a single horn may
be used.」
「好ましい実施形態の詳細な説明
[0034]ここで図1を参照すると、軽量車両要員操作型戦闘ID(CSCID)10は、小型制御インターフェース電子モジュール(MCM)14が結合されたシャーシ12を備える。MCM14は、送受信機16、アンテナマッチング回路網21、22、ホーンアンテナアセンブリ20、及び偏波器/カバー24に、送信機出力をマッチング回路網21、22の和ポートに方向付けることによって和パターンを送信するか、又は送信機出力をマッチング回路網21、22の差ポートに方向付けることによって差パターンを送信するように命令する。1つの特定の実施形態では、送信機16の出力は、送受信機と和ホーンとの間の直接接続を介してマッチング回路網和ポートに結合される。和パターン及び差パターンは、MCM14によって制御される、それぞれのための特定の時間期間を有して配列される。
[0035]送受信機16はMCM14に結合され、ホーンアンテナアセンブリ20はMCM14に信号を送信/MCM14から信号を送信するように結合され、アンテナマッチング回路網21、22はホーンアンテナアセンブリ20に結合される。図1に示す例示的な実施形態では、アンテナマッチング回路網21、22は、ホーンアンテナアセンブリ20にRFエネルギーを提供するように結合される。
[0036]前面カバー及び偏波器24は、ホーンアンテナアセンブリ20の放射開口20a上に配置される。本明細書において図2と合わせて下記で提供される説明から明らかとなるように、開口20aは、3つの別個の開口26a(図2A)、28a(図2A)、30a(図2A)を含むことを理解されたい。
[0037]下記でさらに詳細に説明されるように、ホーンアンテナアセンブリ20は、3つのホーンアンテナ構造を備える。通常、2つのホーンアンテナが並んで設置され、180度位相をずらして給電されるとき、結果として差パターンとなり、非常に深いヌルがボアサイト位置に(方位及び仰角面の双方において)観測される。錐体ホーンの場合、それらの最も短い開口寸法は複数波長の長さである。そのようなアンテナを、ボアサイトにおける深いヌルに加えて差パターンを確立するように互いに近接して設置するとき、規則的に離間した角度間隔において、他の深いヌルが生じる。この現象はグレーティングとして既知である。いくつかの用途の場合(上述した呼び掛けアンテナ用途を含む)、そのような「グレーティングローブ」は歓迎されない。同様に、密接して離間され同位相で給電された2つのホーンアンテナ構造も「グレーティングローブ」を呈する。しかしながら、それらの深さは、差パターンと比較してそれほど顕著とならない。和パターンに関するグレーティングローブの生成を最小にするために、単一のホーンを使用することができる。」

「[0040] Referring now to Figs. 2 - 2B in which like elements are
provided having like reference designations, the horn antenna
assembly 20 (also shown in Fig. 1) includes an optimal pyramidal
horn 26 having an aperture 26a and a pair of canted sector horns 28,
30 having an apertures 28a, 30a, respectivley. In this exemplary
embodiment, the horn antenna assembly 20 is provided from plastic
(e.g. via an injection molding technique or other techniques) which
is plated to provide conductive surfaces. The horn antenna, may of
course, be fabricated using any fabrication techniques known to
those of ordinary skill in the art.」
「[0040]ここで図2?図2Bを参照すると、ここで同様の要素は同様の参照符号を有して提供され、ホーンアンテナアセンブリ20(図1にも示される)は、開口26aを有する最適な錐体ホーン26、及びそれぞれ開口28a、30aを有する1対の傾斜したセクターホーン28、30を備える。この例示的な実施形態では、ホーンアンテナアセンブリ20は、(たとえば射出成形技法又は他の技法を介して)プラスチックから設けられ、これは導電面を設けるようにめっきされる。ホーンアンテナは当然、当業者に既知の任意の製作技法を用いて製作することができる。」

「[0043] Referring now to Figs. 3 and 3A, a horn antenna assembly 40
includes a sum horn 42 disposed above a pair of canted sector horns
44, 46. As illustrated in Fig. 3A, each of the horns 44, 46 has a
central longitudinal axis 44a, 46a. The horns 44, 46 are disposed
such that the central longitudinal axis 44a, 46a of each horn 44, 46
cross at an angle a which is typically in the range of about ten
degrees. Ideally, the horns 44, 46 are arranged such that the
central longitudinal axis of each horn 44, 46 is at an angle
typically in the range of about five degrees with respect to a
centerline 48 which runs between the two horns 44, 46. The angle,α,
is selected to minimize grating lobes such that incursions between
the sum and difference patterns no longer occur and are protected by
an additional 3 dB of margin. The angle,α, should be the minimum
necessary in order to preserve the maximal gain of the canted
sectored difference horn antennas.」
「[0043]ここで図3及び図3Aを参照すると、ホーンアンテナアセンブリ40は、一対の傾斜したセクターホーン44、46の上に配置される。図3Aに示すように、ホーン44、46のそれぞれは、中心縦軸44a、46aを有する。ホーン44、46は、各ホーン44、46の中心縦軸44a、46aが、通常約10度の範囲内にある角度αで交差するように配置される。理想的には、ホーン44、46は、各ホーン44、46の中心縦軸が、2つのホーン44、46間に延びる中心線48に対して通常約5度の範囲内の角度にあるように配置される。角度αは、和パターンと差パターンとの間の侵害がこれ以上発生せず、かつさらなる3dBのマージンによって保護されるように、グレーティングローブを最小にするように選択される。角度αは、傾斜したセクター差ホーンアンテナの最大利得を保持するために必要な最小値でなくてはならない。」

