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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1335521
審判番号 不服2016-18156  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-02 
確定日 2017-12-26 
事件の表示 特願2013-506713「構造物体を検査するための光学装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 3日国際公開、WO2011/135231、平成25年 7月11日国内公表、特表2013-528791、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年4月19日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2010年4月26日、フランス)を伴う国際出願)
手続補正: 平成27年5月7日
手続補正: 平成28年4月20日 (以下、「補正2」という。)
補正2の却下: 平成28年7月25日(送達日:同年8月2日)
拒絶査定: 平成28年7月25日(送達日:同年8月2日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年12月2日
手続補正: 平成28年12月2日
拒絶理由通知: 平成29年7月20日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月25日)
手続補正: 平成29年9月25日(以下、「本件補正」という。)


第2 本願発明
本願請求項1-19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明19」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
構造物体(4)例えばウェハを検査するための顕微鏡装置であって、
-カメラ(1)、
-前記カメラ(1)において視野に応じて前記物体(4)の画像を生成することができ、かつ、前記物体(4)の側に配置された遠位レンズ(3)を含む光学画像化手段(2)、
-複数の赤外線波長を有する測定ビーム(6)を含み、かつ、前記測定ビーム(6)の逆反射と1つの光学参照との干渉によって測定を行うことのできる低コヒーレンス赤外線干渉計(5)、及び
-前記測定ビームが遠位レンズ(3)を通過するように、及び、前記測定ビームが、画像化手段(2)の視野に実質的に含まれる測定領域中で前記物体(4)を照射するように、前記干渉計の光ファイバに由来する前記測定ビームを前記光学画像化手段(2)に導入するための光学結合手段(7)とコリメータ
を含む顕微鏡装置において:
-前記測定ビームの一部が前記コリメータにおいて前記光ファイバ中に反射して前記光学参照を発生するように、前記光ファイバ及び前記コリメータが配置されており、そして
-前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)が、固定参照(44)を備えるアームと時間遅延ライン(45)を備えるアームとを含むデコード干渉計を含み、前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)の測定範囲が、前記アーム間の光路長差によって及び前記遅延ライン(45)の最大ストロークによって決定され、前記物体に対する前記ビームが対象範囲とする光学距離に近い光学距離に相当する測定範囲において発生する前記測定ビームの逆反射(6)のみによって測定が行われるように、低コヒーレンス赤外線干渉計が調整されること
を特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記遠位レンズ(3)が、可視波長で画像を生成するように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遠位レンズ(3)が、顕微鏡レンズを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記測定ビーム(6)が、1100?1700ナノメートルの波長を含むことを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記視野及び前記測定領域の寸法を実質的に同一の割合で同時に修正するように、光学画像手段(2)の倍率を変更するための第1の倍率手段(3、8)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の倍率手段(3、8)が、様々な倍率を有する光学部品を備えるタレット及び可変倍率光学部品のうち、少なくとも一方の部品を含むことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記視野に対して前記測定領域の寸法を修正するために、前記測定ビーム(6)の倍率を修正するための第2の倍率手段(9)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記物体(4)及び前記光学画像化手段(2)に関する相対変位手段(10)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記物体(4)及び前記測定ビーム(6)に関する相対変位手段(11)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記遠位レンズ(3)を介して前記物体(4)を照射するように配置され、かつ可視波長の光線(25)を生成する照明手段(12)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記カメラ(1)において、前記物体の画像と重ね合わされた干渉縞を生成し、そこから前記物体(4)の表面のトポグラフィを導き出すことのできる全視野干渉計(13)を、前記遠位レンズ(3)の位置にさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記全視野干渉計が、前記測定ビーム(6)の波長に対して実質的に透過性である二色性部品(30、31、32)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記画像化手段から見て前記物体の裏側に配置され、1マイクロメートルよりも高い波長を有する光源を含み、かつ、前記カメラ(1)上に前記物体(4)の透過による画像形成を可能にする照明手段(14)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)が、前記測定範囲において:
-前記測定ビームの波長に対して実質的に透過性である材料の少なくとも1つの層の光学的厚さ、
-少なくともその高い部分及び少なくともその低い部分が前記測定領域に含まれているパターンの高さ、
-前記測定ビーム(6)と前記物体(4)との接触点の、前記測定範囲における絶対高さの要素のうちの少なくとも1つの測定を可能にすることを特徴とする、請求項1?13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記カメラ(1)によって検出可能な少なくとも1つの波長を含み、かつ前記測定ビーム(6)と重ね合わされる観察ビーム(15)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記測定領域の表示を含む、前記視野の画像を生成することができる、デジタル処理及び表示手段(16)をさらに含むことを特徴とする、請求項1?15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
構造物体(4)例えばウェハを検査するための方法であって:
-カメラ(1)において、視野に応じて物体(4)の画像を生成するステップと、前記物体(4)の側に配置されるように遠位レンズ(3)を用意するステップ、及び
-複数の赤外線波長を有する測定ビーム(6)を発射する低コヒーレンス赤外線干渉計(5)を用いて、該測定ビーム(6)の逆反射と1つの光学参照との干渉による測定を行うステップ
を含む方法において:
-前記測定ビームが前記遠位レンズ(3)を通過するように、及び、前記測定ビームが前記画像化手段(2)の前記視野に実質的に含まれる測定領域中で前記物体(4)を照射するように、前記干渉計の光ファイバに由来する前記測定ビームを前記光学画像化手段(2)に導入するための光学結合器(7)及びコリメータを用意するステップ、
-前記測定ビームの一部を前記コリメータにおいて前記光ファイバ中に反射させて前記光学参照を発生させるステップ、そして
-固定参照(44)を備えるアームと時間遅延ライン(45)を備えるアームとを含むデコード干渉計を含む前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)において、前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)の測定範囲が、前記アーム間の光路長差及び前記遅延ライン(45)の最大ストロークによって決定され、前記物体に対する前記ビームが対象範囲とする光学距離に近い光学距離に相当する測定範囲において発生する前記測定ビームの逆反射(6)のみによって測定が行われるように、低コヒーレンス赤外線干渉計を調整するステップを更に含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項18】
前記視野の前記画像内の前記測定領域の位置が、事前の較正の間に記憶されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カメラ(1)及び前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)からの情報が、前記物体(4)の三次元表示を生成するために組み合わされることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。」


