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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C22C
管理番号 1335377
審判番号 不服2016-17032  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-15 
確定日 2017-12-26 
事件の表示 特願2014- 59308「鉄基焼結材およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日出願公開、特開2015-183212、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 3月21日を出願日とする出願であって、平成28年 3月 3日付けで拒絶理由が通知され、同年 4月18日付けで意見書及び手続補正書(以下、「一次手続補正書」という。)が提出され、同年 9月21日付けで拒絶査定(以下、「拒絶査定」という。)がされ、同年11月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書(以下、「二次手続補正書」という。)が提出され、平成29年 1月13日付けで審査官により特許法第164条第3項に基づく前置報告がされ、同年 8月31日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年 9月21日付けで意見書及び手続補正書(以下、「三次手続補正書」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、三次手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明1」?「本願発明12」という。)。

「 【請求項1】
Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉(以下「FeMS粉」という。)またはFeとMnとSiとCの合金粉(以下「FeMSC粉」という。)と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材であって、
前記焼結体は、全体を100質量%(単に「%」ともいう。)としたときに、
Mo:0.29?1.5%、
Cr:0.01?2.5%、
Mn:0.2?1.5%
Si:0.05?0.5%、
C:0.2?1%、
残部:Feおよび不可避不純物からなり、
ベイナイト相からなる基地中にマルテンサイト相が分散した複合組織からなると共に、
引張強さが800MPa以上であり、シャルピー衝撃試験の衝撃値が30J/cm^(2)以上であることを特徴とする鉄基焼結材。
【請求項2】
前記複合組織は、前記ベイナイト相の基地中に前記マルテンサイト相が孤立した島状に点在している島状複合組織である請求項1に記載の鉄基焼結材。
【請求項3】
前記複合組織は、組織全面に対する前記マルテンサイト相の合計面積の割合であるマルテンサイト面積率が5?45%である請求項1または2に記載の鉄基焼結材。
【請求項4】
前記焼結体全体を100%としたときに、Cr:0.03?0.7%である請求項1?3のいずれかに記載の鉄基焼結材。
【請求項5】
Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeMS粉またはFeMSC粉と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を金型へ充填して加圧成形した成形体を得る成形工程と、
該成形体を酸化防止雰囲気で焼結させた焼結体を得る焼結工程とを備え、
請求項1?4のいずれかに記載の鉄基焼結材が得られることを特徴とする鉄基焼結材の製造方法。
【請求項6】
前記ベース鉄粉は、Mo:0.1?3%と残部:FeからなるMo系鉄粉である請求項5に記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項7】
前記強化粉末は、Cr:0.5?25%と残部:FeからなるCr系鉄粉である請求項5または6に記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項8】
前記Cr系鉄粉は、平均粒径が5?65μmである請求項7に記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項9】
前記焼結工程は、焼結温度を1120?1170℃とする工程である請求項5に記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項10】
前記焼結工程は、前記焼結温度を保持する時間である焼結時間を0.1?1時間とする工程である請求項9に記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項11】
前記焼結工程は、900℃から300℃まで10?80℃/分の平均冷却速度で前記焼結体を冷却する冷却工程を含む請求項5?10のいずれかに記載の鉄基焼結材の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記焼結体を170?230℃に加熱する低温焼戻工程を備える請求項5?11のいずれかに記載の鉄基焼結材の製造方法。」

第3 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(ア-1)「【0001】
本発明は、優れた靱性(衝撃値)と十分な強度を発揮し得る低コストな鉄基焼結材とその製造方法に関する。」

(ア-2)「【0006】
特許文献1は、Fe-Mo粉にFe-Mn-Si粉とGr粉を配合した原料粉末(鉄基粉末)を提案している。特許文献2?4は、Fe-Mo-Cr粉(ベース鉄粉)に種々の強化粉末を配合した原料粉末から製造した鉄基焼結合金を提案している。なお、特許文献4には、マルテンサイト相の基地中にベイナイト相が断面面積率で2?20%存在した混合組織からなる鉄基焼結合金は高靱性である旨の記載がある。しかし、特許文献4中の表3?表5を観ると明らかなように、各試料の衝撃値は高々20J/cm^(2)に過ぎない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合することにより、高強度であると共に非常に高いシャルピー衝撃値(単に「衝撃値」ともいう。)を発揮する鉄基焼結材が得られることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0009】
《鉄基焼結材》
(1)本発明の鉄基焼結合金は、Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉(以下「FeMS粉」という。)またはFeとMnとSiとCの合金粉(以下「FeMSC粉」という。)と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材であって、前記焼結体は、全体を100質量%(単に「%」ともいう。)としたときに、
Mo:0.29?1.5%、
Cr:0.01?2.5%、
Mn:0.2?1.5%
Si:0.05?0.5%、
C:0.2?1%、
残部:Feおよび不可避不純物からなり、
ベイナイト相からなる基地中にマルテンサイト相が分散した複合組織からなると共に、引張強さが800MPa以上であり、シャルピー衝撃試験の衝撃値が30J/cm^(2)以上であることを特徴とする。」

