• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335580
審判番号 不服2017-2647  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-23 
確定日 2017-12-07 
事件の表示 特願2015- 8491「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 71100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月8日に出願した特願2012-131085号の一部を平成27年1月20日に新たな特許出願としたものであって、平成28年1月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年28年7月26日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月22日付け(発送日:11月29日)で補正却下の決定とともに拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年2月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1を補正する内容を含んでおり、平成28年3月16日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。

(補正前:平成28年3月16日付け手続補正)

「【請求項1】
遊技者にとって有利な特別利益状態の発生の有無を変動後の表示態様によって示唆する図柄画像と前記図柄画像による変動表示に関連する複数の予告演出画像とを含む演出表示画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段で生成された前記演出表示画像を表示画面に表示する画像表示手段と、
前記演出表示画像における優先順位を設定する優先順位設定手段と
を備えた遊技機において、
前記図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し、
前記優先順位設定手段は、所定範囲内の優先順位を、前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に割り当てており、
前記画像生成手段は、前記複数の予告演出画像のうちの第1予告演出画像と第2予告演出画像とが同時に表示されないように前記演出表示画像を生成し、
前記図柄画像による変動表示の終盤期間では、前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像との何れか一方が前記関連画像と重なり且つ前記数字画像と重ならないように表示可能であり、
前記第1予告演出画像を複数種類の第1画像の少なくとも一つにより、前記第2予告演出画像を複数種類の第2画像の少なくとも一つによりそれぞれ構成し、
前記第1画像と前記第2画像とに対して同じ優先順位を割り当て、
前記関連画像よりも前記数字画像に高い優先順位を割り当てた
ことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年2月23日付け手続補正)

「【請求項1】
演出表示画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段で生成された前記演出表示画像を表示画面に表示する画像表示手段と、
前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を割り当てる優先順位設定手段と
を備えた遊技機において、
前記演出表示画像は、変動パターンに従って変動表示しその変動後の表示態様によって遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する複数の図柄画像と、前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って択一的に選択表示される第1予告演出画像及び第2予告演出画像とを含み、
前記複数の図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し、
前記第1予告演出画像を複数種類の第1画像の少なくとも一つにより、前記第2予告演出画像を複数種類の第2画像の少なくとも一つによりそれぞれ構成し、
前記優先順位設定手段は、
前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像とに前記複数の図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当て、
前記数字画像に前記関連画像よりも高い優先順位を割り当てており、
前記画像生成手段は、
前記優先順位設定手段で割り当てられた各構成画像の優先順位に基づいて前記演出表示画像を生成するに際し、
前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像との一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の前記数字画像と重ならずに前記関連画像の一部と重なる前画像と、
該前画像に続いて前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる中画像と、
該中画像に続いて前記複数の図柄画像が停止する前に、前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに前記関連画像の一部に重なる後画像と、を生成する
ことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否

(1)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「画像生成手段」により「生成」される「演出表示画像」について、補正前の「遊技者にとって有利な特別利益状態の発生の有無を変動後の表示態様によって示唆する図柄画像と前記図柄画像による変動表示に関連する複数の予告演出画像とを含」み、「前記図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し」、「前記複数の予告演出画像のうちの第1予告演出画像と第2予告演出画像とが同時に表示されないように」「生成」され、「前記第1予告演出画像を複数種類の第1画像の少なくとも一つにより、前記第2予告演出画像を複数種類の第2画像の少なくとも一つによりそれぞれ構成」するものから、補正後の「変動パターンに従って変動表示しその変動後の表示態様によって遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する複数の図柄画像と、前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って択一的に選択表示される第1予告演出画像及び第2予告演出画像とを含み、前記複数の図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し、前記第1予告演出画像を複数種類の第1画像の少なくとも一つにより、前記第2予告演出画像を複数種類の第2画像の少なくとも一つによりそれぞれ構成」するものと、特定することにより、補正前の請求項1に記載された「演出表示画像」を限定するものである。

(2)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「画像生成手段」について、補正前の「前記図柄画像による変動表示の終盤期間では、前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像との何れか一方が前記関連画像と重なり且つ前記数字画像と重ならないように表示可能」であることから、補正後の「前記優先順位設定手段で割り当てられた各構成画像の優先順位に基づいて前記演出表示画像を生成するに際し、前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像との一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の前記数字画像と重ならずに前記関連画像の一部と重なる前画像と、該前画像に続いて前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる中画像と、該中画像に続いて前記複数の図柄画像が停止する前に、前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに前記関連画像の一部に重なる後画像と、を生成する」と特定することにより、補正前の請求項1に記載された「画像生成手段」を限定するものである。

(3)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「優先順位設定手段」について、補正前の「前記演出表示画像における優先順位を設定する」ものであり、「所定範囲内の優先順位を、前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に割り当て」、「前記第1画像と前記第2画像とに対して同じ優先順位を割り当て、前記関連画像よりも前記数字画像に高い優先順位を割り当てた」ものであることから、補正後の「前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を割り当てる」ものであり、「前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像とに前記複数の図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当て、前記数字画像に前記関連画像よりも高い優先順位を割り当て」るものと特定するものであるが、補正前の「前記第1画像と前記第2画像とに対して同じ優先順位を割り当て」に対応する事項が含まれてないから、補正前の請求項1に記載された「優先順位設定手段」の機能を拡張しており、「優先順位設定手段」を限定するものということはできない。

したがって、上記(3)に示したとおり、本件補正は、補正前の特許請求の範囲に記載された事項を拡張する補正を含むから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。そして、特許法第17条の2第5項に規定する他のいずれの事項を目的とするものにも該当しない。

(4)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件(付言)
本件補正について、上記2.のとおりであるが、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次に特定されるとおりのものである(A?Nについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 演出表示画像を生成する画像生成手段と、

B 前記画像生成手段で生成された前記演出表示画像を表示画面に表示する画像表示手段と、

C 前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を割り当てる優先順位設定手段と
を備えた遊技機において、

D 前記演出表示画像は、変動パターンに従って変動表示しその変動後の表示態様によって遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する複数の図柄画像と、前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って択一的に選択表示される第1予告演出画像及び第2予告演出画像とを含み、

E 前記複数の図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し、

F 前記第1予告演出画像を複数種類の第1画像の少なくとも一つにより、前記第2予告演出画像を複数種類の第2画像の少なくとも一つによりそれぞれ構成し、

G 前記優先順位設定手段は、

H 前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像とに前記複数の図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当て、

