• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1335735
審判番号 不服2016-8028  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-12-28 
事件の表示 特願2011-169513「サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 33570〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成23年8月2日の出願であって、平成27年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年10月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月3日付けで拒絶査定されたところ、同年6月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において平成29年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1-8に係る発明は、平成29年6月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記配線層は外部回路基板との接続を行う端子部を有し、
前記端子部上に、平面視上、長手方向における第一辺および第二辺を有する金属バンプ部を備え、
前記第一辺および前記第二辺の少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ金属バンプ部形状を有し、
前記端子部が、平面視上、長手方向における第三辺および第四辺を有し、
前記第三辺および前記第四辺の少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ端子部形状を有し、
前記金属バンプ部形状が、前記端子部形状に追従するように形成されていることを特徴とするサスペンション用基板。」
(当審注:請求項2は、請求項1を引用しているため、請求項1の発明特定事項と請求項2の発明特定事項とを併せて、上記のとおり認定した。)

2.引用例1の記載事項及び引用発明
当審において平成29年4月12日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)で引用した特開2002-124756号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回路基板および回路基板の端子部の接続構造、詳しくは、ハードディスクドライブに用いられる回路付サスペンション基板として、好適に用いることができる回路基板、および、その回路基板の端子部の接続構造に関する。」

(2)「【0030】図4は、回路付サスペンション基板の一実施形態を示す平面図である。図4において、この回路付サスペンション基板11は、ハードディスクドライブの磁気ヘッド(図示せず)を実装して、その磁気ヘッドを、磁気ヘッドと磁気ディスクとが相対的に走行する時の空気流に抗して、磁気ディスクとの間に微小な間隔を保持しながら支持するものであり、磁気ヘッドと、外部の回路としてのリード・ライト基板29とを接続するための配線が、所定の回路パターンとして一体に形成されている。
【0031】この回路付サスペンション基板11は、長手方向に延びる支持基板12の上に、絶縁体からなるベース層13が形成されており、そのベース層13の上に、所定の回路パターンとして形成される導体層14が形成されている。なお、この回路パターンは、互いに所定の間隔を隔てて平行状に配置される複数の配線14a、14b、14c、14dとして形成されている。支持基板12の先端部には、その支持基板12を切り抜くことによって、磁気ヘッドを実装するためのジンバル15が形成されている。また、その支持基板12の先端部には、磁気ヘッドと各配線14a、14b、14c、14dとを接続するための磁気ヘッド側接続端子16が形成されるとともに、支持基板12の後端部には、リード・ライト基板29の外部端子28と各配線14a、14b、14c、14dとを接続するための端子部としての外部側接続端子17が形成されている。
【0032】なお、図4においては、図示されていないが、実際には、導体層14の上には、絶縁体からなるカバー層18が被覆されている。
【0033】次に、このような回路付サスペンション基板11を製造する方法について、図5?図8を参照して説明する。なお、図5?図8においては、その右側に、回路付サスペンション基板11における外部側接続端子17が形成される部分を、各配線14a、14b、14c、14dの長手方向に沿う断面として示し、その左側に、回路付サスペンション基板11の長手方向途中を、各配線14a、14b、14c、14dの長手方向に直交する方向に沿う断面の一部として示している。
【0034】まず、図5に示すように、支持基板12を用意して、その支持基板12の上に、所定のパターンでべース層13を形成する。支持基板12としては、金属箔または金属薄板を用いることが好ましく、例えば、ステンレス、42アロイなどが好ましく用いられる。また、その厚さが、10?60μm、さらには、15?30μm、その幅が、50?500mm、さらには、125?300mmのものが好ましく用いられる。
【0035】また、べース層13を形成するための絶縁体としては、上記した絶縁体と同様のものでよく、感光性の合成樹脂、とりわけ、感光性のポリイミド樹脂が好ましく用いられる。」

