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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1335608
審判番号 不服2017-3679  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-13 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2015-514389「電気コンポーネントをテストするための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日国際公開、WO2013/178392、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521287、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年4月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年6月1日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月15日付けで手続補正がされ、平成28年3月22日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月27日付けで手続補正がされ、同年11月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月4日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

原査定時における本願請求項1-21に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2011-081000号公報
2.実願昭61-017085号(実開昭62-128324号)のマイクロフィルム
3.特開2008-039452号公報


第3 本願発明
本願請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成29年3月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、実質的に原査定時における請求項1に従属する請求項11に係る発明であって、以下のとおりの発明である。

「電気コンポーネントをテストするための装置(1)において、
該装置(1)は、
シミュレーション信号を形成するためのシミュレーション装置(2)と、
複数のテスト装置(4)と、
複数の電気的な接続装置(5)とを有しており、
前記シミュレーション装置(2)および前記複数のテスト装置(4)は、前記複数の電気的な接続装置(5)に導電的に接続されているかまたは接続可能である、装置(1)において、
前記複数の電気的な接続装置(5)はそれぞれ、当該接続装置(5)とともに一体的に1つの機能ユニットとして構成された、少なくとも1つの電気的なスイッチ装置(9)を有しており、該スイッチ装置(9)は、前記複数のテスト装置(4)間の電気的な接続を遮断するかないしは接続するように配置されており、
前記複数の電気的な接続装置(5)は、それぞれ少なくとも1つの電気特性について互いに異なっており、
前記スイッチ装置(9)は、当該スイッチ装置(9)に接続される前記電気的な接続装置(5)の前記電気特性に適合された、少なくとも1つの電気特性を有しており、
前記シミュレーション装置(2)は、前記複数のテスト装置(4)のうちの少なくとも1つと一体的に構成されている、
ことを特徴とする装置(1)。」

なお、本願発明2-20は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
本発明は電気部品のテスト装置に関する。」

イ 「【0029】
図1には、電気部品のテスト装置、例えば、自動車用の制御装置またはオートメーション装置用の制御装置の有利な実施例の概略図が示されている。当該のテスト装置は、シミュレーション装置1,テスト装置2および3つの接続装置3?5を有している。
【0030】
シミュレーション装置1により、電気部品のエラーのない動作状態および/またはエラーを有する動作状態をシミュレートするシミュレーション信号が形成される。当該のシミュレーション信号は所定の電流および/または所定の電圧であり、付加的に、抵抗成分、
キャパシタンス成分、インダクタンス成分および/または周波数成分が含まれる。シミュレーション装置1は誤り挿入ユニットFIU(Failure Insertion Unit)を含む。また、シミュレーション信号は実線6で示されているような短絡を表す信号であってもよい。
【0031】
テスト装置2は図示されていない電気部品を接続するために用いられる。ここで、テスト装置2は、センサ、センサ装置、アクチュエータおよび/またはアクチュエータ装置を含む。この実施例では、テスト装置2はアクチュエータ装置として構成されており、図示されていない自動車の電気制御装置に接続されている。
【0032】
図1から見て取れるように、シミュレーション装置1およびテスト装置2は3つの接続装置3?5のうち少なくとも1つに電気的に接続される。シミュレーション装置1およびテスト装置2と第1の接続装置3との電気的接続は実線7によって示されている。また、シミュレーション装置1と第2の接続装置4との電気的接続は破線8によって示されている。
【0033】
ここで、有利には、図1に示されているように、シミュレーション装置1およびテスト装置2は同じ第1の接続装置3に電気的に接続される。シミュレーション装置1およびテスト装置2と3つの接続装置3?5の少なくとも1つとを電気的に接続するために、選択装置を設けることができる。選択装置は、ここでは図示されていないが、例えばリレーとして構成される。
【0034】
3つの接続装置3?5はそれぞれ2つの電気導体9を備えたバスバーとして構成されている。この場合、個々の接続装置3?5はそれぞれの電気的特性が相互に異なるように構成されている。
【0035】
この実施例では、第1の接続装置3に1Aから100Aまでの電流が供給され、第2の接続装置4に1Aまでの電流が供給され、第3の接続装置5に200Vから250Vまでの電圧が印加される。相応に、個々の接続装置3?5の電気的特性、例えば抵抗値、導関数値、キャパシタンス値および/またはインダクタンス値によって表される導電率も、シミュレーション信号としての高電流が第1の接続装置3に供給される際の寄生特性に基づく信号誤りが最小化されるように、また、低電流が第2の接続装置4に供給される際の寄生特性に基づく信号誤りが最小化されるように、また、高電圧が第3の接続装置5に印加される際の寄生特性に基づく信号誤りが最小化されるように、選定される。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電気部品のテスト装置であって、
当該テスト装置は、シミュレーション装置1,テスト装置2および3つの接続装置3?5を有しており、
シミュレーション装置1により、シミュレーション信号が形成され、
シミュレーション装置1およびテスト装置2は3つの接続装置3?5のうち少なくとも1つに電気的に接続され、
シミュレーション装置1およびテスト装置2と3つの接続装置3?5の少なくとも1つとを電気的に接続するために、選択装置を設けることができ、選択装置は、例えばリレーとして構成され、
3つの接続装置3?5はそれぞれ2つの電気導体9を備えたバスバーとして構成されており、個々の接続装置3?5はそれぞれの電気的特性が相互に異なるように構成されている
電気部品のテスト装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、測定装置と複数の被測定機器とを接続装置を介して選択的に接続する技術が記載されている(第5頁第16行-第9頁第12行、第1図)。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、複数の測定器16と複数の被検査機器14をリレーボックス8のリレーマトリクス回路44内のリレー接点群44a,44bで切替接続することにより、複数の測定器16を用いて複数の被検査機器14を検査することが記載されている(段落0049-0051、図5)。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「電気部品のテスト装置」、「シミュレーション装置1」、「テスト装置2」及び「3つの接続装置3?5」は、それぞれ、本願発明1の「電気コンポーネントをテストするための装置(1)」、「シミュレーション信号を形成するためのシミュレーション装置(2)」、「テスト装置(4)」及び「複数の電気的な接続装置(5)」に相当する。
イ 引用発明は、「シミュレーション装置1およびテスト装置2と3つの接続装置3?5の少なくとも1つとを電気的に接続するために」、「選択装置を設けることができ」るというものであるから、引用発明は、本願発明1と、「前記シミュレーション装置および前記テスト装置は、前記複数の電気的な接続装置に導電的に接続されているかまたは接続可能である、装置」である点で一致する。
ウ 引用発明において、「個々の接続装置3?5はそれぞれの電気的特性が相互に異なるように構成されている」から、引用発明は、本願発明1と同様に「前記複数の電気的な接続装置は、それぞれ少なくとも1つの電気特性について互いに異なって」いるものといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電気コンポーネントをテストするための装置において、
該装置は、
シミュレーション信号を形成するためのシミュレーション装置と、
テスト装置と、
複数の電気的な接続装置とを有しており、
前記シミュレーション装置および前記テスト装置は、前記複数の電気的な接続装置に導電的に接続されているかまたは接続可能である、装置において、
前記複数の電気的な接続装置は、それぞれ少なくとも1つの電気特性について互いに異なっている、
装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1は、「複数のテスト装置(4)」を有しており、「複数のテスト装置(4)」が「複数の電気的な接続装置(5)に導電的に接続されているかまたは接続可能である」というものであるのに対し、引用発明は、このような「複数」の「テスト装置2」を有するとされていない点。