I 前記数字画像に前記関連画像よりも高い優先順位を割り当てており、

J 前記画像生成手段は、

K 前記優先順位設定手段で割り当てられた各構成画像の優先順位に基づいて前記演出表示画像を生成するに際し、

L 前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、前記第1予告演出画像と前記第2予告演出画像との一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の前記数字画像と重ならずに前記関連画像の一部と重なる前画像と、

M 該前画像に続いて前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる中画像と、

N 該中画像に続いて前記複数の図柄画像が停止する前に、前記他の複数の図柄画像を識別できるように、前記一方の予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに前記関連画像の一部に重なる後画像と、を生成する
ことを特徴とする遊技機。」

(2-1)刊行物1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願(出願遡及日:平成24年6月8日)前に頒布された刊行物である特開2010?201050号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0017】
また、本発明の遊技台において、上記識別図柄表示部が、上記識別画像をその識別画像を装飾する装飾画像の一部に重ねて表示するものであり、
上記制御部が、上記残りの図柄の装飾画像に対するその装飾画像が装飾する識別画像の位置を当該装飾画像の一部に重なる範囲で変更して当該残りの図柄を表示する表示態様に、その残りの図柄の表示態様を決定するものであってもよい。」

(イ)「【0029】
まず、図2を用いて、本発明の実施例1に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。」

(ウ)「【0037】
図柄表示装置110は、遊技中に、遊技者に識別される識別画像とその識別画像を装飾する装飾画像の組画像(図4(b)参照)を複数表示する液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)であり、本発明にいう識別図柄表示部の一例に相当する。また、この図柄表示装置110は、演出に用いる様々な画像も表示する。図2に示す図柄表示装置110は、表示画面を、左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cおよび演出表示領域110dの4つの表示領域に分割し、左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110bおよび右図柄表示領域110cはそれぞれ独立して識別画像と装飾画像の組画像図柄を表示し、演出表示領域110dは演出に用いる画像を表示する。さらに、各表示領域110a、110b、110c、110dの位置や大きさは、図柄表示装置110の表示画面内で自由に変更することを可能としている。なお、図柄表示装置110は、液晶ディスプレイに代えて、プラズマディスプレイや、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等他の表示デバイスを採用してもよい。」

(エ)「【0055】
図4(b)は、識別画像と装飾画像の組画像図柄の一例を示したものである。識別画像は遊技者に識別される数字を表す画像であり、装飾画像は、その識別画像を装飾する、各種のキャラクターや風呂敷包みや米俵の画像である。識別画像と装飾画像の組画像図柄は、本発明にいう図柄の一例に相当する。本実施例の組画像図柄は、「第1組」?「第10組」の10種類がある。第1特図始動口126または第2特図始動口128に球が入賞したことを所定の球検出センサが検出したことを条件にして、図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域に、「第1組」→「第2組」→「第3組」→・・・・「第9組」→「第10組」→「第1組」→・・・の順番で表示を切り替える「組画像図柄の変動表示」を行う。そして、大当たりを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに大当たりに対応する組画像図柄の組合せ(本実施例では、同一の組画像図柄の組合せ、すなわち各組画像図柄の識別画像の数字が一致している組合せ(例えば、「第2組-第2組-第2組」))を停止表示し、特別大当たりを報知する場合には、特別大当たりに対応する組画像図柄の組合せ(本実施例では、各組画像図柄の識別画像の数字が奇数番号であって、かつそれらの数字が一致している組合せ(例えば、「第1組-第1組-第1組」))を停止表示する。これらの組画像図柄の組合せは、本発明にいう所定の組合せの一例に相当する。一方、ハズレを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに大当たりに対応する組画像図柄の組合せ以外の組画像図柄の組合せを停止表示する。なお、保留している組画像図柄の変動表示があれば、その変動表示を開始する。」

(オ)「【0136】
ステップS306では、演出データ更新処理を行う。この演出データ更新処理では、後述する変動パターン選択処理で記憶する変動番号の更新を行うと共に、組画像図柄の変動表示を開始してからの経過時間に基づいて図柄表示装置110、スピーカ416、各種ランプ420および演出装置200の演出用可動体(例えば遮蔽手段250)等による演出を制御するための演出データの更新を行う。また、図柄表示装置110が、こうして更新した演出データに基づく組画像図柄や演出画像等を表示するように、次回実行する上記ステップS303の処理で図柄表示制御部500に出力するコマンド(例えば左に第7組の組画像図柄を停止することを指示するコマンド等)をRAM408に設けた送信コマンド格納領域に格納するとともに、後述するステップS307、308、309によるスピーカ416、各種ランプ420、および演出装置200の遮蔽手段250等の演出用可動体を制御する、ここで更新した演出データ(例えば遮蔽手段250を動作させる演出データ等)を、RAM408の設定領域にセットする。さらに、所定の条件が成立している場合には所定の演出を実行するか否か、例えばチャンスボタン146を用いた演出を行うか否か等の抽選を行う。」

(カ)「【0156】
<図柄表示制御部メイン処理>
図5に示す図柄表示制御部500は、図示省略したが、VDP(Vedeo Display Processor)、コンピュータグラフィックROM(C-ROM)、VRAM、入出力ポート等を有する。この図柄表示制御部500のVDPが実行する図柄表示制御部メイン処理について説明する。
・・・
【0159】
次に、ステップS1002で副制御部400からコマンドの受信があったかの確認を行い、コマンドの受信が無い場合には処理を抜け、コマンドを受信した場合にはステップS1003に進む。
【0160】
ステップS1003では受信したコマンドに基づいて図柄表示装置110の表示制御処理を行い、ステップS1002に戻る。このステップS1003では、受信したコマンドに基づいて、VRAMに、C-ROMに記憶された画像データを転送する。そして、転送した画像データをVRAMのうち、図柄表示装置110に出力するための記憶領域(以下、表示領域)に記憶させる。VDPは、1フレーム区間に相当するタイミング毎に図柄表示装置110に対して、表示領域に記憶された画像データを出力し、図柄表示装置110には画像データに基づいた画像が表示される。なお、C-ROMに記憶された表示予定の画像データを前もってVRAMの表示領域以外の所定の領域に転送しておき、所定の表示タイミングとなった場合に表示領域以外の所定の領域に記憶された画像データを表示領域に記憶させるようにしてもよい。VRAMの表示領域以外の画像データをVRAMの表示領域に記憶させることにかかる時間は、C-ROMに記憶された画像データをVRAMに転送させるよりも時間が短いため、VRAMに予め転送しておくことで、転送の際の処理時間を分散できる場合がある。」

