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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335582
審判番号 不服2017-4278  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-27 
確定日 2017-12-07 
事件の表示 特願2014-15525号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月3日出願公開、特開2015-139644号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成26年1月30日の出願であって、平成28年6月21日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して同年8月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成29年3月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成28年8月26日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における、
「遊技を行う遊技機であって、
遊技者の動作を検出可能な検出手段と、
特定演出を実行する特定演出実行手段と、
前記特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知を伴い前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出を実行する動作演出実行手段とを備え、
前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、
前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備えた
ことを特徴とする遊技機。」(以下「本件補正前請求項1」という。)

は、審判請求時に提出された手続補正書(平成29年3月27日付け)における、
「遊技を行う遊技機であって、
遊技者の動作を検出可能な検出手段と、
特定演出を実行する特定演出実行手段と、
前記特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知を伴い前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出を実行する動作演出実行手段とを備え、
前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、
前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、
前記特別演出実行手段は、
第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であり、
有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である
ことを特徴とする遊技機。」(以下「本件補正後請求項1」という。)

に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)

(2)また、上記(1)の補正にともない、【0008】についても、本件補正により、平成28年8月26日付けの手続補正書における、
「【0008】
(手段1)本発明による遊技機は、遊技を行う遊技機であって、遊技者の動作を検出可能な検出手段(例えば、プッシュボタン120など)と、特定演出(例えば、演出図柄の変動表示)を実行する特定演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100がステップS8009、S8106を実行する部分)と、特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知(例えば、操作指示画像の表示)を伴い検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出(例えば、報知ボタン演出)を実行する動作演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100がステップS8211?S8217を実行する部分)とを備え、特定演出実行手段は、特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、第1特定演出の実行中において、動作演出が実行されていないとき(例えば、非報知ボタン演出検出有効期間。図39参照)に検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備えたことを特徴とする。
そのような構成により、特別演出の興趣を向上させることができる。」
を、審判請求時に提出された手続補正書(平成29年3月27日付け)における、
「【0008】
(手段1)本発明による遊技機は、遊技を行う遊技機であって、遊技者の動作を検出可能な検出手段(例えば、プッシュボタン120など)と、特定演出(例えば、演出図柄の変動表示)を実行する特定演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100がステップS8009、S8106を実行する部分)と、特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知(例えば、操作指示画像の表示)を伴い検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出(例えば、報知ボタン演出)を実行する動作演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100がステップS8211?S8217を実行する部分)とを備え、特定演出実行手段は、特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、第1特定演出の実行中において、動作演出が実行されていないとき(例えば、非報知ボタン演出検出有効期間。図39参照)に検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、特別演出実行手段は、第1演出態様と第2演出態様とにより特別演出を実行可能であり、有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ第2演出態様により特別演出を実行可能であることを特徴とする。
そのような構成により、特別演出の興趣を向上させることができる。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)

2.補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についての、以下のア?エに挙げる補正事項を含むものである。(以下、「補正事項ア」などという。)
ア 上記本件補正前請求項1に記載された発明特定事項である「特別演出実行手段」について、「第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であ」る点を追加する補正

イ 同じく「特別演出実行手段」について、「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」点を追加する補正

ウ 上記アに対応し、【0008】に対し「特別演出実行手段」について、「第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であ」る点を追加する補正

エ 上記イに対応し、【0008】に対し「特別演出実行手段」について、「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」点を追加する補正

(2)新規事項の有無についての検討
上記(1)の各補正事項により特許請求の範囲に加入された事項が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項であるかについて検討する。

ア 補正事項ア
上記「特別演出実行手段」が実行する「特別演出」は、上記本件補正前・本件補正後の請求項1(以下単に「補正前後の請求項1」ということがある。)の何れにおいても「前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて」実行されるものと特定されており、ここでの「第1特定演出」は、前記補正前後の請求項1の何れにおいても、「前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり」と、「特定演出実行手段」が実行する第1、第2の2つの「特定演出」のうちの一つとして特定されるものである。
前記2つの「特定演出」及び「特別演出」については、願書に最初に添付された明細書の(以下同様につき省略)【0010】において、
「特定演出実行手段は、第1特定演出(例えば、ノーマルリーチ演出)と該第1特定演出の後に実行される第2特定演出(例えば、スーパーリーチ演出)とを実行可能であり、特別演出実行手段は、特定演出実行手段による第1特定演出の実行中において、動作演出実行手段によって動作演出が実行されていないとき(例えば、図39に示す非報知ボタン演出検出有効期間)に検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する」
と説明されていることから、「特別演出」には実施例に記載されたノーマルリーチ演出(補正前後の請求項1の「第1特定演出」に対応。)中の非報知ボタン演出検出有効期間に遊技者が操作ボタンを操作したことにより実行される演出(「非報知ボタン演出」)が対応する。そして、該「特別演出」に複数の演出態様があることについては【0287】の、
「非報知ボタン演出を「第1演出態様」、「第2演出態様」または「第3演出態様」で実行可能であり、それぞれ表示される非報知ボタン演出画像が異なる。図33(B)に示すように、「第1演出態様」では、「??」と文字が示された第1非報知ボタン演出画像が表示され、「第2演出態様」では、「チャンス!」と文字が示された第2非報知ボタン演出画像が表示され、「第3演出態様」では、「大チャンス!」と文字が示された第3非報知ボタン演出画像が表示される。」
なる記載により裏付けられる。
よって、上記補正事項アは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。
対応する上記補正事項ウについても同様である。

イ 補正事項イ
上記補正事項イの
「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」
とは、(「第2の演出態様」が実行される場合のみ「特定の有利状態」である、のではなく)「第2の演出態様」が実行可能であるのは「特定の有利状態」である場合のみである、ことである。
そこで、上記アで、本件補正後請求項1の「特別演出」の「第1演出態様」、「第2演出態様」に対応すると認定した、願書に最初に添付した明細書に記載された「第1演出態様」?「第3演出態様」なる各演出態様の何れかが、前記補正事項イの要件を満足するかについて検討する。

(ア)特別演出(非報知ボタン演出)の各演出態様と、大当りなど有利状態との関係については、以下の記載がある。
(a)「【0287】
図33(B)に示すように、この実施の形態では、非報知ボタン演出を「第1演出態様」、「第2演出態様」または「第3演出態様」で実行可能であり、それぞれ表示される非報知ボタン演出画像が異なる。図33(B)に示すように、「第1演出態様」では、「??」と文字が示された第1非報知ボタン演出画像が表示され、「第2演出態様」では、「チャンス!」と文字が示された第2非報知ボタン演出画像が表示され、「第3演出態様」では、「大チャンス!」と文字が示された第3非報知ボタン演出画像が表示される。・・・。
【0288】
図33(B)に示す非報知ボタン演出態様決定テーブルにおいて特徴的なことは、表示結果がはずれよりも大当りである方が、また、同じ表示結果であっても変動パターンの期待度が高くなるほど、「第1演出態様」よりも「第2演出態様」、「第2演出態様」よりも「第3演出態様」と決定される割合が高くなるように判定値が設定されていることである。このような特徴を備えていることによって、「第1演出態様」よりも「第2演出態様」、「第2演出態様」よりも「第3演出態様」が実行されたときの方が、有利な演出図柄の変動態様(例えば、スーパーリーチに発展する)となる割合を高くすることや、表示結果が大当りとなる割合を高くすることができる。つまり、「第1演出態様」よりも「第2演出態様」、「第2演出態様」よりも「第3演出態様」の方が、期待度が高い演出態様となる。したがって、非報知ボタン演出が実行されることに対して遊技者に期待感を持たせることができるとともに、いずれの演出態様で実行されるかについて注目させることができる。
・・・
【0290】
なお、この実施の形態では、報知ボタン演出の演出態様を2種類設ける場合について説明するが、これに限らず、3種類以上設けていてもよいし、1種類であってもよい。また、非報知ボタン演出の演出態様を3種類設ける場合について説明するが、これに限らず、3種類以上設けていてもよいし、2種類以下であってもよい。」

