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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1335808
審判番号 不服2017-1530  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-02 
確定日 2018-01-22 
事件の表示 特願2015- 25153「移動局の測位のための暦の管理」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日出願公開、特開2015-121556、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成23年5月20日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2010年5月28日、米国)を伴う国際出願である特願2013-512099号の分割出願)
拒絶査定: 平成28年9月27日(送達日:同年10月3日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年2月2日
手続補正: 平成29年2月2日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2009/0280775号明細書
2.特表2004-519892号公報
3.特開平06-130144号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2008-538170号公報
5.特開2007-006081号公報
6.特開昭63-280369号公報


第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年2月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
現在の基地局暦(BSA)データバージョンと、ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報とを格納する、位置サーバを含み、
前記位置サーバが、
前記現在のBSAデータバージョンが、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンとは異なるかどうかを判定し、
異なる場合、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータが現在のものではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが現在のBSAデータを要求することに応答して、
前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更されたBSAデータのみを含むBSAデータサブセットを前記モバイルデバイスにダウンロードする
ように動作可能であり、
前記モバイルデバイスにダウンロードすることが、
前記位置サーバに格納される、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報の状態を更新することを含む、遠隔局装置。
【請求項2】
前記位置サーバが、
前記現在のBSAデータの変更に応答して、前記モバイルデバイスと関連付けられるフラグを設定し、
前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更されたBSAデータのみを含むBSAデータサブセットが前記モバイルデバイスにダウンロードされることに応答して、前記フラグをクリアする
ように構成される、請求項1に記載の遠隔局装置。
【請求項3】
モバイルデバイスから離れた位置にある基地局の暦データ管理システムであって、
少なくとも現在の基地局の暦データバージョンを記憶するための暦メモリと、
ホームシステムに登録される前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンの識別情報を記憶するためのモバイルデバイス情報メモリと、
前記現在の基地局の暦データバージョンが、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンよりも新しい場合、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データが最新ではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが最新の基地局の暦データを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更された基地局の暦データのみを含む基地局の暦データサブセットを前記モバイルデバイスにダウンロードするためのダウンロードシステムと
を含み、
前記モバイルデバイスにダウンロードすることが、
前記モバイルデバイス情報メモリに記憶される、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンの識別情報の状態を更新することを含む、基地局の暦データ管理システム。
【請求項4】
前記モバイルデバイスに保持される基地局の暦データバージョンと、前記暦メモリ中の前記現在の基地局の暦データバージョンとを比較するためのシステムをさらに含む、請求項3に記載の基地局の暦データ管理システム。
【請求項5】
前記暦メモリ中の前記現在の基地局の暦データバージョンを記憶するためのバージョンメモリをさらに含む、請求項3に記載の基地局の暦データ管理システム。
【請求項6】
前記現在の基地局の暦データバージョンの変更に応答して、前記モバイルデバイスと関連付けられるフラグを設定し、
前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更された基地局の暦データのみを含む基地局の暦データサブセットが前記モバイルデバイスにダウンロードされることに応答して、前記フラグをクリアする
ためのシステムをさらに含む、請求項3に記載の基地局の暦データ管理システム。
【請求項7】
前記モバイルデバイスに保持される前記基地局の暦データバージョンと、前記現在の基地局の暦データバージョンとを比較するための比較器をさらに含む、請求項3に記載の基地局の暦データ管理システム。
【請求項8】
モバイルデバイスから離れた位置にある基地局の暦データ管理システムであって、
少なくとも現在の基地局の暦データバージョンを管理するための手段と、
少なくとも現在の基地局の暦データバージョンを管理するための前記手段によって管理される、各基地局の暦データバージョンにバージョン識別情報を割り当てるための手段と、
ホームシステムに登録される前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンを管理するための手段と、
前記現在の基地局の暦データバージョンが、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンよりも新しい場合、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データが最新ではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが最新の基地局の暦データを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更された基地局の暦データのみを含む基地局の暦データサブセットにより前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データを更新するための手段と
を含み、
前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データを更新することが、
前記管理するための手段で管理される、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンの状態を更新することを含む、基地局の暦データ管理システム。
【請求項9】
更新するための前記手段が、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンと、前記現在の基地局の暦データバージョンとを比較するための手段を含む、請求項8に記載の基地局の暦データ管理システム。
