• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
審判 全部申し立て 特174条1項  G06F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06F
管理番号 1335136
異議申立番号 異議2016-701192  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-27 
確定日 2017-11-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5941935号発明「タッチパネル装置及びその電極構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5941935号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14-17〕、〔18、19〕について訂正することを認める。 特許第5941935号の請求項1、7ないし19に係る特許を維持する。 特許第5941935号の請求項2ないし6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5941935号の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、平成26年2月25日に特許出願され、平成28年5月27日にその特許の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人高橋昌嗣により特許異議の申立てがされ、平成29年5月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年8月7日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人高橋昌嗣から平成29年9月25日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を下記のとおり訂正する。
「粗さの範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」を「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に訂正する。

「前記金属導電層の表面又は前記黒化層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」を「前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」に訂正する。

「・・・を備える艶消粗化構造と、を含むことを特徴とする電極構造。」を「・・・を備える艶消粗化構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されていることを特徴とする電極構造。」に訂正する。

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7の「前記黒化層の反射率の範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項6に記載の電極構造。」を、「前記黒化層の反射率の範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」に訂正する。

訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8の「前記電極構造は、基板に形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電極構造。」を、「前記電極構造は、基板に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」に訂正する。

訂正事項9
特許請求の範囲の請求項14を下記のとおり訂正する。
「粗さの範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」を「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に訂正する。

「前記金属導電層の表面又は前記黒化層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」を「前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」に訂正する。

「・・・1つ又は複数の艶消粗化構造と、を含むことを特徴とするパネル装置。」を「・・・1つ又は複数の艶消粗化構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」に訂正する。

訂正事項10
特許請求の範囲の請求項18を下記のとおり訂正する。
「粗さの範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」を「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に訂正する。

「・・・1つ又は複数の艶消粗化構造と、を含むことを特徴とするパネル装置。」を「・・・1つ又は複数の艶消粗化構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0049】には「図6Aに示す実施例における艶消粗化構造601、602並びに本実施例の第1の艶消粗化層601’及び第2の艶消粗化層602’の粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲は、好ましくは0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さの範囲は、Ra=0.02μm?0.1μmである。」及び段落【0063】には「艶消粗化層724は、電極構造72の表面粗さに影響を及ぼすことができ、耐光反射の性質と、感光性又は感熱性耐食剤の電極構造72表面への付着性を高める能力とを有するため、別途タッチパネルに防眩処理膜を増設する必要がない。従って、コストを低減できるだけでなく、同時に微細回路のエッチングに影響を及ぼすこともない。艶消粗化層724の表面粗さ範囲は、好ましくはRa=0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さはRa=0.02μm?0.1μmであるため、光学的ヘイズ値は2よりも小さい。」と記載されている。

訂正事項1の「前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1には「前記金属導電層の表面又は前記黒化層に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」と記載されている。

訂正事項1の「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3には「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」と記載されている。また願書に添付した明細書の段落【0061】には「電極構造72内に設けられた艶消粗化層724は、艶消粗化構造であり、」と記載されている。同じく、段落【0062】には「艶消粗化層724の材料は、金属導電層723と異なっていてもよい。」と記載されている。

訂正事項1の「前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項6には「前記黒化層にも、前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成される」と記載されている。また願書に添付した明細書の段落【0035】には「艶消粗化層403には、黒化層404が更に形成されてもよい。黒化層404は、艶消粗化層403の表面に引き続いて形成され、電界、スパッタリング、蒸着又は塗布によって艶消粗化層403の上に粗い黒化層構造として形成される。従って、非平面の連続構造が金属導電層の上方に形成されることで・・・可能である。」と記載されている。同じく、段落【0076】には「金属導電層923が直接浸食又は加工されて艶消粗化構造が形成され、艶消粗化層が形成されることで、引き続き形成される構造にも粗面が形成される。例えば、第1の黒化層924及び第2の黒化層925のいずれにも金属導電層923の艶消粗化構造に伴って粗面が形成される。」と記載されている。

訂正事項1の「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0062】には「不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造が形成されるように艶消粗化層724をコーティングする、」と記載されている。

上記によれば、
「表示装置に適用される電極構造において、
上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、
前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、
粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える艶消粗化構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されていることを特徴とする電極構造。」の発明は明細書に記載されていると認められる。
上記訂正事項1の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において電極構造を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正事項2?訂正事項6は、請求項2?6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正事項7及び訂正事項8は、請求項2?6を削除するのに伴い、請求項7、8が引用する請求項を請求項1とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正事項9の「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0049】には「図6Aに示す実施例における艶消粗化構造601、602並びに本実施例の第1の艶消粗化層601’及び第2の艶消粗化層602’の粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲は、好ましくは0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さの範囲は、Ra=0.02μm?0.1μmである。」「艶消粗化層724は、電極構造72の表面粗さに影響を及ぼすことができ、耐光反射の性質と、感光性又は感熱性耐食剤の電極構造72表面への付着性を高める能力とを有するため、別途タッチパネルに防眩処理膜を増設する必要がない。従って、コストを低減できるだけでなく、同時に微細回路のエッチングに影響を及ぼすこともない。艶消粗化層724の表面粗さ範囲は、好ましくはRa=0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さはRa=0.02μm?0.1μmであるため、光学的ヘイズ値は2よりも小さい。」と記載されている。

訂正事項9の「前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1には「前記金属導電層の表面又は前記黒化層に形成されるように前記電極構造中に形成されており、」と記載されている。

訂正事項9の「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3には「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」と記載されている。また願書に添付した明細書の段落【0061】には「電極構造72内に設けられた艶消粗化層724は、艶消粗化構造であり、」と記載されている。同じく、段落【0062】には「艶消粗化層724の材料は、金属導電層723と異なっていてもよい。」と記載されている。