(b)「【0337】
なお、この実施の形態では、報知ボタン演出および非報知ボタン演出を演出図柄の変動中に行う場合について説明したが、1回以上行うものであってもよい。例えば、演出図柄の変動開始後に1回目の非報知ボタン演出を行い、リーチが成立したり、擬似連が所定回数行われたりすれば、2回目を行うようにしてもよい。また、この場合には、1回目に表示される非報知ボタン演出画像と、2回目に表示される非報知ボタン演出画像とで、表示される内容や種別が異なるようにしてもよい。例えば、1回目には、有利な演出図柄の変動態様(例えば、スーパーリーチに発展する)となる可能性を示唆する内容が示された非報知ボタン演出画像を表示し、2回目には、大当りとなる可能性や擬似連が継続する可能性を示唆する内容が示された非報知ボタン演出画像を表示するものであってもよい。
【0338】
また、この実施の形態では、報知ボタン演出および非報知ボタン演出を演出図柄の変動中に行う場合について説明したが、実行されるタイミングや示唆する内容はこれに限らず、例えば、演出図柄の変動停止(はずれ図柄の停止)時に、再抽選によって、はずれ図柄から大当り図柄に変化することを示唆するために行うものであってもよい。また、演出図柄の変動停止(大当り図柄の停止)時や、大当り遊技中に、大当り種別が通常大当りから確変大当りに昇格することや、ラウンド数が増加することを示唆するために行うものであってもよい。
【0339】
また、報知ボタン演出および非報知ボタン演出によって示唆される内容は、例えば、大当り時の大当り種別が確変大当りである確変期待度であってもよいし、大当り種別によって大当り遊技時のラウンド数が異なる構成であれば、ラウンド数が多くなるラウンド数期待度であってもよい。また、例えば、突然確変大当りが発生したことが認識できない潜伏確変状態に制御される構成であれば、潜伏確変状態に制御されている潜伏期待度であってもよい。また、例えば、大当り遊技後の確変状態や時短状態に制御される回数が設定される構成であれば、それらの回数に対する期待度であってもよい。」

(c)「【0346】
また、上記の実施の形態において、「割合が異なる」とは、A:B=70%:30%やA:B=30%:70%のような関係で割合が異なるものだけにかぎらず、A:B=100%:0%のような関係で割合が異なるもの(すなわち、一方が100%の割り振りで他方が0%の割り振りとなるようなもの)も含む概念である。」

(d)図9から、可変表示結果が「大当り(突然確変大当りを除く)」の場合には変動パターンは「ノーマル当り」または「スーパー当り」のいずれかが、可変表示結果が「突然確変大当り/小当り」の場合には変動パターンは「特殊当り」のみが、それぞれ設定され、これら以外の変動パターンはいずれも「はずれ」の際にのみ設定されることを読み取ることができる。
また、前記図9から読み取ることができる事項を前提とすれば、図33(B)から、非報知ボタン演出の「第1演出態様」はすべての「はずれ」と「当り」に対応する変動パターンついて決定され得、「第2演出態様」・「第3演出態様」は一部の「はずれ」と、「大当り(突然確変大当りを除く)」に対応する変動パターンについて決定され得るべく設定されることを読み取ることができる。
また、同じく図33(B)から、前記のとおり可変表示結果が「大当り(突然確変大当りを除く)」に対応する「ノーマル当り」及び「スーパー当り」の変動パターンの場合についてみると、第1演出態様よりも第2演出態様の方が該両変動パターンについて決定割合が高く、さらに第2演出態様より第3演出態様の方が、「ノーマル当り」については同じ決定割合で「スーパー当り」については決定割合が増加していることから、第1、第2、第3演出態様の順に、「大当り(突然確変大当りを除く)」の場合の決定割合が段階的に高く設定されていることと、可変表示結果が「突然確変大当り/小当り」の場合に対応する「特殊当たり」変動パターンの場合には、第2・第3演出態様の決定割合が0%で第1演出態様の決定割合が100%であることを読み取ることができる。

(イ)検討
審判請求人が審判請求書において上記補正事項イの根拠と主張する上記【0287】の、
「表示結果がはずれよりも大当りである方が、また、同じ表示結果であっても変動パターンの期待度が高くなるほど、「第1演出態様」よりも「第2演出態様」、「第2演出態様」よりも「第3演出態様」と決定される割合が高くなる」
なる記載から、例えば表示結果が「大当り」の場合には、第1、第2、第3演出態様の順に決定割合が段階的に高くなり、しかも、「大当り」に対し大当り期待度が異なる変動パターンが複数用意されている場合には、該変動パターン間についても、前記期待度が高いものほど決定割合が高くなるように設定する技術事項を読み取ることができる。
ここで、単純化のために、仮に大当りに対し一つの変動パターンしか設定されていない場合を想定した場合(上記図33(B)の「特殊当り」に「第1演出態様」しか設定されていない場合に対応する)、上記【0287】の記載事項は、前記3つの演出態様間で、大当りかはずれかの割合が段階的に相違することを意味し、3つの演出態様のうち2つで当該割合が等しいような場合は、前記【0287】の「「第1演出態様」よりも「第2演出態様」、「第2演出態様」よりも「第3演出態様」と決定される割合が高くなる」なる条件に合致しないため含まれない。よって、大当りの場合に該3つの演出態様のうち2つの決定割合が0%で一つのみ100%、といった決定割合の設定は選択し得ない。また、仮に前記【0287】に記載された前記条件に3つの演出態様のうち2つで当該割合が等しい場合が含まれるとしても、大当りの場合に該3つの演出態様のうち2つの決定割合が0%で一つのみ100%なる設定は、「はずれ」についてみると該3つの演出態様のうち2つの決定割合が100%で一つのみ0%であることとなり、2つの演出態様が共に100%という実現不可能な設定となることからも、前記設定は選択し得ないといえる。
また、同じく審判請求人が審判請求書において図9とともに上記補正事項イの根拠と主張する上記図33(B)に示された非報知ボタン演出態様決定テーブルの設定例についてみても、「非報知ボタン演出の「第1演出態様」はすべての「はずれ」と「当り」に対応する変動パターンついて決定され得、「第2演出態様」・「第3演出態様」は一部の「はずれ」と、「大当り(突然確変大当りを除く)」に対応する変動パターンについて決定され得るべく設定され」((ア)(d))ており、いずれの演出態様も、表示結果が「当り」の場合のみ選択されるものではない。「大当り(突然確変大当りを除く)」、「突然確変大当り/小当り」個別にみても、これら何れかの当り場合のみ何れかの演出態様が選択されないことは同様である。

以上のとおりであるから、上記補正事項イの「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」に該当する例を、審判請求人が審判請求書において上記補正事項イの根拠と主張する【0287】、図9、図33(B)から読み取り、または導くことができない。

また、可変表示結果と非報知ボタン演出の演出態様との関係についてはほかに(ア)に挙げた【0288】、【0337】?【0339】にも記載があるが、これら記載を考慮しても補正事項イに該当する技術事項を読み取り、または導き出せないことは明らかである。

ところで、上記【0290】には「この実施の形態では、・・・非報知ボタン演出の演出態様を3種類設ける場合について説明するが、これに限らず、3種類以上設けていてもよいし、2種類以下であってもよい。」との記載があり、上記【0346】には、「上記の実施の形態において、「割合が異なる」とは、A:B=70%:30%やA:B=30%:70%のような関係で割合が異なるものだけにかぎらず、A:B=100%:0%のような関係で割合が異なるもの(すなわち、一方が100%の割り振りで他方が0%の割り振りとなるようなもの)も含む概念である。」なる、変形例に関する記載がある。
前記【0346】の「割合が異なる」には、「割合が高い」などの他の比較表現が含まれるものと広義に解釈すれば、これら変形例に関する記載事項と、上記【0287】、図9、図33(B)の記載事項とをもとに、非報知ボタン演出の演出態様が「第1演出態様」と「第2演出態様」との2種類であり、上記【0287】において、可変表示結果が「はずれ」の場合と「大当り」の場合に対しそれぞれ一つの変動パターンしか設定されておらず、さらに、「はずれ」の場合は100%「第1演出態様」に決定され、「大当り」の場合には100%「第2演出態様」に決定される、という設定(以下「サポート設定」という。)とすることが、当初明細書等の記載事項から導出できる、との主張がなされうる。
この場合は「第2演出態様」が「大当り」の場合のみ実行可能であるといえるから、上記補正事項イに対応することとなる。
しかし、前記サポート設定では結局、可変表示結果導出前の変動パターン自体と、該変動中の非報知ボタン演出とにおいて、大当りかはずれかの確定演出が行われてしまうことになるから、変動表示の意味が失われ、当該分野の技術常識に照らし、そのような設定が選択される余地があるとはいえない。
よって、前記サポート設定に該当する実施態様が文言上導出できるとしても、それは実施例に対し複数の変形例を列挙した結果、それらの特定の組合せとして非意識的に当初明細書等の記載事項に含まれていたに過ぎず、前記のとおり技術常識に照らし意味をなさないものである以上、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」にはあたらない。