(キ)「【0176】
また、この例では、同図(b)に示すようにリーチ状態になると、ロケットを模した演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる(同図(c)?同図(e))。なお、同図(c)や同図(d)に示す矢印は、演出画像600の動きを表すものであり、表示画面1100に表示されるものではない。この演出画像600の表示は、図8(c)に示す副制御部400による変動パターン選択処理において選択される演出データに基づく表示である。同図(c)および同図(d)に示すリーチ状態では、この演出画像600のロケットの胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示され、遊技者にはリーチ状態であることが報知される。リーチ状態では、変動表示を続ける中組画像図柄111bが、停止表示した左組画像図柄111aや右組画像図柄111cよりも目立っている。この演出画像600のロケットの胴体部601は、演出表示領域110dを右から左に向かって通り過ぎるが、その胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aや右組画像図柄111cにかかり、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cの一部が見えなくなる。すなわち、演出画像600は、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cの表示の一部を覆う画像である。同図(b)に示すように、リーチ状態になった時点では、停止表示している左組画像図柄111aや右組画像図柄111cそれぞれの識別画像501は、装飾画像502の右下部分の初期位置に表示されているが、ロケットを模した演出画像600が通過している最中は、左組画像図柄110および右組画像図柄111cそれぞれの識別画像501(図4(b)に示す第7組の“7”を表す識別画像)は、装飾画像502に対する位置をその装飾画像502の一部に重なる範囲で変更する。すなわち、同図(c)に示すように、右組画像図柄111cの装飾画像502に対して右下に表示されていた識別画像501は、ロケットの胴体部601が重ならない位置(上方の位置)へ移動する。また、同図(d)に示すように、右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの羽部分602を避けてさらに上方へ移動し、装飾画像502に対して右上に表示されている。一方、この同図(d)に示す状態では、左組画像図柄111aの識別画像501も、ロケットの胴体部601が重ならない位置(上方の位置)へ移動する。このように、この例では、移動しているロケットの外形に沿うように識別画像501が移動する。
【0177】
また、変動表示を続ける中組画像図柄111bをさらに目立たせるために、この例では、変動表示を続ける中組画像図柄111bを、演出画像600のロケットの羽部分602によって一瞬隠す。こうすることで、遊技者の注目は中組画像図柄111bにより向けられ、大いに盛り上がる。演出画像600のロケットの羽部分602が中組画像図柄111bを通過し終わると、ロケットの胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消え、中組画像図柄111bの変動表示が終了してその中組画像図柄111bは停止表示する(同図(e)?同図(f))。ここでは、図4(b)に示す特別大当たりとなる組画像図柄の組合せの一つである「第7組-第7組-第7組」が表示され、特別大当たりに当選したことが報知される。
【0178】
また、同図(e)に示す状態では、組画像図柄の組合せを確認することができるように、左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの羽部分602を避けてさらに上方へ移動し、装飾画像502に対して右上に表示されている。
【0179】
同図(f)に示すように、組画像図柄の組合せ(「第7組-第7組-第7組」)が確定すると、拡大表示されていた各組画像図柄110a?110cは、リーチ状態前の大きさに戻り、停止表示した中組画像図柄111bは奧へ引き戻るように見える。この際、右組画像図柄111cの識別画像501は初期位置へ戻り、装飾画像502の右下部分に表示されている。」

上記(ア)?(キ)の記載事項から、以下の事項が導かれる。

(a)上記(オ)【0136】には、「図柄表示装置110が、・・・組画像図柄や演出画像等を表示する」と記載されている。
また、上記(カ)【0156】、【0159】、【0160】には、「図柄表示制御部500は、・・・VDP(Vedeo Display Processor)、・・・等を有する。この図柄表示制御部500のVDPが実行する図柄表示制御部メイン処理について説明する。・・・副制御部400からコマンドの受信があったかの確認を行い、・・・コマンドを受信した場合には・・・受信したコマンドに基づいて図柄表示装置110の表示制御処理を行い、・・・VDPは、・・・図柄表示装置110に対して、表示領域に記憶された画像データを出力し、図柄表示装置110には画像データに基づいた画像が表示される」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、副制御部400からのコマンドに基づく図柄表示装置110の表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させる図柄表示制御部500が記載されているといえる。

(b)上記(a)より、刊行物1には、組画像図柄や演出画像等を表示する図柄表示装置110が記載されているといえる。
上記(ウ)【0037】には、「図柄表示装置110は、遊技中に、遊技者に識別される識別画像とその識別画像を装飾する装飾画像の組画像・・・を複数表示する液晶ディスプレイ・・・であり、・・・この図柄表示装置110は、演出に用いる様々な画像も表示する」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、組画像図柄や演出画像等を液晶ディスプレイに表示する図柄表示装置110が記載されているといえる。

(c)上記(イ)【0029】には、「パチンコ機100」と記載されている。

(d)上記(エ)【0055】には、「図柄表示装置110の左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域に、・・・組画像図柄の変動表示・・・を行う。そして、大当たりを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに大当たりに対応する組画像図柄の組合せ・・・を停止表示・・・する。・・・ハズレを報知する場合には、図柄表示領域110a?110cに大当たりに対応する組画像図柄の組合せ以外の組画像図柄の組合せを停止表示する」と、上記(キ)【0176】には、「リーチ状態になると、・・・演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる・・・。・・・演出画像600の表示は、・・・副制御部400による変動パターン選択処理において選択される演出データに基づく表示である」と、それぞれ、記載されている。
そうすると、刊行物1には、組画像図柄の変動表示を行い、停止表示される組合せによって、大当たりやハズレを報知する、左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域の組画像図柄と、リーチ状態になると表示され、変動パターン選択処理において選択される演出データに基づく表示である演出画像600とが記載されているといえる。

(e)上記(エ)【0055】には、「識別画像と装飾画像の組画像図柄の一例を示したものである。識別画像は遊技者に識別される数字を表す画像であり、装飾画像は、その識別画像を装飾する・・・画像である」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、組画像図柄は、識別画像とその識別画像を装飾する装飾画像とからなることが記載されているといえる。

(f)上記(キ)【0176】、【0177】には、「リーチ状態になると、ロケットを模した演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる・・・。・・・この演出画像600のロケットの胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示され・・・る。・・・演出画像600のロケットの羽部分602が中組画像図柄111bを通過し終わると、ロケットの胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消え」ると記載されている。
そうすると、刊行物1には、ロケットを模した演出画像600は、胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示されるときと、胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消えるときがあることが記載されているといえる。

