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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02G |
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管理番号 | 1335440 |
審判番号 | 不服2016-19333 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-26 |
確定日 | 2017-12-14 |
事件の表示 | 特願2011-202951「ワイヤーハーネスの配策構造」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月11日出願公開、特開2013- 66284〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成23年9月16日の出願であって、平成27年8月24日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月2日付けで手続補正がされ、平成28年4月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成28年6月10日に意見書が提出され、平成28年11月28日付けで拒絶査定がされ、それに対して、平成28年12月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がされ、当審において平成29年7月27日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年9月11日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成27年11月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 電線の外周にコルゲートチューブを配置したワイヤーハーネスを、曲線区間と直線区間を有する配策経路に沿って配策するワイヤーハーネスの配策構造であって、 前記コルゲートチューブは、周方向の凸部と凹部が軸方向に交互に配置された蛇腹状管部と、軸方向にストレートな壁部が軸方向に配置され、中間位置に屈曲性に優れ、屈曲前の形態に戻ることが可能な屈曲部が介在された直線管部とを備え、 前記曲線区間には前記蛇腹状管部を、前記直線区間には前記直線管部を配置したことを特徴するワイヤーハーネスの配策構造。」 3.引用文献・引用発明 (1)当審拒絶理由に引用された特開2007-12514号公報(以下、「引用文献」という。)には、図とともに次の記載がある。(下線は当審において付与した。) a. 「【背景技術】 【0002】 特許文献1には、複数本のノンシールド電線を、電線保護機能を有する金属製のシールドパイプに挿通することで、一括してシールドするシールド導電体が開示されている。このようなシールド導電体の使用形態としては、電気自動車の動力回路として車体の床下に沿って配索することができるが、この場合、床下に設けられている機器等との干渉を避けようとすると、配索経路が屈曲した経路となるため、それに合わせてシールドパイプは曲げ加工される。 ・・・中略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 上記のようなシールド導電体は、ハーネスメーカーの工場で製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へ搬送されるのであるが、搬送時には、シールド導電体同士が干渉することによって変形するのを回避するために、1つのシールド導電体毎に直方形の搬送空間が確保される。 ところが、シールド導電路が三次元的に屈曲した細長い形状であって、搬送空間はも長さ方向、幅方向及び高さ方向の全てにおいて大きな寸法を有するため、搬送空間のうちシールド導電体が占める容積は僅かであり、搬送空間の大部分はデッドスペースとなる。 本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、搬送時におけるスペース効率の向上を図ることを目的とする。」 b. 「 【0011】 <実施形態1> 以下、本発明を具体化した実施形態1を図1?図7を参照して説明する。本実施形態のシールド導電体Aは、一括シールド機能と電線保護機能を兼ね備えるシールドパイプ10と、複数本(本実施形態では3本)のノンシールドタイプの電線20とを備えて構成されている。 シールドパイプ10は、アルミニウム合金製であり、その長さ方向(軸線方向)と直角な横断面形状は真円形をなしている。 