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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1335583 |
審判番号 | 不服2017-4580 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-03 |
確定日 | 2017-12-07 |
事件の表示 | 特願2012-131637「液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-256011〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年6月11日の出願であって、平成28年4月8日付け、及び同年10月5日付けで手続補正がなされ、平成29年3月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月3日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に、手続補正がなされ、その後、当審において、平成29年7月7日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年8月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願発明は、平成29年8月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 複数の圧力発生室、前記圧力発生室に液体を供給する液体流路、及び前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段を備えるヘッド本体と、 前記ヘッド本体に接合され、前記圧力発生室に連通するノズル開口が形成されたノズルプレートと、 前記ノズル開口が露出する開口部を有するカバーヘッドと、を備える液体噴射ヘッドと、 前記液体噴射ヘッドの前記カバーヘッドの開口部を封止するキャップ部材と、を備え、 前記カバーヘッドは、スペーサーを挟んで前記ヘッド本体に取り付けられ、 前記スペーサーは、前記カバーヘッドの開口部の縁部と前記ヘッド本体とに接着剤で接着され、 前記ヘッド本体は、前記圧力発生室を有する流路ユニットと、該流路ユニット及び前記圧力発生手段を保持する保持部材とを備え、 前記保持部材には、前記流路ユニットに液体を供給する前記液体流路が形成され、 前記ノズルプレートは、前記流路ユニットに接合され、 前記スペーサーは、開口部を有し、該開口部内に前記ノズルプレートが位置するように前記保持部材に接着剤で接着され、 前記カバーヘッドは、該カバーヘッドの開口部が前記スペーサーの開口に重なるように前記スペーサーに接着剤で接着されている ことを特徴とする液体噴射装置。 【請求項2】 請求項1に記載する液体噴射装置において、 前記スペーサーは、前記保持部材の前記流路ユニットが接合された接合面において該流路ユニットの外側に接着剤で接着されるとともに、前記保持部材の前記接合面に連続する側面にも接着剤で接着されている ことを特徴とする液体噴射装置。 【請求項3】 複数の圧力発生室、前記圧力発生室に液体を供給する液体流路、及び前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段を備えるヘッド本体と、 前記ヘッド本体に接合され、前記圧力発生室に連通するノズル開口が形成されたノズルプレートと、 前記ノズル開口が露出する開口部を有するカバーヘッドと、 開口部を有し、前記カバーヘッドと接着されたスペーサーと、 前記スペーサーを保持する保持部材と、を備える液体噴射ヘッドと、 前記液体噴射ヘッドの前記カバーヘッドの開口部を封止するキャップ部材と、を備え、 前記カバーヘッドの開口部と前記スペーサーの開口部とが、前記ノズルプレートの厚み方向において、前記ノズルプレートと重ならない位置にあり、 前記ヘッド本体に対する前記ノズルプレート側を一方側とし、前記一方側の反対を他方側とした場合に、前記ノズルプレートの前記一方側の面が、前記カバーヘッドの前記一方側の面よりも、前記他方側に位置し、 前記スペーサーと前記ノズルプレートとは、前記ノズルプレートの厚み方向において、前記保持部材に対して同じ側にある ことを特徴とする液体噴射装置。 【請求項4】 複数の圧力発生室、前記圧力発生室に液体を供給する液体流路、及び前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段を備えるヘッド本体と、 前記ヘッド本体に接合され、前記圧力発生室に連通するノズル開口が形成されたノズルプレートと、 前記ノズル開口が露出する開口部を有するカバーヘッドと、 前記カバーヘッドと前記ヘッド本体とに挟まれたスペーサーと、を備える液体噴射ヘッドと、 前記液体噴射ヘッドの前記カバーヘッドの開口部を封止するキャップ部材と、を備え、 前記スペーサーは、前記カバーヘッドの開口部の縁部または前記ヘッド本体のいずれか一方に接着剤で接着され、 前記スペーサーは、前記カバーヘッドまたは前記ヘッド本体のいずれか他方に一体的に設けられる ことを特徴とする液体噴射装置。」(以下、請求項1乃至請求項4にかかる各発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明4」といい、これらを総称して「本願発明」という。) 第3 引用刊行物 1.引用刊行物の記載 (1)引用刊行物1 当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成19年4月12日に頒布された刊行物である特開2007-90856号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ノズルプレートに穿設されたノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、ノズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板上に設けられた圧電素子の変位によりノズルからインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、環境変化等に拘わらず接続部材とノズルプレートとの接触が確実に行え、静電気除去の信頼性を高めることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。 