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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1335442 |
審判番号 | 不服2017-839 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-20 |
確定日 | 2017-12-14 |
事件の表示 | 特願2015-113292号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-180288号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成24年8月31日に出願した特願2012-191690号の一部を平成27年6月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月14日付け(発送日:11月22日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年1月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 一方、当審において、平成29年6月28日付け(発送日:7月4日)で拒絶理由を通知し、応答期間内である平成29年8月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。 そして、この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年8月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(A?Iについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。 「【請求項1】 A 遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、 B 表示手段を含む所定の演出手段に所定の演出を行わせる演出制御手段と、を備え、 C 前記演出制御手段は、 D 前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて、前記表示手段において、複数の装飾図柄を変動表示させてから所定の停止パターンで停止表示させる変動演出を行わせることが可能であると共に、前記変動演出において、前記特別遊技が行われる可能性が高いことを示唆するリーチ演出を行わせることが可能であり、 E 前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を同一図柄となる第1停止パターンで停止表示させてから、前記複数の装飾図柄の全てを停止表示させないで、前記リーチ演出のうちの特定のリーチ演出を行わせる第1演出パターンを実行するときと、 F 前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を前記第1停止パターンで停止表示させた後、前記複数の装飾図柄の全てを所定の組み合わせとなる第2停止パターンで停止表示させてから前記特定のリーチ演出を行わせる第2演出パターンを実行するときと、があり、 G 前記第2停止パターンで停止表示された装飾図柄は、前記リーチ演出が実行されることを示唆可能な表示態様であり、 H 前記第1演出パターンにおいて前記第1停止パターンで停止表示されるタイミングは、前記第2演出パターンにおいて前記第1停止パターンで停止表示されるタイミングと同じであり、 I 前記第2演出パターンにおいて前記第2停止パターンで停止表示されるタイミングよりも、前記第1演出パターンにおいて前記特定のリーチ演出が実行されるタイミングの方が早い、遊技機。」 2 刊行物 当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2012-29888号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「【0021】 まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。図2は、大当りおよび小当りを含む当り種別の制御の特徴を表形式で説明する図である。」 (イ)「【0091】 なお、遊技制御用マイクロコンピュータ560においてCPU56がROM54に格納されているプログラムにしたがって制御を実行するので、以下、遊技制御用マイクロコンピュータ560(またはCPU56)が実行する(または、処理を行なう)ということは、具体的には、CPU56がプログラムにしたがって制御を実行することである。このことは、主基板31以外の他の基板に搭載されているマイクロコンピュータについても同様である。」 (ウ)「【0095】 遊技制御用マイクロコンピュータ560は、第1始動口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aへの始動入賞が生じたときに乱数回路503から数値データをランダムRとして読出し、特別図柄および演出図柄の変動開始時にランダムRに基づいて特定の表示結果としての大当り表示結果にするか否か、すなわち、大当りとするか否かを決定する。