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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D
管理番号 1335988
審判番号 不服2017-1325  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-31 
確定日 2018-01-23 
事件の表示 特願2012- 98242「樹脂製エンコーダスケール、エンコーダ、樹脂製エンコーダスケールの製造方法およびエンコーダの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日出願公開、特開2013-224910、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月23日の出願であって、平成27年8月14日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月16日付けで手続補正がなされ、平成28年3月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月24日付けで手続補正がなされ、平成28年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月31日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年9月20日付けで拒絶理由が通知され、平成29年11月22日付けで手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1、25
・引用文献 1-9

・請求項2
・引用文献 1-9

・請求項 3-5、26
・引用文献 1-10

・請求項 6-7
・引用文献 1-11

・請求項 8
・引用文献 1-12

・請求項 9-24
・引用文献 1-13

<引用文献等一覧>
1.特開2004-45391号公報
2.特開2004-177287号公報
3.特開2006-337321号公報
4.特開平4-93611号公報(周知技術を示す文献)
5.特開昭58-150154号公報(周知技術を示す文献)
6.実願昭60-4721号(実開昭61-122566号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
7.特開平6-323872号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2003-21542号公報(周知技術を示す文献)
9.特開平6-201906号公報(周知技術を示す文献)
10.特開2003-166855号公報(周知技術を示す文献)
11.特開昭63-83612号公報(周知技術を示す文献)
12.特開2000-352527号公報(周知技術を示す文献)
13.特開2001-79854号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1?21に係る発明について
本願の請求項1?21に係る発明は、引用例1に記載された発明(引用発明1)及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1?21に係る発明について
本願の請求項1?21に係る発明は、先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一である。

引 用 文 献 等 一 覧
引用例1:特開2006-337321号公報
引用例2:特開平4-93611号公報
引用例3:実願昭60-4721号(実開昭61-122566号)のマイクロフィルム
先願1:特願2012-48217号(特開2013-181964号)

第4 本願発明
本願の請求項1?21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明21」という。)は、平成29年11月22日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?21は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
反射型の光学方式のエンコーダで用いられ、位置測定用の目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケールであって、
透明な樹脂部材から成る前記目盛パターンは、前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え、
前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる成形表面に反射膜が設けられ、
前記高反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.05μm以下で、前記低反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.1μm以上であることを特徴とする樹脂製エンコーダスケール。
【請求項2】
前記低反射部に対する前記高反射部の突出高さが、100μm未満とされていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製エンコーダスケール。
【請求項3】
前記高反射部の光の反射率が50%以上、前記低反射部の光の反射率が25%以下に設定され、前記高反射部と前記低反射部との反射率の差が25%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製エンコーダスケール。
【請求項4】
反射型の光学方式のエンコーダであって、
請求項1?3のいずれか1項に記載のエンコーダスケールと、
前記エンコーダスケールに向けて光を出射する発光素子を有するとともに、前記発光素子から出射されて前記エンコーダスケールにより反射される光を受光する受光素子を有するヘッドとを備え、
前記エンコーダスケールに対して前記ヘッドが相対的に移動した際に、前記目盛パターンにおける前記低反射部と前記高反射部との光の反射率の違いによる前記受光素子の受光量の変化に基づいて、前記エンコーダスケールに対する前記ヘッドの位置を計測することを特徴とするエンコーダ。
【請求項5】
前記エンコーダは、前記ヘッドの相対移動方向に沿った帯状に前記エンコーダスケールの一方の端から他方の端まで形成されたリファレンストラックを有し、
前記リファレンストラックは前記高反射部と同様の表面粗さを有することを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記リファレンストラックにより反射した光に基づく信号を用いて、
前記エンコーダスケールにおける前記高反射部と前記低反射部との切り替わりを判定することを特徴とする請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記リファレンストラックと前記エンコーダスケールとの間には段差が設けられ、前記リファレンストラックの方が前記エンコーダスケールに比べて低いことを特徴とする請求項6に記載のエンコーダ。
【請求項8】
反射型の光学方式のエンコーダで用いられ、光の反射率が低い低反射部と、前記低反射部より光の反射率が高い高反射部と、を組み合わせた位置測定用の目盛パターンが設けられた樹脂製エンコーダスケールの製造方法であって、
前記目盛パターンに対応してブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型の鏡面により成形された鏡面である前記高反射部と、前記金型のブラスト面により成形された粗面である前記低反射部とを組み合わせた前記目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形するとともに、前記樹脂製エンコーダスケールを成形後、前記金型を用いて成形した鏡面である前記高反射部と、前記金型を用いて成形した粗面である前記低反射部とに反射膜を設け、
前記金型は、前記成形パターンが形成される前記成形面に表面粗さRaが0.1μm以上となるようにブラスト加工によりブラスト面を形成した後に、当該ブラスト面の前記成形パターンの前記鏡面となる部分に、切削による鏡面加工により表面粗さRaが0.05μm以下となるように前記鏡面を形成し、前記鏡面と前記鏡面より突出した前記ブラスト面とからなる前記成形パターンが形成され、
前記金型を用いて樹脂成形した前記エンコーダスケールは、前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが0.05μm以下で、前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが0.1μm以上であり、前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部に対して前記高反射部が突出して形成されていることを特徴とする樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが0.01μm以下で、前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが1.0μm以上であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項10】
前記低反射部に対する前記高反射部の突出高さが、100μm未満とされていることを特徴とする請求項8または9に記載の樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の光の反射率が50%以上、前記低反射部の光の反射率が25%以下に設定され、前記高反射部と前記低反射部との反射率の差が25%以上であることを特徴とする請求項8?10のいずれか1項に記載の樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂製エンコーダスケールには、射出成形により帯状に前記目盛パターンの一方の端から他方の端まで形成されたリファレンストラックを設け、
前記リファレンストラックは、前記金型の鏡面加工されたリファランストラック用鏡面で成形することにより、前記高反射部と同様の表面粗さを有することを特徴とする請求項8?11のいずれか1項に記載の樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項13】
前記リファレンストラックと前記目盛パターンとの間には段差を設け、前記リファレンストラックの方を前記目盛パターンに比べて低くすることを特徴とする請求項12に記載の樹脂製エンコーダスケールの製造方法。
【請求項14】
光の反射率が低い低反射部と、前記低反射部より光の反射率が高い高反射部とを組み合わせた位置測定用の目盛パターンが設けられた樹脂製エンコーダスケールを有する反射型の光学方式のエンコーダの製造方法であって、
前記目盛パターンに対応して、ブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型のブラスト面により成形された粗面である低反射部と、前記金型の鏡面により成形された鏡面であり、前記低反射部より光の反射率が高い高反射部と、を組み合わせた目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形する工程Aと、
前記樹脂製エンコーダスケールに向けて光を出射する発光素子と、前記発光素子から出射されて前記樹脂製エンコーダスケールにより反射される光を受光する受光素子と、を有するヘッドを設ける工程Bと、
前記樹脂製エンコーダスケールを成形した後、前記高反射部と、前記低反射部に反射膜を設ける工程Cと、
を含み、
前記金型は、前記成形パターンが形成される前記成形面に表面粗さRaが0.1μm以上となるようにブラスト加工によりブラスト面を形成した後に、当該ブラスト面の前記成形パターンの前記鏡面となる部分に、切削による鏡面加工により表面粗さRaが0.05μm以下となるように前記鏡面を形成し、前記鏡面と前記鏡面より突出した前記ブラスト面とからなる前記成形パターンが形成され、
前記金型を用いて樹脂成形した前記エンコーダスケールは、前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが0.05μm以下で、
前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部の前記反射膜の下の被成形面の表面粗さRaが0.1μm以上であり、前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部に対して前記高反射部が突出して形成されていることを特徴とするエンコーダの製造方法。
【請求項15】
前記工程Aは、前記目盛パターンとしてアブソリュートパターンとインクリメンタルパターンとを有する樹脂性エンコーダスケールを成形することを特徴とする請求項14に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項16】
前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の被成形面の表面粗さRaが0.01μm以下で、前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部の被成形面の表面粗さRaが1.0μm以上であることを特徴とする請求項14または15に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項17】
前記低反射部に対する前記高反射部の突出高さが、100μm未満とされていることを特徴とする請求項14?16のいずれか1項に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項18】
前記樹脂製エンコーダスケールの前記高反射部の光の反射率が50%以上、前記低反射部の光の反射率が25%以下に設定され、前記高反射部と前記低反射部との反射率の差が25%以上であることを特徴とする請求項14?17のいずれか1項に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項19】
前記樹脂製エンコーダスケールには、射出成形により帯状に前記目盛パターンの一方の端から他方の端まで形成されたリファレンストラックを設け、
前記リファレンストラックは、前記金型の鏡面加工されたリファランストラック用鏡面で成形することにより、前記高反射部と同様の表面粗さを有することを特徴とする請求項14?18のいずれか1項に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項20】
前記リファレンストラックと前記目盛パターンとの間には段差を設け、前記リファレンストラックの方を前記目盛パターンに比べて低くすることを特徴とする請求項19に記載のエンコーダの製造方法。
【請求項21】
前記リファレンストラックは、反射した光に基づく信号を用いて、前記目盛パターンを光学的に読み取った際の信号における前記高反射部と前記低反射部との切り替わりを判定するためのトラックであることを特徴とする請求項19または20に記載のエンコーダの製造方法。」

