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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A44C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A44C
管理番号 1335088
審判番号 不服2016-18423  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-07 
確定日 2017-11-27 
事件の表示 特願2016- 2068「装身具の挟着構造」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-121382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成28年1月7日の特許出願であって、同年6月24日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年7月26日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされたが、同年10月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年12月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに特許請求の範囲及び明細書について手続補正がなされ、平成28年12月9日に依頼試験結果書及び平成29年8月13日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年12月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
平成28年12月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年7月26日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含むものである。(なお、下線部は補正箇所を明確にする目的で当審にて付与した。)

(1)補正前の請求項1
「一方の主装飾体と他方の挟着部材とに一対の取付脚部と取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に3枚以上のバネ性を備えた金属板材を介装してこれらを軸着し、
前記金属板材とともに該軸部を加締めてなる装身具の挟着構造であって、
当該加締めの際に前記取付脚部と取付基部とに接する前記3枚以上の金属板材の両側のものは前記取付脚部と取付基部に強固に係合しており、
また中間の金属板材はフリーの状態であって両側の金属板材と押し合うように接合しており、
一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記各金属板材の接合面に負荷がかかるようにしたことを特徴とする装身具の挟着構造。」

(2)補正後の請求項1
「一方の主装飾体と他方の挟着部材とに一対の取付脚部と取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に3枚以上のバネ性を備えた金属板材を介装してこれらを軸着し、
前記金属板材とともに該軸部を加締めてなる装身具の挟着構造であって、
当該加締めの際に前記取付脚部と取付基部とに接する前記3枚以上の金属板材の両側のものは前記取付脚部と取付基部に強固に係合しており、
また中間の金属板材はフリーの状態であって両側の金属板材とほぼ全面で押し合うように接合しており、
一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記各金属板材のほぼ全面の接合面に負荷がかかるようにしたことを特徴とする装身具の挟着構造。」

2 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、中間の金属板材における、両側の金属板材と押し合うように接合している部分を「ほぼ全面」と特定するとともに、同じく補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、両側の金属板材における、取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際に負荷がかかる部分を接合面の「ほぼ全面」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち同条第6項において準用する同法第126条第7項に規定される特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件に適合するものであるかについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願日前に頒布された特開2000-60612号公報(以下、「刊行物」という。)には、「耳飾り」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はバネ部材を使用することなく耳たぶを挟みつけて脱落を防止した耳飾りに関し、バネ部材を使用した際に余分な押圧力が耳たぶに作用して痛みを生じたり、長時間の着用が不可能になるという欠点のない耳飾りに関するものである。」

イ 「【0017】図1ないし図5において、耳飾り本体11は耳たぶを挟み付ける一対のアーム状部材1,1’で構成され、一端を連結軸2を介して軸着するとともに、開放端部を突き合わせる方向に回転自在に連結してある。上記連結軸2としてはかしめピンが望ましく、反対側に突出した先端をかしめて抜け止めしている。」

ウ 「【0019】上記一対の部材1,1’の一方の部材1の端部には、コ字状の軸受け部3が形成され、他方の部材1’の端部には上記軸受け部3内を回動する回転部4を形成している。上記コ字状の軸受け部3は、外側に向かってその間隔を広げてあり、また回転部4も外側に向かってその幅を広げてあるので、他方の部材1’を開いているときには緩く、また閉じた状態ではきつくなるようになっている。
【0020】上記回転部4とその両側のコ字状の軸受け部3との間には、回転調整部5が設置されている。この回転調整部5は、ワッシャ様の滑り板6と、その両側に配置され、回転部4と軸受け部3とに接する部分には波形面8等の滑り止め手段を備えた板ばね7,7’とからなるサンドイッチ状の構造を備えている。したがって、一方の板ばね7はコ字状の軸受け部3に接して固定状態のままであり、他方の板ばね7’は回転部4に接して回転部4とともに回動する。その際、滑り板6が各板ばね7,7’の他面と接して、所定の圧力を受けた状態で摺動しながら回転部4の回転を許容する。
【0021】上記ワッシャ様の滑り板6の材質としては、通常の平ワッシャとして使用されている金属板が使用できる。また板ばね7,7’の材質としては、弾性を備えた金属板が使用され、回転部4と軸受け部3とに接する部分には上記波形面8等の滑り止め手段が施され、滑り板6に接する部分には潤滑性が高まる加工、例えば平滑性を高めるための研磨、潤滑材のコーティング処理、潤滑材の塗布処理等が施されている。」

