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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1335943
審判番号 不服2016-17798  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-29 
確定日 2018-01-23 
事件の表示 特願2013-509643「呼吸きっかけへの応答に基づき対象の睡眠開始を検出するためのシステム及びシステムの作動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日国際公開、WO2011/141843、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526327、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)4月25日(パリ条約による優先権主張 2010年5月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月13日付けで拒絶理由が通知され、同年6月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年2月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月28日付けで補正の却下の決定及び拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年11月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
そして、その後当審において平成29年6月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、平成29年9月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、5及び9は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
対象における覚醒から睡眠への移行を検出するように構成されるシステムであって、
対象の気道へ送達するための加圧呼吸ガス流を生成するように構成される圧力生成装置と、
前記対象の気道で又は気道近くでガスパラメータに関連する情報を伝達する出力シグナルを生成するように構成されるセンサと、
コンピュータプログラムモジュールを実行するように構成されるプロセッサと、
を含み、
前記コンピュータプログラムモジュールが、
前記圧力生成装置が、前記対象へ呼吸きっかけを与えるために前記加圧呼吸ガス流におけるガスのパラメータを調節するように、前記圧力生成装置を制御するように構成される制御モジュール、
前記加圧呼吸ガス流により与えられる前記呼吸きっかけと、前記対象の呼吸との適合性を決定するように構成される適合性モジュールであり、そのような決定が前記センサにより生成される前記出力シグナルと前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけとに基づき、そのような決定が、前記対象の呼吸と前記呼吸きっかけとの同期性の差を定量化する適合性の測定値を決定することを含む、適合性モジュール、及び
前記対象が睡眠中であるかを決定するように構成される睡眠モジュールであり、そのような決定が前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき、前記対象に対する適合性の閾値レベルは、ある期間にわたり決定された閾値レベルである、睡眠モジュール、
を含むシステム。」

「 【請求項5】
圧力生成装置、センサ及びプロセッサを含む、対象における覚醒から睡眠への移行を検出するためのシステムの作動方法であって、前記プロセッサが、
前記圧力生成装置によって生成される加圧呼吸ガス流内のガスのパラメータが対象へ呼吸きっかけを与えるために調節されるように前記圧力生成装置を制御する制御モジュール、
前記センサにより生成される出力シグナルに基づいて決定される前記対象の呼吸の呼吸パラメータをモニタする呼吸パラメータモジュール、
前記対象の呼吸の前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけとの適合性を決定する適合性モジュールであり、そのような決定が前記モニタされた呼吸パラメータ及び前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけに基づき、そのような決定が、前記対象の呼吸と前記呼吸きっかけとの同期性の差を定量化する適合性の測定値を決定することを含む、適合性モジュール、並びに、
前記対象が睡眠中であるかを決定する睡眠モジュールであり、そのような決定が前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき、前記対象に対する適合性の閾値レベルは、ある期間にわたり決定された閾値レベルである、睡眠モジュール、
を実行する、方法。」

「 【請求項9】
対象における覚醒から睡眠への移行を検出するように構成されるシステムであって、
対象の気道へ送達するための加圧呼吸ガス流を生成する手段であり、前記加圧呼吸ガス流におけるガスのパラメータが前記対象に呼吸きっかけを与えるように調節される、手段、
前記対象の呼吸の呼吸パラメータをモニタするための手段、
前記加圧呼吸ガス流により与えられる前記呼吸きっかけと前記対象の呼吸との適合性を決定する手段であり、そのような決定が、前記モニタされた呼吸パラメータ及び前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけに基づき、そのような決定が、前記対象の呼吸と前記呼吸きっかけとの同期性の差を定量化する適合性の測定値を決定することを含む、手段、並びに、
前記対象が睡眠中であるかを決定する手段であり、そのような決定が前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき、前記対象に対する適合性の閾値レベルは、ある期間にわたり決定された閾値レベルである、手段、
を含むシステム。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2010-500117号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(以下、下線は当審で付した。)