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-294155号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば薄膜の屈折率及び厚さなど、光の屈折率が異なる媒質の界面間に挟まれた被測定物における屈折率及び厚さを測定することができる装置に関する。」

「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の測定装置の一実施形態を示した概略構成図である。図中符号1は光源を示し、3は被測定物を示す。
光源光は低コヒーレンス光であることが好ましく、光源1としては、広帯域なバンド幅を有する光を出射できるものが好ましく用いられ、例えばSLD(super-luminescent diode:スーパールミネセントダイオード)やLED(light emitting diode:発光ダイオオード)が好適に用いられる。
被測定物3は、薄板や薄膜等、光の屈折率が異なる媒質の界面間に挟まれた層状であり、光源光を透過可能で、かつ光学的一様な層とみなせるものが適用される。
被測定物3は、光源光の光軸方向が厚さ方向と一致するように保持、固定されている。被測定物3の表裏両面のうちの光源1側の一方の面(以下、前面という)が最表面を成していてもよく、該前面上に光源光を透過する層が設けられていてもよい。また被測定物3の他方の面(以下、後面という)が最表面を成していてもよく、該後面上に被測定物3と屈折率が異なる層が設けられていてもよい。被測定物3の厚さは、使用する広帯域光源1のコヒーレンス長よりも、被測定物の厚さと屈折率の積の値が小さいと分解能の関係により測定が困難になる。一方、厚過ぎると被測定物の前面に焦点を位置させたときの反射光量と、後面に焦点を位置させたときの反射光量との差が大きくなるので、10μm?10mm程度が好ましく、より好ましくは10μm?2mm程度である。
【0012】
本実施形態の装置において、光源1から出射された光は、第1の光ファイバ11、サーキュレータ2、および第2の光ファイバ12を順に経て測定部20に至るように構成されている。
サーキュレータ2は3つのポートを有しており、それぞれに第1の光ファイバ11、第2の光ファイバ12、第3の光ファイバ13が接続されている。サーキュレータ2は、第1の光ファイバ11から第2の光ファイバ12へは光が通り、第2の光ファイバ12から第3の光ファイバ13へも光が通るが、これらの逆向きには光は戻らないように構成されている。
第1の光ファイバ11、第2の光ファイバ12、および第3の光ファイバ13としては、一般的な伝送用光ファイバが用いられ、石英系ガラスファイバが好適に用いられる。」

「【0014】
測定部20において、第2の光ファイバ12から出射された光は、コリメータ21で平行光とされた後、半透鏡22へ入射される。
半透鏡22は、入射光の一部を反射し一部を透過する特性を有しており、該半透鏡22の透過光は集光レンズ23によって集光され、該集光光が被測定物3へ照射される。そして被測定物3の反射光(以下、検査光ということもある)が、集光レンズ23を経て半透鏡22を透過した後、コリメータ21を経て第2の光ファイバ12に入射されるように構成されている。
一方、半透鏡22の反射光(以下、参照光ということもある)はコリメータ21を経て第2の光ファイバ12に入射される。」