「[0045] In one embodiment, antenna 42 is provided as an optimal
gain pyramidal horn. While other horn configurations can be used, an
optimal gain configuration assures maximum gain for a minimum size
implementation. This antenna provides a sum pattern. The two
oppositely phase fed vertical sectored horns 44, 46 provide good
difference beam pattern performance. The size of the sector horns is
chosed to be commensurate with that of the sum horn. For a combat ID
Ka-frequency band at 37 GHz, the frontal area of such an arrangement
works out to be less than 5 3/4 square inches. Such an arrangement
provides ample sum pattern gain in the bore-sight region. Beyond the
sum-difference crossover region of a few degrees, on up to about
±30 degree from bore sight, difference pattern gain is predominant.
From ±30 degrees of bore-sight to ±180 degrees, the difference
pattern remains dominant; however, to prevent ambiguity in the
detection of sum and difference signal levels at these azimuth
angles, the use of an omni-directional guard antenna can further
assist in providing low probability of replies. In some embodiments,
by virtue of eliminating grating phenomena, it is not necessary to
employ the omni-directional guard antenna technique.
[0046] A port 42a of horn 42 is coupled to a so-called sum (Σ) port
of a transceiver (not shown). Ports 44a, 46a of difference horns 44,
46 are coupled to respective ones of difference (Δ) ports of the
transceiver (not shown) through a hybrid junction 50.」
「[0045]1つの実施形態では、アンテナ42は最適な利得錐体ホーンとして提供される。他のホーン構成を使用することができるが、最適な利得構成は、最小サイズの実装で最大の利得を確実にする。このアンテナは和パターンを提供する。2つの逆位相で給電された垂直セクターホーン44、46は、良好な差ビームパターン性能を提供する。セクターホーンのサイズは、和ホーンのサイズと釣り合いが取れるように選択される。37GHzにおける戦闘ID Ka周波数帯の場合、そのような構成の前面面積は、5 3/4平方インチよりも小さくなる。そのような構成は、ボアサイト領域内で十分な和パターン利得を提供する。数度の和差交差領域を超えて、ボアサイトから約±30度に至るまで、差パターン利得が優勢である。ボアサイトの±30度から±180度までは、差パターンが優位であり続ける。しかしながら、これらの方位角における和信号レベル及び差信号レベルの検出が不明瞭になることを防ぐために、全指向性ガードアンテナを使用することによって、低い確率の返答を提供するのにさらに役立つことができる。いくつかの実施形態では、グレーティング現象を除去するおかげで、全指向性ガードアンテナ技法を用いる必要がない。
[0046]ホーン42のポート42aは、送受信機(図示せず)のいわゆる和(Σ)ポートに結合される。差ホーン44、46のポート44a、46aは、ハイブリッド接合部50を通じて送受信機(図示せず)の差(Δ)ポートのそれぞれの1つに結合される。」

「[0065] Referring now to Figs. 11-11C, sum and difference azimuth
antenna patterns produced by an antenna having a structure the same
as or similar to the antenna structures shown in Figs. 2-4 are
shown. The azimuth sum and difference patterns shown in Fig. 11 are
from a 10λ optimal pyramidal and sectored horn antenna structure.
Region 70 denotes an incursion of the delta pattern into the sigma
pattern. Ideally, the delta pattern should be less than the sigma
pattern only at boresight. Figs. 11A-11C illustrate a delta pattern
which is less than the sigma pattern only within the region which is
approximately boresight +/- 7.5 degrees. Outside of this angular
range, the delta pattern is greater than the sigma pattern.」
「[0065]ここで図11?図11Cを参照すると、図2?図4に示したアンテナ構造と同じか又は同様の構造を有するアンテナによって生成される和方位アンテナパターン及び差方位アンテナパターンが示されている。図11に示す方位和パターン及び方位差パターンは、10λの最適な錐体ホーンアンテナ構造及びセクターホーンアンテナ構造からのものである。領域70は、シグマパターンへのデルタパターンの侵害を表している。理想的には、デルタパターンはボアサイトにおいてのみシグマパターンよりも小さくなくてはならない。図11A?図11Cは、ほぼボアサイト+/-7.5度の領域内でのみシグマパターンよりも小さいデルタパターンを示している。この角度範囲の外側では、デルタパターンはシグマパターンよりも大きい。」