そして、大当りとすると決定したときに、遊技状態を遊技者にとって有利な特定遊技状態としての大当り遊技状態に移行させる。」 (エ)「【0100】 この実施の形態では、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出図柄を変動表示する演出表示装置9との表示制御を行なう。」 (オ)「【0124】 なお、この実施の形態では、リーチ演出は、演出表示装置9において変動表示される演出図柄(飾り図柄)を用いて実行される。また、特別図柄の表示結果を大当り図柄にする場合には、リーチ演出は常に実行される。特別図柄の表示結果を大当り図柄にしない場合には、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、乱数を用いた抽選によって、リーチ演出を実行するか否か決定する。ただし、実際にリーチ演出の制御を実行するのは、演出制御用マイクロコンピュータ100である。」 (カ)「【0175】 図10(A)に示すように、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示が開示されるときに、その変動開始に対応して、演出表示装置9において、「左」,「中」,「右」の図柄表示エリア9L,9C,9Rで演出図柄の変動が開始されることにより、左,中,右の演出図柄の変動表示が開始される。 ・・・ 【0178】 そして、図10(J)のように左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、図10(K)のようにスーパーリーチのリーチ演出が実行され、大当りとすることが決定されているときには、図10(K)のように最終的な表示結果として大当り表示結果が導出表示され、表示結果が確定する。 【0179】 図10(J)のようにリーチ状態が開始してから図10(K)のようにスーパーリーチのリーチ演出が実行されるまでの演出態様は、再変動後発展演出、再変動なし発展演出、および、直接演出というような複数種類の演出態様のうちから選択される。 【0180】 再変動後発展演出は、リーチ状態からノーマルリーチの演出が実行されてはずれ図柄を仮停止した後に再変動しスーパーリーチの演出に発展するような発展演出が行なわれる演出態様である。ここで、ノーマルリーチの演出とは、図柄の変動表示以外の演出が行なわれない通常のリーチ演出である。また、スーパーリーチの演出とは、図柄の変動表示以外の演出が行なわれることによりスーパーリーチであることを特定可能とする演出である。なお、ノーマルリーチの演出としては、スーパーリーチの演出と区別できる演出であれば、図柄の変動表示以外の演出が行なわれるものであってもよい。また、スーパーリーチの演出としては、ノーマルリーチの演出と区別できる演出であれば、どのような演出が行なわれるものであってもよい。 ・・・ 【0182】 直接演出は、ノーマルリーチの演出および再変動のような発展演出にかかわる演出が行なわれず、そのまま直接的にスーパーリーチの演出が行なわれるような演出態様である。」 (キ)「【0186】 また、再変動後発展演出が選択されたときには、図11(B1)のようにリーチ状態となった後、図11(B2)のようにノーマルリーチのリーチ演出が実行される。そして、図11(C2)または(C3)のようにリーチはずれ図柄を仮停止した後、中演出図柄を再変動することにより、図11(D)のように再度リーチ状態とする。その後、図12に示すようなキャラクタが表示される等の発展演出が行なわれ、たとえば、図11(E)のようなスーパーリーチのリーチ演出が行なわれる。このように、再変動後発展演出が実行されるときに、図11(C2)または(C3)のように仮停止される図柄(中演出図柄)は、発展前仮停止図柄と呼ばれる。」 (ク)「【0187】 また、直接演出が選択されたときには、図11(B1)のようにリーチ状態となった後、図11(C4)の矢印に示すように、図11(B2)のようなノーマルリーチのリーチ演出が実行されず、かつ、図12に示すようなキャラクタが表示される等の発展演出も行なわれずに、直接的に、たとえば、図11(E)のようなスーパーリーチのリーチ演出が行なわれる。」 (ケ)「【0327】 前述した表示結果指定コマンド送信処理(S302)においては、CPU56が、決定されている大当りの種類、または、はずれに応じて、表示結果1指定?表示結果5指定コマンドのいずれかの演出制御コマンド(図15参照)を送信する制御を行なう。」 (コ)「【0395】 図38は、演出制御用マイクロコンピュータ100がスーパーリーチ発展前の仮停止図柄(中演出図柄の仮停止図柄)を選択するときに用いる発展前仮停止図柄選択テーブルを示す説明図である。発展前仮停止図柄選択テーブルは、演出制御用マイクロコンピュータ100のROMに記憶されており、RAMに読出されて使用される。 ・・・ 【0398】 発展前仮停止図柄選択テーブルにおいては、はずれまたは小当りと、大当りとのそれぞれについて、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択されるように、データが設定されている。「リーチ図柄+1図柄目」とは、たとえば、左,右演出図柄が「7」で揃ったリーチ図柄を形成している場合に、「7」の図柄順番よりも1図柄後の図柄順番の「8」の図柄が該当する。