電線20は、アルミニウム合金製の単芯線や銅製の撚り線等からなる導体(図示せず)の外周を合成樹脂製の絶縁被覆で包囲した周知の形態のものであり、導体と絶縁被覆はいずれも可撓性を有しているので、電線20は自在に曲げ変形することができる。複数本の電線20はシールドパイプ10内に挿通され、このシールドパイプ10で包囲されることにより一括してシールドされている。尚、電線20の両端部はシールドパイプ10の両端の開口から外部へ所定長さだけ導出されている。 【0012】 シールド導電体Aは、電気自動車の車体の床下(図示せず)に沿うように取り付けられ、その配索経路は、床下に設けられている各種機器との干渉を回避するために屈曲した形態とされ、シールドパイプ10は、7つの直線部11a?11gを6つの屈曲部12a?12fで直列状に連結した形態となっている(図1、図3及び図4を参照)。 【0013】 シールドパイプ10の前端部である第1直線部11aは、その端部を上向きに開口させるようにほぼ垂直に配索されている。第1直線部11aの下端部の第1屈曲部12aからは、第2直線部11bが第1直線部11aに対して略直角をなすように水平右方へ延出されている。第2直線部11bの右端(延出端)の第2屈曲部12bからは、第3直線部11cが、第2直線部11bに対して略直角をなすように水平後方へ延出されている。第3直線部11cの後端(延出端)の第3屈曲部12cからは、第2直線部11bとほぼ同じ長さの第4直線部11dが、第3直線部11cに対して略直角をなすように水平左方へ延出されている。第4直線部11dの左端(延出端)の第4屈曲部12dからは、第5直線部11eが、第4直線部11dに対して直角に近い鈍角をなすように水平に且つ斜め後左方へ延出されている。第5直線部11eの後端の第5屈曲部12eからは、第6直線部11fが、第5直線部11eに対してほぼ直線に近い鈍角をなすように水平に且つ斜め右後方へ延出されている。第6直線部11fの後端の第6屈曲部12fからは、第1直線部11aよりも長い(高い)第7直線部11gが、第6直線部11fに対して略直角をなすように垂直方向上向きに延出されている。 【0014】 第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12fは、本発明の変形可能部に相当する。即ち、この3つの屈曲部12a,12d,12fは、シールドパイプ10とほぼ同径の筒状を保ちつつ軸線の曲率を増減するように塑性変形させることが可能となっている。この塑性変形は作業者が手作業によって行うことが可能となっている。そして、このような塑性変形を可能とするために、各屈曲部12a,12d,12fは、シールドパイプ10の外周と内周に一定ピッチで螺旋状のネジ山及び溝が形成されるように加工され、これにより、軸線方向に沿って径が交互に増減する形態の波形に形成されている(図7を参照)。 尚、第2屈曲部12bと第3屈曲部12cと第5屈曲部12eは、直線部11a?11gと同様、軸線方向において径寸法が一定のままであるため、容易に変形させることができないようになっている。 【0015】 かかるシールド導電体Aを所定の配索経路(図1、図3及び図4を参照)のままで搬送するために直方形状の搬送空間を確保しようとした場合、搬送空間は、前後方向においては、図5に想像線で示すように第1屈曲部12a(変形可能部)から第6屈曲部12f(変形可能部)に至る寸法Lxが必要であり、左右方向(幅方向)においては、図5に想像線で示すよう第5屈曲部12eから第3直線部11c(第2屈曲部12b及び第3屈曲部12c)に至る寸法Wx(第2直線部11b及び第4直線部11dよりも長い寸法)が必要であり、上下方向においては、図6に想像線で示すように、第7直線部11gの高さに相当する寸法Hxが必要であるため、大容積となる。ところが、シールド導電体A自体は、細長いシールドパイプ10を屈曲させた形態であるため、この搬送空間内の大部分はデッドスペースが占めることになる。 【0016】 そこで、本実施形態では、上記のように第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12fを塑性変形可能としたことにより、搬送空間の容積を小さくすることができるようにしている。 即ち、搬送する際には、図5に実線で示すように、第4屈曲部12dを変形させつつ(第4屈曲部12dを略支点として)第5直線部11eを第3直線部11cと平行をなすように水平面上で右方へ旋回させるように変位させる。この第5直線部11eの水平変位に伴い、第6直線部11fと第7直線部11gが、第5直線部11eと一体となって右方へ水平移動するとともに、第6屈曲部12fが、左右方向において第3直線部11c(第2屈曲部12b及び第3屈曲部12c)とほぼ同じ位置に達する。これにより、図5に実線で示すように、シールド導電体Aの左右寸法Wyは、第2直線部11b及び第4直線部11dの長さとほぼ同じ寸法となり、搬送空間として必要な左右方向の寸法が、変形前の寸法Wxに比べて小さく抑えられる。 