「[0070] Referring now to Fig. 14, a sum pattern 100, a difference
pattern 102 and an omni pattern 104 are time domain multiplexed to
establish the criteria for a reply. This data sequence is
transmitted as an interrogation by an interrogator disposed on a
vehicle 106. Upon reception by a transponder, received signal power
measurements are made and depending on the relative signal strengths
of the Σ, Δ, and Ω signals, the transponder either responds to
the interrogator (because it determined it was indeed being
targeted. Transponders can be mounted on any or all of vehicles
108-114. In this case only the transponder on vehicle 108 responds
to the interrogator and the responders on vehicles 110-114 do not
reply.
[0071] As mentioned above, the battlefield target identification
device (BTID) provides a narrow beam interrogation that can be "pointed" at a potential target in order to "ask" for friend
identification. If the target is equipped with BTID, it responds
with a reply signal (e.g. using an omni-directional antenna).
Ideally, the beamwidth of the interrogator needs to be sufficiently
small so as to avoid objects not being specifically targeted, but
that are in close proximity, azimuth-wise, to the desired target.
Should such non-targeted objects be friendly, a response from them
should not occur. A narrow directed beam is achieved by using a
directional antenna system which makes use of both sum and
difference patterns from a set of antenna elements that are arranged
in a prescribed array. The beamwidths of the narrow beam is in the
range of only a few degrees and it is established by radiating a sum
and a difference patterns in a time diverse manner. In general, it
is desirable to have as narrow a beam as possible provided that the
beam does not become so narrow that the target is not covered.
[0072] Interrogator azimuth discrimination must therefore be
sufficiently narrow to keep unintended transponders from responding.
In addition, the azimuth discrimination beamwidth cannot be so small
as to not fully illuminate (i.e. "cover") the desired transponder
(vehicle) being targeted. To facilitate this goal, interrogator side
lobe suppression (ISLS) between the transponder replies received
outside of the interrogator's field of view (FOV) may be used. When
the antenna array is configured to radiate a sum pattern, basic
directivity is established by the radiated sum pattern. When the
antenna array is configured to radiate a difference pattern, a
radiation null is observed to exist in the array's bore-sight aiming
direction. In this manner, the difference pattern provides the ISLS
beam sharpening. To provide ISLS for azimuth displacements off of
bore- sight, the use of a constant envelope pattern of an Omni-
directional antenna is employed.」
「[0070]ここで図14を参照すると、和パターン100、差パターン102、及び全方向パターン104は、返答の判断基準を確立するために多重化される時間領域である。このデータシーケンスは、車両106上に配置された呼び掛け器による呼び掛けとして送信される。トランスポンダーによって受信されると、受信信号電力測定が行われ、Σ信号、Δ信号、及びΩ信号の相対信号強度に依拠して、トランスポンダーは呼び掛け機に応答する(これは、トランスポンダーが、該トランスポンダーが実際にターゲットにされていると判断したためである)。トランスポンダーは、車両108?114の任意のもの又は全てに搭載することができる。この場合、車両108上のトランスポンダーのみが呼び掛け機に応答し、車両110?114上の応答機は返答しない。
[0071]上述したように、戦場ターゲット識別装置(BTID)は、味方識別のために「尋ねる」ために、潜在的なターゲットに「向ける」ことができる狭ビーム呼び掛けを提供する。ターゲットがBTIDを装備している場合、該ターゲットは(たとえば全指向性アンテナを使用して)返答信号で応答する。理想的には、呼び掛け機のビーム幅は、特にターゲットにされていないが、所望のターゲットに方位的に非常に近接した目標物を回避するのに十分小さくする必要がある。そのようなターゲットにされていない目標物が味方である場合、それらの目標物からの応答は発生しないはずである。所定のアレイで配置されたアンテナ素子のセットからの和パターン及び差パターンの双方を利用する指向性アンテナシステムを使用することによって、狭く方向付けられたビームが達成される。狭ビームのビーム幅はわずか数度の範囲内にあり、和パターン及び差パターンを多様な時間に放射することによって確立される。一般的に、可能なかぎり狭いビームを有することが望ましい。ただし、ビームはターゲットがカバーされないほど狭くしないものとする。
[0072]したがって、呼び掛け機方位識別は、意図しないトランスポンダーが応答するのを避けるのに十分狭くなくてはならない。さらに、方位識別ビーム幅は、ターゲットにされている所望のトランスポンダー(車両)を十分に照射(すなわち「カバー」)できないほど小さくなってはならない。この目標を容易にするため、呼び掛け機の視野(FOV)外で受信されるトランスポンダー返答間の呼び掛け機サイドローブ抑制(ISLS)を使用することができる。アンテナアレイが和パターンを放射するように構成されるとき、基本指向性は、放射される和パターンによって確立される。アンテナアレイが差パターンを放射するように構成されるとき、アレイのボアサイト照準方向において放射ヌルが存在するのが観測される。このようにして、差パターンはISLSビームの尖鋭化を提供する。ボアサイトからの方位変位のためのISLSを提供するために、全指向性アンテナの一定のエンベロープパターンの使用が用いられる。」

図1

図2

図2A

図2B

図3

図3A

図4

図11

図11A

図11B

図11C

図14


(2)引用文献2に記載された発明
引用文献2の前記(1)の記載(特に下線を付した部分)によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「車両106上に配置された呼び掛け機と、車両108に搭載されたトランスポンダーとからなる戦場ターゲット識別装置であって、
呼び掛け機は、37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波で、和パターン100,差パターン102及び全方向パターン104を、多重化された時間領域のデータシーケンスとして送信し、
トランスポンダーは、送信されたデータシーケンスを受信すると、受信信号強度測定を行い、Σ信号、Δ信号及びΩ信号の相対信号強度に依拠して実際にターゲットにされていると判断した場合は、呼び掛け機に応答し、それ以外の場合は、呼び掛け機に応答しないものであり、
呼び掛け機は、小型制御インターフェース電子モジュール14と、送受信機16と、アンテナマッチング回路網21,22と、ホーンアンテナアセンブリ20と、偏波器/カバー24とを備え、送受信機16の出力をアンテナマッチング回路網21,22の和ポートに方向付けることによって和パターン100を送信し、送受信機16の出力をアンテナマッチング回路網21,22の差ポート102に方向付けることによって差パターン102を送信し、
ホーンアンテナアセンブリ20は、錐体ホーン26と一対の傾斜したセクターホーン28、30とを備え、
錐体ホーン26は、和パターン100を提供し、
一対の傾斜したセクターホーン28,30は、差パターン102を提供し、
和パターン100は、基本指向性を確立し、
差パターン102は、ボアサイト照準方向において放射ヌルが存在する
戦場ターゲット識別装置。」