相違点2:本願発明1は、「前記複数の電気的な接続装置(5)はそれぞれ、当該接続装置(5)とともに一体的に1つの機能ユニットとして構成された、少なくとも1つの電気的なスイッチ装置(9)を有しており、該スイッチ装置(9)は、前記複数のテスト装置(4)間の電気的な接続を遮断するかないしは接続するように配置され」る装置であるのに対し、引用発明は、「シミュレーション装置1およびテスト装置2と3つの接続装置3?5の少なくとも1つとを電気的に接続するため」の「選択装置」を備えており、また「選択装置」は「例えばリレーとして構成され」るとされているので、電気的なスイッチ装置と認められるが、これはシミュレーション装置1と接続装置3?5の間及びテスト装置2と接続装置3?5の間に設けられるスイッチ装置であって、「複数のテスト装置(4)間の電気的な接続を遮断するかないしは接続するように配置されて」いるものではない点。

相違点3:本願発明1は、「前記スイッチ装置(9)は、当該スイッチ装置(9)に接続される前記電気的な接続装置(5)の前記電気特性に適合された、少なくとも1つの電気特性を有しており」というものであるのに対し、引用発明は、このようなスイッチ装置を有するものとされていない点。

相違点4:本願発明1は、「前記シミュレーション装置(2)は、前記複数のテスト装置(4)のうちの少なくとも1つと一体的に構成されている」というものであるのに対し、引用発明の「シミュレーション装置1」と「テスト装置2」は、「接続装置3?5」により電気的に接続されるように図示されており、本願発明1のように、「一体的に構成されている」とされていない点。

(2)相違点についての判断
事例に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2、3の記載内容は、前記 第4 2-3のとおりであって、上記相違点2に係る、「スイッチ装置」が「複数のテスト装置間の電気的な接続を遮断するかないしは接続するように配置されて」いるという事項に関し記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1,3,4について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1-3に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-20について
本願発明2-20は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-20は、当業者が引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-11 
出願番号 特願2015-514389(P2015-514389)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 續山 浩二  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 電気コンポーネントをテストするための装置  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
代理人 前川 純一  
代理人 二宮 浩康  

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