(h)上記(キ)【0176】、【0177】には、「リーチ状態になると、ロケットを模した演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる・・・。・・・この演出画像600のロケットの胴体部601は、演出表示領域110dを右から左に向かって通り過ぎるが、その胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aや右組画像図柄111cにかかり、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cの一部が見えなくなる。すなわち、演出画像600は、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cの表示の一部を覆う画像である。・・・変動表示を続ける中組画像図柄111bを、演出画像600のロケットの羽部分602によって一瞬隠す」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、演出画像600は、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cを一部を覆い、中組画像図柄111bを隠すことが記載されているといえる。

(i)上記(ア)【0017】には、「識別画像をその識別画像を装飾する装飾画像の一部に重ねて表示する」と記載されている。

(j)上記(a)より、刊行物1には、図柄表示制御部500が記載されている。

(k)上記(a)より、刊行物1には、図柄表示制御部500は、表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させることが記載されている。

(l)上記(キ)【0176】には、「リーチ状態になると、ロケットを模した演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる・・・。・・・この演出画像600のロケットの胴体部601は、演出表示領域110dを右から左に向かって通り過ぎるが、その胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した・・・右組画像図柄111cにかかり、・・・右組画像図柄111cの一部が見えなくなる。・・・右組画像図柄111cの装飾画像502に対して右下に表示されていた識別画像501は、ロケットの胴体部601が重ならない位置(上方の位置)へ移動する。・・・右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの羽部分602を避けてさらに上方へ移動し、装飾画像502に対して右上に表示されている」と記載されている。
また、同(キ)【0176】には、「停止表示した左組画像図柄111aや右組画像図柄111c」、同(キ)【0177】には、「変動表示を続ける中組画像図柄111b」と記載されている。
そうすると、上記(k)とから、刊行物1には、図柄表示制御部500は、リーチ状態になると、中組画像図柄111bは変動表示を続け、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cは停止表示され、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎるロケットを模した演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した右組画像図柄111cにかかり、右組画像図柄111cの一部を見えなくするが、右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示する表示制御処理を行うことが記載されているといえる。

(m)上記(キ)【0177】には、「変動表示を続ける中組画像図柄111bを、演出画像600のロケットの羽部分602によって一瞬隠す」と記載されている。
そうすると、上記(k)とから、刊行物1には、図柄表示制御部500は、演出画像600のロケットの羽部分602が、変動表示を続ける中組画像図柄111bを隠す表示制御処理を行うことが記載されているといえる。

(n)上記(キ)【0176】、【0178】、【0179】には、「リーチ状態になると、ロケットを模した演出画像600が、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる・・・この演出画像600のロケットの胴体部601は、演出表示領域110dを右から左に向かって通り過ぎるが、その胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111a・・・にかかり、左組画像図柄111a・・・の一部が見えなくなる。・・・リーチ状態になった時点では、停止表示している左組画像図柄111a・・・の識別画像501は、装飾画像502の右下部分の初期位置に表示されているが、ロケットを模した演出画像600が通過している最中は、左組画像図柄110・・・の識別画像501・・・は、装飾画像502に対する位置をその装飾画像502の一部に重なる範囲で変更する。・・・左組画像図柄111aの識別画像501も、ロケットの胴体部601が重ならない位置(上方の位置)へ移動する。・・・左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの羽部分602を避けてさらに上方へ移動し、装飾画像502に対して右上に表示されている。・・・組画像図柄の組合せ・・・が確定する」と記載されている。
また、上記(イ)【0029】には、「パチンコ機100」と記載されている。
そうすると、上記(k)とから、刊行物1には、図柄表示制御部500は、組画像図柄の組合せが確定する前に、演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aにかかり、左組画像図柄111aの一部を見えなくするが、左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示する表示制御処理を行うパチンコ機100が記載されているといえる。

以上(ア)?(キ)の記載事項及び上記(a)?(n)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?nは発明の構成を分説するため当審で付した。)。

「a 副制御部400からのコマンドに基づく図柄表示装置110の表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させる図柄表示制御部500と、

b 組画像図柄や演出画像等を液晶ディスプレイに表示する図柄表示装置110とを備えた

c パチンコ機100において、

d 組画像図柄の変動表示を行い、停止表示される組合せによって、大当たりやハズレを報知する、左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域の組画像図柄と、リーチ状態になると表示され、変動パターン選択処理において選択される演出データに基づく表示である演出画像600と、

e 組画像図柄は、識別画像とその識別画像を装飾する装飾画像とからなり、

f ロケットを模した演出画像600は、胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示されるときと、胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消えるときがあり、

h 演出画像600は、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cを一部を覆い、中組画像図柄111bを隠し、

i 識別画像を装飾画像の一部に重ねて表示し、

j 図柄表示制御部500は、

k 表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させるに際し、

l リーチ状態になると、中組画像図柄111bは変動表示を続け、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cは停止表示され、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎるロケットを模した演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した右組画像図柄111cにかかり、右組画像図柄111cの一部を見えなくするが、右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示し、

m 演出画像600のロケットの羽部分602が、変動表示を続ける中組画像図柄111bを隠し、

n 組画像図柄の組合せが確定する前に、演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aにかかり、左組画像図柄111aの一部を見えなくするが、左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示する表示制御処理を行うパチンコ機100。」

(2-2)刊行物2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2008?167945号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ク)「【0094】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101およびRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。演出制御基板80において、演出制御用マイクロコンピュータ100は、内蔵または外付けのROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からのストローブ信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用マイクロコンピュータ100は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に、LCDを用いた可変表示装置9の表示制御を行わせる。」

(ケ)「【0504】
図99は、VDP109に内蔵されているレジスタの一例を示す説明図である。図99に示すレジスタは、VDP109における描画制御レジスタ95である。また、演出制御用CPU101は、CPUI/F92およびCGバスを介してコマンドをVDP109に送信することにより、レジスタにデータを書き込むことができる。
・・・
【0510】
優先度レジスタは、VRAM84における描画領域において画像データが重畳的に(幾重にも重なって)描画(展開)された場合に、いずれの画像データを優先的に表示するか(遊技者が視認できるように手前側に表示するか)を指定するために用いられる。」

