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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1335513
審判番号 不服2015-13805  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-22 
確定日 2017-12-05 
事件の表示 特願2013-123522「選択的に光を抑制する色彩調整眼用レンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 9日出願公開、特開2013-178581〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
1 手続の経緯
本願は、2007年6月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年6月12日、米国)を国際出願日とする特願2009-515603号の一部を平成25年6月12日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成26年 5月 9日:拒絶理由通知
平成26年11月11日:意見書
平成27年 3月19日:拒絶査定
平成27年 7月22日:審判請求書
平成28年11月 7日:拒絶理由通知
平成29年 2月 8日:意見書
平成29年 2月 8日:誤訳訂正書
平成29年 2月28日:拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成29年 6月 6日:意見書(以下単に「意見書」という。)
平成29年 6月 6日:手続補正書(以下「本件補正」という。)

2 本願発明
本願の請求項1ないし29に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項14に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項14に記載されたとおりの次のものであると認める。

「400nmから460nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲である第1の波長範囲で光の少なくとも5%を選択的に吸光するフィルタを有する眼用システムであって、前記システムは可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率を有し、前記システムは、可視スペクトルのうち前記第1の波長範囲を除く波長範囲にわたる少なくとも80%の透過率を有し、白色光は、前記システムを通して透過されるとき、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIEを有する、眼用システム。」

第2 当審拒絶理由についての判断
1 当審拒絶理由の概要
(1)理由1:本件出願は、特許請求の範囲(本件補正前のもの)の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1では、例えば、前記「染料」が「400nmから500nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲」(以下「第1の波長範囲」という。)で光を「5%」だけ吸光し、「500nmから700nmの波長範囲」(以下「第2の波長範囲」という。)で「80%の透過率」を有する態様を含むが、このような態様の場合、第1の波長範囲における透過率は、95%(=100%-5%(吸光率))となる可能性があり、第2の波長範囲における透過率より大きくなることが想定できる。そうすると、請求項1では、眼用システムに関し、可視光の80%かそれ以上の透過率を提供し、選択的に青色光の波長を妨げ、着用者の適切な色覚能力を可能にし、及びそのようなレンズまたはレンズシステムを着用した着用者を見る観測者にとってはほとんど中間色の外観を提供するという、本願の発明の課題が解決できていない。
してみると、技術常識を考慮しても、請求項1の発明特定事項の技術的意義が不明であるとともに、請求項1において、本願の発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっている。この点、請求項14及び18についても同様である。
よって、請求項1、14、18及び当該請求項の記載を引用する請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、明確でもない。

(2)理由2:本件出願の請求項1ないし29(平成29年6月6日になされた手続補正前のもの)に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1.特開平7-306387号公報
引用例2.米国特許出願公開第2004/0070726号明細書
引用例3.特表2002-530686号公報