【0017】 また、第4屈曲部12dを支点として水平変位させたことにより、第6屈曲部12f及び第7直線部11gが、変形前に比べて前方に位置する状態となる。これにより、図5に実線で示すように、シールド導電体Aの前後寸法Lyが小さくなり、搬送空間として必要な前後方向の寸法が小さく抑えられる。 【0018】 さらに、第1屈曲部12aを変形させつつ(第1屈曲部12aを略支点として)第1直線部11aを後方へ直角に倒して第3直線部11cと平行をなすように水平姿勢にするとともに、第6屈曲部12fを変形させつつ(第6屈曲部12fを略支点として)第7直線部11gを前方へ直角に倒して第3直線部11c及び第5直線部11eと平行をなすように水平姿勢にする。これにより、図6に実線で示すように、シールド導電体Aの上下寸法Hyが変形前よりも小さくなり、搬送空間として必要な上下方向(高さ方向)の寸法が小さく抑えられる。この搬送空間の高さ寸法Hyは、シールドパイプ10の外径と同じかそれよりも少し大きい寸法である。 【0019】 上述のように本実施形態においては、シールドパイプ10に、筒状を保ちつつ軸線の曲率を増減するように塑性変形させることが可能な変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d、第6屈曲部12f)を設けたので、シールド導電体Aを搬送する際には、シールド導電体Aを包囲する直方形の寸法が小さくなるように変形可能部を変形させることにより、搬送空間中のデッドスペースを小さくすることができる。また、搬送後は、変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d、第6屈曲部12f)を元の向き及び元の曲率に復元するように変形させ、シールド導電体Aを所定の配索経路に沿った形状にすればよい。復元後は、シールド導電体Aは、変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d、第6屈曲部12f)の剛性によって所定の配索路経路に保たれる。 尚、シールド導電体Aの製造時に、変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d及び第6屈曲部12f)は、直線状のままにしておき、その状態から搬送に好適な配索形状に曲げ変形させてもよい。」 c. 「【0021】 <他の実施形態> 本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。 (1)上記実施形態では変形可能部が軸線方向に沿って径が交互に増減する波形に形成されているが、本発明によれば、波形以外の形態としてもよい。 (2)上記実施形態では変形可能部を螺旋状としたが、本発明によれば、独立した周方向の突部と独立した周方向の溝が交互に連続する蛇腹状の形態としてもよい。 (3)上記実施形態では変形可能部をシールドパイプに一体に形成したが、本発明によれば、変形可能部をシールドパイプとは別体の部品として成形し、成形済みの変形可能部をシールドパイプに固着してもよい。 (4)上記実施形態ではシールドパイプにおける変形可能部以外の部分に屈曲部を形成した場合について説明したが、本発明によれば、変形可能部以外の部分には屈曲部が形成されない形態としてもよい。 (5)上記実施形態では正規の配索経路において屈曲される部分のみを変形可能部としたが、本発明によれば、正規の配索経路において真っ直ぐの部分を変形可能部とし、真っ直ぐの部分を搬送時に屈曲させてもよい。 (6)上記実施形態では正規の配索経路における屈曲部に変形可能部を形成し、搬送時にも変形可能部を屈曲状に変形させたが、本発明によれば、搬送時に変形可能部を真っ直ぐに変形させてもよい。 (7)上記実施形態ではシールドパイプ及び変形可能部の材質をアルミニウム合金製としたが、本発明によれば、シールドパイプと変形可能部の材質はステンレス合金や銅合金等の他の金属材料としてもよい。 (8)上記実施形態では1本のシールドパイプに設ける変形可能部の数を3つとしたが、本発明によれば、変形可能部の数は2つ以下、または4つ以上としてもよい。」 