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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1335424
審判番号 不服2016-9449  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-24 
確定日 2017-12-14 
事件の表示 特願2013-504634「画像処理装置および方法、プログラム、並びに、記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/124461〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
本願は、2012年(平成24年)2月28日(優先権主張平成23年3月11日、日本、平成23年6月20日、日本)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

平成27年12月 8日 拒絶理由(発送日)
平成28年 1月21日 意見書 手続補正
平成28年 4月 5日 拒絶査定(発送日)
平成28年 6月24日 審判請求 手続補正
平成29年 6月 6日 当審拒絶理由(発送日)
平成29年 7月19日 意見書 手続補正


第2 本願発明
1.本願の請求項1?16に係る発明について
本願の請求項1?16に係る発明は、平成29年7月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるところ、その請求項1及び請求項2に係る発明は、以下のとおりのものである。
なお、請求項中の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。

【請求項1】
(A) 画像データを符号化する画像処理装置において、
(B1) シーケンス単位で固定サイズの最大コーディングユニットを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのコーディングユニットを処理単位として、カレントコーディングユニットに隣接していない周辺に位置する周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、予測量子化パラメータとして設定する予測量子化パラメータ設定部と、
(C) 前記カレントコーディングユニットに設定されたカレント量子化パラメータと前記予測量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータとの差分値を示す差分量子化パラメータを設定する差分量子化パラメータ設定部と、
(D)
前記コーディングユニットを処理単位として前記画像データを符号化して、前記差分量子化パラメータ設定部により設定された前記差分量子化パラメータを含むビットストリームを生成する符号化部と
(A) を備える画像処理装置。
【請求項2】
(E) カレント最大コーディングユニット内における前記カレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態であるかを判定する判定部をさらに備え、
(B2) 前記予測量子化パラメータ設定部は、前記判定部により全ての前記隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態でないと判定された場合に、前記周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、前記予測量子化パラメータとして設定する
(A) 請求項1に記載の画像処理装置。

なお、請求項1には「画像処装置。」と記載されているが、請求項2には「画像処理装置。」と記載されているので、請求項1の「画像処装置。」は、「画像処理装置。」の誤記と認め、請求項1に係る発明を上記のように認定した。


2.優先権主張について
本件補正前の請求項1に係る発明は、
「シーケンス単位で固定サイズの最大コーディングユニットを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのコーディングユニットを処理単位として、カレント最大コーディングユニット内におけるカレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する全ての隣接コーディングユニットが前記カレント最大コーディングユニット外に位置し、アベイラブルな状態でないと判定される場合に、前記カレントコーディングユニットに隣接していない周辺に位置する周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、予測量子化パラメータとして設定する予測量子化パラメータ設定部」という発明特定事項(以下、構成(B)という。)を含んでおり、本件補正前の請求項2?16に係る発明にも上記構成(B)と同様な発明特定事項が含まれている。
そして、本件補正によって、請求項1の上記構成(B)は、「カレント最大コーディングユニット内におけるカレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する全ての隣接コーディングユニットが前記カレント最大コーディングユニット外に位置し、アベイラブルな状態でないと判定される場合に」という事項が削除された。
請求項1を引用する請求項2に係る発明は、構成(E)及び構成(B2)という発明特定事項を含んでいるところ、本件補正後の請求項2の構成(E)は、上記構成(B)の事項と同様である「カレント最大コーディングユニット内における前記カレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態であるかを判定する」という発明特定事項を含むものである。

これに対し、優先権主張の基礎とする特願2011-54817号には、
「 【0159】
なお、予測値PredQPを算出するのに用いる量子化パラメータは、算出済みのものであれば、周辺領域A乃至周辺領域C以外の領域であってもよい。例えば、量子化パラメータQPdやQPeを用いて予測値PredQPを求めるようにしてもよい。また、注目領域に隣接していない周辺領域の量子化パラメータQPa’を用いて予測値PredQPを求めるようにしてもよい。さらに、上述した以外の周辺領域の量子化パラメータを用いて予測値PredQPを求めるようにしてもよい。例えば、上述したような注目領域の空間的に周辺に位置する領域(空間的な周辺領域)の量子化パラメータ以外にも、参照フレームのCo-Located領域のように、注目領域の時間的に周辺に位置する領域(時間的な周辺領域)の量子化パラメータを用いて予測値PredQPを求めるようにしてもよい。さらに、空間的な周辺領域の量子化パラメータと時間的な周辺領域の量子化パラメータとを併用して予測値PredQPを求めるようにしてもよい。
【0160】
なお、予測値PredQPの算出に、例えば量子化パラメータQPaに代えて、量子化パラメータQPa'を用いることにより、注目領域に隣接する周辺領域の符号化処理(若しくは復号処理)を待たずに、注目領域の量子化パラメータの予測値PredQPの算出処理を開始することが可能になり、高速な処理の実現が可能となる。時間的な周辺領域の量子化パラメータを用いる場合も同様である。」
と記載されている。
このように、優先権主張の基礎とする特願2011-54817号には、構成(E)及び構成(B2)に関する記載は見当たらない。

