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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04J
管理番号 1335523
審判番号 不服2016-17544  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-24 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2013- 2608「受信装置及び干渉雑音電力推定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日出願公開、特開2014-135640、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年1月10日の出願であって,平成28年7月25日付けで拒絶理由が通知され,同年9月12日付けで手続補正されたが,同年10月4日付けで拒絶査定(原査定)され,これに対し,同年11月24日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,平成29年1月17日付けで前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定 (平成28年10月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,6に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2012/096299号

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって請求項1,6に「サブフレームの先頭の」という事項を追加する補正は,補正前の請求項1,6に記載された「第1OFDMシンボル」を限定するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また,審判請求時の補正による請求項8の補正は,補正前の「請求項1に記載の受信装置」から「受信装置」に変更するものであるが,請求項8が追加された手続補正と同日に提出された意見書には,請求項8は独立請求項としたものである旨記載されており,また,請求項8の記載からみて請求項1を引用する必要がないことが明らかであるから,特許法第17条の2第5項第3号に規定された誤記の訂正を目的とするものに該当する。
また,これらの補正が特許法第17条の2第3項及び第4項に適合することは明らかであり,後述の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-4に係る発明は,特許法第17条の2第6項に規定された独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,平成28年11月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の1-8に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて干渉雑音電力を推定する第1干渉雑音電力推定部と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力として,前記第1干渉雑音電力推定部により推定される干渉雑音電力と異なる干渉雑音電力を推定する第2干渉雑音電力推定部と,
を備え,
前記第1干渉雑音電力推定部は,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むサブフレームの先頭の第1OFDMシンボルに基づいて第1干渉雑音電力を推定する第1推定部と,
リファレンス信号を含み前記第1OFDMシンボルと異なる前記無線フレームの中の第2OFDMシンボルに基づいて第2干渉雑音電力を推定する第2推定部と,
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記第1干渉雑音電力推定部は,
前記第1OFDMシンボルと前記第2OFDMシンボルに基づいて第3干渉雑音電力を推定する第3推定部と,
前記第1干渉雑音電力と前記第2干渉雑音電力との比に応じて,前記第1干渉雑音電力及び前記第3干渉雑音電力のいずれか一方を第1OFDMシンボルにおける干渉雑音電力として選択し,前記第1干渉雑音電力と前記第2干渉雑音電力との比に応じて,前記第2干渉雑音電力及び前記第3干渉雑音電力のいずれか一方を第2OFDMシンボルにおける干渉雑音電力として選択する判定部と,
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいてチャネル推定を行うチャネル推定部を備え,
前記第2干渉雑音電力推定部は,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まない第3OFDMシンボルの受信信号と,前記チャネル推定部により推定されたチャネル推定値とに基づいて,前記第3OFDMシンボルにおける干渉雑音電力を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記第2干渉雑音電力推定部は,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルの平均受信電力から信号電力を減算した値と,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルの平均受信電力から信号電力を減算した値との間の比を,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて推定される干渉雑音電力から減じて,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力を推定する,
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項5】
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて干渉雑音電力を推定する第1干渉雑音電力推定部と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力として,前記第1干渉雑音電力推定部により推定される干渉雑音電力と異なる干渉雑音電力を推定する第2干渉雑音電力推定部と,
リファレンス信号とデータとを含んだ無線フレームにおける第1干渉雑音電力を推定する第3干渉雑音電力推定部を備え,
前記第1干渉雑音電力推定部は,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含む第1OFDMシンボルに基づいて第2干渉雑音電力を推定する第1推定部と,
リファレンス信号を含み前記第1OFDMシンボルと異なる前記無線フレームの中の第2OFDMシンボルに基づいて第3干渉雑音電力を推定する第2推定部と,
を備え,
前記第2干渉雑音電力推定部は,前記第1干渉雑音電力,前記第2干渉雑音電力及び前記第3干渉雑音電力に基づいて,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力を推定する,
ことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むサブフレームの先頭の第1OFDMシンボルに基づいて第1干渉雑音電力を推定し,
リファレンス信号を含み前記第1OFDMシンボルと異なる前記無線フレームの中の第2OFDMシンボルに基づいて第2干渉雑音電力を推定し,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力として,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルにおいて推定される干渉雑音電力と異なる干渉雑音電力を推定する,
ことを特徴とする干渉雑音電力推定方法。
【請求項7】
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて干渉雑音電力を推定する第1干渉雑音電力推定部と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力として,前記第1干渉雑音電力推定部により推定される干渉雑音電力と異なる干渉雑音電力を推定する第2干渉雑音電力推定部と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいてチャネル推定を行うチャネル推定部を備え,
前記第2干渉雑音電力推定部は,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まない第3OFDMシンボルの受信信号と,前記チャネル推定部により推定されたチャネル推定値とに基づいて,前記第3OFDMシンボルにおける干渉雑音電力を推定することを特徴とする受信装置。
【請求項8】
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて干渉雑音電力を推定する第1干渉雑音電力推定部と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力として,前記第1干渉雑音電力推定部により推定される干渉雑音電力と異なる干渉雑音電力を推定する第2干渉雑音電力推定部と,
を備え,
前記第2干渉雑音電力推定部は,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルの平均受信電力から信号電力を減算した値と,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルの平均受信電力から信号電力を減算した値との間の比を,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて推定される干渉雑音電力から減じて,前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力を推定する,
ことを特徴とする受信装置。」

