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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21F
管理番号 1336103
審判番号 不服2017-2219  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-15 
確定日 2018-01-05 
事件の表示 特願2012-125536「放射線遮蔽ユニット及び放射線遮蔽モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-250170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月31日に出願された特願2012-125536号であって、平成27年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月4日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年11月7日付けで拒絶査定がなされ(同年同月15日送達)、これに対して、平成29年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成29年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成28年7月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「互いに係合して配列された複数個の放射線遮蔽モジュールを備え、
上記放射線遮蔽モジュールは、
放射線を減衰させる放射線減衰部と、
隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に係合する一つ以上の略凸円弧状の角度調整係合部と、該角度調整係合部に対応する略凹円弧状の形状を有する一つ以上の係合受部とを有し、
互いに隣接する上記放射線遮蔽モジュールの上記角度調整係合部と上記係合受部とを互いに係合させ、一方の上記放射線遮蔽モジュールに対して他方の上記放射線遮蔽モジュールの角度を所定範囲内において任意に調整可能とし、
上記放射線遮蔽モジュールは、該放射線遮蔽モジュールを支持する支持部材を挿通し得る取付孔を有し、該取付孔は、前記角度調整係合部の円弧中心に設けられていることを特徴とする放射線遮蔽ユニット。」が

「互いに係合して配列された複数個の放射線遮蔽モジュールを備え、
上記放射線遮蔽モジュールは、
放射線を減衰させる放射線減衰部と、
隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に係合する一つ以上の略凸円弧状の角度調整係合部と、該角度調整係合部に対応する略凹円弧状の形状を有する一つ以上の係合受部とを有し、
互いに隣接する上記放射線遮蔽モジュールの上記角度調整係合部と上記係合受部とを互いに係合させ、一方の上記放射線遮蔽モジュールに対して他方の上記放射線遮蔽モジュールの角度を所定範囲内において任意に調整可能とし、
上記放射線減衰部は、流体を貯留し得る容器部を有し、
上記放射線遮蔽モジュールは、該放射線遮蔽モジュールを支持する支持部材を挿通し得る取付孔を上記放射線減衰部に有し、該取付孔は、前記角度調整係合部の円弧中心に設けられていることを特徴とする放射線遮蔽ユニット。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、(a)「放射線減衰部は、流体を貯留し得る容器部を有し」ていることを減縮(付加)する補正事項、及び(b)取付孔について、「放射線減衰部に有し」ていることを限定する補正事項からなる。上記(a)の補正事項は、補正前の請求項3の内容を付加するものであって、請求項の削除に関連する補正事項であるといえる。一方、(b)の補正事項は、「取付孔」について、その配設箇所を限定するものであって、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正事項であるといえる。
すなわち、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-230178号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、原子力発電所で発生する放射性廃棄物の解体作業を行う際に使用する放射線遮蔽体に係わり、特に、作業目的に応じて任意の形状に組み合わせることができ、収納性がよく、かつ遮蔽性に優れた放射線遮蔽体及び放射線遮蔽装置並びにこれを用いた放射性廃棄物の解体方法に関する。」