また、優先権主張の基礎とする特願2011-136325号には、
「 【0240】
ステップS302において、演算制御部302は、注目領域に対して、利用可能な周辺領域が存在するか否かを判定する。周辺領域A乃至Cの全ての周辺領域が利用不可(unavailableな状態)であると判定された場合、演算制御部302は、予測量子化パラメータを生成しない(または、値が0若しくは初期値の予測量子化パラメータを生成する)ように予測量子化パラメータ生成処理を終了させ、処理を図8に戻す。
(略)
【0248】
通常予測が選択されると、ステップS309において、予測量子化パラメータ生成部151は、周辺領域A乃至Cのうち、利用可(availableな状態)の領域の量子化パラメータ(すなわち、量子化パラメータQPa,QPb、およびQPcのうちいずれか1つ)を、周辺領域量子化パラメータとして取得する。
【0249】
ステップS310において、予測量子化パラメータ生成部151は、ステップS309において取得された周辺領域量子化パラメータを予測量子化パラメータとする。すなわち、予測量子化パラメータ生成部151は、領域量子化パラメータQPa,QPb、およびQPcのうち、いずれか1つを予測量子化パラメータとする。ステップS310の処理が終了すると、予測量子化パラメータ生成部151は、予測量子化パラメータ生成処理を終了し、処理を図8に戻す。
【0250】
以上のように、周辺領域の利用可否を判定するので、量子化パラメータ符号化部121は、利用可の周辺領域の周辺領域量子化パラメータのみを用いて予測量子化パラメータをより確実に生成することができる。なお、この周辺領域の利用可否の判定条件は任意であるので、量子化パラメータ符号化部121は、所望の周辺領域の周辺領域量子化パラメータのみを用いて所望の予測量子化パラメータをより確実に生成することができる。
【0251】
また、以上のように、予測量子化パラメータの算出方法を、利用可である周辺領域の数に応じて決定するので、量子化パラメータ符号化部121は、より適切な演算方法を適用し、予測量子化パラメータをより確実に生成することができる。
【0252】
なお、以上においては、注目領域に対する周辺領域として図5の例の周辺領域A乃至Cを用いて説明したが、周辺領域はこれらの領域以外の領域を含むようにしてもよい。また、周辺領域とする領域数も任意である。例えば、注目領域と周辺領域の大小関係に応じて決定されるようにしてもよい。」
と記載されている。
このように、優先権主張の基礎とする特願2011-136325号には、構成(E)及び構成(B2)に関する記載は見当たらない。

以上のとおり、優先権主張の基礎とする特願2011-54817号及び特願2011-136325号には、構成(E)及び構成(B2)に関する記載は見当たらない。
よって、優先権主張の基礎とする特願2011-54817号及び特願2011-136325号には、構成(E)及び構成(B2)についての記載がないことから、請求項1を引用する請求項2に係る発明について、特願2011-54817号及び特願2011-136325号に基づく優先権の主張を認めることはできない。


3.まとめ
以上のとおり、請求項1を引用する請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本願の国際出願日である2012年(平成24年)2月28日を、新規性及び進歩性の判断の基準日とする。


第3 当審の判断

1.引用文献の記載

(1)引用文献1
当審の拒絶の理由に引用された引用文献1(Hirofumi Aoki et al,”Non-CE4: Rate control friendly spatial QP prediction”,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 7th Meeting: Geneva, CH,[JCTVC-G1028])には、図面と共に次の事項が記載されている。
なお、括弧内に当審で作成した日本語仮訳を添付する。

