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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1336069
審判番号 不服2016-18316  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-06 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 特願2013- 13487「画像表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日出願公開、特開2013-253961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年1月28日(優先権主張 平成24年5月7日)の出願であって、平成26年8月5日に上申書が提出されるととともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年6月3日付けで拒絶理由が通知され、平成28年7月21日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年9月5日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年12月6日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、その後、平成29年2月16日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年12月6日の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年12月6日の手続補正を却下する。

[理由]

[1]補正の内容

平成28年12月6日の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年7月21日に提出された手続補正書により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし11を下記の(b)に示す請求項1ないし10と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし11

「【請求項1】
画像を記憶する記憶手段(61)を有するサーバ(6)と、前記サーバ(6)から取得した複数の画像を表示する表示手段(11、21)を有する移動端末(2、3)と、を含む画像表示システムであって、
前記移動端末は、
ユーザが希望する種類の画像を位置の指定によらず絞り込む絞り込み条件を入力する操作、および前記表示手段に表示される複数の画像のいずれかを選択する操作を可能とする操作入力手段(12、22)と、
前記操作入力手段により選択された画像に関する位置を目的地として設定する制御手段(10、20)と、を備え、
前記記憶手段(61)は、画像内容の位置、当該画像内容の提供者の位置、および当該画像を撮影した撮影位置の少なくともいずれか1つを特定可能な付加情報が対応付けられている画像と、前記付加情報が対応付けられていない画像とを記憶しており、
前記サーバは、
前記移動端末から取得した前記絞り込み条件に基づいて、前記付加情報が対応付けられている画像と前記付加情報が対応付けられていない画像とから複数の画像を抽出する抽出手段(62)を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、画像内容のカテゴリ、画像に対して設定されるキーワード、画像内容の名称、画像を提供したユーザ識別名、画像に対して設定されるタイトル、画像が撮像された撮像日時、および画像が登録された登録日時のうち少なくとも1つを前記画像に対応付けて記憶しており、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記カテゴリ、前記キーワード、前記名称、前記ユーザ識別名、前記タイトル、画像が撮像された撮像日時、および画像が登録された登録日時のうち少なくともいずれか1つ入力可能とすることを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記サーバは、第1サーバ(61)と第2サーバ(62)とから構成され、
前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得することを特徴とする請求項1または2記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記表示手段は、取得した複数の画像を、2以上の画像を同時に表示する一覧形式、および/または、1の画像を順次切り替えて表示するスライドショー形式にて表示するとともに、前記付加情報が対応付けられている画像と前記付加情報が対応付けられていない画像とを識別可能に表示することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像を取得するとき、前記付加情報が対応付けられている画像については前記付加情報も取得し、取得した前記付加情報に基づいて、当該画像に関する位置を特定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項6】
前記移動端末は、現在位置を取得する現在位置取得手段(14、25)をさらに備え、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記現在位置取得手段で取得した前記現在位置からの距離、または前記現在位置から到着までに予想される時間を設定可能であり、
前記抽出手段は、前記付加情報に基づいて画像に関する位置を特定し、前記絞り込み条件に基づいて画像を抽出することを特徴とする請求項5記載の画像表示システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記目的地までの経路を案内するナビゲーション機能の実行、または外部から提供される当該ナビゲーション機能の利用が可能であり、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記目的地または当該目的地までの経路を基準とした所定範囲内を設定可能であり、
前記抽出手段は、前記付加情報に基づいて画像に関する位置を特定し、前記絞り込み条件に基づいて画像を抽出することを特徴とする請求項5記載の画像表示システム。
【請求項8】
前記移動端末(2)は、車両用の装置として使用される車両用移動端末であり、
車両の走行状態を特定可能な車両情報を取得する車両情報取得手段を(17)さらに備え、
前記制御手段は、前記車両情報に基づいて車両が走行中であると判定すると、前記操作入力手段からの入力、および/または、前記表示手段による表示の少なくとも一部を規制することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項9】
前記移動端末(2)は、車両用の装置として使用される車両用移動端末であり、
前記制御手段は、携帯通信端末(3)と連携して作動するアプリケーションを実行し、当該携帯通信端末を介して前記サーバから画像を取得することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項10】
前記操作入力手段は、前記表示手段に表示される画像を前記付加情報に基づいて並べ替える並べ替え条件を入力する操作がさらに可能であり、
前記移動端末は、前記操作入力手段から入力された前記並べ替え条件に基づいて、前記表示手段に表示する画像を並べ替えて表示することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項11】
前記操作入力手段は、前記表示手段に表示される画像を前記付加情報に基づいて並べ替える並べ替え条件を入力する操作がさらに可能であり、
前記移動端末は、前記操作入力手段から入力された前記並べ替え条件を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記絞り込み条件に基づいて抽出した画像を、受信した前記並べ替え条件に基づいて予め並べ替えた状態で前記移動端末に送信することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の画像表示システム。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10

「【請求項1】
画像を記憶する記憶手段(61)を有するサーバ(6)と、前記サーバ(6)から取得した複数の画像を表示する表示手段(11、21)を有する移動端末(2、3)と、を含む画像表示システムであって、
前記移動端末は、
ユーザが希望する種類の画像を位置の指定によらず絞り込む絞り込み条件を入力する操作、および前記表示手段に表示される複数の画像のいずれかを選択する操作を可能とする操作入力手段(12、22)と、
前記操作入力手段により選択された画像に関する位置を目的地として設定する制御手段(10、20)と、を備え、
前記記憶手段(61)は、画像内容の位置、当該画像内容の提供者の位置、および当該画像を撮影した撮影位置の少なくともいずれか1つを特定可能な付加情報が対応付けられている画像と、前記付加情報が対応付けられていない画像とを記憶しており、
前記サーバは、
第1サーバ(6a)と第2サーバ(6b)とから構成され、
前記移動端末から取得した前記絞り込み条件に基づいて、前記付加情報が対応付けられている画像と前記付加情報が対応付けられていない画像とから複数の画像を抽出する抽出手段(62)を備え、
前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得することを特徴とする画像表示システム。
【請求項2】
前記記憶手段は、画像内容のカテゴリ、画像に対して設定されるキーワード、画像内容の名称、画像を提供したユーザ識別名、画像に対して設定されるタイトル、画像が撮像された撮像日時、および画像が登録された登録日時のうち少なくとも1つを前記画像に対応付けて記憶しており、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記カテゴリ、前記キーワード、前記名称、前記ユーザ識別名、前記タイトル、画像が撮像された撮像日時、および画像が登録された登録日時のうち少なくともいずれか1つ入力可能とすることを特徴とする請求項1記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記表示手段は、取得した複数の画像を、2以上の画像を同時に表示する一覧形式、および/または、1の画像を順次切り替えて表示するスライドショー形式にて表示するとともに、前記付加情報が対応付けられている画像と前記付加情報が対応付けられていない画像とを識別可能に表示することを特徴とする請求項1または2記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記画像を取得するとき、前記付加情報が対応付けられている画像については前記付加情報も取得し、取得した前記付加情報に基づいて、当該画像に関する位置を特定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項5】
前記移動端末は、現在位置を取得する現在位置取得手段(14、25)をさらに備え、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記現在位置取得手段で取得した前記現在位置からの距離、または前記現在位置から到着までに予想される時間を設定可能であり、
前記抽出手段は、前記付加情報に基づいて画像に関する位置を特定し、前記絞り込み条件に基づいて画像を抽出することを特徴とする請求項4記載の画像表示システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記目的地までの経路を案内するナビゲーション機能の実行、または外部から提供される当該ナビゲーション機能の利用が可能であり、
前記操作入力手段は、前記絞り込み条件として、前記目的地または当該目的地までの経路を基準とした所定範囲内を設定可能であり、
前記抽出手段は、前記付加情報に基づいて画像に関する位置を特定し、前記絞り込み条件に基づいて画像を抽出することを特徴とする請求項4記載の画像表示システム。
【請求項7】
前記移動端末(2)は、車両用の装置として使用される車両用移動端末であり、
車両の走行状態を特定可能な車両情報を取得する車両情報取得手段を(17)さらに備え、
前記制御手段は、前記車両情報に基づいて車両が走行中であると判定すると、前記操作入力手段からの入力、および/または、前記表示手段による表示の少なくとも一部を規制することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項8】
前記移動端末(2)は、車両用の装置として使用される車両用移動端末であり、
前記制御手段は、携帯通信端末(3)と連携して作動するアプリケーションを実行し、当該携帯通信端末を介して前記サーバから画像を取得することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項9】
前記操作入力手段は、前記表示手段に表示される画像を前記付加情報に基づいて並べ替える並べ替え条件を入力する操作がさらに可能であり、
前記移動端末は、前記操作入力手段から入力された前記並べ替え条件に基づいて、前記表示手段に表示する画像を並べ替えて表示することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の画像表示システム。
【請求項10】
前記操作入力手段は、前記表示手段に表示される画像を前記付加情報に基づいて並べ替える並べ替え条件を入力する操作がさらに可能であり、
前記移動端末は、前記操作入力手段から入力された前記並べ替え条件を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記絞り込み条件に基づいて抽出した画像を、受信した前記並べ替え条件に基づいて予め並べ替えた状態で前記移動端末に送信することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の画像表示システム。」
(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