【請求項10】
モバイルデバイスから離れた位置から基地局の暦データを管理するための方法であって、
前記基地局の暦データの各バージョンに一意なバージョン識別子を割り当てるステップと、
少なくとも現在の基地局の暦データバージョンと、前記現在の基地局の暦データバージョンに割り当てられる前記一意なバージョン識別子とを管理するステップと、
ホームシステムに登録される前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンのバージョン識別子を管理するステップと、
前記現在の基地局の暦データバージョンに割り当てられた前記バージョン識別子が、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データの前記バージョンの前記バージョン識別子よりも新しい場合、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データが最新ではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが最新の基地局の暦データを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更された基地局の暦データのみを含む基地局の暦データサブセットにより前記モバイルデバイスの中の基地局の暦データを更新するステップと
を含み、
前記モバイルデバイスの中の基地局の暦データを更新することが、
前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンのバージョン識別子を前記管理するステップで管理される、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンのバージョン識別子の状態を更新することを含む、方法。
【請求項11】
前記更新するステップが、前記モバイルデバイスが保持する前記基地局の暦データバージョンの前記バージョン識別子と、前記現在の基地局の暦データバージョンの前記バージョン識別子とを比較するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モバイルデバイスから離れた位置が、前記モバイルデバイスのための前記ホームシステムの位置である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
命令を記録したコンピュータ可読記録媒体であって、
コンピュータによって実行されると、固定された位置において基地局の暦データバージョンを管理し、基地局の暦データの各バージョンに一意なバージョン識別子を割り当てる、命令と、
コンピュータによって実行されると、ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンの識別子と、前記基地局の暦データの現在のバージョンの識別子とを、前記固定された位置において管理する、命令と、
コンピュータによって実行されると、前記基地局の暦データの前記現在のバージョンの前記識別子が、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データの前記バージョンの前記識別子よりも新しい場合、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データが最新ではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが最新の基地局の暦データを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更された基地局の暦データのみを含む基地局の暦データサブセットにより前記モバイルデバイスの中の基地局の暦データを更新する、命令と
を含み、
前記モバイルデバイスの中の基地局の暦データを更新することが、
前記固定された位置において管理される、前記モバイルデバイスが保持する基地局の暦データバージョンの識別子の状態を更新することを含む、コンピュータ可読記録媒体。
【請求項14】
前記コンピュータに、少なくとも基地局の暦データを管理させる命令をさらに含む、請求項13に記載のコンピュータ可読記録媒体。
【請求項15】
前記モバイルデバイス中の前記基地局の暦データの前記バージョンの前記識別子と、前記基地局の暦データの前記現在のバージョンの前記識別子とを、前記コンピュータに比較させる命令をさらに含む、請求項13に記載のコンピュータ可読記録媒体。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「[0023]FIG. 1 is a schematic block diagram of an SPS 110 and a cellular network 120 in communication with a mobile station 150 . Cellular network 120 , for this example, may provide voice communication for a number of mobile stations including mobile station 150 , for example, and may further support position estimation for the mobile stations in addition to providing voice communication. Cellular network 120 may comprise any of a number of cellular network types, several examples of which are described below. Cellular network 120 for this example comprises base stations 132 , 134 , and 136 that provide communication for a number of wireless terminals such as, for example, mobile station 150 . For simplicity, only a few base stations 132 , 134 , and 136 are depicted and one mobile station 150 is depicted in FIG. 1 . Of course, other examples may include additional numbers of base stations, and the configuration of base stations depicted in FIG. 1 is merely an example configuration. Also, cellular network 120 is merely an example wireless communications system, and the scope of claimed subject matter is not limited in this respect.」(当審訳:「図1は、モバイル局150と通信しているSPS110とセルラネットワーク120の概略ブロック図である。セルラネットワーク120は、この例の場合、例えばモバイル局150を含んでいる多数のモバイル局のためのボイス通信を提供することができ、ボイス通信を提供することに加えてモバイル局のための位置推定をさらにサポートすることができる。セルラネットワーク120は、多数のセルラネットワークタイプのうちのいずれかを備えることができ、それらのいくつかの例が下記で記載されている。この例のセルラネットワーク120は、例えばモバイル局150のような多数の無線端末のための通信を提供する基地局132、基地局134及び基地局136を備える。簡単化のために、少数の基地局132、基地局134、及び基地局136のみが図示され、そして1つのモバイル局150が図1で図示される。勿論、他の例は、さらなる数の基地局を含んでもよく、図1で図示された基地局の構成は、構成の単なる一例である。また、セルラネットワーク120は、無線通信システムの単なる一例であり、特許請求された主題の事柄の範囲は、この点で限定されない。」)