第5 当審における理由1について
1 引用例、引用発明等
(1)引用例1
当審で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1(特開2006-337321号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
ア 「【0001】
本発明は、光学スケール、及び、その製造方法に係り、特に、長尺のリニアエンコーダやリニアスケールに用いるのに好適な、光学スケール、及び、その製造方法に関する。」

イ 「【0008】
本発明は、鏡面と、物理的にあらされた粗面でなる格子を有することを特徴とする光学スケールにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
又、前記格子に反射膜を形成して、反射型光学スケールにおける鏡面部の反射率を向上させ、明暗のコントラストが大きい信号が得られるようにしたものである。」

ウ 「【0014】
以下図面を参照して、反射型光学スケールに適用した本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態は、図1に示す如く、スケール素材10の鏡面に、フォトレジストでパターニング後、サンドブラストにより表面を粗化し、鏡面部と粗面部で反射光の明暗を生成するようにしたものである。」

エ 「【0023】
加工後の形状を図2に示す。形成されたサンドブラスト加工面(粗面)12の表面粗さは、未加工面(鏡面)14に対しRaで0.04μmか、それ以上の粗さが望ましい。なお、加工面12で光を乱反射させることを目的とするため、例えば特許文献1に記載された磁気スケールのように、掘り込んで加工深さを深くする必要はない。
【0024】
スケール素材10としては、表面が鏡面のもの、例えばステンレス、鉄、アルミニウム等の金属やガラスを用いることができる。それらは、第1実施形態のように、そのままの表面を使用することもできるが、反射型光学スケールの場合は、更に鏡面部の反射率を向上させるために、加工前か後のいずれか又は共に、図3に示す第2実施形態のように、例えば、金、銀、アルミニウム等の高反射率材料でなる反射膜16を付けてもよい。反射膜16を付ける方法は、蒸着やめっき等があるが、コスト的にはめっきが望ましい。なお、透過型光学スケールの場合は反射膜は付けない。」

オ 「【0025】
発明者が確認したところ、従来製法によるガラススケールと、表面が鏡面のステンレスに対して本発明のサンドブラストにより格子状に粗化した反射型スケールの、同じ検出ヘッドを用いた際の検出信号の強度比は1:0.74であり、十分使用可能であることが確認できた。
【0026】
なお、前記実施形態においては、サンドブラストにより鏡面が粗化されていたが、鏡面を粗化する方法はこれに限定されず、例えばブラシロール等を用いて、他の方法で物理的に鏡面をあらすことも可能である。
【0027】
又、前記実施形態においては、本発明が、長尺の反射型リニアエンコーダに適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、マイクロメータに用いられるロータリエンコーダや、透過型の光学スケール等にも同様に適用できる。」

カ 引用例1の図2には、スケール素材10における鏡面部(図2における14(鏡面))が、粗面部(図2における12(粗面))より突出していることが記載されている。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定の根拠とした記載の段落番号である。)。
「鏡面と、物理的にあらされた粗面でなる格子を有し(【0008】)、前記格子に反射膜を形成して、鏡面部の反射率を向上させた反射型光学スケール(【0009】)であって、
長尺の反射型リニアエンコーダに適用され(【0027】)、
スケール素材10の鏡面に、サンドブラストにより表面を粗化し、鏡面部と粗面部で反射光の明暗を生成するようにし(【0015】)、
スケール素材10における鏡面部は、粗面部より突出し(図2、図3)、
サンドブラスト加工面(粗面)12の表面粗さは、未加工面(鏡面)14に対しRaで0.04μmか、それ以上の粗さが望ましく(【0023】)、
スケール素材10としては、表面が鏡面のもの、例えばステンレス、鉄、アルミニウム等の金属やガラスを用いることができ(【0024】)、
反射型光学スケールの場合は、更に鏡面部の反射率を向上させるために、金、銀、アルミニウム等の高反射率材料でなる反射膜16を付けてもよい(【0024】)、反射型光学スケール(【0009】)。」

(2)引用例2
当審で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例2(特開平4-93611号公報)には、次の事項が記載されている。
「この他にも、例えば特開昭58-150154号公報等に開示されているように、位置検出用ギヤの金型に予め鏡面仕上げ部と粗面部を設け、位置検出用ギヤを樹脂成形して鏡面仕上げ部を光反射部とし、粗面部を光非反射部としたものがある。」(第2頁右上欄第9?13行)

(3)引用例3
当審で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である引用例3(実願昭60-4721号(実開昭61-122566号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「(考案の属する分野)
本考案は、回転体における光学式センサーを用いた回転数検出装置に関するものである。」(第1頁第12?14行)

イ 「(考案の目的)
本考案は、回転体の反射板を一部品で作り、コスト低減を計ること及び一部品の反射板の反射面を最短の製造工程で作ることを目的とする。
本考案は上記目的のために、直流機の回転反射板、第4図に示した反射面に直接濃淡パターンの平面粗さをほどこすことにより、樹脂材料で作る場合、一体成形が可能になり、さらに、一体成形をほどこす加工工程で濃淡パターンの粗さを変化させることにより、光センサーにもどる光信号の光量を従来技術よりも大きくでき、その結果容易に回転体の回転速度の制御をすることを目的とする。」(第2頁第9行?第3頁第11行)

ウ 「本考案は、反射面の濃淡パターン粗さの濃部及び淡部の加工粗さを変化させることにより出力を自由に変化できる。
また反射面の濃淡パターン粗さの淡部の粗さを薄くしてやることにより、出力の向上を計ることや、白黒パターン作製の際使用する接着剤又は印刷材料などの経年変化及び化学変化を受けず、そして、白黒パターンに比較して偏心の少ない、分割精度の高い、伝達特性の応答時間の早い反射板が得られる。
さらに、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の材料などを使用し、それをシボ加工などをすることによって上記の反射板を治具により一体成形することができ、従来のような反射面を構成する白黒パターンの部品をなくし、その部品の取付け工程などをなくすことによって反射板のコストを低減できるなどの効果がある。」(第6頁第7行?第7頁第3行)