(引1a)「【0014】
本発明の実施例は、陽圧装置を使用して患者の呼吸速度を下げる能力を持つ。陽圧装置は周知であり、例えば米国特許6,105,575(この文献を全体として本願明細書に引用したものとする)において開示される。この同じ分野において、持続的気道陽圧法(CPAP)が長年にわたって用いられており、規則正しい呼吸を促進する際に有用であることが証明されている。吸気性陽空気圧(IPAP)が知られており、二相性陽空気圧(BiPAP)はそのカテゴリである。BiPAPにおいて、2つのレベルの陽空気圧(HI及びLO)が患者に供給される。本発明の原理に従ってBiPAPのHI及びLOセグメントのタイミングを適切に制御することは、呼吸速度を低減する際に患者をより効果的に助けることができる。
【0015】
この点で、及び本発明の実施例に従って、ペース呼吸(PB)方法及び関連したシステム(本明細書ではひとまとめにして"PB方法"と呼ぶ)は、最初に患者の呼吸速度を測定して、それから、呼吸"コーチ"として作用するための最適な"装置吸気時間"(T_(insp)^(M))及び"装置呼気時間"(T_(exp)^(M))を決定する。T_(insp)^(M)及びT_(exp)^(M)は、BiPAP治療に関連した患者へのHI又はLO圧の適用に対応する。T_(insp)^(M)及びT_(exp)^(M)を設定することによって、PB方法は、患者の呼吸頻度を制御又は達成するのを助けることができる。制御条件において、患者呼吸速度は測定変数(BRP)であり、吸気及び呼気の期間(T_(insp)^(M)及びT_(exp)^(M))は呼吸頻度のフィードバック制御のために使用される制御変数である。
【0016】
PB方法は、好ましくは2つのレベルの制御から成るが、当業者は、本願明細書において記載される方法が、一つのプログラムモジュールとして実現されることができ、又はさらに多数のモジュール若しくは制御レベルに分解されることができることを理解するであろう。図1に示されるように、以下が提供される。
1. 目標呼吸速度を設定する最高レベル駆動システム(TLDS)102。
2. 入力として目標呼吸速度(BR_(target))を使用して、あらかじめ決められた制御論理に従って装置吸気及び呼気時間(T_(insp)^(M)及びT_(exp)^(M))を設定する低レベル制御システム(LLCS)104。フィードバックは、変数BR_(target)Update(以下に記載する)を通してTLDS102に提供される。」

(引1b)「【0026】
呼吸速度(BR)ローパスフィルタ302は、(肺ダイナミクス308をモニタリングすることによって)最後のn回の呼吸に対する平均呼吸速度を決定して、コントローラ304に患者の呼吸状態の測度を提供する。コントローラ304は、フィルタ呼吸速度及び目標呼吸速度の表示を用いて、現在の呼吸に対して適切であると思われる

を推定する。最後に、ステートマシン306は、参照としてコントローラ304の出力を取得して、吸気及び呼気状態の実際の装置期間T_(insp)^(M)及びT_(e)^(M)をれぞれ計算するためにそれを使用する。これらのブロックの挙動を表現する詳細な式は後述される。
【0027】

の値を決定するために、PB方法は、その式が積分コントローラに似ている呼吸速度コントローラを使用する(式(1), (2)参照)。コントローラ304の目的は、以下のように、現在の目標呼吸速度と現在のローパスフィルタ後の患者の呼吸速度との間の誤差(e(k))が増加したときに、装置推定吸気時間

を増加させることである。



(引1c)「【0031】
ステートマシン
ステートマシン306は、患者に供給される装置吸気及び呼気時間の実際の値を決定する。これらの値は、以下のように決定される。

【0032】
式(4)、(5)及び(6)において、kは、現在の呼吸を表し、

及び

は、推定された装置吸気及び呼気時間であり、T_(insp)(K)は、患者の吸気時間であり、T(K)は、患者の一周期間(すなわち、所与の呼吸全体の期間)であり、T_(insp)^(M)(k)及びT_(e)^(M)(K)は、それぞれ、実際の装置吸気及び呼気時間を表す。」

(引1d)「【0041】
また、本PB方法が、圧力キューを供給する装置との患者の同期を追跡することを必要とするので、本方法を睡眠開始を追跡するために使用することが可能である。例えば、装置からの圧力キューを用いて呼吸速度を正常に低下させた期間の後、患者がもはや本PB方法に同期することが(そうすることを何度か試みたにもかかわらず)できない場合、装置は、ユーザが眠っており、もはや呼吸コーチと認知的に相互作用することができないと仮定することができる。そのような場合には、装置は、睡眠開始時刻の正確な評価を提供することができる。この特徴は、単なる「装置動作時間」に対して、本装置によって真の睡眠時間のより正確な評価を提供することができるので、ヘルスケア提供者に価値ある商品を示すことができる。」