(3)「【0052】次いで、図8に示すように、外部側接続端子17を形成する。外部側接続端子17を形成するには、まず、図8(a)に示すように、カバー層18が開口されることにより露出している金属皮膜22を剥離する。なお、これと同時に、支持基板12の上に形成されている金属皮膜22も剥離する。そして、露出した導体層14の表面に、下地めっき層19を形成する。下地めっき層19は、上記したように、厚さ1.0?4.0μmのニッケルめっき層26によって形成する。めっきの方法としては、電解めっき、無電解めっきのいずれでもよく、電解めっきによることが好ましい。電解めっきによって下地めっき層19を形成するには、例えば、下地めっき層19を形成する部分を残して、支持基板12およびカバー層18をレジストにより被覆した後、電解めっきを行ない、その後、レジストを除去すればよい。なお、下地めっき層19には、上記したように、ニッケルめっき層26の上に、必要により金めっき層を形成してもよく、図8においては、金めっきによって、金めっき層27が形成されている態様が示されている。
・・・
【0054】そして、図8(c)に示すように、下地めっき層19の上に、はんだバンプ32を形成することにより、回路付サスペンション基板11を得る。
【0055】はんだバンプ32の形成は、上記した組成の金属成分を含むはんだの粉末と、有機バインダーとが混合されているはんだペーストを、下地めっき層19にスクリーン印刷した後、リフロー炉などで加熱して、有機バインダーを焼失除去することにより、形成し、その後、必要により、水洗あるいは有機溶媒により洗浄すればよい。このようにして形成されるはんだバンプ32は、通常、断面略半円状をなし、その高さ(下面から頂上までの距離)が、50?250μm、さらには、約125μmであることが好ましい。
・・・
【0057】このようにして得られる回路付サスペンション基板11では、外部側接続端子17として、厚さ1.0?4.0μmのニッケルめっき層26が形成される下地めっき層19の上(必要により、金めっき層27が形成される場合には、その上)に、はんだバンプ32が形成されているので、接続された初期から、接続強度の向上を確実に図ることができる。したがって、この外部側接続端子17を、リード・ライト基板29の外部端子28と、常法に従って熱圧着することにより接続すれば、接続初期からの高い接続強度によって、リード・ライト基板29の外部端子28と接続することができ、接続信頼性の向上を図ることができる。」

(4)「【0020】はんだバンプ8は、この下地めっき層7の上に形成されている。はんだバンプ8に用いられるはんだの組成は、特に制限されず、例えば、鉛、錫、銀、銅、またはこれらの合金などが用いられる。これらのうち、例えば、通常用いられている、鉛および錫の組成からなるはんだを用いてもよい。」

(5)図4及び図8は以下のとおりである。
図4


図8


上記(1)?(5)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると、

ア 上記(2)の【0034】の記載によれば、回路付サスペンション基板11は、支持基板12として、金属箔、金属薄板、ステンレス、42アロイなどが用いられ、同【0031】の記載によれば、絶縁体からなるベース層13は、長手方向に延びる支持基板12の上に形成され、そのベース層13の上に所定の回路パターンとして形成される導体層14は、互いに所定の間隔を隔てて平行状に配置される複数の配線14a、14b、14c、14dとして形成されたものである。

イ 上記(2)の【0031】の記載によれば、支持基板12の後端部には、リード・ライト基板29の外部端子28と各配線14a、14b、14c、14dとを接続するための端子部としての外部側接続端子17が形成される。

ウ 上記(3)の【0052】及び【0054】の記載によれば、外部側接続端子17は、カバー層18が開口されることにより露出している金属皮膜22を剥離し、露出した導体層14の表面に下地めっき層19を形成し、下地めっき層19の上に、はんだバンプ32を形成したものである。

エ 上記(4)の【0020】の記載によれば、はんだバンプに用いられるはんだの組成は、鉛、錫、銀、銅、またはこれらの合金などであり、上記(3)の【0055】の記載によれば、はんだバンプ32は、金属成分を含むはんだの粉末と、有機バインダーとが混合されているはんだペーストを、下地めっき層19にスクリーン印刷した後、リフロー炉などで加熱して、有機バインダーを焼失除去することにより、形成される。

オ 図4によれば、外部側接続端子17の形状は、平面視上、長方形状であることが認められる。

上記ア?オを総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「金属箔、金属薄板、ステンレス、42アロイなどを用いた支持基板12と、長手方向に延びる支持基板12の上に形成された絶縁体からなるベース層13と、そのベース層13の上に互いに所定の間隔を隔てて平行状に配置される複数の配線14a、14b、14c、14dとして形成される導体層14とを有する回路付サスペンション基板11であって、
支持基板12の後端部には、リード・ライト基板29の外部端子28と各配線14a、14b、14c、14dとを接続するための端子部としての外部側接続端子17が形成され、
前記外部側接続端子17は、カバー層18が開口されることにより露出している金属皮膜22を剥離し、露出した導体層14の表面に、下地めっき層19を形成し、下地めっき層19の上に、はんだの組成として鉛、錫、銀、銅、またはこれらの合金などを用いたはんだバンプ32を形成したものであり、
前記外部側接続端子17の形状は、平面視上、長方形状であり、
はんだバンプ32は、金属成分を含むはんだの粉末と、有機バインダーとが混合されているはんだペーストを、下地めっき層19にスクリーン印刷した後、リフロー炉などで加熱して、有機バインダーを焼失除去することにより、形成したものである、
回路付サスペンション基板。」