したがって、本件補正のうち上記補正事項イは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、これらすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
また、上記補正事項イに対応する補正事項エについても同様である。

よって、本件補正は、補正目的を検討するまでもなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

しかしながら、事案に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第3項の規定に違反しないものと仮定して、次に上記(1)の補正が特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものであるか、及び、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、検討を続けることとする。

(3)補正の目的についての検討
上記補正事項ア、イはそれぞれ、本件補正前請求項1に記載された発明特定事項である「特別演出実行手段」について、「第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であ」る(補正事項ア)、「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」(補正事項イ)、なる各機能を追加することで前記「特別演出実行手段」をさらに限定するものである。
また、上記本件補正前請求項1に記載された発明と上記本件補正後請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明について
本件補正発明は、上記1.の本件補正の概要に示した次のとおりのものである(A?Iは、当審にて分説して付与した。)
「A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者の動作を検出可能な検出手段と、
C 特定演出を実行する特定演出実行手段と、
D 前記特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知を伴い前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出を実行する動作演出実行手段とを備え、
E 前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、
F 前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、
G 前記特別演出実行手段は、
第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であり、
H 有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である
I ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1に記載された発明
ア 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-126501号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。また、引用箇所の改行を「/」で置き換えることがある。以下同じ。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行させるとともに、前記大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される遊技機において、/ 遊技者が操作可能な演出用操作手段と、/ 前記図柄変動ゲームで大当り結果が導出される可能性を示唆する、又は前記大当り抽選に当選した場合に遊技者にとって有利な有利結果が導出される可能性を示唆する予告演出を予告実行手段に実行させる演出制御手段と、を備え、/ 前記演出制御手段が実行させる予告演出には、/ 遊技の進行に合った開始タイミングに到達すると、予め定めた第1期間の間、実行される通常予告演出と、/ 前記演出用操作手段の操作を有効として受け付けるとともに操作有効期間内に前記演出用操作手段の操作が判定された場合に、予め定めた第2期間の間、実行され、かつ前記操作有効期間が設定されていることを報知する報知手段にて報知が行われない非報知予告演出と、を含み、/ 前記演出制御手段は、前記操作有効期間内に前記演出用操作手段の操作が判定されたときに前記通常予告演出を実行させていた場合、前記通常予告演出の演出実行中に前記非報知予告演出を前記予告実行手段にて前記第2期間の間、実行可としたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記通常予告演出には、前記操作有効期間が設定されていることが前記報知手段にて報知され、該操作有効期間中に前記演出用操作手段の操作が判定された場合に、前記予告実行手段にて前記第1期間の間、実行される報知予告演出を含み、/ 前記演出制御手段は、前記報知予告演出用の操作有効期間中に前記演出用操作手段の操作が判定された場合、前記非報知予告演出を実行させずに前記報知予告演出を実行させることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。」

(イ)「【0032】
次に、サブ統括制御基板31について説明する。
サブ統括制御基板31には、制御動作を所定の手順で実行することができる統括制御用CPU31aと、統括制御用CPU31aの統括制御プログラムを格納する統括制御用ROM31bと、必要なデータの書き込み及び読み出しができる統括制御用RAM31cが設けられている。統括制御用CPU31aは、各種乱数の値を所定の周期毎に更新する乱数更新処理(乱数生成処理)を実行する。また、統括制御用RAM31cには、パチンコ遊技機の動作中に適宜書き換えられる各種情報(乱数値、タイマ値、フラグなど)が記憶(設定)される。
【0033】
また、統括制御用CPU31aには、押しボタン式の操作ボタンBTが接続されている。この操作ボタンBTは、パチンコ遊技機において、例えば、遊技球を貯留するための球皿ユニットの上面など、遊技者が遊技を行いながら操作可能な位置に配設されている。そして、統括制御用CPU31aは、操作ボタンBTが操作された際に出力する操作信号を入力することで、操作ボタンBTが操作されたことを認識する。また、操作ボタンBTには、当該操作ボタンBTの操作が有効とされる操作有効期間中に点灯する発光部材(LEDなど)が内蔵されている。このため、発光部材が点灯することにより、操作ボタンBTが点灯する。この発光部材は、発光部材を搭載した発光部材用の基板を介してサブ統括制御基板31に接続されており、統括制御用CPU31aの指示により、点灯及び消灯する。本実施形態では、操作ボタンBTが、遊技者が操作可能な演出用操作手段となる。」

(ウ)「【0048】
次に、演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aが表示制御プログラムに基づき実行する各種処理について説明する。
演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、変動パターン指定コマンドを入力すると、当該コマンドに指示される変動パターンに対応する演出内容(変動内容)をもとに、画像データを選択する。表示制御用CPU32aは、画像データをもとに図柄変動ゲームを画像表示させるように演出表示装置11の表示内容を制御する。また、表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲームの開始からの経過時間を計時し、その計時した時間と画像データをもとに演出表示装置11に映し出す画像を所定の制御周期毎(例えば、2ms毎)に切り替える。そして、表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲーム中に全図柄停止コマンドを入力すると、飾図指定コマンドで指示された飾図を演出表示装置11に確定停止表示させるように表示内容を制御し、図柄変動ゲームを終了させる。
【0049】
このように構成された本実施形態のパチンコ遊技機では、演出表示装置11にて表示される図柄変動ゲームで大当り結果が導出される可能性、すなわち大当り期待度を示唆する予告演出が実行される。この予告演出は、振り物予告と、表ボタン予告と、裏ボタン予告の3種類に大別することができる。なお、本実施形態における「示唆」とは、大当り抽選で大当りに当選した場合と、大当り抽選で大当りに当選しなかった場合とで、同一の予告演出が出現し得る場合があることを指す。本実施形態では、「降り物予告」及び「表ボタン予告」が、通常予告演出に相当し、特に「表ボタン予告」が、報知予告演出に相当する。一方、「裏ボタン予告」が、非報知予告演出に相当する。
・・・
【0051】
次に、表ボタン予告について、図3(b)、(c)に従って説明する。
表ボタン予告は、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作有効期間が設定され、その操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミング(≠降り物予告の開始タイミング)で開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて実行される予告演出である。具体的に説明すると、表ボタン予告は、リーチ形成前に表ボタン予告の操作有効期間(以下、第1操作有効期間と示す)が設定され、第1操作有効期間内にボタン操作が行われると、ボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する。本実施形態において第1操作有効期間は、「1秒」に設定されている。
【0052】
また、本実施形態では、第1操作有効期間が設定されていることを積極的に遊技者に知らしめるために、第1操作有効期間が設定されると、操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる。本実施形態における報知画像は、図3(b)のような操作ボタンBTを模写した画像である。それとともに、第1操作有効期間が設定されると、操作ボタンBTに内蔵された発光部材を点灯させる。したがって、遊技者は、演出表示装置11に表示された画像と操作ボタンBTの点灯とによって、第1操作有効期間が設定されていることを認識する。本実施形態では、第1操作有効期間が設定されていることを演出表示装置11と操作ボタンBTにて報知するため、演出表示装置11と操作ボタンBTが、報知手段として機能する。
【0053】
そして、第1操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、図3(c)に示すように、ボタン操作直後?リーチ形成前まで、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容で表ボタン予告が実行される。一方、第1操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されなかった場合、表ボタン予告は実行されない。なお、表ボタン予告は、直接的には、キャラクタ同士の会話内容で、リーチが形成されるか否かを示唆するようになっている。ただし、大当り抽選に当選した場合、必ずリーチ演出を経て大当りの図柄組み合わせが導出されるため、表ボタン予告は、リーチが形成されるか否かを示唆することで、結果的に大当り期待度を示唆していることになる。
【0054】
次に、裏ボタン予告について、図4(a)、(b)に従って説明する。
裏ボタン予告は、表ボタン予告よりも操作有効期間の設定時期に係る制限が緩い予告であって、その操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミング(≠降り物予告及び表ボタン予告の開始タイミング)で開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて実行される予告演出である。裏ボタン予告の操作有効期間(以下、第2操作有効期間と示す)は、図柄変動ゲームの開始から所定時間(本実施形態では20秒)が経過するまでの間に設定されている。本実施形態における第2操作有効期間は、図柄変動ゲーム中にのみ設定され、大当り遊技中や、図柄変動ゲーム間に設定されるインターバル時間中、図柄変動ゲームが途切れている次回の図柄変動ゲームの開始を待機する待機状態中に設定されるものではない。
・・・
【0060】
また、本実施形態の第2操作有効期間は、第1操作有効期間との区別を付けたり、「20秒」という長時間の間、報知画像を表示させて画像表示部GHの視認性を低下させたりしないために、報知画像を表示させないようにしている。通常、遊技者は、演出表示装置11の表示内容を注視している。このため、図柄変動ゲーム中に操作有効期間が設定されたか否かの認識は、演出表示装置11に表示された画像から得やすい。加えて、本実施形態のパチンコ遊技機では、第2操作有効期間中、図4(a)に示すように、操作ボタンBTに内蔵された発光部材も点灯しないため、第2操作有効期間が設定されていることを、演出表示装置11や操作ボタンBTから認識することは不可能である。
【0061】
そして、第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、図4(b)に示すように、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告が実行される。本実施形態における裏ボタン予告は、降り物予告や表ボタン予告のように、特定の演出の開始前に予告演出を出現させて間接的に大当り期待度を示唆する演出ではなく、大当り期待度を直接的に示唆する演出であるため、操作有効期間の設定時期に係る制限が緩い。」