(コ)「【0521】
図103に示す例では、レイヤ4には遠くの星の画像が表示され、レイヤ3には土星の画像が表示され、レイヤ2には木星の画像が表示され、レイヤ1には近くの星(例えば地球)が表示される。また、図3等に示したように、レイヤNには左・中・右の各列の表示領域に連続した3コマの飾り図柄が表示される。また、図108に示すように、レイヤYには予告画面(キャラクタが話す会話の内容を表示する画面)が表示される。
【0522】
この実施の形態では、画像データの優先度は、レイヤYの予告画面の画像データが最も高く、次いで、レイヤNの飾り図柄の画像データ、レイヤ1の近くの星の画像データ、レイヤ2の木星の画像データ、レイヤ3の土星の画像データ、レイヤ4の遠くの星の画像データの順になっている。優先度の高いレイヤの画像が手前に表示され、優先度の低いレイヤの画像が後ろに表示される。なお、この実施の形態では、画像データの優先度は、演出制御用CPU101からVDP109にコマンドが送信されることにより、優先度レジスタに設定される。」

(サ)「【0531】
図106は、演出制御プロセス処理における予告選択処理(ステップS801)を示すフローチャートである。予告選択処理において、演出制御用マイクロコンピュータ100は、まず、予告選択用乱数を抽出する(ステップS815)。そして、演出制御用マイクロコンピュータ100は、変動パターンに応じた予告選択テーブルを選択する(ステップS816)。
【0532】
図107に予告選択テーブルの例を示している。予告選択テーブルには、リーチを伴わない変動パターン(リーチなしの変動パターン)のときのテーブルと、ノーマルリーチを伴う変動パターンのときのテーブルと、スーパーリーチAを伴う変動パターンのときのテーブルと、スーパーリーチBを伴う変動パターンのときのテーブルと、スーパーリーチCを伴う変動パターンのときのテーブルと、スーパーリーチDを伴う変動パターンのときのテーブルとが設けられている。
【0533】
各予告選択テーブルにおいて、「予告なし」は予告演出を実行しないことを示している。「予告A」は大当りの発生する可能性が最も低い予告演出の態様であり、「予告B」は「予告A」よりも大当りの発生する可能性が高い予告演出の態様であり、「予告C」は「予告B」よりも大当りの発生する可能性が高い予告演出の態様であり、「予告D」は大当りの発生する可能性が最も高い予告演出の態様である。
【0534】
図107に示す予告選択テーブルでは、リーチを伴わない変動パターンのときは、常に「予告なし」が選択される。すなわち、この実施の形態では、リーチを伴わない変動パターンのときは、予告演出が実行されることはない。なお、リーチを伴わない変動パターンのときも、所定の態様の予告演出を実行するようにしてもよい。また、ノーマルリーチを伴う変動パターンのときのテーブルでは「予告D」に対して判定値が割り振られていないので、ノーマルリーチを伴う変動パターンのときは、「予告D」が選択されることはない。また、スーパーリーチDを伴う変動パターンのときは、「予告なし」が選択される割合が最も低い。従って、高い確率で予告演出が実行される。」

(2-3)刊行物3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2003?144690号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(シ)「【0058】主に表示制御装置150によって、表示制御手段、識別情報表示手段、変動表示領域装飾要素表示手段、表示優先順序制御手段、積層順序制御手段等の表示に関する手段が構成される。」

(ス)「【0074】図4は、本発明の実施の形態の遊技機における識別情報を説明する図である。特に、本図では識別情報(図柄)を構成する識別要素と識別情報装飾要素との組み合わせを示す。
・・・
【0079】識別要素と識別情報装飾要素とは、識別要素の方が識別情報装飾要素よりも表示の優先順序が高くなるように積層されて配置されている。すなわち、識別要素が手前(前面)に位置するように表示制御されている。より具体的には、識別情報を表示するために複数のレイヤが設けられており、この複数のレイヤ上に識別情報を構成する表示要素が配置されている。識別要素はレイヤ1(識別要素表示レイヤ)に配置されており、識別情報装飾要素はレイヤ2(識別情報装飾要素表示レイヤ)に配置されている。変動表示領域には、レイヤ1とレイヤ2とが積層されて、レイヤ1はレイヤ2より前面に配置されている。そして、識別要素の方が識別情報装飾要素よりも優先順序が高く表示されるように制御されている。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(n)とし、本願補正発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「組画像図柄や演出画像等」は、本願補正発明の「演出表示画像」に相当する。
引用発明における「図柄表示制御部500」が、「副制御部400からのコマンドに基づく図柄表示装置110の表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させる」ことは、本願補正発明における「画像生成手段」が、「演出表示画像を生成する」ことに相当することは明らかである。
よって、引用発明の「副制御部400からのコマンドに基づく図柄表示装置110の表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させる図柄表示制御部500」は、本願補正発明の「演出表示画像を生成する画像生成手段」に相当する。

(b)上記(a)より、引用発明の「組画像図柄や演出画像等」は、「図柄表示制御部500」での表示制御処理によって生じるから、本願補正発明の「前記画像生成手段」で生成された「前記演出表示画像」に相当し、引用発明の「液晶ディスプレイ」は、本願補正発明の「表示画面」に相当する。
よって、引用発明の「組画像図柄や演出画像等を液晶ディスプレイに表示する図柄表示装置110」は、本願補正発明の「前記画像生成手段で生成された前記演出表示画像を表示画面に表示する画像表示手段」に相当する。

(d)引用発明の「左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域の組画像図柄」は、本願補正発明の「複数の図柄画像」に相当し、変動パターンに従って変動表示を行うことは遊技機の技術分野において技術常識であるから、引用発明の「組画像図柄の変動表示を行」うことは、本願補正発明の「複数の図柄画像」を「変動パターンに従って変動表示」することに相当し、引用発明の「組画像図柄」が「停止表示される組合せ」は、本願補正発明の「複数の図柄画像」の「変動後の表示態様」に相当する。
そして、引用発明の「大当たりやハズレ」「を報知する」ことは、本願補正発明の「遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する」ことに相当する。
引用発明の「演出画像600」は、「リーチ状態になると表示され」るものであるから、「予告」「演出画像」ということができ、また、引用発明の「演出画像600」は、「変動パターン選択処理において選択される演出データに基づ」いて「表示」されるものであるから、本願補正発明の「第1予告演出画像及び第2予告演出画像」と、「前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って」「表示」される点で共通する。
よって、引用発明の「組画像図柄の変動表示を行い、停止表示される組合せによって、大当たりやハズレを報知する、左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域の組画像図柄と、リーチ状態になると表示され、変動パターン選択処理において選択される演出データに基づく表示である演出画像600」は、本願補正発明の構成Dと「前記演出表示画像は、変動パターンに従って変動表示しその変動後の表示態様によって遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する複数の図柄画像と、前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って表示される予告演出画像」である点で共通する。

