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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1335665 |
審判番号 | 不服2016-10452 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-11 |
確定日 | 2017-12-21 |
事件の表示 | 特願2012-65616「収納器群」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月30日出願公開、特開2013-197488〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成24年3月22日の出願であって、 平成26年6月12日に審査請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、 平成27年3月4日付けで拒絶理由通知(同年同月10日発送)がなされ、 これに対して同年5月1日に意見書が提出されると共に手続補正がなされ、 さらに同年12月21日付けで最後の拒絶理由通知(平成28年1月5日発送)がなされ、 これに対して平成28年3月4日に意見書が提出され、 同年4月22日付けで拒絶査定がなされた(謄本送達同年同月26日)。 これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許すべきものであるとの審決を求める」ことを請求の趣旨として平成28年7月11日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年7月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年7月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成28年7月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成27年5月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載 「 【請求項1】 それぞれ異なる1種の径の基板を収納する2つの収納器を少なくとも含む収納器群であって、 前記収納器は、前記基板を収納する収納部を複数備え、 前記収納部は、前記基板と接触する少なくとも2つの接触部を含み、 前記接触部の間の距離は、前記2つの収納器ごとに異なり、 前記2つの収納器は、外形形状および外形寸法が同じであり、かつ、 前記2つの収納器のうちの第1の収納器における、前記第1の収納器の底面に近い側からn番目(nは1以上前記収納部の数以下の整数)の前記収納部と、前記第1の収納器の底面との間の距離は、 前記2つの収納器のうちの第2の収納器における、前記第2の収納器の底面に近い側からn番目の前記収納部と、前記第2の収納器の底面との間の距離と同じであり、 前記第1の収納器および前記第2の収納器において、1つの前記収納部における前記接触部間の距離はそれぞれ一定であり、 前記接触部は、前記収納器と一体として設けられている、収納器群。 【請求項2】 前記第1の収納器と前記第2の収納器との前記収納部に、それぞれ前記基板を収納したときに、前記第1の収納器において平面視したときの前記基板の中心位置は、前記第2の収納器において平面視したときの前記基板の中心位置と同じである、請求項1に記載の収納器群。 【請求項3】 前記第1の収納器は、前記基板に直径が5インチの基板を収納し、 前記第2の収納器は、前記基板に直径が6インチの基板を収納する、請求項1または請求項2に記載の収納器群。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) を、 「 【請求項1】 それぞれ異なる1種の径の基板を収納する2つの収納器を少なくとも含む収納器群であって、 前記収納器は、前記基板を収納する収納部を複数備え、 前記収納部は、前記基板と接触する少なくとも2つの接触部を含み、 前記接触部の間の距離は、前記2つの収納器ごとに異なり、 前記2つの収納器は、外形形状および外形寸法が同じであり、かつ、 前記2つの収納器のうちの第1の収納器における、前記第1の収納器の底面に近い側からn番目(nは1以上前記収納部の数以下の整数)の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第1の収納器の底面との間の距離は、 前記2つの収納器のうちの第2の収納器における、前記第2の収納器の底面に近い側からn番目の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第2の収納器の底面との間の距離と同じであり、 前記第1の収納器および前記第2の収納器において、1つの前記収納部における前記接触部間の距離はそれぞれ一定であり、 前記接触部は、前記収納器と一体として設けられている、収納器群。 【請求項2】 前記第1の収納器と前記第2の収納器との前記収納部に、それぞれ前記基板を収納したときに、前記第1の収納器において平面視したときの前記基板の中心位置は、前記第2の収納器において平面視したときの前記基板の中心位置と同じである、請求項1に記載の収納器群。 【請求項3】 前記第1の収納器は、前記基板に直径が5インチの基板を収納し、 前記第2の収納器は、前記基板に直径が6インチの基板を収納する、請求項1または請求項2に記載の収納器群。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) に補正することを含むものである。(下線は、請求人が付加したもの。) 2.補正の適否 2-1 特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項(目的要件)に関する検討 本件補正は、補正前の請求項1に係る発明特定事項とされた、「第1の収納器」及び「第2の収容器」の各々について特定された「距離」を特定する事項として、「収納部」と「収納器の底面」との間とされていたものを、本件補正により「収納部において保持される前記基板の下部表面」と「収納器の底面」との間へと変更するものである。 