(エ)「【0072】
また、第2操作有効期間内に操作信号を入力した統括制御用CPU31aは、指示された変動パターンの種類に従って、図6に示すような予告パターン決定テーブルからいずれか1つの予告パターンを決定する。予告パターン決定テーブルでは、いずれか1つの予告パターンを選択可能となるように、変動パターンの種類毎に、所定個数ずつ乱数の取り得る数値が対応付けられている。
【0073】
以下、予告パターン及び予告パターンに定められた予告内容について、図5に従って説明する。
本実施形態における予告パターンには、予告パターンY1?Y8で示す8種類が設定されており、各予告パターンには、ひよこHの数及びひよこHが着ているTシャツの色が対応付けられている。
【0074】
予告パターンY1には、ひよこHの数として「1」が、Tシャツの色として「白」が対応付けられている。予告パターンY2には、ひよこHの数として「1」が、Tシャツの色として「赤」が対応付けられている。予告パターンY3には、ひよこHの数として「1」が、Tシャツの色として「星柄」が対応付けられている。予告パターンY4には、ひよこHの数として「1」が、Tシャツの色として「虎柄」が対応付けられている。なお、予告パターンY5?Y8には、ひよこHの数として「3」が対応付けられているとともに、Tシャツの色としては、予告パターンY1?Y4と同一色がそれぞれ対応付けられている。
【0075】
また、図6に示す予告パターン決定テーブルでは、はずれ変動用の変動パターンP1?P3が指示されている場合、予告パターンY1又は予告パターンY2を選択可能となるように、乱数の取り得る数値が対応付けられている。これにより、リーチを伴わないはずれ変動となる場合、ひよこHは1羽しか登場せず、Tシャツの色も「白」又は「赤」の2パターンとなる。一方、はずれリーチ変動用の変動パターンP4、P5が指示されている場合、予告パターンY1、Y2、Y5、Y6のうちいずれか1つを選択可能となるように、乱数の取り得る数値が対応付けられている。これにより、リーチR1又はリーチR2の内容を伴うはずれ変動となる場合、3羽のひよこHが登場する場合があるが、Tシャツの色は、「白」又は「赤」の2パターンとなる。
【0076】
また、はずれリーチ変動用の変動パターンP6が指示されている場合、予告パターンY1?Y3、Y5?Y7のうちいずれか1つを選択可能となるように、乱数の取り得る数値が対応付けられている。これにより、リーチR3の内容を伴うはずれ変動となる場合、3羽のひよこHが登場する場合があるとともに、Tシャツの色も、「白」、「赤」、又は「星柄」の3パターンとなる。また、大当り変動用の変動パターンP7?P9が指示されている場合、予告パターンY1?Y8のうちいずれか1つを選択可能となるように、乱数の取り得る数値が対応付けられている。これにより、大当りとなる場合、リーチ演出の種類にかかわらず、3羽のひよこHが登場する場合があるとともに、Tシャツの色も、「白」、「赤」、「星柄」、又は「虎柄」の4パターンとなる。
【0077】
このような振分とすることで、登場するひよこHの数が「3羽」である場合には、リーチ以上が確定する。これにより、ひよこHの数としては、「1羽」<「3羽」の順に大当り期待度が高い内容とされている。また、Tシャツの色としては、「白」<「赤」<「星柄」<「虎柄」の順に大当り期待度が高い内容とされており、特に「虎柄」に関しては、大当り変動用の変動パターンが選択された場合のみ選択可としていることで、大当り確定を報知する内容となっている。
・・・
【0084】
そして、統括制御用CPU31aは、予告パターン決定テーブルから選択した予告パターンを指示する予告パターン指示コマンドを演出表示制御基板32に出力する。以降、統括制御用CPU31aは、第2操作有効期間が終了するまで、前述の制御を繰り返し実行する。これにより、演出表示装置11では、大当り抽選の抽選結果に依存するものの、第2操作有効期間内に操作信号を入力すればするほど、裏ボタン予告の表示態様(ひよこHの数、Tシャツの柄)が遊技者にとって有利な展開へと段階的に変化し得る。
【0085】
そして、予告パターン指示コマンドを入力すると、表示制御用CPU32aは、該コマンドに従って、図4(b)などに示すように、画像表示部GHの右方から左方に向けて、Tシャツを着たひよこHが横切る画像を表示させるように演出表示装置11を制御する。なお、本実施形態では、前述したように、第2操作有効期間は、その操作有効期間内に操作信号を何回入力したとしても、第2操作有効期間として設定した時間が経過するまで、第2操作有効期間を継続して設定する。」

(オ)「【0110】
・・・第2操作有効期間は、第1操作有効期間及び演出表示装置11で行われる表ボタン予告の実行時間が完全に終了してから設定されるようにしても良い。」

(カ)「【0115】
・ 実施形態における予告演出は、大当り抽選に当選した場合に遊技者にとって有利な有利結果が導出される可能性を示唆する演出であっても良い。例えば、大当り遊技中に第2操作有効期間を設定する場合、裏ボタン予告にて、昇格演出が成功する確率を報知する態様としても良い。なお、昇格演出とは、大当り遊技中のラウンド遊技において予め定めた特定演出を実行させる演出態様で行われる。このとき、大当りの種類として、ラウンド数の異なる複数種類の大当りを設定したとすると、昇格演出に成功した際には、ラウンド数の多い大当りに当選していることが報知される。一方、大当り遊技終了後に、大当り抽選の抽選確率を高確率とする確変大当りと、大当り遊技終了後に、大当り抽選の抽選確率を低確率とする非確変大当りを設定したとする。この場合、昇格演出に成功した際には、確変大当りに当選していることが報知される。よって、裏ボタン予告が遊技者にとって有利な展開へと変化すると、昇格演出に成功する確率が高いことが、前もって報知されるようになる。」

イ 上記アの各記載事項から、以下の事項が導かれる。
(あ)上記【請求項1】には、「大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行させるとともに、前記大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される遊技機」と記載されている。
よって刊行物1には、「大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行」したり、「大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される」遊技機、が記載されているといえる。

(い)上記【請求項1】には、「遊技者が操作可能な演出用操作手段」が記載されている。
また、上記【0033】には、「統括制御用CPU31aには、押しボタン式の操作ボタンBTが接続されている。・・・統括制御用CPU31aは、操作ボタンBTが操作された際に出力する操作信号を入力することで、操作ボタンBTが操作されたことを認識する。・・・本実施形態では、操作ボタンBTが、遊技者が操作可能な演出用操作手段となる。」と記載されており、ここでの「操作ボタンBT」が前記請求項1の「遊技者が操作可能な演出用操作手段」に対応することが明らかである。
よって、刊行物1には、遊技者により操作されたことを認識する、遊技者が操作可能な演出用操作手段としての操作ボタン、が記載されているといえる。

