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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G
管理番号 1336007
審判番号 不服2017-9922  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-04 
確定日 2018-01-24 
事件の表示 特願2012-247681「スライドシュー摺動異常検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月22日出願公開、特開2014- 94813、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月9日に出願されたものであって、平成28年7月15日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年3月30日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成29年7月4日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成29年8月17日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、平成29年10月31日に前置報告がされ、平成29年11月9日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。

・理由(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・刊行物1及び2
・備考
刊行物1には、物品の搬送方向と直角方向に延伸したスラット18を物品16の搬送方向に連結し、物品16を積載して搬送するスラットコンベヤと、スラットコンベヤ上をスラットの搬送方向と直角方向にスライド自在なシュー20とを用いたスライドシュー式仕分けコンベヤにおいて、
A)スライドシュー式仕分けコンベヤに沿って、シュー20を、直進路から分岐路(分岐コンベヤ48)へと誘導する分岐部(振り分け手段54、移動案内レール52)と、
B)移動案内レール52の下流側に設けられ、シュー20の回転軸42や案内ローラ44を検出して、シュー20がスラット18に沿って移動したことを確認する確認装置90とを有したスライドシュー式仕分けコンベヤが記載されている(特に、段落0057-0058、図3参照)。
ここで、シュー20を、直進路から分岐路(分岐コンベヤ48)へと誘導する際に、シュー20がスラット18に沿って移動していなければ、確認装置90によりシュー20の移動が確認されないこととなるから、シュー20の摺動異常に起因してシュー20の移動が確認されないことを含むと認められる。
一方、レーザー等を利用した反射型の距離センサにより物品の有無や異常を検知することは、従来周知である(例えば、刊行物2の明細書3-4頁、図1参照)。
刊行物1に記載された発明及び周知の事項は、センサにより物品の有無や異常を検知する点において共通するとともに、刊行物1には、確認装置90として、 シュー20の回転軸42、案内ローラ44を検出する方法は、接触または非接触のいずれであっても良い点が記載されていることも勘案すれば、該周知の事項を、刊行物1に記載された発明に適用し、反射型の距離センサによりシュー20の回転軸42や案内ローラ44の位置を検出して、回転軸42や案内ローラ44が所定の位置にあるか否かを検知することは、周知事項の転換にすぎない。
その際、確認装置90を、スライドシュー式仕分けコンベヤの躯体に設けるか、他の部材に設けるかは、当業者が適宜選択し得た設計変更であると認められる。

<刊行物一覧>
1.特開2012-35938号公報
2.実願平1-119745号(実開平3-59917号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、出願当初の明細書及び平成29年7月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」という。)。

「【請求項1】
物品の搬送方向と直角方向に延伸したスラットを物品の搬送方向に連結し、物品を積載して搬送するスラットコンベヤと、スラットコンベヤ上をスラットの搬送方向と直角方向にスライド自在なスライドシューとを用いたスライドシュー式仕分けコンベヤにおいて、
A)前記仕分けコンベヤに沿って、前記スライドシューを、直進路から分岐路へと誘導する分岐部と、
B)前記仕分けコンベヤの躯体に設けられ、前記分岐部近傍の前記スライドシューに対してLED、レーザーもしくは超音波を照射しこれに対する前記スライドシューからの反射波を検出する反射型センサと、
を有し、前記反射型センサにより検出された前記スライドシューまでの距離が一定の範囲内にないことをもって該スライドシューが前記分岐路に係るガイド部材から離反した位置を進行しているとすることによって、前記スライドシューの摺動異常を検知することを特徴とするスライドシュー摺動異常検知装置。」

第4 刊行物
1.刊行物1(特開2012-35938号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物1には、「物品の仕分け設備」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物1の記載事項
1a)「【0021】
図1、図2に示す本発明の物品の仕分け設備10は、回転駆動装置12a、搬送経路を周回する無端チェーン14、物品16を載せて搬送するための複数のスラット(物品支持体)18、およびスラット18に取り付けられたシュー(物品横押し体)20を備える。」(段落【0021】)

1b)「【0030】
物品16を仕分けするために複数の分岐案内部46が設けられる(図3)。分岐案内部46でシュー20が搬送方向の直交方向に物品16を押し、物品16を分岐コンベヤ48に導く。またシュー20を直進させて、物品16の分岐をおこなわないこともできる。
【0031】
分岐案内部46には、案内ローラ44の軌道となる2種類のレールが設けられる。これらのレールは、案内ローラ44を搬送方向に沿って直進させるための直進用案内レール50、および案内ローラ44を搬送方向に対して斜方向に移動させるための移動案内レール52である。
【0032】
直進案内レール50は、搬送経路の両側に設けられる。直進案内レール50は、分岐案内部46以外にも設けられており、搬送方向に沿った1本のレールとなっている。移動案内レール52は、搬送方向に対して斜方向を向いている。案内ローラ44が振り分け手段54に導かれるように、振り分け手段54の上流側に直進用案内レール50と平行に並んだ始端案内レール51が設けられ、案内ローラ44はその間を通過する。」(段落【0030】ないし【0032】)