3.引用例2の記載事項及び引用発明2
当審拒絶理由で引用した実願平4-14530号(実開平5-67048号)のCD-ROM(平成4年2月14日出願。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、プリント基板装置に関し、例えば集積回路装置のリードをはんだ接続するための互いに近接して設けられた複数の導電性ランドパターンを有するプリント基板装置において、はんだ接続時の各ランドパターン間またはリード間のはんだブリッジを的確に防止するための技術に関する。」

(2)「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、このような従来のプリント基板装置においては、導電性ランドパターン3にはんだを付加した場合には、図3の(b)に示すようにはんだ部分5の中央部が一番盛り上り、両サイドのはんだ量が少なくなる。従って、図4に示すように、このような形状の導電性ランドパターン3を使用して集積回路装置などのリード7をはんだ付けした場合には、はんだ部分5が導電性ランドパターン3の中央部付近で左右に広がり、隣接する導電性ランドパターンまたはリードとショートするいわゆるブリッジを生じることが多いという不都合があった。
【0004】
本考案の目的は、このような従来のプリント基板装置における問題点に鑑み、互いに近接して設けられた複数の導電性ランドパターンを有するプリント基板装置において、各導電性ランドパターン間のはんだブリッジを的確に防止して基板生産工程の効率および歩留まりを向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案では、互いに近接して設けられ各々部品リードがはんだ付けされる複数の導電性ランドパターンを有するプリント基板装置において、前記各導電性ランドパターンの形状を中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成する。
【0006】
【作用】
上記構成においては、各導電性ランドパターンの中央部の幅が両端部の幅より小さくなっているから、このような導電性ランドパターンにはんだを付加した場合にも、導電性ランドパターンの中央部におけるはんだの量が少なくなり、部品リードをはんだ付けした場合にも導電性ランドパターンの中央部においてはんだ部分が横に広がることがなくなる。このため、部品リードをはんだ付けする際におけるはんだブリッジが的確に防止できる。
【0007】
【実施例】
以下、図面を参照して本考案の実施例につき説明する。図1は、本考案の1実施例に係わるプリント基板装置の部分的な平面図(a)、および側面断面図(b)である。同図のプリント基板装置は、絶縁基板11上に形成された導電性ランドパターン13を具備する。各導電性ランドパターン13は、例えば集積回路装置のような互いに近接した複数のリードをはんだ付けするために、互いに近接して平行に配置されている。そして、各導電性ランドパターン13は前記従来例(図3)の長方形のものと比較してその中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成されている。
【0008】
従って、このような形状を有する導電性ランドパターン13にはんだを付加した場合には、図1の(b)に示すように導電性ランドパターンの中央部におけるはんだ量が増加することがなく、従って中央部におけるはんだの盛り上りも生じない。
【0009】
このため、図2に示すように、このような導電性ランドパターン13を有するプリント基板装置に集積回路装置などのリード17をはんだ付けした場合にも、はんだ部分15が導電性ランドパターン13の中央部で両側に広がることがなくなり、各パターン13間のはんだブリッジを生ずることもなくなる。すなわち、互いに近接した複数のリードを各導電性ランドパターン13にはんだ付けする場合にも各導電性ランドパターン間あるいは各リード間のはんだブリッジを生ずることがなくなる。
【0010】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、互いに近接して設けられ各々部品リードがはんだ付けされる複数の導電性ランドパターンを有するプリント基板装置において、各導電性ランドパターンの形状を中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成したから、部品リードをはんだ付けする際にも、各導電性ランドパターンの中央部におけるはんだ量が少なくなり、中央部におけるはんだの広がりが生じないため、はんだブリッジが的確に防止される。このため、プリント基板生産工程における生産効率および歩留まりが大幅に向上する。」

