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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1336060
審判番号 不服2016-13962  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 特願2013- 15055「感光性コポリマー、このコポリマーを含むフォトレジスト組成物、およびこれから形成される物品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-166931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月30日(パリ条約による優先権主張 2012年2月15日 米国)に出願された特許出願であって、平成27年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月28日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたが、同年5月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年11月1日に審判請求書についての手続補正書(方式)が提出され、同年11月30日付けで前置報告がされたものである。

第2 平成28年9月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成28年9月16日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年9月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、本件補正前の平成28年3月28日提出の誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
式(XX):
【化1】


(式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、
(1)R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、これらは一緒に環を形成し、
R^(z)は(i)(a)置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基、(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル、および(c)C_(6-20)芳香族含有基に結合するC_(1-10)アルキレン基もしくはC_(3-10)シクロアルキレン基並びに置換基R^(x)、R^(y)、およびR^(z)が結合された炭素原子を含む基であるか、または(ii)C_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含むC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、あるいは
(2)R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、
R^(z)は置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基またはC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、 少なくとも1つのR^(x)およびR^(y)はC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含み、さらに連結基としてC_(1-20)アルキレン基を含む)
を有する電子感受性酸脱保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマー。」を
「【請求項1】
式(XX):
【化1】


(式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、
R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、これらは一緒に環を形成し、
R^(z)は(i)(a)置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基、(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル、および(c)C_(6-20)芳香族含有基に結合するC_(1-10)アルキレン基もしくはC_(3-10)シクロアルキレン基並びに置換基R^(x)、R^(y)、およびR^(z)が結合された炭素原子を含む基であるか、または(ii)C_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含むC_(6-20)環式脂肪族含有基である)
を有する電子感受性酸脱保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマー。」とする補正(以下「補正事項1」という。なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)を含むものである。

2 補正の目的
上記の補正事項1は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である一般式(XX)におけるR^(x)、R^(y)及びR^(z)について、その選択肢の一つである「(2)R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、
R^(z)は置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基またはC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、 少なくとも1つのR^(x)およびR^(y)はC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含み、さらに連結基としてC_(1-20)アルキレン基を含む)」を削除するとともに、不要となった「(1)」を削除するものであり、また、補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
上記2のとおりであるから、補正事項1を含む本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
式(XX):
【化1】


(式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、
R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、これらは一緒に環を形成し、
R^(z)は(i)(a)置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基、(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル、および(c)C_(6-20)芳香族含有基に結合するC_(1-10)アルキレン基もしくはC_(3-10)シクロアルキレン基並びに置換基R^(x)、R^(y)、およびR^(z)が結合された炭素原子を含む基であるか、または(ii)C_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含むC_(6-20)環式脂肪族含有基である)を有する電子感受性酸脱保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマー。 」

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

イ 平成27年3月28日提出の誤訳訂正書により補正された明細書(以下「本願明細書」という。なお、審判請求時の補正により明細書は補正されていない。)には、以下のとおりの記載がある(下線は、当審で付した。)。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されるのは、新規感光性コポリマー、このコポリマーを含むフォトレジスト、およびこのフォトレジストからパターンを形成する方法である。
【背景技術】
【0002】
EUV(極紫外線)フォトレジスト現像はEUVL(EUVリソグラフィ)技術実行のための困難な問題であり続けてきた。高解像(すなわち、ハーフピッチで22nmのフィーチャを解像する)かつ1.8nm未満の低いライン幅ラフネス(LWR)だけでなく、高いウェハスループットを提供する(すなわち、10?15mJ/cm^(2))のに充分感受性である材料の開発が必要とされている。
【0003】
EUVフォトレジスト材料およびポリマーデザインのために、非常に重要な考慮事項はEUV吸収である。EUVプラットフォーム広く使用されるポリマーは高エネルギー(13.4nm)光によってイオン化されており、かつ高エネルギー電子を放出する。この高エネルギー電子は還元的電子移動によって光酸発生剤によって捕捉され、そしてPAGを活性化して酸を発生させる。
【0004】
EUV感受性はフォトスピードによっても決定され、このフォトスピードはレジスト中の光酸発生剤(PAG)の濃度および/または効率を変えること、ポリマー骨格上の酸不安定(acid-labile)保護基の数を最適化すること、ポリマー保護基を設計すること、または塩基クエンチャーの量を少なくすることによって増大させられうる。ササキら(・・・Proc.SPIE V.6923、692347(2008))はハロゲン原子をポリマーに導入することが、EUV高吸収性元素であるハロゲンによる吸収係数の増大のせいで、EUVシステムにおいて酸発生収率およびレジスト感度を増大させることを開示する。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この追加の吸収はEUVリソグラフィにおける入射エネルギーを効率的に使用させうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
先行技術の上記および他の欠点は、式(XX)を有する電子感受性酸脱保護性(electron-sensitizing acid deprotectable)モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマーによって克服されうる:
【化1】