前記補正による変更事項は、本件の当初明細書の段落0018に記載された事項であり、本件補正によって、補正前でいう「距離」の基点が文言上「収納部」のいずれの箇所であるか任意であったものを、本件補正により収納部が収納する基板の具体的箇所である「下部表面」を用いて「距離」の基点を限定した内容となることから、同法同条第5項第2号でいう、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、これらの補正により、補正前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更がないのは明らかである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項の規定を満足する。 2-2 独立特許要件について 上記2-1に示したとおり、本件補正の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に該当するので、次に、本件補正後の請求項1ないし3に記載されている事項により特定される発明(以下、請求項1に係る発明を、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-2-1 本件補正発明 本件補正発明は、上記1.の本件補正後の特許請求の範囲において【請求項1】として記載したとおりのものである。 2-2-2 先行技術 2-2-2-1 引用文献1及び引用発明 本願の出願日前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成27年12月21日付けの拒絶理由通知において引用された、特開平11-59777号公報(平成11年3月2日公開、以下、「引用文献1」という。)には、図1?図7とともに、以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて附加した。) A 「【0001】 【発明の属する技術分野】本願の発明は、半導体装置の製造に際して用いられるウェハキャリア等の様に被収容物を収容するための収容器に関するものである。」 B 「【0010】つまり、一従来例のウェハキャリア11では、このウェハキャリア11を対象とする処理を短時間で行うことが困難であり、このウェハキャリア11を対象とする設備や装備の構造も複雑である。従って、本願の発明は、収容器を対象とする処理を短時間で行うことができ、収容器を対象とする設備や装備の構造も簡単でよい収容器を提供することを目的としている。」 C 「【0011】 【課題を解決するための手段】請求項1に係る収容器では、収容部が複数種類の内側寸法を有しているので、収容部の内側寸法として複数種類の被収容物の寸法に対応する複数種類の寸法を採用することができる。そして、それにも拘らず、外形が単一種類の寸法しか有していないので、この収容器を対象とする設備や装備を収容器の外形に応じて調整する必要がない。 【0012】請求項2に係る収容器では、収容状態にある被収容物の中心位置が収容器の外形に対して同一の位置になるので、被収容物を収容器内に収容したり収容器内から取り出したりするための設備を収容器の外形に応じて調整する必要がない。」 D 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、ウェハキャリアに適用した本願の発明の第1?第3実施形態を、図1?4を参照しながら説明する。図1、2が、第1実施形態を示している。この第1実施形態のウェハキャリア31にも、複数枚のウェハ32を収容する収容部33と、ロボットによる把持用のフランジ(図示せず)と、水平設置時の位置決め用のH字型部35と、垂直設置用の一対の脚部36とが設けられており、脚部36には垂直設置時の位置決め用のV字型ノッチ(図示せず)が設けられている。 【0015】但し、この第1実施形態のウェハキャリア31では、収容部33に収容するウェハ32の大きさに拘らず外形寸法が一種類である。即ち、フランジ、H字型部35、脚部36及びV字型ノッチ等の位置及び大きさが統一されている。また、図2に示す様に収容部33の形状は収容すべきウェハ32の大きさに対応して互いに異なっているが、H字型部35から収容状態にある1枚目のウェハ32までのピッチ及び収容状態にある各ウェハ32間のピッチは統一されている。 【0016】更に、図2に示す様に、収容されているウェハ32の大きさが互いに異なっていても、一種類のローディングアーム37及びアンローディングアーム38でローディング及びアンローディングを行うことができる様に、収容状態にあるウェハ32の中心位置がウェハキャリア31の外形に対して同一の位置になる内側形状を収容部33が有している。」 (図面看取事項) また、図1の(a)及び(b)とされる、ウェハキャリア31の各断面図から看取される事項として、収容部33は1枚づつウェハを収納すべく複数形成され、具体的に個々の収容部33は、キャリア31の中央に向かって断面先細となる仕切り板が略同一長で揃えられてウェハキャリア31に設けられた構造とされている様が見てとれる。加えて図1(a)の図示では、ウェハ32は両側2箇所で収容部33と接して収容される様が見てとれる。 さらに、当該図1と図6(a)とされるウェハキャリア11の水平状態設置を図示した図面とを見比べると、図1に図示されたウェハキャリア31をベース(図6(a)中の24)に設置する際に用いられるH字型部(図1(a)、(b)では35)がウェハキャリア31の底面とされることが見てとれる。 以上記載事項AないしD、及び、図面看取事項から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「外形寸法が一種類の収容器とされ、当該収容器に収容されるウェハ32の大きさに対応して前記収容器の内側寸法を構成するウェハの収納部33の内側形状が異なるようにされた複数種類の収容器であるウェハキャリア31であって、 前記ウェハキャリア31は、前記ウェハ32を収納する収納部33を複数設け、 前記収納部33は、前記ウェハ32の両側2箇所で接して収納するものであり、 前記ウェハ32の両側2箇所で接する収納部33の形状は、収容されるウェハ32の大きさに対応して異なっており、かつ、該収納部33の複数は略同一長で揃えられてウェハキャリア31に設けられ 前記ウェハキャリア31を水平設置する際に底面とされる位置になるH字型部35から1枚目のウェハ32までのピッチ及び収容状態にある各ウェハ32間のピッチが、収容されるウェハの大きさが異なる種類のウェハキャリア31同士の間で統一されていることにより、収容状態にある被収容物の中心位置が収容器の外形に対して同一の位置になるようになされている 複数種類の収容器であるウェハキャリア。」 