[2]本件補正の目的

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である「サ-バ」について、「第1サーバ(6a)と第2サーバ(6b)とから構成され」ることを限定し、「制御手段」について、「前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得する」ことを限定するものであり、かつ、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
そして、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものを含んでいるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

[3]独立特許要件の判断

1.刊行物

(1)刊行物1

ア 刊行物1の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2002-530658号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「【0002】
発明の利点
請求項1の特徴部分に記載された特徴的構成を有する本発明の入力のための装置は、これに対して視覚的な出力を介して、多数のあり得る走行目的地に対して1つずつ画像がユーザに示されるという利点を有する。これによってユーザは、あり得る走行目的地についてより良好な情報が得られる。さらにユーザは走行目的地の名前または所在地を知る必要がない。ユーザが視覚的な外観を知っていれば十分である。これは例えば、名前が変更されることがあるホテルおよび飲食店、および例えば、外観がその正しい名前よりも知られていることがある城館または博物館などの名所において有利である。」(段落【0002】)(下線は、理解の一助のために当審が付したものである。以下同様。)

b)「【0012】
実施例の説明
図1には走行目的地をナビゲーション装置に入力するための本発明の装置が示されている。入力装置1は操作パネル2を有しており、これはプッシュキー3および/または回転つまみ4を有している。この装置には視覚的表示器5が取り付けられている。装置1はナビゲーション装置6に接続されている。ナビゲーション装置6はデータ担体7に対するドライブと、送受信ユニット8とを有している。送受信ユニット8とサービスセンタ9との間には少なくとも一時的に無線コネクション10が存在する。
【0013】
自動車のユーザが運転を開始し、走行目的地をナビゲーション装置6に入力しようとする場合、ユーザは、操作パネル2を介して、およびそれに取り付けられたプッシュキー3および/または回転つまみ4を介して操作メニューを視覚的表示器5に呼び出す。ここでこの図およびこれに続く図に示した視覚的表示器5は有利には液晶表示器であり、これは自動車の中央に取り付けられている。さらにここでこの表示器は、ドライバの前の自動車ダッシュボードの領域にある表示器、例えば自由にプログラム可能なコミュニケーションパネル(Kommiinsstrument)とすることも可能であり、ここにメニューを呼び出すことにできる。ユーザは操作パネル2を介して判定基準を入力することができ、この判定基準にしたがって、あり得る走行目的地を視覚的表示器5に表示する。ここでは例えば、自動車の現在位置からの走行目的地の最大距離とすることができる。その一方、あり得る走行目的地を所定の分類にしたがって出力することが可能である。ここでは例えばホテル、レストラン、博物館、名所、駐車場および工場などの分類がある。ユーザが分類のうちの1つを選択すると、このユーザに別の選択肢が提示されてサーチがさらに細分化されるか、またはこのユーザに走行目的地が直接、画像情報として表示される。ユーザは操作パネル2を介して個別の画像間で移動することができ、同様に操作パネル2を介して走行目的地に対する選択を行うことができる。画像情報は有利には、データ担体ドライブ7にあるデータ担体から供給される。このデータ担体ドライブは、画像情報を呼び出すことのできる、記憶ユニットの例を表している。さらにこれに対して補足的にテキスト情報を記憶することができる。さらに画像を、送受信ユニット8により無線コネクション10を介してサービスセンタ9から、すなわち自動車外部の記憶ユニットから呼び出すことができ、ナビゲーション装置6を介して入力のための装置に導くことができる。
【0014】
走行目的地についての情報は、入力のための装置からナビゲーション装置に導かれる。このナビゲーション装置は、図示しない走行ルート計算ユニットと、図示しない自動車センサと、自動車の位置検出を可能にするGPS受信機とを有している。検出した目下の自動車位置は、走行目的地の選択の前にすでに入力のための装置1に導かれており、これによって目下の自動車位置から所定の距離に位置する、あり得る走行目的地を表示することができる。あり得る走行目的地はデジタル地図における位置と結びつけられており、ここでこれらのデジタル地図は有利にはナビゲーション装置6に、データ担体ドライブ7のデータ担体を介して供給される。ここでこの位置はデジタル地図のおける点、ベクトルまたは面を表すことができる。ここでデータ担体は有利にはCDまたはDVDである。無線コネクションは有利にはDAB(Digital Audio Broadcasting),DMB(Digital Multimedia Broadcasting)またはGSMコネクション(Global System for Mobile communications)を介して実現される。このために場合によって設けられている自動車電話のGSM送受信装置、ないしはDABならびにDMB受信機を共同利用することができる。ナビゲーション装置によって計算した走行ルートは、図示しないオーディオ出力部を介して、または視覚的表示器を介して目下の自動車位置に依存してユーザに出力される。視覚的表示器5は、計算した走行ルートの出力ないしは走行指示の出力に共同利用することができる。」(段落【0012】ないし【0014】)