(1-1)「Abstract
This contribution presents a rate-control-friendly spatial QP prediction method, which is based on test 1.3.c of CE4 Subtest 1. For CUs coded with angular intra prediction, the method employs a neighbouring CU within the current LCU along intra prediction direction for QP prediction. For other CUs, the method predicts QP as the average of reference QPs selected from above and left CUs within the current LCU. Compared with test 1.3.c of CE4 Subtest 1, LCU-level adaptability to rate control requirement to avoid CPB overflow is ensured by restricting QP reference across LCU boundary, and complexity is reduced by eliminating dependency on prediction mode. The experimental results show that, under the test condition of CE4 Subtest 1, the proposed QP prediction achieves coding efficiency improvement of 0.3% for AI-HE, AI-LC, RA-LC, LB-HE and LB-LC configurations, and 0.2% for RA-HE configuration. Gain of around 0.5% can be expected to be achieved when it is compared with the AVC-style QP prediction employing previously coded QP only.」

(概要
この寄稿では、CE4サブテスト1のテスト1.3.cに基づくレート制御フレンドリーな空間的QP予測方法を提示する。角度イントラ予測でコード化されたCUに対して、この方法は、QP予測のために、カレントLCU内のイントラ予測方向に沿って隣接CUを使用する。
他のCUの場合、この方法は、カレントLCU内の上CUと左CUから選択された参照QPの平均としてQPを予測する。CE4サブテスト1のテスト1.3.cと比較して、LCU境界を越えるQP参照を制限することによってCPBオーバフローを回避するためのレート制御要件へのLCUレベル適合性が保証され、予測モードへの依存をなくすことによって複雑性が低減される。
実験結果は、CE4サブテスト1のテスト条件下で、AI-HE、AI-LC、RA-LC、LB-HEおよびLB-LC構成に対して0.3%、RA-HE構成の0.2%の符号化効率改善を達成した。以前に符号化されたQPのみを使用するAVCスタイルのQP予測と比較すると、約0.5%の利得が達成されると期待される。)


(1-2)「1 Introduction
At this meeting, results of CE4 Subtest 1 on QP coding [1] were reviewed. Among spatial QP prediction methods listed in CE4 Subtest 1, the test 1.3.c (JCTVC-G067) method [2] based on intra prediction direction and prediction mode showed the best R-D performance. However, two major concerns were raised on: (1) adaptability to rate control to avoid CPB overflow and (2) complexity. This contribution presents a solution for those concerns by introducing two conceptual modifications into the test 1.3.c as follows.
● QP reference across LCU boundary is prohibited. This concept is included in test 2.3.c (JCTVC-F332) [3] of the former CE4 Subtest 2 at the 6^(th) JCT-VC meeting. Previous QP is employed for reference if no CUs are available within LCU, i.e., the current CU is located at the top left of the current LCU. This modification introduces LCU-level adaptability to rate control requirement to avoid CPB overflow.
● For simplification, prediction mode dependent QP prediction, which is 2.3.f (JCTVC-F300) [4] of the former CE4 Subtest 2, is removed.」

(1はじめに
この会議では、QPコーディング[1]のCE4サブテスト1の結果がレビューされた。CE4サブテスト1に列挙された空間的QP予測方法のうち、イントラ予測方向及び予測モードに基づくテスト1.3.c(JCTVC-G067)方法[2]は、最良のR-D性能を示した。しかし、(1)CPBオーバーフローを回避するためのレート制御への適合性、および(2)複雑さに関する2つの大きな懸案事項が提起された。この寄稿は、次のようにテスト1.3.cに2つの概念的変更を導入することによって、これらの懸案事項に対する解決策を提示する。
● LCU境界を越えるQP参照は禁止されている。このコンセプトは、第6回JCT-VC会合での前回のCE4サブテスト2のテスト2.3.c(JCTVC-F332)[3]に含まれている。以前のQPは、LCU内に利用可能なCUが存在しない場合、すなわちカレントCUがカレントLCUの左上に位置する場合に参照のために使用される。この変更により、CPBオーバーフローを回避するために、レート制御要件に対するLCUレベル適合性が導入される。
● 簡略化のために、前のCE4サブテスト2の2.3.f(JCTVC-F300)[4]である予測モード依存QP予測が削除される。)

(1-3)「2 Algorithm description
For the proposed QP prediction, the proposed method employs the top-left-most CU and the top-left-most PU of each set of CUs where QP is assigned, which is referred to as quantization group of coding units in the current WD [5] and hereafter denoted as QU in this contribution QU, as shown in Figure 1
Brief algorithm of the proposed method is described as follows.
● If the top-left-most CU is intra-coded, predicted QP is derived along intra prediction with the G357 method [6], where the branch condition for selecting reference QP is a little revised from 1.3.c. It is prohibited to refer CUs which are outside of the LCU.
● Otherwise if at least either of the above CU or the left CU is available within the LCU, predicted QP is calculated by averaging QPs of those CUs available.
● Otherwise, previously coded QP is employed as predicted QP.」