第5 引用文献,引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2012/096299号(以下、「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0001] 本発明は,ユーザ装置及び測定方法に関する。
背景技術
[0002] 複数のセルから構成される移動通信システムでは,ユーザ装置(UE:User Equipment)が,1つのセルから他のセルに移動するときに,セルを切り替えて通信を継続する。このセルの切り替えを「ハンドオーバ」という。
[0003] 一般的に,ユーザ装置が,サービングセル(Serving Cell)から隣接セルに移動し,隣接セルからの信号が,サービングセル(元々通信を行っていたセル)からの信号より強くなった場合に,隣接セルにハンドオーバを行う。
[0004] 具体的には,ユーザ装置は,図1に示す手順に従ってハンドオーバを行う。
[0005] まず,S1において,ユーザ装置は,隣接セルの信号電力を測定する。次に,ユーザ装置は,隣接セルの信号電力が,以下の(式1)を満たすか否かについて確認する。
[0006] 隣接セルの信号電力>サービングセルの信号電力+オフセット… (式1)
(式1)が満たされた場合に,ユーザ装置は,S2において,そのイベント(Event A3)をネットワーク(基地局装置)に報告する。
[0007] なお,オフセットは,セル境界でサービングセルから隣接セルへのハンドオーバが頻繁に生じないために設けられる値であり,正の値でもよく,負の値でもよい。一般に,ハンドオーバが頻繁に生じないために設ける値としては,正の値が用いられる。
[0008] ネットワークは,S3において,イベント(Event A3)を受信すると,ユーザ装置が当該イベント(Event A3)が報告されたセルにハンドオーバすることを決定し,ハンドオーバ手順を実行する(S3)。
[0009] なお,上述したイベントは,「Event A3」と定義されているが,別のイベント,すなわち,「Event A3」以外のイベントとして定義されてもよい。
[0010] 上述した例における信号電力は,例えば,WCDMA (WidebandCode Division Multiple Access)や,HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の後継となるLTE(Long Term Evolution)においては,リファレンス信号の受信電力である「RSRP(Reference Signal Received Power)」であってもよい。
[0011] RSRPは,非特許文献1に定義されている。なお,上述のLTEは,「E-UTRA/E-UTRAN」と呼ばれてもよい。また,リファレンス信号は,より具体的には,共通リファレンス信号であってもよい。
[0012] なお,上述した例においては,サービングセルのRSRP及び隣接セルのRSRPに基づいてハンドオーバを行ったが,RSRPの代わりに,「RSRQ(Reference Signal Received Quality)が用いられてもよい。ここで,RSRQとは,RSRPを「RSSI(Received Signal Strength Indicator)で割った値であり,非特許文献1に定義されている。すなわち,RSRQは,以下の(式2)により算出される。
[0013] RSRQ=RSRP/RSSI … (式2)
RSSIとは,サービングセルからの希望信号や隣接セルからの干渉信号や熱雑音による雑音信号等の全ての信号の受信電力の合計,すなわち,総受信電力であり,非特許文献1に定義されている。RSSIは,「E-UTRAcarrier RSSI」と呼ばれてもよい。」