(ア-3)「【0015】
《鉄基焼結材の製造方法》
本発明は、次のような鉄基焼結材の製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeMS粉またはFeMSC粉と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を金型へ充填して加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を酸化防止雰囲気で焼結させた焼結体を得る焼結工程とを備え、上述した鉄基焼結材が得られることを特徴とする鉄基焼結材の製造方法でもよい。」

(ア-4)「【0021】
(4)本発明の鉄基焼結材が発揮する強度や靱性等の機械的特性は、各原料粉末の組成や形態、成形圧力、焼結条件(温度、時間、雰囲気等)等により異なるため、一概に特定することは困難である。敢ていうなら、本発明の鉄基焼結材は、強度(引張強さ)が800MPa以上、900MPa以上さらには1000MPa以上であると好ましい。また、その靱性(衝撃値)は、30J/cm^(2)以上、40J/cm^(2)以上さらには45J/cm^(2)以上であると好ましい。」

(ア-5)「【0047】
《試料の製造》
(1)原料粉末
原料粉末として、ベース鉄粉と、炭素源粉末である黒鉛(Gr)粉(日本黒鉛社製天然黒鉛J-CPB/平均粒径:5μm)と、強化粉末であるCr系鉄粉およびFeMSC粉とを用意した。
【0048】
ベース鉄粉には、表1に示すように、純鉄粉と、Mo量の異なる4種のFe-Mo粉(Mo系鉄粉)と、CrとMoを含有したFe-Cr-Mo粉とを用意した。各ベース鉄粉は、いずれも、目開き150μmの篩いを用いて粒度:150μm以下(適宜「-150μm」と表す。)に分級して用いた。
【0049】
Cr系鉄粉には、表2に示すように、Cr量または平均粒径の異なる7種のFe-Cr粉(Cr系鉄粉)を用意した。FeMSC粉には、Fe-69%Mn-20%Si-1.1%Cの合金(化合物)を粉砕して分級したもの(平均粒径:1μm)を用意した。なお、本明細書では、特に断らない限り、組成に関する「%」は質量%を意味し、平均粒径は上述したようにして求めた。
【0050】
(2)混合粉末
表3Aと表3B(適宜、両者を併せて「表3」という。)に示す割合(配合量)で各原料粉末を秤量し、それをボールミルで30分間回転混合して均一な混合粉末を調製した(混合工程)。
【0051】
(3)成形工程
キャビティ形状の異なる3種の金型を用意して、前述した金型潤滑温間加圧成形法により各混合粉末を加圧成形した。この際、金型はバンドヒータにより150℃(成形温度)に加熱した。この加熱した金型の内周面には、水に分散させた1%の溶液ステアリン酸リチウム(LiSt)溶液(高級脂肪酸系潤滑剤)を塗布した。成形圧力は表3に示すように392?980MPaの範囲で調整した。その他、金型潤滑温間加圧成形法に関しては、特許3309970号公報等の記載を参照にした。
【0052】
こうして、円柱状の計測用試験片(φ23×10mm)、図1に示す平板状の引張試験片(概形55×20×3mm)および角柱状のシャルピー衝撃試験片(10×10×55mm、ノッチ無し)となる3種の成形体を得た。
【0053】
(4)焼結工程
バッチ式焼結炉(島津メクテム株式会社製PVSGgr20/20)を用いて、100%窒素ガス雰囲気中で各成形体を焼結した。焼結温度は表3に示すように1100?1250℃の範囲で調整した。その焼結温度を保持する均熱保持時間は30分間とした。
【0054】
この焼結に続けて加熱状態の焼結体を、炉冷による徐冷または冷却ファンを用いた強制冷却により急冷した。表3に示す焼結後の900℃から300℃までの平均冷却速度は、炉冷が5℃/分(0.083℃/秒)、急冷が50℃/分(0.83℃/秒)または100℃/分(1.66℃/秒)であった(冷却工程)。」