2 理由1(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
(1)本願の明細書の記載
本願の明細書には、以下のとおり記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は眼用システムに関している。より具体的には、本発明は、外観的に魅力のある製品を提示する同時に、青色光波長の阻止を実現する眼用システムに関している。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2006年3月20日に出願された米国出願第11/378,317号の一部継続出願であり、2006年6月12日に出願された米国仮出願第60/812,628号の利益を主張し、夫々はその全体を参照することでここに組み込まれている。
【0003】
現在の研究は、およそ400nm-500nm(ナノメートルまたは10^(-9)メートル)の波長を有する短波長の可視光線(青色光)が、AMD(加齢性黄斑変性症)の寄与原因でありうるという仮定を強く支持している。青色光吸収の最も高いレベルは、430ナノメートルの領域周辺、400nm-460nmで生じると信じられている。研究はさらに、青色光が、遺伝性、タバコの煙、及び過度のアルコール消費、といったAMDに対する他の原因因子を悪化させることを示唆している。
【0004】
光は波状に進む電磁放射で構成されている。電磁スペクトルは電波、ミリメートル波、赤外線、可視光線、紫外線(UVAとUVB)、及びX線とガンマ線を含んでいる。人間の網膜は電磁スペクトルの可視光部にだけ反応する。可視光スペクトルは、およそ700nmの最も長い可視光波長、及びおよそ400nmの最も短いものを含む。青色光波長がおよそ400nmから500nmの範囲に入る。紫外線バンドに対して、UVBの波長は290nmから320nmであり、及びUVAの波長は320nmから400nmである。
【0005】
人間の網膜は多層膜を含んでいる。目に入射するあらゆる光に最初に曝される部分から最も深い部分の順番でリストされたこれらの層は、以下を含む。
1)神経線維層
2)神経節細胞
3)内網状層
4)双極、及び水平細胞
5)外網状層
6)光受容体(桿状体と円錐体)
7)網膜色素上皮(RPE)
8)ブルッフ膜
9)脈絡膜
【0006】
光が目の光受容体細胞(桿状体と円錐体)によって吸収されるとき、それらが回復するまで前記細胞は色あせ、感受性がなくなる。この回復過程は代謝過程であり、「視覚サイクル」と呼ばれる。青色光の吸収は時期尚早にこのプロセスを反転させることを示している。この早過ぎる反転現象は酸化的損傷のリスクを増やし、及び網膜内にリポフスチン色素の蓄積を導くと考えられている。この蓄積は、網膜色素上皮(RPE)層で起こる。過度なリポフスチンの量に起因して、ドルーゼと呼ばれる細胞外物質の凝集体がRPE層で形成されると考えられている。ドルーゼは、RPE層が適切な栄養を感光体に供給することを妨害、または妨げ、これらの細胞の損傷または死を導く。さらにこのプロセスを複雑にするように、リポフスチンが高い量で青色光を吸収するとき、毒作用を示すようになり、RPE細胞のさらなる損傷及び/または死を引き起こす現象が現れる。リポフスチンの成分A2Eは、RPE細胞の短波長の検出感度に対して少なくとも部分的に関与していると信じられている。A2Eは、青色光によって最大に励起されることが示されている。そのような励起の結果となる光化学的事象は細胞死を導きうる。これは、例えば、非特許文献1を参照することができる。
【0007】
照明及び視力ケア産業は、UVA及びUVB放射に露呈される人間の視覚に対する規格を有している。驚くべきことに、このような規格は青色光に関しては実施されていない。
例えば、今日利用可能な通常の蛍光灯において、ガラスエンベロープは主として紫外線を阻止するが、青色光はほとんどの減衰なしで伝達される。場合によって、前記エンベロープはスペクトルの青色領域内で、強化された透過を有するように工夫されている。
【0008】
ある程度の青色遮光を提供する眼用システムが知られている。しかしながら、このようなシステムに関連する不利点がある。例えば、青色遮光によりレンズ内で作り出される黄色または琥珀色の色合いのために、それらは容姿的に魅力的でない傾向となる。より具体的には、青色遮光に対する1つの共通的な技術は、BPIフィルタービジョン450またはBPIダイヤモンドダイ500のような青色遮光の色合いを有するようにレンズを色合い付け、または染めることを含んでいる。前記色合い付けは、例えば、青色遮光染料溶液を含む加熱されたティントポット(tint pot)で所定の期間にわたりレンズを浸すことによって達成されうる。一般的に、前記染料溶液は黄色、または琥珀色の色を有しており、それによってレンズに黄色、または琥珀色の色合いを与える。多くの人々にとって、この黄色、または琥珀色の色合いの外観は、容姿的に、望ましくないかもしれない。さらに、前記色合いは、レンズ使用者の正常な色知覚を妨げることがあり、例えば、それは交通信号または標識の色度を正確に認知することを困難にしている。
【0009】
従来の青色遮光フィルターの黄変効果を補うための取り組みがなされてきた。例えば、黄変効果を補うために、青色遮光レンズが、青色、赤色、または緑色の染料のような追加の染料で処理されていた。前記処理は、追加の染料が元の青色遮光染料と混合させる。しかしながら、この技術は青色光遮断レンズにおいて黄色を減らす一方で、前記染料の混合は、より多くの青色光スペクトルを通過させ、青色遮光の有効性を減少させうる。さらに、これら従来の技術は、青色光波長以外の光の波長の全体的な透過を所望せず減少させる。この所望しない減少は、レンズ使用者に対して次々に視力の減少をもたらす。
【0010】
前述の内容を考慮すると、眼用システムに対する必要性が存在する。それは、青色光波長の選択的な阻止と同時に、可視光線の80%を越える伝搬と、着用者によって身につけられるとき、前記眼用システムを見る人にとってはほとんど中間色と受け取られることである。加えて、このようなシステムが着用者の色覚を害さないこと、及びさらに、システムの背面から着用者の目の中への反射が、着用者に不快とならないレベルであることは重要である。この必要性は、黄斑変性(産業化した世界で失明の主な原因)及び他の網膜疾患に対する可能な寄与因子の一つとして青色光を挙げているデータとしてますます存在している。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は眼用システムに関している。より具体的には、本発明は、外観的に魅力のある製品を提示する同時に、青色光波長の阻止を実現する眼用システムに関している。
【0014】
眼用システムは、可視光の80%かそれ以上の透過率を提供し、選択的に青色光の波長を妨げ、着用者の適切な色覚能力を可能にし、及びそのようなレンズまたはレンズシステムを着用した着用者を見る観測者にとってはほとんど中間色の外観を提供することが出来るように提供されている。前記システムは、所望の効果を提供するために様々な光学的コーティング、フィルム、材料、及び吸収染料を利用しうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態は、容姿的に魅力的な製品と、利用者に対して標準的であるか、または条件にあった色知覚と、良好な視力のための透過光の高いレベルと、を提供すると同時に、効果的に青色遮光を行う眼用システムに関する。可視光の80%かそれ以上の平均透過率を提供し、青色光の波長を選択的に抑制し(「青色遮光」)、着用者の適切な色覚性能を可能にし、及び、そのようなレンズまたはレンズシステムを身につけている着用者を見ている観察者に対してほとんど中間色の外観を提供することのできる眼用システムが提供される。ここで用いられるような、システムの「平均透過率」は、可視スペクトルのような波長の範囲において平均の透過率を示す。システムはまた、前記システムの「発光性透過率」を特徴としてもよく、これは、波長範囲で平均値を参照し、それぞれの波長に対する目の敏感さに従って重みをかけられる。ここで述べられるシステムは、望ましい効果を産み出すために、種々の光学被覆、フィルム、材料、及び吸収染料を用いてもよい。
【0016】
より具体的には、本発明の実施形態は、色彩調整と組み合わせて効果的な青色遮光を提供してもよい。ここに用いられるような「色彩調整」または「色彩調整化」は、青色遮光の有効性を減らすことなく容姿的に受容できる結果を産み出すように、黄色または琥珀色、または青色遮光の他の望まれない効果が、減らされるか、相殺されるか、中和されるか、またはさもなければ埋め合わせられることを意味している。例えば、400nm‐460nm近くの波長が遮光されるか強度が減らされる。特に、例えば、420‐440nm近くの波長が遮光されるか強度が減らされる。さらに、遮光されない波長の透過率は高いレベル、例えば少なくとも80%で残っている。さらに、外部観測者に対して、眼用システムは透明、またはほとんど透明に見える。システムの利用者に対して、色知覚は標準的であるか、または受容可能でありうる。
【0017】
ここで用いられるような「眼用システム」は例えば、眼鏡、サングラス、コンタクトレンズ、内部眼球レンズ、角膜インレイ(inlays)、角膜オンレイ(onlay)に用いられる処方または非処方の眼用レンズを含み、及び、さらなる詳細がここで述べられる所望の機能性を提供するために、他の要素と処理されるか、加工されるか、結合されてもよい。ここで用いられるように、「眼用材料」は、調整レンズのように眼用システムを造りあげるために共通に使われる。他の材料が様々な眼用システムに対して使われ、及び知られているけれども、ここで例となる眼用材料は、ガラス、CR‐39のようなプラスチック、Trivex、及びポリカーボネート材料を含んでいる。
【0018】
眼用システムは、色彩調整要素の後方に青色遮光要素を含んでいてもよい。青色遮光要素、または色彩調整要素のどちらかが、レンズのような眼用要素となるか、その一部を形成してもよい。後部の青色遮光要素、及び前部の色彩調整要素は、眼用レンズの表面または複数表面の上に、または隣接して、または近くで、はっきりと区別できる層である。色彩調整要素は、容姿的に受け入れられる外観を生み出すために、後部の青色遮光要素の黄色、または琥珀色の色あいを減らすか、または中和してもよい。例えば、外部観測者に対して、眼用システムは透明、またはほとんど透明に見える。システムの利用者に対して、色知覚は標準的であるか受け入れられる。さらに、青色遮光及び色彩調整の色合いが混合されないので、青色光スペクトルの波長は遮光されるか、または強度が減少され、及び遮光されない波長に対して眼用システム内の入射光の透過強度は少なくとも85%となる。
【0019】