2-2-2-2 引用文献2及びその記載事項 本願の出願日前に頒布され、原審の上記平成27年12月21日付けの拒絶理由通知において引用された、特開昭57-167629号公報(昭和57年10月15日公開、以下、「引用文献2」という。)には、第1図?第4図とともに、以下の事項が記載されている。 E 「ところで、ウェハー1を支持するキャリア2は、第2図に示すように、上部側を開口しその底部を円弧状に彎曲させた枠2aを備え、上方から挿入されたウェハー1を枠2aに支持させるものである。枠2aの内径L_(2)はウェハー1の外形寸法に適合した寸法になっているが、従来はキャリア2の外形寸法L_(1),L_(5)はウェハー1の外形寸法によりその大きさが異なっていた。」(第1ページ右欄下から3行?第2ページ左上欄5行) F 「第3図はその外形寸法がL_(2)であるウェハー1を支持するキャリア2を、また第4図はその外形寸法がL_(4)であるウェハー1を支持するキャリア2をそれぞれ示している。本発明はウェハー1の外形寸法L_(2),L_(4)の大小に関係なく、それぞれのキャリア2の外形寸法L_(3),L_(6)を同一としたものである。 各キャリア2の外形寸法L_(3),L_(6)は同一となっているものであるから、第1図の処理システムにおけるキャリア供給部3、各槽4,5,6の受け台7、キャリアチャック13の寸法等を一つのキャリア2の外形寸法L_(3),L_(6)に適合したものにすれば、これらは他のキャリア2についても共通して使用し得ることになる。」(第2ページ左上欄下から4行?右上欄10行) (図面看取事項) 第3図と第4図とを見比べると、破線で双方の図に図示されているウェハー1は、第3図が小径、第4図は大径と認識でき、記載事項Eの「枠2aの内径L_(2)はウェハー1の外形寸法に適合した寸法になっている」に対応する様子は、直接的には第3図のL_(2)が第4図のL_(4)より短くされている点で確認できるが、図中2aから内側に延びてウェハと重なって図示された箇所、すなわちウェハーを支持するとされた部分同士の間隔も、第3図のL_(2)が第4図のL_(4)より短くされていることに伴って第3図の間隔は第4図の間隔より狭く図示されていることが見てとれる。 2-2-3 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「収容器に収容されるウェハ32の大きさに対応して前記収容器の内側寸法を構成するウェハの収納部33の内側形状が異なるようにされた複数種類の収容器であるウェハキャリア31」は、本件補正発明の「それぞれ異なる1種の径の基板を収納する2つの収納器を少なくとも含む収納器群」に相当する。 また、引用発明の「前記ウェハキャリア31は、前記ウェハ32を収納する収納部33を複数設け」は、本件補正発明の「前記収納器は、前記基板を収納する収納部を複数備え」に相当し、 引用発明の「前記収納部33は、前記ウェハ32の両側2箇所で接して収納するものであり」は、本件補正発明の「前記収納部は、前記基板と接触する少なくとも2つの接触部を含み」に相当し、 引用発明の「外形寸法が一種類の収容器とされ」は、本件補正発明の「前記2つの収納器は、外形形状および外形寸法が同じであり」に相当する。 さらに、引用発明の「該収納部33の複数は略同一長で揃えられてウェハキャリア31に設けられ」は、本件補正発明の「前記第1の収納器および前記第2の収納器において、1つの前記収納部における前記接触部間の距離はそれぞれ一定であり、 前記接触部は、前記収納器と一体として設けられている」に相当する。 加えて、引用発明の「前記ウェハキャリア31を水平設置する際に底面とされる位置になるH字型部35から1枚目のウェハ32までのピッチ及び収容状態にある各ウェハ32間のピッチが、収容されるウェハの大きさが異なる種類のウェハキャリア31同士の間で統一されていることにより、収容状態にある被収容物の中心位置が収容器の外形に対して同一の位置になるようになされている」は、「H字型部35」が底面とされ、その直上の1枚目のウェハ32までのピッチ、すなわち間隔が、収納されるウェハの大きさが異なるウェハキャリア同士で同じであることに加えて、各ウェハ間のピッチ、すなわち間隔も統一されているため、任意のn番目のウェハ同士の底面からの距離もウェハキャリア同士で同じことになるから、本件補正発明の「前記2つの収納器のうちの第1の収納器における、前記第1の収納器の底面に近い側からn番目(nは1以上前記収納部の数以下の整数)の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第1の収納器の底面との間の距離は、前記2つの収納器のうちの第2の収納器における、前記第2の収納器の底面に近い側からn番目の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第2の収納器の底面との間の距離と同じであり」に相当する。 以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 「それぞれ異なる1種の径の基板を収納する2つの収納器を少なくとも含む収納器群であって、 前記収納器は、前記基板を収納する収納部を複数備え、 前記収納部は、前記基板と接触する少なくとも2つの接触部を含み、 前記2つの収納器は、外形形状および外形寸法が同じであり、かつ、 前記2つの収納器のうちの第1の収納器における、前記第1の収納器の底面に近い側からn番目(nは1以上前記収納部の数以下の整数)の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第1の収納器の底面との間の距離は、 前記2つの収納器のうちの第2の収納器における、前記第2の収納器の底面に近い側からn番目の前記収納部において保持される前記基板の下部表面と、前記第2の収納器の底面との間の距離と同じであり、 前記第1の収納器および前記第2の収納器において、1つの前記収納部における前記接触部間の距離はそれぞれ一定であり、 前記接触部は、前記収納器と一体として設けられている、収納器群。」 (相違点) 本件補正発明では「前記接触部の間の距離は、前記2つの収納器ごとに異なり」と特定しているのに対して、引用発明で対応する「収納部33」の「ウェハ32の両側2箇所で接して」いる箇所の間の距離が、収納されるウェハの大きさを異にしたウェハキャリア31同士でどのようにされているかを直接示していない点。 