(ア-6)「【0056】
《測定・観察》
(1)密度、密度変化、寸法変化、
各試料に係る計測用試験片を用いて、焼結前後の寸法および重量を測定し、成形体の密度(G.D.)、焼結体の(嵩)密度(S.D.)、焼結前後の密度変化率(Δρ)、焼結前後の寸法変化率(ΔD)を算出した。なお、変化率は、焼結後の数値から焼結前の数値値を引いた差分を、焼結前の数値で除して求めた。こうして得られた結果を表4Aと表4B(適宜、両者を併せて「表4」という。)にまとめて示した。
【0057】
(2)引張強さ、破断伸び、硬さおよび衝撃値
各試料に係る焼結後の引張試験片を用いて、オートグラフ(株式会社島津製作所)で引張試験を行い、各試験片が破断するまでの強度(引張強さ)と伸びを測定した。このときの試験速度は1.2mm/minとした。また、各引張試験片のチャック部のビッカース硬さを30kgfで測定した。さらに、各試料に係る焼結後のシャルピー衝撃試験片を用いて、シャルピー衝撃試験機(30kg・m)により各試験片の衝撃値を測定した。こうして得られた結果を表4にまとめて示した。
【0058】
(3)組織観察
各試料の金属組織を、光学顕微鏡を用いて400倍で観察した。各金属組織中にあるマルテンサイト相の割合(マルテンサイト面積率)は,画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製A像君)を用いて算出した。得られた結果を表4に併せて示した。なお、各試料の金属組織の観察には、上述した衝撃試験片から採取した切断片を樹脂に埋め込み、その表面を鏡面研磨後、3%ナイタールで数十秒間腐食させて得られた標本を用いた。
【0059】
《評価》
表3および表4に示すように、各試料の製造条件と特性を試料群1?9に分類して整理した。これら各試料群ごとに、各試料の特徴を以下に説明する。」

(ア-7)「【0096】

【0097】



(ア-8)「【0099】



第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
ア 前記(ア-1)、(ア-2)によれば、本願発明は、優れた靱性(衝撃値)と十分な強度を発揮し得る低コストな鉄基焼結材とその製造方法に関するものであって、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供することを目的とするものであり、従来技術の衝撃値は高々20J/cm^(2)に過ぎなかったものを、従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合することにより、高強度であると共に非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材が得られることを新たに見出したものである。

イ また、前記(ア-4)によれば、本願発明に係る鉄基焼結材が発揮する強度や靱性等の機械的特性は、各原料粉末の組成や形態、成形圧力、焼結条件(温度、時間、雰囲気等)等により異なるため、一概に特定することは困難であるが、強度(引張強さ)が800MPa以上、900MPa以上さらには1000MPa以上であると好ましいものであり、靱性(衝撃値)は、30J/cm^(2)以上、40J/cm^(2)以上さらには45J/cm^(2)以上であると好ましいものであるところ、二次手続補正書により補正された請求項1には、鉄基焼結材の強度(引張強さ)や靱性(衝撃値)は特定されていない。

ウ ここで、前記(ア-5)?(ア-8)(【0097】【表3B】、【0099】【表4B】)によれば、試料No.911は、Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉(以下「FeMS粉」という。)またはFeとMnとSiとCの合金粉(以下「FeMSC粉」という。)と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材であって、前記焼結体は、全体を100質量%(単に「%」ともいう。)としたときに、Mo:0.29?1.5%、Cr:0.01?2.5%、Mn:0.2?1.5% Si:0.05?0.5%、C:0.2?1%、残部:Feおよび不可避不純物からなる、という特定事項を満足するものといえる。

エ 更に、例えば試料No.214、No.413、No.513、No.612、No.712、No.812、No.913は、マルテンサイト面積率が20%であるから、ベイナイト相からなる基地中にマルテンサイト相が分散した複合組織からなるものといえるが、当該試料No.214、No.413、No.513、No.612、No.712、No.812、No.913は、いずれも、前記試料No.911と同じ組成を有し、同じ焼結工程(焼結温度、焼結時間、冷却速度)によって製造されたものであるから、前記試料No.911もまた、ベイナイト相からなる基地中にマルテンサイト相が分散した複合組織からなるものといえる。