b「【0011】本発明の目的は、作業性・解体性・移動性を確保しつつ、任意形状で使用でき収納性が優れ、かつ放射線漏洩を完全に防止できる放射線遮蔽体及び放射線遮蔽装置並びに放射性廃棄物の解体方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明によれば、放射線を遮蔽する放射線遮蔽体において、透過性部材で構成された直立する2つの板を前面と背面とにそれぞれ備え内部に中性子吸収材が充填される箱状の容器と、前記箱状の容器の側面にそれぞれ設けられ該箱状の容器に連通する2つの袋体とを有することを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0013】好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記透過性部材は、透明プラスチック、アクリル、透明樹脂のうちの一つであることを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0014】また好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記透過性部材及び袋体は、可燃性材料により構成されることを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0015】さらに好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記袋体は、プラスチック、ゴム、樹脂のうちの一つであることを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0016】また好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記中性子吸収材は、水、ほう素を含有した水のうちの一つであることを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0017】さらに好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記直立する2つの板に補強材を設けたことを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0018】また好ましくは、前記放射線遮蔽体において、前記箱状の容器へ注水する注水口と、該箱状の容器から排水する排水口とを設けたことを特徴とする放射線遮蔽体が提供される。
【0019】上記目的を達成するために、本発明によれば、複数個の前記放射線遮蔽体を有する放射線遮蔽装置において、前記複数個の放射線遮蔽体は互いに前記袋体を接して鎖状に配置されていることを特徴とする放射線遮蔽装置が提供される。
【0020】好ましくは、複数個の前記放射線遮蔽体を有する放射線遮蔽装置において、前記複数個の放射線遮蔽体は互いに前記袋体を接して略円形に配置されていることを特徴とする放射線遮蔽装置が提供される。」

c「【0022】
【作用】以上のように構成した本発明においては、箱状の容器の前面と背面とは透過性部材の板であることにより、作業者は目視により切断状況を確認しながら容易に作業することができる。また、遮蔽体は箱状の容器と袋体とで構成されこれに中性子吸収材を充填して使用することにより、遮蔽体自体の解体性に優れかつ解体後の廃棄物としての物量が少ない。さらに、比較的大きさが小さい遮蔽体としてバラバラに持ち運んでゆき所定の場所で組み立てて使用することにより移動性がよい。また、複数の遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させて自由な角度で連結し連続体として使用することにより、容易に任意の形状に組合せて使用することができる。さらに、使用後は連結を解いてバラバラの遮蔽体として収納することにより、収納性は良好である。また、箱状の容器及び袋体には熱中性子を減衰する中性子吸収材が充填され、かつ袋体どうしが接触して連結されることにより、連結部は完全に密着され隙間が生じず放射線漏洩が完全に防止される。」