【0010】 また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、環境変化等に拘わらず接続部材とノズルプレートとの接触が確実に行え、静電気除去の信頼性を高めることができる液体噴射ヘッドを製造することができる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。」 ウ 「【0029】 図1には本発明の一実施形態例に係る液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドの分解斜視状態、図2には本発明の一実施形態例に係る液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドの組立斜視状態、図3には本発明の一実施形態例に係る液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドの要部断面状態、図4にはインクジェット式記録ヘッド本体の分解斜視、図5には記録ヘッド本体の断面、図6には記録ヘッド本体の要部を表す断面、図7には固定板の斜視状態を示してある。また、図8には液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドの製造方法の要部工程説明を示してある。更に、図9には液体噴射装置としての記録装置の概略状態を示してある。 【0030】 図1乃至図7に基づいてインクジェット式記録ヘッドの構成を説明する。 図示のインクジェット式記録ヘッド1(液体噴射ヘッド:以下、記録ヘッドという)は、カートリッジケース100と、インクジェット式記録ヘッド本体200(以下、記録ヘッド本体という)と、接合部としての固定板300と、カバーヘッド400とで構成されている。カートリッジケース100は、インク供給手段であるインクカートリッジ(図示なし)がそれぞれ装着されるカートリッジ装着部101を有する。また、カートリッジケース100の底面には、一端が各カートリッジ装着部101に開口し、他端が記録ヘッド本体200側に開口する複数のインク連通路102が設けられている。さらに、カートリッジ装着部101のインク連通路102の開口部分には、インクカートリッジに挿入されるインク供給針103が固定されている。 【0031】 カートリッジケース100の底面側には、所定間隔で位置決めされた複数(図示例では4個)の記録ヘッド本体200(記録ヘッドユニット)が固定されている。記録ヘッドユニットの4個の記録ヘッド本体200は各色のインクに対応してそれぞれ設けられ、4個の記録ヘッド本体200は固定板300に接着固定されることにより互いに位置決めされている。このように位置決めされた状態で記録ヘッドユニットはカートリッジケース100の底面側に設けられている。 【0032】 図4、図5に基づいて記録ヘッド本体200の構成について説明する。 【0033】 図に示すように、記録ヘッド本体200を構成する流路形成基板201は、例えば、シリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜202が形成されている。流路形成基板201には複数の圧力発生室203が形成され、圧力発生室203は他方面側から異方性エッチングすることにより形成される。例えば、流路形成基板201には圧力発生室203が幅方向に並設された列が2列形成されている。また、各列の圧力発生室203の長手方向外側にはリザーバ204を構成する連通部205が形成され、連通部205は後述する保護基板に設けられるリザーバ部と連通し、リザーバ204は各圧力発生室203の共通のインク室となる。また、連通部205は、インク供給路206を介して各圧力発生室203の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。 【0034】 また、流路形成基板201の開口面側にはノズル207が穿設されたノズルプレート208が接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。ノズルプレート208は、例えば、金属材料等の導電性を有する材料(例えば、ステンレス鋼:SUS)によって形成されている。 【0035】 一方、流路形成基板201の表面に形成された弾性膜202上には圧電素子212が形成されている。圧電素子212は、例えば、白金、イリジウム等の金属材料からなる下電極膜(図示省略)と、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層(図示省略)と、例えば、イリジウム等の金属材料からなる上電極膜(図示省略)とからなっている。 【0036】 さらに、このような圧電素子212が形成された流路形成基板201上には、圧電素子212に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部213を有する保護基板214が接合されている。また、この保護基板214には、上述したように流路形成基板201の連通部205と連通されて各圧力発生室203の共通のインク室となるリザーバ204を構成するリザーバ部215が形成されている。」 エ 「【0040】 記録ヘッド本体200は、リザーバ204からノズル207に至るまで内部をインクで満たした後、駆動IC216からの記録信号に従い、圧力発生室203に対応するそれぞれの圧電素子212に電圧を印加し、弾性膜202及び圧電素子212をたわみ変形させて各圧力発生室203内のインクに圧力を付与することにより、ノズル207からインク滴を吐出させる。 【0041】 4個の記録ヘッド本体200は、図6に示すように、所定間隔で互いに位置決めされた状態で固定板300に接着固定されている。固定板300は大きなリブなどが存在しない平板からなるため、4個の記録ヘッド本体200の組み付けが行いやすい。