「[0028]A mobile switching center (MSC) 140 for this example may be coupled to base stations 132 , 134 , and 136 , and may further couple to other systems and networks, such as a public switched telephone network (PSTN), a packet data serving node (PDSN) 160 , and so on. MSC 140 for this example provides coordination and control for the base stations coupled to it and further controls the routing of data to/from the mobile stations served by these base stations. For the example depicted in FIG. 1 , PDSN 160 may couple MSC 140 to location server 170 and to a BSA server 180 . Location server 170 may collect and format location data, may provide assistance to mobile stations for position estimation, and/or may perform computations to obtain position estimates for the mobile stations. BSA server 180 manages a BSA database 185 , which for this example stores a hierarchal base station almanac for cellular network 110 .」(当審訳:「この例のモバイルスイッチングセンタ(MSC)140は、基地局132、基地局134及び基地局136に結合されることができ、公衆交換電話網(public switched telephone network)(PSTN)、パケットデータサービングノード(PDSN)160などのような他のシステム及びネットワークにさらに結合することができる。この例のMSC140は、それに結合された基地局のための調整及び制御を提供し、これらの基地局によってサービス提供されるモバイル局に対する/モバイル局からのデータのルーティングをさらに制御する。図1で図示された例の場合、PDSN160は、ロケーションサーバ170に、そして、BSAデータベースサーバ180に、MSC140を結合することができる。ロケーションサーバ170は、ロケーションデータを集めてフォーマット化してもよく、位置推定のためにモバイル局に対してアシスタンスを提供してもよく、及び/または、モバイル局のための位置推定値を得るために計算を実行してもよい。BSAデータベースサーバ180は、BSAデータベース185を管理し、BSAデータベース185は、この例では、セルラネットワーク110のための階層基地局アルマナックを保存する。」)

「[0031]By nature, a base station almanac such as BSA 185 may contain information that does not often change. However, in one aspect, cellular network 120 for this example may alert mobile station 150 that revised BSA information is available in the event cellular network 120 is modified in a way that warrants alerting the mobile station. Mobile station 150 may request revised BSA information at least in part in response to receiving such an alert from BSA server 250 .」(当審訳:「もともと、BSA185のような基地局アルマナックは、頻繁に変わらない情報を含むことができる。しかしながら、一態様では、この例のセルラネットワーク120は、セルラネットワーク120がモバイル局にアラートすることを保証する方法で修正されるイベントにおいて、改訂されたBSA情報は利用可能であるということをモバイル局150にアラートすることができる。モバイル局150は、BSAデータベースサーバ250からそのようなアラートを受信することに応じて、少なくとも部分的に改訂されたBSA情報をリクエストすることができる。」)

「[0034]FIG. 2 further depicts a number of transmitter types 210 that mobile stations 222 and 224 may monitor. Mobile stations 222 and 224 may or may not be subscribed to any given network associated with the various respective transmitter types to be able to monitor signals transmitted from the various transmitter types. Therefore, BSA information provided to the mobile stations may or may not include information associated with networks to which the mobile stations are not subscribed. As mentioned previously, mobile stations may specify particular networks and/or particular transmitter types while making requests for BSA information. For the example of FIG. 2 , mobile stations 222 and 224 may request BSA information comprising at least a subset of a BSA database from BSA server 250 .」(当審訳:「図2は、モバイル局222とモバイル局224がモニタすることができる、多数の送信機のタイプ210をさらに図示する。モバイル局222及びモバイル局224は、様々なそれぞれの送信機のタイプから送信された信号をモニタすることができるために、様々なそれぞれの送信機のタイプに関連づけられたいずれの与えられたネットワークに、加入してもよく、または、加入しなくてもよい。したがって、BSA情報は、モバイル局が加入されないネットワークと関連づけられた情報を含んでもよく、あるいは、含まれなくてもよい。上記されているように、モバイル局は、BSA情報についてのリクエストをしている間に、特定のネットワーク及び/または特定の送信機のタイプを規定することができる。図2の例の場合には、モバイル局222及びモバイル局224は、BSAデータベースサーバ250から、少なくとも1サブセットのBSAデータベースを備えているBSA情報をリクエストすることができる。」)