2-2-4 判断 上記相違点について検討する。 引用発明のウェハキャリア31の内部のウェハ収納空間に関する事項は、上記2-2-2-1のDに摘記されたとおり、「収容部33の形状は収容すべきウェハ32の大きさに対応して互いに異なっている」に留まるものの、他方で「収容部33」に求められる機能として、「前記収納部33は、前記ウェハ32の両側2箇所で接して収納するもの」とする事項も求められている。 そうすると、比較的大径のウェハを収容するウェハキャリア31にはその大きさに相応して接するに足るべき収容部の間隔が当然に求められ、比較的小径のウェハを収容するウェハキャリア31にも同様に相応して接するに足るべき収容部の間隔が当然に求められることは、技術常識といえる。 したがって、引用発明の「収容部33の形状は収容すべきウェハ32の大きさに対応して互いに異なっている」との事項は、収納されるウェハの大きさを異にしたウェハキャリア31同士での「収納部33」の「ウェハ32の両側2箇所で接して」いる箇所の間の距離を直接明らかとしてはいないものの、被収納物であるウェハの大きさが異なった場合、中央に収納されるウェハへウェハキャリア31の両側から設けられるとする収納部33相互の距離は、ウェハを接して保持する機能を求められる以上、当然に収納部33相互の距離も異なる、すなわち、大きさが小径のウェハであれば比較的短い距離とされ、大きさが大径のウェハであれば比較的長い距離になるよう設計されていると追認できる。 また、上記追認は、ウェハーキャリアの外形寸法を共通として、被収納物とされるウェハーのサイズが異なるものに対してそのようにした公知の設計事例が、上記「2-2-2-2 引用文献2及びその記載事項」のE、F及び図面看取事項として示されていることから見ても明らかといえる。 以上を総合すると、当該相違点に係る事項は、引用発明に接した当業者が技術常識に基づいて当然に設計する事項ないし公知技術というべきであるから、本件補正発明は、当業者が引用発明及び技術常識ないし公知技術に基づいて、容易になし得たというべきである。 よって、上記で検討したごとく、当該相違点は格別のものではなく、そして、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び技術常識ないし公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び技術常識ないし公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2-2-5 小括 以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、その出願の出願日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び技術常識ないし公知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。 3. 補正却下むすび 以上のとおり、本件補正は、上記2-2のとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1. 本願発明の認定 平成28年7月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項1に対応する本件補正前の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年5月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのもの(上記第2の1.を参照)である。 2. 先行技術・引用発明の認定 上記「第2 平成28年7月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の2-2で示したとおり、本件出願の出願日前に頒布または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原審の拒絶の査定において引用された上記引用文献1、2には上記文献記載事項及び図面看取事項が記載されている。 そして、上記引用文献1には上記「第2 平成28年7月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の2-2-2-1で認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 3. 対比・判断 上記第2.の2で検討した本件補正発明は、実質的には本願発明に対し上記第2.の2-1で述べた限定的減縮をしたものと認められるから、本願発明は、上記本件補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当すると認められる。 そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する上記本件補正発明は、上記第2.の2-2に記載したとおり、引用発明及び技術常識ないし公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明も同様の理由により、引用発明及び技術常識ないし公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願に係る出願日前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び技術常識ないし公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項についての検討をするまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-18 |
結審通知日 | 2017-10-24 |
審決日 | 2017-11-07 |
出願番号 | 特願2012-65616(P2012-65616) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宇多川 勉 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 近藤 裕之 |
発明の名称 | 収納器群 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |