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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1336031
審判番号 不服2015-17820  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-09 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 特願2010-116741「眼鏡レンズにおけるプリズムリングによる光学中心の特殊算出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日出願公開,特開2011-232722〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特願2010-116741号(以下「本件出願」という。)は,平成22年4月28日の特許出願であって,その手続の概要は,以下のとおりである。
平成22年 5月11日付け:手続補正書
平成22年 6月18日付け:手続補正書
平成26年 1月20日付け:手続補正書
平成26年 3月14日付け:拒絶理由通知書
平成26年 5月15日付け:手続補正書
平成26年 5月15日付け:意見書
平成26年11月11日付け:拒絶理由通知書
平成27年 1月26日付け:手続補正書
平成27年 1月26日付け:意見書
平成27年 2月 3日付け:上申書
平成27年 6月 1日付け:拒絶査定
平成27年 9月 9日付け:審判請求書
平成27年 9月 9日付け:手続補正書
平成27年 9月14日付け:上申書
平成27年 9月18日付け:上申書
平成28年12月 9日付け:補正の却下の決定
(平成27年9月9日付け手続補正書による補正を却下する決定)
平成28年12月 9日付け:拒絶理由通知書(当合議体)
平成29年 2月20日付け:手続補正書
平成29年 2月20日付け:意見書
平成29年 6月 9日付け:拒絶理由通知書(当合議体)
平成29年 8月21日付け:手続補正書
(以下,この手続補正書による補正を「本件補正」という。)
平成29年 8月21日付け:意見書
(以下,この意見書を「最終意見書」という。)

2 当合議体の拒絶の理由
(1) 平成28年12月9日付けの拒絶の理由の内容は,概略,以下のとおりである。
本件出願の発明の詳細な説明の記載は,全体として,説明不十分であり,また,一見すると,整合しない箇所も見受けられる。
したがって,本件出願の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件出願の請求項1及び請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。
よって,本件出願は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。
(以下,この拒絶の理由を「理由A」という。)

(2) 平成29年6月9日付けの拒絶の理由の内容は,概略,以下のとおりである。
ア 平成29年2月20日付け手続補正書でした補正(特許請求の範囲全文及び明細書全文の補正)は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(以下,この拒絶の理由を「理由B」という。)

イ 請求項2に記載された,「S」及び「C」の+-の組み合わせとレンズの種類との関係が必ずしも明確であるとはいえない。また,特許請求の範囲の請求項2の構成によって,発明が解決しようとする課題が解決できるのか,必ずしも判らない。
よって,本件出願は,特許請求の範囲の請求項2の記載が,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。また,本件出願は,特許請求の範囲の請求項2の記載が,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(以下,この拒絶の理由を「理由C」という。)

第2 当合議体の判断
事案に鑑みて,まず,理由Bについて先に判断し,その後,理由A及びCについて判断する。
1 理由Bについて
(1) 明細書について
本件補正後の明細書の記載と願書に最初に添付した明細書(以下「出願当初明細書」という。)の記載を比較すると,本件補正後の明細書には,出願当初明細書には記載されていなかった,以下の説明が具体的かつ詳細に記載されている。
・プリズムリングに関する説明
・内面切削機及び切削加工に関する説明
・レンズの頂角と屈折する角度に関する説明
・度数と偏心量とプリズム屈折力に関する説明
・眼鏡レンズの中心厚に関する説明
・視線方向に関する説明
・光学中心の位置のずれや内面カーブに関する説明
・発明が解決しようとする課題に関する説明
・表1?表3及び図1?図3に関する説明
・S±度数及びC±度数の組み合わせとレンズの種類に関する説明

ここで,プリズムリングや内面切削機等の個々の器械は,本件出願時において,当業者に公知のものであったといえる。
しかしながら,本件補正により加えられた上記説明は,単なる器械等の説明にとどまるものではなく,これら器械等に基づいて発明者が会得した,技術的知見を説明するものと解される。また,上記説明は,本願発明の背景技術,発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段及び発明の効果を裏付ける,ひとまとまりの技術的思想を表したものと解される。
そして,本件補正により加えられた上記説明は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「出願当初明細書等」という。)には記載されていなかった(説明が極めて不足した状態であった)。また,本件出願時の当業者において,上記説明の内容(発明者の技術的知見又は技術的思想)が,技術常識であったということもできない。
(当合議体注:個々の器械等が技術常識であったと仮定しても,発明者の技術的知見又は技術的思想が技術常識であったとまではいえない。)