「[0036]Although the example of FIG. 2 depicts two mobile stations, in practice a wide variety of mobile station types exhibiting a wide range of different functionalities and/or storage capabilities may be utilized to communicate with a large variety of potential network types. Further, the mobile stations may exhibit a wide range of different usage patterns. Therefore, it may be advantageous for BSA server 250 to provide individualized subsets of BSA information that the individual mobile stations may require and/or request, and it may be further advantageous to provide such information formatted in a flexible manner according to a specified file size, coverage area, and/or transmitter type, to name but a few examples of parameters that may be specified. In one aspect, these parameters may be specified by the mobile stations.」(当審訳:「図2の例は2つのモバイル局を図示するが、実際には、広範囲の異なる機能及び/または保存機能を表わしている広範囲のモバイル局タイプが様々な潜在的なネットワークタイプと通信するように利用されることができる。さらに、モバイル局は、広範囲の異なる使用パターンを示すことができる。したがって、個々のモバイル局が必要としうる及び/またはリクエストしうる個別化されたサブセットのBSA情報を提供することはBSAデータベースサーバ250にとって有益であり、また、規定されうるパラメータの少ない例を挙げると、規定されたファイルサイズ、サービスエリア、及び/または、送信機のタイプにしたがって、柔軟な方法でフォーマット化されるそのような情報を提供することがさらに有益である。一態様では、これらのパラメータは、モバイル局によって規定されることができる。」)

「[0053]Continuing to refer to FIGS. 2 and 3 , mobile station 222 may specify in its request to BSA server 250 an almanac including all access points for a given carrier, for example. In another aspect, mobile station 222 may specify access points using a variety of methods, including, for example, access points at any airports within a specified region, or within reasonable proximity of an airport closest to the current location of the mobile station, or access points along a given roadway or group of roadways. These are examples of how a mobile station may specify to an almanac server what information to include in the almanac to be delivered to the mobile station. Of course, the scope of claimed subject matter is not limited to these particular examples.

[0054]In a further aspect, mobile station 222 may receive a BSA subset from BSA server 250 information related to wireless access points and/or base station transmitters within regions surrounding a number of airports that may represent likely destinations for a user of the mobile station. For example, BSA server 250 may be provided with information describing a number of likely destination airports given a departure airport. In an aspect, the likely destination airports may be determined by analyzing which airports may be reached in a single hop from the departure airport, although the scope of claimed subject matter is not limited in this respect. BSA server 250 may receive a recent location from mobile station 222 and may determine the departure airport from the recent location information. In this manner, mobile station 222 may be provided BSA information for a number of likely destinations prior to departing on an airplane to some destination. This airport almanac information may help mobile station 222 to find its bearings upon startup at a given destination airport. From the airport almanac information, mobile station 222 may enhance its search strategies for other transmitter types, particularly asynchronous networks, which may be difficult to locate. This example technique may contribute to power savings and may reduce search time.

[0055]In a further aspect, the mobile station may receive a BSA subset based upon the roadway and/or direction in which it is traveling. Using a roadway database, the BSA server may provide an almanac of transmitters that the mobile station is likely to see upon a given journey.」(当審訳:「[0053]図2と図3を続けて参照すると、モバイル局222は、BSAサーバ250に対するそのリクエストにおいて、例えば、与えられたキャリアのためのすべてのアクセスポイントを含んでいるアルマナックを規定することができる。別の態様では、モバイル局222は、例えば、規定された領域内のいずれの空港における、または、モバイル局の現在のロケーションに最も近い空港の合理的な近接性内の、アクセスポイント(access points at any airports within a specified region, or within reasonable proximity of an airport closest to the current location of the mobile station)あるいは、与えられたロードウェイまたはグループのロードウェイに沿ったアクセスポイント(access points along a given roadway or group of roadway)、を含む様々な方法を使用しているアクセスポイントを規定することができる。これらは、どのようにモバイル局がモバイル局に配信されるべきアルマナックに含めるためにどんな情報をアルマナックサーバに対して規定するかという例である。勿論、特許請求された主題の事柄の範囲は、これらの特定の例に限定されていない。