「【0016】
このように測定部20から第2の光ファイバ12へは、検査光および参照光が入射され、該検査光の光信号と参照光の光信号の両方を含む光が第2の光ファイバ12、サーキュレータ2、および第3の光ファイバ13を順に経て干渉部30に至るように構成されている。
干渉部30は、第3の光ファイバ13からの出射光の光路上に設けられたコリメータ31、ビームスプリッタ32、および第1のミラー35と、前記ビームスプリッタ32内で第3の光ファイバ13からの出射光の光路と直交する光軸を有する第2のミラー36と、前記ビームスプリッタ32を挟んで前記第2のミラー36と対峙する位置関係にあるコリメータ37を備えている。
【0017】
干渉部30では、第3の光ファイバ13から出射された光がコリメータ31で平行光とされた後、ビームスプリッタ(分岐手段かつ合波手段)32で、直進する第1の分岐光路33と、入射方向に対して直交する第2の分岐光路34に分岐される。
第1の分岐光路33を進む光は、第1のミラー35で反射され、該反射光は第1の分岐光路33と平行に前記ビームスプリッタ32に入射される。
一方、第2の分岐光路34を進む光は、第2のミラー36で反射され、該反射光は第2の分岐光路33と平行に前記ビームスプリッタ32に入射される。
そして、ビームスプリッタ32は、第2のミラー36からの反射光を直進させるとともに、第1のミラー35からの反射光を、その入射方向に対して直交する方向に進行方向を変えるように構成されており、これによって第1のミラー35の反射光と第2のミラーの反射光が合波されるようになっている。合波された2つの光は干渉光を生成し、該干渉光は、コリメータ37を経て第4の光ファイバ14に入射される。第4の光ファイバ14を伝送された前記干渉光は、受光器(検出手段)4に入射され、干渉光強度が検出されるように構成される。」

「【0019】
また第1のミラー35は、第1の分岐光路33の光軸方向に沿って、進退可能な第1のステージ38(光路長補正手段)上に固定されており、これによりビームスプリッタ32から第1のミラー35までの距離を調節できるように構成されている。
第2のミラー36は、第2の分岐光路34の光軸方向に沿って、微動可能な第2のステージ39(光路長可変手段)上に固定されている。第2のステージ39は、所定周波数、所定振幅で振動可能であるとともに、該振動を続けながら第2の分岐光路34の光軸方向に微細な間隔で進退可能に構成されている。」

「【0023】
本実施形態の装置にあっては、第3の光ファイバ13から出射される光は、半透鏡22からの反射光(参照光)と被測定物3からの反射光(検査光)とを含んでいる。したがってこれをビームスプリッタ32で分岐した2つの分岐光(第1の分岐光路33の伝搬光および第2の分岐光路34の伝搬光)の光強度に関しては、いずれも参照光に由来するピークと検査光に由来するピークとを含んでおり、該2つのピークの時間軸上のずれは半透鏡2
2の反射面から被測定物3の前面までの距離Xに相当する。
そこで、前記第1の分岐光路33と第2の分岐光路34の光路長差を前記Xとほぼ等しくした状態で、前記2つの分岐光を合波して得られる干渉光強度を最大とすれば、参照光と検査光(前面からの反射光)とが干渉し合う状態(第1の状態)に初期設定することができる。
この後、第1のステージ38を固定し、光源光の焦点を被測定物3の後面上に移動させて、受光器4で検出される干渉光強度が最大となるように第2のステージ39を移動させれば、参照光と検査光(後面からの反射光)とが干渉し合う状態(第2の状態)に設定することができる。
【0024】
このように第1の状態から第2の状態に移行させたときの、前記測定部ステージ25の移動量(z)と前記第2のステージ39の移動量(ΔL)の値から、被測定物3の位相屈折率nと厚さtを、次のようにして導出することができる。
すなわち、低コヒーレンス光を被測定物3に対して集光させる集光レンズ23の開口数をS、被測定物3の位相屈折率をn、被測定物3の屈折率波長分散量をΔnとする。波長分散量Δn<<1と近似すると、被測定物3の位相屈折率nは下記数式(1)で表される。
数式(1)中の波長分散量Δnは、前記ΔLおよびzと、定数aおよびbを用いて、下記数式(2)で表される。ここで定数aおよびbは、実験的に得られており、被測定物3が固体である場合はaが0.0241、bが1.69となり、被測定物3が液体である場合はaが0.0460、bが1.53となる。
さらに被測定物3の厚さtは、ここで求められる被測定物3の位相屈折率n、波長分散量Δnと、前記ΔLとzを用いて下記数式(3)で表される。」

「【0034】
【実施例】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実施例1)
図1に示す構成の測定装置を作製した。
光源1としては、発振中心波長λC=820nmのSLDを用いた。このSLDの半値全幅(FWHM)は△λ=20nmである。
・・・」

上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、発明の詳細な説明における、対応する記載の段落番号を括弧書きで示す。以下同様。)

「薄膜の屈折率及び厚さなどを測定することができる装置(【0001】)であって、
光源光は低コヒーレンス光であることが好ましく、光源1としては、広帯域なバンド幅を有する光を出射できるものが好ましく用いられ、例えば発振中心波長λC=820nm、半値全幅(FWHM)は△λ=20nmであるSLD(super-luminescent diode:スーパールミネセントダイオード)であり(【0011】、【0034】)、
光源1から出射された光は、第1の光ファイバ11、サーキュレータ2、および第2の光ファイバ12を順に経て測定部20に至るように構成され(【0012】)、測定部20において、第2の光ファイバ12から出射された光は、コリメータ21で平行光とされた後、半透鏡22へ入射され、半透鏡22の透過光は集光レンズ23によって集光され、該集光光が被測定物3へ照射され、そして被測定物3の反射光(以下、検査光ということもある)が、集光レンズ23を経て半透鏡22を透過した後、コリメータ21を経て第2の光ファイバ12に入射され、一方、半透鏡22の反射光(以下、参照光ということもある)はコリメータ21を経て第2の光ファイバ12に入射され(【0014】)、検査光の光信号と参照光の光信号の両方を含む光が第2の光ファイバ12、サーキュレータ2、および第3の光ファイバ13を順に経て干渉部30に至るように構成されており(【0016】)、干渉部30では、第3の光ファイバ13から出射された光がコリメータ31で平行光とされた後、ビームスプリッタ(分岐手段かつ合波手段)32で、直進する第1の分岐光路33と、入射方向に対して直交する第2の分岐光路34に分岐され、第1の分岐光路33を進む光は、第1のミラー35で反射され、該反射光は第1の分岐光路33と平行に前記ビームスプリッタ32に入射され、一方、第2の分岐光路34を進む光は、第2のミラー36で反射され、該反射光は第2の分岐光路33と平行に前記ビームスプリッタ32に入射され、第1のミラー35の反射光と第2のミラーの反射光が合波されて干渉光を生成し、受光器(検出手段)4に入射されて干渉光強度が検出されるように構成され(【0017】)、
また第1のミラー35は、第1の分岐光路33の光軸方向に沿って、進退可能な第1のステージ38(光路長補正手段)上に固定されており、第2のミラー36は、第2の分岐光路34の光軸方向に沿って、微動可能な第2のステージ39(光路長可変手段)上に固定され(【0019】)、参照光と検査光(前面からの反射光)とが干渉し合う状態(第1の状態)に初期設定した後、第1のステージ38を固定し、光源光の焦点を被測定物3の後面上に移動させて、受光器4で検出される干渉光強度が最大となるように第2のステージ39を移動させれば、参照光と検査光(後面からの反射光)とが干渉し合う状態(第2の状態)に設定することができ、このように第1の状態から第2の状態に移行させたときの、前記測定部ステージ25の移動量(z)と前記第2のステージ39の移動量(ΔL)の値から、被測定物3の位相屈折率nと厚さtを導出することができる(【0023】、【0024】)、装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-266861号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0042】
[装置構成]
本発明に係る光画像計測装置の第1の実施形態の構成を図1、2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光画像計測装置1の光学系の概略構成の一例を表し、図2は、その制御系の構成の一例を表している。
【0043】
光画像計測装置1は、被測定物体の画像計測を行うための光学系(計測光学系)と、画像計測に先立って被測定物体を観察するための光学系(観察光学系)とを備えている。
【0044】
〔計測光学系〕
本実施形態に係る光画像計測装置1は、低コヒーレントな計測光Hを出力する広帯域光源2と、この計測光Hの偏光特性を直線偏光に変換する偏光板3と、直線偏光とされた計測光Hを平行光束にするとともに、そのビーム径を拡大するレンズ4、5と、ビーム径が拡大された計測光Hを信号光Sと参照光Rとに分割するとともに、それらを重畳して干渉光Lを生成するハーフミラー6と、参照光Rの偏光特性を直線偏光から円偏光に変換する波長板7と、参照光Rの進行方向に対して直交する反射面によって参照光Rを全反射する参照鏡8と、この参照鏡8の反射面の背面側に設けられたピエゾ素子9とを含んでいる。
【0045】
広帯域光源2は、SLDやLED(発光ダイオード)等により構成される。なお、市販の近赤外域SLDのコヒーレント長は30μm程度、LEDの場合には10μm程度である。広帯域光源2は、図2に示す駆動パルス発生器2Aから出力される所定の周波数のパルス信号により駆動されて、周期的なパルス状の計測光Hを出力する(詳細は後述する)。この計測光Hは、たとえば、50%dutyの矩形列のパルス光として出力される。広帯域光源2は、本発明の「計測光源」の一例に相当する。」

「【0050】
なお、本実施形態においては、反射体としての被測定物体O及び参照鏡8とハーフミラー6とによって形成されるマイケルソン型の干渉計が用いられていることから、分割手段と重畳手段とを同一のハーフミラー6(の異なる反射面)によって構成している。一方、マッハツェンダー型などの他の干渉計を採用する場合には、それぞれ個別の光学素子によって分割手段と重畳手段とを構成してもよい。また、分割手段及び重畳手段には、計測光Hや信号光Sや参照光Rの偏光特性に影響を与えない無偏光型の任意のビームスプリッタを採用することが望ましい。」

「【0057】
〔観察光学系〕
被測定物体Oを観察するための観察光学系は、たとえば可視領域の観察光Mを出射する観察光源12と、観察光Mを集光する集光レンズ13と、観察光Mの光路を信号光Sの光路に合成して観察光Mを被測定物体Oに照射するハーフミラー14とを含んでいる。ハーフミラー14は、本発明の「合成手段」の一例に相当する。また、観察光源12、集光レンズ13及びハーフミラー14は、本発明の「照明光学系」の一例に相当する。
【0058】
被測定物体Oに照射された観察光Mは、被測定物体Oにより反射され、信号光Sの光路に沿って導光され、ハーフミラー6を透過して干渉光Lの光路に沿って導光される。そして、観察光Mは、ビームスプリッタ15により反射されて干渉光Lの光路から分岐される。分岐された観察光Mは、反射ミラー16により反射され、結像レンズ17によって観察用CCDカメラ23の受光面上に結像される。
【0059】
ビームスプリッタ15は、本発明の「分岐手段」の一例に相当するもので、観察光Mの波長の光を反射し、干渉光Lの波長の光を透過させるダイクロイックミラーなどが用いられる。
【0060】
観察用CCDカメラ23は、本発明の「観察用受光手段」の一例に相当し、計測用CCDカメラ21、22と同様に、観察光検出用の蓄積型の2次元光センサアレイである。この観察用CCDカメラ23は、観察光Mを受光して光電変換を施して検出信号を生成し、その検出信号を信号処理部20に出力する。信号処理部20は、この検出信号に基づいて
、被測定物体Oの観察画像をモニタ装置30に表示させる。このモニタ装置30は、本発明の「表示手段」の一例に相当する。」

したがって、上記引用文献2には、
「被測定物体の画像計測を行うための光学系(計測光学系)と、画像計測に先立って被測定物体を観察するための光学系(観察光学系)とを備える光画像計測装置1であって(【0043】)、
計測光学系は、低コヒーレントな計測光Hを出力する広帯域光源2として近赤外域SLDを含むマイケルソン型の干渉計が用いられており(【0044】、【0045】、【0050】)、
観察光学系では、被測定物体Oに照射された観察光Mは、被測定物体Oにより反射され、結像レンズ17によって観察用CCDカメラ23の受光面上に結像され(【0057】、【0058】)、この観察用CCDカメラ23は、観察光Mを受光して光電変換を施して検出信号を生成し、信号処理部20に出力して、信号処理部20は、この検出信号に基づいて、被測定物体Oの観察画像をモニタ装置30に表示させる(【0060】)光画像計測装置」
が記載されている。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2008/0062429号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0092]The present invention takes advantage of the observed backscattering behavior for incipient caries and uses this effect, in combination with fluorescence effects described previously in the background section, to provide an improved capability for dental imaging to detect caries. The inventive technique, hereafter referred to as fluorescence imaging with reflectance enhancement (FIRE), not only helps to increase the contrast of images over that of earlier approaches, but also makes it possible to detect incipient caries at stages where preventive measures are likely to effect remineralization, repairing damage done by the caries infection at a stage well before more complex restorative measures are necessary. Advantageously, FIRE detection can be accurate at an earlier stage of caries infection than has been exhibited using existing fluorescence approaches that measure fluorescence alone.」

「[0125]Optical coherence tomography (OCT) is a non-invasive imaging technique that employs interferometric principles to obtain high resolution, cross-sectional tomographic images of internal microstructures of the tooth and other tissue that cannot be obtained using conventional imaging techniques. Due to differences in the backscattering from carious and healthy dental enamel OCT can determine the depth of penetration of the caries into the tooth and determine if it has reached the dentin enamel junction. From area OCT data it is possible to quantify the size, shape, depth and determine the volume of carious regions in a tooth.

[0126]In an OCT imaging system for living tissue, light from a low-coherence source, such as an LED or other light source, can be used. This light is directed down two different optical paths: a reference arm of known length and a sample arm, which goes to the tooth. Reflected light from both reference and sample arms is then recombined, and interference effects are used to determine characteristics of the underlying features of the sample. Interference effects occur when the optical path lengths of the reference and sample arms are equal within the coherence length of the light source. As the path length difference between the reference arm and the sample arm is changed the depth of penetration in the sample is modified in a similar manner. Typically in biological tissues NIR light of around 1300 nm can penetrate about 3-4 mm as is the case with dental tissue. In a time domain OCT system the reference arm delay path relative to the sample arm delay path is alternately increased monotonically and decreased monotonically to create depth scans at a high rate. To create a 2-dimensional scan the sample measurement location is changed in a linear manner during repetitive depth scans.

[0127]Referring to FIG. 13A , there is shown an embodiment of imaging apparatus 10 using both FIRE imaging methods and OCT imaging. Light sources 12 , lenses 14 , light source combiner 15 , polarizing beamsplitter 18 , optional field lens 22 , turning mirror 82 , analyzer 44 , imaging lens 66 , and sensor 68 act as an area imaging optical system and provide the FIRE area imaging function as described previously. Referring to FIG. 13C is shown an alternate embodiment of the imaging apparatus 10 using both FIRE imaging methods and OCT imaging in which only one light source 12 and lens 14 are present and the light source combiner 15 is not needed. Referring to FIG. 13D is shown a second alternate embodiment of the imaging apparatus 10 using both FIRE imaging methods and OCT imaging in which the field lens 22 is only used in the FIRE apparatus and is not in the OCT imaging path.

[0128]The FIRE area imaging works in combination with an OCT imaging optical system as described in the following. An OCT imager 70 directs light for OCT scanning into the optical path that is shared with the FIRE imaging components. Light from an OCT system 80 is directed through a sample arm optical fiber 76 and through a collimating lens 74 to a scanning element 72 , such as a galvanometer or a MEMS scanning device. The scanning element 72 can have 1 or preferably 2 axes, only one is shown. Light reflecting from the scanning element 72 passes through a scanning lens 84 and is incident onto a dichroic filter 78 . The dichroic filter 78 is designed to be transmissive to visible light and reflective for near-IR and longer wavelengths. This sample arm light is then reflected from dichroic filter 78 to tooth 20 through optional field lens 22 and turning mirror 82 . Scattered and reflected light returning from tooth 20 travels down the same optical path in reverse direction and is recombined with light from the reference arm (not shown) of OCT system 80 . The multiple dashed lines labeled a,b and c starting from scanning element 72 represent scan positions at different times during a single line scan and show that they are incident on and reflect from different locations of the tooth as shown in FIG. 13A . The position of the scanning element is computer controlled by control circuitry and/or computer system 110 . In general the processing apparatus 38 shown in FIG. 5 can be incorporated into control circuitry and/or computer system 110 . The maximum distance of travel along any axis is determined by the usable aperture of the lens 84 . Usually raster scan are performed along a desired axis with increments in the perpendicular axis.」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2009-511889号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、対象物のパターンの高さを測定する方法に関するものである。また、本発明は、その方法を実施する装置に関するものである。茲で、「パターンの高さを測定すること」とは、一つ又はそれ以上のパターンの高さを測定することを意味する。例えば、階段状の形状を有するパターンの場合、段ごとの高さを測定することが可能である。
【0002】
本発明の適用分野は、表面が構造化されて、光を反射するようになっている対象物のパターンの高さを測定する分野である。更に明確で且つ限定的でない適用分野の例は、特に、シリコンウェーハへのマイクロパターンのリソグラフィー及びエッチングである。」

「【0008】
低コヒーレンス測定干渉法に基づいた測定方法は、一般に、広スペクトル光源によって照射されるマイケルソン型干渉計を含む装置によって実施される。この方法では、対象物を透過する波長を使用することによって、単一光源からの参照ビームと、遅延線を用いることによって変化する参照ビームの光路との、対象物の上面及び下面によって後方散乱させられる光の光学相関を干渉計で実施することにより、物質の厚みを直接測定することが可能である。ウェーハの一つの面からの反射光と参照ビームとの光路が等しい時に、干渉ピークが検知器で得られるため、界面を探し出すことが可能となる。このようにして二つの界面を探し出すことにより、ウェーハの局部的な厚みを推測することが可能になる。従って、これらの方法は、連続する界面からの部分反射による振幅分割に基づいている。この種の方法の一般的な実施は長い間広く知られており、化学エッチングの問題に向けられたこの方法の一例が、EP 1 296 367 A1に記載されている。」

「【0039】
図2を参照しながら、本発明による測定装置の一実施例について説明する。その測定装置は、多色光を発光する発光手段1を有している。好ましくは、その発光手段は、赤外線中で幅が30ナノメートルの波長連続体を放射する超発光ダイオードを有している。その光源は、光ファイバー又は導波型又はこれらと同等の、光を外へガイドするための手段2に連結され、これにより、光源によって放射される対象波長のための対象伝搬モードの伝搬のみが許される。視準的態様で照射するように配置された光学素子の如き照射手段が、高さを測定することが求められる、対象物14の表面にエッチングされたパターン5上に入射光ビーム4を焦点合せさせることを可能にする。その視準光学素子は、ガイド手段2の端部21の平面と対象物の表面18とを共役させるように調整され、換言すると、視準光学素子によって端部平面のイメージと対象物平面18のイメージが互いに共役される。この場合、対象物の表面に入射する波面は平面である。