(2アルゴリズム記述
提案方法は、QP予測のために、QPが割り当てられるCUの各セットの最も左上CUと最も左上PUを使用し、これはカレントWDの符号化ユニットの量子化グループ[5]と呼ばれ、図1に示されているように、以下この寄稿QUにおいてQUと表示される。提案方法の簡単なアルゴリズムを以下に説明する。
● 最も左上CUがイントラ符号化されている場合、予測QPはG357法[6]を用いてイントラ予測に基づいて導出される。ここで参照QPを選択するための分岐条件は1.3.cから少し修正されている。LCUの外部にあるCUを参照することは禁じられてる。
● 上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能な場合、利用可能なCUのQPを平均して予測QPが計算される。
● そうでなければ、以前にコード化されたQPが予測QPとして使用される。)

(1-4)「Figure 2 shows the classification of intra prediction direction in the proposed QP prediction. QP reference relationship between CUs is shown in Figure 3. As shown in Figure 3, every top-left-most CU in each LCU employs previously coded QP as the predicted QP, and therefore adaptability to rate control to avoid CPB overflow is ensured at LCU level.(以下略)


Figure 3: QP reference relationship between CUs.」


(図2は、提案されたQP予測におけるイントラ予測方向の分類を示す。CU間のQP参照関係を図3に示す。図3に示すように、各LCUの各最も左上CUは、事前に符号化されたQPを予測されたQPとして使用するため、LCUレベルでCPBオーバーフローを回避するレート制御への適合性が保証される。

図3:CU間のQP参照関係)

(1-5)「3 Experiment
3.1Setup
The proposed QP prediction algorithm has been implemented onto the base software for CE4 Subtest 1 [1]. Experiments to evaluate performance of the proposed method were conducted under the CE4 Subtest 1 test conditions, with MinCUDQPSize equal to 8x8.
Our computing platform used for the experiments is shown below.
● OS: Windows 7 Professional 64-bit
● CPU: Intel Xeon X5680 3.46GHz, 6 physical cores x 2 CPUs (12 cores in total)
● Memory: 32GiB」

(3実験
3.1セットアップ
提案されたQP予測アルゴリズムは、CE4サブセット1 [1]の基本ソフトウェアに実装されている。提案された方法の性能を評価するための実験は、CE4サブセット1テスト条件の下で実行され、MinCUDQPSizeは8x8に等しい。実験に使用したコンピューティングプラットフォームを以下に示す。
● OS:Windows 7 Professional 64ビット
● CPU:Intel Xeon X5680 3.46GHz、6物理コア×2 CPU(合計12コア)
● メモリ:32GiB )


(2)引用発明
上記引用文献1に記載された発明を認定する。

(2-1)画像処理装置
上記(1-1)及び(1-2)から、引用文献1には、画像データを符号化すること、実験結果として符号化効率改善を達成したことが記載されている。
また、上記(1-5)から、QP予測アルゴリズムをソフトウェアに実装して、OS、CPU及びメモリを備えたコンピューティングプラットフォームで実行することが記載されており、OS、CPU及びメモリを備えたコンピューティングプラットフォームが「画像処理装置」であることは技術常識である。
よって、引用文献1には、「画像データを符号化する画像処理装置」が記載されている。

(2-2)LCU、CU、処理単位
上記(1-2)から、引用文献1に記載の画像データの符号化方法は空間的QP予測方法であって、カレントLCU内のCUを使用するものであるから、LCUを分割して得られるCUを処理対象としている。
さらに、Figure 3において、太線の矩形が「LCU boundary」と線示され、太線の矩形内に4つの矩形が描画され、4つ矩形の一つ乃至二つの矩形の内部がさらに小さい4つの矩形で描画されており、太線の内部の矩形をCUとしている。
以上のことから、引用文献1に記載の画像データの符号化方法は、LCUを4分木構造に従って分割したユニットを処理単位とすること、分割したユニットは再帰的に分割することによってサイズが可変であるものである。
よって、引用文献1に記載の画像データの符号化方法は、「LCUを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのCUを処理単位とする」ものである。