[0054]さらなる態様では、モバイル局222は、モバイル局のユーザにとって可能性のある到着(destinations)を表わす多数の空港に囲まれている領域内で無線アクセスポイント及び/または基地局送信機に関連づけられたBSAサーバ250情報から、BSAサブセットを受信することができる。例えば、BSAデータベースサーバ250は、出発空港(departure airport)を与えられると、多数の可能性のある到着空港(destination airports)を説明する情報が提供される。一態様では、可能性のある到着空港は、特許請求された主題の事柄の範囲がこの点で限定されてはいないが、到着空港からシングルホップでどの空港が到達されうるかを分析することによって決定されることができる。BSAサーバ250は、モバイル局222から最新のロケーションを受信することができ、そして最新のロケーション情報から到着空港を決定することができる。このような方法で、モバイル局222は、ある到着地に飛行機で出発する前に、複数の可能性のある到着地についてのBSA情報を提供することができる。この空港アルマナック情報は、モバイル局222が、所定の到着空港で、スタートアップ時に、そのベアリングを見つけ出すことを助ける。空港アルマナック情報から、モバイル局222は、位置づけることが難しい、他の送信機のタイプ、具体的にはアシンクロナスネットワーク、についてのそのサーチ戦略を高めることができる。この技術の例は、省電力に寄与し、サーチ時間を縮小する。

[0055]さらなる態様では、モバイル局は、それが移動している(traveling)、ロードウェイ及び/または方向に基づいて、BSAサブセットを受信することができる。ロードウェイデータベースを使用して、BSAサーバは、モバイル局が与えられた道程(journey)のときに見る可能性がある送信機のアルマナックを提供することができる。」)

上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「モバイルスイッチングセンタ(MSC)が基地局に結合され、BSAデータベースサーバに、MSCが結合され、BSAデータベースサーバは、BSAデータベースを管理し、BSAデータベースは、セルラネットワークのための階層基地局アルマナックを保存する、BSAデータベースサーバを含み([0028]参照。)、
改訂されたBSA情報は利用可能であるということがモバイル局にアラートされ、モバイル局は、BSAデータベースサーバからそのようなアラートを受信することに応じて、少なくとも部分的に改訂されたBSA情報をリクエストすることができ([0031]参照。)、
また、モバイル局は、BSAデータベースサーバから、少なくとも1サブセットのBSAデータベースを備えているBSA情報をリクエストすることができる([0034]参照。)、
モバイルスイッチングセンタ(MSC)、BSAデータベースサーバ、BSAデータベースを有する装置。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0019】
図6に、セルラー式通信ネットワークにおいてGPS対応の移動局に送信されるGPSアルマナックデータ発行識別子を更新する処理フローチャート600を示す。一般にブロック602において、図1に示されている参照ノードはアルマナック及びその他のデータをGPS衛星から受信する。
【0020】
ブロック604において、アルマナック及びその他のデータやパラメータを有するアルマナック支援メッセージが生成される。これらのデータの中には、ネットワークを介して提供されるものもあり得る。エフェメリスデータの場合と違い、全てのGPS衛星から同一のアルマナックデータが供給されるため、それぞれの衛星に対応するアルマナック支援メッセージを生成する必要はない。
【0021】
アルマナックデータは、ブロック602においても既知の送信間隔で更新される。この間隔は約18時間である。後述の表2及び表3に記載されている第一パラメータの送信時間などの他のデータやパラメータはこれより短い間隔で更新されることもある。ブロック604では、更新されたアルマナック及びその他のデータやパラメータに基づいて、アルマナック支援メッセージが更新される。
【0022】
ブロック606において、前記のアルマナック支援メッセージに対応するGPSアルマナックデータ発行識別子が生成される。本発明の1つの実施の形態において、GPSアルマナックデータ発行識別子は、GPSのアルマナックデータが更新されたときにのみ更新される。とりわけGPSのアルマナックデータ以外のパラメータが更新又は変更されたときでも、GPSエフェメリスデータ発行識別子が更新されることはない。一部の実施の形態では、アルマナックデータが更新されたときのみ、アルマナック支援メッセージが更新される。
【0023】
GPSアルマナックデータ発行識別子は、ブロック608でセルラー式通信ネットワークを介して送信され、ブロック610でブロック210で移動局(MS)によって受信される。ブロック612において、前記移動局は、GPSアルマナックデータ発行識別子と、前記移動局にあらかじめ格納されている、任意のアルマナックデータのGPSアルマナックデータ発行識別子とを比較する。ブロック614において、受信したGPSアルマナックデータ発行識別子が、格納されているGPSアルマナックデータ発行識別子と異なるか、又はGPSアルマナックデータ発行識別子及びアルマナックデータが移動局によって格納されていない場合にのみ、移動局はネットワークを介して送信された新しいアルマナック支援メッセージを読み込む。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0030】まず、S10で、ナビゲーション装置11の電源スイッチが投入されると、S11で、コントローラ15は、その内蔵の時計15aが正確であるか否か判断する。時計15aは図1に示すように、GPS衛星18からの航法データをストアするRAM15bとにより、バックアップ電池15cを共用している。したがって、このバックアップ電池15cの消耗により時計15aに誤差が生じた場合は、同時に、RAM15bに誤動作が発生するものと考えられるから、そのRAM15bの所定のエリアのデータが正常であるか否かをチェックすることにより、時計15aが正常であるか否かを判断することができる。
【0031】S11で、時計15aが正常であると判断したときには、S12へ進み、異常があると判断したときはS13へ進む。時計15aに誤差があると、前記したように自車位置測位に時間が非常に掛かり、あるいは測位が不能となる。
【0032】そこで、S13では、地上固定局通信用無線機16を自動的に起動して、S14で、時刻データ、アルマナックデータ、エフェメリスデータを地上固定局17に要求して、GPS衛星18のデータ伝送速度、例えば50ボーよりも高速の2400ボーで取り込む。そして、S15で、これら取り込んだデータをGPS受信機12へダウンロードしてS16で自車位置を測位させる。
【0033】この地上固定局17で保存されている時刻データは正確であり、アルマナックデータとエフェメリスデータが最新のデータであるので、自車位置を正確かつ迅速に測位することができる。
【0034】一方、S12では、アルマナックデータがRAM15b内にあるか否か判断し、ある場合には、そのアルマナックデータが例えば半年間の有効期間を過ぎているか否か判断し、有効期間内である場合はS17へ進み、NOの場合はS18へ進む。
【0035】S18では、地上固定局通信用無線機16を自動的に起動して、S19で、アルマナックデータと、エフェメリスデータとを無線で地上固定局17に対して要求し、ここから無線により高速で取り込み、これらデータを、S15でGPS受信機12へダウンロードし、S16で自車位置を測位させる。
【0036】また、S17では、エフェメリスデータが例えば数時間の有効期間内のデータであるか否か判断し、YES、つまり有効時間内のデータであるときは、正常な時計15aの時刻データと、有効期間内のアルマナックデータおよびエフェメリスデータとをS15で、GPS受信機12へデータロードし、S16で自車位置を測位させる。
【0037】一方、S17でエフェメリスデータが有効時間を超過している場合には、S20で地上固定局通信用無線機16を起動して、S21で、エフェメリスデータを地上固定局17に無線により要求し、かつ、このデータを取り込み、S15でGPS受信機12へ与え、S16で自車位置を測位させる。なお、S16の自車位置の測位動作を開始した後、S16の2で、所定時間内で測位を完了しない場合は再びS13へ戻って、S13の地上固定局通信用無線機16の起動以下を繰り返す。」