イ 「[0024] ところで,3GPPにおいて,LTE或いはLTE Advancedの1つの技術として,隣接セルからの干渉を抑圧することにより,スループットを増大する技術である「e-ICIC(Enhanced Inter Cell Interference Coordination)」が検討されている。かかるe-ICICでは,図3に示すように,ユーザ装置は,特定のサブフレームにおいて,上述のRSRP及びRSRQの測定を行う。
[0025] 図3において,干渉を与えるセルである隣接セルは,例えば,サブフレーム#2/#3/#6/#7において,下りリンクの信号を送信しない。この場合,干渉を受けるサービングセルで通信を行うユーザ装置は,下りリンクの信号が送信されないサブフレーム#2/#3/#6/#7でのみ,RSRP及びRSRQの測定を行う。
[0026] このようにRSRPやRSRQの測定を行うことにより,干渉が存在し,かつ,e-ICICによる干渉コーディネーションが行われる場合に,干渉の影響を排除したRSRP及びRSRQの測定を行うことが可能となる。
[0027] なお,どのサブフレームにおいて,隣接セルから下りリンクの信号が送信されないか,すなわち,どのサブフレームにおいて,ユーザ装置がRSRP及びRSRQの測定を行うかは,例えば,RRCのシグナリングにより,ネットワークからユーザ装置に通知される。」

ウ 「[0029] 上述したように,e-ICICが行われている場合のRSRP及びRSRQの測定は,特定のサブフレーム,すなわち,隣接セルからの干渉が存在しないサブフレームにおいて行われる。また,特定のサブフレームは,ネットワークからユーザ装置に通知される。
[0030] しかしながら,上述したRSRQの測定には,以下の問題が存在する。
[0031] 上述したように,RSRQが算出される際の分母であるRSSIは,図2に示すように,リファレンス信号を含むOFDMシンボルにおいてのみ測定される。
[0032] よって,サービングセルのタイミングと隣接セルのタイミングとが同期している場合に,図4に示すように,上述のRSSIの値に,隣接セルのリファレンス信号の電力が必ず含まれる。
[0033] 例えば,図4においては,RSSIは,サービングセルのOFDMシンボル#0/#4/#7/#11において測定されるため,必ず,かかるRSSIに,隣接セルのOFDMシンボル#0/#4/#7/#11のリファレンス信号の電力が含まれる。
[0034] この場合,RSRQの計算において,本来は排除する必要のある隣接セルからの信号の影響が含まれるため,RSRQを適切に計算することができないという問題が生じる。」

エ 「[0067] すなわち,干渉コーディネーションが適用されている場合のRSRQの測定においては,図7に示すように,1サブフレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルのRSSIを測定し,干渉コーディネーションが適用されていない場合のRSRQの測定においては,図6に示すように,1サブフレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルのRSSIを測定してもよい。
[0068] すなわち,干渉コーディネーションが適用されている場合のRSRQの測定においては,図7に示すように,OFDMシンボル#1/#2/#3/#5/#6/#8/#9/#10/#12/#13のRSSIを測定し,干渉コーディネーションが適用されていない場合のRSRQの測定においては,図6に示すように,ODFMシンボル#0/#4/#7/#11のRSSIを測定してもよい。」

オ 「[0095] 受信部105は,サービングセル及び隣接セルから送信される信号を受信するように構成されている。受信部105によって受信される信号には,RSRPの測定に用いられるリファレンス信号が含まれる。
[0096] 受信部105は,受信した信号を,RSSI測定部107及びRSRP測定部109に送るように構成されている。
[0097] RSSI受信部107は,測定OFDMシンボル決定部103より,RSSIを測定するOFDMシンボルを受け取り,かかるRSSIを測定するOFDMシンボルにおいて,RSSIを測定するように構成されている。
[0098] なお,RSSIは,上述したように,サービングセルからの希望信号や隣接セルからの干渉信号や熱雑音による雑音信号等の全ての信号の受信電力の合計である。」

カ 「[0122] 或いは,上述した例においては,干渉コーディネーションが行われている場合に,図7に示すOFDMシンボルでRSSIを測定し,干渉コーディネーションが行われていない場合に,図6に示すOFDMシンボルでRSSIを測定する例を示したが,代わりに,干渉コーディネーションが行われている場合には,図7に示すOFDMシンボルで測定するRSSIから算出されるRSRQ,及び,図6に示すOFDMシンボルで測定するRSSIから算出されるRSRQの両方を測定してもよい。
[0123] この場合,干渉コーディネーションが行われていない場合には,図6に示すOFDMシンボルで測定するRSSIから算出されるRSRQのみを測定してもよい。
[0124] この場合,干渉コーディネーションが行われている場合に,隣接セルのリファレンス信号の影響を受けたRSRQ,及び,隣接セルのリファレンス信号の影響を受けないRSRQの2通りが算出されるため,より適切に,RSRQの測定を行うことが可能となる。」