固定板300にはノズル207を露出する開口としての露出開口部301が各記録ヘッド本体200に対応して設けられ、固定板300は各記録ヘッド本体200を構成するノズルプレート208の周縁部に接着剤350を介して接合されている。」 オ 「【0055】 そして、固定板300に固定された4個の記録ヘッド本体200の周囲にはカバーヘッド400が設けられ、カバーヘッド400により4個の記録ヘッド本体200がインク等から保護されている。カバーヘッド400は、固定板300の露出開口部301に対応して開口部401を有している。 【0056】 図1乃至図3に示すように、カバーヘッド400は端部にフランジ部402を有し、フランジ部402には貫通孔403が設けられている。カートリッジケース100の記録ヘッド本体200側の面には突起部104が設けられ、突起部104にカバーヘッド400の貫通孔403を嵌合し、突起部104の先端を加熱してかしめることによりカバーヘッド400がカートリッジケース100に固定される。 【0057】 カバーヘッド400の材料は、特に限定されず、ノズルプレート208等と同様に、例えば、金属材料等の導電性材料を用いてもよい。導電性材料を用いてカバーヘッド400を形成した場合、固定板300とカバーヘッド400とを電気的に接続し、カバーヘッド400を接地するようにしてもよい。また、このような構成とする場合には、ノズルプレート208と固定板300との接合と同様に、接着剤によってカバーヘッド400と固定板300とを接合するのが望ましい。」 上記ア乃至オの記載から、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「ノズルプレートに穿設されたノズルと連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板上に設けられた圧電素子の変位によりノズルからインク滴を吐出させるインクジェット式記録装置であって、 記録ヘッド本体を構成する流路形成基板には複数の圧力発生室が形成され、 流路形成基板の開口面側にはノズルが穿設されたノズルプレートが接着剤や熱溶着フィルム等によって固着され、 圧電素子が形成された流路形成基板上には、圧電素子に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部を有する保護基板が接合され、この保護基板には、流路形成基板の連通部と連通されて各圧力発生室の共通のインク室となるリザーバを構成するリザーバ部が形成され、 4個の記録ヘッド本体は、所定間隔で互いに位置決めされた状態で固定板に接着固定され、固定板にはノズルを露出する開口としての露出開口部が各記録ヘッド本体に対応して設けられ、固定板は各記録ヘッド本体を構成するノズルプレートの周縁部に接着剤を介して接合され、 固定板に固定された4個の記録ヘッド本体の周囲にはカバーヘッドが設けられ、カバーヘッドは、固定板の露出開口部に対応して開口部を有し、 ノズルプレートと固定板との接合と同様に、接着剤によってカバーヘッドと固定板とを接合する、インクジェット式記録装置。」 (2)引用刊行物2 当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成16年10月14日に頒布された刊行物である特開2004-284273号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 液滴吐出装置に取付可能とされた本体部材と、 前記本体部材に固定され、液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズルプレートと、 前記ノズルプレートを前記本体部材に対して保持する保持部材と、 を有する液滴吐出ヘッドであって、 前記ノズルをキャッピングするキャップ部材が前記ノズルの周囲において保持部材にノズルプレートの反対側から接触してキャッピングするように、保持部材が設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関し、さらに詳しくは、液滴を吐出して記録媒体上に文字や画像などを記録したり、基板上に微細パターンや薄膜の形成等を行うための液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関する。」 ウ 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであり、その目的は、ノズルプレートを本体部材に対して確実に保持でき、且つ小型化可能な液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供することである。」 上記ア乃至ウの記載から、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「液滴吐出装置に取付可能とされた本体部材と、 前記本体部材に固定され、液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズルプレートと、 前記ノズルプレートを前記本体部材に対して保持する保持部材と、 を有する液滴吐出ヘッドであって、 前記ノズルをキャッピングするキャップ部材が前記ノズルの周囲において保持部材にノズルプレートの反対側から接触してキャッピングするように、保持部材が設けられている液滴吐出ヘッド。」 第4 対比 そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、 1.後者の「複数の圧力発生室」、「変位によりノズルからインク滴を吐出させる圧電素子」、「記録ヘッド本体」、「ノズル」、「ノズルプレート」、「開口部」、「カバーヘッド」、「記録ヘッド本体」、及び「インクジェット式記録装置」は、それぞれ、前者の「複数の圧力発生室」、「圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段」、「ヘッド本体」、「ノズル(ノズル開口)」、「ノズルプレート」、「開口部」、「カバーヘッド」、「液体噴射ヘッド」、及び「液体噴射装置」」に相当する。 2.