式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、R^(z)は置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基またはC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、R^(x)およびR^(y)は場合によっては一緒に環を形成し、並びにR^(x)、R^(y)およびR^(z)の少なくとも1つはハロゲン化されている。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の上述のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面と合わせて以下の詳細な記載から明らかである。
本明細書において開示されるのは、ラジカル重合性(メタ)アクリラート型モノマーをベースにして酸脱保護性電子感受性基を組み込んだ新規コポリマーである。この酸脱保護性電子感受性モノマーは、酸の存在下でのこの基の容易な脱離を可能にする第三級アルキルスペーサー構造を有し、かつハロゲン化EUV発色団(例えば、フッ素基)を有するペンダント芳香環を含むか、または前記スペーサー自体がハロゲン化発色団を含むか、または両方である。このコポリマーはオニウムカチオンをベースにした光酸発生モノマー、酸脱保護性モノマー、塩基可溶性モノマーおよびラクトン含有モノマーをさらに含む。このコポリマーは向上したLWRおよびサブ-22nmフィーチャサイズに到達することができる増大した解像度を有する。」
「【0017】
ある実施形態においては、電子感受性モノマーは式(III)または(IV)を有する
:
【化5】


式中、各R^(a)は独立してH、F、-CN、CH_(3)、もしくはCF_(3)であり、R^(c)はC_(1-10)アルキルもしくはC_(3-10)シクロアルキルであり、R^(d)、R^(e)、R^(f)、およびR^(g)は独立してC_(1-6)ペルフルオロアルキル、もしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルであり、S^(2)は単結合、C_(1-10)アルキレン基、もしくはC_(3-10)シクロアルキレン基であり、xは1?20の整数であり、yは1?20の整数であり、mは0?5の整数であり、nは1?5の整数であり、並びにpは0?2x+6の整数である。」

「【0020】・・・ある実施形態においては、電子感受性酸脱保護性モノマーは
【化9】


またはこの組み合わせを含む。」

(ウ)「【0047】
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。
・・・
【0049】
2種類の異なる脱離基モノマー(電子感受性モノマーLG1およびLG2)が以下の手順に従って製造された。
【0050】
スキーム1に示される脱離基1(LG1)は以下のように調製された。
【化22】


【0051】
1-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル)シクロペンチルメタクリラート(スキーム1において、n=1、X=CF_(3))の合成。
・・・
【0054】
スキーム2に示される脱離基2(LG2)(式中、n=1およびyはCF_(3)である)は以下のように調製された。
【化23】