(う)上記【請求項1】には、「前記図柄変動ゲームで大当り結果が導出される可能性を示唆する、又は前記大当り抽選に当選した場合に遊技者にとって有利な有利結果が導出される可能性を示唆する予告演出を予告実行手段に実行させる演出制御手段」が記載されている。
ここでは、予告演出が図柄変動ゲームの中の一演出であるから、該図柄変動ゲーム自体も前記演出制御手段が実行しているといえる。
また、上記【0048】?【0049】には、「演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、変動パターン指定コマンドを入力すると、当該コマンドに指示される変動パターンに対応する演出内容(変動内容)をもとに、画像データを選択する。表示制御用CPU32aは、画像データをもとに図柄変動ゲームを画像表示させるように演出表示装置11の表示内容を制御する。また、表示制御用CPU32aは、・・・演出表示装置11に映し出す画像を所定の制御周期毎(例えば、2ms毎)に切り替える。そして、表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲーム中に全図柄停止コマンドを入力すると、飾図指定コマンドで指示された飾図を演出表示装置11に確定停止表示させるように表示内容を制御し、図柄変動ゲームを終了させる。・・・このように構成された本実施形態のパチンコ遊技機では、演出表示装置11にて表示される図柄変動ゲームで大当り結果が導出される可能性、すなわち大当り期待度を示唆する予告演出が実行される。」と記載されている。
これらから、刊行物1には、図柄変動ゲームを実行する演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a、が記載されているといえる。

(え)上記【請求項1】には、「前記演出制御手段が実行させる予告演出には・・・遊技の進行に合った開始タイミングに到達すると、予め定めた第1期間の間、実行される通常予告演出・・・を含み」と記載され(以下「記載事項え1」という。)、上記【請求項2】には、「前記通常予告演出には、前記操作有効期間が設定されていることが前記報知手段にて報知され、該操作有効期間中に前記演出用操作手段の操作が判定された場合に、前記予告実行手段にて前記第1期間の間、実行される報知予告演出を含み」と記載されている(以下「記載事項え2」という。)。
また、上記【0051】?【0053】には、「表ボタン予告は、リーチ形成前に表ボタン予告の操作有効期間(以下、第1操作有効期間と示す)が設定され、第1操作有効期間内にボタン操作が行われると、ボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する。・・・第1操作有効期間が設定されていることを積極的に遊技者に知らしめるために、第1操作有効期間が設定されると、操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる。本実施形態における報知画像は、図3(b)のような操作ボタンBTを模写した画像である。それとともに、第1操作有効期間が設定されると、操作ボタンBTに内蔵された発光部材を点灯させる。したがって、遊技者は、演出表示装置11に表示された画像と操作ボタンBTの点灯とによって、第1操作有効期間が設定されていることを認識する。第1操作有効期間が設定されていることを演出表示装置11と操作ボタンBTにて報知するため、演出表示装置11と操作ボタンBTが、報知手段として機能する。・・・第1操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、図3(c)に示すように、ボタン操作直後?リーチ形成前まで、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容で表ボタン予告が実行される。」と記載されている(以下「記載事項え3」という。)。
そして、前記記載事項え2の「操作有効期間が設定されていること」の「報知」には、前記記載事項え3の「操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示」することと、「操作ボタンBTに内蔵された発光部材を点灯させる」こととが対応し、演出表示装置11が報知画像を表示することが明らかである。(以下「認定事項え1」という。)
また、上記【0049】には「図柄変動ゲームで大当り結果が導出される可能性、すなわち大当り期待度を示唆する予告演出が実行される。この予告演出は、振り物予告と、表ボタン予告と、裏ボタン予告の3種類に大別することができる。・・・「表ボタン予告」が、報知予告演出に相当する」と記載されている。(以下「記載事項え4」という。)
また、上記【0051】?【0053】に記載された予告演出としての表ボタン予告は、上記【0048】冒頭の「次に、演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aが表示制御プログラムに基づき実行する各種処理について説明する。」の「各種処理」に含まれることが明らかである。(以下「認定事項え2」という。)
よって、前記記載事項え1?え4及び前記認定事項え1・え2から、刊行物1には、図柄変動ゲーム中、第1操作有効期間が設定されていることを前記演出表示装置11への操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像の表示にて報知させ、第1操作有効期間内に演出用操作手段である操作ボタンBTが操作され、該操作が判定された場合に、図柄変動中の報知予告演出として、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容の表ボタン予告を実行させる、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a、が記載されているといえる。

(お)上記【0051】?【0052】には「表ボタン予告は、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作有効期間が設定され、その操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミング・・・で開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて実行される予告演出である。・・・表ボタン予告は、リーチ形成前に表ボタン予告の操作有効期間(以下、第1操作有効期間と示す)が設定され、第1操作有効期間内にボタン操作が行われると、ボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する。・・・第1操作有効期間が設定されていることを積極的に遊技者に知らしめるために、第1操作有効期間が設定されると、操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる。」と記載されている(以下「記載事項お1」という。)。
また、上記【0054】?【0061】には、「裏ボタン予告は・・・その操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミング・・・で開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて実行される予告演出である。裏ボタン予告の操作有効期間(以下、第2操作有効期間と示す)は、図柄変動ゲームの開始から所定時間(本実施形態では20秒)が経過するまでの間に設定されている。・・・第2操作有効期間は・・・報知画像を表示させないようにしている。・・・第2操作有効期間中、図4(a)に示すように、操作ボタンBTに内蔵された発光部材も点灯しない・・・。・・・第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、図4(b)に示すように、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告が実行される。」と記載されている(以下「記載事項お2」という。)。
また、上記【0049】には「「表ボタン予告」が、報知予告演出に相当する。一方、「裏ボタン予告」が、非報知予告演出に相当する」と記載されている(以下「記載事項お3」という。)。
また、上記【0110】には、変形例として「第2操作有効期間は、第1操作有効期間及び演出表示装置11で行われる表ボタン予告の実行時間が完全に終了してから設定されるようにしても良い。」と記載されている。(以下「記載事項お4」という。)
該記載事項お4の変形例を採用した場合、前記記載事項お2から認定できる「図柄変動ゲームの開始から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて裏ボタン予告が実行される演出」なる演出(以下「裏演出1」ということがある。)の設定期間は、前記記載事項お1から認定できる「図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる第1操作有効期間が設定され、該第1操作有効期間内にボタン操作が行われると表ボタン予告がボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する演出」(以下「表演出」ということがある。)「が完全に終了してから」、となり、前記裏演出1は「図柄変動ゲームの開始後であって、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる第1操作有効期間が設定され、該第1操作有効期間内にボタン操作が行われると表ボタン予告がボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて裏ボタン予告が実行される演出」(以下「裏演出」ということがある。)となり、この演出についても刊行物1に記載されたものといえる。(以下「認定事項お1」という。)
よって、前記記載事項お1?お3、認定事項お1、及び上記(う)、記載事項え4から、刊行物1には、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる第1操作有効期間が設定され、該第1操作有効期間内にボタン操作が行われると図柄変動中の報知予告演出として表ボタン予告がボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する表演出と、図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて図柄変動中の報知予告演出として裏ボタン予告が実行される裏演出と、を実行する、ことが記載されているといえる。

(か)上記【0054】?【0061】には、「裏ボタン予告は・・・その操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミング・・・で開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて実行される予告演出である。裏ボタン予告の操作有効期間(以下、第2操作有効期間と示す)は、図柄変動ゲームの開始から所定時間・・・が経過するまでの間に設定されている。・・・第2操作有効期間は・・・報知画像を表示させないようにしている。・・・第2操作有効期間中、図4(a)に示すように、操作ボタンBTに内蔵された発光部材も点灯しない・・・。・・・第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると・・・画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告が実行される。」と記載されている。(以下「記載事項か1」という。)
また、上記【0049】には「「裏ボタン予告」が、非報知予告演出に相当する」と記載されている。(以下「記載事項か2」という。)
また、前記記載事項か1における予告演出としての裏ボタン予告は、上記【0048】冒頭の「次に、演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aが表示制御プログラムに基づき実行する各種処理について説明する。」の「各種処理」に含まれることが明らかである。(以下「認定事項か1」という。)
前記記載事項か1?か3、認定事項か1及び上記(お)から、刊行物1には、図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間の期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、該ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始される所定期間の間、演出表示装置11にて裏ボタン予告が実行される裏演出において、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告を実行する、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a、が記載されているといえる。