また、「リーチ図柄-1図柄目」とは、たとえば、左,右演出図柄が「7」で揃ったリーチ図柄を形成している場合に、「7」の図柄順番よりも1図柄前の図柄順番の「6」の図柄が該当する。」 (サ)「【0401】 次に、演出制御用マイクロコンピュータ100の動作を説明する。図39は、演出制御基板80に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータ100(具体的には、演出制御用CPU101)が実行する演出制御メイン処理を示すフローチャートである。 ・・・ 【0405】 このような演出制御メイン処理が実行されることにより、演出制御用マイクロコンピュータ100では、遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信され、受信した演出制御コマンドに応じて、演出表示装置9、各種ランプ、および、スピーカ27等の演出装置を制御することにより、遊技状態に応じた各種の演出制御が行なわれる。 【0406】 図40は、図39に示された演出制御メイン処理における演出制御プロセス処理(S705)を示すフローチャートである。演出制御プロセス処理では、演出制御用CPU101は、演出制御プロセスフラグの値に応じてS800?S807のうちのいずれかの処理を行なう。各処理において、以下のような処理を実行する。なお、演出制御プロセス処理では、演出表示装置9の表示状態が制御され、演出図柄の変動表示が実現されるが、第1特別図柄の変動に同期した演出図柄の変動表示に関する制御も、第2特別図柄の変動に同期した演出図柄の変動表示に関する制御も、一つの演出制御プロセス処理において実行される。 ・・・ 【0408】 演出図柄変動開始処理(S801):演出図柄(飾り図柄)の変動表示が開始されるように制御する。また、演出図柄の停止図柄(表示結果)をSR1-1?SR1-3等に基づいて決定する。変動表示の開始時に、受信した変動パターンコマンドに対応して実行する変動表示の変動時間を計時する変動表示時間タイマの計時をスタートさせる。そして、演出制御プロセスフラグの値を演出図柄変動中処理(S802)に対応した値に更新する。 ・・・ 【0410】 演出図柄変動停止処理(S803):演出図柄(飾り図柄)の変動表示を停止し、変動表示の表示結果(停止図柄)を導出表示する制御を行なう。そして、演出制御プロセスフラグの値を大当り表示処理(S804)または変動パターンコマンド受信待ち処理(S800)に対応した値に更新する。」 上記(ア)?(サ)の記載事項から、以下の事項が導かれる。 (a)上記(ウ)【0095】には、「遊技制御用マイクロコンピュータ560は、・・・大当りとするか否かを決定」し、「大当りとすると決定したときに、遊技状態を遊技者にとって有利な・・・大当り遊技状態に移行させる」と記載されている。 そうすると、刊行物には、遊技者にとって有利な大当り遊技状態に移行する大当りとするか否かを決定する遊技制御用マイクロコンピュータ560が記載されているといえる。 (b)上記(サ)【0405】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100では、・・・演出表示装置9・・・等の演出装置を制御することにより、遊技状態に応じた各種の演出制御が行なわれる」と記載されている。 そうすると、刊行物には、演出表示装置9等の演出装置を制御することにより、遊技状態に応じた各種の演出制御を行う演出制御用マイクロコンピュータ100が記載されているといえる。 (c)上記(サ)【0405】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100」と記載されている。 (d)上記(エ)【0100】には、「演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、・・・遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出図柄を変動表示する演出表示装置9との表示制御を行なう」と、上記(ケ)【0327】には、「CPU56が、決定されている大当りの種類、または、はずれに応じて、・・・いずれかの演出制御コマンド・・・を送信する」と、上記(イ)【0091】には、「遊技制御用マイクロコンピュータ560(またはCPU56)が実行する(または、処理を行なう)ということは、具体的には、CPU56がプログラムにしたがって制御を実行することである」と、それぞれ、記載されている。 そして、上記(サ)【0401】、【0406】?【0410】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100(具体的には、演出制御用CPU101)が実行する演出制御メイン処理・・・における演出制御プロセス処理・・・では、・・・以下のような処理を実行する。・・・演出図柄変動開始処理(S801):演出図柄(飾り図柄)の変動表示が開始されるように制御する。・・・演出図柄変動停止処理(S803):演出図柄(飾り図柄)の変動表示を停止し、変動表示の表示結果(停止図柄)を導出表示する制御を行なう」と記載されている。 