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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335441
審判番号 不服2017-457  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-12 
確定日 2017-12-11 
事件の表示 特願2015-154572号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月16日出願公開、特開2017- 35122号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年8月4日の出願であって、平成28年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年8月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成28年9月30日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年1月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、平成28年8月22日付けの手続補正書と本件補正の、特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ以下の通りである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Hは、分説するために当審にて付した。)。

(補正前:平成28年8月22日付け手続補正)
「【請求項1】
開放状態と閉鎖状態とに可動制御される大入賞装置と、
所定の条件を満たした場合に遊技球を払い出す払出手段と、
前記払出手段により払い出された前記遊技球を貯留する貯留手段と、
前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行う報知手段と、を備え、
前記報知手段は、前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを音声で報知する第1の報知と、前記貯留手段に貯留される遊技球が前記所定量未満となるように遊技者が行うべき操作を表示して示唆する内容を報知する第2の報知と、を行う構成とされ、前記大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限することを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年1月12日付け手続補正)
「【請求項1】
A 開放状態と閉鎖状態とに可動制御される大入賞装置と、
B 所定の条件を満たした場合に遊技球を払い出す払出手段と、
C 前記払出手段により払い出された前記遊技球を貯留する貯留手段と、
D 前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを検出する検出手段と、
E 前記検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行う報知手段と、を備え、
F 前記報知手段は、前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを音声で報知する第1の報知と、
G 前記貯留手段に貯留される遊技球が前記所定量未満となるように遊技者が行うべき操作を表示して示唆する内容を報知する第2の報知と、を行う構成とされ、
H 前記大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限しつつ前記第2の報知を可能とすることを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正の、「前記大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限することを特徴とする遊技機。」を「前記大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限しつつ前記第2の報知を可能とすることを特徴とする遊技機。」とする補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記大入賞装置の開閉態様に応じて」行う「報知」に関して、「前記第1の報知を制限する」ことを「前記第1の報知を制限しつつ前記第2の報知を可能とする」ことに補正することで、「第2の報知」の動作を限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0221】?【0224】、段落【0235】?【0244】、【図13】に基づくものといえ、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要において示したとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-161474号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア「【0016】
球貯留皿付扉108は、パチンコ機100の前面において本体104の下側に対して、施錠機能付きで且つ開閉自在となるように装着された扉部材である。この球貯留皿付扉108は、前面枠扉106を開放した状態で操作可能となる開放レバー1081を押すことによって開く。また、球貯留皿付扉108が開いたことを検出する球貯留皿付扉センサ1082も設けられている。球貯留皿付扉108は、複数の遊技球(以下、単に「球」と称する場合がある)が貯留可能で且つ発射装置110へと遊技球を案内させる通路が設けられている上皿126と、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128と、遊技者の操作によって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称、ドル箱)へと排出させる球排出レバー132と、遊技者の操作によって発射装置110へと案内された遊技球を遊技盤の遊技領域124へと打ち出す球発射ハンドル134と、操作パネル部138とを備えている。操作パネル部138には、遊技者の操作によって上皿126に貯留された遊技球を下皿128へと排出させる球抜ボタン130と、遊技者の操作によって各種演出装置206(図3参照)の演出態様に変化を与える演出ボタン136と、遊技店に設置されたカードユニット(CRユニット)に対して球貸し指示を行う球貸操作ボタン140と、カードユニットに対して遊技者の残高の返却指示を行う返却操作ボタン142と、遊技者の残高やカードユニットの状態を表示する球貸表示部144と、十字キー141が設けられている。また、図1に示すパチンコ機100には、下皿128が遊技球によって満タンになったことを検知する下皿満タン検知センサ(不図示)が設けられている。」

イ「【0021】
払出装置152は、筒状の部材からなり、その内部には、不図示の払出モータとスプロケットと払出センサとを備えている。この払出装置152は、着脱自在なものであり、所定位置に装着されると、タンクレール154の下流端に接続する。
【0022】
スプロケットは、払出モータによって回転可能に構成されており、タンクレール154を通過して払出装置152内に流下した遊技球を一時的に滞留させると共に、払出モータを駆動して所定角度だけ回転することにより、一時的に滞留した遊技球を払出装置152の下方へ1個ずつ送り出すように構成している。すなわち、払出装置152は、遊技球に駆動力を与えてその遊技球を搬送する球送り装置の一種である。
【0023】
払出センサは、スプロケットが送り出した遊技球の通過を検知するためのセンサであり、遊技球が通過しているときにハイまたはローの何れか一方の信号を、遊技球が通過していないときはハイまたはローの何れか他方の信号を払出制御部600へ出力する。この払出センサを通過した遊技球は、不図示の球レールを通過してパチンコ機100の前面側に配設した上皿126に到達するように構成しており、パチンコ機100は、所定の付与条件が成立したことに基づいて遊技者にその付与条件に応じた量の遊技価値(遊技球)をこの構成により付与する(払い出す)。」