上記アないしカと図面の記載からみて,引用文献1には,以下の事項が記載されている。
a 上記イの[0024]及び図2より,3GPPにおいて,隣接セルからの干渉を抑圧することによりスループットを増大する技術である「e-ICIC」が検討され,該e-ICICでは,ユーザ装置は無線フレームの中の特定のサブフレームにおいてRSRQの測定を行うことが記載されている。
b 上記アの[0010]-[0013]より,RSRQは,
RSRQ=RSRP/RSSI
により算出され,RSRPは,リファレンス信号の受信電力,RSSIは,サービングセルからの希望信号や隣接セルからの干渉信号や熱雑音による雑音信号等の全ての信号の受信電力の合計である。
c 上記エの[0067]-[0068]より,e-ICICによる干渉コーディネーションが適用されている場合のRSRQの測定においては,図7のように,1サブフレーム中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルのRSSIを測定し,干渉コーディネーションが適用されていない場合のRSRQの測定においては,図6のように,1サブフレーム中のリファレンス信号を含むOFDMシンボル(#0/#4/#7/#11)のRSSIを測定してもよいことが記載されている。そして、これらを区別してRSSIを測定するのは、隣接セルから送信されるサブフレーム中のリファレンス信号の有無に応じて測定されるRSSIが異なる(上記ウ)ためといえる。
また、前記#0のOFDMシンボルはサブフレームの先頭OFDMシンボルのことである。
d 上記オの[0095]-[0098]及び図9より,ユーザ装置は,サービングセル及び隣接セルから送信される信号を受信する受信部105と,測定OFDMシンボル決定部103より,RSSIを測定するOFDMシンボルを受け取り,係るRSSIを測定するOFDMシンボルにおいて,RSSIを測定するRSSI受信部107を備えるものである。
e また,上記カの[0122]-[0124]には,上記cの代わりに,干渉コーディネーションが行われている場合に,図7に示すOFDMシンボルで測定するRSSIから算出されるRSRQ,及び,図6に示すOFDMシンボルで測定するRSSIから算出されるRSRQの両方を測定してもよいことが記載されている。

上記aないしeより,引用文献1には,特に,上記dの「RSSI受信部」が上記eのようにRSSIを測定する態様について,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「サービングセル及び隣接セルから送信される信号を受信する受信部と,RSSIを測定するRSSI受信部を備えるユーザ装置において,
前記RSSI受信部は,
複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルでRSSIを測定する第1機能と,
前記所定のサブフレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルでRSSIを測定する第2機能を有し,
前記リファレンス信号を含むOFDMシンボルで測定したRSSIと前記リファレンス信号を含まないOFDMシンボルで測定したRSSIは異なり,
前記第1機能では,無線フレームの中のサブフレームの先頭OFDMシンボル#0と,他のOFDMシンボル#4/#7/#11でRSSIを測定する
ユーザ装置。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを技術常識を勘案しつつ対比する。
a 引用発明の「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボル」は,本願発明1の「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボル」に相当する。
引用発明の「RSSI」は,「サービングセルからの希望信号や隣接セルからの干渉信号や熱雑音による雑音信号等の全ての信号の受信電力の合計」であるから,本願発明1の「干渉雑音電力」とは,「干渉雑音電力を含む所定値」である点で共通する。
そうすると,引用発明のRSSI受信部の「第1機能」と本願発明1の「第1干渉雑音電力推定部」とは,「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて,干渉雑音電力を含む所定値を得る第1手段」である点で共通する。
b 上記aと同様に,引用発明のRSSI受信部の「第2機能」と本願発明1の「第2干渉雑音電力推定部」とは,「前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力に関する所定値として,前記第1手段で得る干渉雑音電力を含む所定値と異なる干渉雑音電力を含む所定値を得る第2手段」である点で共通する。
c 引用発明の「サービングセル及び隣接セルから送信される信号を受信する受信部」「を備えるユーザ装置」は,本願発明1の「受信装置」に含まれる。

そうすると,本願発明1と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて,干渉雑音電力を含む所定値を得る第1手段と,
前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける干渉雑音電力に関する所定値として,前記第1手段で得る干渉雑音電力を含む所定値と異なる干渉雑音電力を含む所定値を得る第2手段と,
を備える受信装置。」