前に議論したように、青色遮光に対する技術は知られている。青色光波長を阻止する周知技術は、吸光、反射、干渉、またはそれらの組み合わせを含む。以前に検討したことだが、1つの技術に従って、レンズは、BPIフィルタービジョン450またはBPIダイヤモンドダイ500のような、青色遮光の色合いを適当な割合または濃度で、色付け/染色されうる。前記色付けは、例えば、所定の期間にわたって、青色遮光染料溶液を含む加熱されたティントポット内へレンズを浸すことによって達成されうる。もう1つの技術に従って、フィルターが青色遮光のために用いられる。前記フィルターは、例えば、青色光波長の吸光、及び/または反射、及び/または干渉を示す有機または無機化合物を含みうる。前記フィルターは有機及び/または無機物質の複数の薄い層または被覆を備えることができる。各層は、それぞれが個々に、または他の層と組み合わせて、青色光波長を有する光の吸光、反射、または干渉のような特性を有しうる。ルゲートノッチフィルター(Rugate notch filter)は青色遮光フィルターの一つの例である。ルゲートフィルターは、反射率が高低値の間で変動する無機誘電体の薄い単層フィルムである。異なる屈折率(例えばSiO_(2)とTiO_(2))の2つの材料の相互堆積によって製造されたルゲートフィルターは、波長遮光に対して明白に定義されたストップバンドを有し、前記バンドの外側でほとんど減衰がないことで知られている。前記フィルターの構造パラメータ(振動周期、屈折率調整、屈折率振動の数)はフィルターの性能パラメータ(ストップバンドの中心、ストップバンドの幅、バンド内部の透過率)を決定する。ルゲートフィルターは、例えば特許文献1及び特許文献2においてその全体を参照することでより詳細に開示されている。青色遮光に対するもう一つの技術は、多層誘電体スタックの利用である。多層誘電体スタックは、反射率の高い物質と低い物質の離散的な層を堆積することで製造される。ルゲートフィルターと同様に、個々の層の厚さ、個々の層の反射率、及び層の繰り返しの数、のような設計パラメータは多層誘電体スタックの性能パラメータを決定する。
【0020】
外部観測者によって見られるとき、前記眼用システムが全体として容姿的に受け入れることのできる外観を有しているように、色彩調整は、例えば青色の色付け/染色の適切な割合または濃度、または赤色及び緑色の色付け/染色の適切な組み合わせ、を持たせることを備えうる。例えば、眼用システムは全体として透明、またはほとんど透明に見える。」
ウ 「【0034】
図8Aと8Bは、青色光波長を遮光して、色彩調整を実行する両方の機能が単一要素803で結合されうる眼用システム800を示している。例えば、結合された機能要素は青色光波長を遮光して、同様にいくらか緑色及び赤色の波長を反射し、それによって青色を中和して、レンズ内で主要な色の外観を排除している。結合された機能要素803は、透明な眼用レンズ802の後部または前部のどちらかの表面の上に、または隣接して配置されうる。眼用レンズ800はさらに、透明な眼用レンズ802の後部または前部のどちらかの表面の上に、または隣接してAR要素801を含みうる。
・・・略・・・
【0037】
特定の光透過率と吸光特性を有するレンズを生産するために、基板材料内へ染料を射出成型する注入によって、吸収染料は眼用レンズの基板材料内に含まれうる。これらの染料材料は、前記染料の基本的なピーク波長で、またはポルフィリン材料内で一般的に見つけられるソレーバンドの存在によってより短い共鳴波長で、吸光することができる。他の材料が、様々な眼用システムに対して用いられ、及び知られているにもかかわらず、例となる眼用材料は、様々なガラス、及び登録商標CR-39、TRIVEX(登録商標)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン、及びフルオロポリマー、のようなポリマーを含んでいる。
【0038】
例のみの手段として、Gentexの染料材料E465の透過率と吸光度が図10‐11で示される。吸光度(A)は式A=log10(1/T)によって透過率(T)と関連付けられる。この場合、透過率は0から1(0<T<1)の間にある。しばしば透過率はパーセンテージで表現される。すなわち、0%<T<100%である。E465染料は465未満の波長を遮光、及び高い光学密度を有する波長(OD>4)を遮光するために通常提供される。類似の製品が他の波長を遮光するために利用できる。例えば、GentexからのE420は420nmを下まわる波長を遮光する。他の例となる染料は、青色波長で吸収できるポルフィリン、ペリレン、及び類似の染料を含んでいる。
【0039】
より短い波長の吸光度は、染料濃度の減少によって減らされうる。この、及び他の染料材料は、430nmの領域で?50%の透過率を達成することができる。図12は、430nm範囲内の吸光に対して適切な染料濃度を有し、及び420nm-440nmの範囲で若干の吸収を有するポリカーボネート基板の透過率を示している。これは染料の濃度を減らすこと、及びポリカーボネート基板の効力を含ませることによって達成される。この位置で後部表面は、反射防止で被覆されていない。
・・・略・・・
【0048】
ある場合において、色彩調整フィルムは他の眼用材料の2つの間に配置されうる。例えば、フィルター、ARフィルム、または他のフィルムは眼用材料の内部に配置されうる。例えば、以下の構成が使用されうる。
・・・略・・・
【0058】
前に述べられたように、フィルターは青色遮光のためのもう1つの技術である。それ故、述べられた青色遮光要素のいずれも、青色遮光フィルターであるか、または青色遮光フィルター含むか、または青色遮光フィルターと結合されうる。このようなフィルターはルゲートフィルター(rugate filter)、干渉フィルター、バンドパスフィルター、バンドブロックフィルター、ノッチフィルターまたは2色性フィルター(dichroic filter)を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の実施形態において、上記の開示された青色遮光技術の1つ以上は、他の青色遮光技術と関連して使用されうる。例のみの方法によって、レンズ要素は、効果的に青色光を遮光するために染色/色付け及びルゲートノッチフィルター(rugate notch filter)を利用しうる。
【0060】
400-460nmにおいて、またはその近くにおいて青色光波長の遮光を実施するために、上記の開示された構造及び技術のいずれも、本発明による眼用システムにおいて使用されうる。例えば、実施形態において遮光された青色光の波長は、前もって決定された範囲以内となりうる。実施形態において、前記範囲は430nm±30nmとなりうる。他の実施形態において、前記範囲は430nm±20nmとなりうる。また、他の実施形態において、前記範囲は430nm±10nmとなりうる。実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の90%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の80%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の70%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の60%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の50%に制限しうる。他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の40%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の30%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の20%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の10%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の5%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の1%に制限しうる。さらに他の実施形態において、眼用システムは青色波長の透過率を上記定義された範囲以内で実質的には入射波長の0%に制限しうる。規定されていなければ、眼用システムによる上記指定された範囲内の波長で電磁スペクトルの減衰は、少なくとも10%;または少なくとも20%;または少なくとも30%;または少なくとも40%;または少なくとも50%;または少なくとも60%;または少なくとも70%;または少なくとも80%;または少なくとも90%;または少なくとも95%;または少なくとも99%;または実質的に100%となりうる。
【0061】
ある場合において、400nm-460nm領域のような青色スペクトルの相対的に小さい部分をフィルターすることは特に望ましいものとなりうる。例えば、非常に多くの青色スペクトルの阻止することは、暗所視及び日周期を妨げうることがわかっている。従来の青色遮光眼用レンズは、広範囲の青色スペクトルの非常に大きな量を一般的に遮光し、それは着用者の「生体時計」に悪い影響を与え、及び他の悪影響を有する。このようにして、ここに述べられたような相対的に狭い範囲の青色スペクトルを遮光することが望まれうる。相対的に小さい範囲で比較的に少ない量の光をフィルターしうる例となるシステムは、400nm-460nm、410nm-450nm、及び420nm-440nmの波長を有する光の5-50%、5-20%、及び5-10%を遮光または吸光するシステムを含んでいる。
【0062】
青色光の波長が、上記のように選択的に遮光されると同時に、可視電磁スペクトルの他の部分の少なくとも80%、または少なくとも85%、及び他の実施形態において少なくとも90-95%、は眼用システムによって透過されうる。規定がなければ、青色光スペクトルの外、例えば約430nmの範囲以外の波長での電磁スペクトルの眼用システムによる衰弱は、20%かそれ以下、15%かそれ以下、10%かそれ以下、他の実施形態において、5%かそれ以下となりうる。
【0063】
さらに、本発明の実施形態は、700nmより大きい波長を有する赤外線の他に、紫外線、UVA及びUVBスペクトルバンドも、もさらに遮光しうる。
【0064】
上で開示された眼用システムのいずれも、メガネ、サングラス、ゴーグルまたはコンタクトレンズのような外部から着用されるメガネ類を含むメガネ類の製品の中に組み込まれうる。そのようなメガネ類において、システムの青色遮光要素が、色彩調整要素の後部にあるので、前記メガネ類が着用されるとき、青色遮光要素は常に色彩調整要素よりも、より目に近くなるだろう。眼用システムは、外科的に移植可能な眼球内レンズのような製造品目でも使用されうる。」
ウ 「【図8A】