後者の「固定板」には、4個の記録ヘッド本体が固定され、接着剤によってカバーヘッドと接合するものであって、前者の「スペーサー」に相当するものであるから、後者の「カバーヘッド」は、「スペーサーを挟んで前記ヘッド本体に取り付けられ」るといえる。 3.後者の「流路形成基板」には。「複数の圧力発生室が形成され」ているから、前者の「圧力発生室を有する流路ユニット」に相当する。 4.後者の「保護基板」は、「圧電素子が形成された流路形成基板上に」「接合され」、「圧電素子に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部を有」するから、前者の「流路ユニット及び圧力発生手段を保持する保持部材」に相当する。 5.後者の「リザーバ部」は、「保護基板」に形成され、「流路形成基板の連通部と連通されて各圧力発生室の共通のインク室となるリザーバを構成する」ものであるから、前者の「液体流路」に相当し、「保持部材には、流路ユニットに液体を供給する液体流路が形成され」ているといえる。 6.後者の「記録ヘッド本体」は、「流路形成基板」を構成要素とし、その「流路形成基板」上には、「圧電素子保持部を有する保護基板」が接合され、「圧電素子」が「記録ヘッド本体」の構成要素であることは当該流体噴射装置の分野において、自明の事項であるから、「ヘッド本体は、圧力発生室を有する流路ユニットと、流路ユニット及び圧力発生手段を保持する保持部材とを備え」ているといえる。 7.後者の「ノズルが穿設されたノズルプレート」は、「流路形成基板の開口面側に接着剤や熱溶着フィルム等によって固着され」るものであるから、「ノズルプレートは、流路ユニットに接合され」ているといえる。 8.後者の「カバーヘッド」は、「固定板の露出開口部に対応して開口部を有」し、「接着剤によってカバーヘッドと固定板とを接合する」ものであるから、「スペーサーは、カバーヘッドの開口部の縁部とヘッド本体とに接着剤で接着され」、「カバーヘッドは、カバーヘッドの開口部がスペーサーの開口に重なるようにスペーサーに接着剤で接着されている」といえる。 9.後者の「固定板」は、「各記録ヘッド本体を構成するノズルプレートの周縁部に接着剤を介して接合され」るものであるから、「スペーサーは、開口部を有し、保持部材に接着剤で接着され」るといえる。 したがって、両者は、 「複数の圧力発生室、前記圧力発生室に液体を供給する液体流路、及び前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を発生させる圧力発生手段を備えるヘッド本体と、 前記ヘッド本体に接合され、前記圧力発生室に連通するノズル開口が形成されたノズルプレートと、 前記ノズル開口が露出する開口部を有するカバーヘッドと、を備える液体噴射ヘッドと、 前記カバーヘッドは、スペーサーを挟んで前記ヘッド本体に取り付けられ、 前記スペーサーは、前記カバーヘッドの開口部の縁部と前記ヘッド本体とに接着剤で接着され、 前記ヘッド本体は、前記圧力発生室を有する流路ユニットと、該流路ユニット及び前記圧力発生手段を保持する保持部材とを備え、 前記保持部材には、前記流路ユニットに液体を供給する前記液体流路が形成され、 前記ノズルプレートは、前記流路ユニットに接合され、 前記スペーサーは、開口部を有し、前記保持部材に接着剤で接着され、 前記カバーヘッドは、該カバーヘッドの開口部が前記スペーサーの開口に重なるように前記スペーサーに接着剤で接着されている 液体噴射装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明1が、「液体噴射ヘッドのカバーヘッドの開口部を封止するキャップ部材」を有するのに対し、引用発明1は、その点、明らかでない点。 [相違点2] 本願発明1が、スペーサーは、開口部を有し、「該開口部内にノズルプレートが位置するように」保持部材に接着剤で接着されるものであるのに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。 第5 判断 上記各相違点について検討する。 1.[相違点1]について 引用発明2の「液滴吐出ヘッド」、及び「キャップ部材」は、それぞれ、本願発明1の「液体噴射ヘッド」、及び「キャップ部材」に相当する。 引用発明2の「保持部材」は、「ノズルプレートを前記本体部材に対して保持する」ものであるから、本願発明1の「カバーヘッド」に相当する。 そして、引用発明2の「ノズルをキャッピングするキャップ部材」は、「ノズルの周囲において保持部材にノズルプレートの反対側から接触してキャッピングする」ものであるから、「カバーヘッドの開口部を封止する」といえる。 そうすると、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明2に示されている。 そして、引用発明1と引用発明2とは、液体噴射装置という共通の技術分野に属し、また、一般に液体噴射装置に関連する技術分野において、ノズル周辺を保護することは、周知の課題であるから、引用発明1、及び引用発明2においても、内在する自明の課題である。 そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 [相違点2について] 上記相違点2に係る本願発明の発明事項である「スペーサーは、開口部を有し、『該開口部内にノズルプレートが位置するように』保持部材に接着剤で接着されるもの」について、本願明細書をみても、設計的事項の域を超えるほどの格別な技術的意義は認められないから、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 よって、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-03 |
結審通知日 | 2017-10-10 |
審決日 | 2017-10-24 |
出願番号 | 特願2012-131637(P2012-131637) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金田 理香、鈴木 友子、三橋 健二 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 吉村 尚 |
発明の名称 | 液体噴射装置 |
代理人 | 仲井 智至 |
代理人 | 渡辺 和昭 |
代理人 | 西田 圭介 |