d「【0028】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1?図4により説明する。 本実施例の放射線遮蔽体の構造を図1及び図2に示す。図1は遮蔽体1の全体構造図であり、図2はそのII-II線断面図である。
【0029】図1及び図2において、遮蔽体1は、前面と背面とにそれぞれ直立する2枚の平板2a,2bと、両側面の2枚の側板12a,12bと、天板22a及び底板22bとの6枚のアクリル板で構成される遮蔽容器50と、側板12a及び12bにそれぞれ設けられた透明膜(例えばプラスチック、ゴム、樹脂等の可燃性材料の膜)の袋体であるクッション11a及び11bとを有する。
【0030】天板22aには、使用時に遮蔽容器50内に中性子吸収材である水5を注入するための注水口4が少なくとも1箇所に設けられている。また前面の平板2aには、使用後に遮蔽容器50から水を排水するためのドレン口10が下方の少なくとも1箇所に設けられている。
【0031】遮蔽容器50の内部には、平板2a及び2bの子午線方向に等間隔で金属製又は樹脂製の補強材3が取付けられている。各補強材3の底板22bに接する部分には注入された水5を導通させるための開口部3aが設けられており、また各補強材3のピッチは注水口4から充填される水5の静水圧により決められる。廃棄物の大きさが小さく水5の水位が低くても足りる場合は、静水圧が小さいので補強材3を省略した構造とすることもできる。また水5は、例えば、MUWP(純水補給水系)、MUWC(復水補給水系)等の系統からの水を利用する。
【0032】2枚の平板2a,2bの間隔は、廃棄物の放射能濃度により決定される。また、平板2a及び2bにはそれぞれ、切断部の状態を拡大して見るためのレンズ9a,9bが取り付けられており、その高さは作業に最も適するように(例えば作業員の目の高さに)決定される。
【0033】両側面の側板12a,12bの下方の底板22bに接する部分には開口部11c,11dがそれぞれ設けられており、これによってクッション11a,11bと遮蔽容器50の内部とが連通している。
【0034】なお遮蔽体1の形状・寸法は、廃棄物の形状・寸法、切断作業を行う場所等の条件によって最適な寸法・形状を選択する。
【0035】上記構成の遮蔽体1を用いた放射線遮蔽装置を図3に示す。図3において、放射線遮蔽装置150は、8個の遮蔽体1が互いにクッション11a,11bを接して略円形に配置されて構成される。このときある遮蔽体1のクッション11aと、これと隣りあう遮蔽体1のクッション11bとは、左右から押さえつけられ隙間なく密着されている。
【0036】またそれぞれの遮蔽体1において、遮蔽容器50の天板22aの注水口4から水(図示せず)が注入され、この水は側板12aに設けられた開口部12c、及び側板12bに設けられた開口部12dを通じてそれぞれクッション11a及び11bに流入する。すなわち遮蔽容器50及びクッション11a及び11bの内部に水が満たされている。
【0037】以上において、移動時には比較的大きさが小さい遮蔽体1としてバラバラに持ち運んでゆき、使用時には所定の場所で組み立てて注水し使用することにより移動性がよい。また、8個の遮蔽体1の遮蔽容器50の側板12a,12bに設けられたクッション11a,11bどうしを互いに接触させることにより自由な角度で連結し容易に任意の形状に組み合わせて使用できる。さらに、使用後は連結を解いてバラバラの遮蔽体1として収納することより収納性は良好である。また、平板2a及び2bに補強材3を設けることにより、水圧による変形を防止し健全性を保つ。」