(2-3)QP予測
上記(1-3)に、QP予測について、「上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能な場合」は利用可能なCUのQPを計算に用いること、及び、「そうでなければ、以前にコード化されたQPが予測QPとして使用」することが記載されている。
ここで、「上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能」及び「そうでなければ」の両場合については、カレントCUの上CU及び左CUがカレントLCU内で利用可能か否かを判定することなのは明らかである。
また、上記(1-2)の「以前のQPは、LCU内に利用可能なCUが存在しない場合、すなわちカレントCUがカレントLCUの左上に位置する場合に参照のために使用される」との記載から、上記「そうでなければ」の場合とは、「カレントCUがカレントLCUの左上に位置する場合」である。
加えて、CU間のQP参照関係を示すFigure 3において、濃い色の矢印で示されるように、LCU内の先頭のCUである左上に位置するCUは、直前のLCUの最後のCUを参照することがみてとれるから、上記(1-3)の「以前にコード化されたQP」とは、「直前のLCUの最後のCUのQP」であると認められる。

よって、引用文献1に記載の画像データの符号化方法は、「カレントCUの上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能である場合、或いは、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置する場合を判定する」ものである。
そして、引用文献1に記載の画像データの符号化方法は、「カレントCUの上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能と判定された場合は、利用可能なCUのQPから予測QPを計算し、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置すると判定された場合は、直前のLCUの最後のCUのQPを予測QPとする」ものである。

(2-4)符号化
上記(2-1)で検討したように、引用文献1には、画像データを符号化することが記載されており、また、上記(2-2)で検討したようにCUを処理単位とすることが記載されている。
よって、引用文献1には、「CUを処理単位として画像データを符号化して、ビットストリームを生成する」ことが記載されている。

(2-5)まとめ
上記のQP予測、符号化の処理は、画像処理装置に実装されて実現されるものであるから、引用文献1に記載された発明を、上記処理を実現する手段を備える発明と認定することとする。
すなわち、上記(2-3)の処理は「判定する手段」及び「設定する手段」、上記(2-4)の処理は「符号化手段」が実現するものと認定する。

以上のことから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の各構成の符号は、説明のために付与したものであり、以下、構成(a)、構成(b)などと称する。

(引用発明)
(a) 画像データを符号化する画像処理装置において、
(e) LCUを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのCUを処理単位として、カレントCUの上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能である場合、或いは、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置する場合を判定する手段と、
(b) LCUを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのCUを処理単位として、前記判定する手段により、カレントCUの上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能と判定された場合は、利用可能なCUのQPから予測QPを計算し、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置すると判定された場合は、直前のLCUの最後のCUのQPを予測QPとして設定する手段と、
(d) 前記CUを処理単位として前記画像データを符号化して、ビットストリームを生成する符号化手段と、
(a)を備える画像処理装置。


(3)引用文献2
同じく、当審における拒絶理由に引用された引用文献2(Thomas Davies,”BBC's Response to the Call for Proposals on Video Compression Technology”,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 1st Meeting: Dresden, DE,pp.1, 6-8, [JCTVC-A125])には、図面と共に次の事項が記載されている。

(3-1)「2.2Unit definition
2.2.1 Coding Unit (CU)
In this proposal, the coding unit (CU) is defined as a basic unit which has a square shape. Although it has a similar role to the macroblock and sub-macroblock in H.264/AVC, the main difference lies in the fact that CU can have various sizes, with no distinction corresponding to its size. All processing except frame-based loop filtering is performed on a CU basis, including intra/inter prediction, transform, quantization and entropy coding. Two special terms are defined: the largest coding unit (LCU) and the smallest coding unit (SCU). For convenient implementation, LCU size and SCU size are limited to values which are a power of 2 and which are greater than or equal to 8.
It is assumed that a picture consists of non-overlapped LCUs. Since the CU is restricted to be a square shape, the CU structure within an LCU can be expressed in a recursive tree representation adapted to the picture. That is, CU is characterized by LCU size and the hierarchical depth in the LCU that the CU belongs to.」(第6頁第15行?第26行)

(2.2ユニット定義
2.2.1コーディングユニット(CU)
この提案では、コーディングユニット(CU)は、正方形の基本単位として定義される。H.264 / AVCのマクロブロックおよびサブマクロブロックと同様の役割を持っているが、主な違いは、CUがそのサイズに対応していないさまざまなサイズを持つことができる点にある。フレームベースのループフィルタリングを除くすべての処理は、イントラ/インター予測、変換、量子化およびエントロピー符号化を含むCUベースで実行される。最大コーディングユニット(LCU)と最小コーディングユニット(SCU)の2つの特別な用語が定義されている。都合のよい実施のために、LCUサイズおよびSCUサイズは、2のべき乗であり、8以上の値に制限される。ピクチャは、重複していないLCUからなると仮定する。CUは正方形に限定されているので、LCU内のCU構造は、画像に適合した再帰的ツリー表現で表現することができる。すなわち、CUは、LCUのサイズと、そのCUが属するLCUの階層的な深さによって特徴付けられる。)