オ そうすると、前記試料No.911は、Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉(以下「FeMS粉」という。)またはFeとMnとSiとCの合金粉(以下「FeMSC粉」という。)と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材であって、前記焼結体は、全体を100質量%(単に「%」ともいう。)としたときに、Mo:0.29?1.5%、Cr:0.01?2.5%、Mn:0.2?1.5%、Si:0.05?0.5%、C:0.2?1%、残部:Feおよび不可避不純物からなり、ベイナイト相からなる基地中にマルテンサイト相が分散した複合組織からなる鉄基焼結材といえるから、二次手続補正書により補正された請求項1に係る発明の発明特定事項を全て満足するものであるが、その引張強さは710MPaであり、衝撃値は17.4J/cm^(2)である。
そして、前記引張強さ及び衝撃値と前記ア?イの検討事項を対比してみれば、前記試料No.911は、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供する、という本願発明の課題を解決できるものとはいえない。

カ しかも、二次手続補正書により補正された請求項1には、鉄基焼結材の強度(引張強さ)や靱性(衝撃値)は特定されていないのであるから、二次手続補正書により補正された請求項1の発明特定事項のみにより本願発明の課題を解決できるとはいえないので、二次手続補正書により補正された請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
このことは、二次手続補正書により補正された請求項1を直接的または間接的に引用する二次手続補正書により補正された請求項2?請求項12に係る発明についても同様である。

キ なお、【表3B】によれば、「試料群3」の試料No.311、試料No.C31、試料No.C33は、黒鉛(Gr)粉が含まれているのかいないのかが判然としないので、例えば試料No.311が本願発明の実施例に相当するのか否かが不明確である。

第5 原査定及び前置報告の理由の概要
1.原査定の理由の概要
(1)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項第1号についての原査定の理由の概要は以下のとおりである。
ア 前記(ア-2)(【0007】)には、「本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供することを目的とする。」とあるが、一次手続補正書により補正された請求項に係る発明は、鉄基焼結体を構成する一部の元素しか規定されていない。
それゆえに(当審注:拒絶査定第1ページ下から9行目の「それゆに」は「それゆえに」の誤記と認める。)、一次手続補正書により補正された請求項に係る発明が、Niが含有されるものか否か、合金成分の含有量が抑制されたものなのか否か、はっきりしておらず、一次手続補正書により補正された請求項に係る発明が、前記目的を達したものであるか、どうかもわからない。

イ また、鉄基焼結体を構成する一部の元素しか規定されていないので、そもそも、何と比べて、より高い強度や靱性を達していれば、前記目的を達したものとするのか、わからない。

ウ 以上のとおり、一次手続補正書により補正された請求項に係る発明は、前記目的を達したものか否か判断できなくなるまでに、発明の詳細な説明に記載される発明を、漠然と(当審注:拒絶査定第1ページ下から2行目の「漠線と発明を」は「漠然と」の誤記と認める。)一般化したものであるので、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

エ 更に、前記(ア-2)(【0008】)には、「本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合することにより、高強度であると共に非常に高いシャルピー衝撃値(単に「衝撃値」ともいう。)を発揮する鉄基焼結材が得られることを新たに見出した。」とある。

オ ここでいう「従来のようにCrを含むCr系鉄粉」を用いた例としては、前記(ア-7)に「C32」が挙げられ、「Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」した例としては「311」が挙げられており、前記(ア-8)には、それぞれの機械的特性が提示されている。

カ たしかに、前記(ア-8)を見ると、「Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」した「311」は、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉」を用いた「C32」に対して、同等の引張強さを維持しつつ、「衝撃値」が改善さていることが把握できる。

キ しかしながら、「311」の成分組成は、「Mo:0.82%、Cr:0.25%」であり、「C32」の成分組成は、「Mo:0.20%、Cr:1.48%」であり、そもそも、両者は成分組成が異なったものであり、焼結材へのCrの供給の仕方が異なったことを理由として、「衝撃値」が改善されたとの事項は、技術的に把握できる事項ではない。

ク すなわち、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合すること」によって、「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材が得られ」たとの発明は、発明の詳細な説明の記載から把握できない発明である。