【図8B】


エ 請求項14は、上記「第1」の「2」のとおりである。

(2)判断
ア 本願の明細書の【0013】及び【0014】(上記(1)イ)の記載からみて、本願の発明の課題は、外観的に魅力のある製品を提示する同時に、青色光波長の阻止を実現する眼用システムに関し、可視光の80%かそれ以上の透過率を提供し、選択的に青色光の波長を妨げ、着用者の適切な色覚能力を可能にし、及びそのようなレンズまたはレンズシステムを着用した着用者を見る観測者にとってはほとんど中間色の外観を提供することが出来るようにすることであると認められる。
イ 請求項14(上記第1の2)では、「フィルタ」が「400nmから500nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲である第1の波長範囲」で「光を少なくとも5%を選択的に吸光」し、「眼用システム」が「可視スペクトルのうち前記第1の波長範囲をのぞく波長範囲」にわたる「少なくとも80%の透過率」を有する態様を含む。
ウ 上記イからみて、請求項14の「眼用システム」は、第1の波長範囲における透過率が95%(=100%-5%(吸光率))となる可能性があり、また、第1の波長範囲の帯域幅は特定がないため、400?460nmではさらに透過率が高い可能性がある。そうすると、青色の範囲で透過率が80%を超える発明が含まれるから、選択的に青色光の波長を妨げ、中間色の外観を提供することができない発明が請求項14に係る発明に含まれることとなる。してみると、請求項14では、上記アでいう本願の発明の課題が解決できていない。
エ 請求人は、意見書で「本願発明のシステム(またはデバイス)・・・・が80%の透過率を有し、そのシステム(デバイス)の一部であってそれに含まれる染料またはフィルタが、特定の目標範囲の波長において光の少なくとも5%を「選択的に」吸光します。」と主張する。しかしながら、請求項14の「眼用システム」は、「フィルタ」のみからなる態様を含み、「フィルタ」以外の層が存在しないことも許容するものである。また、意見書に図1として示された曲線4510と曲線4520の違いに対応する構成は本願の請求項14に記載されていない。仮に曲線4520の透過率を具備するとしても、請求項14には「白色光は、前記システムを通して透過されるとき、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIEを有する」としか記載されておらず、中間色の外観を提供するのかどうか不明である。請求項14には、透過特性しか特定されておらず、外観が中間色でない発明が含まれる。してみると、上記ウと同様に、請求項14では、上記アでいう本願の発明の課題が解決できていない。なお、本願の明細書の【0034】には、青色光波長を遮光し、色彩調整を実行する両方の機能を有する単一要素を有する眼用システムであって、青色を吸収し、緑色及び赤色の光を反射し、外観が中間色とはいえない例が記載されている。
オ 以上のとおり、技術常識を考慮しても、請求項14において、本願の発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっている。また、同様な理由により、請求項14において、「フィルタ」が「400nmから500nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲である第1の波長範囲」で「光を少なくとも5%を選択的に吸光」することの技術的意義が不明である。
カ よって、本件の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、明確でもない。