2 引用文献1
引用文献1には、以下の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、航空交通管制システム、味方識別システム、或は車両識別システム等において、質問機と応答機とを対向して使用する2次レーダシステムに関し、特に、近接した複数の航空機、車両、船舶等の中から所望する目標体からの応答信号の有無、或はその種別等を識別し得るようにした2次レーダシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、質問機と応答機を対向して用いる2次レーダシステムは、航空交通管制システム、敵味方識別システム等にも使用されている。この2次レーダシステムは、質問機からアンテナを介し、高周波質問信号を目標体に放射する。目標体に搭載されている応答機はアンテナを介し、この高周波質問信号を受信し、所定の質問信号と判断した場合は、高周波応答信号をアンテナから放射する。この高周波応答信号は上記質問機によって受信され、応答信号の解読・評価処理を行うことによって、応答信号の有無を含め、それが、予め予定されていたものか否か、更には、応答信号の内容を判断する。
【0003】一般的に、従来の2次レーダでは、質問機側から質問信号を指向性アンテナのSUMパターン(和)にて送信し、SLS信号を指向性アンテナのDIFFパターン(差)で送信する。その質問信号を受けた応答機側においては、両者の受信電界強度差が所定値以上(例えば、6dB以上)ある場合にのみ、応答信号を返送するよう構成されている。ここで、アンテナのSUMパターンとは、目標体方向にメインローブをもつ指向性アンテナパターンを指し、質問信号が、このSUMパターンをもつアンテナを介して送信される。
【0004】また、DIFFパターンは、前記SUMパターンのメインローブ方向に零点(利得零)をもつアンテナパターンであって、DIFFパターンをもつアンテナを介してSLS信号(サイドローブ抑圧信号)が送信される。尚、DIFFパターンの代りに、全方向に均一の利得をもつ、無指向性アンテナパターンが用いられることもある。SUMパターンとDIFFパターンは一般にフェーズドアレイアンテナ等の電子制御された一つのアンテナを用い、夫々信号送信のタイミングに合せて、SUM又はDIFFパターン制御が行われる。」

「【0007】図8,図9は、質問信号を指向性アンテナを介して送信する場合について示したものである。図8に示すように、A車に載置された質問機と、B車、C車、D車のそれぞれに載置された応答機からなる2次レーダシステムにおいて、A車(質問機)がB車(応答機)を識別する場合、A車(質問機)の指向性アンテナから高周波質問信号が、図8の点線で示す、指向性アンテナSUMパターンでB車(応答機)に向かって放射される。しかしながら、図示するように、その質問機用指向性アンテナパターン内にC車、D車も位置する場合、A車からの高周波質問信号はB車、C車、D車にも受信されるために、B車のみの識別は不可能である。即ち、図9に示すような質問機と応答機の対向は、A-B、A-C、A-D間にも成り立ち、その結果、図10に示すように、C車およびD車も高周波質問信号に対するそれぞれの高周波応答信号を発生する。この結果、A車はB車、C車およびD車の、各々の高周波応答信号を、ほぼ同時に受信することになり、B車、C車、D車からの混在した受信信号の中から、B車のみからの応答信号を確実に抽出することが難しいと言う問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、近接して位置する複数の航空機、車両、船舶等のそれぞれに、1つの質問装置に対向して載置された複数の応答装置の中から、質問装置からの質問信号に対し、所望する応答装置よりの応答信号のみを単独に得ることができる2次レーダシステムを提供することを目的とする。」

「【0014】
【実施例】以下、本発明の2次レーダシステムの一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明による2次レーダシステムの一実施例を示す概略構成図であり、図2は、図1に示す実施例の動作概念図である。
【0015】図1に示すように、本実施例の2次レーダシステムは、A車に搭載された質問信号放射手段、および受信手段としての指向性アンテナ5を付した質問機1と、レーザ照射手段としてのレーザ測遠機2とを結合した質問装置Aと、B車に搭載された、返信手段としての無指向性アンテナ6を付した応答機3と、レーザ検知手段としてのレーザ検知器4とを結合した応答装置Bとから基本的な1対向システムが成り立っている。」

「【0022】図4は、上記質問装置Aの内部構成例を示すブロック図である。前記したように、質問機用指向性アンテナ5、レーザ測遠機2と共に、質問装置Aを構成する質問機1は、前記質問機用指向性アンテナ5に接続されたデュプレクサ8,9と、上記デュプレクサ8,9に接続された受信機10,11と、上記受信機10,11に接続されたビデオ処理回路12と、上記ビデオ処理回路12に接続された応答解読回路13と、上記応答解読回路13に接続された応答評価回路14と、前記レーザ測遠機2と上記応答解読回路13に接続されたタイミング回路15と、上記タイミング回路15に接続された質問パルス発生回路16と、上記質問パルス発生回路16に接続された送信機17と、上記送信機17と上記デュプレクサ8,9に接続されたRFスイッチ18とからなる。尚、RFスイッチ18は送信機17の出力を、デュプレクサ8,9のいづれか一方に、切り替えて供給するためのスイッチであって、質問信号をデュプレクサ8を介してSUMパターンのアンテナに、又SLS信号をデュプレクサ9を介してDIFFパターンのアンテナに供給する。」