・・・20gの5,5,5-トリフルオロ-2-フェニルペンタン-2-イルメタクリラート(LG2)(?72%収率)を琥珀色オイルとして得た。・・・
【0057】
比較ポリマー例
ヒール、フィードおよび開始剤のための3種類の別々の溶液が製造された。このヒール溶液は1.93gの2-フェニル-2-プロピルメタクリラート(PPMA)、1.68gのアルファ(ガンマ-ブチロラクトン)メタクリラート(α-GBLMA)、2.84gの3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-オール)シクロヘキシルメタクリラート(DiHFA)、1.63gのフェニルジベンゾチオフェニウム-1,1-ジフルオロ-2-(メタクリロイルオキシ)エタン-1-スルホナート(PDBT-F2)を66.58gの乳酸エチル/ガンマブチロラクトン(GBL)(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。フィード溶液は30.06gのPPMA、33.11gのα-GBLMA、20.81gのDiHFA、9.0gのPDBT-F2を131gの乳酸エチル/GBL(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。開始剤溶液は10.6gのVAZO V-65を22gのアセトニトリル/テトラヒドロフラン(THF;1:2v/v)に溶解させることにより調製された。
・・・
【0060】
実施例1(ポリマーA)
ヒール、フィードおよび開始剤のための3種類の別々の溶液が製造された。このヒール溶液は3.42gの1-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル)シクロペンチルメタクリラート、1.68gのα-GBLMA、2.84gのDiHFA、1.63gのPDBT-F2を66.58gの乳酸エチル/GBL(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。フィード溶液は39.33gの1-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル)シクロペンチルメタクリラート、33.11gのα-GBLMA、20.81gのDiHFA、9.0gのPDBT-F2を131gの乳酸エチル/GBL(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。開始剤溶液は10.6g(0.04mol)のVAZO V-65を22gのアセトニトリル/THF(1:2v/v)に溶解させることにより調製された。
・・・
【0063】
実施例2(ポリマーB)
ヒール、フィードおよび開始剤のための3種類の別々の溶液が製造された。このヒール溶液は2.57gの5,5,5-トリフルオロ-2-フェニルペンタン-2-イルメタクリラート、1.68g(0.009mol)のα-GBLMA、2.84gのDiHFA、1.63gのPDBT-F2を66.58gの乳酸エチル/GBL(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。フィード溶液は29.55gのLG2、33.11gのα-GBLMA、20.81gのDiHFA、9.0gのPDBT-F2を131gの乳酸エチル/GBL(70:30v/v)に溶解させることによって調製された。開始剤溶液は10.6gのV-65を22gのアセトニトリル/THF(1:2v/v)に溶解させることにより調製された。
・・・
【0065】
・・・最終ポリマーは真空で一晩乾燥させられた。
【0066】
表1は評価されたポリマーの物理的特性を示す。40nm膜厚さでの透過率は、それぞれの化学組成物についての実施されたおよび推定された材料密度(1.2g/cm^(3))を用いて計算された。
【0067】
【表1】

【0068】
次いで、上記ポリマーは配合され、そしてKrFおよびEUV露光条件下で評価された。
【0069】
フォトレジスト製造および処理
上述のように製造されたポリマー4.95g、乳酸エチル中のオムノバPF656界面活性剤の5重量%溶液0.1g、塩基添加剤(Troger’s Base)の1重量%溶液1.0g、ヒドロキシメチルイソブチラート溶媒(HBM)37.91g、および乳酸エチル溶媒156gを混合することによりポジティブトーンフォトレジスト組成物が製造された。
【0070】
このレジスト溶液は0.01μmPTFEフィルタを通された。レジスト配合物は60nmのレジスト厚さに対して25nmの下層(AR(商標)19、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLC)でコーティングされた200mmSiウェハ上にスピンキャストされた。この膜は130℃で90秒間アニールされ、そしてコントラスト曲線を得るためのオープンフレームアレイを用いて、ダークフィールドライン/スペースパターンを含むバイナリマスクを通して、EUV光源(NA=0.30;クアッド(Quad);0.22σ/0.68σ)に露光された。この露光されたウェハは100℃で60秒間ベークされ、次いで、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液で60秒間現像された。
【0071】
表2はポリマーAおよびB、並びに比較ポリマーのリソグラフィ特性のまとめを示す。
ポリマーBはポリマーAと比べてかなり低い17nm解像限界、かつポリマーBは比較例およびポリマーAと比べて解像限界およびLWRが有意に低いという独特の向上を示す。
【0072】
【表2】