2.引用文献1に記載された発明について

上記(引1c)より、「ステートマシン306」は、推定された装置吸気及び呼気時間、患者の吸気時間などから、患者に供給される装置吸気及び呼気時間の実際の値を決定していることが理解できる。

そうすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「陽圧装置を使用して、BiPAPにおいて、2つのレベルの陽空気圧(HI及びLO)を患者に供給し、
呼吸速度を低減する際に患者をより効果的に助けるために、HI及びLOセグメントのタイミングを適切に制御するものであり、
当該制御が、プログラムモジュールとして実現され、このモジュールは多数のモジュール若しくは制御レベルに分解され、
呼吸速度(BR)ローパスフィルタ302は、肺ダイナミクス308をモニタリングすることによって最後のn回の呼吸に対する平均呼吸速度を決定して、コントローラ304に患者の呼吸状態の測度を提供し、
コントローラ304は、フィルタ呼吸速度及び目標呼吸速度の表示を用いて 現在の呼吸に対して適切であるかに関する値を推定し、
現在の目標呼吸速度と現在のローパスフィルタ後の患者の呼吸速度との間の誤差(e(k))が増加したときに、装置推定吸気時間を増加させ、
ステートマシン306は、推定された装置吸気及び呼気時間、患者の吸気時間などから、患者に供給される装置吸気及び呼気時間の実際の値を決定し、
陽圧装置からの圧力キューを用いて呼吸速度を正常に低下させた期間の後、患者がもはや同期することができない場合、ユーザが眠っており、もはや呼吸コーチと認知的に相互作用することができないと仮定する、
睡眠開始を追跡するために使用されるシステム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-291307号公報)には、「フロー計測システム並びに生体情報モニタ」に関する発明が記載されている。

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「睡眠開始を追跡するために使用されるシステム」は、本願発明1の「対象における覚醒から睡眠への移行を検出するように構成されるシステム」に相当する。

イ 引用発明の「陽圧装置」は、2つのレベルの陽空気圧(HI及びLO)を患者に供給しているから、本願発明1の「対象の気道へ送達するための加圧呼吸ガス流を生成するように構成される圧力生成装置」に相当する。

ウ 引用発明の「呼吸速度(BR)ローパスフィルタ302」は、「肺ダイナミクス308」をモニタリングすることによって最後のn回の呼吸に対する平均呼吸速度を決定して、「コントローラ304」に患者の呼吸状態の測度を提供しているから、本願発明1の「前記対象の気道で又は気道近くでガスパラメータに関連する情報を伝達する出力シグナルを生成するように構成されるセンサ」に相当する。

エ 引用発明の「プログラムモジュール」は、本願発明1の「コンピュータプログラムモジュール」に相当し、引用発明の「プログラムモジュール」は、「プロセッサ」で実行されることは明らかであるから、引用発明の「プログラムモジュール」と、本願発明1の「コンピュータプログラムモジュール」とは、「プロセッサ」により実行される点で共通する。そして、引用発明の「プログラムモジュール」は、多数のモジュール若しくは制御レベルに分解されるから、引用発明の「ステートマシン306」及び「コントローラ304」には、これらを動かす「プログラムモジュール」をそれぞれに有している点が理解できる。

オ 引用発明の「ステートマシン306」を動かす「プログラムモジュール」は、推定された装置吸気及び呼気時間、患者の吸気時間などから、実際の装置吸気及び呼気時間の実際の値を決定しているから、本願発明1の「圧力生成装置が、前記対象へ呼吸きっかけを与えるために前記加圧呼吸ガス流におけるガスのパラメータを調節するように、前記圧力生成装置を制御するように構成される制御モジュール」に相当する。

カ 引用発明の「コントローラ304」を動かす「プログラムモジュール」は、患者の呼吸状態の測度を提供し、フィルタ呼吸速度及び目標呼吸速度の表示を用いて、現在の呼吸に対して適切であるかに関する値を推定するものであり、現在の目標呼吸速度と現在のローパスフィルタ後の患者の呼吸速度との間の誤差(e(k))が増加したときに、装置推定吸気時間を増加させるから、本願発明1の「前記加圧呼吸ガス流により与えられる前記呼吸きっかけと、前記対象の呼吸との適合性を決定するように構成される適合性モジュールであり、そのような決定が前記センサにより生成される前記出力シグナルと前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけとに基づき、そのような決定が、前記対象の呼吸と前記呼吸きっかけとの同期性の差を定量化する適合性の測定値を決定することを含む、適合性モジュール」に相当する。