訂正事項9の「前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項6には「前記黒化層にも、前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成される」と記載されている。また願書に添付した明細書の段落【0035】には「艶消粗化層403には、黒化層404が更に形成されてもよい。黒化層404は、艶消粗化層403の表面に引き続いて形成され、電界、スパッタリング、蒸着又は塗布によって艶消粗化層403の上に粗い黒化層構造として形成される。従って、非平面の連続構造が金属導電層の上方に形成されることで・・・可能である。」と記載されている。同じく、段落【0076】には「金属導電層923が直接浸食又は加工されて艶消粗化構造が形成され、艶消粗化層が形成されることで、引き続き形成される構造にも粗面が形成される。例えば、第1の黒化層924及び第2の黒化層925のいずれにも金属導電層923の艶消粗化構造に伴って粗面が形成される。」と記載されている。

訂正事項9の「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっている」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0062】には「不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造が形成されるように艶消粗化層724をコーティングする、」と記載されている。

上記によれば、
「少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」の発明は明細書に記載されていると認められる。
上記訂正事項9の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において電極構造を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正事項10の「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0049】には「図6Aに示す実施例における艶消粗化構造601、602並びに本実施例の第1の艶消粗化層601’及び第2の艶消粗化層602’の粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲は、好ましくは0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さの範囲は、Ra=0.02μm?0.1μmである。」「艶消粗化層724は、電極構造72の表面粗さに影響を及ぼすことができ、耐光反射の性質と、感光性又は感熱性耐食剤の電極構造72表面への付着性を高める能力とを有するため、別途タッチパネルに防眩処理膜を増設する必要がない。従って、コストを低減できるだけでなく、同時に微細回路のエッチングに影響を及ぼすこともない。艶消粗化層724の表面粗さ範囲は、好ましくはRa=0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さはRa=0.02μm?0.1μmであるため、光学的ヘイズ値は2よりも小さい。」と記載されている。

訂正事項10の「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3には「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」と記載されている。また願書に添付した明細書の発明の段落【0061】には「電極構造72内に設けられた艶消粗化層724は、艶消粗化構造であり、」と記載されている。同じく、段落【0062】には「艶消粗化層724の材料は、金属導電層723と異なっていてもよい。」と記載されている。

訂正事項10の「前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、」に関連する記載として、願書に添付した特許請求の範囲の請求項6には「前記黒化層にも、前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成される」と記載されている。また願書に添付した明細書の段落【0035】には「艶消粗化層403には、黒化層404が更に形成されてもよい。黒化層404は、艶消粗化層403の表面に引き続いて形成され、電界、スパッタリング、蒸着又は塗布によって艶消粗化層403の上に粗い黒化層構造として形成される。従って、非平面の連続構造が金属導電層の上方に形成されることで・・・可能である。」と記載されている。同じく、段落【0076】には「金属導電層923が直接浸食又は加工されて艶消粗化構造が形成され、艶消粗化層が形成されることで、引き続き形成される構造にも粗面が形成される。例えば、第1の黒化層924及び第2の黒化層925のいずれにも金属導電層923の艶消粗化構造に伴って粗面が形成される。」と記載されている。

訂正事項10の「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっている」に関連する記載として、願書に添付した明細書の段落【0062】には「不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造が形成されるように艶消粗化層724をコーティングする、」と記載されている。

上記によれば、
「少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記1つ又は複数の電極構造と前記基板の表面に同時に形成され、前記表面構造を介して前記電極構造と前記基板に入る光線が反射して形成された光反射を散乱させる艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」の発明は明細書に記載されていると認められる。
上記訂正事項10の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において電極構造を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

また、訂正前の請求項1?13は、請求項2?13が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。そして、訂正前の請求項14?17は、請求項15?17が、訂正の請求の対象である請求項14の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項18,19は、請求項19が、訂正の請求の対象である請求項18の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、これらの訂正の請求は一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14-17〕、〔18、19〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び7ないし19に係る発明(以下「本件発明1及び7ないし19」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び7ないし19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1
「表示装置に適用される電極構造において、
上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、
前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、
粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える艶消粗化構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されていることを特徴とする電極構造。」

本件発明7
「前記黒化層の材料は、銅、銀、アルミニウム、モリブデン、ニッケル、クロム、タングステン、チタン、シリコン、亜鉛、スズ若しくは鉄、又はそれらの組み合わせから成り、
前記黒化層の厚さ範囲は0.001μm?1μmであり、前記黒化層の反射率の範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」

本件発明8
「前記電極構造は、基板に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」

本件発明9
「前記基板の表面には艶消粗化構造が形成され、前記艶消粗化構造の材質は前記基板と同一であることを特徴とする請求項8に記載の電極構造。」

本件発明10
「前記艶消粗化構造は、前記基板に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記基板と異なることを特徴とする請求項8に記載の電極構造。」

本件発明11
「前記金属導電層と前記基板との間に形成され、前記電極構造と前記基板とを結合し、前記電極構造と基板との接着性を向上させるための接着層を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電極構造。」

本件発明12
「前記接着層は、高分子、酸化物若しくは金属材料、又はそれらの組み合わせから成り、
前記接着層の厚さ範囲は0.001μm?1μmであり、前記接着層の反射率範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項11に記載の電極構造。」

本件発明13
「前記艶消粗化構造の粗さの範囲はRa=0.02μm?0.1μmであり、光学的ヘイズ値は2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電極構造。」

本件発明14
「少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、 粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」

本件発明15
「前記基板の表面に艶消粗化構造が形成されていることを特徴とする請求項14に記載のパネル装置。」

本件発明16
「前記基板と前記1つ又は複数の電極構造との組み合わせが前記パネル装置内の他の部材と結合される場合、光学接着剤が封入されることを特徴とする請求項14に記載のパネル装置。」