ウ「【0039】
可変入賞口234は、本実施形態では遊技盤200の中央部下方に1つだけ配設しているが、遊技領域214の右側領域(第2の領域)を狙っている方が入賞しやすい。この可変入賞口234は、入賞開口と、ソレノイドによってその入賞開口を開閉自在な扉部材2341とを備えている。入賞開口は大入賞口と呼ばれることがあり、可変入賞口234はアタッカと呼ばれることがある。可変入賞口234は、後述する大当り遊技が開始されるまでは閉状態を維持し、大当り遊技が開始されると、開状態と閉状態との間で状態変更を繰り返す。すなわち、可変入賞口234は、第1の状態(入賞困難状態であってここでは閉状態)およびその第1の状態よりも遊技球の入賞が容易な第2の状態(入賞容易状態であってここでは開状態)のうちの一方から他方に状態変化可能な可変入賞手段であり、特図変動遊技に当選して第1特図表示装置212あるいは第2特図表示装置214が大当り図柄を停止表示した場合に扉部材2341が所定の時間間隔、所定の回数で開閉する。なお、可変入賞口234における閉状態は必ずしも完全に閉塞した状態である必要はなく、少し開いていても、遊技級の入球が不可能あるいは困難な状態であればよい。可変入賞口234への入球を所定の球検出センサが検出した場合、払出装置152を駆動し、所定の個数(例えば、15個)の球を賞球として上皿126に排出する。なお、可変入賞口234に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。」

エ「【0366】
図30(イ)には、8ラウンド中に複数の遊技球Bがアタッカに入賞している様子が示されている。すなわち、扉部材2341が開き、可変入賞口234に複数の遊技球Bが入球している。また、その横には、そのときの下皿128の様子が示されている。図30(イ)に示す下皿128には、遊技球Bが満タン近くまで貯まっている。この状態でアタッカ入賞の賞球が払い出され、下皿128は遊技球Bで満タンになる。不図示の下皿満タン検知センサは、下皿128が遊技球Bによって満タンになったことを検知し、第1副制御部400には、下皿満タンエラーを表すデバイス情報を含んだ基本コマンドが送信されてくる。こりにより、装飾図柄表示装置208には、報知画像が表示される。
【0367】
図30(ウ)に示す装飾図柄表示装置208には、「大当り中」、「8R」という文字が表示され、これまで3体表示されていたパンダのキャラクタは1体に減り、代わりに、報知画像が表示されている。図30(ウ)に示す報知画像には、「球を抜いてください」という文字画像と、球排出レバー132を表す画像(第一の部位を表す画像)581と、下皿128を表す画像(第二の部位を表す画像)582が表示されている。なお、球排出レバー132が設けられた部位(球貯留皿付扉108における下皿128よりも下部)が第一の部位の一例に相当し、下皿128が設けられた部位(球貯留皿付扉108における下皿128の部位)が第二の部位の一例に相当する。
【0368】
「球を抜いてください」という文字画像は、球排出レバー132の操作を促す報知になる。
【0369】
可動手段の一例に相当する球排出レバー132を表す画像(第一の部位を表す画像)581には、未操作の状態(現在の状態)の球排出レバー132が実線で表示されるとともに、球排出レバー132の操作を促す矢印の画像5811も表示され、さらに、操作後の状態の球排出レバー132が点線で表示されている。すなわち、球排出レバー132の操作前の位置と、操作後の位置が両方表示されている。
・・・
【0371】
以上説明したように、図30(ウ)に示す報知画像は、報知画像が表示された時点の実際の状態(球抜き前の状態)とは異なる状態(球抜き中の状態)の球排出レバー132や下皿128を表す画像になる。その結果、この報知画像は、遊技者の注意を引き、遊技者に、球排出レバー132を操作しなくてはならないことをわかりやすく伝えることができ、遊技の興趣が向上する場合がある。また、下皿128を表す画像582の遊技球Bに付けられた矢印によって、球抜きにおける遊技球Bの流れがわかりやすく、抜き口1281の下に遊技球収集容器(俗称、ドル箱)を持ってくる必要があることも伝えることができる。」