3 理由2(特許法第29条第2項)について
(1)引用例の記載事項
ア 引用例1
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由で引用例1として引用された刊行物である特開平7-306387号公報には、次の事項が図とともに記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂製のレンズに染色を施した遮光用レンズにおいて、400nm?500nmの波長域のうち短波長側を長波長側よりも減光させたことを特徴とする遮光用レンズ。
【請求項2】 請求項1記載の遮光用レンズにおいて、JIS-Z-8701に規定される測定基準光源をCとしたときの主波長を565nm?575nm、刺激純度を1?40%とし、更に視感度透過率を60%以上とし、500nm?650nmの範囲の分光特性をニュートラルなものとしたことを特徴とする遮光用レンズ。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の遮光用レンズにおいて、前記レンズを、吸収ピーク波長が390?410nm、その吸収ピーク波長での分光透過率が0?70%、その吸収ピーク波長での分子吸光係数が20°Cで2×10^(3) となるイエロー系分散染料により、染色加工したことを特徴とする遮光用レンズ。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、遮光用レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】日中など光量が十分な状態での健常正視眼においては、常に高いコントラスト感度を有しており、物体の細部に亘り鮮明な像を捕らえることが可能である。また、400?500nmの波長域の光量過剰状態で生じる羞明感(眩しさ)は、可視光線域を減光する遮光用レンズの利用により、比較的容易に快適な視界を得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、夜間のような光量不足状態では、コントラスト感度は日中と比べて著しく低下する。また、光量不足に加え、視野中心に眩しさの存在する状態ではコントラスト感度はさらに低下する。このような現象は、例えば夜間の自動車の運転において対向車からのヘッドライトが視野中心にある場合などに発生する。
【0004】この眩しさを防ぐ手段として上記遮光用レンズを使用することが考えられる。ここで、一般の遮光用レンズは、視感度の最も高い波長域である500?550nmの光線を含む400?550nmの光線を良く吸収するため視感の光量低下が著しく、上記のように夜間等の光量不足状態での羞明感改善に使用すると十分な視力やコントラスト感度が得られないという欠点がある。
【0005】そのため、夜間に上記遮光用レンズを装用すると、更に光量不足が促進されて視力低下を引き起こし、コントラスト感度が得られない。逆に、夜間における必要視力の得られる程度に、すなわち十分なコントラスト感度が得られる程度に、遮光用レンズの染料濃度を下げた場合には、防眩効果が同時に低下しまう。
【0006】従って、従来の遮光用レンズの染色濃度の調整では、夜間運転の支障をなくしかつヘッドライトの眩しさを防ぐことはできなくなり、結局、従来の遮光用レンズでは特に夜間における実用性がなかった。
【0007】本発明は、視感の光量低下を防ぎ、かつコントラスト感度の向上と羞明感の緩和を可能とし、特に夜間の使用に適した遮光用レンズを提供することにある。」
(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、合成樹脂製のレンズに染色を施した遮光用レンズにおいて、400nm?500nmの波長域のうち短波長側を長波長側よりも減光させた。
【0009】又、請求項2に記載の発明では、請求項1記載の遮光用レンズにおいて、請求項1記載の遮光用レンズにおいて、JIS-Z-8701に規定される測定基準光源をCとしたときの主波長を565nm?575nm、刺激純度を1?40%とし、更に視感度透過率を60%以上とし、500nm?650nmの範囲の分光特性をニュートラルなものとした。
【0010】更に、請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2記載の遮光用レンズにおいて、請求項1又は請求項2に記載の遮光用レンズにおいて、前記レンズを、吸収ピーク波長が390?410nm、その吸収ピーク波長での分光透過率が0?70%、その吸収ピーク波長での分子吸光係数が20°Cで2×10^(3) となるイエロー系分散染料により、染色加工した。
【0011】400nm?500nmの波長域のうち短波長側を長波長側よりも減光させたのは、次の理由からである。すなわち、400nm?500nmの波長域は、人間が眩しいと感じる波長域であり、この波長域を減光させれば防眩効果が得られる。一方、この波長域全てを減光すると、コントラスト感度が低下してしまう。コントラスト感度の低下の要因としては短波長が散乱することにより像がぼけることが挙げられるため、400nm?500nmの波長域のうち、特に短波長側のみを減光させればコントラスト感度の低下を防止し、かつ防眩効果が得られるのである。従って、400nm?450nmの波長域の減光率を450nm?500nmの波長域の減光率よりも高くすれば、防眩効果が得られるばかりか、コントラスト感度は裸眼の場合よりも向上することになる。
【0012】イエロー系分散染料には、20°Cでの分子吸光係数が2×103 以上であるものが用いられる。これはレンズに含有される色素を低濃度に抑えるとともに、夜間等の光量の低い状況でも十分な光量を得られる色調を現出させるためである。20°Cでの分子吸光係数が2×103 以下のイエロー系分散染料はレンズに含有される色素の量を増大させることとなり好ましくない。又、イエロー系分散染料の吸収ピーク波長を390?410nmとすることにより、上記の400nm?450nmの波長域を減光することが可能となる。
【0013】刺激純度を1?40%とした理由は、1%以下ではレンズが無色に近くなり短波長の光線を吸収しなくなるためであり、40%以上ではレンズの色が濃くなりすぎて光線を吸収し過ぎるためである。
【0014】500?650nmの波長範囲においての吸収特性をニュートラルなものとしたのは、イエロー系分散染料による機能を減殺しないためである。染色加工後の視感度透過率を60%以上とする理由は、視感度透過率が60%以下では視感の光量低下により、逆にコントラスト低下を引き起こす要因となるため、好ましくないからである。特に、視感度透過率を70%とすれば視感の光量が十分なものとなり、夜間の装用に適したものとなる。
【0015】かかる分散染料の種類としては、モノアゾ系、ジアゾ系、アントラキノン系、スチリル系などが挙げられる。染色加工の方法としては、イエロー系分散染料と少なくとも一種以上のレッド系、ブルー系、グレー系分散染料を別の染色槽とし、順次浸漬する方法がある。又、他の方法としては前記各染料を混合して1つの染色槽で染色する方法がある。これらの方法については特定されず、どのような染色方法であってもよい。更に、イエロー系の分散染料のみの使用も可能であるが、ブルー系,レッド系,グレー系の各分散染料のうち一種以上を併用した場合には、色調に対する装用時の違和感が減少するため実用上好ましい。
【0016】又、合成樹脂レンズのモノマーには、ジエチレングリコールビスアリルカーボネイトを主成分とするものが用いられるが、それ以外にも重合によりプラスチックレンズを成型可能であれば、アルキル(メタ)アクリレート類、スチレン誘導体類など他のモノマーの使用も可能であり、特定されるものではない。又、これらのモノマーを適宜選択し混合して得られた合成樹脂材料を使用してもよい。