本件発明17
「前記光学接着剤は、粗化によって上昇した透光領域のヘイズ値を低減することで透光領域の透光率を増加させるように、前記基板と前記1つ又は複数の電極構造の表面の艶消粗化構造との間隙を充填するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載のパネル装置。」

本件発明18
「少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記1つ又は複数の電極構造と前記基板の表面に同時に形成され、前記表面構造を介して前記電極構造と前記基板に入る光線が反射して形成された光反射を散乱させる艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。」

本件発明19
「前記電極構造と前記基板の表面の艶消粗化構造は、UV接着剤、有機シリコン樹脂硬化層又は無機シリコン樹脂硬化層を塗布することによって形成されることを特徴とする請求項18に記載のパネル装置。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?19に係る特許に対して平成29年5月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1?19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証?甲第5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?19に係る特許は、取り消されるべきものである。

イ 請求項1?19に係る特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

ウ 請求項1?19に係る特許は、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

エ 請求項1?19に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)甲号証の記載
ア.甲第1号証(特開2014-16944号公報)には、図とともに以下の記載がある。
「【請求項1】
基材と、
前記基材に設けられた電極であって、位置検出に用いられる検出電極と、前記検出電極に接続された取出電極と、を含む電極と、を備え、
前記電極は、任意の厚さ方向断面においてその少なくとも一部分を占める金属層を含み、
前記検出電極と前記取出電極との接続箇所において、前記検出電極の金属層および前記取出電極の金属層は、一体的に形成されており、
前記検出電極は、導線が多数の開口領域を画成するメッシュパターンにて配置されている導電体メッシュを含み、前記導電体メッシュの前記導線の高さは0.2μm以上2μm以下であり、前記導電体メッシュの前記導線の幅は1μm以上5μm以下であり、
前記導電性メッシュの前記導線は、前記基材側に位置する基端面と、前記基端面に対向して配置された平坦な先端面と、前記基端面と前記先端面との間を接続する一対の側面と、を有する、タッチパネルセンサ。」

「【0001】
本発明は、電極を有したタッチパネルセンサに係り、とりわけ、電極が低抵抗であるとともに電極をなす導線が細線化されたタッチパネルセンサに関する。また、本発明は、タッチパネルセンサを含むタッチパネル装置、並びに、タッチパネルセンサまたはタッチパネル装置を含む表示装置に関する。
・・・中略・・・
【0009】
加えて、図21に示すように、得られた金属導線の断面形状は、基材から突出する三角形形状となる。このような金属導線は、幅が狭い上に高さも低いため、十分な導電率を呈することはない。したがって、このタッチパネルセンサの面抵抗率は高くなってしまい、位置検出のためのセンシング感度が低下する。加えて、このようなタッチパネルセンサを、突出した金属導線が観察者側を向くようにしてタッチパネル装置や表示装置に組み込んだ場合、必要な面抵抗率を有する金属導線が視認されやすくなる。この結果、タッチパネルセンサの金属導線に起因した濃淡のムラや、画像表示機構の画素配列や他のタッチパネルセンサの金属導線等との干渉に起因したモアレが、視認されやすくなる。」

「【0035】
図2に示された例では、タッチパネル装置20の積層体20aは、観察者側、すなわち、画像表示機構12とは反対の側から順に、カバー層28、接着層25、第1タッチパネルセンサ31、接着層24、第2タッチパネルセンサ32、および、低屈折率層23を有している。すなわち、図2に示された例では、タッチパネル装置20は、二つのタッチパネルセンサ30を含んでいる。」

「【0099】
図4は、導電性メッシュ55の細導線60の断面形状を示しているが、検出電極50の接続導線51も、幅が異なるだけで、細導線60と同様の断面形状を有している。すなわち、図4に示すように、検出電極50をなす細導線60および接続導線51は、基材35側に位置する基端面66と、基端面66に対向して配置された平坦な先端面67と、基端面66と先端面67との間を接続する一対の側面68と、を有している。そして図4に示された例において、基端面66と先端面67は互いに平行となっている。そして、図4に示す例において、細導線60および接続導線51は、基材35側に位置して基端面66を形成する金属層61と、金属層61上に設けられ先端面67を形成する黒化層62と、有している。接続導線51と導電性メッシュ55の細導線60との間で、金属層61は一体的に形成されており、且つ、黒化層62も一体的に形成されている。
【0100】
ここで金属層61は、高導電率を有した金属材料を用いて形成された層であり、例えば、銅、アルミニウム、鉄、銀、および、これらの合金からなる層である。ところで、金属材料からなる金属層61は、比較的に高い反射率を呈する。したがって、タッチパネルセンサ30の検出電極50をなす金属層61によって外光が反射されると、タッチパネル装置20のアクティブエリアAa1を介して観察される画像表示機構12の画像コントラストが低下してしまう。そこで、黒化層62が、金属層61の観察者側に配置されている。この黒化層62によって、コントラストを向上させ、画像表示機構12によって表示される画像の視認性を改善することができる。
【0101】
黒化層62としては、種々の既知の層を用いることができる。金属層61を部分的に黒化処理して、金属酸化物や金属硫化物からなる黒化層62を金属層61の一部分から形成してもよい。また、黒色材料の塗膜や、ニッケルやクロム等のめっき層等のように、金属層61上に黒化層62を設けるようにしてもよい。一具体例として、金属層61が鉄からなる場合には、450?470℃程度のスチーム雰囲気中に金属層61を10?20分間さらして、金属層61の表面に1?2μm程度の酸化膜(黒化膜)を形成するようにしてもよい。別の方法として、鉄からなる金属層61を濃硝酸などで薬品処理して、金属層61の表面に酸化膜(黒化膜)を形成するようにしてもよい。また、金属層61が銅からなる場合には、硫酸、硫酸銅及び硫酸コバルトなどからなる電解液中にて、金属層61を陰極電解処理して、カチオン性粒子を付着させるカソーディック電着が好ましい。該カチオン性粒子を設けることでより粗化し、同時に黒色が得られる。カチオン性粒子としては、銅粒子、銅と他の金属との合金粒子が適用できるが、好ましくは銅-コバルト合金の粒子である。該カチオン性粒子の粒径は、黒濃度の点から、平均粒径0.1?1μm程度が好ましい。なお、ここで用いる黒化層62とは、黒色化された層のみでなく、粗化された層も含む。」