e「【図1】



f「【図3】



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記「ア」のdにおける【0036】の「遮蔽体1」、「遮蔽容器50」及び「クッション11a及び11b」が、それぞれ、bの【0012】の「放射線遮蔽体」、「箱状の容器」及び「2つの袋体」に相当するものであることは明らかである。
上記記載から、引用例1には、
「透過性部材で構成された直立する2つの板を前面と背面とにそれぞれ備え内部に中性子吸収材が充填される箱状の容器と、前記箱状の容器の側面にそれぞれ設けられ該箱状の容器に連通する2つの袋体とを有する放射線遮蔽体を複数個備えた放射線遮蔽装置であって、
前記中性子吸収材は、水であり、
それぞれの放射線遮蔽体において、箱状の容器、及び、2つの袋体の内部に水が満たされており、
放射線遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させて自由な角度で連結し、前記複数個の放射線遮蔽体が互いに前記袋体を接して鎖状に配置されている放射線遮蔽装置。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-292405号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付したものである。)

a「第1図は仮設用の縁石を用いて交通島を作るため、道路上に沿って並べられる本発明の一実施例に係わる建設部材8群の平面図であり、第2図は第1図に示される建設部材8群の側面図である。
建設部材8は細長い形状の中央部10と、その両側に設けられ同サイズのシリンダ状の外側部20,30とから構成される。
中央部10は、上面の平滑な面である多角形状の千面17と、千面17に同形状の底面18と、互いに平行な側面11,12と、側面11と外側部20とに挟まれ内側に傾斜する傾斜面13と、側面12と外側部20とに挾まれ内側に傾斜する傾斜面14と、側面11と外側部30とに挟まれ内側に傾斜する傾斜面15と、側面12と外側部30とに挟まれ内側に傾斜する傾斜面16と、傾斜面13と傾斜面14との間の壁22と、傾斜面15と傾斜面16との間の壁32とを有する。
この傾斜面13及び傾斜面14は互いに90度の角度をなし、同様に傾斜面15及び傾斜面16は互いに90度の角度をなす。
また、傾斜面13,15は側面11に対し130度乃至135度の角度をなし、同様に傾斜面14,16は側面12に対し130度乃至135度の角度をなす。
傾斜面13,14は、シリンダ状の外側部20の側壁21によって切欠けられ、傾斜面13,14の仮想される延長面は外側部20の中心線で交差する態様となっている。
また同様に、傾斜面15,16は、シリンダ状の外側部30の側壁31によって切欠けられ、傾斜面15,16の仮想される延長面は外側部30の中心線で交差する態様となっている。
次に上記建設部材8を道路上に沿って並べた場合の形状について説明する。
第2図に示されるように、外側部20,30の高さは中央部10の高さの半分である。それで、一方の建設部材8は該建設部材8に対し上下を逆にした他方の建設部材8を隣り合わせ、それぞれの建設部材8の外側部20,30を互いに積み重ねることにより,外側部20,30の高さは中央部10の高さと等しくなる。
このように積み重ねることにより、隣り合う建設部材8の側壁21あるいは側壁31は互いに重なり合い、中央部10の端に形成されている壁22,32に当接される。
外側部20,30はそれぞれ中心部に孔23,33を有する。それで、第2図のように建設部材8を道路上に沿って並べた後一致する孔23,33に鉄ピン(図示せず)を通し、該鉄ピンを通した孔23,33を回転軸として各建設部材8を所望の方向へ傾け、建設部材8群からなる交通用の交通島又は交通止区域を望ましい形に作ることができる。
また、外側部20,30を2段重ねにした場合の高さよりも長い鉄ビンを用い、鉄ピンの一部を地面に入り込むようにすれば、鉄ピンの位置を固定することができる。即ち、道路上に沿って並べられた建設部材の位置ずれを防ぐことができる。
第3図に第1図及び第2図に示した建設部材8を道路上に沿って並べて形成される一般的な交通島を示す。
図示するように、建設部材8の外側部20,30は隣接する建設部材8の壁22,32に当接し、建設部材8群は交通島を形成する。建設部材8が正しく整列されて形成される交通島を維持しない場合一鉄ピンを建設部材8の孔23,33に挿入すればよい。
第3図に示されるように,本実施例によって作られた交通島または縁石は、交通の都合に合わせて適宜配置を変更することができるものである。」(第2頁右下欄第13行?第3頁右下欄第2行)


b「



c「


d「


エ 原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-266410号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付したものである。)