また、上記(オ)【0124】には、「特別図柄の表示結果を大当り図柄にする場合には、リーチ演出は常に実行される。特別図柄の表示結果を大当り図柄にしない場合には、・・・抽選によって、リーチ演出を実行するか否か決定する。・・・リーチ演出の制御を実行するのは、演出制御用マイクロコンピュータ100である」と記載されている。 そうすると、刊行物には、演出制御用マイクロコンピュータ100は、遊技制御用マイクロコンピュータ560から、決定されている大当りの種類またははずれに応じた演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出表示装置9において、演出図柄の変動表示を開始し、停止して、変動表示の表示結果を導出表示するとともに、表示結果を大当り図柄にする場合には、常に実行され、大当り図柄にしない場合には、抽選によって実行するか否か決定される、リーチ演出の制御を実行することが記載されているといえる。 (e)上記(カ)【0175】?【0179】には、「演出表示装置9において、「左」,「中」,「右」の図柄表示エリア9L,9C,9Rで演出図柄の変動が開始されることにより、左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され・・・左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、・・・スーパーリーチのリーチ演出が実行されるまでの演出態様は、再変動後発展演出、再変動なし発展演出、および、直接演出というような複数種類の演出態様のうちから選択される」ことが、上記(カ)【0182】には、「直接演出は、ノーマルリーチの演出および再変動のような発展演出にかかわる演出が行なわれず、そのまま直接的にスーパーリーチの演出が行なわれるような演出態様である」ことが、上記(ク)【0187】には、「直接演出が選択されたときには、・・・リーチ状態となった後、・・・直接的に、・・・スーパーリーチのリーチ演出が行なわれる」ことが、それぞれ、記載されている。 そうすると、刊行物には、左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチの演出が行われずに、直接的に、スーパーリーチのリーチ演出が行われる直接演出が選択されることがあることが記載されているといえる。 (f)上記(カ)【0175】?【0180】には、「演出表示装置9において、「左」,「中」,「右」の図柄表示エリア9L,9C,9Rで演出図柄の変動が開始されることにより、左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され・・・左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、・・・スーパーリーチのリーチ演出が実行されるまでの演出態様は、再変動後発展演出、再変動なし発展演出、および、直接演出というような複数種類の演出態様のうちから選択される。・・・再変動後発展演出は、リーチ状態からノーマルリーチの演出が実行されてはずれ図柄を仮停止した後に再変動しスーパーリーチの演出に発展するような発展演出が行なわれる演出態様である」ことが、上記(キ)【0186】には、「再変動後発展演出が選択されたときには、・・・ノーマルリーチのリーチ演出が実行され・・・リーチはずれ図柄を仮停止した後、・・・スーパーリーチのリーチ演出が行なわれる。このように、再変動後発展演出が実行されるときに、・・・仮停止される図柄(中演出図柄)は、発展前仮停止図柄と呼ばれる」ことが、それぞれ、記載されている。 また、上記(コ)【0395】、【0398】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100がスーパーリーチ発展前の仮停止図柄(中演出図柄の仮停止図柄)を選択するときに用いる発展前仮停止図柄選択テーブル・・・においては、・・・「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択されるように、データが設定されている」と記載されている そうすると、刊行物には、左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出が行われ、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される発展前仮停止図柄を仮停止した後、スーパーリーチのリーチ演出が行われる再変動後発展演出が選択されることがあることが記載されているといえる。 (g)上記(f)より、刊行物には、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出が行い、仮停止する発展前仮停止図柄は、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択されることが記載されているといえる。 (i)上記(ア)【0021】には、「パチンコ遊技機1」と記載されている。 以上(ア)?(サ)の記載事項及び上記(a)?(i)の認定事項を総合すれば、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?iは発明の構成を分説するため当審で付した。)。 