1c)「【0057】
さらに、シュー20がスラット18に沿って移動したことを確認する確認装置90を設ける。確認装置90は、シュー20の回転軸42または案内ローラ44を検出して、シュー20の移動を確認する。回転軸42または案内ローラ44の移動経路に確認装置90が配置される。分岐案内部46が複数あるため、確認装置90は、各移動案内レール52に対して設ける。確認装置90は、シュー20の移動を確認するため、移動案内レール52に対して搬送方向の下流側に設けられる。例えば、移動案内レール52の下流端に設けられた終端案内レール52xの位置に設ける。
【0058】
シュー20の回転軸42または案内ローラ44を検出する方法は、接触または非接触のいずれであっても良い。例えば、発光手段と受光手段とを備えた光電スイッチを利用する。発光手段はレーザーダイオードや発光ダイオードである。受光手段は、フォトダイオードやフォトトランジスタである。発光手段が発した光を受光手段で受光する。直進用案内レール50と終端案内レール52xの間を光が通過し、回転軸42や案内ローラ44で光が遮光されることによって、シュー20の通過を検出する。この場合、直進用案内レール50と終端案内レール52xに開口や切り欠きを設け、開口や切り欠きを光が通過するように発光手段と受光手段を設置する。
【0059】
上記のように設計時にスラット18の幅やスラット18の間隔は既知であり、さらに検出装置62から確認装置90までの距離も既知である。これらの値によって、検出装置62から確認装置90までのスラット18の数も既知となる。このスラット18の数を検出装置62がカウントした値から減算すれば、確認装置90に到達しているスラット18の番号になる。なお、減算した値が0やマイナスになった場合については、上述した振り分け手段54の場合と同様である。
【0060】
検出装置62から確認装置90に検出板60をカウントした値を送り、確認装置90は、カウントした値からスラット18の数を減算する。シュー20を検出した時のスラット18の番号が分かる。所望のシュー20がスラット18に沿って移動したか否かが分かる。また、各スラット18のシュー20が、スラット18のいずれの端部にあるかも分かる。」(段落【0057】ないし【0060】)

1d)「【0080】
(5)分岐をおこなうための所定の番号になれば、振り分け手段54は電磁石56に給電をおこなう。給電によってシュー20の下部36の案内ローラ44が移動案内レール52に導かれる。シュー20がスラット18に沿って移動する。シュー20が物品16を押し、物品16は分岐コンベヤ48に導かれる。」(段落【0080】)

1e)上記1c)の記載から、刊行物1には、シュー通過確認装置に関する発明が記載されることが分かる。

1f)上記1a)及び図2の記載から、刊行物1には、物品を搬送方向と直角方向に延伸したスラット18を物品の搬送方向に連結し、物品を積載して搬送するスラットコンベヤが記載されることが分かる。

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「物品の搬送方向と直角方向に延伸したスラット18を物品の搬送方向に連結し、物品を積載して搬送するスラットコンベヤと、スラットコンベヤ上をスラット18の搬送方向と直角方向にスライド自在なシュー20とを用いた仕分け設備10において、
A)前記仕分け設備10に沿って、前記シュー20を、直進用案内レール50から移動案内レール52へと誘導する振り分け手段54と、
B)移動案内レール52の下流端に設けられた終端案内レール52xの位置に発光手段と受光手段とを備え、光が遮光されることで前記シュー20の通過を検出する確認装置90と、
を有するシュー通過確認装置。」

2.刊行物2(実願平1-119745号(実開平3-59917号)のマイクロフィルム)について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された上記刊行物2には、「搬送路の物品検出装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物2の記載事項
2a)「(課題を解決するための手段)
上記の目的を達成するための本考案の構成を実施例に対応する第1図及び第2図を用いて説明すると本考案は搬送路(1)の上方に、該搬送路(1)上の物品の有無と、正立、転倒状態とを距離計測値で識別する検出器(4)を配設したことを特徴とする。
(作用)
そして本考案は上記の手段により搬送路(1)上の正立びん(2)は検出器(4)により距離Aとして検出され、又搬送路(1)上の倒びん(3)は検出器(4)により距離Bとして検出され、更に搬送路(1)上にびんのない部分は検出器(4)により距離Cとして検出され、その倒びん(3)の存在を容易に検出できる。」(明細書第3ページ第1ないし13行)

(2)刊行物2技術
上記(1)及び図面の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されている。

「搬送路(1)の上方に、該搬送路(1)上の物品の有無と正立、転倒状態とを距離計測値で識別する検出器(4)を配設し、検出器(4)により検出した距離によって、倒びんの存在を検出する技術。」