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0022】
「オーバーヘッドメッセージ」という用語は、その内容が実質的に加入者局間トラヒック以外である共通および専用のトラヒックチャネルを含めて、任意のタイプのチャネルを介して無線通信システムと加入者局との間で伝えられるメッセージを指す。明示的に逆に示されていない限り、単数形の用語「オーバーヘッドメッセージ(overhead message)」、「オーバーヘッドメッセージ(an overhead message)」、または「オーバーヘッドメッセージ(the overhead message)」は、本明細書では、1つまたは複数のメッセージを含むために使用されることを理解されよう。」
「【0035】
この実装形態での第1の推定値は、加入者局と通信する基地局または基地局セクタの位置を示すオーバーヘッドメッセージパラメータの値の少なくとも1つから導出され得る。例えば、第1の推定値は、CDMA2000無線通信システムによって加入者局に定期的に伝えられ、該当するIS-2000標準によって定義されるオーバーヘッドメッセージであるシステムパラメータメッセージからのBASE_LAT値およびBASE_LONG値によって示される位置に設定することができる。このメッセージの形式は、図3A?3Bに示されており、セクション3.7.2.3.2.1、3-107から3-115頁、TIA-2000.5-D、2004年3月からのものである。このメッセージからのBASE_LAT値およびBASE_LONG値はそれぞれ、加入者局にサービスを提供するCDMA2000システムにおける基地局の緯度および経度である。」