オ 上記ア、イには「パチンコ機100」(【0016】、【0023】)と記載され、上記ウには「可変入賞口234は、入賞開口と、ソレノイドによってその入賞開口を開閉自在な扉部材2341とを備えている。入賞開口は大入賞口と呼ばれることがあり、可変入賞口234はアタッカと呼ばれることがある。」(【0039】)と記載されている。したがって、刊行物1には、ソレノイドによって大入賞口を開閉自在な扉部材2341を備えている可変入賞口234(アタッカ)を有するパチンコ機100が記載されている。

カ 上記イには「払出装置152は、・・・払出モータとスプロケットと払出センサとを備えている。」(【0021】)、「スプロケットは、払出モータによって回転可能に構成され・・・遊技球を払出装置152の下方へ1個ずつ送り出すように構成している。」(【0022】)、「払出センサは、スプロケットが送り出した遊技球の通過を検知するためのセンサであり、・・・この払出センサを通過した遊技球は、・・・パチンコ機100の前面側に配設した上皿126に到達するように構成しており、パチンコ機100は、所定の付与条件が成立したことに基づいて遊技者にその付与条件に応じた量の遊技価値(遊技球)をこの構成により付与する(払い出す)。」(【0023】)と記載されている。ここで「この構成」とは、払出モータとスプロケットと払い出しセンサからなる払出装置152から遊技球を「上皿126に到達する」ようになした構成である。そして、上記アには、「上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128」(【0016】)と記載されているから、刊行物1には、所定の付与条件が成立したことに基づいて遊技価値(遊技球)を払い出す払出装置152を有し、払出装置152により払い出された遊技球を上皿126に貯留するとともに、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128を有することが記載されている。

キ 上記エには、「下皿満タン検知センサは、下皿128が遊技球Bによって満タンになったことを検知し、第1副制御部400には、下皿満タンエラーを表すデバイス情報を含んだ基本コマンドが送信されてくる。こりにより、装飾図柄表示装置208には、報知画像が表示される。」(【0366】)と記載されている。よって、刊行物1には、下皿128が遊技球によって満タンになったことを検知する下皿満タン検知センサが記載されており、さらに、この検知センサが満タンになったことを検知すると装飾図柄表示装置208に報知画像が表示されることが記載されている。

ク 上記アには、「遊技者の操作によって下皿128に貯留された遊技球を遊技球収集容器(俗称、ドル箱)へと排出させる球排出レバー132」(【0016】)を有ることが記載され、さらに、上記エには、「図30(ウ)に示す装飾図柄表示装置208には、・・・報知画像が表示されている。・・・報知画像には、「球を抜いてください」という文字画像と、球排出レバー132を表す画像・・・581と、下皿128を表す画像・・・582が表示されている。」(【0367】)、「「球を抜いてください」という文字画像は、球排出レバー132の操作を促す報知になる。」(【0368】)、「可動手段の一例に相当する球排出レバー132を表す画像(第一の部位を表す画像)581には、未操作の状態(現在の状態)の球排出レバー132が実線で表示されるとともに、球排出レバー132の操作を促す矢印の画像5811も表示され、さらに、操作後の状態の球排出レバー132が点線で表示されている。すなわち、球排出レバー132の操作前の位置と、操作後の位置が両方表示されている。」(【0369】)と記載されている。また、「遊技者に、球排出レバー132を操作しなくてはならないことをわかりやすく伝えることができ」(【0371】)と記載されているから、上記報知画像は、遊技者が下皿128から球を抜くための球排出レバー132の操作方法を表示して報知するものといえる。よって、刊行物1には、報知画像により、遊技者が下皿128から球を抜くための球排出レバー132の操作方法を表示して報知することが記載されていると言える。

ケ 上記ア?エの記載事項及び上記オ?クの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?gは、本件補正発明のA?Gに対応させて付与した。)。

「a ソレノイドによって大入賞口を開閉自在な扉部材2341を備えている可変入賞口234(アタッカ)と、
b 所定の付与条件が成立したことに基づいて遊技価値(遊技球)を払い出す払出装置152と、
c 払出装置152により払い出された遊技球を上皿126に貯留するとともに、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128と、
d 下皿128が遊技球によって満タンになったことを検知する下皿満タン検知センサを有し、
e 検知センサが満タンになったことを検知すると装飾図柄表示装置208に報知画像が表示され、
g 報知画像により、遊技者が下皿128から球を抜くための、球排出レバー132の操作方法を表示して報知するパチンコ機」

(3)対比
本願補正発明と刊行物発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(g)とし、本願補正発明、刊行物発明の文節に対応させている。

(a)刊行物発明の「ソレノイドによって大入賞口を開閉自在な扉部材2341」は、本願補正発明の「開放状態と閉鎖状態とに可動制御される」ものに相当する。また、刊行物発明の「可変入賞口234(アタッカ)」は、本願補正発明の「大入賞装置」に相当する。
したがって、刊行物発明の「ソレノイドによって大入賞口を開閉自在な扉部材2341を備えている可変入賞口234(アタッカ)」は、本願補正発明の「開放状態と閉鎖状態とに可動制御される大入賞装置」に相当する。

(b)刊行物発明の「所定の付与条件が成立したことに基づいて」は、本願補正発明の「所定の条件を満たした場合に」に相当する。また、刊行物発明の「遊技価値(遊技球)を払い出す払出装置152」は、本願補正発明の「遊技球を払い出す払出手段」に相当する。
したがって、刊行物発明の「所定の付与条件が成立したことに基づいて遊技価値(遊技球)を払い出す払出装置152」は、本願補正発明の「所定の条件を満たした場合に遊技球を払い出す払出手段」に相当する。

(c)刊行物発明の「払出装置152により払い出された遊技球」は、本願補正発明の「前記払出手段により払い出された前記遊技球」に相当する。また、刊行物発明の「下皿128」は、「上皿126」を経由して「払出装置152により払い出された遊技球」を貯留するものである。そして、本願明細書【0005】にも「貯留手段(下皿141)」の記載があり、下皿を貯留手段としていることから、刊行物発明の「下皿128」は、本願補正発明の「貯留手段」に相当する。
したがって、刊行物発明の「払出装置152により払い出された遊技球を上皿126に貯留するとともに、上皿126に貯留しきれない遊技球を貯留する下皿128」は、本願補正発明の「払出手段により払い出された前記遊技球を貯留する貯留手段」に相当する。

(d)(c)で述べたとおり、刊行物発明の「下皿128」は、本願補正発明の「貯留手段」に相当する。また、本願明細書の【0020】に「遊技球で満タン(所定量以上)になったことを検出するための後述する皿満タンスイッチ313が設けられている」と記載されているように、「満タンになったことを検知する」ことは、「所定量以上であることを検出する」ことといえるから、刊行物発明の「下皿128が遊技球によって満タンになったことを検知する下皿満タン検知センサ」は、本願補正発明の「貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを検出する検出手段」に相当する。

(e)刊行物発明の「検知センサが満タンになったことを検知すると」は、本願補正発明の「検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたとき」に相当する。そして、刊行物発明は「検知センサが満タンになったことを検知すると装飾図柄表示装置208に報知画像が表示され」るから、本願補正発明の「前記検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行う報知手段」に相当する構成を備えているといえる。

(g)刊行物発明において「下皿128から球を抜く」のは、下皿が満タン状態でないようにするためであることは明らかであるから、本願補正発明において「貯留手段に貯留される遊技球が前記所定量未満となるように」することに相当する。また、刊行物発明において「球排出レバー132の操作方法を表示して報知する」ことは、本願補正発明の「遊技者が行うべき操作を表示して示唆する内容を報知する」することに相当する。そしてこの刊行物発明における「球排出レバー132の操作方法」の「報知」は、「報知画像により」行われるから、上記(e)で述べた、本願補正発明の「前記検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行う報知手段」に相当する構成を用いて行われることは明らかである。
したがって、刊行物発明において「報知画像により、遊技者が下皿128から球を抜くための、球排出レバー132の操作方法を表示して報知する」ことは、本願補正発明の「報知手段は、前記貯留手段に貯留される遊技球が前記所定量未満となるように遊技者が行うべき操作を表示して示唆する内容を報知する第2の報知を行う」ことに相当する。

そうすると、本願補正発明と刊行物発明とは、
「A 開放状態と閉鎖状態とに可動制御される大入賞装置と、
B 所定の条件を満たした場合に遊技球を払い出す払出手段と、
C 前記払出手段により払い出された前記遊技球を貯留する貯留手段と、
D 前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを検出する検出手段と、
E 前記検出手段により前記貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行う報知手段と、を備え、
G 前記報知手段は、前記貯留手段に貯留される遊技球が前記所定量未満となるように遊技者が行うべき操作を表示して示唆する内容を報知する第2の報知を行う遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では報知手段の報知として「貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを音声で報知する第1の報知」(構成F)を有するのに対し、刊行物発明ではそのような報知がない点。

(相違点2)
本願補正発明では報知に関して、「大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限しつつ前記第2の報知を可能とする」(構成H)ようにしたのに対し、刊行物発明では、第1の報知がないことから上記構成(構成H)がない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点1および2は、ともに貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを音声で報知するものである点で共通していることから、あわせて検討する。
皿満タンエラーを音声で報知し、その際、オープニングデータが長当たり用のオープニングデータ以外であれば(短当たり、小当たり等)、皿満タンエラー音声を出力させないようにすること、すなわち、大入賞装置の開閉態様に応じて制限することは、本願出願前に周知である(たとえば特開2013-111404号、段落【0312】、【0317】、特開2015-91424号、段落【0311】、【0316】、特開2015-91425号、段落【0311】、【0316】参照)。
そして、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であると検出されたときに、遊技者に報知を行うという点で共通するものであるし、報知を行う際に画像表示に加えて音声での報知を行うことに、なんら阻害要因はない。
したがって、刊行物発明の、表示により第2の報知を行うことに加え、上記周知の、大入賞装置の開閉態様に応じて音声出力を制限しつつ(長当たり以外では皿満タンエラーを報知しない)、皿満タンエラーを音声で報知する第1の報知を行う構成を単に付加して適用し、本願補正発明の第1の報知とし、第1の報知の制限によらず第2の報知を可能とするようにして、上記相違点1、2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることと認められる。

(5)請求人の主張について
請求人は、平成29年1月12日付けの審判請求書第4頁第8行目?第15行目において、
「新請求項1記載の発明は、以下の如き特徴点を有している。
(a)報知手段は、貯留手段に貯留される遊技球が所定量以上であることを報知する第1の報知と、貯留手段に貯留される遊技球が所定量未満となるように遊技者が行うべき操作を示唆する内容を報知する第2の報知とを行う点
(b)音声による第1の報知が行われ、表示による第2の報知が行われるとともに、大入賞装置の開閉態様に応じて第1の報知を制限する点
(c)大入賞装置の開閉態様に応じて第1の報知を制限する際、第2の報知が可能とされる点 」
と主張している。

しかしながら、報知等を表示や音声やその組み合わせ等で行うことで、より的確に行うことは、一般的な課題であり、当業者であれば当然検討することであるから、上記3(4)で述べたとおり、報知を行う際に画像表示に加えて音声での報知を行うことに、なんら阻害要因はない。よって、刊行物発明の表示による報知(第2の報知に相当)に加えて、上記周知の、大入賞装置の開閉態様に応じて音声出力を制限しつつ行う(長当たり以外では皿満タンエラーを報知しない)音声による報知を、単に付加して行うことは、当業者が容易に想到しうることと認められる。そして、その場合、音声による報知が大入賞装置の開閉態様に応じて制限されたとしても、表示による報知は、それによらずに表示されることになるし、そのような表示を行うことを妨げる理由もない。したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(6)本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1及び2によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(7)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が刊行物発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年8月22日付け手続補正書により補正された、上記第2の1で補正前として示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

1 刊行物
刊行物1の記載事項並びに刊行物発明は、上記第2の3(2)に補正前の発明として記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記大入賞装置の開閉態様に応じて前記第1の報知を制限しつつ前記第2の報知を可能とする」から「前記第2の報知を可能とする」という事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の3に記載したとおり、刊行物発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が刊行物発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-06 
結審通知日 2017-10-13 
審決日 2017-10-24 
出願番号 特願2015-154572(P2015-154572)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 青木 洋平
服部 和男
発明の名称 遊技機  
代理人 越川 隆夫  

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