「【0111】
(タッチパネルセンサ30の製造方法)
次に、以上に説明してきたタッチパネルセンサ30の製造方法の一例について、図14を主に参照しながら、説明する。
・・・中略・・・
【0113】
次に、図14(b)に示すように、電極40の金属層61を構成するようになる金属膜81を基材35上に形成する。金属膜81は、銅箔等の金属箔を接着剤層を介して基材にラミネートしたものから形成するのではなく、接着剤層を介さずに基材35上に直接的に形成する。すなわち、入手可能な特定の厚みを有した金属箔を基材35上に積層するのではなく、基材35上に所望の厚みを有した金属膜81を成膜する。金属膜81の成膜方法としては、スパッタリング、蒸着、電界めっき、無電界めっき等の種々の方法を採用することができる。
【0114】
上述したように、電極40の高さ(厚さ)Hを0.2?2μmとするため、0.2?2μmの厚みで金属膜81を成膜しようとすると、蒸着を採用することが好ましい。蒸着によれば、0.2?2μmの厚みの金属膜81、とりわけ0.5μm以上の厚みの金属膜81を比較的に短時間で安価に製造することができる。また、別の方法として、スパッタリングと他の方法、例えばスパッタリングと電界めっきとを含む複数工程にて、金属膜81を成膜することも有効である。スパッタリングによれば、密着性に優れた下地層を形成することができ、且つ、その後の電界メッキによって、金属膜81の厚みを比較的迅速に所望の厚みまで増加させることができる。
【0115】
その後、図14(c)に示すように、電極40の黒化層62を構成するようになる黒化膜82を、金属膜81上に形成する。既に説明したように、金属膜81の表層部分を黒化処理して、金属膜81の一部分に金属酸化物や金属硫化物からなる黒化膜82を形成してもよい。また、黒色材料の塗膜や、ニッケルやクロム等のめっき層のように、金属膜81上に黒化膜82を設けるようにしてもよい。
【0116】
次に、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより、基材35上の金属膜81および黒化膜82を所望のパターンにて、パターニングする。具体的には、まず、黒化膜82上にレジスト膜83を設け、当該レジスト膜83をパターン露光および現像してパターニングする(図14(d))。次に、パターニングされたレジスト膜83をマスクとして、黒化膜82および金属膜81をエッチングする。これにより、黒化膜82から黒化層62が形成され、金属膜81から金属層61が形成される。このようにして、基材35上に、金属層61および黒化層62を含んでなる電極40が、所望のパターンで形成される(図14(e))。
【0117】
その後、電極40上のレジスト膜83を除去することによって、タッチパネルセンサ30が得られる。以上のような製造方法によれば、金属層61および黒化層62からなる検出電極50と、同じく金属層61および黒化層62からなる取出電極45とを、一体的に同一のプロセスで製造することができ、生産効率上好ましい。」

以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基材35と、
前記基材35に設けられた電極であって、位置検出に用いられる検出電極50と、前記検出電極50に接続された取出電極と、を含む電極と、を備え、
前記検出電極50をなす細導線60および接続導線51は、基材35側に位置して基端面66を形成する金属層61と、金属層61上に設けられ先端面67を形成する黒化層62とを有し、金属層61および黒化層62の幅は同じ幅であって、黒化層62は、表面に粗化された層を含むものであり、黒化層62は、金属層61によって生じる外光の反射を除去し、画像コントラストを向上して表示される画像の視認性を改善する電極構造を有する、表示装置に適用されるタッチパネルセンサ。」

イ.甲第2号証(特開2012-79238号公報)には、次の記載がある。
「【請求項6】
該パターン化された導電性金属細線はタッチ面側に黒色不透明層を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の静電容量タッチパネル。
【請求項7】
該黒化層の表面粗さRaが0.15以下であることを特徴とする請求項6に記載の静電容量方式のタッチパネル。」

「【0039】
図9は、本発明のタッチパネルの態様である図1(a)及び図1(b)、図2(c)及び図2(d)の第一と第二のセンサー電極アレイ11と12のタッチ者側表面に黒化層20及び20’ を設けた図である。図9(b)の第二センサー電極アレイの黒化層は、易接着層と電極アレイの間に設けられている。本発明において黒化層は、導電性金属細線を形成する導電性金属が有する金属光沢による着色、高い反射率に起因するタッチパネル画面の見にくさを緩和すること、あるいは導電性金属の腐食やマイグレーションを防止すること、などの目的で設置される層である。黒化層の色は、実質的に黒色と認知できるものが好ましいが、金属光沢を抑えることができれば必ずしも純黒色でなくともよい。黒化層の位置は、前記の目的から、導電性金属層に接してタッチ者側であることが好ましい。この観点からは、図9(b)の第二センサー電極アレイの黒化層よりは、図9(a)の第二センサー電極アレイの黒化層の位置構成が、腐食やマイグレーション防止の観点でより好ましい。」