エ 「【0026】
【発明の効果】この発明によれば、連結軸に取り付けた回転部とその両側のコ字状の軸受け部との間に、滑り板と、その両側に配置され、回転部と軸受け部とに接する部分には滑り止め手段を備えた板ばねとからなるサンドイッチ状の回転調整部を設けたので、一対の部材を連結軸を中心に耳たぶを挟む方向に回動させると、上記回転調整部の作用で所定の抵抗を受ける。したがって、耳たぶを所定の圧力で挟んだ状態で脱落しない耳飾りを提供することができるようになった。
【0027】また、この発明によれば、回転調整部の摩耗が少なく、しかも長期間にわたって所定の押圧力で耳たぶを保持することが可能な耳飾りを提供することができるようになった。
【0028】以上のように、この発明の耳飾りによれば、繰返し使用しても長期間にわたって何ら故障のない耳飾りを提供することができるようになった。」

オ 上記摘記事項イの「耳飾り本体11は耳たぶを挟み付ける一対のアーム状部材1,1’で構成され、一端を連結軸2を介して軸着するとともに、開放端部を突き合わせる方向に回転自在に連結してある。
」及び上記摘記事項ウの「上記一対の部材1,1’の一方の部材1の端部には、コ字状の軸受け部3が形成され、他方の部材1’の端部には上記軸受け部3内を回動する回転部4を形成している。」との記載から、刊行物には、「一方のアーム状部材と他方のアーム状部材とに一対の軸受け部と回転部とを形成する」ことが開示されている。

カ 上記摘記事項ウの「上記ワッシャ様の滑り板6の材質としては、通常の平ワッシャとして使用されている金属板が使用できる。また板ばね7,7’の材質としては、弾性を備えた金属板が使用され」との記載からみて、滑り板6及び板ばね7,7’は、ともに金属板からなることが明らかである。そして、一般に「弾性」とは、力を加えると一時的に変形するものの、力を取り除くと元の状態に戻ろうとする性質を指すこと及び当該性質は「バネ」の持つ性質、すなわちバネ性といえることは、いずれも技術常識であるし、板ばね7,7’の名称からみても「バネ」の性質を備えたことが窺えることをふまえると、板ばね7,7’は、バネ性を備えたものと認められる。してみると、刊行物には、「滑り板と、その両側に配置されバネ性を備えた2枚の板ばねの3枚の金属板」が記載されているといえる。
そして、上記摘記事項イの「耳飾り本体11は耳たぶを挟み付ける一対のアーム状部材1,1’で構成され、一端を連結軸2を介して軸着するとともに、開放端部を突き合わせる方向に回転自在に連結してある。上記連結軸2としてはかしめピンが望ましく、反対側に突出した先端をかしめて抜け止めしている。」との記載、上記摘記事項ウの「上記回転部4とその両側のコ字状の軸受け部3との間には、回転調整部5が設置されている。この回転調整部5は、ワッシャ様の滑り板6と、その両側に配置され、回転部4と軸受け部3とに接する部分には波形面8等の滑り止め手段を備えた板ばね7,7’とからなるサンドイッチ状の構造を備えている」との記載からみて、「一対の軸受け部と回転部との間に」、上記「3枚の金属板」「を介装してこれらを軸着し」、「前記金属板とともに連結軸を加締め」ているといえる。

キ 上記摘記事項アの「この発明はバネ部材を使用することなく耳たぶを挟みつけて脱落を防止した耳飾りに関・・・するものである。」との記載、上記摘記事項イの「耳飾り本体11は耳たぶを挟み付ける一対のアーム状部材1,1’で構成され、一端を連結軸2を介して軸着するとともに、開放端部を突き合わせる方向に回転自在に連結してある。」との記載からみて、刊行物には「耳飾りの挟着構造」が開示されているといえる。

ク 上記摘記事項ウの「この回転調整部5は、ワッシャ様の滑り板6と、その両側に配置され、回転部4と軸受け部3とに接する部分には波形面8等の滑り止め手段を備えた板ばね7,7’とからなるサンドイッチ状の構造を備えている」との記載からみて、板ばね7,7’は両側の金属板といえる。また、上記摘記事項ウの「したがって、一方の板ばね7はコ字状の軸受け部3に接して固定状態のままであり、他方の板ばね7’は回転部4に接して回転部4とともに回動する。」との記載からみて、加締めの際に、板ばね7が軸受け部3に、板ばね7’が回転部4に、それぞれ強固に係合しているといえるから、刊行物には、「加締めの際に軸受け部と回転部とに接する3枚の金属板の両側のものは軸受け部と回転部に強固に係合していること」が記載されているといえる。