したがって、引用例3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「回転体における光学式センサーを用いた回転数検出装置であって(「ア」より)、
回転反射板の反射面に直接濃淡パターンの平面粗さをほどこすことにより、樹脂材料で作る場合、一体成形が可能になり、さらに、一体成形をほどこす加工工程で濃淡パターンの粗さを変化させることにより、光センサーにもどる光信号の光量を従来技術よりも大きくでき(「イ」より)、
また反射面の濃淡パターン粗さの淡部の粗さを薄くしてやることにより、出力の向上を計り(「ウ」より)、
さらに、ポリブチレンテレフタレート(PBT)の材料などを使用し、それをシボ加工などをすることによって上記の反射板を治具により一体成形することができる(「ウ」より)、
回転体における光学式センサーを用いた回転数検出装置(「ア」より)。」

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1における「反射型光学スケール」を「反射型リニアエンコーダに適用」したものが、本願発明1における「反射型の光学方式のエンコーダ」に相当する。

(イ)引用発明1における「格子」は、「反射型光学スケール」を「長尺の反射型リニアエンコーダに適用」したものにおいては、本願発明1におけるのと同様に、「位置測定用の目盛パターン」として用いられるものである。

(ウ)引用発明1における「反射型光学スケール」の「スケール素材10」は、「例えばステンレス、鉄、アルミニウム等の金属やガラスを用いることができ」るから、引用発明1における「反射型光学スケール」を「反射型リニアエンコーダに適用」したものと、本願発明1における「樹脂製エンコーダスケール」とは、「エンコーダスケール」の点で共通する。

(エ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明1における「格子」を「スケール素材10の鏡面に、サンドブラストにより表面を粗化し、鏡面部と粗面部で反射光の明暗を生成するようにし」、「スケール素材10における鏡面部は、粗面部より突出」していることと、本願発明1における「透明な樹脂部材から成る前記目盛パターンは、前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」ることとは、「部材から成る前記目盛パターンは、前記部材の表面が粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記部材の表面が鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」る点で共通する。

(オ)引用発明1における「反射型光学スケールの場合は、更に鏡面部の反射率を向上させるために、金、銀、アルミニウム等の高反射率材料でなる反射膜16を付け」ることと、本願発明1における「前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる成形表面に反射膜が設けられ」ることとは、「前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる表面に反射膜が設けられ」る点で共通する。

(カ)引用発明1における「サンドブラスト加工面(粗面)12の表面粗さは、未加工面(鏡面)14に対しRaで0.04μmか、それ以上の粗さ」であることと、本願発明1における「前記高反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.05μm以下で、前記低反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.1μm以上である」こととは、「前記低反射部となる表面の粗さが、前記高反射部となる表面の粗さに対し、Raで0.05μmか、それ以上の粗さである」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「反射型の光学方式のエンコーダで用いられ、位置測定用の目盛パターンを備えるエンコーダスケールであって、
部材から成る前記目盛パターンは、前記部材の表面が粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記部材の表面が鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え、
前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる表面に反射膜が設けられ、
前記低反射部となる表面の粗さが、前記高反射部となる表面の粗さに対し、Raで0.05μmか、それ以上の粗さであることを特徴とする樹脂製エンコーダスケール。」

(相違点1)
本願発明1では、エンコーダスケールが「目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケール」であって、その目盛パターンは「透明な樹脂部材から成」る「成形表面」に形成され、粗面とされた光の反射率の低い低反射部は、「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた」ものであり、鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部は「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされ」た構成を備えるものであるのに対し、引用発明1では、反射型光学スケールのスケール素材10は、例として「ステンレス、鉄、アルミニウム等の金属やガラス」を用いることが挙げられているだけで、「樹脂」を用いることについては示されておらず、したがって、「反射光の明暗を生成する」「格子」となる「鏡面部と粗面部」は、「スケール素材10の鏡面に、サンドブラストにより表面を粗化し」て形成している点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記高反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.05μm以下で、前記低反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.1μm以上である」のに対し、引用発明1では、サンドブラスト加工面(粗面)12の表面粗さは、未加工面(鏡面)14に対しRaで0.04μmか、それ以上の粗さであることは示されているものの、鏡面部及び粗面部におけるそれぞれの表面粗さRaの数値範囲は示されていない点。

イ 相違点についての判断
そこで、上記相違点1について検討すると、例えば引用例2、引用例3に記載されているように、「光センサーの光を反射する光学式の位置検出装置を、反射面に直接濃淡パターンの平面粗さをほどこすことにより、樹脂材料で作る場合、金型に予め鏡面仕上げ部と粗面部を設け、位置検出用の部材を樹脂成形して鏡面仕上げ部を光反射部とし、粗面部を光非反射部とすること」は、周知技術であるといえる。

しかし、
(ア) 引用例2、引用例3には、「金型に予め鏡面仕上げ部と粗面部を設け」る際、金型に具体的にどのようにして鏡面仕上げ部と粗面部を設けているのか明らかでなく、したがって、金型における鏡面仕上げ部と粗面部との間に高低差があるのか否か、また、仮に高低差があるとしても、どちらが突出しているのかは、一義的に定め得ないものである。

(イ)引用発明1では、鏡面部と粗面部の格子を形成するにあたり、反射型光学スケールのスケール素材10の表面(鏡面)をサンドブラストにより粗化して形成したため、結果的に、スケール素材10における鏡面部が、粗面部より突出しているのであるから、引用発明1に周知技術を適用してスケール素材10における鏡面部と粗面部の格子の形成方法を変更し、スケール素材10を樹脂材料で作り、反射型光学スケールを、金型に予め鏡面仕上げ部と粗面部を設け、位置検出用の部材を樹脂成形して鏡面仕上げ部を光反射部とし、粗面部を光非反射部とするようにして作ったとしても、上記(ア)で述べたところからみて、その結果、「鏡面部は、粗面部より突出し」たものとなるか否かは、当業者といえども一義的に予測し得ないことである。
また、周知技術を適用する際に、引用発明1の「鏡面部は、粗面部より突出し」た状態を積極的に維持すべき理由も見当たらない。

(ウ)よって、引用発明1に前記周知技術を適用し、上記相違点1に係る本願発明1の構成を作出したとしても、その結果、引用発明1における「スケール素材10における鏡面部」が依然として「粗面部より突出」したものとなるかは当業者といえども予測することができず、本願発明1における「低反射部に対して突出して形成され」た「高反射部」を備える構成の有無が新たな相違点として生じてくることになるから、引用発明1に前記周知技術を適用したとしても、本願発明1の構成とはならない。