「【0050】
〔黒化層に用いる材料と層の形成方法〕
本発明の黒化層を構成する主成分はニッケル、クロム、亜鉛、錫、及び銅の中から選択される元素を含む少なくとも1種の化合物であれば良く、導電性であっても非導電性であっても良い。本発明の方法に加えて、染色法等の方法を組み合わせて使用してもよい。本発明における黒化層の好適な積層方法の例としては、メッキ処理とケミカルエッチング法が挙げられる。
メッキ処理としては公知の黒色メッキと呼ばれるものであれば特に制限はなく、黒色ニッケルメッキ、黒色クロムメッキ、黒色Sn-Ni合金メッキ、Sn-Ni-Cu合金メッキ、黒色亜鉛クロメート処理等が例として挙げられる。具体的には、日本化学産業(株)製の黒色メッキ浴(商品名、ニッカブラック、Sn-ni合金系)、(株)金属化学工業製の黒色メッキ浴(商品名、エボニ-クロム85シリ-ズ、Cr系)、ディップソール(株)性クロメート剤(商品名、ZB-541、亜鉛メッキ黒色クロメート剤)を使用することができる。メッキ法としては無電解メッキ、電解メッキのどちらの方法でも良く、緩やかな条件であっても高速メッキであっても良い。メッキ厚みは黒色として認知できれば厚みは限定されないが、通常のメッキ厚みは5μm以下が好適である。」

「【0053】
上記黒化層の表面は、ある程度の表面粗さ(Ra)を有することが好ましい。Raは0.15μm以下であることが好ましく、0.05?0.14μmであることがより好ましい。Raが0.15μmを越えると耐擦傷性や密着が悪化することがあり好ましくない。Raの測定法としては、大別して面を直線的に触針で測定するもの(触針)と、光学的に測定するもの(光切断法、光線反射法)と分類され、そのどちらで測定してもよい。導電性細線の線幅が狭く、測定エリアが確保できない場合は、露光エリアを拡げる以外は同じ操作で作成した導電性ベタ部分を測定し、Raを算出する。」

ウ.甲第3号証(登録実用新案第3188010号公報)には、次の記載がある。
「【0013】
図1は、本考案の第1の実施例に係るタッチスクリーンに用いられる電極構造の断面図である。・・・中略・・・電極線19は、・・・中略・・・導電層14と、導電層14の上に設けられる第1の耐食層15と、を含む。
【0014】
詳しく説明すると、第1の接着層12は、フレキシブル基板11の上に被覆されており、フレキシブル基板11に対する付着性を向上するのに用いられる。第1の接着層12は、反射防止、干渉防止、干渉縞防止、耐摩耗性、引っかき傷防止などの特性を有すると共に、目視快適性を提供することができる。第2の接着層13は、第1の接着層12の上に被覆されており、導電層14と第1の接着層12との間の接着性を向上すると共に、電極線19全体の導電率を維持するのに用いられる・・・中略・・・電極線19は正常の線幅を保つことができる。」

「【0021】
本考案において、第1の耐食層15を形成するための材料は、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、クロム、タングステン、チタン、珪素、錫、亜鉛、鉄、及びそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。好ましい実施例において、第1の耐食層15の厚さは、0.001μm?1μmであることが好ましい。第1の耐食層15は、1%?50%の反射率、好ましくは30%以下の反射率を有する。」

「【0025】
図3は、本考案の第3の実施例に係るタッチスクリーンに用いられる電極構造の断面図である。・・・中略・・・一方、図2との相違点として、図4において、第2の耐食層46は、粒子直径が900nmよりも小さい粒子状表面を有する。好ましくは、第2の耐食層46は、粒子直径が300nm?800nmである粒子状表面を有する。・・・中略・・・第2の耐食層26、36、46は、電極に対する腐食を妨げるだけではなく、金属電極による光反射を低減する効果も有する。・・・中略・・・図2との相違点として、図5において、第1の接着層52、第2の接着層53、導電層54、第1の耐食層55の何れも非平坦で且つ粗面化の表面を有するため、金属電極による光反射を更に低減することができる。」

エ.甲第4号証(特開2009-53893号公報)には次の記載がある。
「【0010】
本発明において、透光性基板の表面には透光性電極パターンを形成してあるため・・・中略・・・
透光性電極パターンが形成されている領域での反射率が他の領域に比して高くなるが、本発明では、透光性電極パターンの下層側に光散乱性付与用の凹凸に形成し、かかる凹凸を透光性電極パターンの表面に反映させている。従って、透光性電極パターンの表面には光散乱性が付与されているため、反射率(光沢度)が低下する。それ故、透光性電極パターンが形成されている領域と、透光性電極パターンが形成されていない領域との反射率の差を解消できるので、透光性電極パターンの存在が目立つことがない。」

「【0021】
本発明において、前記第1の透光性電極パターンおよび前記第2の透光性電極パターンを各々、前記層間絶縁膜の上層および下層に形成した構成を採用した場合、前記層間絶縁膜は、下層側から反映される凹凸とは別の光散乱性付与用の凹凸を表面に備えた凹凸形成膜からなることが好ましい。下層側に形成した凹凸を反映させる際、前記第1の透光性電極パターンおよび前記第2の透光性電極パターンのうち、層間絶縁膜の上層側に形成された透光性電極パターンでは、下層側に形成された透光性電極パターンに比して凹凸が反映されにくいが、層間絶縁膜の表面に別の光散乱性付与用の凹凸を形成しておけば、層間絶縁膜の上層側に形成された透光性電極パターンの表面にも適正な光散乱性を付与することができる。」