・・・
【0074】
しかし、表2に認められるように、感度の目立った向上は観察されなかった。」

ウ 本願補正発明の課題について
本願明細書の【0002】?【0007】には、EUV(極紫外線)フォトレジスト現像はEUVL(EUVリソグラフィ)技術実行のために困難な問題で有り続けてきており、高解像かつ1.8nm未満の低いライン幅ラフネス(LWR)だけでなく、高いウェハスループットを提供するのに十分感受性である材料の開発が必要とされ、ササキらは、ハロゲン原子をポリマーに導入することが、EUV高吸収性元素であるハロゲンによる吸収係数の増大のせいで、EUVシステムにおいて酸発生収率及びレジスト感度を増大させることを開示していたところ、式(XX)(注:構造式は省略)を有する電子感受性酸脱保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマーによって、先行技術の欠点が克服されうるものであると記載されている。
そうすると、本願補正発明は、先行技術の欠点を克服し、EUVフォトレジスト現像において使用可能な、解像度、LWR、感受性などに優れるポリマーを提供することを課題とするものであると認められる。

エ 本願補正発明の課題を解決できると認識できる範囲
上記イのとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、「先行技術の上記および他の欠点は、式(XX)を有する電子感受性保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマーによって克服されうる」と記載され(【0007】)、その式(XX)は下記の構造を有するものである(注:本願補正発明の式(XX)とは置換基の定義が異なる。)。

(式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、R^(z)は置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基またはC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、R^(x)およびR^(y)は場合によっては一緒に環を形成し、並びにR^(x)、R^(y)およびR^(z)の少なくとも1つはハロゲン化されている。)

そして、【0007】の式(XX)をさらに限定した下記の式(III)と式(IV)が記載され(【0017】)、その具体的化合物として、下記の【化9】として2つのモノマーが記載されている(以下、実施例の記載に倣い、【化9】の左を「モノマーa」、右を「モノマーb」という。)。



【化9】


さらに、2-フェニル-2-プロピルメタクリラート(PPMA)とコモマーを重合した比較ポリマー、モノマーaとコモノマーを重合したポリマーA、及び、モノマーbとコモノマーを重合したポリマーBを合成し(【0047】?【0065】)、それらのポリマーについて、Tgなどの物理的特性(【表1】)に加え、それらのポリマーをポジティブトーンフォトレジスト組成物としてEUV光源を露光した場合の解像限界とLWR、及び、EUVとKrFに対する感度(【表2】)などの測定結果が示されている。
モノマーbは、一般式(III)に包含され、本願補正発明のように「R^(x)及びR^(y)は・・・、これらは一緒に環を形成」する構造を有していないので、本願補正発明に含まれるものではなく、モノマーaは、一般式(IV)に包含され、本願補正発明に含まれるものである。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された【表2】の結果などからみて、本願補正発明に関してはモノマーaを用いたコポリマーが発明の課題を解決できることが具体的に示されていることから、モノマーaと基本骨格が類似するモノマー、すなわち、式(IV)を有するモノマーを用いたコポリマーについては、発明の課題を解決できることを当業者が認識することができる。

他方、本願補正発明に係る式(XX)を有するモノマーは、式(IV)と基本骨格が異なるモノマー、すなわち、芳香族基を有しないモノマー(請求項1の(ii)は、式(IV)の基本骨格を構成するフェニル基ではなく環式脂肪族含有基である。)を包含するものであるところ、本願明細書の発明の詳細な説明には、式(IV)において、フェニル基に代えて環式脂肪族含有基としても(本願補正発明の(ii)に相当)、本願補正発明の課題に関連する物性がモノマーaと同等となることについて、合理的な説明は何ら記載されてない。
そして、一般に、化合物は、その具体的な構造により物性が変化するものであるという技術常識に照らしても、本願補正発明に係る式(XX)を有するモノマーのうち、式(IV)と基本骨格が異なるモノマーを用いたコポリマーについても、本願補正発明の課題との関連において、モノマーaを用いたポリマーAと同等の物性を有すると認識することはできない。

オ 本願補正発明のサポート要件適合性
本願補正発明は、式(IV)と基本骨格が異なるものを包含する式(XX)を有するモノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマーであるが、上記エのとおり、当業者において、本願出願当時の技術常識に照らして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から、本願補正発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものということはできない。
したがって、本願補正発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用文献2に記載された事項
(ア)特開2002-249520号公報(原査定で引用した引用文献2。以下「引用文献2」という。)には、次のとおりの記載がある(下線は当審で付した。)。