(き)上記【0072】?【0077】には、「第2操作有効期間内に操作信号を入力した統括制御用CPU31aは、指示された変動パターンの種類に従って、図6に示すような予告パターン決定テーブルからいずれか1つの予告パターンを決定する。・・・予告パターンには、予告パターンY1?Y8で示す8種類が設定されており、各予告パターンには、ひよこHの数及びひよこHが着ているTシャツの色が対応付けられている。・・・予告パターンY4には、ひよこHの数として「1」が、Tシャツの色として「虎柄」が対応付けられている。・・・予告パターンY5?Y8には、ひよこHの数として「3」が対応付けられているとともに、Tシャツの色としては、予告パターンY1?Y4と同一色がそれぞれ対応付けられている。・・・図6に示す予告パターン決定テーブルでは・・・「虎柄」に関しては、大当り変動用の変動パターンが選択された場合のみ選択可としている・・・。・・・統括制御用CPU31aは、予告パターン決定テーブルから選択した予告パターンを指示する予告パターン指示コマンドを演出表示制御基板32に出力する。・・・そして、予告パターン指示コマンドを入力すると、表示制御用CPU32aは、該コマンドに従って、・・・画像表示部GHの右方から左方に向けて、Tシャツを着たひよこHが横切る画像を表示させるように演出表示装置11を制御する。」ことが記載されている。
また、上記(か)から、「画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容」の演出は「裏ボタン予告」に該当する。
よって、刊行物1には、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、ひよこのTシャツの色が「虎柄」以外である予告パターンY1?3・Y5?7と、ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8とにより、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する裏ボタン予告を実行する、ことが記載されているといえる。
また、刊行物1には、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、大当り変動用の変動パターンが選択された場合のみ、前記ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8を選択可とする、ことが記載されているといえる。

ウ 上記アの各記載事項、上記イの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?iは、本件補正発明のA?Iに対応させて付与した。)。

「a 大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行したり、大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される遊技機であって、(あ)
b 遊技者により操作されたことを認識する、遊技者が操作可能な演出用操作手段としての操作ボタンと、(い)
c 図柄変動ゲームを実行する演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aと、(う)
d 図柄変動ゲーム中、第1操作有効期間が設定されていることを前記演出表示装置11への操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像の表示にて報知させ、第1操作有効期間内に演出用操作手段である操作ボタンBTが操作され、該操作が判定された場合に、報知予告演出として、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容の表ボタン予告を実行させる、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aと、を備え、(え)
e 演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる第1操作有効期間が設定され、該第1操作有効期間内にボタン操作が行われると図柄変動中の報知予告演出として表ボタン予告がボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する表演出と、図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて図柄変動中の報知予告演出として裏ボタン予告が実行される裏演出と、を実行し、(お)
f 図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間の期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、該ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始される所定期間の間、演出表示装置11にて裏ボタン予告が実行される裏演出において、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告を実行する、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aを備え、(か)
g 演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、ひよこのTシャツの色が「虎柄」以外である予告パターンY1?3・Y5?7と、ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8とにより、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する裏ボタン予告を実行し、(き)
h 演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、大当り変動用の変動パターンが選択された場合のみ、前記ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8を選択可とする、(き)
i 遊技機。(あ)」

(3)刊行物2に記載された技術事項
ア 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-69111号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0074】
また、本実施形態のパチンコ機10では、図柄変動ゲームの変動時間内に演出用操作ボタン26の操作を有効とする操作有効期間が設定されるようになっている。そして、パチンコ機10において操作有効期間を設定した場合には、演出用操作ボタン26に内蔵された発光体が点灯することによって、操作有効期間が設定されていることを遊技者に示唆するようになっている。
【0075】
また、本実施形態のパチンコ機10において設定される操作有効期間には、操作有効期間が設定されていることに対する遊技者の認識度合いが変化し得るように、第1の操作有効期間と第2の操作有効期間とからなる2種類の操作有効期間が設定されるようになっている。第1の操作有効期間は、操作有効期間が設定されていることを積極的に遊技者に知らしめるために、演出表示装置H2上に演出用操作ボタン26の操作を促す所定の画像を表示させる期間として設定される。本実施形態において所定の画像は、図2(b)のような演出用操作ボタン26を模写した画像によって構成されている。その一方で、第2の操作有効期間は、操作有効期間が設定されていることに対する遊技者の認識度合いを第1の操作有効期間に比して下げ、第2の操作有効期間が設定されていることを探求させるために、演出表示装置H2上に前記所定の画像を表示させない期間として設定される。
【0076】
通常、遊技者は、演出表示装置H2の表示内容を注視している。このため、図柄変動ゲーム中に操作有効期間が設定されたか否かの認識は、演出用操作ボタン26の発光体が点灯したことから得るよりも、演出表示装置H2上に表示された演出用操作ボタン26の操作を促す画像から得る場合の方が圧倒的に多い。したがって、第1の操作有効期間と第2の操作有効期間では、何れの期間においても演出用操作ボタン26の発光体を点灯させて操作有効期間が設定されていることを示唆しても、演出用操作ボタン26の操作を促す前記所定の画像の有無によって操作有効期間が設定されていることに対する認識度合いは異なる。なお、本実施形態において第2の操作有効期間は、演出用操作ボタン26の発光体を点灯させていることから、当該期間の設定を完全秘匿する訳ではないが、前記所定の画像を表示させないことで操作有効期間が設定されていることを気付き難くしている。すなわち、本実施形態の第2の操作有効期間は、擬似的な秘匿期間として設定されている。一方、本実施形態の第1の操作有効期間は、所定の画像が表示されることによって操作有効期間が設定されていることを遊技者のほぼ全員が気付くと考えられることから、第2の操作有効期間のような「秘匿」的な要素を何ら持たない非秘匿期間として設定されている。
【0077】
そして、操作有効期間内に演出用操作ボタン26が操作された場合(本実施形態では1回)には、演出表示装置H2で表示されている図柄変動ゲームで導出される結果を示唆する示唆演出(予告演出)が実行されるようになっている。本実施形態では、複数種類の予告演出が設定されており、第1の操作有効期間が設定された場合には、予告演出として「ロゴ予告」が実行可能となっており、第2の操作有効期間が設定された場合には、予告演出として「カットイン予告」が実行可能となっている。
【0078】
「ロゴ予告」とは、図柄変動ゲーム中の画像表示部GHに、例えば「大当りかも」、「チャンス」などの文字を表示させ、当該文字が表示されるか否かに応じて大当りとなるか否かの可能性を変化させる予告である。一方、「カットイン予告」とは、図柄変動ゲーム中の画像表示部GHに、例えばリーチ演出に登場するキャラクタの画像を差込み表示させ、そのカットイン予告用の画像が表示されるか否かに応じて大当りとなるか否かの可能性を変化させる予告である。本実施形態では、「カットイン予告」で表示される画像は、複数種類設定されており、具体的には、「キャラクタKA」、「キャラクタKB」、及び「キャラクタKC」の3種類である。」

(イ)「【0085】
このような振分態様によって、変動パターンP1?P5が選択された場合には、予告演出振分けテーブルTAにて、最初に、カットイン予告を実行させるか否かが決定される。そして、カットイン予告の実行が決定された場合には、カットイン予告の演出内容として「キャラクタKA」、「キャラクタKB」、「キャラクタKC」のうちいずれか1つが決定されるようになっている。そして、本実施形態のような演出と大当り遊技の関連付けによれば、15R大当り遊技の付与が決定されている場合、バトル演出中に何らかのカットイン予告が実行される可能性が高くなっている。その一方で、はずれが決定されている場合は、バトル演出中にカットイン予告が実行される可能性が低くなっている。
【0086】
そして、「キャラクタKA」は、15R大当り遊技が決定されている場合でも、はずれの場合でも選択され得るようになっている。また、「キャラクタKB」は、15R確変大当り遊技及び15R非確変大当り遊技が決定された場合にしか選択されないので、遊技の流れとしてバトル演出中にカットイン予告が「キャラクタKB」で実行されると、カットイン予告が実行された時点ではどちらの大当り遊技に当選したのかは分からないが、何らかの大当り遊技に当選したことが分かる。ちなみに、本実施形態では、再抽選演出が行われるようになっているので、偶数図柄による大当りの図柄組み合わせが一旦停止表示されても、再抽選演出によって確変大当りを認識し得る図柄組み合わせに昇格する場合もあるため、バトル演出が終了しても、図柄か確定停止表示される迄、どちらの大当り遊技に当選したのかが分からないようになっている。また、「キャラクタKC」は、15R確変大当り遊技が決定された場合にした選択されないので、遊技の流れとしてバトル演出中にカットイン予告が「キャラクタKC」で実行されると、カットイン予告が実行された時点で15R確変大当り遊技が付与されることが分かる。つまり、本実施形態では、カットイン予告の演出内容によって付与される大当り遊技の選択割合が異なるように設定されており、「キャラクタKA」<「キャラクタKB」<「キャラクタKC」の順に、当該図柄変動ゲームにおける利益の大きい大当りへの期待度が高くなっている。」