「【0036】
そこで、本形態では、第1の透光性電極パターン11および第2の透光性電極パターン12の下層側には、入力領域10aの全面に光散乱性付与用の凹凸15eが形成されており、かかる凹凸15eは、第1の透光性電極パターン11および第2の透光性電極パターン12の表面まで反映されている。本形態では、透光性基板15の表面が粗面化されており、かかる粗面化により凹凸15eが形成されている。凹凸15eは、第1の透光性電極パターン11および第2の透光性電極パターン12の表面まで反映されている結果、第1の透光性電極パターン11および第2の透光性電極パターン12の表面には凹凸11e、12eが形成され、光散乱性が付与されている。このため、第1の透光性電極パターン11および第2の透光性電極パターン12の表面は、凹凸11e、12eが形成されている分、光沢度(反射率)が低下している。」

「【0041】
次に、透光性基板15を酸処理液に接触させて、図4(c)に示すように、一方面側で露出する入力領域10aにエッチングを行なう。その結果、透光性基板15において入力領域10aとなる領域には微細な凹凸15dが形成される。かかる酸処理液は、例えば、フッ化水素酸およびリン酸水素二アンモニウムの水溶液である。」

「【0077】
[その他の実施の形態]
上記形態では、透光性基板15の表面を粗面化して凹凸15eを形成し、かかる凹凸15eを透光性電極パターン11、12の表面に反映させたが、図11に示すように、透光性基板15の表面に凹凸形成膜16を形成し、この凹凸形成膜16の表面に形成されている凹凸16eを透光性電極パターン11、12の表面に反映させてもよい。
【0078】
かかる構成の凹凸形成膜16は、図10(b)、(c)を参照して説明した方法と同様な方法で形成することができる。すなわち、図10(b)に示す方法によれば、透光性基板15の表面に感光性樹脂を塗布、露光、現像して、所定パターンで分布する第1層を形成した後、第1層を覆うように感光性樹脂を塗布して第2層を形成すればよい。このように構成すると、第1層の形成パターンに対応した凹凸16eを表面に備えた凹凸形成膜16を形成することができる。また、図10(c)に示す方法によれば、透光性基板15の表面に感光性樹脂を塗布、ハーフ露光、現像した後、プリベークして半硬化させ、しかる後に、感光性樹脂を加熱して流動させれば、ハーフ露光パターンに対応した凹凸16eを表面に備えた凹凸形成膜16を形成することができる。」

オ.甲第5号証(特開2008-147356号公報)には次の記載がある。
「【0054】
(黒化層)
黒化層は、ディスプレイの前面に備えて用いる際に、該黒化層に外光を吸収させて外光の反射を防止することを目的として、上記金属黒化処理方法により銅メッシュ層の表面及び側面上に形成される層である。外光の反射を防止することにより、ディスプレイの画像のコントラストが向上し、視認性が向上する。」

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第29条第2項について
(a)本件発明1について
a-1対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
・引用発明の「検出電極50」の「電極構造」は、表示装置に適用されるタッチパネルセンサの検出電極の構造であるから、本件発明1の「表示装置に適用される電極構造」に相当するといえる。
・引用発明の検出電極50をなす導線の「金属層61」は、その上に「黒化層62」が設けられ、黒化層62は、表面に粗化された層を含むから、本件発明1の「上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層」に相当するといえる。
・引用発明の「黒化層62」は、「金属層61上に設けられ」、「金属層61」と「同じ幅」であって、「金属層61によって生じる外光の反射を除去し、画像コントラストを向上して表示される画像の視認性を改善する」から、本件発明1の「前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層」と「前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるようにするための黒化層」である点では、共通するといえる。
・引用発明の「黒化層62」の上方の「粗化された層」は、本件発明1の「粗さの範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える」と「前記電極構造中に形成されている艶消粗化構造」である点では共通するといえる。

したがって、本件発明1と引用発明とは、次の一致点と相違点を有するといえる。
(一致点)
「表示装置に適用される電極構造において、
上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、
前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるようにするための黒化層と、
前記表面構造に形成されている艶消粗化構造と、を含むことを特徴とするで電極構造。」

(相違点1)「黒化層」が、本件発明1では「前記電極構造に入射する光線を吸収するため」のものであるのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。
(相違点2)「艶消粗化構造」が、本件発明1では、「粗さの範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える」のに対し、引用発明は、そのような特定はない点。
(相違点3)本件発明1は、「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」「前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成され」、「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」という構成を有しているのに対し、引用発明はそのような構成はない。

a-2 判断
事案に鑑みて、先ず相違点3について検討する。
甲第4号証(【0021】)には、第1の透光性電極パターンおよび第2の透光性電極パターンを各々、層間絶縁膜の上層および下層に形成した構成を採用し、層間絶縁膜を光散乱性付与用の凹凸を表面に備えた凹凸形成膜とすれば、層間絶縁膜の上層側に形成された透光性電極パターンの表面にも適正な光散乱性を付与することができるという技術的事項が記載されているが、当該甲第4号証記載の技術的事項は、層間絶縁膜を有していない引用発明の電極構造に採用する動機付けはない。
そして、たとえ、甲第4号証記載の凹凸を表面に備えた層間絶縁膜を引用発明に適用できたとしても、「艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」という構成を有するものとはならない。
上記「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」「前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成され」、「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」という構成は、甲第1?第5号証に記載されておらず、示唆されてもなく、本願出願日の前において周知技術であったとはいえない。したがって、本件発明1は、相違点1、2を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証?甲第5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(b)本件発明7?13について
本件発明7?13は、本件発明1を減縮した発明であるから、本件発明1と同じ理由により、引用発明、甲第1?5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(c)本件発明14について
本件発明14は、本件発明1の相違点3に係る「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」「前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成され」、「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっている」という構成を備えるものであるから、本件発明14は、本件発明1と同様の理由により、引用発明、甲第1号証?甲第5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(d)本件発明15?17について
本件発明7?13は、本件発明14を減縮した発明であるから、本件発明14と同じ理由により、引用発明、甲第1?5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(e)本件発明18について
本件発明18は、本件発明1の相違点3に係る「前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、」「前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成され」、「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっている」という構成を備えるものであるから、本件発明18は、本件発明1と同様の理由により、引用発明、甲第1号証?甲第5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(d)本件発明19について
本件発明19は、本件発明18を減縮した発明であるから、本件発明18と同じ理由により、引用発明、甲第1?5号証に記載された技術事項及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(イ)特許法第36条第6項第1号について
本件発明1、14、18は、「艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成」るものになっており、当該艶消構造について、どのようなRaを採用したかについては、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0063】には、「艶消粗化層724の表面粗さ範囲は、好ましくはRa=0.001μm?0.2μmであり、最も好ましい粗さはRa=0.02μm?0.1μmであるため、光学的ヘイズ値は2よりも小さい。」と記載されており、段落【0049】には、「Ra」が艶消粗化層の「中心線平均粗さ」であることが記載されている。
よって、本件発明1、14、18及びこれらを引用する本件発明7?13、15?17、19は、特許法36条第6項第1号に規定する要件に適合する。