(エ)したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7も、本願発明1における、「目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケール」であって、その目盛パターンは「透明な樹脂部材から成」る「成形表面」に形成され、粗面とされた光の反射率の低い低反射部は、「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた」ものであり、鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部は「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされた構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明8?13について
本願発明8は、本願発明1における、「目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケール」であって、その目盛パターンは「透明な樹脂部材から成」る「成形表面」に形成され、粗面とされた光の反射率の低い低反射部は、「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた」ものであり、鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部は「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされた構成と同様な、「目盛パターンが設けられた樹脂製エンコーダスケールの製造方法であって」、「前記目盛パターンに対応してブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型の鏡面により成形された鏡面である前記高反射部と、前記金型のブラスト面により成形された粗面である前記低反射部とを組み合わせた前記目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形する」とともに、「前記金型」は、「前記鏡面と前記鏡面より突出した前記ブラスト面とからなる前記成形パターンが形成され」る構成を備えるものである。
よって、本願発明8は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明9?13は、本願発明8と同一の構成を備えるものであるから、本願発明8と同じ理由により、本願発明9?13は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本願発明14?21について
本願発明14は、本願発明1における、「目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケール」であって、その目盛パターンは「透明な樹脂部材から成」る「成形表面」に形成され、粗面とされた光の反射率の低い低反射部は、「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた」ものであり、鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部は「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされた構成と同様な、「目盛パターンが設けられた樹脂製エンコーダスケールを有する反射型の光学方式のエンコーダの製造方法であって」、「前記目盛パターンに対応して、ブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型のブラスト面により成形された粗面である低反射部と、前記金型の鏡面により成形された鏡面であり、前記低反射部より光の反射率が高い高反射部と、を組み合わせた目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形する工程A」を含み、「前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部に対して前記高反射部が突出して形成されている」構成を備えるものである。
よって、本願発明14は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明15?21は、本願発明14と同一の構成を備えるものであるから、本願発明14と同じ理由により、本願発明15?21は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術(引用例2、引用例3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 当審における理由2について
1 引用先願等
当審における理由2で引用された、本願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特願2012-48217号(特開2013-181964号)(以下、「引用先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【解決手段】光源から放出した光の反射光を用いて可動物体の機械的な変位を電気的なパルス信号に変換するエンコーダのスリット盤であって、前記スリット盤は高反射率部と低反射率部とを備え、前記高反射率部は平滑面であり、前記低反射率部は微細な凹凸が周期的に形成された凹凸面であることを特徴としている。」(フロントページ)

イ 「【0001】
本発明は、可動物体の機械的な変位を、光源から放出した光の反射光を用いて電気的なパルスに変換するためのエンコーダのスリット盤およびそのスリット盤を使用したエンコーダに関する。」

ウ 「【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
なお、本明細書において、上位に位置する部材と下位に位置する部材が同一形状である場合、同じ符号を付している。
【0044】
また、本明細書書において「上」とは、例えば図1(B)において凹凸面14aが形成された側をいう。「下」あるいは「裏」とは樹脂層30から見て基材16側をいう。
また、以下の説明において、「スリット」とは、低反射率部のことをいい、「スリット盤」とは、低反射率部と高反射率部が形成された盤をいう。
【0045】
図1(A)は本発明の一実施例に係る反射型ロータリーエンコーダに使用されたスリット盤10の概略を示したもので、図1(B)は、図1(A)のB-B線方向の一部拡大断面図である。
【0046】
このスリット盤10には、外周部に高反射率部12と低反射率部14とからなる光学変調トラック8が環状に形成されている。
このようなスリット盤10は、例えば、図1(B)の断面図に示したように、基材16と金属膜20と樹脂層30との積層体により構成されている。そして、樹脂層30側に配置された光源(図示せず)から、回転するスリット盤10に対し光を照射して、スリット盤10の樹脂層30側に配置された受光素子によって、樹脂層30内を通った光が金属膜20の高反射率部12の領域に到達した場合の光信号と、低反射率部14の領域に到達した場合の光信号を検知して、機械的変位を読み取っている。あるいは、このようなスリット盤を用いたエンコーダをNCマシーンなどに搭載することにより、NCマシーンに微細な動きを行わすこともできる。
【0047】
以下、このような金属膜20の基本形状を有する基材16について説明する。
基材16は、例えば、熱可塑性樹脂からなるもので、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレイト、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロンのいずれかで形成されることが好ましい。
【0048】
本実施例では、基材16が高透明性を備えたポリカーボネート(PC)はサビック社のレキサンOQ1026により形成されている。
そして、基材16において、図1(A)の高反射率部12に相当する部分は平滑面(ミラー面)12aで構成されている。また、基材16において、図1(A)の低反射率部14に相当する部分は、凹凸面14aで構成されている。
【0049】
低反射率部14を構成する凹凸面14aには、図2の模式的斜視図に示したように、微細な凸部18と微細な凹部19とが周期的に形成されている。すなわち、凸部18の間に規則的に凹部19が配列されている。
【0050】
本実施例では、図3に示したように、凸部18の中心を通る断面形状が二等辺三角形の円錐形に形成され、そのアスペクト比(高さH/周期P)は0.5?3.0の範囲に設定されている。
【0051】
このような構造体はモスアイ構造と称されるもので、アスペクト比が大きい程、反射防止効果が高いことが知られている。すなわち、高さHが高い程、反射防止効果が高い。また、本実施例ではモスアイ形状は円錐形としたが、楕円錐形、角錐形でも反射防止効果は大きい。また図2、図3に示すモスアイ構造で凸部を凹部、凹部を凸部に反転した状態でも反射防止効果が損なわれることはない。反転しない凹凸構造又は反転した凹凸構造どちらを型として使用するかは基材16への転写性の良し悪しで選択すれば良い。
【0052】
このように基材16の低反射率部14の凹凸面14aに反射防止構造が具備されているため、低反射率部14での反射は極めて小さい。
このようなスリット盤10の基材16は、微細な凹凸面14aを含めて射出成形で形成することができる。あるいは微細な凹凸面14aと平滑面12aを公知のナノインプリント(UV硬化又は熱プレス)で、表面平滑な基材上に形成し基材16とすることもできる。」

エ 「【0057】
このように低反射率部14を断面二等辺三角形状の微細な凹凸面14aで構成した基材16の上層にスパッタリングまたは真空蒸着などにより、図1(B)に示したような金属膜20を形成すれば、今度は樹脂の凹凸面と相似形の金属層を形成することができる。この場合も凹凸はモスアイ構造のため、ポリカーボネート(PC)より屈折率は高くなるが、凹凸面14a上の金属膜20においても連続的に屈折率が変化するため、反射に影響する界面を持たない。よって、僅かな光しか反射されることがない。
【0058】
本発明は、このように製作容易性を考慮して、図1(B)に示したように、先ず基材16の表面に平滑面12aと微細の凹凸面14aとを設けている。そして、その上層に同一形状の金属膜20を設けている。また、金属膜20のさらに上層に、全てを平坦面とするように樹脂層30を設けることもできる。樹脂層30は凹凸面の反射率低減の観点より屈折率が小さい方が好ましい。
【0059】
金属膜20としては、アルミニウム、クロム、金、銀が単独またはそれらの1つを含む合金であることが好ましい。
これらの金属または合金により金属膜20を形成すれば、平滑面12aでの反射効率が良好である。また、均一の膜を形成する上で好適である。
【0060】
金属膜20の上層に配置される樹脂層30は、光源からの光が透過されるのであれば、いかなる樹脂であっても良いが、高透明性であることが好ましい。樹脂層30を設けることにより、金属膜20を破損や塵埃などから保護することができる。」

オ 「【0067】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、低反射率部14の微細な凹凸を、すなわち凹凸面14aを、中心を通る断面が二等辺三角形状の円錐形の周期構造としているが、これに代え、図6(A)に示したように、微細な凹凸を柱状物32とすることもできる。微細な凹凸の柱状物は、熱可塑性樹脂により射出成形で形成することもでき、あるいはナノインプリントで形成することができる。」