【0017】上記モノマー及びモノマー混合物には、架橋剤・酸化防止剤および離型剤などが任意成分として添加され得る。架橋剤は耐薬品性、耐熱性の向上に寄与し、酸化防止剤は耐候性の向上と基材黄変の防止に寄与し、離型剤は重合終了後の離型性向上に寄与する。かかる任意成分は通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、いずれも使用可能である。
【0018】又、上記の如く適宜用いられる紫外線吸収剤は、合成樹脂モノマーに添加され、成型されたレンズに波長380nm以下の遮光機能を付加し、コントラスト向上及び有害光線からの眼球保護の役割を果たす。使用される紫外線吸収剤には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などがある。具体的には、ベンゾトリアゾール系では、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-tert-アルフェニル)ベンゾトリアゾール等がある。ベンゾフェノン系では、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン等がある。
【0019】その使用量については合成樹脂モノマーに対して好ましくは0.05?5重量%であり、特に好ましくは0.05?2重量%である。0.05重量%未満では紫外線吸収効果が十分に得られず、5重量%以上ではレンズ成型上好ましくない。
【0020】又、上記方法によって得られた遮光用レンズには、公知の方法により紫外線吸収剤、表面硬化膜、反射防止膜などを形成してもよい。更に、防曇性、帯電防止性、撥水性などを付与することも可能であり、これらの機能を複数組み合わせることも可能である。」
(エ)「【0021】
【実施例】以下、本発明についての各実施例について説明する。
(実施例1)ジエチレングリコールビスアリルカーボネート96.10重量%、紫外線吸収剤として2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.06重量%、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシカーボネート3.84重量%を撹拌機により十分に撹拌し、化学強化を施したガラス製モールドと樹脂製ガスケットよりなる成型型に上記混合液を注入後、電気炉により熱重合を行い合成樹脂レンズを得た。
【0022】この合成樹脂レンズを、純粋1リットルに対し三井東圧染料株式会社製のイエロー系分散染料「MLP GOLD YELLOW-2」を5グラム加えて染色液を調整した後、液温90°Cで5分間浸漬し遮光用レンズを得た。
【0023】この遮光用レンズの主波長、刺激純度、視感度透過率、吸収ピーク波長分光透過率の測定値(イエローピーク波長/透過率)は、表1に示すように、それぞれ573nm、35.2%、83.6%、410nm/19.9%であった。
【0024】又、日立製作所株式会社製の自記分光光度計「U-3500」による分光曲線を図1に示した。図1から400nm?500nmの波長域のうち短波長側が長波長側よりも減光されていることが分かる。
【0025】この遮光用レンズを24名の被検者に装用させ、VISTEC社製コントラストテスター「MCT-800」により夜間視中心グレア存在下の状態でのコントラスト感度を測定したところ、図5に示すように、低周波から高周波までの全ての帯域で裸眼での平均値を上回る高値を示した。この結果から、実施例1の遮光用レンズを用いた場合には裸眼の場合よりもコントラスト感度が向上することが判明した。
【0026】又、この遮光用レンズを眼鏡として加工し5名に夜間常用させたところ、表2に示すように、5名全員がコントラスト感度の向上を自覚するとともに、3名が対向車のヘッドライト照射などによる眩しさの自覚的改善を示した。
(実施例2)実施例1と同様の合成樹脂レンズに対し、以下の比率で染色液を調整した。
【0027】染色液1:三井東圧染料株式会社製「MLP GOLD YELLOW-2」を5グラムに対し純粋1リットル
染色液2:三井東圧染料株式会社製「MLP RED-2」を5グラムに対し純粋1リットル
染色液3:三井東圧染料株式会社製「MLP BLUE-2」を5グラムに対し純粋1リットル
染色液1乃至染色液3の各染色液温を92°Cとし、染色液1に1分間、染色液2に30秒間、染色液3に20秒間、順次浸漬し着色レンズを得た。
【0028】この得られた着色レンズの主波長、刺激純度、視感度透過率、吸収ピーク波長分光透過率の測定値は、表1に示すように、それぞれ572nm、13.0%、82.6%、410nm/48.5%であった。又、この実施例2の遮光用レンズの分光曲線を図2に示した。図2から400nm?500nmの波長域のうち短波長側が長波長側よりも極端に減光されていることが分かる。
【0029】又、この遮光用レンズを眼鏡として加工し5名に夜間常用させたところ、表2に示すように、3名がコントラスト感度向上と眩しさの自覚的改善を示した。
(実施例3)実施例1,2と同様の合成樹脂レンズを用いるとともに、実施例2と同様の比率で染色液を使用し、その浸漬時間を変更して実施した。
【0030】すなわち、染色液1乃至染色液3の各染色液温を92°Cとし、染色液1に1分間、染色液2に30秒間、染色液3に40秒間、順次浸漬し遮光用レンズを得た。
【0031】この得られた着色レンズの主波長、刺激純度、視感度透過率、吸収ピーク波長分光透過率の測定値は、表1に示すように、それぞれ570nm、14.1%、77.7%、433nm/54.5%であった。又、この実施例3の遮光用レンズの分光曲線を図3に示した。図3から400nm?500nmの波長域のうち短波長側が長波長側よりも極端に減光されていることが分かる。
【0032】又、この遮光用レンズを眼鏡として加工し5名に夜間常用させたところ、表2に示すように、3名がコントラスト感度の向上を自覚するとともに、4名が眩しさの自覚的改善を示した。
(比較例)実施例1と同様の調合および重合方法により合成樹脂レンズを得た。この合成樹脂レンズを、純粋1リットルに対し三井東圧染料株式会社製「MLP BLUE-2」を5グラム加えて染色液を調整した後、液温90°Cで2分間浸漬し遮光用レンズを得た。
【0033】この遮光用レンズの主波長、刺激純度、視感度透過率は、表1に示すように、それぞれ492nm、7.1%、76.7%であった。又、図4に比較例の遮光用レンズの分光曲線を示した。図4から400nm?500nmの波長域が全て均一に減光されていることが分かる。
【0034】この遮光用レンズを10名の被検者に装用させ、VISTEC社製コントラストテスター「MCT-8000」により夜間視中心グレア存在下の状態でのコントラスト感度を測定したところ、図5に示すように、特に中間周波数帯域において著しいコントラスト感度の低下を示した。又、5名の被検者にこの遮光用レンズを夜間装用させたところ、4名がコントラスト感度低下を自覚した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】・・・略・・・
【0037】以上、この発明の各実施例について説明したが、以上の記載から把握できる請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果と共に記載する。
(イ)請求項1に記載の遮光用レンズにおいて、イエロー系分散染料に加え、更に、レッド系,ブルー系又はグレー系分散染料のうち少なくとも一種以上の分散染料を混合した遮光用レンズ。
【0038】イエロー系分散染料のみを使用する場合には、遮光用レンズ自体が黄色となってしまい色調に対する違和感がある。この点、上記のように他の染料を混合することにより、従来一般に存在するサングラスと類似した色調となり、色調に対する装用時の違和感が減少する。
【0039】(ロ)請求項2に記載の遮光用レンズにおいて、視感度透過率を70%以上とした遮光用レンズ。この構成によれば、視感の光量が十分なものとなり、特に、夜間における装用に適したものとなる。」
(オ)「【図3】


(カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、引用例には、実施例3として、次の発明が記載されているものと認められる。
「ジエチレングリコールビスアリルカーボネート96.10重量%、紫外線吸収剤として2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.06重量%、重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシカーボネート3.84重量%を撹拌機により十分に撹拌し、化学強化を施したガラス製モールドと樹脂製ガスケットよりなる成型型に上記混合液を注入後、電気炉により熱重合を行い合成樹脂レンズを得て、該合成樹脂レンズを下記染色液1乃至下記染色液3の各染色液温を92℃とし、染色液1に1分間、染色液2に30秒間、染色液3に40秒間、順次浸漬して得た遮光用レンズを加工した眼鏡であって、
前記遮光用レンズは、刺激純度、視感度透過率、吸収ピーク波長分光透過率の測定値は、それぞれ14.1%、77.7%、433nm/54.5%であり、
分光曲線は下記の図3に示したとおりであり、400nm?500nmの波長域のうち短波長側が長波長側よりも極端に減光されている、
眼鏡。

染色液1:三井東圧染料株式会社製「MLP GOLD YELLOW-2」を5グラムに対し純水1リットル
染色液2:三井東圧染料株式会社製「MLP RED-2」を5グラムに対し純水1リットル
染色液3:三井東圧染料株式会社製「MLP BLUE-2」を5グラムに対し純水1リットル

【図3】

」(以下「引用発明」という。)
なお、染色液1ないし3の「純粋1リットル」は「純水1リットル」の誤記であるとして、上記のとおりに引用発明を認定した。

イ 引用例3
本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由で引用例3として引用された刊行物である特表2002-530686号公報には次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベンゾピラン系およびそれから誘導された高級の縮合環系の群からなる2つの異なる光互変性色中心をその中に加入させた中性色光互変性プラスチック物品であって、前記物品は、prEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後暗闇に15分間溶暗させた状態にある間、その色度がC^(*)<8の色軌跡のみを通ることを特徴とする中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項2】 前記色軌跡の色度がC^(*)<5であることを特徴とする請求項1記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項3】 前記物品の色軌跡がprEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後に色度C^(*)<5を示すことを特徴とする請求項1または2記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項4】 前記色軌跡が色度C^(*)<3を示すことを特徴とする請求項3記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項5】 prEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗くした状態での400nm乃至650nmの波長領域における前記物品のスペクトル透過率が25%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項6】 prEN8980測定手順により23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗くした状態での700nmの波長領域における前記物品のスペクトル透過率が50%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項7】 非活性状態で与えられたVλによる前記物品のスペクトル透過率が遮光装置がない場合に80%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の中性色光互変性プラスチック物品。
【請求項8】 前記物品が眼鏡レンズであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の中性色光互変性プラスチック物品。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は暗くした時または溶暗させた時に完全に中性色または灰色が保たれる中性灰色互換性プラスチック物品に関するものである。本発明によるプラスチック物品は特に中性灰色の光互換性眼鏡レンズとして使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
・・・略・・・
【0003】
従来様々な表色システムが開発され、これにより客観的な色特徴が定められている。その中最もよく知られ、また眼鏡レンズに最も適したものはL^(*)a^(*)b^(*)システムすなわち、CIE色表示システム(1976)であって、明度(L^(*))と色(a^(*)b^(*))を球内の一点により示すことができる。暗くするか溶暗させる過程で光互換性レンズの色は連続した点の移動、すなわち3次元空間内の曲線で示すことができる。光互変性レンズの色伝達を評価するための主要素は曲線がレンズ中心面上に示す投影、すなわちa^(*)とb^(*)値である。このシステムは等間隔、すなわちこのシステムにおける同一色距離は同一色差に対応する。
【0004】
この色空間においては、理想的な中性色レンズの場合には明暗を繰り返す間、色位置a^(*)とb^(*)に関してはゼロ値を保ちながらL^(*)軸のみが変化する。理論的には白色(レンズ、特に眼鏡レンズは反射ではなく透過であると考えられるので無色に等しい)からすべての灰色の色調を経て黒色、すなわち完全な不透明に移行する。それ故、すべての場合においてレンズは無色か灰色を示す。この数学的モデル値は究極的のものであるが、実際には絶対に到達することはできない。すなわち、前記a^(*)b^(*)面でのゼロ位置からのずれは不可避である。」
(ウ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、暗くした時または溶暗した時に、ほぼ完全に中性色すなわち灰色が残るような中性灰色互変性プラスチック物品を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、中性色または灰色互変性プラスチック物品がベンゾピラン系とそれから誘導される高級な縮合環系の群からなる2つの異なる光互変色中心をその中に加入させたものであり、前記物品はprEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗闇に15分溶暗させている間、その色度がC^(*)<8、好ましくはC^(*)<6、さらに好ましくはC^(*)<5の色軌跡のみを通過することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明によるプラスチック物品においてはprEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後の色軌跡は、色度C^(*)<5、好ましくはC^(*)<4、さらに好ましくはC^(*)<3を示す。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、本発明によるプラスチック物品についてprEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗くした状態でのスペクトル透過率は400乃至560nmの波長領域において好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。また本発明によるプラスチック物品についてprEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗くした状態でのスペクトル透過率は700nmの波長領域において好ましくは50%以下である。
【0010】
ここで重要なことは、可視スペクトルの中心範囲で一定した透過ができるようにすることである。従って、prEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後、暗くした状態での415乃至540nmの可視スペクトル領域でのスペクトル透過率差は、例えば10%以下であるべきであり、さらに好ましくは8%以下であるべきである。
【0011】
本発明の別の形態では、遮光装置なしの厚さ2mmの物品では、完全に非活性状態で与えられたV_(λ)によるスペクトル透過率が80%以上である。光互変性レンズは汎用レンズであり、理想的にはこれらのレンズは透明レンズまたは太陽光防護レンズに取って代わるべきものでなくてはならない。その結果として、光線により刺激されない時、例えば夜間において最高の透過率を示すことが要求される。遮光装置を用いることにより、上記の最高透過率を90%か、その近傍まで近づけることができる。
【0012】
本発明の光互変性プラスチック物品は、Na-d線で測定された屈折率が1.49乃至1.76のレンズのような光学部品として使用することができる。特に本発明の光互変性プラスチック物品は眼鏡レンズとして好適である。」
(エ)「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、暗くなるときまたは溶暗状態で中性色すなわち灰色が失われないような光互変性プラスチック物品を得ることに初めて成功したものである。本発明は、光互変性プラスチックレンズとして用いられる光互変性染料について特定の選択パラメーターを考慮にいれることを基本とする。
【0014】
本発明による中性灰色光互変性プラスチック物品は、prEN8980測定手順に従って23℃で15分間50Kルクスの照射を行った後には、可視スペクトル範囲で図1に例示するような吸収スペクトルを示す。420nm乃至620nmの可視スペクトル領域では、スペクトル透過率差(減衰量差)は10%以下であり、この条件は暗くした時、または溶暗状態での最初の15分でさえ±10nmの許容範囲内で維持される。赤色スペクトル範囲における低吸収率が望まれ、または受け入れられるような場合には、スペクトル範囲を例えば600nmに下げて達成させることができる。
・・・略・・・
【0018】
中性色は少なくとも2つの色の混合による相加的混合から得られることは一般によく知られていることである。これを2色に限定すれば、これらの色は互いに補色である筈であり、すなわち光互変性染料の吸収はCIE1976色度図における「白色帯」を通過する直線により結ばれていなければならない。これは与えられた2つの染料において、一方の最大吸収量が約496nm以下であり、他方の染料の最大吸収量が約570nm以上であることを意味する。したがって可能な組合わせに対して最大吸収量の差はほぼ100乃至130nmの値を示すことになる。」
(オ)上記(ア)ないし(エ)から、次の事項が記載されているものと認められる。
「補色の関係にある2つの色の混合により中性色を得た、中性灰色の光互換性眼鏡レンズ。」(以下「引用例3の記載事項」という。)