(3)図1?図4は、以下のとおりである。
図1

図2

図3

図4


上記(1)?(3)の記載、引用例2の出願当時の周知技術及び当業者の技術常識を考慮すると、

ア 上記(2)の【0010】の記載によれば、互いに近接して設けられ各々部品リードがはんだ付けされる複数の導電性ランドパターンを有するプリント基板装置において、各導電性ランドパターンの形状を中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成することにより、部品リードをはんだ付けする際にも、各導電性ランドパターンの中央部におけるはんだ量が少なくなり、中央部におけるはんだの広がりが生じないため、はんだブリッジが的確に防止される。

イ 上記(1)の【0001】の記載によれば、導電性ランドパターン13は、集積回路装置のリードをはんだ接続するためにプリント基板装置に設けられたものであり、上記(2)の【0007】の記載によれば、各導電性ランドパターン13は、例えば集積回路装置のような互いに近接した複数のリードをはんだ付けするために、互いに近接して平行に配置されているから、図1に記載された複数の導電性ランドパターン13は、互いに近接して設けられた複数の端子部といい得るものである。

ウ 上記(2)の【0007】及び【0008】の記載によれば、各導電性ランドパターン13は図3の長方形のものと比較してその中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成されており、このような形状を有する導電性ランドパターン13にはんだを付加した場合には、図1の(b)に示すように導電性ランドパターンの中央部におけるはんだ量が増加することがなく、従って中央部におけるはんだの盛り上りも生じない。
これは、中央部の幅が両端部の幅より小さい導電性ランドパターン上に付加されたはんだの形状は、導電性ランドパターンの形状に追従するように形成されたものであり、平面視上、導電性ランドパターンの形状と同様の、中央部の幅が両端部の幅より小さい形状となるため、中央部におけるはんだの盛り上がりが生じず、中央部におけるはんだ量が少なくなると解するのが自然である。

エ さらに言えば、引用例2の出願当時(平成4年2月14日当時)、ピッチ間隔の小さいリード端子を有する電子部品をプリント配線板にはんだ付けする際、隣接する端子間の短絡を防止するために、端子上に形成されるはんだの形状が中央部の幅が両端部の幅より小さくなるように印刷する技術が周知(※)であったことも考慮すれば、引用例2は、端子上に、平面視上、中央部の幅が両端部の幅より小さい形状を有するはんだを形成するための、印刷に代わる技術を提示したものと推認できるから、上記ウのように解することに矛盾はない。

※周知例として、必要ならば、特開昭64-61091号公報(特に、[産業上の利用分野]の欄、[発明が解決しようとする問題点]の欄、[実施例]の欄及び第4図)、又は、特開平2-172292号公報(特に、[産業上の利用分野]の欄、第1ページ右下欄下から2行目?第2ページ左上欄第10行、同右上欄第16行?右下欄第13行、第2図(a)及び(b))参照。

上記ア?エを総合すると、引用例2には、次の技術事項が記載されていると認める。

「互いに近接して設けられた複数の端子部を有するプリント基板装置において、はんだブリッジを的確に防止する目的で、各端子部の形状を中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成することにより、各端子部上に形成されるはんだの形状を、端子部の形状に追従するように形成されたものであり、平面視上、端子部と同様の、中央部の幅が両端部の幅より小さい形状とする技術。」

4.対比
(1)引用発明の「金属箔、金属薄板、ステンレス、42アロイなどを用いた支持基板12」、「長手方向に延びる支持基板12の上に形成された絶縁体からなるベース層13」、「そのベース層13の上に互いに所定の間隔を隔てて平行状に配置される複数の配線14a、14b、14c、14dとして形成される導体層14」は、それぞれ本願発明の「金属支持基板」、「前記金属支持基板上に形成された絶縁層」、「前記絶縁層上に形成された配線層」に相当し、引用発明の「回路付サスペンション基板11」は、本願発明にいう「金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション基板」に対応するものといえる。