(相違点1)
一致点である「干渉雑音電力を含む所定値」について,本願発明1では「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中の」「OFDMシンボルに基づいて」「推定」した「干渉雑音電力」であるのに対し,引用発明では,「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中の」「OFDMシンボルで」「測定」した「RSSI」である点。

(相違点2)
相違点1に伴い,本願発明1では,「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルに基づいて干渉雑音電力を推定する第1干渉雑音電力推定部」と,「前記無線フレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルにおける」「干渉雑音電力を推定する第2干渉雑音電力推定部」を備えるのに対し,引用発明では,「RSSI受信部」が「複数のOFDMシンボルを含む無線フレームの中のリファレンス信号を含むOFDMシンボルでRSSIを測定する第1機能」と,「前記所定のサブフレームの中のリファレンス信号を含まないOFDMシンボルでRSSIを測定する第2機能」を備える点。

(相違点3)
一致点である「第1手段」について,本願発明1では,「前記無線フレームの中のリファレンス信号を含むサブフレームの先頭の第1OFDMシンボルに基づいて第1干渉雑音電力を推定する第1推定部と,リファレンス信号を含み前記第1OFDMシンボルと異なる前記無線フレームの中の第2OFDMシンボルに基づいて第2干渉雑音電力を推定する第2推定部」とを備えるのに対し,引用発明では,「無線フレームの中のサブフレームの先頭OFDMシンボル#0と,他のOFDMシンボル#4/#7/#11でRSSIを測定する」ものであって,先頭OFDMシンボルと他のOFDMシンボルとで個別に干渉雑音電力を含む所定値を得るものではない点。

まず,相違点1について検討する。
引用発明でRSSIを測定するのは,上記アより,該RSSIに基づいてRSRQを算出し,該RSRQを指標としてハンドオーバ等を行うためであるから,さらに干渉雑音電力を推定することまでは要しないといえる。そうすると,干渉雑音を推定すること自体は周知技術であるとしても,引用発明において,干渉雑音電力を推定することまでは想定されていないから,引用発明から,相違点1に係る本願発明の構成を想起することは困難である。
よって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

次に,相違点3について検討する。
ABSの送信フォーマットには,1つのサブフレーム中の先頭(0番目),4番目,7番目及び11番目のOFDMシンボルにリファレンス信号を含むNon-MBSFNと,先頭のOFDMシンボルのみにリファレンス信号を含むMBSFNがあるところ,本願発明では,ドミナントマクロセルから受信したサブフレームがMBSFNであった場合でも,第1推定部で先頭の第1OFDMシンボルに基づいて第1干渉雑音電力を推定し,第2推定部でリファレンス信号を含み第1OFDMシンボルと異なる第2(4番目,7番目及び11番目の)OFDMシンボルに基づいて第2干渉雑音電力を推定しているため,「リファレンス信号を含みデータを含まない無線フレームにおいて,OFDMシンボルに応じて異なる干渉雑音電力を算出することができる。このため,無線フレーム内でOFDMシンボルによって干渉雑音電力が変化しても,異なる干渉雑音電力毎にチャネル推定処理や復調処理を行うことができる。この結果,チャネル推定処理や復調処理における誤差が低減される。」(段落【0108】)という作用効果を奏するものと認められる。
一方,引用発明は,「無線フレームの中のサブフレームの先頭OFDMシンボル#0と,他のOFDMシンボル#4/#7/#11でRSSIを測定する」ものではあるが,先頭OFDMシンボル#0と,他のOFDMシンボル#4/#7/#11で,干渉雑音電力が異なり得ることの技術課題が記載されていないから,前記先頭OFDMシンボル#0のRSSIを測定する測定部と,他のOFDMシンボル#4/#7/#11のRSSIを測定する測定部を個別に設けることまでは想起できないというべきである。
よって,相違点3に係る本願発明の構成は,引用発明から当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

よって,相違点2について検討するまでもなく,本願発明1は引用発明から容易に発明することができたものではない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8と引用発明とを対比すると,いずれも上記相違点1,3に係る構成と同様の構成を有しているから,本願発明2-8についても,引用発明から容易に発明することができたものではない。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-8は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-12 
出願番号 特願2013-2608(P2013-2608)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 智彦  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
吉田 隆之
発明の名称 受信装置及び干渉雑音電力推定方法  
代理人 伊坪 公一  
代理人 宮本 哲夫  
代理人 青木 篤  
代理人 河野 努  

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