ケ 以上のとおりであるから、一次手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)拒絶査定に付記された理由の概要
拒絶査定の第3ページ下から5行目?第4ページ最終行に付記される理由の概要は以下のとおりである。
ア 一次手続補正書でした補正によって、補正前には、
「モリブデン(Mo)を含みクロム(Cr)を実質的に含まないベース鉄粉とCrを含む強化粉末と炭素源粉末とからなる混合粉末」
であった請求項1の記載は、
「モリブデン(Mo)を含みクロム(Cr)を含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとケイ素(Si)の合金粉(以下「FeMS粉」という。)またはFeとMnとSiとCの合金粉(以下「FeMSC粉」という。)と、炭素源粉末とを含み、ニッケル(Ni)を含まない混合粉末」
と補正された。

イ この補正は、補正前には、「ベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、炭素源粉末と」の3種の粉末からなっていた混合粉末を、「ベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiまたはFeとMnとSiとCの合金粉と、炭素源粉末と」の4種の粉末を含む混合粉末、つまりは、4種類以上の粉末を混合した混合粉末にする補正といえる。

ウ しかしながら、出願当初の明細書等には、4種の粉末からなる混合粉末の記載はあっても、4種類以上と、5種類や6種類と云った多種類の粉末を混合すると云った発明は記載されていない(当然に、どのような粉末を更に使用して、5種類や6種類等の混合粉末とするのかも不明である。)。
してみれば、斯かる補正は、新規事項を追加するものである。

エ このことは、前記手続補正書による発明の詳細な説明の【0009】及び【0015】の補正並びに請求項6の補正(補正前の請求項5に対してした補正)においても、同様である。

オ 一次手続補正書でした補正によって請求項1は補正され、これによって、ニッケルを含まない混合粉末は、
・ベース粉末(モリブデンを含みクロムを含まないもの)
・Crを含む強化粉末
・FeとMnとSiまたはFeとMnとSiとCの合金粉
・炭素源粉末
を含むものと整理されたところである。

カ しかしながら、一次手続補正書により補正された請求項4には、
「前記強化粉末は、さらにマンガン(Mn)を含み、
前記焼結体全体を100%としたときに、Mn:0.2?1.5%である・・・」
といった記載もあり、加えて、発明の詳細な説明を見ても、「Crを含む強化粉末」にMnを含ませたものの開示はなく、逆に、焼結体へのMnの供給源が「FeとMnとSiとCの合金粉」であることを鑑みると、「前記強化粉末」とは、何を示しているのか不明であるし、ひいては、ニッケルを含まない混合粉末とは、如何なるものを示すのか、不明確であるとしかいえない。

キ 以上のとおりであるから、一次手続補正書により補正された請求項に係る発明は、明確ではない。

2.前置報告の理由の概要
(1)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項第1号についての前置報告の理由の概要は以下のとおりである。
ア 審判請求時に特許請求の範囲にした補正(二次手続補正書による補正)は、請求項1について限定的減縮を目的とした補正である。この場合、補正後の請求項に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。

イ そこで、原査定の理由が解消したかを検討するに、原査定の理由は、平成28年 3月 3日付け拒絶理由通知書の理由1の(2)で指摘するように、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合すること」によって、「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材が得られ」たとの発明は、発明の詳細な説明の記載から把握できない発明であるので、請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものと言えず、特許請求の範囲の記載が第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

ウ 前記のとおり、二次手続補正書により請求項1にした補正は、限定的減縮を目的とした補正であるが、斯かる補正があっても、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたものになったとする根拠は見いだせないし、また、審判請求書を見ても、原査定の理由が解消したと言える具体的な説明をすることなく、単に、原査定の理由は全て解消したと記載されるだけである。

エ 以上のとおりであるので、当該補正後の請求項1?4、5?12に係る発明は、依然として、原査定の理由が解消していないものである。

オ したがって、この出願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないため、当該補正後の請求項1?4、5?12に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

(2)前置報告に付記された理由の概要
前置報告の第1ページ最終行?第2ページ最終行に付記される理由の概要は以下のとおりである。
ア 二次手続補正書により請求項1にした補正によって、鉄基焼結体全体の構成が明らかになり、平成28年 3月 3日付け拒絶理由通知書の理由1の(1)で指摘する原査定の理由は解消したとも言える