図1

図2

図4

図8

図9

図10


3 引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。

「本発明は、基準点に関する遠隔物体の位置及び方向を決定することに関し、特に、基準点から電磁界を放射し、遠隔物体のところでこの電磁界を検出し、そして検出されたこの電磁界を解析して、遠隔物体の位置及び方向を決定することに関する。」(第2ページ左上欄第20行ないし右上欄第5行)

「本発明は、電磁放射源とセンサーの間の相対位置及び方向を決定するために技術に関し、そして好ましい実施例においては、近接電磁界及び誘導電磁界結合を使用することができるけれども、放射源とセンサーの間の遠方電磁界結合を使用している。…(中略)…特に、基準座標フレームに関して遠隔物体の位置及び方向を決定する装置は、基準座標フレームの原点を中心にした直交素子を有する複数の放射手段を備えている。…(中略)…送信電磁界は多重化され、従つて相互に識別可能である。複数の受信手段が遠隔物体上に配置され、かつこの受信手段は、送信電磁界の受信成分を検出しかつ測定するためのアンテナ素子を有している。」(第4ページ左上欄第11行ないし右上欄第13行)

「周波数分割多重による3軸送信及び3軸検知
本発明は、多数のところで実用性を有しているかもしれないけれども、遠方着陸システムに関する一実施例のみを詳細に説明する。第1図を参照すると、着陸補助システム10は、電磁界を放射するための地面基礎要素30、及び電磁界を受信するための航空機内要素20を備えて、地面基礎要素30に関して航空機内要素20の位置及び方向を決定する。地面基礎要素20は、電極増幅器32,33,34に並列に結合された信号発生器31を含んでいる。地面アンテナ配列40は、電力増幅器32,33,34にそれぞれ結合された直交電気ダイポールアンテナ41,42,43(X,Y,Zで示す)を含んでいる。…(中略)…航空機内要素20は、直交受信アンテナ配列21、信号増幅器群52、周波数変換器群53、信号プロセッサ群54、コンピュータ50、及びデイスプレイ51に順次結合されている。」(第4ページ左下欄第13行ないし第5ページ左上欄第3行)

「地面基礎要素30は、遠方電磁界着陸補助信号を発生する。信号発生器31は、各アンテナ41,42,43を励起する電気信号を発生する。この信号は、受信アンテナ配列21が、アンテナ41,42,43のそれぞれからの電磁放射を識別することができるように多重化されなければならない。次のものは完全ではないけれども、各アンテナ41,42,43から送信された電磁放射は、時分割多重、周波数多重、位相多重、及びスペクトラム拡散多重を使うことによつて識別することができる。」(第5ページ左下欄第14行ないし右下欄第4行)

「先の要求に合致することのできる無限のフオーマツトがある。…(中略)…送信信号フオーマツトの4つの可能性は次の様である。
1.周波数分割多重(FDM)
このフオーマツトにおいて、配列内の各送信アンテナには、特別の異なる周波数が割り当てられる。情報パラメータの測定は単に、3つの周波数に相当する積分器の出力にすることができる。搬送波は一定位相のものであり、それ故、適切な時定数の位相固定ループ(PLL)によつて容易に取得される。
2.時分割多重(TDM)
TDMにおいて、地面アンテナ配列の唯一のダイポールが一時に励起される。回路を時分割にすることができるので、送信機及び受信機の簡単化が可能である。しかしながら、データ伝送はもつと複雑であり、かつ動いている航空機は、瞬時測定と等価なものにするために測定間を補間しなければならない。これは、比較的にゆつくり動く車輌の位置に対して都合のよい多重化方法である。
3.位相分割多重(回転運動)
3つのダイポールを適切に励起すると、単一ダイポールアンテナの物理的回転運動に等価なものを生じるであろう。これは、非変調搬送波によつてZダイポールを、そしてsin及びcosin波によりそれぞれ高周波振幅変調した搬送波によつてX及びYダイポールを励起することにより達成することができる。この結果は、ビーコン状信号になるけれども、その特性は位置及び方向計算において実際には利用されない。利用されるのは、地面ダイポールアンテナのそれぞれからの放射電磁界が、非変調搬送波によつて、あるいは2つの変調搬送波の変調包絡線間の位相差によつて識別することができるということである。もし回転電磁界が使用されるならば、回転軸を放射アンテナと受信アンテナの間の線に沿つて位置決めする必要はない。遠隔物体の位置及び方向は、回転軸の方向にかかわらず決定することができる。
4.スペクトラム拡散多重
スペクトラム拡散多重を達成するために、各送信信号には、搬送波周波数、搬送波位相、(又はその両方)をシフトする独特のコードシーケンスが割り当てられる。受信は、この変調を取り除くために同一のコードシーケンスを使うことによつて達成される。3つのアンテナに割り当てられたコードは、相互に関係しないように設計され、このように個々の信号の測定を可能にしている。しかしながら、搬送波成分がないために、そして搬送波に加えて、コードタイミングを取得しなければならないために、取得はより困難である。」(第18ページ右上欄第17行ないし第19ページ左上欄第13行)