カ 「【0070】
また、図6(B)に示す断面台形状の微細な凹凸35でも低反射率部14からの反射を低く抑えることが可能となる。
さらに、上記実施例では、スリット盤10に対し、例えば図1(B)において矢印C方向から光を照射し、その反射光で情報を得るようにしているが、図1(B)あるいは図7に矢印Dで示したように、スリット盤10の裏側から光を照射しても良い。
【0071】
換言すれば、例えば、図8に示した反射型のロータリーエンコーダ50において、発光素子52と受光素子54に対してスリット盤10を裏返しの向きに配置しても良い。
このように、本実施例のスリット盤10は、裏返しの向き、すなわち矢印D方向からの光であっても、金属膜20からの反射光で情報を得ることができる。また、基材16の裏側から光を照射する場合には、図7に示したように、基材16の裏面を覆うように樹脂層34を設けることが好ましい。この新たに設ける樹脂層34は耐擦傷性を向上させるためである。
【0072】
この樹脂層34の材料としては、高透明性であることが好ましい。
この場合、基材16は、光源から照射される波長λの光に対し、少なくとも70%以上の透過率を有することが好ましい。また、微細な凹凸面14aを構成する凸部の周期をP、光源から放出した光の波長をλ、基材16の屈折率をn2としたとき、P<λ/n2である必要がある。
【0073】
このような条件であれば、裏側からの光で必要な情報を得ることができる。
本実施例で得られるスリット盤10は、ロータリーエンコーダあるいはリニアエンコーダのスリット盤として、スリット幅が2μm程度またはそれ以下の微細な範囲で明暗をはっきりと識別可能であることから分解能が大幅に向上するため、非常に有効である。さらに、微細な凹凸を射出成形あるいはナノインプリントで形成すれば、微細な凹凸を容易に、かつ安価に製作することができる。また反射型のエンコーダに適用することで、細かい運動が必要な小型ロボットなどの複雑な運動制御を行なえる。さらに、スリット幅を高精度にすることができることから、スリット盤の更なる小型化が達成できる。
【0074】
さらに、本実施例により、インクリメントパターンとアブソリュートパターンとインデックスパターンから選ばれる1種以上のパターンを有するスリット盤のいずれの出力形式にも適用することができる。」

したがって、引用先願の出願当初明細書等には、次の発明(以下、「引用先願発明」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定の根拠とした記載の段落番号等である。)。
「インクリメントパターンを有する(【0074】)リニアエンコーダのスリット盤(【0073】)であって、反射型のエンコーダに適用され(【0073】)、
ここで「スリット」とは、低反射率部のことをいい、「スリット盤」とは、低反射率部と高反射率部が形成された盤をいい(【0044】)、
スリット盤10の基材16は、微細な凹凸面14aを含めて射出成形で形成することができ(【0052】)、 基材16が高透明性を備えたポリカーボネート(PC)であり(【0048】)、基材16において、高反射率部12に相当する部分は平滑面(ミラー面)12aで構成されており、また、基材16において、低反射率部14に相当する部分は、凹凸面14aで構成されており(【0048】)、
低反射率部14を構成する凹凸面14aには、、微細な凸部18と微細な凹部19とが周期的に形成されており(【0049】)、このような構造体はモスアイ構造と称され(【0051】)、
低反射率部14を微細な凹凸面14aで構成した基材16の上層に金属膜20を形成すれば、今度は樹脂の凹凸面と相似形の金属層を形成することができ(【0057】)るので、先ず基材16の表面に平滑面12aと微細の凹凸面14aとを設けており、そして、その上層に同一形状の金属膜20を設け(【0058】)、
金属膜20の上層に配置される樹脂層30は、高透明性であることが好ましく(【0060】)、
スリット盤10は、裏返しの向きからの光であっても、金属膜20からの反射光で情報を得ることができる、
リニアエンコーダのスリット盤(【0073】)。」

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用先願発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用先願発明における「インクリメントパターンを有するリニアエンコーダのスリット盤」は、「反射光で情報を得ることができ」る「反射型のエンコーダに適用され」るものであるから、本願発明1における「反射型の光学方式のエンコーダで用いられ、位置測定用の目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケール」に相当する。

(イ)引用先願発明における「樹脂層30」は、「高透明性であることが好まし」く、「表面に平滑面12aと微細の凹凸面14aとを設け」「上層に同一形状の金属膜20を設け」た「基材16」の「金属膜20の上層に配置される」ように設けられているのであるから、引用先願発明における「樹脂層30」の表面(「基材16」側の面)は、「基材16」の表面と相補的な表面形状を有していることは明らかである。
よって、
a 引用先願発明における「樹脂層30」が、「高透明性」であり、「基材16」の表面の「インクリメントパターン」と相補的な形状を有していることが、本願発明1における「透明な樹脂部材から成る前記目盛パターン」を備えることに相当する。
b 引用先願発明における「高透明性である」「樹脂層30」は、「基材16」と「同一形状の」「金属膜20の上層に配置される」ように設けられ、「基材16」における「高反射率部12に相当する部分」である「平滑面(ミラー面)12a」と、「低反射率部14に相当する部分」である「凹凸面14a」と相補的な形状を有していることと、本願発明1における「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」た点とは、「前記樹脂部材の表面が粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の表面が鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」ている点で共通する。
c 引用先願発明における「樹脂層30」が、「基材16」の「平滑面12aと微細の凹凸面14a」の「上層」に設けられた「同一形状」の「金属膜20の上層に配置され」ていることと、本願発明1における「前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる成形表面に反射膜が設けられ」ていることとは、「前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる表面に反射膜が設けられ」いる点で共通する。
d 引用先願発明における「樹脂層30」は、(平滑面(ミラー面)12aで構成された高反射率部12と、凹凸面14aで構成された低反射率部14とから構成される)「基材16」の「上層」に設けられた「同一形状」の「金属膜20の上層に配置され」ていることから、「樹脂層30」は、その表面(「基材16」側の面)が、「基材16」の表面の相補的形状となるように、「高反射率部12に相当する」「平滑面(ミラー面)12a」及び「低反射率部14に相当する」「凹凸面14a」で構成されていることは明らかである。
よって、「樹脂層30」の表面(「基材16」側の面)が、「高反射率部12に相当する」「平滑面(ミラー面)12a」及び「低反射率部14に相当する」「凹凸面14a」で構成されていることと、本願発明1における「前記高反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.05μm以下で、前記低反射部となる成形表面の表面粗さRaが0.1μm以上である」こととは、「前記高反射部となる表面の表面粗さより、前記低反射部となる表面の表面粗さが大きい」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用先願発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「反射型の光学方式のエンコーダで用いられ、位置測定用の目盛パターンを備える樹脂製エンコーダスケールであって、
透明な樹脂部材から成る前記目盛パターンは、前記樹脂部材の表面が粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の表面が鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え、
前記高反射部および前記低反射部を備えて前記目盛パターンとなる表面に反射膜が設けられ、
前記高反射部となる表面の表面粗さより、前記低反射部となる表面の表面粗さが大きいことを特徴とする樹脂製エンコーダスケール。」