(e)上記(d)より、引用発明の「組画像図柄」は、本願補正発明の「複数の図柄画像」に相当する。
そして、引用発明の「識別画像」、「その識別画像を装飾する装飾画像」は、それぞれ、本願補正発明の「数字画像」、「それ以外の関連画像」に相当する。
よって、引用発明の「組画像図柄は、識別画像とその識別画像を装飾する装飾画像とからな」ることは、本願補正発明の「前記複数の図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成」することに相当する。

(f、h、l、m、n)上記(d)より、引用発明の「演出画像600」は、「予告」「演出画像」といえる。

(f)引用発明の「ロケットを模した演出画像600」は、「胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示されるとき」と、「胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消えるとき」があることから、「複数種類」の「画像」の「少なくとも1つにより」「構成」されているといえる。
よって、引用発明の「ロケットを模した演出画像600は、胴体部601に「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が表示されるときと、胴体部601に表示されていた「リー(゜∀゜)ーチ」という文字が消えるときがあ」ることは、本願補正発明の構成Fと「予告演出画像を複数種類の画像の少なくとも一つにより構成」する点で共通する。

(h)引用発明の構成dの「左図柄表示領域110a、中図柄表示領域110b、右図柄表示領域110cの各図柄表示領域の組画像図柄」が、同構成hの「左組画像図柄111a」、「右組画像図柄111c」及び「中組画像図柄111b」と同義であることは明らかであるから、引用発明の「左組画像図柄111a」、「右組画像図柄111c」及び「中組画像図柄111b」は、上記(d)より、本願補正発明の「複数の図柄画像」に相当する。
そして、引用発明の「演出画像600」は、「左組画像図柄111aや右組画像図柄111cを一部を覆い、中組画像図柄111bを隠」すものであるから、「演出画像600」は、「左組画像図柄111a」、「右組画像図柄111c」及び「中組画像図柄111b」よりも優先して表示しているといえる。
よって、引用発明の「演出画像600は、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cを一部を覆い、中組画像図柄111bを隠」すことは、本願補正発明の構成Hと「予告演出画像」は「前記複数の図柄画像」の一部の「優先順位よりも高い優先順位」で表示する点で共通する。

(i)上記(e)より、引用発明の「識別画像」、「装飾画像」は、本願補正発明の「数字画像」、「関連画像」に相当する。
そして、引用発明の「識別画像を装飾画像の一部に重ねて表示」することは、「識別画像」を「装飾画像」よりも優先して表示しているといえる。
よって、引用発明の「識別画像を装飾画像の一部に重ねて表示」することは、本願補正発明の構成Iと「前記数字画像」を「前記関連画像よりも高い優先順位」で表示する点で共通する。

(j)上記(a)より、引用発明の「図柄表示制御部500」は、本願補正発明の「画像生成手段」に相当する。

(k)上記(a)の検討を踏まえると、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させるに際し」というのは、本願補正発明の「画像生成手段」が、「前記演出表示画像を生成するに際し」に相当することは明らかである。
よって、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させるに際し」というのは、本願補正発明の構成Kと、画像生成手段は、「演出表示画像を生成するに際し」である点で共通する。

(l)引用発明の「リーチ状態になる」ときは、本願補正発明の「前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間」に相当する。
また、引用発明の「変動表示を続け」る「中組画像図柄111b」は、本願補正発明の「最後に停止する変動中の前記図柄画像」に、引用発明の「停止表示され」る「左組画像図柄111aや右組画像図柄111c」は、本願補正発明の「最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像」に相当する。
そして、引用発明の「停止表示した右組画像図柄111c」は、本願補正発明の「最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像」「のうちの一方の図柄画像」に相当し、引用発明の「ロケットを模した演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した右組画像図柄111cにかかり、右組画像図柄111cの一部を見えなくする」ことは、本願補正発明の「予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像」「と重なる」ことに相当する。
そうすると、引用発明において、「演出画像600」は「右組画像図柄111cの一部を見えなくするが、右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示」されているものであり、上記(e)より、引用発明の「組画像図柄」は、「識別画像」と「装飾画像」とから構成されるものであることから、「演出画像600」は、「右組画像図柄111c」の「識別画像501」とは重ならず、「右組画像図柄111c」の「装飾画像」の一部と重なるものであり、「識別画像501」を含む「右組画像図柄111c」及び「左組画像図柄111a」を識別できるものといえる。
よって、上記(k)とから、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「リーチ状態になると、中組画像図柄111bは変動表示を続け、左組画像図柄111aや右組画像図柄111cは停止表示され、表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎるロケットを模した演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した右組画像図柄111cにかかり、右組画像図柄111cの一部を見えなくするが、右組画像図柄111cの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示」する表示制御処理を行う点は、本願補正発明の構成Lの「画像生成手段」が、「前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、」「予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の前記数字画像と重ならずに前記関連画像の一部と重なる」「画像」を「生成」する点で共通する。

(m)引用発明の「演出画像600のロケットの羽部分602」は、本願補正発明の「予告演出画像」に含まれるものである。
また、引用発明の「変動表示を続ける中組画像図柄111b」は、本願補正発明の「前記最後に停止する変動中の図柄画像」に相当する。
そうすると、引用発明の「演出画像600のロケットの羽部分602が、変動表示を続ける中組画像図柄111bを隠す」ことは、本願補正発明の「予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる」ことに含まれるものである。
そして、上記(l)での検討を踏まえると、引用発明の「演出画像600のロケットの羽部分602」は「中組画像図柄111bを隠す」ものであるから、本願補正発明の「前記他の複数の図柄画像」に相当する「左組画像図柄111aや右組画像図柄111c」を識別できることは明らかである。
よって、上記(k)とから、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「演出画像600のロケットの羽部分602が、変動表示を続ける中組画像図柄111bを隠」す表示制御処理を行う点は、本願補正発明Mの「画像生成手段」が、「前記他の複数の図柄画像を識別できるように、」「予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる」「画像」を「生成」する点で共通する。