・・・

【0041】
集光され、フィルタリングされた光は、次に、対象波長及び対象伝搬モードのために、分割成分間における位相差に関する情報を抽出する手段に送られる。その抽出手段は,光学的相関計10を有し、その光学的相関計は、限定されるものではないが,一般的には,一定の長さのレフレクターアーム11(fixed length reflector arm)と、可動ミラー上に配置された可変長さのアーム12(variable length arm)(遅延線とも呼ばれている)を備えたマイケルソン型干渉計である。結果的に得られる干渉信号は、検出器13によって検出される。部分反射から生ずる分割成分の間に存在する光遅延に等しい光遅延がマイケルソン型干渉計の二つのアーム間で再生された場合に、部分反射を生じさせた表面の高さの相違に対応した遅延線位置に関して、最大振幅(又は干渉ピーク)が、干渉図形エンベロープ(interferogram envelope)内の検出器で得られる。図1に示したように、焦点が段パターンを覆っている場合には、その段の高さに対応する遅延線の位置に関して、ピークが干渉信号に基づいて検出される。覆われたパターンが、順に連なる二つの段から構成されている場合には、二つの段のうちの一つの又は段全体の高さに対応する遅延線の位置に関して、
三つのピークが干渉信号に基づいて検出される。換言すれば、位相差を有する三つの分割成分が検出される。」

「【0044】
本発明による測定装置は、エッチング操作中にin‐situ測定を行うために、エッチング装置に直接搭載することができる。図3は、本発明による測定装置を、プラズマエッチングに適用したものを示している。この測定装置は、まず、図2に示した装置と同じ部品を有している部分24を含み、更に、照射手段と連携して白色光で測定領域の撮像を可能にするカメラと、干渉計による測定が、例えば赤外線の如き非可視の対象波長を用いる場合に、可視ポインティングレーザービームを発する手段を有し、この可視レーザービームは、カメラでの正確な測定場所をピンポイントし、表示させることを可能にする。
【0045】
図3に示した測定装置は、更に、照射手段を有する部分24を対象物14に対して変位させるための手段15と、測定分析手段26を有している。その変位手段15は、二つ又は三つの軸線に沿ってモーターライズさせてもモーターライズさせなくてもよくて、対象物の表面上で入射光4の測定点を正確に移動させることを可能にする。測定分析手段26は、ソフトウェアによる測定分析手段と、測定又は分析されたデータを表示する手段を含んでいてもよい。」

5.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(米国特許出願公開第2006/0044566号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0045]FIG. 4 shows schematically an embodiment for measuring a sample 22 according to the invention. The embodiment of FIG. 4 is similar to that of FIG. 2 , except that a partial reflection (PR) reflector 26 is added between coupler 44 and lens system 40 . If sample 22 is a film with two reflective surfaces, detector 50 will receive six waves. By tuning modulator 17 , distance between reflector 26 and the first surface and thickness of the film can be obtained.

[0046]Besides reflectometry, the setup of FIG. 4 also serves as an OCT system, where 26 becomes a reference reflector. Assume sample 22 is highly scattering. Reflector 26 defines a reference optical path, while sample paths are determined by reflections from different levels in the sample. Optical path lengths are matched between the reference path and each sample path by tuning modulator 17 . 」

「[0056] For embodiments of FIGS. 4 and 5 , reflector 26 may be a PR coating on the end surface of fiber 46 , or a reflector disposed between fiber 46 and sample 22 . If reflector 26 is built between two fiber segments, FIGS. 8 to 10 show schematically three embodiments. 」

「[0059] In FIG. 10 , lens system 30 is introduced to collimate a beam from fiber 80 and couple a collimated beam 114 into fiber 82 . A PR filter 87 is placed perpendicular to beam 114 . Filter 87 has two surfaces coated with PR and AR coatings. Fibers 80 and 82 should have their ends angled and AR coated to reduce reflection. 」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