(相違点1)
本願発明1では、透明な樹脂部材から成る目盛パターンにおける、光の反射率の低い低反射部が「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされ」たものであり、前記低反射部より光の反射率の高い高反射部が、「前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され」、「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされ」たものであるという構成を備えるのに対し、引用先願発明では、高透明性である樹脂層30の表面(「基材16」側の面)は、基材16の平滑面(ミラー面)12aに構成された高反射率部12に相当する部分、及び、基材16の凹凸面14aで構成された低反射率部14に相当する部分のそれぞれと相補的な形状を有していることは明らかであるものの、基材16の平滑面(ミラー面)12aと相補的な形状を有している面が、基材16の凹凸面14aと相補的な形状を有している面より突出しているか、明らかでなく、しかも、高透明性である樹脂層30を、どのようにして基材16の表面の金属膜20の上層に配置しているのか明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1では、前記高反射部となる「成形」表面の表面粗さRaが「0.05μm以下」で、前記低反射部となる「成形」表面の表面粗さRaが「0.1μm以上」であるのに対し、引用先願発明では、高透明性である樹脂層30を、どのようにして基材16の表面の金属膜20の上層に配置しているのか明らかでなく、しかも、樹脂層30の、基材16の高反射率部12に相当する部分と相補的な形状を有している部分の表面粗さRaも、基材16の低反射率部14に相当する部分と相補的な形状を有している部分の表面粗さRaも、示されていない点。

イ 判断
上記相違点1について検討すると、引用先願発明における「樹脂層30」は、下記図7(便宜のため、図面の上下を逆にしている。)に示すとおり、

基材16の凹凸面14aで構成された低反射率部14と平滑面(ミラー面)12aで構成された高反射率部12との上層(上図では下層)の金属膜20の上(上図では下)に配置されているのであるから、常識的に見て、樹脂層30は、基材16の凹凸面14aで構成された低反射率部14及び平滑面(ミラー面)12aで構成された高反射率部12と(金属膜20を介して)一体となるように形成されていると考えるのが自然であって、樹脂層30の表面(「基材16」側の面)を、例えばブラスト面と平滑面(ミラー面)とを有する金型を用いて樹脂成形し、樹脂層30の成形表面(「基材16」側の面)が、ブラスト面により樹脂成型された状態で凹凸面とされた低反射率部と、樹脂成型された状態で平滑面(ミラー面)とされた高反射率部とからなるものとし、さらに高反射率部が低反射率部に対して突出して形成されたものとすることは、通常考えられないことである。
よって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、上記相違点2が実質的な相違点である否かについて判断するまでもなく、本願発明1は引用先願発明と同一ではない。

(2)本願発明2?7について
本願発明2?7も、本願発明1における、透明な樹脂部材から成る目盛パターンにおける、光の反射率の低い低反射部が「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされ」ものであり、前記低反射部より光の反射率の高い高反射部が、「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされ」たものであるという構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2?7は、引用先願発明と同一ではない。

(3)本願発明8?13について
本願発明8は、本願発明1における、透明な樹脂部材から成る目盛パターンにおける、光の反射率の低い低反射部が「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされ」ものであり、前記低反射部より光の反射率の高い高反射部が、「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされ」たものであるという構成と同様な、「前記目盛パターンに対応してブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型の鏡面により成形された鏡面である前記高反射部と、前記金型のブラスト面により成形された粗面である前記低反射部とを組み合わせた前記目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形する」とともに、「前記金型」は、「前記鏡面と前記鏡面より突出した前記ブラスト面とからなる前記成形パターンが形成され」る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明8は、引用先願発明と同一ではない。
また、本願発明9?13は、本願発明8と同一の構成を備えるものであるから、本願発明8と同じ理由により、本願発明9?13は、引用先願発明と同一ではない。

(4)本願発明14?21について
本願発明14は、本願発明1における、透明な樹脂部材から成る目盛パターンにおける、光の反射率の低い低反射部が「前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされ」ものであり、前記低反射部より光の反射率の高い高反射部が、「前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされ」たものであるという構成と同様な、「前記目盛パターンに対応して、ブラスト加工されたブラスト面と鏡面加工された鏡面とを組み合わせた成形パターンが本体の成形面に直接設けられた金型に、透明な樹脂を射出することにより、前記金型のブラスト面により成形された粗面である低反射部と、前記金型の鏡面により成形された鏡面であり、前記低反射部より光の反射率が高い高反射部と、を組み合わせた目盛パターンを有する前記樹脂製エンコーダスケールを成形する工程A」を備え、「前記樹脂製エンコーダスケールの前記低反射部に対して前記高反射部が突出して形成されている」構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明14は、引用先願発明と同一ではない。
また、本願発明15?21は、本願発明14と同一の構成を備えるものであるから、本願発明14と同じ理由により、本願発明15?21は、引用先願発明と同一ではない。

第7 原査定について
1 原査定において引用された引用文献等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-45391号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0039】
請求項12に記載のエンコーダは、固定部材と、前記固定部材に対して相対移動可能に設けられた可動部材とを備え、前記固定部材に対する前記可動部材の相対移動量を検出するエンコーダにおいて、前記固定部材および前記可動部材の少なくともいずれか一方は、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で形成され表面が鏡面状である本体と、前記本体の表面に所定のピッチで形成された光非反射部とを備えていることを特徴とする。
【0040】
ナノスケール物質を含んだ合成樹脂は、表面を鏡面状にすることができる。そこで、ナノスケール物質を含んだ合成樹脂で鏡面状の表面を有する本体を形成し、この表面に所定のピッチで光を反射しない光非反射部を形成すれば、光電式エンコーダのスケールを形成することができる。光非反射部は、本体を射出成形した後、本体の表面上にナノスケール物質を含んだ合成樹脂を非反射となるように二重成形することによって形成されてもよい。光非反射部は、本体の表面に非反射部材を貼り付けてもよく、または、表面を光を反射しないように削ってもよい。このような構成によれば、簡便に反射型の光電式エンコーダを形成することができ、製造効率を向上させるとともに、低コスト化を図ることができる。」

「【0066】
(変形例2)
第1実施形態の変形例2として、メインスケール142の変形例2を図5に示す。
第1実施形態においては、静電容量式エンコーダであってメインスケール14は導電部1
5および絶縁部16から構成されたが、この変形例2は光電式エンコーダであって、メインスケール142は光反射部31と光非反射部32とからなる光学格子を備えて構成されている。
【0067】
このメインスケール142は、カーボンナノファイバを含んだ合成樹脂で表面が鏡面状に形成された本尺11(本体)の表面に所定のピッチで光非反射部32が形成された構成である。この光非反射部32は、表面を粗く削って光を反射しないようにしたものである。
スライダ21の検出ヘッドは、メインスケール142に光を照射する光源と、メインスケール142から反射された光を受光する光受光部とを備えたものとすればよい。
【0068】
このような構成によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、簡便に光電式エンコーダを形成することができ、製造効率を向上させることができるとともに、低コスト化を図ることができる。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-177287号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、本発明に係るアクチュエータの第1実施形態の概略構成図を示す。
図1において、本第1実施形態のアクチュエータは、往復動作する、例えば光スキャナーの可動部の変位検出機能を備えるものであり、発光部1と、可動部2と、符号化手段3と、検出部4と、を備えて構成されている。」