「【請求項1】 下記一般式(1)で示される基を有する高分子化合物。
【化1】

(式中、R^(1)はフッ素原子又はフッ素化されたアルキル基であり、R^(2)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。R^(3)、R^(4)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。R^(3)、R^(4)は環を形成してもよく、その場合はそれぞれ炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化されたアルキレン基を表す。a、bは0?2の整数、cは1?3の整数であり、a+b+c=3である。kは1?5の整数、k’は0?4の整数であり、k+k’=5である。)
【請求項2】 下記一般式(2-1)?(2-5)で示されるいずれかの繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1記載の高分子化合物。
【化2】(合議体注:一般式(2-2)?(2-5)は省略)



(式中、R^(1)はフッ素原子又はフッ素化されたアルキル基であり、R^(2)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。R^(3)、R^(4)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。R^(3)、R^(4)は環を形成してもよく、その場合はそれぞれ炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化されたアルキレン基を表す。R^(5)?R^(7)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。・・・a、bは0?2の整数、cは1?3の整数であり、a+b+c=3である。kは1?5の整数、k’は0?4の整数であり、k+k’=5である。・・・)」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細加工技術に適したレジスト材料、特に化学増幅レジスト材料のベースポリマーとして有用な高分子化合物並びにレジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている。
【0003】微細化が急速に進歩した背景には投影レンズの高NA化、レジストの性能向上、短波長化が挙げられる。・・・
【0006】本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、300nm以下、特にF_(2)(157nm)、Kr_(2)(146nm)、KrAr(134nm)、Ar_(2)(121nm)などの真空紫外光における透過率に優れたレジスト材料、特に化学増幅レジスト材料のベースポリマーとして有用な新規高分子化合物並びにこれを含むレジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ベースポリマー中の酸脱離性ユニットに含フッ素芳香環を有するエステル基を導入することにより、酸脱離能を損なうことなく透明性とドライエッチング耐性を確保したレジスト材料、特に化学増幅レジスト材料が得られること知見し、本発明に至ったものである。」

「【0014】一般式(1)で表される置換基を具体的に例示すると下記のようなものが挙げられる。
【化6】


【0015】本発明の高分子化合物は、上記式(2-1)?(2-5)の繰り返し単位だけでも酸脱離性を有するが、更に酸脱離性を向上させる点から下記繰り返し単位(3-1)?(3-5)を導入することができる。
【0016】

【0017】
(式中、R^(5)?R^(10)、mは上記と同じであり、Rは酸不安定基を表す。)」

「【0086】[合成例1]メタクリル酸2-ペンタフルオロフェニル-イソプロピルと下記モノマー1の共重合(1:1)
・・・
【化18】


【0089】[合成例2]メタクリル酸{1,1-ビス(ペンタフルオロフェニル)-2-エチル}とモノマー1の共重合(1:1)
・・・
【0091】[合成例3]メタクリル酸2-(p-トリフルオロメチルフェニル)-イソプロピルとモノマー1の共重合(1:1)」

「【0093】[評価例]
ポリマー透過率測定
得られたポリマー1gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)20gに十分に溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過してポリマー溶液を調製した。比較例用ポリマーとして、分子量10,000、分散度(Mw/Mn)1.10の単分散ポリヒドロキシスチレンの水酸基の30%をテトラヒドロピラニル基で置換したポリマーを用意し、これを比較例用ポリマー1とした。同様に、分子量15,000、分散度1.7のポリメチルメタクリレートを比較例用ポリマー2、メタ/パラ比40/60で分子量9,000、分散度2.5のノボラックポリマーを比較例用ポリマー3とし、上記と同様の方法でポリマー溶液を調製した。ポリマー溶液をMgF_(2)基板にスピンコーティングして塗布後、ホットプレートを用いて100℃で90秒間ベークし、厚さ100nmのポリマー膜をMgF_(2)基板上に作成した。この基板を真空紫外光度計(日本分光製、VUV-200S)に設置し、248nm、193nm、157nmにおける透過率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】レジスト調製及び露光
上記ポリマー及び下記に示す成分を表2に示す量で用いて常法によりレジスト液を調製した。次に、DUV-30(Brewer Science社製)を55nmの膜厚で製膜したシリコンウエハー上に得られたレジスト液をスピンコーティング後、ホットプレートを用いて100℃で90秒間ベークし、レジストの厚みを200nmの厚さにした。これにF2エキシマレーザー(リソテック社、VUVES)で露光量を変化させながら露光し、露光後直ちに120℃で90秒間ベークし、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行って、露光量と残膜率の関係を求めた。膜厚が0になった露光量をEthとして、レジストの感度を求めた。
【0096】
【表2】