(2)対比
本願の請求項14に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
ア 引用発明は、吸収ピーク波長分光透過率の測定値が433nm/54.5%であり、該吸収ピークである433nmで透過しない光は45.5%であるところ、その45.5%のほとんどが吸収によることは明らかである。そうすると、吸収ピークである433nmと3nmの差しかない430nmを含む波長範囲においても、少なくとも5%を吸光することは図3の記載からみても明らかである。そして、433nmで吸収ピークが存在し、前記「430nmを含む波長範囲」においても所定量吸光するということは、前記吸収ピークを含む「430nmを含む波長範囲」で「選択的」に吸光し、他の領域では所定量吸光していないことは自明である。また、引用発明の「遮光用レンズ」は、合成樹脂レンズを所定温度の染色液1ないし3に所定時間順次浸漬して得たものであり、前述の吸光性能又は光透過性能を有するから、本願発明の「フィルタ」に相当するといえる。してみると、引用発明は、本願発明の「400nmから460nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲である第1の波長範囲で光の少なくとも5%を選択的に吸光するフィルタ」との要件を備える。
イ 引用発明の「眼鏡」は、「遮光用レンズ」(本願発明の「フィルタ」に相当)を加工したものであり、「遮光用レンズ」を有するといえるから、本願発明の「眼用システム」に相当するといえる。
ウ 上記ア及びイから、本願発明と引用発明とは、
「400nmから460nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲である第1の波長範囲で光の少なくとも5%を選択的に吸光するフィルタを有する眼用システム。」の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1
本願発明では、「可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率を有し、前記システムは、可視スペクトルのうち前記第1の波長範囲を除く波長範囲にわたる少なくとも80%の透過率を有し」ているのに対し、
引用発明では、視感度透過率が77%であるが、可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率を有し、可視スペクトルのうち前記第1の波長範囲を除く波長範囲にわたる少なくとも80%の透過率を有しているかどうかが明らかでない点。

・相違点2
本願発明では、白色光が、「システムを通して透過されるとき、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIEを有する」のに対し、
引用発明では、刺激純度の測定値が14.1%であり、白色光がシステムを通して透過されるときのCIEが不明である点。

(3)判断
ア 相違点1について
(ア)引用例1の【0026】ないし【0032】(上記(1)ア(エ))には、実施例2の遮光用レンズは、視感度透過率82.6%、吸収ピーク波長分光透過率が410nm/48.5%であり、実施例2と実施例3の製造上の違いは浸漬時間、特に染色液3の浸漬時間のみであることが記載されており、その浸漬時間の差により、実施例2と、引用発明を認定した実施例3とに、光学性能の違いが出ていることが把握できる。
(イ)引用例1の【0014】には、「染色加工後の視感度透過率を60%以上とする理由は、視感度透過率が60%以下では視感の光量低下により、逆にコントラスト低下を引き起こす要因となるため、好ましくないからである。」と記載されており、視感度透過率は高いほど好ましいといえる。
(ウ)視感度透過率は可視光線の波長範囲における透過率であるから、該透過率が80%であれば、「可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率」を満たすといえる。引用発明は、視感度透過率が77.7%であるが、上記(ア)からみて、浸漬時間を調整することにより、視感度透過率及び吸収ピーク波長分光透過率を調整でき、具体的には、視感度透過率80%以上を達成できる。してみると、引用発明において、染色液への合成樹脂レンズの浸漬時間の調整や所定波長領域を選択的に吸収する染料の選択により、視感度透過率を80%以上となすこと、要するに「可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率」を有するようになすことは、当業者が適宜なし得たことである。また、引用発明は、図3からみて、約500nm以上の大半の波長範囲で透過率が80%を超えるものであるところ、上記(イ)のように、視感度透過率は高いほど好ましいとの事情や、引用例1の【0011】の「400nm?450nmの波長域の減光率を450nm?500nmの波長域の減光率よりも高くすれば、防眩効果が得られるばかりか、コントラスト感度は裸眼の場合よりも向上することになる」(上記3(1)ア(ウ))との記載に照らせば、第1の波長範囲(400nmから460nmの波長範囲のうち、430nmを含む少なくとも一部分の波長範囲)を除く波長範囲にわたる少なくとも80%の透過率を有するようになすことは、前述の視感度透過率を80%以上となすことと同様に当業者が適宜なし得たことである。
(エ)上記(ウ)のように、引用発明において、「可視光スペクトルにわたる少なくとも80%の平均透過率を有し、前記システムは、可視スペクトルのうち第1の波長範囲を除く波長範囲にわたる少なくとも80%の透過率を有し」ているようになしても、第1の波長範囲で光の少なくとも5%を選択的に吸光するという性能を維持し得ることは技術常識から明らかであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは当業者が引用例1の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)引用例3の記載事項(上記(1)イ(オ))は、補色の関係にある2つの色の混合により中性色を得た、中性灰色の光互換性眼鏡レンズである。
(イ)引用例1の【0013】には、刺激純度を1?40%とした理由は、1%以下ではレンズが無色に近くなり短波長の光線を吸収しなくなるためであり、40%以上ではレンズの色が濃くなりすぎて光線を吸収し過ぎるためであることが記載されており、レンズの色を濃くするか、それとも、無色に近くするかは、光線吸収の程度を如何にするかによって、適宜決定し得る事項であるといえる。また、引用例1の【0015】及び【0038】には、イエロー系分散染料のみを使用する場合に、遮光用レンズ自体が黄色となってしまい色調に対する違和感があるので、他の染料を混合して色調に対する装用時の違和感を減少させるものであることが記載されている。
(ウ)刺激純度が1?10%程度である場合には、「(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIE」を確実に満たすことが技術常識(例.特開平11-9617号公報(図2、図6、図7参照。))であると認められる。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、引用発明において、染料の種類や染色条件を変更し、上記相違点1に係る本願発明の構成としつつ、装用時の違和感を減少させるために、刺激純度を10%以内として無彩色となし、(0.33±0.05,0.33±0.05)のCIE」を満たすようになすこと、すなわち、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例3の記載事項に基づき適宜なし得たことである。

ウ 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例1の記載事項の奏する効果及び引用例3の記載事項の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

エ したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
本件出願は、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものではなく、明確でもないから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-11 
結審通知日 2017-07-14 
審決日 2017-07-25 
出願番号 特願2013-123522(P2013-123522)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02C)
P 1 8・ 121- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 鉄 豊郎
樋口 信宏
発明の名称 選択的に光を抑制する色彩調整眼用レンズ  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
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