c)「【0019】
詳しい説明のために選択された第1画像61では、塔を有する教会が示されている。例えば塔の形からドライバは、写真で知っているか、またはすでに一度訪れたことのある教会を再認識して走行目的地として選択することができる。それはこの塔がこの教会、すなわち走行目的地の再認識可能な個別の特徴であるからである。このためにこのドライバは、教会の名前も、正確な通りも知る必要がない。有利な実施例ではこのために写真としての第1画像61を、データの形態でナビゲーション装置6に配属された記憶ユニット、例えば、ナビゲーション装置6に配属されたドライブのデータ担体7に格納されている。この写真は例えばデジタルカメラによって撮影することが可能である。データの形態の画像は例えばピクセルベースのグラフィック形式でデータ担体に格納することができる。ピクセルベースのグラフィック形式の1例は、例えばいわゆるビットマップである。さらに例えばつぎのデータ形式すなわちGIF(Compuserve Graphics Interchange Format),TIFF(Tagged Image File Format),PCX(Paintbruch),JPEGまたはMPGも可能である。さらにベクトルベースによる表現、例えばHPGL(HP Graphics Library)も可能である。」(段落【0019】)

イ 上記ア及び図面(図1ないし図5)の記載より分かること

a)上記アb)の特に段落【0013】の記載によると、サービスセンタ9は、画像を記憶する記憶ユニットを有し、ナビゲーション装置6から取得した判定基準に基づいて、複数の画像を呼び出す呼び出し手段を備えることが分かる。

b)上記アa)及びb)の記載によると、プッシュキー3および/または回転つまみ4は、ユーザが選択する分類の画像を所在地を知る必要なく出力する判定基準を入力する操作を可能とするものであることが分かる。


ウ 刊行物1に記載された発明

したがって、上記ア及びイを総合すると、刊行物1には、「ナビゲーション装置に走行目的地を入力するための装置」に関して、次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1に記載された発明>

「画像を記憶する記憶ユニットを有するサービスセンタ9と、前記サービスセンタ9から呼び出した複数の画像を表示する視覚的表示器5を有するナビゲーション装置6と、を含むナビゲーション装置に走行目的地を入力するための装置であって、
前記ナビゲーション装置6は、
ユーザが選択する分類の画像を所在地を知る必要なく出力する判定基準を入力する操作、および前記視覚的表示器5に表示される複数の画像のいずれかを選択する操作を可能とするプッシュキー3および/または回転つまみ4と、
前記プッシュキー3および/または回転つまみ4により選択された画像に関する位置を目的地として設定する入力装置1と、を備え、
前記記憶ユニットは、走行目的地とデジタル地図における位置とを結びつけて記憶しており、
前記サービスセンタ9は、
前記ナビゲーション装置6から取得した前記判定基準に基づいて、複数の画像を呼び出す呼び出し手段を備え、
前記入力装置1は、前記判断基準に応じて、前記サービスセンタ9から画像を取得するものであるナビゲーション装置に走行目的地を入力するための装置。」