・・・
【0098】 表1,2より本発明の高分子化合物を用いたレジスト材料は、F_(2)(157nm)の波長においても十分な透明性を確保できることがわかった。また、VUVES露光の結果、露光量の増大に従って膜厚が減少し、ポジ型レジストの特性を示すことがわかった。」

(イ)上記(ア)の記載からみて、引用文献2の一般式(2-1)で示される繰り返し単位は、「酸脱離性ユニットに含フッ素芳香環を有するエステル基を導入した」ものであり(【0007】)、引用文献2の一般式(2-1)及び一般式(3-1)で示される繰り返し単位を形成するモノマーは、合成例1?3で用いたモノマーのように、メタクリル酸エステルを包含するものであるから、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「メタクリル酸エステルであるモノマーから形成される、下記一般式(2-1)で示される繰り返し単位と、下記繰り返し単位(3-1)を導入した、高分子化合物。





(式中、R^(1)はフッ素原子又はフッ素化されたアルキル基であり、R^(2)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。R^(3)、R^(4)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。R^(3)、R^(4)は環を形成してもよく、その場合はそれぞれ炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化されたアルキレン基を表す。R^(5)?R^(7)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。Rは酸不安定基である。a、bは0?2の整数、cは1?3の整数であり、a+b+c=3である。kは1?5の整数、k’は0?4の整数であり、k+k’=5である。)中、R^(5)?R^(10)、mは上記と同じであり、Rは酸不安定基を表す。)」

イ 本願補正発明と引用発明との対比・判断
(ア)対比
本願補正発明のうち、R^(z)が「(i)(a)置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基、(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル」であるものと、引用発明とを対比する。
本願補正発明と引用発明とは、
「式(XX):


(式中、R^(a)はC_(1)アルキルであり、
R^(z)はC_(6)芳香族含有基であるモノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマー。」である点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
式(XX)におけるR^(x)及びR^(y)に関し、本願補正発明は、「それぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、これらは一緒に環を形成し」と特定しているのに対し、引用発明は、「R^(3)、R^(4)は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基である。R^(3)、R^(4)は環を形成してもよく、その場合はそれぞれ炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化されたアルキレン基を表す。」と特定している点。
<相違点2>
式(XX)におけるR^(z)のC_(6)芳香族含有基に置換する基に関し、本願補正発明は、「(i)(a)置換」又は「C_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル」と特定しているのに対し、引用発明は、「R^(1)はフッ素原子又はフッ素化されたアルキル基であり、R^(2)は水素原子又は炭素数1?20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」であり、R^(1)の結合数である「kは1?5の整数」、R^(2)の結合数である「k’は0?4の整数」であり、「k+k’=5」であると特定している点。
<相違点3>
式(XX)を有するモノマーに関し、本願補正発明は「電子感受性酸脱保護性モノマー」と特定しているのに対し、引用発明は、そのような特定はされていない点。

(イ)判断
a 相違点1及び2について
(a) 引用文献2の【0014】には、引用発明の一般式(2-1)で示される繰り返し単位の具体的な基として、


」(以下「R^(3)とR^(4)が環を形成する構造」という。)
が記載され、上記構造は、引用発明の一般式(2-1)において、R^(3)とR^(4)が環を形成し、R^(1)=フッ素原子、R^(2)=水素原子としたものであり、本願補正発明において、R^(x)とR^(y)が一緒に環を形成し、(i)(a)の「置換」がフッ素原子である場合に相当する。
そうすると、引用文献2の記載に接した当業者であれば、引用発明において、【0014】に記載された「R^(3)とR^(4)が環を形成する構造」を採用し、本願補正発明のうち「(i)(a)置換・・・C_(6-20)芳香族含有基」であるコポリマーとすることは、当業者が容易に想到することができたものということができる。