イ しかしながら、鉄基焼結体全体の構成が明らかなったとしても、依然として、請求項に係る発明は、所望の目的を達し得るかが不明になるまでに、発明の詳細な説明に記載される発明を拡張したものと判断されるものである。

ウ 二次手続補正書により補正された請求項1には、「Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、・・・とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材」とある。

エ 前記(ア-7)の試料No.311の如く、0.85%Mo鉄粉(Crを含まない)と、13%Cr強化鉄粉末を用いた上で、混合粉末の配合組成で、Mo:0.83%及びCr:0.25%の成形体を得ようとすれば、その配合組成から言って、0.85%Mo鉄粉(Crを含まない)がベースになるとはいえる。

オ 一方、例えば、3%Mo鉄粉(Crを含まない)と、0.7%Cr強化鉄粉末を用いた上で、混合粉末の配合組成で、Mo:0.3%及びCr:0.62%の成形体を得た場合も、請求項に係る発明に相当した組成とはなるが、3%Mo鉄粉(Crを含まない)がベースとは言い難いところもあり、また、発明の詳細な説明の記載からは、このような鉄基焼結体で所望の効果があるといった事項については把握することはできず、所望の目的を達し得るかは不明である。

カ 以上のとおりであるので、鉄基焼結体全体の構成が明らかになったとしても、二次手続補正書により補正された請求項1?4、5?12に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に記載があるものとは言えないものである。

第6 当審の判断
1.当審拒絶理由について
ア 前記「第2 本願発明」のとおり、本願発明1においては、「Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉またはFeとMnとSiとCの合金粉と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材」であること、及び、「引張強さが800MPa以上であり、シャルピー衝撃試験の衝撃値が30J/cm^(2)以上である」ことが特定されるものである。

イ そして、鉄基焼結材の原料の組成、引張強さ及びシャルピー衝撃試験の衝撃値といった前記発明特定事項を含む本願発明1の発明特定事項によって、例えば試料No.911は本願発明1に含まれないものとなり、その結果、本願発明1が、その発明特定事項のみにより、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供する、という本願発明の課題を解決できることは明らかである。
更にこのことは、請求項1を直接的または間接的に引用する本願発明2?本願発明12についても同様であるので、本願発明1?本願発明12が発明の詳細な説明に記載されていないということはできない。

ウ なお、「試料群3」の試料No.311、試料No.C31、試料No.C33は、黒鉛(Gr)粉が含まれているのかいないのかが判然としないので、例えば試料No.311が本願発明の実施例に相当するのか否かが不明確である点については、前記(ア-7)には、試料No.311が試料No.129(【0096】【表3A】)と同じものであること、Gr粉配合量が0.6%であるほかの試料(例えば試料No.129、No.214)と同様に0.61%のCを含むことが記載されているから、試料No.311は黒鉛(Gr)粉を0.6%含むものであって、本願発明の実施例に相当することが強く推認されるものであり、記載不備とまでいうべきものではない。

エ したがって、本願が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないとはいえないので、当審拒絶理由は理由がない。

2.原査定の理由について
(1)特許法第36条第6項第1号について
ア 本願発明1は、前記「第2 本願発明」のとおりのものである。

イ このように、鉄基焼結材の原料の組成、引張強さ及びシャルピー衝撃試験の衝撃値といった前記発明特定事項を含む本願発明1の発明特定事項によれば、鉄基焼結体に含有される元素は明確に特定されるから、本願発明1が、Niが含有されるものか否か、合金成分の含有量が抑制されたものなのか否かがはっきりしていないとはいえないし、本願発明1が、その発明特定事項のみにより、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供する、という課題を解決できることが明らかであることは、前記「第6 当審の判断 1.当審拒絶理由について イ」に記載のとおりである。

ウ そして、本願発明1においては、引っ張り強さとシャルピー衝撃試験の衝撃値がそれぞれ「800MPa以上」、「30J/cm^(2)以上」と特定されているから、何と比べてより高い強度や靱性を達していれば、前記目的を達したものとするのかがわからないともいえない。

エ そうすると、本願発明1は、前記目的を達したものか否か判断できなくなるまでに、発明の詳細な説明に記載される発明を、漠然と一般化したものであるとはいえない。
更にこのことは、請求項1を直接的または間接的に引用する本願発明2?本願発明12についても同様である。