(ウ)特許法第36条第6項第2号について
本件発明1、14、18は、「前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表」すものになっており、「非平面の連続構造」がどのような構造であるか明確になっており、「艶消粗化構造」との関係も明確になっている。
よって、本件発明1、14、18及びこれらを引用する本件発明7?13、15?17、19は、特許法36条第6項第2号に規定する要件に適合する。

(エ)特許法第17条の2第3項について
本件発明1、14、18は、艶消粗化構造が金属導電層の表面に形成されていることが特定されており(艶消粗化構造が黒化層の表面に形成されることは本件訂正請求の訂正により削除された)、また、その粗さの範囲である「Ra=0.001μm?0.2μm」は願書に最初に添付した明細書の段落に記載されている。
したがって、平成27年6月10日付け手続補正書においてした補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなかったとしても、本件発明1、14、18及びこれらを引用する本件発明7?13、15?17、19は、特許法第113条第1号の取消理由には該当しない。

(オ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人高橋昌嗣は、平成29年9月25日付け意見書において、「訂正された請求項1によれば、不連続な島状に分布する艶消粗化層の上に黒化層が引き続き形成されるが、艶消粗化層の島と島との間の領域の構成については特に規定はない。そうすると、電極構造には、金属導電層上に艶消粗化層及び黒化層が島状に分布されている領域と、艶消粗化層も黒化層も形成されない領域(すなわち、金属導電層がむき出しの領域)と、金属導電層上に黒化層が直接形成されている領域とが含まれ得る。・・・しかしながら、上記のような艶消粗化層も黒化層も形成されない領域(すなわち、金属同伝送がむき出しの領域)を含む構成は、特許明細書又は図面に記載されていない。また、示唆もない。明らかに、自明でもない。また、金属導電層上に黒化層が直接形成されている領域を含む構成も、特許明細書等に記載も示唆もされておらず、自明でもない。したがって、「前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」構成は、新規事項である。」と主張する。しかしながら、出願当初明細書の段落【0076】には「金属導電層923が直接浸食又は加工されて艶消粗化構造が形成され、艶消粗化層が形成されることで、引き続き形成される構造にも粗面が形成される。例えば、第1の黒化層924及び第2の黒化層925のいずれにも金属導電層923の艶消粗化構造に伴って粗面が形成される。」と記載され、段落【0062】には「不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造が形成されるように艶消粗化層724をコーティングする、」と記載されているから、訂正された請求項1の上記構成が新規事項であるとはいえない。
また、「請求項1に「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」を追加する訂正を行っているが、「不連続な島状」との構成は不明確である。ここで、艶消粗化層が独立した島状の艶消粗化層の集合である場合であって、島と島とが大きな間隔を空けて分布している場合、「粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造」とはどのような構造なのか不明である。さらに、そのように大きな間隔を空けて分布している場合、そもそも「艶消粗化層」としての作用機能が明確でない。このように構成乃至作用効果が明確でないのは、・・・「不連続な島状」との記載が多義的になっているからである。また、「多孔構造」の形成手段が「不連続な島状に分布すること」であるとは、どのように「多孔構造」が形成できるのか不明である。よって、訂正された請求項1の構成要件「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」は明確でないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないから、特許法第113条 第4号の規定に該当し、特許は取り消されるべきである。」と主張する。しかしながら、「不連続な島状」は、島状に分散した2次元配列と解され、請求項1は、艶消粗化構造は「電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える」とされているから、「不連続な島状に分布することで粗面」を形成するものであり、かつ上記特性を備えるものであることは明確である。また、「多孔構造」に関しては、「前記艶消粗化層は」「多孔構造として形成されている」構成が明確であるといえ、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないとはいえない。
さらに、「取消理由通知書で挙げられた甲第3号証(登録実用新案第3188010号公報)に記載された発明は、タッチスクリーンに用いられる電極構造に関するものであり、段落【0025】には、「・・・図4において、第2の耐食層46は、粒子直径が900nmよりも小さい粒子状表面を有する。好ましくは、第2の耐食層46は、粒子直径が300nm?800nmである粒子状表面を有する。」と記載され、・・・また、甲第3号証の図2(当審注:図4の誤記と認められる。)には、導電層上の設けられた第2の耐食層46が、連続せずに独立して形成された領域を有することが示されている。つまり、甲第3号証には、導電層上の層の構成として、島と島とが連続しておらず、間隙をもってそれぞれ独立したものが記載されているといえる。そして、段落0025には「・・・第2の耐食層・・・46は、電極に対する腐食を妨げるだけではなく、金属電極による光反射を低減する効果も有する。」と記載されている。・・・訂正事項により追加された「前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されている」事項は、甲第3号証に記載された発明にもとづいて 当業者が容易に発明できたものである。」とも主張する。
しかしながら、甲第3号証の「第2の耐食層46」は、その上に黒化層が引き続き形成されるものではないから、引用発明に適用する動機付けはなく、上記主張は理由がない。