4 引用文献4
引用文献4には、以下の記載がある。

「本発明は、空中線装置に関し、特に無線航法装置、例えばILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)のローカライザに使用される空中線装置のような2周波方式の空中線装置に用いて有益なる空中線装置に関する。
既知のように、ローカライザ用の空中線装置においては、前方に狭ビームを放射するディレクショナル系を、後方に広ビームを放射するクリアランス系の空中線系をそれぞれ独立に設置している。そしてこれら各系からの放射ビームの周波数は異ならせている。従って空中線を構成するエレメントの数は2系統分必要となるからコスト面および信頼性の面で問題が生じる。又、2系統の空中線装置は別個に設置しなければならないので設置面積が大きくなる。」(第1ページ左下欄第12行ないし右下欄第10行)

「本発明は、ビーム諸元(例えば周波数やビーム幅)の異なる2つのビーム放射パターンを1つの空中線列にて形成することにより上記欠点を改善した計器着陸(ILS)用に適する空中線装置を提供するものである。」(第1ページ右下欄第16行ないし第20行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

ア 引用発明の「トランスポンダー」は、「実際にターゲットにされていると判断した場合は、呼び掛け機に応答し、それ以外の場合は、呼び掛け機に応答しない」から、引用発明の「戦場ターゲット識別装置」は、「トランスポンダー」が「搭載された」「車両108」が、「呼び掛け機」が「配置された」「車両106」によって「実際にターゲットにされている」か否かを判定する装置である。
ここで、「車両108」が「車両106」によって「実際にターゲットにされている」とは、換言すれば、「車両108」が「車両106」に対して「実際にターゲットにされている」に該当する特定の位置関係にあるということである。そうすると、引用発明の「戦場ターゲット識別装置」は、「車両106」に対する「車両108」のアライメントを判定していることになる。
以上のことを踏まえると、引用発明の「車両106」及び「車両108」は、それぞれ、本願発明1の「第2サブシステム」及び「第1サブシステム」に相当し、引用発明の「戦場ターゲット識別装置」は、本願発明1の「第2サブシステムに対する第1サブシステムのアライメントを判定するシステム」に相当する。

イ 引用発明の「和パターン100」は、具体的には引用文献2の図11ないし図11Cに示されているように、「呼び掛け機」が「送信」する「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波」のパターンであって、0度方向に最大値を有するパターンであり、引用発明の「差パターン102」は、同様に、0度方向に極小値を有するパターンである。
一方、本願発明1の「サムパターン放射ビーム」は、具体的には本願の図面の図4に示されているように、90度方向に最大値を有するアンテナ放射信号のパターンであり、本願発明1の「デルタパターン放射ビーム」は、同様に、90度方向に極小値を有するパターンである。
ここで、方向を表す基準となる0度方向は、任意に選ぶことができることを考慮すると、引用発明の「和パターン100」及び「差パターン102」は、それぞれ、本願発明1の「サムパターン放射ビーム」及び「デルタパターン放射ビーム」に相当する。

ウ 引用発明の「呼び掛け機」は、「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波で、和パターン100,差パターン102及び全方向パターン104を、多重化された時間領域のデータシーケンスとして送信」するものである。これは、「小型制御インターフェース電子モジュール14と、送受信機16と、アンテナマッチング回路網21,22と、ホーンアンテナアセンブリ20と、偏波器/カバー24とを備え」る「呼び掛け機」が、「送受信機16の出力をアンテナマッチング回路網21,22の和ポートに方向付けることによって和パターン100を送信し、送受信機16の出力をアンテナマッチング回路網21,22の差ポート102に方向付けることによって差パターン102を送信」することによって行われる。そして、「ホーンアンテナアセンブリ20は、錐体ホーン26と一対の傾斜したセクターホーン28,30とを備え、」「錐体ホーン26は、和パターン100を提供し、」「一対の傾斜したセクターホーン28,30は、差パターン102を提供」する。
そうすると、結局のところ、引用発明の「ホーンアンテナアセンブリ20」が「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波で、和パターン100,差パターン102及び全方向パターン104を、多重化された時間領域のデータシーケンスとして送信」していることになる。
ここで、前記イを踏まえると、引用発明の「ホーンアンテナアセンブリ20」が「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波で、和パターン100,差パターン102及び全方向パターン104を、多重化された時間領域のデータシーケンスとして送信」していることと、本願発明1の「第1アンテナシステム」が「第1周波数のデルタパターン放射ビームと、前記第1周波数とは異なる第2周波数のサムパターン放射ビームとを同時に送信する」こととは、「第1アンテナシステム」が「デルタパターン放射ビームと、サムパターン放射ビームとを送信する」点で共通する。

エ 引用発明の「トランスポンダー」は、「送信されたデータシーケンスを受信する」ものであり、「送信されたデータシーケンス」は、引用発明の「呼び掛け機」が「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波で、和パターン100,差パターン102及び全方向パターン104を、多重化された時間領域のデータシーケンスとして送信」したものである。そうすると、引用発明の「トランスポンダー」は、「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波」を受信可能なアンテナを備えることが明らかである。
ここで、前記イ及びウを踏まえると、引用発明の「トランスポンダー」が「送信されたデータシーケンスを受信する」ことと、本願発明1の「第2アンテナシステム」が「第1周波数のデルタパターン放射ビームと、第2周波数のサムパターン放射ビームとを受信する」こととは、「第2アンテナシステム」が「デルタパターン放射ビームと、サムパターン放射ビームとを受信する」点で共通する。