上記記載(特に、下線部)によれば、引用文献には、実施形態1のシールド導電体の配索構造に関して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「シールドパイプ10と、複数本のノンシールドタイプの電線20とを備えて構成されたシールド導電体Aの配索構造であって、 電気自動車の車体の床下に沿うように取り付けられ、その配索経路は、床下に設けられている各種機器との干渉を回避するために屈曲した形態とされ、シールドパイプ10は、7つの直線部11a?11gを6つの屈曲部12a?12fで直列状に連結した形態となっており、 複数本の電線20はシールドパイプ10内に挿通され、このシールドパイプ10で包囲されることにより一括してシールドされ、電線20の両端部はシールドパイプ10の両端の開口から外部へ所定長さだけ導出されており、 シールドパイプ10の前端部である第1直線部11aは、その端部を上向きに開口させるようにほぼ垂直に配索され、第1直線部11aの下端部の第1屈曲部12aからは、第2直線部11bが第1直線部11aに対して略直角をなすように水平右方へ延出され、第2直線部11bの右端(延出端)の第2屈曲部12bからは、第3直線部11cが、第2直線部11bに対して略直角をなすように水平後方へ延出され、第3直線部11cの後端(延出端)の第3屈曲部12cからは、第2直線部11bとほぼ同じ長さの第4直線部11dが、第3直線部11cに対して略直角をなすように水平左方へ延出され、第4直線部11dの左端(延出端)の第4屈曲部12dからは、第5直線部11eが、第4直線部11dに対して直角に近い鈍角をなすように水平に且つ斜め後左方へ延出され、第5直線部11eの後端の第5屈曲部12eからは、第6直線部11fが、第5直線部11eに対してほぼ直線に近い鈍角をなすように水平に且つ斜め右後方へ延出され、第6直線部11fの後端の第6屈曲部12fからは、第1直線部11aよりも長い(高い)第7直線部11gが、第6直線部11fに対して略直角をなすように垂直方向上向きに延出されており、 第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12fは、変形可能部であり、この3つの屈曲部12a,12d,12fは、シールドパイプ10とほぼ同径の筒状を保ちつつ軸線の曲率を増減するように作業者が手作業によって塑性変形させることが可能となっており、各屈曲部12a,12d,12fは、シールドパイプ10の外周と内周に一定ピッチで螺旋状のネジ山及び溝が形成されるように加工され、これにより、軸線方向に沿って径が交互に増減する形態の波形に形成され、 第2屈曲部12bと第3屈曲部12cと第5屈曲部12e、直線部11a?11gは、容易に変形させることができないようになっており、 搬送する際には、第4屈曲部12dを変形させつつ(第4屈曲部12dを略支点として)第5直線部11eを第3直線部11cと平行をなすように水平面上で右方へ旋回させるように変位させ、この第5直線部11eの水平変位に伴い、第6直線部11fと第7直線部11gが、第5直線部11eと一体となって右方へ水平移動するとともに、第6屈曲部12fが、左右方向において第3直線部11c(第2屈曲部12b及び第3屈曲部12c)とほぼ同じ位置に達するようにし、 さらに、第1屈曲部12aを変形させつつ(第1屈曲部12aを略支点として)第1直線部11aを後方へ直角に倒して第3直線部11cと平行をなすように水平姿勢にするとともに、第6屈曲部12fを変形させつつ(第6屈曲部12fを略支点として)第7直線部11gを前方へ直角に倒して第3直線部11c及び第5直線部11eと平行をなすように水平姿勢にし、 搬送後は、変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d、第6屈曲部12f)を元の向き及び元の曲率に復元するように変形させ、シールド導電体Aを所定の配索経路に沿った形状にすればよく、復元後は、シールド導電体Aは、変形可能部(第1屈曲部12a、第4屈曲部12d、第6屈曲部12f)の剛性によって所定の配索路経路に保たれる、シールド導電体Aの配索構造。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比すると次のことがいえる。 ア 引用発明の「シールドパイプ10」の「第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12f」は、「シールドパイプ10の外周と内周に一定ピッチで螺旋状のネジ山及び溝が形成されるように加工され、これにより、軸線方向に沿って径が交互に増減する形態の波形に形成」されているから、本願発明の「周方向の凸部と凹部軸方向に交互に配置された蛇腹状管部」と、「周方向の凸部と凹部が軸方向に交互に配置された屈曲管部」である点では共通するといえる。 イ 引用発明の「シールドパイプ10」の「直線部11a?11g」は、本願発明の「軸方向にストレートな壁部が軸方向に配置され、中間位置に屈曲性に優れ、屈曲前の形態に戻ることが可能な屈曲部が介在された直線管部」と、「軸方向にストレートな壁部が軸方向に配置された直線管部」である点では共通するといえる。 ウ 引用発明の「シールドパイプ10」は、「複数本の電線20」が「シールドパイプ10内に挿通され、」「シールドパイプ10で包囲され」ており、上記ア、イによれば、後述する相違点を除き、本願発明の「コルゲートチューブ」に相当するといえる。 