キ 引用発明は、「装置からの圧力キューを用いて呼吸速度を正常に低下させた期間の後、患者がもはや本PB方法に同期することができない場合、装置は、ユーザが眠っており、もはや呼吸コーチと認知的に相互作用することができないと仮定」し、該仮定は何らかのモジュールが行っていることは明らかであるから、引用発明の該モジュールと、本願発明1の「睡眠モジュール」とは、「前記適合性の測定値に基づ」いて「対象が睡眠中であるかを決定するように構成され」ている点で共通している。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認められる。

(一致点)
「 対象における覚醒から睡眠への移行を検出するように構成されるシステムであって、
対象の気道へ送達するための加圧呼吸ガス流を生成するように構成される圧力生成装置と、
前記対象の気道で又は気道近くでガスパラメータに関連する情報を伝達する出力シグナルを生成するように構成されるセンサと、
コンピュータプログラムモジュールを実行するように構成されるプロセッサと、
を含み、
前記コンピュータプログラムモジュールが、
前記圧力生成装置が、前記対象へ呼吸きっかけを与えるために前記加圧呼吸ガス流におけるガスのパラメータを調節するように、前記圧力生成装置を制御するように構成される制御モジュール、
前記加圧呼吸ガス流により与えられる前記呼吸きっかけと、前記対象の呼吸との適合性を決定するように構成される適合性モジュールであり、そのような決定が前記センサにより生成される前記出力シグナルと前記加圧呼吸ガス流により与えられる呼吸きっかけとに基づき、そのような決定が、前記対象の呼吸と前記呼吸きっかけとの同期性の差を定量化する適合性の測定値を決定することを含む、適合性モジュール、及び
前記対象が睡眠中であるかを決定するように構成される睡眠モジュールであり、そのような決定が前記適合性の測定値に基づく、睡眠モジュール、
を含むシステム。」

(相違点)
(相違点1)対象が睡眠中であるかを決定するように構成される睡眠モジュールが、本願発明1では、「ある期間にわたり決定された」「前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき」対象が睡眠中であるかを決定しているのに対し、引用発明は、同期することができない場合、ユーザが眠っていると仮定決定するものの、同期することができない場合の決定が、どの様に行われているか特定されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「ある期間にわたり決定された」「前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき」対象が睡眠中であるかを決定するという構成は、上記引用文献2には記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明5及び9について
本願発明5は本願発明1を方法として記載したものであり、本願発明9は、本願発明1の各「モジュール」を、「手段」に置き換えたものであるから、いずれも本願発明1の「ある期間にわたり決定された」「前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき」対象が睡眠中であるかを決定するという構成を備えるものである。そうすると、本願発明5及び9は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明2?4、6?8及び10?12について
本願発明2?4、6?8及び10?12は、それぞれ本願発明1、5及び9を直接または間接的に引用するものであり、本願発明1の「ある期間にわたり決定された」「前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき」対象が睡眠中であるかを決定するという構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、平成27年6月4日付け手続補正により補正された請求項1?15について上記引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本願発明1,5及び9は、それぞれ「ある期間にわたり決定された」「前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき」対象が睡眠中であるかを決定するという構成を有するものであり、上記のとおり、本願発明1?12は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第2号について(下線は補正箇所を示す。)
(1)当審では、請求項1、5及び9の、「前記対象が睡眠中であるかを決定・・・そのような決定がある期間にわたる前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づく」との記載は、不明瞭であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年9月5日付けの補正において、「前記対象が睡眠中であるかを決定・・・そのような決定が前記対象に対する適合性の閾値レベルを超える前記適合性の測定値に基づき、前記対象に対する適合性の閾値レベルは、ある期間にわたり決定された閾値レベルである」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?12は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2013-509643(P2013-509643)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 九鬼 一慶  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
福島 浩司
発明の名称 呼吸きっかけへの応答に基づき対象の睡眠開始を検出するためのシステム及びシステムの作動方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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