(3-2)
「Figure 2-2 shows an example where the LCU size is 128 and the maximum hierarchical depth is 5. The recursive structure is represented by a series of split flags. For CU_(d), which has depth d and size 2Nx2N, the coding of CU is performed in the current depth when split flag is set to zero. When the split flag is set to 1, CU_(d) is split into 4 independent CU_(d+1) which has depth (d+1) and size NxN. In this case, CU_(d+1) is called as a sub-CU of CU_(d) similar to a sub-macroblock in H.264/AVC. Unless the depth of sub-CU (d+1) is equal to the maximum allowed depth (4 in this case), each CU_(d+1) is processed in a recursive manner. If the depth of sub-CU (d+1) is equal to the maximum allowed depth, further CU splitting is not allowed. Note that a CU can be further split into PUs, however (see section 2.2.2).
The sizes of LCU and SCU are specified in the Sequence Parameter Set (SPS). The embedded information in the SPS is LCU size (s) and the maximum hierarchical depth (h) in a LCU.
For example, if s = 128 and h = 5, then 5 kinds of CU sizes are possible: 128x128 (LCU), 64x64, 32x32, 16x16 and 8x8 (SCU). If s = 16 and h = 2, then 16x16 (LCU) and 8x8 (SCU) are possible; this is a similar block structure to H.264/AVC. Therefore, if the LCU size and maximum hierarchical depth are given, this defines the possible CU sizes which are allowed.」(第7頁第1行?第14行)

(図2-2は、LCUサイズが128であり、最大階層深度が5である例を示す。再帰構造は、一連の分割フラグによって表される。深度dおよびサイズ2Nx2Nを有するCUdの場合、CUの符号化は、分割フラグがゼロに設定されたときに現在の深さで実行される。分割フラグが1にセットされると、CU_(d)は深さ(d + 1)とサイズNxNを有する4つの独立したCU_(d+1)に分割される。この場合、CU_(d+1)は、H.264 / AVCのサブマクロブロックと同様に、CU_(d)のサブCUと呼ばれる。サブCU(d + 1)の深さが許容される最大深度(この場合は4)に等しくなければ、各CU_(d+1)は再帰的に処理される。サブCU(d + 1)の深さが許容最大深度に等しい場合、さらにCU分割は許されない。ただし、CUをさらにPUに分割することもできる(2.2.2項を参照)。
LCUとSCUのサイズはSequence Parameter Set(SPS)で指定する。 SPSの埋め込み情報は、LCUのサイズとLCUの最大階層深度(h)である。
例えば、s = 128およびh = 5の場合、128x128(LCU)、64x64,32x32,16x16および8x8(SCU)の5種類のCUサイズが可能である。s = 16およびh = 2の場合、16x16(LCU)および8x8(SCU)が可能である。これはH.264 / AVCと同様のブロック構造である。したがって、LCUサイズおよび最大階層深度が与えられる場合、これは許容される可能なCUサイズを定義する。)

(4)引用文献2に記載の事項
上記(3-1)及び(3-2)から、引用文献2には、画像データを符号化する画像処理方法において、最大コーディングユニット(LCU)のサイズをSequence Parameter Set(SPS)で指定することが記載されている。
Sequence Parameter Set(SPS)でLCUのサイズを指定することは、当該シーケンスにおいて指定されたLCUサイズで符号化を行うことであるから、引用文献2には、画像データを符号化する画像処理方法において、最大コーディングユニット(LCU)をシーケンス単位で固定サイズとすることが記載されている。

(5)引用文献3
同じく、当審における拒絶理由に引用された引用文献3である国際公開第2008/126135号には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(5-1)
「[0048] 図6は、本発明の実施例1に係るマクロブロック処理のフローを説明する図である。(略)最初の符号化情報として、ステップS61に示すように動き補償分割情報としてのマクロブロックタイプ情報が設定される。この情報中には、先に述べたようにフレーム間予測であるかフレーム内予測であるかの情報やマクロブロック分割形状の情報が含まれる。次に、ステップS62に示すように動きベクトル情報が設定される。マクロブロックタイプによってマクロブロックの分割形状が変わるので、ステップS63に示すように動きベクトル情報はその分割数分情報が設定されることになる。
[0049] 次にステップS64において、量子化分割判定器35で生成された量子化分割情報が設定される。 次のステップS65とステップS66の処理は、量子化分割情報に示される量子化分割数分の量子化パラメータを求めてそれを符号化情報中に設定するものである。」