まず、引用発明における「薄膜の屈折率及び厚さなどを測定することができる装置」と、本願発明1における「構造物体(4)例えばウェハを検査するための顕微鏡装置」とは、「構造物体を検査するための装置」である点で共通するといえる。
また、引用発明においては、光源について、「低コヒーレンス光」で「広帯域なバンド幅を有する光を出射できるもの」が好ましいとされ、その例として「発振中心波長λC=820nm、半値全幅(FWHM)は△λ=20nmであるSLD」が挙げられているところから、「光源1から出射された光」は本願発明における「複数の赤外線波長を有する測定ビーム」に相当し、その「低コヒーレンス光」であることが好ましいとされる「光源1から出射された光」が「半透鏡22へ入射され」て「被測定物3の反射光(以下、検査光ということもある)」と「半透鏡22の反射光(以下、参照光ということもある)」とが「干渉部30に至るように構成されて」いるのであるから、引用発明と本願発明1とは、「複数の赤外線波長を有する測定ビームを含み、かつ、前記測定ビームの逆反射と1つの光学参照との干渉によって測定を行うことのできる低コヒーレンス赤外線干渉計」を含む「装置」である点で共通するといえる。
次に、引用発明においては、「第1のミラー35の反射光と第2のミラーの反射光が合波されて干渉光を生成し」て「干渉光強度が検出される」ものであって、「第1のミラー35」は、測定時に固定される「第1のステージ38(光路長補正手段)上に固定されており」、また「第2のミラー36は、・・・微動可能な第2のステージ39(光路長可変手段)上に固定され」て「参照光と検査光(後面からの反射光)とが干渉し合う状態(第2の状態)に設定する」ものであるから、上記「第1のミラー35」及び「第1のステージ38」並びに「第2のミラー36」及び「第2のステージ39」が、それぞれ本願発明1の「固定参照(44)を備えるアーム」並びに「時間遅延ライン(45)を備えるアーム」に相当する。また干渉計の測定原理を鑑みれば、その測定範囲が両ステージ間の光路長差及び前記第2のステージの微動可能な範囲によって決定されることや、対象範囲とする光学距離に近い光学距離に相当する測定範囲において発生する反射のみによって測定が行われるように調整が行われることは明らかといえる。そうすると、引用発明は「前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)が、固定参照(44)を備えるアームと時間遅延ライン(45)を備えるアームとを含むデコード干渉計を含み、前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)の測定範囲が、前記アーム間の光路長差によって及び前記遅延ライン(45)の最大ストロークによって決定され、前記物体に対する前記ビームが対象範囲とする光学距離に近い光学距離に相当する測定範囲において発生する前記測定ビームの逆反射(6)のみによって測定が行われるように、低コヒーレンス赤外線干渉計が調整される」点で本願発明1と共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
構造物体(4)例えばウェハを検査するための装置であって、
-複数の赤外線波長を有する測定ビーム(6)を含み、かつ、前記測定ビーム(6)の逆反射と1つの光学参照との干渉によって測定を行うことのできる低コヒーレンス赤外線干渉計(5)、
を含む装置において:
-前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)が、固定参照(44)を備えるアームと時間遅延ライン(45)を備えるアームとを含むデコード干渉計を含み、前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)の測定範囲が、前記アーム間の光路長差によって及び前記遅延ライン(45)の最大ストロークによって決定され、前記物体に対する前記ビームが対象範囲とする光学距離に近い光学距離に相当する測定範囲において発生する前記測定ビームの逆反射(6)のみによって測定が行われるように、低コヒーレンス赤外線干渉計が調整されること
を特徴とする装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「顕微鏡」装置であるのに対し、引用発明は撮像手段を有しておらず、「顕微鏡」装置ではない点。

(相違点2)本願発明1は「カメラ(1)、前記カメラ(1)において視野に応じて前記物体(4)の画像を生成することができ、かつ、前記物体(4)の側に配置された遠位レンズ(3)を含む光学画像化手段(2)」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1は「-前記測定ビームが遠位レンズ(3)を通過するように、及び、前記測定ビームが、画像化手段(2)の視野に実質的に含まれる測定領域中で前記物体(4)を照射するように、前記干渉計の光ファイバに由来する前記測定ビームを前記光学画像化手段(2)に導入するための光学結合手段(7)とコリメータ」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(相違点4)本願発明1は「前記測定ビームの一部が前記コリメータにおいて前記光ファイバ中に反射して前記光学参照を発生するように、前記光ファイバ及び前記コリメータが配置され」るという構成を備えるのに対し、引用発明は光ファイバ及びコリメータを有しているものの、「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成を備えていない点。

2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑みて、上記相違点4について検討する。
相違点4に係る本願発明1の「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成は上記引用文献2ないし5のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1ないし3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-16について
本願発明2ないし16も、本願発明1の「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明17について
本願発明17は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明18-19について
本願発明18ないし19も、本願発明17の「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成に対応する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明17と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1.理由1(特許法第17条の2第3項について)
原査定の理由1は、請求項1の「前記低コヒーレンス赤外線干渉計(5)が、固定参照(44)を備えるアームと時間遅延ライン(45)を備えるアームとを含むデコード干渉計を含み、前記物体(4)の界面を含む測定範囲内に発生する前記測定ビームの逆反射(6)のみによって、前記光学参照を有する使用可能な干渉を生じ、かつ前記光学画像化手段(2)内の寄生反射が前記干渉に有意に寄与しないように、前記アーム間の光路長差及び前記遅延ライン(45)の最大ストロークが調整される」との記載、及び請求項17の同様の記載について、該記載の技術的事項は、翻訳文等に記載した事項の範囲内のものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。
しかしながら、本件補正において請求項1及び17が補正された結果、これらの記載は翻訳文等の記載事項の範囲内となった。したがって、原査定を維持することはできない。

2.理由2(特許法第29条第2項について)
原査定の理由2は、請求項1-19について上記引用文献1ないし5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本件補正により補正された請求項1-19は、「測定ビームの一部が」「コリメータにおいて」「光ファイバ中に反射して」「光学参照を発生する」という構成、もしくはそれに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-19は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1、17の記載が不明確なため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正によって補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-19は、当業者が引用文献1ないし5に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-11 
出願番号 特願2013-506713(P2013-506713)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
P 1 8・ 562- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 俊久岸 智史  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 構造物体を検査するための光学装置及び方法  
代理人 山口 健次郎  
代理人 森田 憲一  

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