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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1335829
審判番号 不服2017-3266  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-06 
確定日 2018-01-19 
事件の表示 特願2015-543305「スクリーン画面の回転を制御する方法、装置、設備、プログラム及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日国際公開、WO2014/183546、平成28年 3月24日国内公表、特表2016-509274、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年4月25日(パリ条約による優先権主張日外国庁受理2013年5月17日、中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年3月6日に審判の請求がされ、その後、平成29年8月31日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年12月1日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献Aに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2006-135794号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由A(特許法第36条第6項第2号)について
本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由B(特許法第29条第2項)について
本願請求項1-13に係る発明は、引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2010-86192号公報
2.特開2007-158819号公報
3.特開2011-135605号公報

第4 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成29年12月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に、モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックして、回転しないとともに、モバイル端末の初期姿勢を取得し、前記モバイル端末の初期姿勢とは、モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示すことと、
前記モバイル端末のリアルタイム姿勢をリアルタイムにモニタリングすることと、
前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定することと、を含むことを特徴とするスクリーン画面の回転を制御する方法。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1に対応する「装置」の発明である。
本願発明7-10は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明11-13は、本願発明1に対応する「設備」、「プログラム」、「記録媒体」の発明である。

第5 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の理由B(特許法第29条第2項)について
(1) 引用文献、引用発明等
ア 引用文献1、引用発明について
当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面(特に、図3、図6を参照。)とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(ア) 段落【0031】-【0033】
「【0031】
例えば、通常状態で縦長の画面を有する携帯機器を横向きにしたとき、画面上に表示されている画像を90°回転させるようなユーザインタフェース(UI)が設定されているとする。
【0032】
図3の携帯機器の通常使用時の状態31からユーザの体勢はそのままで携帯機器の画面が横長になるよう携帯機器が回転された状態32への遷移では、ユーザの動作としては、携帯機器をその場で回転させる動作となる。すなわち、機器側ではその回転による機器の傾きは検出するが、移動(携帯機器の重心の、所定の誤差範囲を超えた移動)は検出しない。このとき、制御部101は、操作のためにユーザが意図的に機器を回転させたのだと認識し、UIとして画像90°回転させる動作を行う。なお、傾きおよび移動の検出の方法については後述する。
【0033】
これに対して、状態31の通常使用時の状態から、ユーザが携帯機器を把持したまま体を横にしたようなとき、本発明がなければ、画面上の画像が90°回転してしまう。しかし、このような場合、ユーザと携帯機器との相互の位置関係(特に回転位置関係)は変わっていないので、画像が回転するのは妥当でない。そこでこのような場合に、本発明では、状態33に示すように、携帯機器が横向きになったことにより通常起動されるUIの動作を抑止する。すなわち、この例では画像の回転を抑止する。この場合のユーザの動作としては機器を持ったまま寝転ぶのであるから、機器は移動しながら回転することになる。よって、機器側では回転(傾き)と移動の両方を検出する。そこで、ユーザの体勢が移動したことを認識したときの回転動作は姿勢移動の為だと推定することができる。」

(イ) 図3
図3(特に参照番号31、32)を参照すると、上記(2)の段落【0031】-【0032】における、「携帯機器の通常使用時の状態31」から「ユーザの体勢はそのままで携帯機器の画面が横長になるよう携帯機器が回転された状態32」への遷移での、「UIとして画像90°回転させる動作」とは、より具体的には、携帯機器を反時計回りに90°回転させたとき、UIとして画像を時計回りに90°回転させる動作であると認定できる。

(ウ) 段落【0053】-【0055】
「【0053】
図6に、本実施の形態における携帯機器の主要な処理のフローチャートを示す。
【0054】
まず、傾き対応表示UI付きのアプリケーションを起動する(S11)。この起動は、ユーザの指示等に応じて行うものであってもよいし、機器の電源オン時に自動的に起動されるものであったもよい。ついで、携帯機器の筐体の傾きの基準を決定する(S12)。この傾きの基準は、ユーザによる明示の指示がなければ、デフォルトの状態となる。
【0055】
その後、3軸の加速度センサの出力に基づく、携帯機器(筐体)の傾きの変化および移動の監視を開始する(S13)。所定の傾きを検出したら(S14,Yes)、その所定の傾きが移動を伴うものかどうかをチェックする(S15)。所定の傾きを検出し、かつ、それが筐体の移動を伴うものでなければ、その所定の傾きを表示UI(すなわち表示画面上の情報の表示)に反映させる(S16)。傾きを検出しない場合、また、傾きを検出してもそれが移動を伴う場合には、移動の停止を待つ(S17)。すなわち、機器の移動中の傾きの検出結果は無視される。移動が停止したら、携帯機器の「傾きの基準」を機器の回転に合わせて更新する(S18)。その後、ステップS14へ戻る。」