5.引用文献5について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0039】
新たなウイルスが発見されると、情報配信サーバ100のオペレータが新規なウイルスパターンを含む更新用ファイルをマスタデータ格納部101に登録するが、この時点では携帯型情報端末120に配信しない(ステップ501)。一方、携帯型情報端末120の受信情報処理部122は定期的に情報配信サーバ100に接続し、新たな更新用ファイルが存在するかを問い合わせる(ステップ511)。この問い合わせでは、前回転送された更新用ファイルのバージョン情報を携帯型情報端末120がデータ蓄積部124に登録しておき、このバージョン情報を情報配信サーバ100への通知に含めるようにする。情報配信サーバ100のデータ送信部102は、受信したバージョン情報とマスタデータ格納部101に登録されている最新の更新用データのバージョン情報とを比較して、両者が異なるものであれば新たなファイルが存在する旨を返信する(ステップ502)。なお、別の実施例では、携帯型情報端末120から情報配信サーバ100に現在登録されている最新の更新用データのバージョンを問い合わせ、返信情報に基づき携帯型情報端末120が自端末内に保存されている前回更新ファイルのバージョンと比較することにより更新の必要性を判断するようにしてもよい。」

6.引用文献6について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「ホスト計算機(1)は指定した業務処理プログラムの伝送時刻になると配信プログラム記憶装置(3)にある配信プログラムを起動し、この時に電源が投入され送信が可能な分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)に対し、指定した業務処理プログラムを伝送して、これが正常に伝送された場合には配信管理情報(2)へ送信完了フラグを付加する。プログラム伝送時に電源が切断されていて送信できなかった分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)に対しては、送信は未完のまま放置する。その後これらの分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)に電源が投入されると、これら分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)は初期プログラムロードが完了するとすぐに業務処理プログラムのバージョンアップの要否をホスト計算機(1)へ照会する。ホスト計算機(1)はこの照会があると配信管理情報(2)を検索し、もし当該分散処理計算機またはインテリジェント端末の業務処理プログラムのうちでバージョンアップの必要なものが存在する場合には、それを配信プログラム記憶装置(3)から配信プログラムを読み出して伝送する。この伝送が正常に完了後、配信管理情報(2)に配信が完了した旨の情報を追記する。分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)は旧バージョンの業務処理プログラムを、同時に伝送されてきた制御コマンドに従って、伝送された業務プログラムへ自動的に置き換える。この置き換えが完了した後、初めて分散処理計算機(5)またはインテリジェント端末(6)が業務処理要求を受け付ける。」(第3頁左上欄第7行?同右上欄第17行)

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「BSAデータベースを管理」する「BSAデータベースサーバ」は、本願発明1の「位置サーバ」に相当する。また、引用発明においては「改訂されたBSA情報は利用可能であるということがモバイル局にアラートされ、モバイル局は、BSAデータベースサーバからそのようなアラートを受信することに応じて、少なくとも部分的に改訂されたBSA情報をリクエストすることができ」る、とされているのであるから、引用発明の「BSAデータベースサーバ」が管理する「BSAデータベース」において、BSA情報の改訂を判別可能とするための、バージョン識別情報を含む情報が保存されていることは明らかといえる。そうすると、引用発明の「モバイルスイッチングセンタ(MSC)が基地局に結合され、BSAデータベースサーバに、MSCが結合され、BSAデータベースサーバは、BSAデータベースを管理し、BSAデータベースは、セルラネットワークのための階層基地局アルマナックを保存する、BSAデータベースサーバ」と、本願発明1の「現在の基地局暦(BSA)データバージョンと、ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報とを格納する、位置サーバ」とは、共に「現在の基地局暦(BSA)データバージョンの識別情報を含む情報を格納する、位置サーバ」である点で共通するといえる。
次に、引用発明において「改訂されたBSA情報は利用可能であるということがモバイル局にアラートされ、モバイル局は、BSAデータベースサーバからそのようなアラートを受信することに応じて、少なくとも部分的に改訂されたBSA情報をリクエストすることができ、また、モバイル局は、BSAデータベースサーバから、少なくとも1サブセットのBSAデータベースを備えているBSA情報をリクエストすることができる」ことと、本願発明1において「前記位置サーバが、前記現在のBSAデータバージョンが、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンとは異なるかどうかを判定し、異なる場合、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータが現在のものではないという通知を受信した前記モバイルデバイスが現在のBSAデータを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更されたBSAデータのみを含むBSAデータサブセットを前記モバイルデバイスにダウンロードするように動作可能であ」ることとは、共に「前記位置サーバが、前記モバイルデバイスが現在のBSAデータを要求することに応答して、前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更されたBSAデータのみを含むBSAデータサブセットを前記モバイルデバイスにダウンロードするように動作可能であ」る点で共通するといえる。
また、引用発明の「モバイルスイッチングセンタ(MSC)、BSAデータベースサーバ、BSAデータベースを有する装置」は、本願発明1の「遠隔局装置」に相当する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
現在の基地局暦(BSA)データバージョンの識別情報を含む情報を格納する、位置サーバを含み、
前記位置サーバが、
前記モバイルデバイスが現在のBSAデータを要求することに応答して、
前記モバイルデバイスがローミングしている通信システム中の少なくとも1つの基地局の変更されたBSAデータのみを含むBSAデータサブセットを前記モバイルデバイスにダウンロードする
ように動作可能である、遠隔局装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1の位置サーバは、「現在の基地局暦(BSA)データバージョンと、ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報とを格納する」のに対し、引用発明においては「ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報」は格納されておらず、また「現在の基地局暦(BSA)データバージョン」の識別情報を含む情報についても、どのような形態で格納されているかは不明である点。