イ 取消理由で取り上げなかった甲第6?9号証について
甲第6号証(特開2003-92387号公報)は、甲第5号証と同様に「黒化層が光線を吸収すること」が、従来周知であることを示すためのものにすぎず、上記本件発明1?19の進歩性の判断に何ら影響を与えるものではない。
甲第8号証(平成27年6月10日付け意見書)は、当該意見書の主張が特許請求の範囲に基づいていないことを示すものにすぎず、本件特許発明1?19が特許法第36条第6項第1、2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることを示すものではない。
平成27年6月10日付け手続補正書により補正された箇所は、本件訂正請求の訂正により削除されているから、甲第7号証(平成27年6月10日付け手続補正書)、甲第9号証(特開2015-158829号公報、本件特許の公開公報)は、本件特許発明1?19が特特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたことを示すものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1、7?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、7?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2?6に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2?6に対して、特許異議申立人高橋昌嗣がした特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に適用される電極構造において、
上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、
前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、
粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる特性及び耐モアレ干渉の特性を備える艶消粗化構造と、
を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布することで粗面又は多孔構造として形成されていることを特徴とする電極構造。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記黒化層の材料は、銅、銀、アルミニウム、モリブデン、ニッケル、クロム、タングステン、チタン、シリコン、亜鉛、スズ若しくは鉄、又はそれらの組み合わせから成り、前記黒化層の厚さ範囲は0.001μm?1μmであり、前記黒化層の反射率の範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項8】
前記電極構造は、基板に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項9】
前記基板の表面には艶消粗化構造が形成され、前記艶消粗化構造の材質は前記基板と同一であることを特徴とする請求項8に記載の電極構造。
【請求項10】
前記艶消粗化構造は、前記基板に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記基板と異なることを特徴とする請求項8に記載の電極構造。
【請求項11】
前記金属導電層と前記基板との間に形成され、前記電極構造と前記基板とを結合し、前記電極構造と基板との接着性を向上させるための接着層を更に含むことを特徴とする請求項8に記載の電極構造。
【請求項12】
前記接着層は、高分子、酸化物若しくは金属材料、又はそれらの組み合わせから成り、前記接着層の厚さ範囲は0.001μm?1μmであり、前記接着層の反射率範囲は1%?50%であることを特徴とする請求項11に記載の電極構造。
【請求項13】
前記艶消粗化構造の粗さの範囲はRa=0.02μm?0.1μmであり、光学的ヘイズ値は2よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の電極構造。
【請求項14】
少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記金属導電層の表面に形成されるように前記電極構造中に形成されており、前記表面構造を介して前記電極構造に入る光線又は前記金属導電層によって反射して形成される光反射を散乱させる艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、
を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。
【請求項15】
前記基板の表面に艶消粗化構造が形成されていることを特徴とする請求項14に記載のパネル装置。
【請求項16】
前記基板と前記1つ又は複数の電極構造との組み合わせが前記パネル装置内の他の部材と結合される場合、光学接着剤が封入されることを特徴とする請求項14に記載のパネル装置。
【請求項17】
前記光学接着剤は、粗化によって上昇した透光領域のヘイズ値を低減することで透光領域の透光率を増加させるように、前記基板と前記1つ又は複数の電極構造の表面の艶消粗化構造との間隙を充填するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載のパネル装置。
【請求項18】
少なくとも表面を有する基板と、
前記表面に形成される1つ又は複数の電極構造であって、上方に非平面の連続構造が形成され、前記電極構造の導電構造である金属導電層と、前記金属導電層の上方に設けられ、前記金属導電層の左右方向の幅と同じ長さの左右方向の幅を有し、前記金属導電層によって生じる光反射を除去すると共に、前記金属導電層が設置されていない部分である透光領域との表示ムラを減少させるように、前記電極構造に入射する光線を吸収するための黒化層と、粗さ(Ra、中心線平均粗さ)の範囲がRa=0.001μm?0.2μmである表面構造を備え、前記1つ又は複数の電極構造と前記基板の表面に同時に形成され、前記表面構造を介して前記電極構造と前記基板に入る光線が反射して形成された光反射を散乱させる艶消粗化構造と、を含む1つ又は複数の電極構造と、
を含み、
前記艶消粗化構造が引き続いて前記金属導電層の表面に形成される場合、前記艶消粗化構造は、前記金属導電層に前記表面構造を有する艶消粗化層が形成されて成り、前記艶消粗化構造の材質は前記金属導電層と異なり、
前記金属導電層の上方に非平面の連続構造が形成されることとは、前記艶消粗化層の上に引き続き形成される前記黒化層にも前記艶消粗化構造に伴って粗面が形成されることにより、上下方向に粗面が連続的に形成されることを表し、
前記艶消粗化層は不連続な島状に分布して粗面又は多孔構造になっていることを特徴とするパネル装置。
【請求項19】
前記電極構造と前記基板の表面の艶消粗化構造は、UV接着剤、有機シリコン樹脂硬化層又は無機シリコン樹脂硬化層を塗布することによって形成されることを特徴とする請求項18に記載のパネル装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-25 
出願番号 特願2014-33714(P2014-33714)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G06F)
P 1 651・ 537- YAA (G06F)
P 1 651・ 55- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菊池 智紀  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
和田 志郎
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5941935号(P5941935)
権利者 介面光電股▲ふん▼有限公司
発明の名称 タッチパネル装置及びその電極構造  
代理人 家入 健  
代理人 家入 健  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