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

「携帯機器の主要な処理において、
まず、傾き対応表示UI付きのアプリケーションを起動し(S11)、
ついで、携帯機器の筐体の傾きの基準を決定し(S12)、
この傾きの基準は、ユーザによる明示の指示がなければ、デフォルトの状態となり、
3軸の加速度センサの出力に基づく、携帯機器(筐体)の傾きの変化および移動の監視を開始し(S13)、
所定の傾きを検出したら(S14,Yes)、
その所定の傾きが移動を伴うものかどうかをチェックし(S15)、
所定の傾きを検出し、かつ、それが筐体の移動を伴うものでなければ、その所定の傾きを表示UI(すなわち表示画面上の情報の表示)に反映させ(S16)、より具体的には、携帯機器を反時計回りに90°回転させたとき、UIとして画像を時計回りに90°回転させ、
傾きを検出してもそれが移動を伴う場合には、移動が停止したら、携帯機器の「傾きの基準」を機器の回転に合わせて更新する(S18)、
方法。」

イ 引用文献2について
当審拒絶理由に引用した引用文献2には、段落【0040】-【0047】に、図面(特に、図5(a)、(b))とともに、以下の記載がある。
「【0040】
図3に示す表示制御処理では、制御部8においてムービー再生プログラムが起動され、再生対象のムービーデータ(動画像データ及び音データ)がプログラムメモリ13から読み出され、ユーザメモリ12に格納される。そして、制御部8の表示制御によりメイン表示部190上にムービー画面が全画面表示され、読み出されたムービーデータに基づき、このムービー画面上にムービーが表示される。また、ムービーの表示に伴ってスピーカ161、162から音データに基づく音出力が行われる(ステップS1)。ここで、全画面表示とは表示画面を縮小表示するのではなく、規定の表示領域全てを使用して画面を表示することをいう。

・・・(中略)・・・

【0045】
携帯電話機1では、モードキー176の操作信号に基づき、制御部8においてJumpアイコンk3が操作されたか否かが判別され(ステップS2)、操作されたと判別された場合には(ステップS2;Y)、Webブラウザプログラムが起動される。このとき、図4(b)に示すようにユーザメモリ12の空き領域においてWeb画面データ用のキャッシュメモリ領域、Webブラウザにより使用されるヒープメモリ領域が形成され、ムービー再生プログラムとWebブラウザプログラムのデータ領域が共存することとなる。

・・・(中略)・・・

【0047】
次いで、ユーザメモリ12に格納されたWeb画面データに基づいて制御部8の表示制御により、メイン表示部190においてWeb画面が形成され、図5(b)に示すように、ムービー画面d1上に重畳されて全画面表示される(ステップS4)。なお、図5(b)では、ムービー画面d1とWeb画面d2とを完全に重畳させず、一部背面側のムービー画面d1を露出させているが、これは説明の便宜上のものであり、実際には何れの画面d1、d2も全画面表示されているので完全に重畳した状態となる。」

ウ 引用文献3について
当審拒絶理由に引用した引用文献3には、段落【0004】に、以下の記載がある。
「【0004】
特許文献1に開示されている携帯電話装置を用いて、テレビ番組を視聴中の利用者が、そのテレビ番組に関する情報が載ったHTMLコンテンツを参照する場合には、リンクボタンを操作する。これにより、携帯電話装置では、先ず、番組の受信処理を停止し、その後、Webサーバに対してメモリに格納されている地域情報および受信周波数を送信する。Webサーバでは、携帯電話装置から送られてきた地域情報および受信周波数に基づいて、利用者が視聴していたテレビ番組を特定し、そのテレビ番組に関するHTMLコンテンツを携帯電話装置へ送信する。携帯電話装置では、全画面表示を行うWebブラウザが、Webサーバから送られてきたHTMLコンテンツに従った表示および音声出力を行う。その後、利用者がWebブラウザを終了させると、携帯電話装置は、メモリに格納されている受信周波数に従って、番組の受信処理を再開する。」

(2) 対比・判断
ア 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア) 引用発明の「携帯機器」は、本願発明1の「モバイル端末」に相当する。
引用発明の携帯機器が、「傾き対応表示UI付きのアプリケーションを起動し(S11)」たときに、「携帯機器の筐体の傾きの基準を決定し(S12)、この傾きの基準は、ユーザによる明示の指示がなければ、デフォルトの状態とな」ることは、本願発明1の「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に、モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックして、回転しないとともに、モバイル端末の初期姿勢を取得し、前記モバイル端末の初期姿勢とは、モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示すこと」と、「モバイル端末が所定の状態になった時に」、「モバイル端末の初期姿勢を取得する」点で共通するといえる。

(イ) 引用発明において、「3軸の加速度センサの出力に基づく、携帯機器(筐体)の傾きの変化および移動の監視を開始し(S13)」ていることは、本願発明1の「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢をリアルタイムにモニタリングすること」に相当する。

(ウ) 引用発明において、「所定の傾きを検出し、かつ、それが筐体の移動を伴うものでなければ、その所定の傾きを表示UI(すなわち表示画面上の情報の表示)に反映させ(S16)、より具体的には、携帯機器を反時計回りに90°回転させたとき、UIとして画像を時計回りに90°回転させ、傾きを検出してもそれが移動を伴う場合には、移動が停止したら、携帯機器の「傾きの基準」を機器の回転に合わせて更新する(S18)」ことは、本願発明1の「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定すること」と、「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、端末の動きを参照してスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢により前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定すること」である点で共通するといえる。