オ 前記アないしエを踏まえると、引用発明の「トランスポンダー」が「送信されたデータシーケンスを受信すると、受信信号強度測定を行い、Σ信号、Δ信号及びΩ信号の相対信号強度に依拠して実際にターゲットにされていると判断した場合は、呼び掛け機に応答し、それ以外の場合は、呼び掛け機に応答しない」ことと、本願発明1の「プロセッサ」が「受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定する」こととは、何らかの「装置」が「受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定する」点で共通する。

カ 前記アを踏まえると、引用発明の「車両106上に配置された呼び掛け機」が「ホーンアンテナアセンブリ20」「を備え」ることは、本願発明1の「第1サブシステム」が「第1アンテナシステムに連結した」ものであることに相当する。

キ 前記イ、ウ及びカを踏まえると、引用発明の「和パターン100」が「基本指向性を確立」することは、本願発明1の「サムパターン放射ビームのピークが第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心され」ることに相当し、引用発明の「差パターン102」の「ボアサイト照準方向において放射ヌルが存在する」ことは、本願発明1の「デルタパターン放射ビームのヌルが、第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心される」ことに相当する。

(2)一致点及び相違点
前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

ア 一致点
「第2サブシステムに対する第1サブシステムのアライメントを判定するシステムであって、
デルタパターン放射ビームと、サムパターン放射ビームとを送信する第1アンテナシステムと、
デルタパターン放射ビームと、サムパターン放射ビームとを受信する第2アンテナシステムと、
受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定する装置と、
を含み、
サムパターン放射ビームのピークが第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心され、
デルタパターン放射ビームのヌルが、第1アンテナシステムに連結した第1サブシステムの所望の方向軸に沿って調心されるシステム。」

イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では、「デルタパターン放射ビーム」が「第1周波数」とされ、「サムパターン放射ビーム」が「第1周波数とは異なる第2周波数」とされて、両者が「同時に」送信されるのに対し、引用発明では、「和パターン100」(本願発明1の「サムパターン放射ビーム」に相当する。)及び「差パターン102」(同じく「デルタパターン放射ビーム」に相当する。)がいずれも「37GHz付近のKa周波数帯内のミリメートル波」であって、同じ周波数であり、「多重化された時間領域のデータシーケンスとして」送信される点。

(イ)相違点2
本願発明1では、「受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定する装置」が「プロセッサ」であるのに対し、引用発明では、本願発明1の「受信したデルタパターン放射ビーム及びサムパターン放射ビームを処理し、第1アンテナシステムと第2アンテナシステムとの間における所定のアライメント基準の合否を判定する」に相当する処理、すなわち、「送信されたデータシーケンスを受信すると、受信信号強度測定を行い、Σ信号、Δ信号及びΩ信号の相対信号強度に依拠して実際にターゲットにされていると判断した場合は、呼び掛け機に応答し、それ以外の場合は、呼び掛け機に応答しない」処理が「トランスポンダー」によって行われており、「プロセッサ」によって行われるとまでは特定されていない点。

(3)相違点1についての判断
ア 相違点1は、要するに、デルタパターン放射ビームとサムパターン放射ビームとを区別できる状態で送信するために、両者の周波数を異ならせて同時に送信する周波数分割多重方式を採用するか(本願発明1)、両者の周波数を同一にして順次送信する時分割多重方式を採用するか(引用発明)の違いである。

イ そこで、引用発明において、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することが、引用文献1、引用文献3ないし引用文献5に記載又は示唆されているかを検討すると、以下のとおりである。

(ア)引用文献1の記載(前記第4の2)によれば、引用文献1には、航空交通管制システム、味方識別システム、車両識別システムなどに用いられる2次レーダシステムであって、互いに対向する質問機と応答機とを使用し、質問機が質問信号をSUMパターン(和)で、サイドローブ抑圧信号をDIFFパターン(差)で、それぞれ送信する2次レーダシステムが記載されている。
しかし、引用文献1に記載された2次レーダシステムでは、送信機17の出力をRFスイッチ18で切り替えることにより、質問信号をデュプレクサ8経由でSUMパターンのアンテナに、サイドローブ抑圧信号をデュプレクサ9経由でDIFFパターンのアンテナに、それぞれ供給しているから(段落0022、図4)、SUMパターンで送信される質問信号及びDIFFパターンで送信されるサイドローブ抑圧信号は、同時にではなく、順次(すなわち、時分割多重方式で)送信されることが明らかである。
したがって、引用文献1には、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することは記載されていないし、示唆されてもいない。