(2)引用発明の「はんだバンプ32」は、はんだの組成として鉛、錫、銀、銅、またはこれらの合金などを用いたものであるから、本願発明にいう「金属バンプ部」に対応するものといえる。
そして、引用発明の「リード・ライト基板29の外部端子28と各配線14a、14b、14c、14dとを接続するための端子部としての外部側接続端子17」は、カバー層18が開口されることにより露出している金属皮膜22を剥離し、露出した導体層14の表面に、下地めっき層19を形成し、下地めっき層19の上に、はんだバンプ32を形成したものであるから、引用発明の「外部側接続端子17」のうち、上記露出した導体層14の表面に下地めっき層19を形成した部分は、本願発明の「前記配線層」が有する「外部回路基板との接続を行う端子部」に対応するものといえる。
そして、引用発明では、上記下地めっき層19の上にはんだバンプ部32を形成した外部側接続端子17の形状は、平面視上、長方形状であるから、引用発明の「上記露出した導体層14の表面に下地めっき層19を形成した部分」の形状は、同様に、平面視上、長方形状であると解することができ、その長手方向の2辺は本願発明にいう「第三辺および第四辺」に対応するから、本願発明と引用発明とは、「前記端子部が、平面視上、長手方向における第三辺および第四辺を有」するといえる点で共通する。
もっとも、引用発明の「上記露出した導体層14の表面に下地めっき層19を形成した部分」の形状は、第三辺および第四辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ端子部形状」ではない。

(3)引用発明の「はんだバンプ32」は、金属成分を含むはんだの粉末と、有機バインダーとが混合されているはんだペーストを、下地めっき層19にスクリーン印刷した後、リフロー炉などで加熱して、有機バインダーを焼失除去することにより、形成したものであるから、その長手方向における2つの辺をそれぞれ第一辺及び第二辺とすると、本願発明の「金属バンプ部」と引用発明の「はんだバンプ32」とは、「前記端子部上に、平面視上、長手方向における第一辺および第二辺を有する金属バンプ部」である点で共通する。
もっとも、引用発明の「はんだバンプ32」の形状は、第一辺および第二辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ金属バンプ部形状」ではなく、「前記金属バンプ部形状が、前記端子部形状に追従するように形成され」たものか否かは明らかでない。

よって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「 金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、を有するサスペンション用基板であって、
前記配線層は外部回路基板との接続を行う端子部を有し、
前記端子部上に、平面視上、長手方向における第一辺および第二辺を有する金属バンプ部を備え、
前記端子部が、平面視上、長手方向における第三辺および第四辺を有することを特徴とするサスペンション用基板。」

(相違点)
本願発明では、端子部の第三辺および第四辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ端子部形状」であり、金属バンプ部の第一辺および第二辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ金属バンプ部形状」であり、「前記金属バンプ部形状が、前記端子部形状に追従するように形成され」ているのに対し、引用発明では、端子部の第三辺および第四辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ端子部形状」ではなく、金属バンプ部の第一辺および第二辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ金属バンプ部形状」ではなく、「金属バンプ部形状が、端子部形状に追従するように形成され」たものか否かは明らかでない点。

5.当審の判断
近年、サスペンション基板を含む配線回路基板の端子部の間隔が狭くなったことに伴い、隣接する端子部間のはんだブリッジによる短絡を防止する必要があることは、サスペンション基板の技術分野において周知の課題である(例えば、特開2008-205340号公報(特に、【0004】-【0006】、【0031】-【0033】)参照)。

そして、上記引用例2に記載された技術事項は、互いに近接して設けられた複数の端子部を有するプリント基板装置において、はんだブリッジを的確に防止することを目的としたものであるから、引用発明において、上記周知の課題を解決する手段として、上記引用例2に記載された技術事項を適用し、各端子部の形状を中央部の幅が両端部の幅より小さくなるよう形成することにより、各端子部上に形成されるはんだの形状を、端子部の形状に追従するように形成されたものであり、平面視上、端子部と同様の、中央部の幅が両端部の幅より小さい形状とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

この場合、端子部の形状は、中央部の幅が両端部の幅より小さいから、端子部の第三辺および第四辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ端子部形状」であり、かつ、各端子部上に形成されるはんだの形状は、端子部の形状に追従するように形成されたものであり、平面視上、端子部と同様に、中央部の幅が両端部の幅より小さい形状であるから、金属バンプ部の第一辺および第二辺の「少なくとも一方が、平面視上、両端部を結ぶ直線に対して中央部が内側に凹んだ金属バンプ部形状」であり、「金属バンプ部形状が、端子部形状に追従するように形成され」ていることは明らかである。

よって、引用発明に、上記引用例2に記載された技術事項を適用して上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるから、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-26 
結審通知日 2017-10-31 
審決日 2017-11-13 
出願番号 特願2011-169513(P2011-169513)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法  
代理人 山下 昭彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