「【0020】
また、上記可動部2の光走査面の隅部には、符号化手段3が設けられている。この符号化手段3は、発光部1より発射された光ビームに可動部2の変位、本第1実施形態では可動部2の振れ角に応じて強度変調を与えて出射するものであり、光ビームを高レベルで出射する高出射部と光ビームを低レベルで出射する低出射部とを交互に設けて構成している。例えば、符号化手段3は、図2に示すように、高出射部としての光反射部5と、低出射部としての光吸収部6とを交互に複数配列して形成してもよく、図3に示すように、光反射部5と低出射部としての光乱反射部7とを交互に複数配列して形成してもよい。なお、上記高出射部と低出射部とは相対的なものであり、したがって、高出射部を光乱反射部7とし、低出射部を光吸収部6としてもよい。
【0021】
具体的には、図2(a)に示す符号化手段3は、可動部2の表面2aの光走査面の隅部に所定幅の光吸収部6を等ピッチで複数配列して形成したものであり、光走査面に、例えば、黒色インクをスクリーン印刷したり、金属酸化物等の光吸収層をエッチングして形成することができる。その形成方法の一例は、図4に示すように、(a)Si基板等の可動部2の表面2aを鏡面に形成し、(b)該表面2aの隅部に金属酸化物の光吸収層6aを蒸着等により被着させ、さらに、該光吸収層6aの上にフォトレジストをコーティングし、図示省略のフォトマスクを用いて露光し、その後これを現像液で現像して上記光吸収層6aの上に所定幅で等ピッチに形成されたレジストマスク10を得る。そして、(c)該レジストマスク10を用いて光吸収層6aをエッチングし、(d)レジストマスク10を洗浄して除去して、可動部2の表面2aに所定幅の光反射部5と所定幅の光吸収部6が交互に配列された符号化手段3を形成することができる。」

「【0024】
図2(a)?(c)に示すいずれの符号化手段3も、入射光を光反射部5で反射させると共に光吸収部6で吸収させて、符号化手段3上を走査する光ビームに強度変調を与えて出射させるこができる。この場合、検出部4は、符号化手段3における光ビームの反射光を検出できるように可動部2に対して発光部1と同じ側に配置される。
【0025】
また、図3(a)に示す符号化手段3は、可動部2の表面2aに所定幅の反射面5と所定幅の光乱反射部7としての溝部7aを交互に配列して形成したものである。その形成方法の一例は、図5に示すように、(a)シリコン基板等から成る可動部2の表面2aに鏡面の光走査面を形成し、(b)該表面2aの隅部にフォトレジストをコーティングし、図示省略のフォトマスクを用いて露光し、その後これを現像液で現像して上記表面2a上に所定幅で等ピッチに形成されたレジストマスク10を得る。そして、(c)該レジストマスク10を用いて可動部2の表面2aをエッチングして溝部7aを形成する。なお、溝部7aの底部は鏡面ではないため該溝部7aで反射する光は乱反射し光乱反射部7となる。そして、(d)レジストマスク10を洗浄して除去することによって、可動部2の表面2aに所定幅の光反射部5と所定幅の光乱反射部7が交互に配列された符号化手段3を形成することができる。
【0026】
また、図3(b)に示す符号化手段3は、可動部2の表面2aの隅部に所定幅の溝部7aを等ピッチで配列して形成し、その後表面2a上に光走査面となる高反射率の反射層5aをメッキまたはスパッタリング等により形成している。この場合も、溝部7aが光乱反射部7として機能し、相隣り合う溝部7aに挟まれた部分が光反射部5となる。」

(3)引用文献3
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2006-337321号公報)は、当審拒絶理由において引用された引用例1であり、その記載内容は、上記「第5」「1」「(1)引用例1」のとおりである。

(4)引用文献4
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開平4-93611号公報)は、当審拒絶理由において引用された引用例2であり、その記載内容は、上記「第5」「1」「(2)引用例2」のとおりである。

(5)引用文献5
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開昭58-150154号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「(24b)は位置検出ギヤ(24)のカム部(24a)が設けられた面と反体側の面に設けられた鏡面部であり,この鏡面部(24b)は位置検出ギヤ(24)が回転した時に粗面部(24c)と交互になる反射部(24b1)?(24b3)とから形成されている。また前記鏡面部(24b)粗面部(24c)は合成樹脂の成形品からなる位置検出ギヤ(24)の金型にあらかじめ鏡面仕上げ部とシボ等による粗面部を有することにより形成されている。(26)は上記電動機保持板(31)に検出素子保持部(25)を介して固定された光電素子(26)であり,光電素子(26)は位置検出ギヤ(24)の鏡面部(24b)と対向して1個または複数個設けられている。上記光電素子(26)の光が位置検出ギヤ(24)の鏡面部(24b)と粗面部(24c)に照射され,位置検出ギヤ(24)が回転した時に鏡面部(24b)と粗面部(24c)とで光電素子(26)に対して反射・乱反射することによりパルスを発生させ図示しないコントロール回路を動作させるようになっている。」と記載されている。

(6)引用文献6
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献6(実願昭60-4721号(実開昭61-122566号)のマイクロフィルム)は、当審拒絶理由において引用された引用例3であり、その記載内容は、上記「第5」「1」「(3)引用例3」のとおりである。

(7)引用文献7
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献7(特開平6-323872号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は物体の移動や回転を計測するために産業用工作機械や計測機械などの分野で利用されるエンコーダの零点位置検出装置に関するものである。」
「【0021】
【発明の効果】以上のように、請求項1の発明によれば、零点位置検出用パターンまたはそれ以外の周囲を拡散面に形成し、請求項2の発明によれば、零点位置検出用パターンまたはそれ以外の周囲を回析格子としたので、反射面、透過面以外によって零点位置を検出することができ、エッチングを施さなくても容易に零点位置検出用パターンが形成できる。この結果、レプリカスケールを応用して零点位置検出用パターンを形成することにより、型への加工だけで済むため、安価で、かつ高精度な零点位置検出装置を得ることができるという効果がある。」

(8)引用文献8
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献8(特開2003-21542号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0014】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の一側面としての変位量を検出する検出装置10について説明する。なお、添付図面の各図において、同一の参照番号を付した部材は同一部材を表すものとし、重複説明は省略する。検出装置10は回転体の回転軸の回転変位量を絶対情報として検出する装置であって、本発明では、かかる絶対情報を多値情報として検出する。図1を参照するに、検出装置10は、ディスク100と、光ヘッド200と、マスク300と、検出器400とを有する。ここで、図1は、本発明の一側面としての検出装置10を示す概略斜視図である。かかる検出装置100において、ディスク100は図示しない回転体の回転軸にその中心が位置するように取り付けられている。光ヘッド200と検出器400はディスク100に対し同じ側に設けられ、光ヘッド200はディスク100に照射される光束の焦点位置がディスク100上になるように配置される。また、検出器400は光ヘッド200の後述するビームスプリッタ220を介しディスク100により反射された回折光を検出可能な位置に設けられている。また、本実施形態において、マスク300は光ヘッド200のビームスプリッタ220上に設けられるが、マスク300は集光レンズ230の実効NA(開口数)を制御し、ディスク100上に形成されるスポット形状を制御可能であればこの位置に限定されるものでない。
【0015】ディスク100は回転体の変位量を表示する機能を有する。ディスク100は当該ディスク100の表面に凹凸によって形成されたパターン110を有し、かかるパターン110はディスク100の変位(回転)方向、即ち、ディスクの周方向に所定の間隔で設けられている(パターン110a乃至110d(以下、特に断らない限り、パターン110はパターン110a乃至110dを総括するものとする。))。本実施形態においては、ディスク100は円板形状を有する薄板であって、透明な(即ち、光を透過する)ポリカーボネイド樹脂で射出成形法によって形成され、その表面には反射層(例えば、Al、Auなどの薄膜)が形成されている。しかし、本発明の検出装置10に適用可能なディスク100の材料がこれに限定されるものではなく、例えば、ガラス円板などを使用しても良い。但し、射出成形法でディスク100を作成することは一度パターン110を含むディスク100の金型を成形してしまえばディスク100の量産が容易であり、安価にディスク100を成形することができる。また、射出成形法はミクロン単位でパターン110を成形可能であり、遮光膜又は光吸収膜をプリント成形する場合よりもより高精度に分解能を高めることができる。」