したがって,本件補正は,出願当初明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということができない。

(2) 請求項2について
本件補正後の請求項2(以下「本件補正後請求項2」という。)の記載と,願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項2(以下「出願当初請求項2」という。)の記載を比較すると,両者は,以下ア及びイにおいて一致しない,あるいは,異同が不明である。
ア 出願当初請求項2の【数2】のIF文から把握される場合分けのしかたと,本件補正後請求項2に記載された場合分けのしかたが一致しない。
イ 出願当初請求項2の【数2】のIF文中に記載された「軸を±90°転換し,S+C-にして下さい」という記載が意味する技術的事項と,本件補正後請求項2に記載された,「軸が0°?90°未満なら軸に90°を加えた軸に換え,軸が90°?180°なら軸から90°を減らした軸に換えて,(S+,C+)の形式に変えます。」,「右レンズのプリズム方向は,上記2-1.の(S+,C+)のプラスレンズの右レンズのプリズム方向の場合に準じます。」等の記載が意味する技術的事項の異同が不明である。
請求項2に記載された事項は,請求項1に記載された事項と同様に,本件出願の課題解決手段に対応するものと解される。しかしながら,出願当初明細書等における説明は,極めて不足した状態であった。また,本件出願時の当業者において,本件出願の課題解決手段が,技術常識であったということもできない。

したがって,本件補正は,出願当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるということができない。

2 理由Aについて
本件出願の発明の詳細な説明の記載全体を考慮しても,請求項1及び請求項2に記載された方法により得られる結果と,眼鏡レンズと内面切削機の規格的位置関係(換言すると,請求項1及び請求項2に記載された方法により得られた結果と,眼鏡レンズの厚みや屈折率をも加味した上で選択されるべきプリズムリングとの対応関係)が,依然として明確であるとはいえない。
各図の説明についても,依然として,明確であるとはいえない。

したがって,本件出願の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件出願の請求項1及び請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。

3 理由Cについて
請求項2に記載された,「S」及び「C」の+-の組み合わせとレンズの種類との関係が必ずしも明確であるとはいえない。例えば,(S+,C-)のレンズは,依然として,「プラスレンズ」であり,かつ,「混合レンズ」である。また,特許請求の範囲の請求項2の構成によって,発明が解決しようとする課題が解決できるのか,必ずしも判らない。

したがって,請求項2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができず,また,明確であるということもできない。

4 請求人の意見について
請求人は,「本願は,特許法第1章総則の目的である第1条を主旨として,特許出願をするものです。」として,最終意見書に記載されたとおりの意見を述べている。
しかしながら,特許法は,特許法1条に記載された目的を達するための手段として,「発明の保護及び利用を図ること」を制度化している。そして,その仕組みは,新しい技術を公開した者に対し,その代償として一定の期間,一定の条件の下に特許権という独占的な権利を付与し,他方,第三者に対してはこの公開された発明を利用する機会を与える,というものである。
そうしてみると,請求人が発明の保護を受けるためには,まず,新しい技術を公開することが求められる。
ところが,本件出願に関しては,出願当初明細書等における説明が極めて不足し,新しい技術を公開したとはいえない状態であった。
したがって,新しい技術を公開した代償として,請求人に特許権を付与することはできない。
以上のとおりであるから,請求人の意見を採用することはできない。

第3 まとめ
平成29年8月21日付けでした補正は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。また,本件出願は,同法36条4項1号,同条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-16 
結審通知日 2017-10-24 
審決日 2017-11-07 
出願番号 特願2010-116741(P2010-116741)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G02C)
P 1 8・ 561- WZ (G02C)
P 1 8・ 536- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明清水 裕勝  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
清水 康司
発明の名称 眼鏡レンズにおけるプリズムリングによる光学中心の特殊算出方法  

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