(エ) 引用発明の「画像を時計回りに90°回転させ」ている「方法」は、本願発明1の「スクリーン画面の回転を制御する方法」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「モバイル端末が所定の状態になった時に、モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックして、回転しないとともに、モバイル端末の初期姿勢を取得し、
前記モバイル端末のリアルタイム姿勢をリアルタイムにモニタリングすることと、
前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、端末の動きを参照してスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢により前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定することと、を含むことを特徴とするスクリーン画面の回転を制御する方法。」

[相違点1]
本願発明では、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に、モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックして、回転しない」のに対して、引用発明は、「所定の傾きを検出し、かつ、それが筐体の移動を伴うものでなければ、その所定の傾きを表示UI(すなわち表示画面上の情報の表示)に反映させ(S16)、より具体的には、携帯機器を反時計回りに90°回転させたとき、UIとして画像を時計回りに90°回転させ」るものであって、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に、モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックして、回転しない」ものではない点。

[相違点2]
一致点の「所定の状態」が、本願発明1では、「(モバイル端末の)スクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に」であるのに対し、引用発明では、一致点の「所定の状態」が、「傾き対応表示UI付きのアプリケーションを起動し(S11)」、かつ、「ユーザによる明示の指示がな」い状態である点。
また、一致点の「初期状態」が、本願発明1では、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」ものであるのに対して、引用発明では、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」ものであることは特定されていない点。

[相違点3]
一致点の「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合」の処理が、本願発明1では、「前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定する」ものであるのに対して、引用発明では、「筐体の移動」を参照して、筐体の移動がなければ、利用者から見た画像の表示方向が変わらないように、「携帯機器を反時計回りに90°回転させたとき、UIとして画像を時計回りに90°回転させ」る一方、筐体の移動があれば、移動後に「傾きの基準」自体を変更するものである点。すなわち、引用発明は、傾きと筐体の移動とを参照して回転を制御するものであって、本願発明1のように、前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、(モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す)「前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にして」、スクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢「と前記初期姿勢とを比較することにより」前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定する」ものではない点。

(オ) 相違点についての判断
事例に鑑みて、上記[相違点2]について先に検討すると、一般に、アプリケーションの起動時に、アプリケーションをフルスクリーン表示状態で起動する点は、例えば、引用文献2(上記「(1)イ」参照。)、引用文献3(上記「(1)ロ」参照。)に記載されるように、周知技術であったといえる。
しかし、本願発明1の上記[相違点2]に係る、本願発明の「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に」、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」初期姿勢を取得するという構成までは、上記引用文献1-3に記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

上記[相違点3]について検討すると、上記のとおり、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」ような「前記初期姿勢」を取得する構成は、上記引用文献1-3に記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえないから、さらに、「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定すること」も、上記引用文献1-3に記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。

したがって、[相違点1]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

イ 本願発明2-13について
本願発明2-13も、本願発明1の上記[相違点2]に係る、「フルスクリーン表示状態になった時に」、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」初期姿勢を取得するという構成、及び、本願発明の上記[相違点3]に係る、「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定する」構成と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.当審拒絶理由の理由A(特許法第36条第6項第2号)について
当審では、請求項1について(1)「モバイル端末のスクリーン画面の表示方向をロックする」との記載、及び、(2)「モバイル端末の初期姿勢」、「モバイル端末のリアルタイム姿勢」、「前記モバイル端末のスクリーン画面の回転方向」との記載が不明確である旨の拒絶の理由を通知しているが、平成29年12月1日付けの補正において、(1)上記「ロックする」との記載を「ロックして、回転しない」とする補正がされ、(2)「モバイル端末の初期姿勢」について、「前記モバイル端末の初期姿勢とは、モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示すこと」と限定する補正がされ、さらに、「モバイル端末の初期姿勢」、「モバイル端末のリアルタイム姿勢」、「前記モバイル端末のスクリーン画面の回転方向」の相互関係について、「前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末のスクリーン画面の回転方向を確定する」との記載を、「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定する」と限定する補正がされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第6 原査定についての判断
平成29年12月1日付けの補正により、補正後の請求項1-13は、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時に」、「モバイル端末のスクリーンがフルスクリーン表示状態になった時のモバイル端末の姿勢を示す」初期姿勢を取得するという技術的事項、及び、「前記モバイル端末のリアルタイム姿勢に変化がある場合、前記モバイル端末の初期姿勢を参照姿勢にしてスクリーン画面の表示方向を回転するか否かを判断するとともに、前記リアルタイム姿勢と前記初期姿勢とを比較することにより前記モバイル端末の現在のスクリーン画面の表示方向に基づいた回転方向を確定する」という技術事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献Aには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-13は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2015-543305(P2015-543305)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 裕山崎 慎一岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
千葉 輝久
発明の名称 スクリーン画面の回転を制御する方法、装置、設備、プログラム及び記録媒体  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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