(5-2)
「[0060] 次に、実施例3について説明をする。実施例3は量子化パラメータの符号化に関するものであり、上記実施例1あるいは実施例2と同時に実施可能なものである。
従来の量子化はマクロブロック単位であり、量子化パラメータの符号化方式は、現マクロブロックと現マクロブロックの左に位置するマクロブロックの量子化パラメータ値の差分を符号化するものである。
[0061] 本発明では、量子化の単位をサブブロックとすることを可能としていることから、実施例3においては、量子化パラメータ値を周辺の複数のサブブロックを参考にして差分符号化を行い、より量子化パラメータ情報の符号量を抑えるようにする。
(略)
[0063] 例えば、動きベクトルでは、現マクロブロックの動きベクトルの予測として、図8Aに示す左マクロブロック(A)、上マクロブロック(B)、右上マクロブロック(C)の各マクロブロックの動きベクトルの中間値を予測ベクトルとし、その予測ベクトルとの差分を符号化したりしている。これと同様に、量子化の単位をサブブロック化した場合でも、左マクロブロックA、上マクロブロックB、右上マクロブロックCの各マクロブロックの量子化パラメータ値の中間値を計算し、その中間値との差分を符号化することにより、マクロブロックDの量子化パラメータ値に関する情報量を減らすことが可能となる。」

(6)引用文献3に記載の事項
上記(5-1)及び(5-2)から、引用文献3には、画像データを符号化する画像処理装置において、量子化パラメータ値に関する情報量を減らすことを目的として、現在の符号化単位に設定された量子化パラメータ値と、予測量子化パラメータ値との差分を符号化すること、量子化パラメータを符号化情報中に設定することが記載されている。


3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)構成(A)について
引用発明の(a)「画像処理装置」は、画像データを符号化するものであるから、本願発明の(A)「画像データを符号化する画像処理装置」に相当する。

(2)「コーディングユニット」、「最大コーディングユニット」、「量子化パラメータ」及び「予測量子化パラメータ」について
引用発明の「CU」は、コーディング処理単位であり、「LCU」を4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズの処理単位であるから、引用発明の「CU」及び「LCU」は、本願発明の「コーディングユニット」及び「最大コーディングユニット」に相当する。
また、引用発明の「QP」及び「予測QP」は、本願発明の「量子化パラメータ」及び「予測量子化パラメータ」に相当する。

(3)構成(E)について
引用発明の構成(e)「判定する手段」の判定は、「上CUまたは左CUの少なくともいずれかがLCU内で利用可能」か或いは「カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置する場合」かを判定するものであるから「カレントLCU内におけるカレントCUの位置」に基づいて判定するものであり、判定する対象CUである「上CU」及び「左CU」は、カレントCUの「隣接するCU」である。そして、「利用可能」かを判定するとは「アベイラブルな状態」であるかを判定するのと同意味であって、「カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置する」とは、「全ての隣接するCUがアベイラブルな状態」でないと判定するのと同意味である。
よって、引用発明の構成(e)「判定する手段」は、本願発明の構成(E)「カレント最大コーディングユニット内における前記カレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態であるかを判定する判定部」に相当する。

(4)構成(B1)及び(B2)について
まず、処理単位について検討する。
引用発明の構成(b)「設定する手段」は、LCUを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのCUを処理単位とするから、本願発明の構成(B1)予測量子化パラメータ設定部と、最大コーディングユニットを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのコーディングユニットを処理単位とする点で一致する。
しかしながら、最大コーディングユニットに関し、本願発明では、シーケンス単位で固定サイズであるのに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点で相違する。

次に、設定する内容について検討する。
引用発明の構成(b)「設定する手段」は、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置すると判定された場合は、「直前のLCUの最後のCUのQP」を予測QPとして設定するものである。
ここで、引用発明の「カレントCU」と「直前のLCUの最後のCU」の位置関係について検討すると、カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置する場合の「直前のLCUの最後のCU」は、カレントCUに隣接していない周辺に位置するCUであるといえる。
よって、引用発明の構成(b)「設定する手段」は、「カレントコーディングユニットに隣接していない周辺に位置する周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、予測量子化パラメータとして設定する」ものである点で、本願発明の構成(B1)予測量子化パラメータ設定部と一致する。
また、引用発明の「カレントCUがカレントLCUの最も左上に位置すると判定された場合」の判定は、上記(3)で検討したとおり、全ての隣接するCUがアベイラブルな状態」でないと判定された場合と同意味であるから、引用発明の構成(b)「設定する手段」は、「判定部により全ての前記隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態でないと判定された場合に、前記周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、前記予測量子化パラメータとして設定する」ものである点で、本願発明の構成(B2)予測量子化パラメータ設定部と一致する。

