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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1335421 |
審判番号 | 不服2016-4055 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-16 |
確定日 | 2017-12-15 |
事件の表示 | 特願2011-7522「半導体ダイを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年7月28日出願公開、特開2011-146717〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年1月18日(パリ条約による優先権主張,2010年(平成22年)1月18日 米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年 9月12日付け:拒絶理由の通知 平成27年 3月18日 :意見書,手続補正書の提出 平成27年11月17日付け:拒絶査定 平成28年 3月16日 :審判請求書の提出,同時に手続補正書の提出 平成28年 4月 4日 :審判請求書に対する手続補正書の提出 第2 平成28年3月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年3月16日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含むものであり,請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「上部表面および底部表面を有する半導体ウエハを提供する段階と, 前記半導体ウエハの前記上部表面上に複数の半導体ダイを形成する段階であって,前記複数の半導体ダイの第1のダイは,実質的に直角の第1のコーナを形成するために交差する2つの実質的に直線の側辺を有し,前記第1のコーナとは異なる形状を有する前記第1のダイの1またはそれ以上の他のコーナを形成する形状を含む周囲を有する,段階と, 前記半導体ダイの間にある前記半導体ウエハの領域としてシンギュレーション領域を形成する段階と, 前記複数の半導体ダイを同時にシンギュレートするためにドライ・エッチングを用いる段階と, から構成されることを特徴とする半導体ダイを形成する方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成27年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「上部表面および底部表面を有する半導体ウエハを提供する段階と, 前記半導体ウエハの前記上部表面上に複数の半導体ダイを形成する段階であって,前記複数の半導体ダイの2またはそれ以上のダイは,少なくとも1つの湾曲した側辺および1つの直線の側辺を有する形状を含む周囲を有する,段階と, 前記半導体ダイの間にある前記半導体ウエハの領域としてシンギュレーション領域を形成する段階と, 前記複数の半導体ダイを同時にシンギュレートするためにドライ・エッチングを用いる段階と, から構成されることを特徴とする半導体ダイを形成する方法。」 2 補正の適否 本件補正において,「少なくとも1つの湾曲した側辺」が削除されている。したがって,本件補正前の「少なくとも1つの湾曲した側辺・・・を有する形状」は,「湾曲した側辺」を有する形状を意味していたところ,本件補正後は,「湾曲した側辺」を有しても有さなくてもよい形状を意味することとなり,意味する範囲が拡張した。 よって,この補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 さらに,この補正が,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものでないことも明らかであるから,同条第5項第1号,第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反してなされたものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年3月16日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は,平成27年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。再掲すれば,次のとおり。 「上部表面および底部表面を有する半導体ウエハを提供する段階と, 前記半導体ウエハの前記上部表面上に複数の半導体ダイを形成する段階であって,前記複数の半導体ダイの2またはそれ以上のダイは,少なくとも1つの湾曲した側辺および1つの直線の側辺を有する形状を含む周囲を有する,段階と, 前記半導体ダイの間にある前記半導体ウエハの領域としてシンギュレーション領域を形成する段階と, 前記複数の半導体ダイを同時にシンギュレートするためにドライ・エッチングを用いる段階と, から構成されることを特徴とする半導体ダイを形成する方法。」 2 引用例の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2001-148358号公報(平成13年5月29日出願公開。以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 ア 「【0013】この半導体ウェーハW1においては,図における横方向をX軸方向,縦方向をY軸方向とすると,チップ領域P1をX軸方向に少しずつずらすことにより部分的にチップ領域P1が段違いに配置されており,これに伴いチップ領域P1を仕切るY軸方向のストリートS1もその一部が一直線状ではなくジグザグに形成されている。なお,チップ領域P1の配置の仕方によっては,全部のストリートがジグザグに形成される場合もある。 【0014】このようにチップ領域P1を段違いに配置したことによって,図1の半導体ウェーハW1には図12に示した半導体ウェーハWより多くのチップ領域P1を確保することができる。具体的には,図1の半導体ウェーハW1にはチップ領域P1が159個形成されているのに対し,図12の半導体ウェーハWに形成されているチップ領域Pは144個であり,チップ領域の配置を変更したことにより,同一の形状及び大きさの半導体ウェーハに形成できるチップ領域の数が10%以上増えていることがわかる。 【0015】図2に示す半導体ウェーハW2は,本発明の第二の実施の形態を示したもので,円形その他の丸みを帯びた不規則な形状のチップ領域P2が複数形成されている。そしてストリートS2は,不規則な形状のチップ領域P2の外形に沿って形成されている。 【0016】また,図3に示す半導体ウェーハW3は,本発明の第三の実施の形態を示したもので,丸みはないが不規則な形状のチップ領域P3が密着して形成されている。そしてストリートS3は,これらチップ領域P3の外形に沿って形成され,隣り合うチップ領域間を仕切っている。 【0017】更に,図4に示す半導体ウェーハW4は,本発明の第四の実施の形態を示したもので,種々の大きさの矩形のチップ領域P4が密着して形成されている。そしてストリートS4は,これらチップ領域P4の外形に沿って形成され,隣り合うチップ領域間を仕切っている。また,図1に示した半導体ウェーハW1と同様に,図における横方向をX軸方向,縦方向をY軸方向とすると,チップ領域P4をX軸方向に少しずつずらすことにより部分的に段違いに配置しており,これに伴いチップ領域P4を仕切るY軸方向のストリートS4も部分的に直線ではなくジグザグに形成されている。 【0018】以上のように,図1から図4に示した半導体ウェーハにおいては,1枚の半導体ウェーハ内に種々の形状のチップ領域を自由に配置することができるため,少なくとも5?10%多くチップを形成することができ,半導体材料を有効に活用することができる。そして,外形が曲線状に形成されたチップ領域や形状や大きさが異なる種々のチップ領域を1枚の半導体ウェーハ内に形成することができるため,複数のメーカーからの異なる要望に同時に対応することができる。」 イ 「【0031】このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハW1の表面のうち,ストリートS1の上部に被覆されていたレジスト膜は,レジスト膜除去工程において除去されているが,その他の部分はレジスト膜で覆われているため,ストリートS1のみが化学的エッチング処理によって所定深さ浸食され,図6(C)に示すように,ストリートS1に溝21が形成される(第三の工程)。」 ウ 「【0042】このように,本発明に係る半導体ウェーハの分割方法によれば,ストリートの形状に拘わらずチップに分割することができる。従って,本実施の形態では図1に示した半導体ウェーハW1を分割する場合について説明したが,図2?図4に示した半導体ウェーハはもちろんのこと,チップ領域の形状や大きさがどのように形成されていたとしても,また,チップ領域がどのように配置されていたとしても,常にチップに分割することができる。 【0043】また,第四の工程において必ずしも半導体ウェーハの裏面を研削することは必須ではなく,化学的エッチングのみによって溝を表裏面に貫通させてしまうことでチップに分離させてもよい。」 (2)上記記載から,引用例2には,次の技術的事項が記載されている。 ア 隣り合うチップ領域間をストリートで仕切り,外形が曲線状に形成されたチップ領域や形状や大きさが異なる種々のチップ領域を1枚の半導体ウェーハ内に形成する技術(特に上記(1)ア)。 イ ストリートをドライエッチングによって除去する技術(特に上記(1)イ及びウ)。 (3)これらのことから,引用例2には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「半導体ウェーハ内に,外形が曲線状に形成されたチップ領域や形状や大きさが異なる種々のチップ領域を形成し, 隣り合うチップ領域間をストリートで仕切り, ストリートを除去するためにドライエッチングを用いる技術」 3 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「チップ領域」,「ストリート」,「半導体ウェーハ」及び「ドライエッチング」は技術的に見て,本願発明の「半導体ダイ」,「シンギュレーション領域」,「半導体ウエハ」及び「ドライ・エッチング」に相当することは明らかである。 そして,引用発明においては,「チップ領域」を仕切る「ストリート」を「ドライエッチング」を用いて除去する技術が示されているのであるから,当該技術は本願発明の「半導体ダイを形成する方法」に相当する。 また,「半導体ウエハ」が「上部表面および底部表面を有する」ことは「半導体ウエハ」自体が当然に有する構成に過ぎない。 さらに,引用発明においては,「半導体ウェーハ内」に「チップ領域」を形成しているが,このことは,「半導体ウェーハ」の範囲の中でその表面に「チップ領域」が形成されるものと当業者であれば当然に理解することである。 (2)以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 【一致点】 「上部表面および底部表面を有する半導体ウエハを提供する段階と, 前記半導体ウエハの前記上部表面上に複数の半導体ダイを形成する段階であって,前記複数の半導体ダイの2またはそれ以上のダイは,種々の形状を含む周囲を有する,段階と, 前記半導体ダイの間にある前記半導体ウエハの領域としてシンギュレーション領域を形成する段階と, 前記複数の半導体ダイを同時にシンギュレートするためにドライ・エッチングを用いる段階と, から構成されることを特徴とする半導体ダイを形成する方法。」 【相違点】 本願発明は,「半導体ダイ」が「少なくとも1つの湾曲した側辺および1つの直線の側辺を有する」ものであるのに対し,引用発明は,「チップ領域」が引用例2の第1図ないし第4図に示されるような,曲線や直線からなることは示されているものの,「湾曲した側辺」および「直線の側辺」を有することが明記はされていない点。 (3)判断 引用例2の第2図においては,曲線が示されていることは明らかであり「湾曲した側辺」を有している。そして,一部分かなり直線に近似されるような線が示されていることも認識される。ここで,第2図に示されているのは「不規則な形状のチップ領域」であり,設計上の必要に応じて,一部分が直線となることも十分に想到しうる事項にすぎない。 そして,現実に,ダイの形状が「湾曲した側辺」および「直線の側辺」を有することは,拒絶査定の際に周知文献として提示した特開2004-221423号公報の【図42】,特開2004-95952号公報の【図9】に示すように従来周知であり,そのような形状を採用することに困難性は認められない。 また,平成27年3月18日に提出された意見書においても,引用例2の図2に示された技術において,一部分を直線とすることが通常想到し得ないとする事情が説明されていない。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 請求人の主張 請求人は,平成28年4月4日提出の手続補正書において,審判請求時に補正された発明の利点として,段落【0096】を引用して「しかしながら,どのようなコーナであっても,ダイの1つコーナを識別するためのアラインメント・キーを形成するために,ダイの他のコーナとは異なっていることを要する。」とする記載にアンダーラインを付与して主張している。 この主張は,上記第2において却下された手続補正に基づくものであり,採用できないが,仮に,平成28年3月16日にされた手続補正が却下されなかったとしても,上記の利点は,例えば特表2006-523949号公報の段落【0025】に「例えば,ウェハをダイスカットした(ダイに分離した)後,ダイの形状を用いて,そのダイをパッケージする前にそのダイの方向が合わせられる。」と記載されているように,出願前に公知な技術思想であり,平成28年3月16日に補正された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-07-11 |
結審通知日 | 2017-07-13 |
審決日 | 2017-07-25 |
出願番号 | 特願2011-7522(P2011-7522) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石黒 雄一、内田 正和 |
特許庁審判長 |
刈間宏信 |
特許庁審判官 |
平岩正一 渡邊真 |
発明の名称 | 半導体ダイを形成する方法 |
代理人 | 本城 雅則 |
代理人 | 本城 吉子 |