「a 遊技者にとって有利な大当り遊技状態に移行する大当りとするか否かを決定する遊技制御用マイクロコンピュータ560と、 b 演出表示装置9等の演出装置を制御することにより、遊技状態に応じた各種の演出制御を行う演出制御用マイクロコンピュータ100と、を備え、 c 演出制御用マイクロコンピュータ100は、 d 遊技制御用マイクロコンピュータ560から、決定されている大当りの種類またははずれに応じた演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出表示装置9において、演出図柄の変動表示を開始し、停止して、変動表示の表示結果を導出表示するとともに、表示結果を大当り図柄にする場合には、常に実行され、大当り図柄にしない場合には、抽選によって実行するか否か決定される、リーチ演出の制御を実行し、 e 左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチの演出が行われずに、直接的に、スーパーリーチのリーチ演出が行われる直接演出が選択されることと、 f 左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出が行われ、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される発展前仮停止図柄を仮停止した後、スーパーリーチのリーチ演出が行われる再変動後発展演出が選択されることと、があり、 g 左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出を行い、仮停止する発展前仮停止図柄は、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される、 i パチンコ遊技機1。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(i)とし、本願発明、引用発明の分説に対応させている。 (a)引用発明の「遊技者にとって有利な大当り遊技状態」は、本願発明の「遊技者に有利な特別遊技」に相当する。 そうすると、引用発明の「遊技者にとって有利な大当り遊技状態に移行する大当りとするか否かを決定する」ことは、本願発明の「遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う」ことに相当するといえる。 したがって、引用発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願発明の「特別遊技判定手段」に相当する。 よって、引用発明の「遊技者にとって有利な大当り遊技状態に移行する大当りとするか否かを決定する遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本願発明の「遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段」に相当する。 (b)引用発明の「演出表示装置9等の演出装置」は、本願発明の「表示手段を含む所定の演出手段」に相当する。 また、引用発明の「遊技状態に応じた各種の演出制御を行う」ことは、本願発明の「所定の演出を行わせる」ことに相当する。 したがって、引用発明の「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願発明の「演出制御手段」に相当する。 よって、引用発明の「演出表示装置9等の演出装置を制御することにより、遊技状態に応じた各種の演出制御を行う演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願発明の「表示手段を含む所定の演出手段に所定の演出を行わせる演出制御手段」に相当する。 (c)上記(b)より、引用発明の「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本願発明の「演出制御手段」に相当する。 (d)上記(b)より、引用発明の「演出表示装置9」は、本願発明の「表示手段」に相当する。 そして、引用発明の「演出図柄の変動表示を開始し、停止して、変動表示の表示結果を導出表示する」ことは、本願発明の「複数の装飾図柄を変動表示させてから所定の停止パターンで停止表示させる変動演出を行」うことに相当する。 また、引用発明の「表示結果を大当り図柄にする場合には」、「リーチ演出」を「常に実行」し、「表示結果を」「大当り図柄にしない場合には、抽選によって」「リーチ演出」を「実行するか否か決定」するということは、リーチ演出が実行されない場合は大当り図柄にならず、リーチ演出が実行されても大当り図柄にならない場合もあるが、大当り図柄になる場合は、「リーチ演出」を「常に実行」するものであるから、「リーチ演出」が行われると「特別遊技が行われる可能性が高いことを示唆」しているといえる。 また、上記(a)の検討を踏まえると、引用発明において「決定されている大当りの種類またははずれ」を決定するのは、「遊技制御用マイクロコンピュータ560」であるから、「遊技制御用マイクロコンピュータ560から、決定されている大当りの種類またははずれに応じた演出内容を指示する演出制御コマンドを受信」して、演出表示装置9において、変動表示の表示結果を導出表示するとともに、リーチ演出の制御を実行することは、本願発明の「特別遊技判定手段の判定結果に基づいて」、表示手段において、変動演出やリーチ演出を行うことに相当する。 よって、引用発明の、演出制御用マイクロコンピュータ100は、「遊技制御用マイクロコンピュータ560から、決定されている大当りの種類またははずれに応じた演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出表示装置9において、演出図柄の変動表示を開始し、停止して、変動表示の表示結果を導出表示するとともに、表示結果を大当り図柄にする場合には、常に実行されるリーチ演出の制御を実行」することは、本願発明の、演出制御手段は、「前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて、前記表示手段において、複数の装飾図柄を変動表示させてから所定の停止パターンで停止表示させる変動演出を行わせることが可能であると共に、前記変動演出において、前記特別遊技が行われる可能性が高いことを示唆するリーチ演出を行わせることが可能であ」ることに相当する。 (e)引用発明の「左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態とな」ることは、本願発明の「前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を同一図柄となる第1停止パターンで停止表示させ」ることに相当する。 また、引用発明の「ノーマルリーチの演出が行われずに、直接的に、スーパーリーチのリーチ演出が行われる」ことは、本願発明の「前記複数の装飾図柄の全てを停止表示させないで、前記リーチ演出のうちの特定のリーチ演出を行わせる」ことに相当する。 したがって、引用発明の「直接演出」は、本願発明の「第1演出パターン」に相当し、引用発明の「直接演出が選択されること」があることは、本願発明の「第1演出パターンを実行するとき」があることに相当する。 よって、引用発明の、演出制御用マイクロコンピュータ100は、「左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチの演出が行われずに、直接的に、スーパーリーチのリーチ演出が行われる直接演出が選択されること」があることは、本願発明の、演出制御手段は、「前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を同一図柄となる第1停止パターンで停止表示させてから、前記複数の装飾図柄の全てを停止表示させないで、前記リーチ演出のうちの特定のリーチ演出を行わせる第1演出パターンを実行するとき」があることに相当する。 (f)上記(e)での検討に加え、引用発明の、リーチ状態となった後、「ノーマルリーチのリーチ演出が行われ、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される発展前仮停止図柄を仮停止した後、スーパーリーチのリーチ演出が行われる」ことは、本願発明の、第1停止パターンで停止表示させた後、「前記複数の装飾図柄の全てを所定の組み合わせとなる第2停止パターンで停止表示させてから前記特定のリーチ演出を行わせる」ことに相当する。 したがって、引用発明の「再変動後発展演出」は、本願発明の「第2演出パターン」に相当し、引用発明の「再変動後発展演出が選択されること」があることは、本願発明の「第2演出パターンを実行するとき」があることに相当する。 よって、引用発明の、演出制御用マイクロコンピュータ100は、「左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、発展前仮停止図柄を仮停止した後、スーパーリーチのリーチ演出が行われる再変動後発展演出が選択されること」があることは、本願発明の、演出制御手段は、「前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を前記第1停止パターンで停止表示させた後、前記複数の装飾図柄の全てを所定の組み合わせとなる第2停止パターンで停止表示させてから前記特定のリーチ演出を行わせる第2演出パターンを実行するとき」があることに相当する。 (g)上記(f)での検討を踏まえると、引用発明の「左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出を行い」、「発展前仮停止図柄」が「仮停止」した「演出図柄」は、本願発明の「第2停止パターンで停止表示された装飾図柄」に相当する。 そして、引用発明の「「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される」「発展前仮停止図柄」は、「発展前仮停止図柄」の仮停止により、スーパーリーチに発展することを示唆するものであるから、本願発明の「リーチ演出が実行されることを示唆可能な表示態様」であるといえる。 よって、引用発明の「左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後、ノーマルリーチのリーチ演出を行い、仮停止する発展前仮停止図柄は、「リーチ図柄+1図柄目」と、「リーチ図柄-1図柄目」とのいずれかが選択される」ことは、本願発明の「前記第2停止パターンで停止表示された装飾図柄は、前記リーチ演出が実行されることを示唆可能な表示態様であ」ることに相当する。 (i)引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。 上記(a)?(i)の対比により、本願発明と引用発明とは、 「A 遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、 B 表示手段を含む所定の演出手段に所定の演出を行わせる演出制御手段と、を備え、 C 前記演出制御手段は、 D 前記特別遊技判定手段の判定結果に基づいて、前記表示手段において、複数の装飾図柄を変動表示させてから所定の停止パターンで停止表示させる変動演出を行わせることが可能であると共に、前記変動演出において、前記特別遊技が行われる可能性が高いことを示唆するリーチ演出を行わせることが可能であり、 E 前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を同一図柄となる第1停止パターンで停止表示させてから、前記複数の装飾図柄の全てを停止表示させないで、前記リーチ演出のうちの特定のリーチ演出を行わせる第1演出パターンを実行するときと、 F 前記複数の装飾図柄のうち少なくとも2つの装飾図柄を前記第1停止パターンで停止表示させた後、前記複数の装飾図柄の全てを所定の組み合わせとなる第2停止パターンで停止表示させてから前記特定のリーチ演出を行わせる第2演出パターンを実行するときと、があり、 G 前記第2停止パターンで停止表示された装飾図柄は、前記リーチ演出が実行されることを示唆可能な表示態様である、 I’ 遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明では、第1演出パターンにおいて第1停止パターンで停止表示されるタイミングは、第2演出パターンにおいて第1停止パターンで停止表示されるタイミングと同じであり、第2演出パターンにおいて第2停止パターンで停止表示されるタイミングよりも、第1演出パターンにおいて特定のリーチ演出が実行されるタイミングの方が早いとしているのに対し、引用発明では、このような特定がされていない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 引用発明の構成e、fによれば、引用発明の「直接演出」も「再変動後発展演出」も、「左,中,右の演出図柄の変動表示が開始され、左,右の演出図柄が同じ図柄で停止してリーチ状態となった後」に選択的に実行されるものであるから、引用発明の「直接演出」および「再変動後発展演出」において、「リーチ状態」となるタイミングを同じとすることは、当業者が適宜なし得たことである。 また、引用発明は、「リーチ状態となった後」、「直接演出」は、「ノーマルリーチの演出」を行わずに「直接的にスーパーリーチのリーチ演出」を行うが、「再変動後発展演出」は、「ノーマルリーチのリーチ演出」を行い、「発展前仮停止図柄を仮停止した後、スーパーリーチのリーチ演出」を行うものであるから、「再変動後発展演出」において「発展前仮停止図柄」で停止表示されるタイミングよりも、「直接演出」において「スーパーリーチのリーチ演出」が実行されるタイミングの方が早いことを示唆しているといえる。 そして、変動演出において、演出を変更するタイミングは適宜決定し得るものであるから、引用発明の直接演出及び再変動後発展演出のそれぞれの演出変更のタイミングをどのようにするかは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 したがって、刊行物の示唆に基づいて、当該相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 5 審判請求人の主張について 平成29年8月30日付けの意見書において、請求人は、本願発明の作用効果として、「第1演出パターンにおいて、第1停止パターンで停止表示されてから(つまり、リーチ成立してから)特定のリーチ演出に発展するまでの間延びをなくすことができるので、近年遊技者に好まれない傾向にある間延び感を排除して、テンポの良い演出進行を実現でき」ると主張している(2頁30?33行)。 この主張について検討すると、上記4で検討したとおり、刊行物には、「再変動後発展演出」において「発展前仮停止図柄」で停止表示されるタイミングよりも、「直接演出」において「スーパーリーチのリーチ演出」が実行されるタイミングの方が早いことが示唆されているといえるから、上記請求人が主張する効果は、刊行物の示唆から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-10 |
結審通知日 | 2017-10-17 |
審決日 | 2017-10-30 |
出願番号 | 特願2015-113292(P2015-113292) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
長崎 洋一 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 蔵野 いづみ |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人 小笠原特許事務所 |