オ また、本願発明1は、「Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉またはFeとMnとSiとCの合金粉と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材」であって、「引張強さが800MPa以上であり、シャルピー衝撃試験の衝撃値が30J/cm^(2)以上である」との発明特定事項を含むものであるから、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」した上で、「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材」とした発明といえる。

カ 一方、前記(ア-7)、(ア-8)によれば、例えば試料No.311は(更に同じ試料を用いた試料No.214、No.413等も)、「Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」したものであって、「引張強さが800MPa以上であり、シャルピー衝撃試験の衝撃値が30J/cm^(2)以上である」ものであるから、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」した上で、「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材」としたものといえる。

キ 前記オ、カの検討によれば、当業者は、発明の詳細な説明に、「従来のようにCrを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」した上で、「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材」としたものが記載されていることを理解できるのであって、これは、本願発明1と合致するものである。
そして、このことは、「Crを含むCr系鉄粉ではなく、Crを含まないMo系鉄粉からなるベース鉄粉に、Crを含む強化粉末を別途配合」したことにより「非常に高いシャルピー衝撃値を発揮する鉄基焼結材」が得られることが、実験的に解明されるに至っていないことに左右されるものではない。

ク よって、本願発明1が、発明の詳細な説明の記載から理解できない発明であるとはいえない。そして、このことは、請求項1を直接的または間接的に引用する本願発明2?本願発明12についても同様である。
したがって、本願発明1?本願発明12が、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。

ケ 以上のとおりであるので、本願は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるので、原査定の特許法第36条第6項第1号についての理由はいずれも理由がない。

(2)拒絶査定に付記された理由について
ア 本願発明1は、前記「第2 本願発明」のとおりであるから、5種類や6種類といった多種類の粉末を混合するものでなく、新規事項を含むものではない。
このことは、本願発明5及び前記(ア-2)(【0009】)、(ア-3)の記載についても同様である。

イ 本願発明1は、においては、「Moを含みCrを含まないベース鉄粉と、Crを含む強化粉末と、FeとMnとSiの合金粉またはFeとMnとSiとCの合金粉と、炭素源粉末とを混合してなり、Niを含まない混合粉末を加圧成形した成形体の焼結体からなる鉄基焼結材」であることが特定されており、「強化粉末」が「Crを含む強化粉末」であることが明確に特定されている。
しかも、二次手続補正書により当該手続補正書による補正前の請求項4は削除され、三次手続補正書による補正によってもこのことに変わりはないので、「強化粉末」が何を示しているのかが不明であるとも、ニッケルを含まない混合粉末が如何なるものを示すのかが不明確であるともいえない。

ウ したがって、拒絶査定に付記された理由はいずれも理由がない。

3.前置報告の理由について
(1)特許法第36条第6項第1号について
ア 前置報告における特許法第36条第6項第1号についての拒絶理由は、前記「第5 原査定及び前置報告の理由の概要 1.原査定の理由の概要 (1)特許法第36条第6項第1号について エ?ケ」に記載されるものと同旨のものである。

イ そして、前記「第6 当審の判断 2.原査定の理由について (1)特許法第36条第6項第1号について オ?ケ」の検討によれば、本願は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるので、同様の理由により、前置報告の理由は理由がない。

(2)前置報告に付記された理由について
ア 前記(ア-5)(【0047】?【0048】)によれば、本願発明1においては、原料粉末として「鉄基焼結材」において混合される「Moを含みCrを含まない」鉄粉を、「Moを含みCrを含まないベース鉄粉」として特定していることは明らかであって、このことが、例えば本願発明1における「Moを含みCrを含まない鉄粉」の配合量の多寡に左右されるものではないことは明らかである。

イ また、本願発明1の発明特定事項のみによって、Ni等を含有させるまでもなく、合金成分の含有量を全体的に抑制しつつ、十分な高強度と従来よりも遙かに高い靱性(高衝撃値)が得られる鉄基焼結材と、その製造方法を提供する、という課題を解決できることが明らかであることは、前記「第6 当審の判断 1.当審拒絶理由について イ」に記載のとおりであるから、本願は、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。

ウ したがって、前置報告に付記された理由は理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-11 
出願番号 特願2014-59308(P2014-59308)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 毅  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 金 公彦
長谷山 健
発明の名称 鉄基焼結材およびその製造方法  
代理人 特許業務法人SANSUI国際特許事務所  
代理人 森岡 正往  

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