a「【0020】本発明の第一実施形態に係る建設用ブロック1は、図1および図2に示すように、左右横長の立方体の本体部2と、該本体部2の長さ方向両端部に形成された連結部3,4と、を備えている。そして、図3および図4に示すように、前記連結部3,3および4,4同士を互いに重ね合わせて複数の建設用ブロック1の前記本体部2同士を横方向に連結するとともに、前記建設用ブロック1を上下方向にも連結して、構築物9を形成せしめるものである。
【0021】前記ブロック1は、例えば、プラスチック、レンガ、コンクリート等の適宜の材料で成形することができるが、ごみ焼却灰や下水汚泥などを主原料として用いた、いわゆるエコセメントを利用すれば、好適である。前記ブロック1は、例えば、花壇の囲いのほか、塀用ブロック等、種々の構築物建設用ブロックとして利用できる。
【0022】前記ブロック1において、前記本体部2は、上下方向への積み重ねに適するように、互いに平行な上平坦面5と下平坦面6とを備えている。また、前記本体部2は、それぞれ構築物の外面および内面となる前面7と後面8とを備えている。前記本体部2の前記前面7は、前記構築物9の外面に現れる関係上、そこには、その周囲にアールを付けたり、または、図示しない石の割肌状の仕上げ加工をしたりして、適宜の化粧処理が施されている。
【0023】一方、前記各連結部3,4は、互いに同一のものであり、それぞれ、上下方向に延びる中心軸を有する円柱の表面形状の一部を含んで形成されている。前記各連結部3,4の高さは、前記本体部2の高さの半分とされ、その直径Dは、前記本体部2の前後厚みWより短くされている。前記各連結部3,4は、前記本体部2の前記後面8の左右延長面上にその後平面部10が含まれるようにして、かつ、その底面11(図3参照)が前記本体部2の前記下平坦面6の左右延長面上に含まれるようにして、前記本体部2の左右両端面12,13にその側面を接続されている。
【0024】前記各連結部3,4は、その中央部に、上下方向に貫通するピン挿通孔14,15を備えている。
【0025】なお、前記各連結部3,4は、必ずしも互いに同一高さでなくてもよく、左右の連結部の高さの合計寸法が前記本体部2の高さと一致すればよい。
【0026】前記本体部2の前記前面7は、図1に顕著に示されるように、後方へのアールをなして、前記各連結部3,4の前面中央部16,17に接続している。こうして形成された前記本体部2の前記前面7の左右両端部には、連結相手方の建設用ブロック1側へ延び出て該相手方の建設用ブロック1の前記連結部3,4における前記構築物9の外面側を覆い隠す相手方連結部遮蔽部18,19が含まれている。該相手方連結部遮蔽部18,19で覆い隠される相手方のブロック1の前記連結部3,4の前面は、前記本体部2の前記前面7より後側に位置している。
【0027】また、図1に示すように、前記本体部2の前記左右両端面12,13と前記後面8とは、90度の角度で交差して接している。
【0028】前記本体部2の長さ方向中央部には、前記各連結部3,4におけると同様に、上下方向に貫通するピン挿通孔20が穿設されている。
【0029】以上のように構成されるブロック1は、例えば図3に示すように、前記連結部3,3および4,4同士を上下に重ね合せて横方向に整列させられ、前記本体部2および前記連結部3,4に形成されたピン挿通孔20,14,15に適宜の連結ピン21を挿通して、互いに連結される。そして、前記ブロック1同士を横方向に直線的に連結すれば、図4および図5に示すように、前記相手方連結部遮蔽部18,19により、前記連結部3,4における前記構築物9の外面側が覆い隠される。このため、前記構築物9の外面側には前記本体部2の化粧処理された前面7のみが現れることになり、構築物の見栄えが良い。例えば、前記ブロック1として、その前面7側を石の割肌状の仕上げにしたものを用いた場合に、自然石を利用して前記構築物9を形成した如き外観を容易に作り出すことができる。
【0030】また、前記ブロック1は、前記本体部2の左右両端面12,13と後面8とが90度の角度で交差して接しているので、前記連結ピン20を中心として、相手方のブロック1を前記構築物9の内側へと90度まで自由に回動させることができる(図6参照)。このため、上から見たときに横方向へ直線的に延びる構築物だけでなく、折れ曲がった形状の構築物や湾曲した構築物等、必要に応じて種々の形状の構築物を作ることができる。」
b「【図1】