ケ 上記摘記事項ウの「一方の板ばね7はコ字状の軸受け部3に接して固定状態のままであり、他方の板ばね7’は回転部4に接して回転部4とともに回動する。その際、滑り板6が各板ばね7,7’の他面と接して、所定の圧力を受けた状態で摺動しながら回転部4の回転を許容する」との記載からみて、滑り板6はフリーな状態で各板ばね7,7’と押し合うように接合していると認められる。そして、滑り板6及び各板ばね7,7’が、所定の圧力を受けた状態で摺動しながら回転部4の回転を許容するというのであるから、一方のアーム状部材と他方のアーム状部材とにそれぞれ形成された軸受け部と回転部とが相対的に回動する際、それらの接合面に負荷がかかることも自明である。してみると、刊行物には、「中間の金属板はフリーの状態であって両側の金属板と押し合うように接合しており、一方のアーム状部材と他方のアーム状部材とにそれぞれ形成された軸受け部と回転部とが相対的に回動する際、各金属板の接合面に負荷がかかるようにした」ことが記載されているといえる。

(3)刊行物に記載された発明
刊行物の摘記事項ア?エ及び認定事項オ?ケを、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一方のアーム状部材と他方のアーム状部材とに一対の軸受け部と回転部とを形成するとともに、
前記一対の軸受け部と回転部との間に、滑り板と、その両側に配置されバネ性を備えた2枚の板ばねの3枚の金属板を介装してこれらを軸着し、
前記金属板とともに連結軸を加締めてなる耳飾りの挟着構造であって、
当該加締めの際に軸受け部と回転部とに接する前記3枚の金属板の両側のものは前記軸受け部と回転部に強固に係合しており、また中間の金属板はフリーの状態であって両側の金属板と押し合うように接合しており、
一方のアーム状部材と他方のアーム状部材とにそれぞれ形成された軸受け部と回転部とが相対的に回動する際、前記各金属板の接合面に負荷がかかるようにした耳飾りの挟着構造。」

(4)対比及び判断
ア 対比
補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「一方のアーム状部材」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、補正発明の「一方の主装飾体」に相当する。以下同様に、「他方のアーム状部材」は「他方の挟着部材」に、「軸受け部」は「取付脚部」に、「回転部」は「取付基部」に、「金属板」は「金属板材」に、「連結軸」は「軸部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「耳飾り」は、本願の明細書の段落【0001】の「この発明はイヤリングや指輪、ブレスレット等に適用される装身具の挟着構造に関するものである。」との記載からみて、補正発明の「装身具」に包含されるものと認められる。
そして、引用発明の「滑り板と、その両側に配置されバネ性を備えた2枚の板ばねの3枚の金属板」は、補正発明の「3枚以上の金属板材」ということができる。

してみると、補正発明と引用発明とは、以下の点において一致する。

(一致点)
「一方の主装飾体と他方の挟着部材とに一対の取付脚部と取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に3枚以上の金属板材を介装してこれらを軸着し、
前記金属板材とともに該軸部を加締めてなる装身具の挟着構造であって、
当該加締めの際に前記取付脚部と取付基部とに接する前記3枚以上の金属板材の両側のものは前記取付脚部と取付基部に強固に係合しており、
また中間の金属板材はフリーの状態であって両側の金属板材と押し合うように接合しており、
一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記各金属板材の接合面に負荷がかかるようにした装身具の挟着構造。」

そして、補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

(相違点1)
補正発明の金属板材は、3枚以上のバネ性を備えた金属板材であるのに対し、引用発明では、3枚の金属板のうち両側の金属板はバネ性を備えているものの、滑り板がバネ性を備えたものであるか否か明らかでない点。

(相違点2)
補正発明は、中間の金属板材は両側の金属板材とほぼ全面で押し合うように接合しているのに対し、引用発明は、中間の金属板は両側の金属板と押し合うように接合しているものの、その押し合うように接合している範囲がほぼ全面といえるか否か明らかでない点。

(相違点3)
一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際に、補正発明は、各金属板材のほぼ全面の接合面に負荷がかかるのに対し、引用発明は、その負荷がかかる範囲が、各金属板のほぼ全面の接合面といえるか否か明らかでない点。

イ 判断
上記相違点1?3について検討する。

(ア)相違点1について
刊行物の摘記事項ウには、滑り板6の材質として、通常の平ワッシャとして使用されている金属板が使用できることが記載されている。技術常識を参酌すれば、通常の平ワッシャとしては、ステンレス、鋼、銅、アルミニウム等の種々の金属を使用することができる。上記(2)オで指摘したとおり、バネ性とは、力を加えると一時的に変形するものの、力を取り除くと元の状態に戻ろうとする性質を意味するところ、上記のような金属を使用した場合に、滑り板6がバネ性を有するか否かについては、主に板厚によると認めることができる。これは、本願の段落【0018】の「前記金属板材9の厚さを0.05?0.25mmの範囲のものとした理由は、0.05mm以下の場合にその弾性が生かせなくなってしまうためである。また0.25mm以上の場合には、金属板材9そのものの弾性がなくなってしまうためである。」との記載とも符合している。すなわち、滑り板6は、その板厚が薄ければバネ性を有するものとなり、厚ければバネ性のないものとなると認められる。
そして、刊行物には、滑り板6の板厚についての明示的な記載はないものの、耳飾りの一般的な寸法を踏まえると、耳飾りの軸部に使用される滑り板6として、バネ性を有する程度に薄い板厚のものを用いることは、当業者であれば適宜なし得たことといえる。