エ 引用発明の「シールド導電体A」は、「複数本の電線20はシールドパイプ10内に挿通され、このシールドパイプ10で包囲されることにより一括してシールドされ、電線20の両端部はシールドパイプ10の両端の開口から外部へ所定長さだけ導出されて」いる構造であるから、本願発明の「電線の外周にコルゲートチューブを配置したワイヤーハーネス」に相当するといえる。 オ 引用発明の「シールド導電体A」が、「電気自動車の車体の床下に沿うように取り付けられ、その配索経路は、床下に設けられている各種機器との干渉を回避するために屈曲した形態とされ、シールドパイプ10は、7つの直線部11a?11gを6つの屈曲部12a?12fで直列状に連結した形態」となっていることは、本願発明の「電線の外周にコルゲートチューブを配置したワイヤーハーネスを、曲線区間と直線区間を有する配策経路に沿って配策するワイヤーハーネスの配策構造」に相当するといえる。 カ 上記オによれば、引用発明のシールドパイプ10の「第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12f」は、配索経路の曲線区間に配置され、シールドパイプ10の「直線部11a?11g」は、配索経路の直線区間に配置されることは明らかであり、当該構成は、本願発明の「前記曲線区間には前記蛇腹状管部を、前記直線区間には前記直線管部を配置した」構成と、「前記曲線区間には前記屈曲管部を、前記直線区間には直線管部を配置した」構成である点では共通するといえる。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。 (一致点) 「電線の外周にコルゲートチューブを配置したワイヤーハーネスを、曲線区間と直線区間を有する配策経路に沿って配策するワイヤーハーネスの配策構造であって、 前記コルゲートチューブは、周方向の凸部と凹部が軸方向に交互に配置された屈曲管部と、軸方向にストレートな壁部が軸方向に配置された直線管部とを備え、 前記曲線区間には前記屈曲管部を、前記直線区間には前記直線管部を配置したことを特徴するワイヤーハーネスの配策構造。」 (相違点1) 「屈曲管部」が、本願発明では、「蛇腹状」管部であるのに対し、引用発明では、「シールドパイプ10の外周と内周に一定ピッチで螺旋状のネジ山及び溝が形成されるように加工され、これにより、軸線方向に沿って径が交互に増減する形態の波形に形成されている」「螺旋状」の管部である点。 (相違点2) 本願発明では、「直線管部」は、「中間位置に屈曲性に優れ、屈曲前の形態に戻ることが可能な屈曲部が介在された」ものであり、配索経路の直線区間には「中間位置に屈曲性に優れ、屈曲前の形態に戻ることが可能な屈曲部が介在された直線管部」を配置したのに対し、引用発明の「直線部11a?11g」は、そのような構成ではない点。 5.判断 先ず、相異点1について検討すると、引用文献には、「(2)上記実施形態では変形可能部を螺旋状としたが、本発明によれば、独立した周方向の突部と独立した周方向の溝が交互に連続する蛇腹状の形態としてもよい。」(記載事項c)と記載されており、この記載に基づけば、引用発明において、「第1屈曲部12aと第4屈曲部12dと第6屈曲部12f」を「蛇腹状」管部とすることは当業者が容易になし得ることである。 次に相違点2について検討する。 引用文献には、「(5)上記実施形態では正規の配索経路において屈曲される部分のみを変形可能部としたが、本発明によれば、正規の配索経路において真っ直ぐの部分を変形可能部とし、真っ直ぐの部分を搬送時に屈曲させてもよい。」(記載事項c)と記載されている。 この記載は、引用発明において、正規の配索経路において真っ直ぐの部分である「直線部11a?11g」を搬送時に屈曲させてもよい変形可能部とすることを示唆しているが、搬送時に屈曲させる位置は当業者が必要に応じて適宜選択し得るものであり、本願発明のように「直線管部」の「中間位置」を選択し、この部分を「屈曲性に優れ、屈曲前の形態に戻ることが可能な屈曲部が介在された」構成とすることは当業者が容易に容易になし得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献記載の技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-11 |
結審通知日 | 2017-10-17 |
審決日 | 2017-10-31 |
出願番号 | 特願2011-202951(P2011-202951) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保 正典 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
和田 志郎 山澤 宏 |
発明の名称 | ワイヤーハーネスの配策構造 |
代理人 | 三好 秀和 |