(2)刊行物2

ア 刊行物2の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-249428号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「【0002】
従来、車載用等で普及の著しいナビゲーション装置(単に「ナビ」とも呼ぶ)は、予め用意した地図データをもとに、GPSなどで得る自車位置を地図表示したり、指定した目的地への経路を探索しそれに沿って画面や音声で進路を案内するものであるが、近年は、ナビゲーション装置自体の多機能化や、デジタルカメラや携帯電話など撮影機能を持つ電子機器の一般化に伴い、フラッシュメモリ記録媒体などで持ち込む画像に位置座標を対応付け、画面表示したり、ナビの登録地点として地点登録に用いる需要が生じている。
【0003】
この場合、撮影した画像に対応付ける位置座標としては、ナビゲーション装置やカメラなどのGPS機能により、撮影時点において場所を特定しておき、画像とともに記録するか(例えば特許文献1参照)、または、撮影場所の記憶を頼りに地図スクロールなどで設定する必要があった。」(段落【0002】及び【0003】)

b)「【0027】
この画像の登録画面22では、取り込んだ画像23と、登録位置候補を表示する地図画面25が表示される。この際、画像データに付加されているExif情報のGPSタグ情報から座標を参照し、画像が撮影された場所マーク27を表示するが、このGPSタグ情報が付加されていない場合はマーク27表示は行わなくてもよい。」(段落【0027】)

イ 刊行物2記載技術

したがって、上記アを総合すると、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2記載技術」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物2記載技術>

「ナビゲーション装置において、GPSタグ情報が付加された画像データと、GPSタグ情報が付加されていない画像データとを備えている技術。」

2.対比・判断

刊行物1に記載された発明における「記憶ユニット」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「記憶手段(61)」に相当し、以下同様に、「サービスセンタ9」は「サーバ(6)」に、「呼び出した」は「取得した」に、「視覚的表示器5」は「表示手段(11、21)」に、「ナビゲーション装置6」は「移動端末(2、3)」に、「ナビゲーション装置に走行目的地を入力するための装置」は「画像表示システム」に、「選択する分類」は「希望する種類」に、「所在地を知る必要なく出力する」は「位置の指定によらず絞り込む」に、「判定基準」は「絞り込み条件」に、「プッシュキー3および/または回転つまみ4」は「操作入力手段(12、22)」に、「入力装置」は「制御手段(10、20)」に、「呼び出す」は「抽出する」に、「呼び出し手段」は「抽出手段」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「前記記憶ユニットは、走行目的地とデジタル地図における位置とを結びつけて記憶しており」と本願補正発明における「前記記憶手段(61)は、画像内容の位置、当該画像内容の提供者の位置、および当該画像を撮影した撮影位置の少なくともいずれか1つを特定可能な付加情報が対応付けられている画像と、前記付加情報が対応付けられていない画像とを記憶しており」とは、「記憶手段は、付加情報が対応付けられている画像を記憶しており」という限りにおいて一致する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「前記入力装置1は、前記判断基準に応じて、前記サービスセンタ9から画像を取得する」と、本願補正発明における「前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得する」とは、「前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、サーバから画像を取得する」という限りにおいて一致する。。

してみると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「画像を記憶する記憶手段を有するサーバと、前記サーバから取得した複数の画像を表示する表示手段を有する移動端末と、を含む画像表示システムであって、
前記移動端末は、
ユーザが希望する種類の画像を位置の指定によらず絞り込む絞り込み条件を入力する操作、および前記表示手段に表示される複数の画像のいずれかを選択する操作を可能とする操作入力手段と、
前記操作入力手段により選択された画像に関する位置を目的地として設定する制御手段と、を備え、
前記記憶手段は、付加情報が対応付けられている画像を記憶しており、
前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、サーバから画像を取得する画像表示システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>