(n)引用発明の「組画像図柄の組合せが確定する前」は、本願補正発明の「前記複数の図柄画像が停止する前」に相当する。
また、引用発明の「演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602」及び「ロケットの胴体部601や羽部分602」は、いずれも、本願補正発明の「予告演出画像」に含まれるものである。
そして、上記(l)での検討を踏まえると、引用発明の「停止表示した左組画像図柄111a」は、本願補正発明の「前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像」に相当し、引用発明の「演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aにかかり、左組画像図柄111aの一部を見えなくする」ことは、本願補正発明の「予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像」「と重なる」ことに相当する。
そうすると、引用発明において、「演出画像600」は「左組画像図柄111aの一部を見えなくするが、左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示」されているものであり、上記(e)より、引用発明の「組画像図柄」は、「識別画像」と「装飾画像」とから構成されるものであることから、「演出画像600」は、「左組画像図柄111a」の「識別画像501」とは重ならず、「左組画像図柄111a」の「装飾画像」の一部と重なるものであり、「識別画像501」を含む「左組画像図柄111a」及び「右組画像図柄111c」を識別できるものといえる。
また、引用発明の「パチンコ機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、上記(k)とから、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「組画像図柄の組合せが確定する前に、演出画像600のロケットの胴体部601の上部分や、羽部分602は、停止表示した左組画像図柄111aにかかり、左組画像図柄111aの一部を見えなくするが、左組画像図柄111aの識別画像501は、ロケットの胴体部601や羽部分602を避けて表示する表示制御処理を行う」点は、本願補正発明の構成Nの「画像生成手段」が、「前記複数の図柄画像が停止する前に、前記他の複数の図柄画像を識別できるように、」「予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに前記関連画像の一部に重なる」「画像と、を生成する」点で共通する。

(l、m、n)引用発明の「ロケットを模した演出画像600」は「表示画面1100の右から左に向かって通り過ぎる」ものであるから、「右組画像図柄111cにかかり」、続いて、「中組画像図柄111b」を隠し、続いて、「左組画像図柄111aにかか」ることは明らかであり、そうすると、引用発明の「図柄表示制御部500」が、引用発明の構成l?nに係る画像を、表示制御処理を行って表示することは、本願補正発明の構成L?Nの「画像生成手段」が、「前画像(本願補正発明の構成L)」と、「該前画像に続いて」「中画像(同構成M)」と、「該中画像に続いて」「後画像(同構成N)」と、を生成することに相当する。

(c)上記(l)?(n)の検討を踏まえると、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「右組画像図柄111c」、「左組画像図柄111a」の「一部を見えなく」したり、「中組画像図柄111b」を「隠し」たりする表示制御を行っているのは、本願補正発明の構成Cと「演出表示画像を構成する複数の構成画像」に「所定の範囲の優先順位を」つける機能を備えている点で共通している。
よって、引用発明の「パチンコ機100」は、本願補正発明の構成Cと「前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を」つける「手段」「を備えた遊技機」の点で共通する。

(k1)上記(k)での検討に加え、上記(c)の検討も踏まえると、引用発明の「図柄表示制御部500」は、優先順位をつける手段でつけられた「各構成画像の優先順位に基づいて」、「演出表示画像を生成」するといえるから、引用発明の「図柄表示制御部500」が、「表示制御処理を行って、組画像図柄や演出画像等を図柄表示装置110に表示させる際し」というのは、本願補正発明の構成Kと、画像生成手段は、優先順位をつける手段でつけられた「各構成画像の優先順位に基づいて前記演出表示画像を生成するに際し」である点で共通する。

上記(a)?(n)の対比により、本願補正発明と引用発明とは、

「A 演出表示画像を生成する画像生成手段と、

B 前記画像生成手段で生成された前記演出表示画像を表示画面に表示する画像表示手段と、

C’ 前記演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位をつける手段と
を備えた遊技機において、

D’ 前記演出表示画像は、変動パターンに従って変動表示しその変動後の表示態様によって遊技者に有利な特別利益状態の発生の有無を示唆する複数の図柄画像と、前記図柄画像の変動表示に関連して前記変動パターンに従って表示される予告演出画像とを含み、

E 前記複数の図柄画像を、数字画像とそれ以外の関連画像とで構成し、

F’ 予告演出画像を複数種類の画像の少なくとも一つにより構成し、

G’ 前記優先順位をつける手段は、

H’ 予告演出画像は前記複数の図柄画像の一部の優先順位よりも高い優先順位で表示し、

I’ 前記数字画像を前記関連画像よりも高い優先順位で表示し、

J 前記画像生成手段は、

K’ 優先順位をつける手段でつけられた各構成画像の優先順位に基づいて前記演出表示画像を生成するに際し、

L’ 前記複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、最後に停止する変動中の前記図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の前記数字画像と重ならずに前記関連画像の一部と重なる前画像と、

M’ 該前画像に続いて前記他の複数の図柄画像を識別できるように、予告演出画像が、前記最後に停止する変動中の図柄画像に重なる中画像と、

N’ 該中画像に続いて前記複数の図柄画像が停止する前に、前記他の複数の図柄画像を識別できるように、予告演出画像が、前記他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに前記関連画像の一部に重なる後画像と、を生成する遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位をつけ、各構成画像につけられた優先順位に基づいて演出表示画像を生成するに際し、本願補正発明は、演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を割り当てる優先順位設定手段を備え、優先順位設定手段は、予告演出画像に複数の図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当て、画像生成手段は、優先順位設定手段で割り当てられた各構成画像の優先順位に基づいて演出表示画像を生成するのに対し、引用発明では各構成画像の優先順位をどのようにつけているのかが明らかでない点(構成C、G、H、K)。

[相違点2]
予告演出画像として、本願補正発明は、変動パターンに従って択一的に選択表示される第1予告演出画像及び第2予告演出画像とを含むとしているのに対し、引用発明では、変動パターンに従って表示されるものではあるが、択一的に選択表示される第1予告演出画像及び第2予告演出画像を含むという特定はされてない点(構成D、F、H、L?N)。