(4)対比・判断
本件補正発明と上記刊行物1発明とを、分説に従い対比する。(以下、刊行物1発明の各構成については単に「構成a」などといい、本件補正発明の各構成は単に「構成A」などということがある。)

ア 刊行物1発明における構成aの、「大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行したり、大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される」ことは、本件補正発明の構成Aの「遊技を行う」ことに相当する。
したがって、前記構成aの「大当りか否かの大当り抽選の抽選結果を導出する図柄変動ゲームを実行したり、大当り抽選で大当りに当選したときには、大当り遊技が生起される遊技機」は、前記構成Aの「遊技を行う遊技機」に相当する。

イ 刊行物1発明における構成bの、「遊技者により操作されたことを認識する」、「遊技者が操作可能な演出用操作手段としての操作ボタン」は、それぞれ、本件補正発明の構成Bの「遊技者の動作を検出可能な」、「検出手段」に相当する。
したがって、前記構成bの「遊技者により操作されたことを認識する、遊技者が操作可能な演出用操作手段としての操作ボタン」は、前記構成Bの「遊技者の動作を検出可能な検出手段」に相当する。

ウ 刊行物1発明における構成cの「図柄変動ゲーム」は、図柄を変動させる演出であるから、本件補正発明の構成Cの「特定演出」に相当する。また、前記構成cの「演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a」は前記構成Cの「特定演出実行手段」に相当する。
したがって、前記構成cの「図柄変動ゲームを実行する演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a」は、前記構成Cの「特定演出を実行する特定演出実行手段」としての機能を有する。

エ 刊行物1発明における構成dの、「図柄変動ゲーム中」、「第1操作有効期間が設定されていることを前記演出表示装置11への操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像の表示」、「第1操作有効期間内に演出用操作手段である操作ボタンBTが操作され、該操作が判定された場合」、「報知予告演出として、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容の表ボタン予告」、「演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a」はそれぞれ、本件補正発明の構成Dの、「特定演出の実行中」、「遊技者の動作を指示する動作指示報知」、「検出手段によって遊技者の動作が検出されたこと」、「動作演出」、「動作演出実行手段」に相当する。
したがって、前記構成dの「図柄変動ゲーム中、第1操作有効期間が設定されていることを前記演出表示装置11への操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像の表示にて報知させ、第1操作有効期間内に演出用操作手段である操作ボタンBTが操作され、該操作が判定された場合に、報知予告演出として、2人のキャラクタが会話をしている画像を表示する内容の表ボタン予告を実行させる、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32a」は、前記構成Dの「前記特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知を伴い前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出を実行する動作演出実行手段」としての機能を有する。

オ 刊行物1発明の構成eの「表演出」、「裏演出」は、それぞれ「図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミング」及び「図柄変動ゲームの開始後」に開始され、それぞれの最終演出である「表ボタン予告」及び「裏ボタン予告」なる各演出が何れも図柄変動中の演出であることから、何れも本件補正発明の「特定演出」に相当する「図柄変動ゲーム」中に行われる演出であるといえる。
また、前記「表演出」は「第1操作有効期間内にボタン操作が行われると図柄変動中の報知予告演出として表ボタン予告がボタン操作直後に開始され」るものであり、前記「裏演出」は「報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され」るもので、何れも操作ボタンBTの操作を伴う演出である。
よって、本件補正発明の構成Eの「第1特定演出」と「第2特定演出」とが、本件補正により補正された明細書において、何れもプッシュボタン120の操作を伴う演出として説明されていることを考慮しても、前記構成eの「表演出」、「裏演出」は、それぞれ前記構成Eの「第2特定演出」と「第1特定演出」とに相当するといえる。
したがって、前記構成eの「演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、図柄変動ゲームの進行に合った特定のタイミングで操作ボタンBTの操作を促す画像としての報知画像を表示させる第1操作有効期間が設定され、該第1操作有効期間内にボタン操作が行われると図柄変動中の報知予告演出として表ボタン予告がボタン操作直後に開始され、リーチ形成前までに終了する表演出と、図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始され、所定期間の間、演出表示装置11にて図柄変動中の報知予告演出として裏ボタン予告が実行される裏演出と、を実行し」は、前記構成Eの「前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり」に相当する。

カ 刊行物1発明の構成fの「画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容」の「裏ボタン予告」は、本件補正発明の構成Fの「特別演出」に相当する。
また、該「裏ボタン予告」を含む前記構成fの「裏演出」は、「図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間」の始期にはじまるものであるから、「裏演出」に含まれる「裏ボタン予告」演出も、前記「表演出」の最後に実行される「表ボタン予告」演出が行われていないときに実行される演出であるといえ、このことは、前記構成Fの、「特別演出」が「動作演出が実行されていないとき」に実行されることに相当するといえる。
また、前記構成fで、「裏ボタン予告」が「報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると」「実行」されることは、前記構成Fの、「特別演出」が「前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて」「実行」されることに相当する。
したがって、前記構成fの「図柄変動ゲームの開始後であって、前記表演出の終了後から所定時間が経過するまでの間に設定される、報知画像を表示させない第2操作有効期間の期間内に操作ボタンBTが操作された場合に限って、該ボタン操作直後の特定の開始タイミングで開始される所定期間の間、演出表示装置11にて裏ボタン予告が実行される裏演出において、報知画像を表示させない第2操作有効期間内に操作ボタンBTが操作されると、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する内容で裏ボタン予告を実行する、演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aを備え」は、前記構成Fの「前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え」ること、に相当する。

キ 刊行物1発明の構成gの「ひよこのTシャツの色が「虎柄」以外である予告パターンY1?3・Y5?7」、「ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8」はいずれも本件補正発明の構成F・Gの「特別演出」に相当する「裏ボタン予告」の異なる演出であるから、それぞれ前記構成Gの「第1演出態様」、「第2演出態様」に相当する。
したがって、前記構成gの「演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、ひよこのTシャツの色が「虎柄」以外である予告パターンY1?3・Y5?7と、ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8とにより、画像表示部GHの右方から左方に向けて、ひよこHが横切る画像を表示する裏ボタン予告を実行し」は、前記構成Gの「前記特別演出実行手段は、第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であり、」に相当する。

ク 本件補正発明の構成Hにおいて、「有利状態」が単数か複数に種類分けされるものかについては特定されていない。また、「特定の有利状態」自体についても、仮に前記「有利状態」が複数に種類分けされる場合であっても、それら全体を指す場合が排除されているとはいえない。
よって、刊行物1発明の構成hの「大当り変動用の変動パターンが選択された場合」、「大当り」はそれぞれ本件補正発明の構成Hの「有利状態に制御される場合」「特定の有利状態」に相当する。
したがって、前記構成hの「演出制御手段としての演出表示制御基板32の表示制御用CPU32aは、大当り変動用の変動パターンが選択された場合のみ、前記ひよこのTシャツの色が「虎柄」である予告パターンY4・Y8を選択可とする」は、前記構成Hの「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」に相当する。

ケ 上記ア?クによれば、本件補正発明と刊行物1発明は、下記の点で一致し、両者の間に相違点はない。
「A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者の動作を検出可能な検出手段と、
C 特定演出を実行する特定演出実行手段と、
D 前記特定演出の実行中において、遊技者の動作を指示する動作指示報知を伴い前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて動作演出を実行する動作演出実行手段とを備え、
E 前記特定演出実行手段は、前記特定演出として、第1特定演出と第2特定演出とを実行可能であり、
F 前記第1特定演出の実行中において、前記動作演出が実行されていないときに前記検出手段によって遊技者の動作が検出されたことにもとづいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、
G 前記特別演出実行手段は、
第1演出態様と第2演出態様とにより前記特別演出を実行可能であり、
H 有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である
I ことを特徴とする遊技機。」

