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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1335175
異議申立番号 異議2017-700777  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-10 
確定日 2017-12-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6081415号発明「情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6081415号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6081415号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成21年6月12日に出願した特願2009-141150号の一部を新たな特許出願とした特願2012-259753号の一部を、平成26年8月6日に新たな特許出願(特願2014-160685号)としたものであって、平成29年1月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人特許業務法人にじいろ特許事務所(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6081415号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.申立理由の概要
異議申立人は、証拠として甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、以下の申立理由を主張している。

(1)特許法第29条第2項
ア 本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消すべきものである。

イ 本件特許発明2は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項2に係る特許は、取り消すべきものである。

ウ 本件特許発明3は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項3に係る特許は、取り消すべきものである。

エ 本件特許発明4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証及び甲第6号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項4に係る特許は、取り消すべきものである。

オ 本件特許発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項5に係る特許は、取り消すべきものである。

カ 本件特許発明6は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項6に係る特許は、取り消すべきものである。

キ 本件特許発明7は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項7に係る特許は、取り消すべきものである。

ク 本件特許発明8は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項8に係る特許は、取り消すべきものである。

ケ 本件特許発明9は、甲第1号証及び甲第2号証に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項9に係る特許は、取り消すべきものである。

〔証拠方法〕

甲第1号証:特開2007-148094号公報
甲第2号証:特開2001-304901号公報
甲第3号証:特開2003-14481号公報
甲第4号証:特開2008-304333号公報
甲第5号証:特開2006-266965号公報
甲第6号証:特開2002-333337号公報

4.甲1発明
甲第1号証の図4及び5において、表示装置3に表示している地下街の概略形状35にハッチングが施されていることを参酌すると、表示している地上地図上で、地下街は強調表示されているといえる。
してみると、甲第1号証(特に、段落【0015】及び【0016】、【0021】、【0024】、【0027】ないし【0037】、【0055】ないし【0064】、【0065】ないし【0072】、【0073】及び【0074】並びに図1、4及び5、12ないし14)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「地図データを読込む地図データ読込み手段13と、
表示している地上地図上で、地下街を強調表示する表示装置3と、
を備える地図表示装置。」

5.判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「地図データ」及び「地上地図」は前者の「地図データ」に相当し、以下同様に、「読込む」は「取得する」に、「地図データ読込み手段13」は「地図データ取得手段」に、「表示装置3」は「表示手段」に、「地図表示装置」は「情報処理システム」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明における「地下街」と、本件特許発明1における「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」とは、「建造物」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「地図データを取得する地図データ取得手段と、
表示している地図データ上で、建造物を強調表示する表示手段と、
を備える情報処理システム。」
で一致し、次の点で相違する。

〔相違点〕

本件特許発明1においては、地図データ取得手段が「施設に関するデータ」を取得し、表示手段が「目的地または経由地である目的施設に現在位置が接近した場合に」、表示している地図データ上で、「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」を強調表示するのに対し、
甲1発明においては、表示装置3が表示している地上地図上で、地下街を強調表示する点(以下、「相違点」という。)。

イ 判断
本件特許発明1における「施設」及び「接続施設」は、本件特許明細書の段落【0041】に記載されたとおりのものであり、本件特許発明1は、建造物である目的施設及び接続施設の両者が区別されるものという前提で、「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」を強調表示することを発明特定事項としている。
一方、甲第1号証には、地下街などの建造物を、本件特許発明1のように、目的施設及び接続施設として区別することは記載されていない。このことから、甲1発明の「地下街」は、本件特許発明1の「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」に相当するとはいえないし、また、甲第1号証から、「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」を強調表示することは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

甲第2号証(特に、【特許請求の範囲】の【請求項3】、段落【0015】、【0018】ないし【0028】並びに図4(A)、図5及び図9(C))には、「目的地MA(目的地)に車両現在位置(現在位置)が接近した場合に、表示している地図データD10(地図データ)上で、目的地MAの建物である目的地領域MC(目的施設)を強調表示する技術。」(以下、「甲2技術」という。なお、括弧内に、本件特許発明1において対応する用語を示す。)が記載されている。
甲1発明において、甲2技術を適用した場合、地下街に現在位置が接近した場合に、表示している地上地図(地図データ)上で、地下街を強調表示することまでは、当業者が容易に想到できたことである。しかしながら、甲第2号証にも、「目的施設に接続し、現在位置から当該施設を経由しなくても目的施設に到達できる施設である接続施設」を強調表示することは記載も示唆もされていないから、甲1発明及び甲2技術に基づいて、上記相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

異議申立人は、特許異議申立書において、甲1発明について、「ここで、甲1発明において、地下街に含まれる施設が目的地として設定された場合、当該施設が本件特許発明1の目的施設に相当することとなり、それに接続された接続施設としての地下街の入り口を経由して地表における現在位置から目的施設までの経路が設定される。このとき、地表地図に表示されている地下街概略形状には、当該目的施設までの経路を含まない部分が存在している。つまり、甲1発明には、地下街に含まれる目的施設に接続し、現在位置から当該目的施設までの経路を含まない地下街を経由しなくても目的施設に到達できる接続施設としての地下街概略形状を強調表示している。」(第14ページ第23行ないし第15ページ第3行)と主張している。
しかしながら、上述のように、甲第1号証には、建造物である目的施設及び接続施設の両者が区別されるものとして存在することは記載されていないから、「地下街に含まれる目的施設に接続し、現在位置から当該目的施設までの経路を含まない地下街を経由しなくても目的施設に到達できる接続施設」が記載されているとはいえない。
よって、異議申立人の上記主張は採用することができない。

また、甲第3号証ないし甲第6号証にも、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2技術に基づいて、又は甲第1号証ないし甲第6号証から、当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。よって、本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲第1号証ないし甲第6号証から、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)本件特許発明5ないし9について
本件特許発明5及び6は、本件特許発明1の情報処理システムを情報処理プログラムとして表現したものである。
本件特許発明7及び8は、本件特許発明1の情報処理システムを情報処理装置として表現したものである。
本件特許発明9は、本件特許発明1の情報処理システムを情報処理方法として表現したものである。
してみると、本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明5ないし9は、甲1発明及び甲2技術に基いて、又は甲第1号証ないし甲第6号証から、当業者が容易に発明することができたものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-29 
出願番号 特願2014-160685(P2014-160685)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柳幸 憲子近藤 利充  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
西山 智宏
登録日 2017-01-27 
登録番号 特許第6081415号(P6081415)
権利者 株式会社ナビタイムジャパン
発明の名称 情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム  

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