[相違点3]
本願補正発明は、予告演出画像に図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当てているのに対し、引用発明では、予告演出画像に、図柄画像を構成する数字画像と関連画像の双方よりも高い優先順位をつけているのか明記されておらず、よって、そのための割り当てを行う手段の存在も定かでない点(構成C、G、H、I)。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
上記(2-2)に摘記した記載から、刊行物2には、演出制御用CPU101のVDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に内蔵されている優先度レジスタが、VRAM84における描画領域において画像データが重畳的に(幾重にも重なって)描画(展開)された場合に、いずれの画像データを優先的に表示するか(遊技者が視認できるように手前側に表示するか)を指定するために用いられること、すなわち、複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を「割り当て」る手段が記載されているといえる。
さらに、上記(2-2)に摘記した記載から、刊行物2には、優先度レジスタに設定された画像データの優先度は、レイヤYの予告画面の画像データが最も高く、次いで、レイヤNの飾り図柄の画像データの順になっていること、すなわち、予告画面の画像データに飾り図柄の画像データの優先順位よりも高い優先順位を「割り当て」ていることが記載されているといえる。
ここで、刊行物2に記載の「VDP109」、「優先度レジスタ」、「予告画面の画像データ」、「飾り図柄の画像データ」は、それぞれ、「画像生成手段」、「優先順位設定手段」、「予告演出画像」、「複数の図柄画像」ということができる。
そうすると、刊行物2には、演出表示画像を構成する複数の構成画像に所定範囲内の優先順位を割り当てる優先順位設定手段を備え、優先順位設定手段は、予告演出画像に複数の図柄画像の優先順位よりも高い優先順位を割り当て、画像生成手段は、優先順位設定手段で割り当てられた各構成画像の優先順位に基づいて演出表示画像を生成するという、本願補正発明の相違点1に係る構成が記載されているといえる。
そして、引用発明も画像生成手段と優先順位をつける手段を有するから、引用発明において、刊行物2に記載の上記事項を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
上記(2-2)に摘記したとおり、刊行物2には、「レイヤYには予告画面が表示される」こと、「変動パターンに応じた予告選択テーブルを選択」し、予告演出の実行の有無、予告演出の演出態様を決定することが記載されており、予告演出の演出態様として、「予告A」、「予告B」、「予告C」、「予告D」があることも記載されている。
そうすると、刊行物2には、予告演出において、変動パターンに従って択一的に選択表示される複数の予告画像が記載されているといえる。
遊技機の技術分野において、予告演出で用いる演出画像を単数とするか、何種類かから選択できるようにするかは、演出効果の向上等を考慮して当業者が適宜決定し得る事項である。
そうすると、引用発明の、予告演出画像として、刊行物2に記載のように、変動パターンに従って択一的に選択表示される複数の予告画像として、第1予告演出画像及び第2予告演出画像とを含むようにし、複数の図柄画像の変動期間の終盤期間に、前画像、中画像、及び後画像に用いられる予告演出画像として、刊行物2に記載のように、第1予告演出画像と第2予告演出画像とのいずれか一方を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明と刊行物2に記載された技術事項から、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
上記(2-3)に摘記したとおり、刊行物3には、識別要素と識別情報装飾要素からなる識別情報を表示するために複数のレイヤが設けられ、識別要素はレイヤ1に配置されており、識別情報装飾要素はレイヤ2に配置され、識別要素の方が識別情報装飾要素よりも優先順序が高く表示されるように制御することが記載されており、「識別要素」及び「識別情報装飾要素」は、「数字画像」及び「関連画像」といえるから、刊行物3には、数字画像に関連画像よりも高い優先順位を割り当てることが記載されているといえる。また、刊行物1の上記(2-1)(ク)【0176】、【0178】には、「識別画像」が「演出画像600」を避けて移動することが記載されており、このことは、引用発明における「演出画像600」に、「図柄画像」を構成する「識別画像」と「装飾画像」の双方よりも高い優先順位を設定することを示唆するものである。
そうすると、引用発明において、数字画像に関連画像よりも高い優先順位を設定し、予告演出画像に図柄画像よりも高い優先順位を設定することは、刊行物3に記載の事項及び刊行物1に記載の事項に基づいて、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明と刊行物3及び刊行物1に記載された事項から、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、本願補正発明の作用効果として、「予告演出画像が一方か他方かに関係なく、図柄画像の変動期間の終盤期間に先ず前画像を表示し、それに続いて中画像、後画像と順次表示できるので、終盤期間から後の画像表示による演出効果を向上させることが可能」であり、「前画像では最後に停止する変動中の図柄画像を除く他の複数の図柄画像を識別できるように、予告演出画像が他の複数の図柄画像のうちの一方の図柄画像の数字画像と重ならずに関連画像の一部と重なり、中画像では他の複数の図柄画像を識別できるように、予告演出画像が最後に停止する変動中の図柄画像に重なり、後画像では他の複数の図柄画像を識別できるように、一方の予告演出画像が、他の複数の図柄画像のうちの他方の図柄画像の数字画像に重ならずに関連画像の一部に重なるため、演出効果の向上を図りながらも、図柄画像を容易且つ確実に把握でき」、「前画像では予告演出画像が一方の図柄画像に、中画像では予告演出画像が変動中の図柄画像に、後画像では予告演出画像が他方の図柄画像に夫々重なり、前画像から中画像を経て後画像へと変化する間に、予告演出画像が一方の図柄画像から変動中の図柄画像を経て他方の図柄画像へと移動するため、予告演出画像の移動による演出性の面白さを創出できる利点もあ」ると主張している(6頁21行?7頁10行)。
この主張について検討すると、上記(3)で検討したとおり、予告演出画像が、前画像では一方の図柄画像の関連画像の一部に重なり、中画像では変動中の図柄画像に重なり、後画像では他方の図柄画像の関連画像の一部に重なるようにすることは、引用発明に記載されているから、上記請求人が主張する効果は、引用発明から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(6)小括
よって、本願補正発明は引用発明、刊行物1?3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反し、又は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本願補正発明は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年3月16日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で補正前として記載されたとおりのものである。

1.刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?3の記載事項、引用発明は、上記第2の3.(2)(2-1)?(2-3)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、上記第2の2.(1)、(2)で示した限定事項を省き、(3)で示したとおり、「第1予告演出画像」における「第1画像」と「第2予告演出画像」における「第2画像」とに同じ優先順位を割り当てるという構成を付加したものである。
しかしながら、当該付加される点について、刊行物2には、「レイヤYには予告画面が表示される」こと、「変動パターンに応じた予告選択テーブルを選択」し、予告演出の実行の有無、予告演出の演出態様を決定することが記載されており、予告演出の演出態様として、「予告A」、「予告B」、「予告C」、「予告D」があることも記載されているから、引用発明において、刊行物2に記載されるように、複数の予告演出画像のいずれか1つを用いるようにし、それらは、同一のレイヤに表示すること、すなわち、同じ優先順位を割り当てることは、当業者が容易になし得ることである。その余の点については、上記第2の3.(3)、(4)に記載したとおりである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明と刊行物1?3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-04 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-24 
出願番号 特願2015-8491(P2015-8491)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 蔵野 いづみ
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