よって、本件補正発明は刊行物1発明と同一であるから、本願発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

コ 仮の相違点について
本件補正発明と刊行物1発明とは本件補正発明の構成A?I全てにおいて一致し、両者の間に相違点はないことは、上記ケのとおりであるが、仮に、本件補正発明の構成Hにおける「有利状態」が複数、または複数のまとまりに種類分けされるものであり、「特定の有利状態」とは該複数または複数のまとまりに種類分けされる「有利状態」のうちの全てではない一部のみを指すと限定解釈されるとすると、下記の(ア)の点で両発明は相違する。
(ア)仮の相違点
本件補正発明では、有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が複数に種別される前記有利状態のうちの全てではない特定の一部の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能であるのに対し、刊行物1発明では、少なくとも特別演出に相当する裏ボタン予告の予告パターンのY4・Y8とそれら以外との割当に関しては、大当り抽選の結果が「はずれ」か「大当り」かのいずれであるか、すなわち「有利状態」が「大当り」の一種類、または、仮に該「大当り」に複数種類の態様が存在するとしてもそれらをひとまとまりにしたもの一種類であるとして、その全てに対して特定の裏ボタン予告の予告パターン(Y4・Y8)を割当てている点。

(イ)仮の相違点に対する当審の判断
パチンコ等の遊技機において、「大当り」に複数の種別を設けることはいうまでもなく周知慣用の技術である。刊行物1発明においても、刊行物1の【0115】に「大当りの種類として、ラウンド数の異なる複数種類の大当りを設定したとすると」なる記載があるとおり、「大当り」に複数の種別を設けることは想定されているといえる。
一方、上記刊行物2には、【0074】?【0078】に「本実施形態のパチンコ機10では、図柄変動ゲームの変動時間内に演出用操作ボタン26の操作を有効とする操作有効期間が設定されるようになっている。・・・操作有効期間には、操作有効期間が設定されていることに対する遊技者の認識度合いが変化し得るように、第1の操作有効期間と第2の操作有効期間とからなる2種類の操作有効期間が設定される・・・第1の操作有効期間は・・・演出表示装置H2上に演出用操作ボタン26の操作を促す所定の画像を表示させる期間として設定される。・・・第2の操作有効期間は・・・演出表示装置H2上に前記所定の画像を表示させない期間として設定される。・・・操作有効期間内に演出用操作ボタン26が操作された場合・・・には、演出表示装置H2で表示されている図柄変動ゲームで導出される結果を示唆する示唆演出(予告演出)が実行される・・・第1の操作有効期間が設定された場合には、予告演出として「ロゴ予告」が実行可能となっており、第2の操作有効期間が設定された場合には、予告演出として「カットイン予告」が実行可能となっている。・・・「カットイン予告」で表示される画像は、複数種類設定されており、具体的には、「キャラクタKA」、「キャラクタKB」、及び「キャラクタKC」の3種類である。」なる記載がある。
そして、このうち演出表示装置H2上に前記所定の画像を表示させない「第2操作有効期間」に操作者による操作用ボタン26の操作を契機として実行される予告演出である「カットイン予告」については【0085】?【0086】に、「カットイン予告の実行が決定された場合には、カットイン予告の演出内容として「キャラクタKA」、「キャラクタKB」、「キャラクタKC」のうちいずれか1つが決定される・・・「キャラクタKA」は、15R大当り遊技が決定されている場合でも、はずれの場合でも選択され得る・・・「キャラクタKB」は、15R確変大当り遊技及び15R非確変大当り遊技が決定された場合にしか選択されない・・・「キャラクタKC」は、15R確変大当り遊技が決定された場合にした選択されないので、遊技の流れとしてバトル演出中にカットイン予告が「キャラクタKC」で実行されると、カットイン予告が実行された時点で15R確変大当り遊技が付与されることが分かる。」と記載されている。
そうすると、刊行物2には、図柄変動ゲーム中の、操作有効期間中に「演出表示装置H2上に演出用操作ボタン26の操作を促す所定の画像を表示」させない演出である点で刊行物1発明の「裏ボタン予告」に対応する「カットイン予告」に「キャラクタKA」「キャラクタKB」「キャラクタKC」の3演出内容を設定し、そのうち「キャラクタKC」については大当り遊技のうち「15R確変大当り遊技」に当選した場合しか実行されないことが記載されているといえ(以下「刊行物2技術事項」という。)、これは上記仮の相違点である、「有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が複数に種別される前記有利状態のうちの全てではない特定の一部の有利状態である場合にのみ前記第2演出態様により前記特別演出を実行可能である」ことに相当する。
刊行物1発明においても「大当たり」に複数の態様を設けることが想定されていることは前記のとおりであり、「裏ボタン予告」のうち「大当たり」当選時のみ実行される「裏ボタン予告」の予告パターンにも「Y4」「Y8」の二種類が割当てられてもいるのであるから、刊行物1発明の、複数種類の場合を含む「大当たり」時のみ実行される複数パターンの「裏ボタン予告」に対し、前記刊行物2技術事項を適用して、該「大当たり」の全部ではなく特定の一部の種類に当選している場合にのみ、特定の「裏ボタン予告」の予告バターンが実行されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の作用効果も、刊行物1発明および刊行物2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

よって、上記仮の相違点を認めるとしても、本件補正発明は、刊行物1発明及び刊行物2技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

サ 審判請求書における請求人の主張について
請求人は審判請求書3.(4)において、
「引用文献1に記載された発明では、特定の大当りである場合にのみ選択可能となる予告パターンは設定されていない。そのため、引用文献1に記載された発明は、上記の(g)の構成要素を備えておらず、本願発明とは異なる発明であり、本願発明のような効果を得ることはできない。また、引用文献1に記載された発明では、そもそも複数種類の大当りが設けられていない。そのため、上記の(g)の構成要素に関連する事項は何ら記載も示唆もされていない。
したがって、記載も示唆もないのであるから、引用文献1には、有利状態に制御される場合には、制御される有利状態が特定の有利状態である場合にのみ第2演出態様により特別演出を実行可能とすることによって、いずれの演出態様により特別演出が実行されるかについて注目させるとともに、単に有利状態に制御されることに対する期待を持たせるだけではなく、特定の有利状態に制御されることに対する期待を持たせることができるようにするという技術思想はないといえる。
以上のことから、請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、少なくとも、上記の(g)の構成要素が大きく異なる。すると、引用文献1に記載された発明にもとづいて、請求項1に係る発明の構成に想到することは困難なことであると思料する。よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明から想到することが困難な発明であると思料する。」
と主張している。
しかし、本件補正発明の「有利状態」が必ずしも「複数種類の大当りが設けら」れることに限定解釈されず、よって、本件補正発明の「特定の有利状態」についても、複数種類の大当りの中の、全てではない一部、である場合のみに限定解釈されないことは、上記クで説示したとおりであるし、仮に請求人が主張する点を相違点であるとしても、それが当業者が容易に想到し得るものであることは、上記コで説示したとおりである。

よって、上記請求人の主張を採用することはできない。

(5)小括
したがって、上記(4)において検討したように、本件補正発明は、刊行物1発明と同一、または刊行物1発明及び刊行物2技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年8月26日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2の3.(1)の構成Hに該当する第2の1.の下線部の構成を省いたものである。
上記第2の3.(4)で検討したとおり、本件補正発明と刊行物1発明は同一であり、また、仮に相違するとしてもその相違点は上記第2の1.の下線部の構成のみであるから、そうすると、この構成を省いた本願発明と刊行物1発明とに相違点は存在しない。
したがって、本願発明は、刊行物1発明と同一であり、刊行物1に記載された発明であるといえる。
また、仮に相違点が存在するとしても微差であり、当業者が容易に想到し得た程度のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
また、仮に相違点が存在するとしても微差であり、当業者が容易に想到し得た程度のものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-06 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-23 
出願番号 特願2014-15525(P2014-15525)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貝沼 憲司柳 重幸  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 青木 洋平
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 塩川 誠人  
代理人 眞野 修二  
代理人 岩壁 冬樹  

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