(イ)引用文献3の記載(前記第4の3)によれば、引用文献3には、基準点に設置された直交電気ダイポールアンテナ41、42、43から電磁界を放射し、遠隔物体のところでこの電磁界を検出し、解析することで、基準点に関する遠隔物体の位置及び方向を決定する装置が記載されている。そして、直交電気ダイポールアンテナ41、42、43のそれぞれから放射される電磁界は、互いに識別できるように多重化する必要があり、多重化の方式としては、時分割多重方式、周波数分割多重方式、位相分割多重方式及びスペクトラム拡散多重方式のいずれかを採用し得ることが記載されている。
しかし、引用文献3には、時分割多重方式と比較したときの周波数分割多重方式の利点など、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用する動機付けとなるようなことは記載されていない。むしろ、引用文献3には、時分割多重方式は回路を時分割にできるので、送信機及び受信機の簡単化が可能である反面、データ伝送が複雑なので、航空機に比べてゆっくり動く車両の位置の決定に都合がよい旨の記載がある(第18ページ左下欄第12行ないし右下欄第1行)。
引用発明は車両を対象としているから、引用文献3のこの記載に接した当業者が、車両の位置の決定に都合がよく、さらに、送信機及び受信機の簡単化が可能という利点を有する時分割多重方式に代えて、周波数分割多重方式を採用することを考えると認めることはできない。
したがって、引用文献3は、引用発明において、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することを示唆するものではない。

(ウ)引用文献4の記載(前記第4の4)によれば、引用文献4には、ローカライザ用の空中線装置では狭ビームを放射するディレクショナル系及び広ビームを放射するクリアランス系の空中線系をそれぞれ独立に設置し、各系からの放射ビームの周波数を異ならせているので、空中線を構成するエレメントの数が2系統分必要となり、コスト面及び信頼性の面で問題が生じ、また、2系統の空中線装置を別個に設置しなければならないので、設置面積が大きくなることが記載されている。そして、引用文献4には、ビーム諸元(例えば周波数やビーム幅)が互いに異なる2つのビームを1つの空中線列で形成することにより、これらの欠点を改善することが記載されている。
すなわち、引用文献4には、互いにビーム諸元が異なる2つのアンテナ系をそれぞれ独立に設けると、コスト、信頼性及び設置面積の点で不利であるので、互いにビーム諸元が異なる2つのビームを1つの空中線列で形成することが記載されているが、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することは、記載も示唆もされていない。
また、引用発明は、錐体ホーン26が和パターン100を提供し、一対の傾斜したセクターホーン28、30が差パターン102を提供するものであるから、互いにビーム諸元(パターン)が異なる2つのビームを、それぞれ専用のホーンアンテナから放射するものである。そして、引用文献2の段落0013に記載されているように、引用発明の特徴は、一対の傾斜したセクターホーン28、30を用いることによって、差パターンにおけるグレーティングローブの発生を大幅に抑制し、実質的に除去するという効果を奏する点にある。引用発明は、いわば、差パターンを提供する専用のアンテナを設けた点に特徴を有するものであるから、引用発明4の記載に従って引用発明の構成を変更し、互いにビーム諸元が異なる2つのビーム(和パターン100、差パターン102)を1つの空中線列で形成するようにすると、引用発明の特徴が失われる結果になる。したがって、そのような変更をすることには阻害要因が認められる。

(エ)引用文献5は、4線巻ヘリカルアンテナを備えるRFセンサに関する文献であり、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することを示唆するものではない。

ウ 以上のとおりであるから、引用発明において、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することは、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5のいずれにも記載又は示唆されているということはできない。
したがって、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできない。

(4)本願発明1についてのまとめ
前記(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、例えば引用文献1ないし引用文献4に記載された周知技術に基づいて、又はさらに例えば引用文献5に記載された周知技術に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2ないし本願発明7は、いずれも本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点1及び相違点2(前記1(2)イ(ア)及び(イ))で引用発明と相違する。そして、前記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、相違点1に係る本願発明2ないし本願発明7の構成も同様である。
したがって、本願発明2ないし本願発明7は、例えば引用文献1ないし引用文献4に記載された周知技術に基づいて、又はさらに例えば引用文献5に記載された周知技術に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本願発明8ないし本願発明12について
本願発明8は、本願発明1に係るシステムの動作を方法の発明として表現したものであり、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。また、本願発明9ないし本願発明12は、いずれも本願発明8の構成を全て含むから、本願発明8と同様に、相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
そして、前記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に思い付くことであるということはできないから、これに対応する本願発明8ないし本願発明12の構成も同様である。
したがって、本願発明8ないし本願発明12は、例えば引用文献1ないし引用文献4に記載された周知技術に基づいて、又はさらに例えば引用文献5に記載された周知技術に基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 原査定について
原査定は、2つの信号を識別できるように送信するにあたっての多重化方式として、周波数を異ならせる周波数分割多重方式は、例えば引用文献3及び引用文献4に記載されているように当業者に周知の技術であり、これを採用すれば当然に2つの信号を同時に送信できるようになるとした上で、デルタパターン放射ビームとサムパターン放射ビームとを送信する際に、両者を識別可能とする多重化方式として周波数分割多重方式を選択し、第1周波数のデルタパターン放射ビームと第2周波数のサムパターン放射ビームとを同時に送信するように構成することは、当業者が容易に想到できたことであると判断した。
しかし、時分割多重方式及び周波数分割多重方式がいずれも当業者に周知の技術であるとしても、引用文献1及び引用文献3ないし引用文献5のいずれにも、時分割多重方式に代えて周波数分割多重方式を採用することが記載も示唆もされていないことは、前記第5の1(3)のとおりである。
したがって、原査定の理由は、維持することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。
また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-28 
出願番号 特願2011-204987(P2011-204987)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
小林 紀史
発明の名称 アライメントシステム  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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