相違点2:本願発明1においては、「前記位置サーバが、前記現在のBSAデータバージョンが、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンとは異なるかどうかを判定」するのに対し、引用発明において、少なくとも「BSAデータベースサーバ」はそのような判定を行わない点。またそれに伴い、本願発明1においては上記判定が「異なる場合、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータが現在のものではないという通知を受信」するのに対し、引用発明においてはそのような通知の受信は行われない点。

相違点3:本願発明1においては「前記モバイルデバイスにダウンロードすることが、前記位置サーバに格納される、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報の状態を更新することを含む」とされているのに対し、引用発明においてはそのような情報の格納、更新は行われない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点1及び3について検討する。
上記相違点1に係る、位置サーバに「ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報」が格納されるという構成は、引用文献2ないし6のいずれにも記載も示唆もされていない。したがって、そのような情報の状態を更新するという、上記相違点3に係る、「前記モバイルデバイスにダウンロードすることが、前記位置サーバに格納される、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報の状態を更新することを含む」という構成も同様に記載も示唆もされていない。
なお、引用文献5において、「前回転送された更新用ファイルのバージョン情報を携帯型情報端末120がデータ蓄積部124に登録しておき、このバージョン情報を情報配信サーバ100への通知に含めるようにする。情報配信サーバ100のデータ送信部102は、受信したバージョン情報とマスタデータ格納部101に登録されている最新の更新用データのバージョン情報とを比較して、両者が異なるものであれば新たなファイルが存在する旨を返信する」との記載があり、携帯型情報端末から情報配信サーバ100へ通知されたバージョン情報とマスタデータ格納部101に登録されている最新の更新用データのバージョン情報とを比較する技術が開示されている。この場合、2つのバージョン情報の比較のために、「携帯型情報端末から情報配信サーバ100へ通知されたバージョン情報」も一時的に保持されていると考えられるが、それはあくまで情報処理工程における一時的な情報の保持状態に過ぎず、そのような構成が上記相違点1に係る、位置サーバに「ホームシステムに登録されるモバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報」が格納されるという構成に相当するものであるとは認められない。また仮にそのように認めたとしても、上記比較の結果「新たなファイルが存在する旨を返信する」ようにされ、携帯型情報端末への配信が行われる際に、上記一時的な保持状態が更新されることはされていないのであるから、上記相違点3に係る、「前記モバイルデバイスにダウンロードすることが、前記位置サーバに格納される、前記モバイルデバイスが保持するBSAデータバージョンの識別情報の状態を更新することを含む」という構成は記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の上記相違点1、3に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3、8、10、13について
本願発明3、8、10、13は、本願発明1に対応するシステム、方法、もしくはコンピュータ可読記録媒体の発明であり、本願発明1の上記相違点1、3に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明4-7、9、11-12、14-15について
本願発明4-7、9、11-12、14-15も、それぞれ本願発明3、8、10、13の上記相違点1、3に係る構成に対応する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし6に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1-15は、上記相違点1、3に係る構成、もしくはそれに対応する構成を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-10 
出願番号 特願2015-25153(P2015-25153)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01S)
P 1 8・ 55- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
中塚 直樹
発明の名称 移動局の測位のための暦の管理  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

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