第5 対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「スラット18」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「スラット」に相当し、以下同様に、「シュー20」は「スライドシュー」に、「仕分け設備10」は「スライドシュー式仕分けコンベヤ」に、「直進用案内レール50」は「直進路」に、「移動案内レール52」は「分岐路」に、「振り分け手段54」は「分岐部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「移動案内レール52の下流端に設けられた終端案内レール52xの位置に発光手段と受光手段とを備え、光が遮光されることで前記シュー20の通過を検出する確認装置90」と、本願発明1における「前記仕分けコンベヤの躯体に設けられ、前記分岐部近傍の前記スライドシューに対してLED、レーザーもしくは超音波を照射しこれに対する前記スライドシューからの反射波を検出する反射型センサ」とは、「分岐部近傍の前記スライドシューに関する情報を検出するセンサ」という限りにおいて一致する。
さらに、引用発明における「シュー通過確認装置」と、本願発明1における「スライドシュー摺動異常検知装置」とは、「スライドシュー検知装置」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「物品の搬送方向と直角方向に延伸したスラットを物品の搬送方向に連結し、物品を積載して搬送するスラットコンベヤと、スラットコンベヤ上をスラットの搬送方向と直角方向にスライド自在なスライドシューとを用いたスライドシュー式仕分けコンベヤにおいて、
A)前記仕分けコンベヤに沿って、前記スライドシューを、直進路から分岐路へと誘導する分岐部と、
B)前記分岐部近傍の前記スライドシューに関する情報を検出するセンサと、
を有するスライドシュー検知装置。」

[相違点]
本願発明1においては、「スライドシュー検知装置」に関して「スライドシュー摺動異常検知装置」であり、また、「分岐部近傍のスライドシューに関する情報を検出するセンサ」に関して、「仕分けコンベヤの躯体に設けられ、分岐部近傍のスライドシューに対してLED、レーザーもしくは超音波を照射しこれに対するスライドシューからの反射波を検出する反射型センサ」であり、さらに、「反射型センサにより検出されたスライドシューまでの距離が一定の範囲内にないことをもって該スライドシューが分岐路に係るガイド部材から離反した位置を進行しているとすることによって、スライドシューの摺動異常を検知する」のに対し、引用発明においては、「スライドシュー検知装置」に関して「シュー通過確認装置」であり、また、「分岐部近傍のスライドシューに関する情報を検出するセンサ」に関して、「移動案内レール52の下流端に設けられた終端案内レール52xの位置に発光手段と受光手段とを備え、光が遮光されることでシュー20の通過を検出する確認装置90」である点。

上記相違点について検討する。

本願発明1における「反射型センサにより検出されたスライドシューまでの距離が一定の範囲内にないことをもって該スライドシューが分岐路に係るガイド部材から離反した位置を進行しているとすることによって、スライドシューの摺動異常を検知する」という発明特定事項は、引用発明のみならず、刊行物2には記載も示唆もされていない。
本願発明1は、仕分けコンベヤの躯体からスライドシューに対してLED、レーザーもしくは超音波を照射し、その反射波から、躯体とスライドシュートの距離を検知することで、スライドシューの摺動異常を検知するスライドシュー摺動異常検知装置であるところ、引用発明は、発光手段と受光手段との間の光が遮られることで、シュー20の通過を検出するシュー通過確認装置であって、本願発明1のように反射波を利用して、躯体とスライドシューとの距離を検知するものではなく、また、スライドシューの摺動異常を検知するスライドシュー摺動異常検知装置ではない。
また、刊行物2技術は、距離計測値で、物品の有無や異常状態を検知するものであるが、かかる物品とはびんであり、スラットに対して摺動するスライドシューとは異なるものである。
さらに、仮に、刊行物2技術のように、距離計測値で、物品の有無や異常状態を検知することが周知技術であったとしても、かかる周知技術を引用発明のシュー20の通過確認手段に適用して、シュー20の摺動異常を検知するものとする動機が見当たらない。

そして、本願発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることにより、スライドシューの損傷、汚損など、多様なスライドシューの異常状態を検出することができるとともに、反射型センサのみの追加で、スライドシューの摺動異常を検知することができるため、低廉な費用で、仕分けコンベヤの安定稼働が実現できるという格別な効果を奏するものである。

したがって、本願発明1は、引用発明及び刊行物2技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1は、「前記仕分けコンベヤの躯体に設けられ、前記分岐部近傍の前記スライドシューに対してLED、レーザーもしくは超音波を照射しこれに対する前記スライドシューからの反射波を検出する反射型センサと、を有し、前記反射型センサにより検出された前記スライドシューまでの距離が一定の範囲内にないことをもって該スライドシューが前記分岐路に係るガイド部材から離反した位置を進行しているとすることによって、前記スライドシューの摺動異常を検知すること」(下線は、審判請求時の補正において補正された部分を示す。)という事項を有するものであるから、当業者であっても、原査定の理由において引用された刊行物1及び刊行物2に記載された発明又は技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び刊行物2技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-11 
出願番号 特願2012-247681(P2012-247681)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 八木 誠
佐々木 芳枝
発明の名称 スライドシュー摺動異常検知装置  
代理人 友野 英三  

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