(イ)相違点2及び3について
刊行物には、引用発明の中間の金属板(滑り板6)が両側の金属板(板ばね7,7’)と押し合うように接合している範囲及び各金属板の接合面の負荷がかかる範囲についての明示的な記載は見あたらない。しかしながら、上記2(2)の摘記事項及び認定事項からみて、引用発明は3枚の金属板を押し合うように接合し、それらの接合面にかかる負荷を生じさせることにより、耳たぶを挟み付けて脱落を長期間にわたり防止するものであることをふまえれば、それらの範囲を可能な限り大きくすべきことは技術常識といえる。してみると、引用発明においても、それらの範囲はともに金属板のほぼ全面であるといえるし、仮にそうでないとしても、ほぼ全面とすることは当業者が容易に想到できたことである。

そして、本件明細書に記載された補正発明の効果をみても、刊行物に接した当業者であれば認識できたものであって、格別なものということはできない。

よって、補正発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。

(ウ)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成28年12月7日付けの審判請求書において、刊行物の板ばね7,7’がコ字状(浅い皿状))断面を有することを前提として、刊行物に記載された3枚の金属板材の間は線接触となるのに対し、本願発明の3枚以上の金属板材の間は面接触であるから、明らかにその負荷は性質の異なるものになると主張する。
しかしながら、請求人の指摘するとおり刊行物の板ばね7,7’がコ字状(浅い皿状))断面を有することが図示されていたとしても、特許出願における図面とは、一般的に発明の概念を示す目的で作成されるものであって、いわゆる設計図面のように、図示された形状や寸法を正確に表現したものとはいえない。そして、刊行物の図1?4についても、図示された形状や寸法を正確に表現したものと認める理由は見出せないから、耳飾りの一部としての板ばね7,7’の概念を示しているに留まるものというべきである。
そして、上記(2)カで検討したように、刊行物の板ばね7,7’の材質が弾性を備えた金属板である以上、それらがバネ性を備えた金属板材といえることに変わりはない。
仮に、刊行物の板ばね7,7’の形状、構造が、刊行物の図1?4に図示されたものであったとしても、特定の材質、加工方法を採用した場合に、請求人の主張するような線接触状態が生じることがあるとしても、コ字状(浅い皿状)断面に形成すれば、必然的に線接触状態が生じるとはいえないのであるから、請求人の主張はその前提を欠くものであって、採用することができない。

さらに、審判請求人は、上記審判請求書において、平成28年12月9日に提出した依頼試験結果書に基づいて、本件発明は非常に顕著な効果を奏すると主張する。
しかしながら、その依頼試験結果書をみても、ピアリング二枚ワッシャー初回、ピアリング二枚ワッシャー3000回開閉、ピアリング三枚ワッシャー初回、ピアリング三枚ワッシャー3000回開閉、強度試験、規格外引張試験、万能材料試験機 オリエンテック RTC-1310、試験速度30mm/min、試験開始点から変位15mmまでの荷重を測定等と記載されているのみで、具体的な試料が特定できない上、記載された以外のどのような条件で試験を行ったのか不明であって、請求人の主張を採用することができない。

(5)本件補正についての結び
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。よって、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきものである。

よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
本件補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成28年7月26日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(1)に示すとおりのものであると認める。

第4 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、上記第2 2(2)に示したとおりである。そして、引用発明は上記第2 2(3)で認定したとおりのものである。

第5 対比及び判断
本願発明は、補正発明から「ほぼ全面で」及び「ほぼ全面の」という発明特定事項を削除したものに相当する。すなわち、補正発明は、本願発明の発明特定事項の全てを含んでいる。
そうすると、補正発明が上記第2 2(4)に示したように、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様に、引用発明から容易に発明することができたものである。

第6 結び
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-04 
結審通知日 2017-10-05 
審決日 2017-10-17 
出願番号 特願2016-2068(P2016-2068)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A44C)
P 1 8・ 575- Z (A44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 良憲  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 根本 徳子
内藤 真徳
発明の名称 装身具の挟着構造  
代理人 土橋 博司  

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