(b) 引用文献2の【0014】には、フェニル基に置換する基として、「フッ素原子」ではなく「フッ素化されたアルキル基」である-CF_(3)を採用した構造(下記参照)も記載されている。



また、引用文献2の請求項1には、R^(1)は、「フッ素原子又はフッ素化されたアルキル基」と記載されてることから、フッ素原子とフッ素化されたアルキル基とは置換可能に用いられるものであることが理解できる。
そうすると、引用発明において、【0014】に記載された「R^(3)とR^(4)が環を形成する構造」を参考にして、R^(3)とR^(4)とで環を形成し、また、フェニル基に置換する基としてフッ素原子ではなくフッ素化されたアルキル基(-CF_(3)など)を採用し、本願補正発明のうち「(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキル」とすることは、当業者が容易に想到することができたものということができる。

b 相違点3について
引用発明における一般式(2-1)で示される繰り返し単位を形成するメタクリル酸エステルであるモノマーは、【0007】の「ベースポリマ中の酸脱離性ユニットに含フッ素芳香環を有するエステル基を導入することにより、酸脱離能を損なうことなく・・・レジスト材料が得られることを知見し、本発明に至った」との記載によれば、本願補正発明における式(XX)を有するモノマーと同様に、レジスト材料に用いられるものであり、酸脱離(「酸脱保護」と同義である。)するモノマーであるから、本願補正発明と同様に「電子感受性酸脱保護モノマー」であると認められる。
したがって、相違点3は、実質的な相違点ではない。

c 効果について
本願補正発明と引用発明とは、いずれも、高解像度化、高感度化、微細化が求められるレジスト材料に用いることができるポリマーであり、本願補正発明と引用発明とを比較した効果の差が具体的に示されているわけではないから、本願補正発明は、引用発明に比べて格別顕著な効果を奏するものとはいえない。

d 小括
以上によれば、引用発明から本願補正発明の構成に至ることは当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の効果も格別顕著とはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
第2で述べたとおり、平成28年9月16日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年3月28日に提出された誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
式(XX):
【化1】

(式中、R^(a)はH、F、-CN、C_(1-10)アルキルもしくはC_(1-10)フルオロアルキルであり、
(1)R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、これらは一緒に環を形成し、
R^(z)は(i)(a)置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基、(b)C_(6-20)芳香族含有基に結合されたC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキル、および(c)C_(6-20)芳香族含有基に結合するC_(1-10)アルキレン基もしくはC_(3-10)シクロアルキレン基並びに置換基R^(x)、R^(y)、およびR^(z)が結合された炭素原子を含む基であるか、または(ii)C_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含むC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、あるいは
(2)R^(x)およびR^(y)はそれぞれ独立して置換もしくは非置換C_(1-10)アルキル基またはC_(3-10)シクロアルキル基であり、
R^(z)は置換もしくは非置換C_(6-20)芳香族含有基またはC_(6-20)環式脂肪族含有基であり、少なくとも1つのR^(x)およびR^(y)はC_(1-6)ペルフルオロアルキルもしくはC_(3-6)ペルフルオロシクロアルキルを含み、さらに連結基としてC_(1-20)アルキレン基を含む)
を有する電子感受性酸脱保護性モノマーとコモノマーとの重合生成物を含むコポリマー。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由とされた、平成27年12月22日付け拒絶理由通知書に記載した、請求項1に係る発明についての理由2及び理由4は、要するに次のとおりのものである。

(1)理由2
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、この出願は、請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由4
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 当審の判断
上記第2の2のとおり、本願補正発明は本願発明の発明特定事項を限定的に減縮したものであり、本願発明は、本願補正発明を包含するものである。
そうすると、第2の3で述べたのと同じ理由(特許法第36条第6項第1号及び同法第29条第2項)により、本願発明も、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-08 
結審通知日 2017-08-09 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2013-15055(P2013-15055)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08F)
P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 537- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小出 直也杉江 渉大木 みのり  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 藤原 浩子
渕野 留香
発明の名称 感光性コポリマー、このコポリマーを含むフォトレジスト組成物、およびこれから形成される物品  
代理人 特許業務法人センダ国際特許事務所  

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