本願補正発明においては、「記憶手段は、付加情報が対応付けられている画像を記憶しており」に関して、「前記記憶手段(61)は、画像内容の位置、当該画像内容の提供者の位置、および当該画像を撮影した撮影位置の少なくともいずれか1つを特定可能な付加情報が対応付けられている画像と、前記付加情報が対応付けられていない画像とを記憶しており」、「前記サーバは、前記移動端末から取得した前記絞り込み条件に基づいて、前記付加情報が対応付けられている画像と前記付加情報が対応付けられていない画像とから複数の画像を抽出する抽出手段(62)を備え」るのに対し、
刊行物1に記載された発明においては、「記憶手段は、付加情報が対応付けられている画像を記憶しており」に関して、「前記記憶ユニットは、走行目的地とデジタル地図における位置とを結びつけて記憶しており」、ナビゲーション装置6から取得した判定基準に基づいて、複数の画像を呼び出す呼び出し手段を備えているが、かかる呼び出し手段は、付加情報が対応付けられている画像と付加情報が対応付けられていない画像とから複数の画像を呼び出すものとはされていない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>

本願補正発明においては、「前記サーバは、第1サーバ(6a)と第2サーバ(6b)とから構成され」ており、「前記制御手段は、前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得する」のに対し、
刊行物1に記載された発明においては、サービスセンタ9が、第1サーバと第2サーバとから構成されておらず、前記入力装置1は、前記判断基準に応じて、前記サービスセンタ9から画像を取得するものであるが、判断基準に応じて、第1サーバから画像を取得、または第2サーバから画像を取得するものとはされていない点(以下、「相違点2」という。)。

上記各相違点について検討する。

<相違点1>について

刊行物1には、記憶ユニットが、走行目的地とデジタル地図における位置とを結びつけて記憶している旨の明記はあるが、位置に関する付加情報が対応付けられている画像と、位置に関する付加情報が対応付けられていない画像とを記憶しているか否か不明である。
しかしながら、刊行物2に、ナビゲーション装置において、GPSタグ情報が付加された画像データと、GPSタグ情報が付加されていない画像データとを備えている技術が記載されているように、GPS機能のないデジタルカメラ等で取得した画像データであれば、GPSタグ情報は付加されないことは明らかであり、刊行物1に記載された発明において、サービスセンタ9の記憶ユニットにそのような付加情報が付加されていない画像が含まれるようにし、ナビゲーション装置6から取得した判定基準に基づいて、付加情報が付加された画像と付加されていない画像とが含まれた記憶ユニットから複数の画像を呼び出すものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
なお、ナビゲーション装置や移動端末に情報を提供するサーバにおいて、画像データと位置データとを対応付けて記憶することは、例えば、特開2011-65470号公報(特に段落【0065】)、国際公開第2010/095426号(特に段落【0018】及び【0019】)及び特開2008-217133号公報(特に段落【0030】)に記載されるように周知でもある。

<相違点2>について

情報サーバにおいて、画像データを複数のサーバに分類して記憶することは、例えば、特開平11-53378号公報(特に段落【0014】)及び特開2005-165499号公報(特に段落【0043】)に記載されるように周知(以下、「周知技術1」という。)である。
また、移動端末から得られた検索条件に応じて複数の情報サーバから情報を取得することは、例えば、上記した特開平11-53378号公報(特に段落【0029】ないし【0032】)や、特開2009-192448号公報(特に段落【0025】ないし【0027】)及び国際公開第2011/016117号(特に段落【0104】、【0105】、【0108】及び【0110】)に記載されるように周知(以下、「周知技術2」という。)である。。
そして、刊行物1に記載された発明のサービスセンタ9において、周知技術1のように、画像を複数のサーバに分類して記憶し、周知技術2のように、判定基準に応じて複数の情報サーバから画像を取得するようにすることも、当業者にとって格別の困難性があるものとはいえない。

以上からすると、刊行物1に記載された発明において、周知技術1及び2を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載技術並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載技術並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成28年12月6日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、平成28年7月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。

2.刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された、刊行物1及び2には、上記第2[理由][3]1.(1)及び(2)のとおりのものが記載されている。

3.対比・判断

本願発明は、上記第2[理由][2]で検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、「第1サーバ(6a)と第2サーバ(6b)とから構成され」ること、及び「前記絞り込み条件に応じて、前記第1サーバから画像を取得、または前記第2サーバから画像を取得する」という発明特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由][3]に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2記載技術並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2記載技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-27 
結審通知日 2017-10-31 
審決日 2017-11-17 
出願番号 特願2013-13487(P2013-13487)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 佐々木 芳枝
八木 誠
発明の名称 画像表示システム  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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