(5)構成(C)について
本願発明は、構成(C)「前記カレントコーディングユニットに設定されたカレント量子化パラメータと前記予測量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータとの差分値を示す差分量子化パラメータを設定する差分量子化パラメータ設定部」を備えているが、引用発明は、そのような構成を備えているか明記されていない点で、本願発明と相違する。

(6)構成(D)について
引用発明の構成(d)「符号化手段」は、CUを処理単位として画像データを符号化して、ビットストリームを生成するものであるが、引用発明は、「前記カレントコーディングユニットに設定されたカレント量子化パラメータと前記予測量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータとの差分値を示す差分量子化パラメータを設定する差分量子化パラメータ設定部」で設定された前記差分量子化パラメータを含むビットストリームを生成すると明記されていない点で、本願発明と相違する。

(7)まとめ
上記(1)?(6)の対比を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
(A’)画像データを符号化する画像処理装置において、
(B1’)最大コーディングユニットを4分木構造に従って再帰的に分割することによって得られる可変サイズのコーディングユニットを処理単位として、カレントコーディングユニットに隣接していない周辺に位置する周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、予測量子化パラメータとして設定する予測量子化パラメータ設定部と、
(D’) 前記コーディングユニットを処理単位として前記画像データを符号化して、設定された量子化パラメータを含むビットストリームを生成する符号化部と
(E’) カレント最大コーディングユニット内における前記カレントコーディングユニットの位置に基づいて、前記カレントコーディングユニットに隣接する隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態であるかを判定する判定部をさらに備え、
(B2’) 前記予測量子化パラメータ設定部は、前記判定部により全ての前記隣接コーディングユニットがアベイラブルな状態でないと判定された場合に、前記周辺コーディングユニットに設定された量子化パラメータを、前記予測量子化パラメータとして設定する
(A’) 画像処理装置。

(相違点1)
最大コーディングユニットに関し、本願発明は、シーケンス単位で固定サイズであるのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本願発明では、「前記カレントコーディングユニットに設定されたカレント量子化パラメータと前記予測量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータとの差分値を示す差分量子化パラメータを設定する差分量子化パラメータ設定部」を備え、
これに起因して本願発明の「符号化部」は、「前記差分量子化パラメータ設定部により設定された前記差分量子化パラメータを含むビットストリームを生成する」構成であるのに対して、引用発明は、そのような構成が明記されていない点。

4.相違点の判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
引用文献2には、画像データを符号化する画像処理方法において、最大コーディングユニット(LCU)をシーケンス単位で固定サイズとすることが記載されている。
引用発明は、画像データを符号化するものであるから、引用発明と同じ技術分野に属する引用文献2に記載の事項を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載の事項を適用して、最大コーディングユニットをシーケンス単位で固定サイズとすることは当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用文献3には、画像データを符号化する画像処理装置において、量子化パラメータ値に関する情報量を減らすことを目的として、現在の符号化単位に設定された量子化パラメータ値と、予測量子化パラメータ値との差分を符号化すること、量子化パラメータを符号化情報中に設定する事項が記載されている。
したがって、引用発明においても、画像処理装置は、前記カレントコーディングユニットに設定されたカレント量子化パラメータと前記予測量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータとの差分値を示す差分量子化パラメータを設定する差分量子化パラメータ設定部」を備えるようにし、「符号化部」は、差分量子化パラメータ設定部により設定された前記予測量子化パラメータを含むビットストリームを生成する構成とすることは、引用文献3に記載の事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
したがって、引用文献1に記載された発明に引用文献3に記載の事項を適用して、上記相違点2に係る構成を備えることは当業者が容易になし得たことである。


5.効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明、及び引用文献2,3に記載される技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のように、本願の請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2,3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-06 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-11-01 
出願番号 特願2013-504634(P2013-504634)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏坂東 大五郎牛丸 太希  
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 渡辺 努
鳥居 稔
発明の名称 画像処理装置および方法、プログラム、並びに、記録媒体  
代理人 稲本 義雄  
代理人 西川 孝  

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