(9)引用文献9
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献9(特開平6-201906号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0016】また、鏡面の高反射率領域と粗面の低反射率領域が等間隔で配列されてのが望ましく、高反射率領域と低反射率領域が例えばレリーフパターンの谷と山の位置に配置されている。そして、粗面の表面の粗さはRa:0.08μm?2μmの範囲にあることが望ましい。」
「【0031】上記において、パターン版16は、図3(c)に示すような、不透明の繰り返し模様11上に粗面のフォトレジスト12の繰り返しパターンがのった繰り返しパターン体にNiをメッキをすることにより作製しているが、この代わりに、図3(c)のような繰り返しパターン体をそのまま用いて同図(d)?(f)のような複製を1回以上繰り返して、その複製を同図(d)?(f)の工程の複製用版である樹脂パターン版16として用いてもよい。
【0032】次に、図3(f)の複製に、図4の拡大図に示すように、樹脂層18側から、接着性向上のためのイオンボンバード処理を行った後、接着層としてのSiO層20をまず成膜し、次に、この接着層20上に反射膜となるアルミニウム層21を成膜し、最後に、増反射膜兼耐磨耗層となるSiO層22を再度成膜して、エンコーダ1用光反射体を完成する。

(10)引用文献10
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献10(特開2003-166855号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0019】したがって、本発明の目的は、従来技術のスケールと同じ位置決め精度を持ちながら、温度補正が不要な反射式の光学式エンコーダを提供することにある。」
「【0034】このスケール10は、例えば以下の方法で具体的に形成できる。まずベッド51の側壁面上のスケール10を設ける面を、研削加工などにより鏡面に仕上げる。次に、この表面に一定の周期pでレーザ加工を施し、スリット列となる散乱面12を目盛として形成し、未加工部分を反射面11とする。散乱面12の形状は、図3に示すような角形に限定されず、V字状等でもよい。また、加工深さとしては0.1?0.2μm、加工幅としては2?10μmが好ましい。」

(11)引用文献11
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献11(特開昭63-83612号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「〔絶対値エンコーダのパターン構成〕
第5図は絶対値エンコーダのパターンを示す図、第6図は第1図の絶対値エンコーダの部分の回路図である。第11図,第12図に示した発受光素子のバラツキによる欠点をなくすため、絶対値エンコーダのパターンは、前述のように、3グループ化され、しかもグループ内には第5図に示したように、透明なリファレンストラックD1,D2,D3が設けてある。」

(12)引用文献12
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献12(特開2000-352527号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0025】図4は第2の実施例のスケールの断面図を示し、光学スケール13の第1領域13aと第2領域13bの面の高さが異なっている。図4(a) においては第1領域13aの方が厚く、図4(b) においては第2領域13bの方が厚くなっている。光学スケール13の径によってこの段差を適当な値に設定することによって、検出ヘッドを共通として拡大投影倍率をスケールピッチの比P2/P1に合わせることができる。」

(13)引用文献13
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献13(特開2001-79854号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学パネル用金型及びその製造方法に関し、詳しくは拡散面と鏡面とを有するプリズム形状によって光方向を制御することができる光学パネルを成形するための光学パネル用金型及びその製造方法に関するものである。」

「【0033】一方、本発明の図3に示した面構成を持つ光学パネル1にあっては、図6に示すように、光学パネル1のプリズムアレイ面4側から入射した光線Aは、プリズムの略傾斜面(鏡面2)で一度屈折し、パネル内を通過した後、出射する際にも屈折し、狙いの方向へ光を向けることが可能であり、また、略垂直面(拡散面3)に近い位置に入射した光線Bは、プリズムの略傾斜面(鏡面2)で一度屈折した後、略垂直面(拡散面3)で拡散されるため、狙いの方向とは逆の方向へ光を強く出射することはなく、パネル全体としては、図7に示すように、一方向へ光方向を制御する効果に優れている。」

「【0036】図11?図16は、上記構成の光学パネル1を成形するための光学パネル用金型11の製造工程の一例を示している。この光学パネル用金型11におけるプリズムアレイ形状面14が形成される金型型部ブロック10には、拡散面3を形成するための拡散面形成用金型部13と、鏡面2を形成するための鏡面形成用金型部12とを備えている。ここでは、一つの拡散面形成用金型部13が光学パネル1の一つの拡散面3(図6)に対応し、一つの鏡面形成用金型部12が光学パネル1の一つの鏡面2(図6)に対応しており、金型型部ブロック10には、拡散面形成用金型部13と鏡面形成用金型部12とが交互に複数個連続したプリズムアレイ形状面14が構成されている。この金型型部ブロック10の材質としては、銅、真鍮、ニッケル、アルミニウム、亜鉛合金またはS55C等の鋼材上に銅、ニッケルを0.5?10mm程度の厚みにメッキしたものが例として挙げられる。
【0037】次に、金型型部ブロック10(ワーク)にプリズムアレイ形状面14を形成するにあたっては、先ず図11に示すように、拡散面形成用金型部13を形成するための第1の面13a(略垂直面)に、形成しようとする拡散面形成用金型部13の概略形状を形成し、鏡面形成用金型部12を形成するための第2の面12a(略傾斜面)に、形成しようとする鏡面形成用金型部12の概略形状を形成する。このようなプリズムアレイ形状面14の概略形状を形成する例としては、図12に示す往復切削用の切削工具6、或いは図13に示す回転切削用の切削工具6′を用いる。これらの切削工具6,6′は、いずれも、プリズムアレイ形状面14の断面形状を反転させた断面略三角形状を有している。」

「【0043】上記のように単結晶ダイヤモンドからなる切削工具6を用いて第2の面12aを鏡面2に仕上げて鏡面形成用金型部12が形成され、目的とする拡散面形成用金型部13と鏡面形成用金型部12とが交互に複数個連続して形成されたプリズムアレイ形状面14を有する光学パネル用金型11を製造することができる。」

【0045】しかして、プリズムアレイ形状面14を概略形状に切削加工した後に、ブラスト加工による拡散面形成用金型部13の形成工程と、鏡面仕上げによる鏡面形成用金型部12の形成工程とを行うだけでよいので、従来のようなレジスト塗布工程、露光・現像工程、エッチング工程、レジスト除去工程を行う場合と比較して、本発明では金型11完成までの工程数が少なくなり、生産性が大幅に向上することとなる。」

2 原査定についての判断
平成29年11月22日付けの補正により、補正後の請求項1、8、14は「透明な樹脂部材から成る前記目盛パターンは、前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」という技術的事項を有するものとなった。
当該「透明な樹脂部材から成る前記目盛パターンは、前記樹脂部材の成形表面がブラスト面により樹脂成型された状態で粗面とされた光の反射率の低い低反射部と、前記樹脂部材の前記低反射部に対して突出して形成され、前記樹脂部材の成形表面が樹脂成型された状態で鏡面とされて前記低反射部より光の反射率の高い高反射部とを備え」は、原査定における引用文献1?13(なお、引用文献3、4、6は、当審拒絶理由における引用例1、2、3)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1?21は、当業者であっても、原査定における引用文献1?13に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-10 
出願番号 特願2012-98242(P2012-98242)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01D)
P 1 8・ 16- WY (G01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
発明の名称 樹脂製エンコーダスケール、エンコーダ、樹脂製エンコーダスケールの製造方法およびエンコーダの製造方法  
代理人 栗林 三男  
代理人 栗林 三男  

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