c「【図2】


d「【図3】


e「【図6】



(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「放射線遮蔽体」が本願補正発明の「放射線遮蔽モジュール」に相当し、引用発明の「複数個の放射線遮蔽体が互いに前記袋体を接して鎖状に配置されている」ことが、本願補正発明の「互いに係合して配列された複数個の放射線遮蔽モジュールを備え」ていることに相当する。
(イ)引用発明の「内部に」「中性子吸収材」である「水」が「満たされて」いる「箱状の容器、及び、2つの袋体」が、本願補正発明の「放射線を減衰させる放射線減衰部」に相当する。
また、引用発明の「互いに接触させて自由な角度で連結」する「放射線遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体」と、本願補正発明の「隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に係合する一つ以上の略凸円弧状の角度調整係合部と、該角度調整係合部に対応する略凹円弧状の形状を有する一つ以上の係合受部」とは、「隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に接合する一つ以上の角度調整接合部と、該角度調整接合部に対応する一つ以上の接合部」である点で一致する。
よって、引用発明の「放射線遮蔽体」が「透過性部材で構成された直立する2つの板を前面と背面とにそれぞれ備え内部に中性子吸収材が充填される箱状の容器と、前記箱状の容器の側面にそれぞれ設けられ該箱状の容器に連通する2つの袋体とを有」し、「放射線遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させて自由な角度で連結」することと、本願補正発明の「上記放射線遮蔽モジュール」は、「放射線を減衰させる放射線減衰部」と「隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に係合する一つ以上の略凸円弧状の角度調整係合部と、該角度調整係合部に対応する略凹円弧状の形状を有する一つ以上の係合受部」とを有していることとは、「上記放射線遮蔽モジュール」は、「放射線を減衰させる放射線減衰部」と「隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に接合する一つ以上の角度調整接合部と、該角度調整係合部に対応する一つ以上の接合部」とを有している点で一致する。
(ウ)引用発明の「放射線遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させて自由な角度で連結」することと、本願補正発明の「互いに隣接する上記放射線遮蔽モジュールの上記角度調整係合部と上記係合受部とを互いに係合させ、一方の上記放射線遮蔽モジュールに対して他方の上記放射線遮蔽モジュールの角度を所定範囲内において任意に調整可能」とすることとは、「互いに隣接する上記放射線遮蔽モジュールの上記角度調整接合部と上記接合部とを互いに係合させ、一方の上記放射線遮蔽モジュールに対して他方の上記放射線遮蔽モジュールの角度を所定範囲内において任意に調整可能」とする点で一致する。
(エ)引用発明の「中性子吸収材は、水であり」、「それぞれの放射線遮蔽体において、箱状の容器、及び、2つの袋体の内部に水が満たされて」いることが、本願補正発明の「上記放射線減衰部は、流体を貯留し得る容器部を有」していることに相当する。
(オ)引用発明の「放射線遮蔽装置」が、本願補正発明の「放射線遮蔽ユニット」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「互いに係合して配列された複数個の放射線遮蔽モジュールを備え、
上記放射線遮蔽モジュールは、
放射線を減衰させる放射線減衰部と、
隣接する放射線遮蔽モジュールに角度調整可能に接合する一つ以上の角度調整接合部と、該角度調整接合部に対応する一つ以上の接合部とを有し、
互いに隣接する上記放射線遮蔽モジュールの上記角度調整接合部と上記接合部とを互いに接合させ、一方の上記放射線遮蔽モジュールに対して他方の上記放射線遮蔽モジュールの角度を所定範囲内において任意に調整可能とし、
上記放射線減衰部は、流体を貯留し得る容器部を有している放射線遮蔽ユニット。」
の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
隣接する放射線遮蔽モジュール相互の接合が、本願補正発明においては、「『略凸円弧状』の『係合部』と、『該係合部に対応する』『略凹円弧状』の『係合受部』とを『互いに係合させる』」ことによるものであるのに対し、引用発明においては、放射線遮蔽体の箱状の容器側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させることによるものである点。
(イ)相違点2
本願補正発明においては「放射線遮蔽モジュールを支持する支持部材を挿通し得る取付孔を放射線減衰部に有し、該取付孔は、角度調整係合部の円弧中心に設けられている」のに対して、引用発明においては、そのような特定がない点。

(3)当審の判断
ア 上記相違点1,2について、まとめて検討する。
引用文献2,3には、それぞれの、特に下線を付した箇所の記載や図面の記載を参酌すれば、ブロック部材に関し、互いに隣接するブロック部材が角度調整可能に係合する構成として、「略凸円弧状の係合部と、該係合部に対応する略凹円弧状の係合受部とを互いに係合させる」係合手段であって「上記の円弧の中心に支持部材の取付孔を設けた構成」が記載されているということができる。
すなわち、ブロック部材を組合わせて構成される壁構造物において、隣接するブロック部材の係合部を、「略凸円弧状の係合部と、該係合部に対応する略凹円弧状の係合受部とを互いに係合させ」「上記の円弧の中心に支持部材の取付孔を設けた構成」とすることは周知の技術事項である。
そして、引用発明の、「(部材の)側面に設けられた袋体どうしを互いに接触させる」接合も、上記の周知技術も、隣接する部材相互の角度調整を可能とする作用において共通するものであるから、引用発明の隣接部材の接合の構成に上記周知技術を適用することは、当業者であれば容易に想到し得ることにすぎない。
そして、引用発明の「放射線遮蔽体」においては、「箱状の容器」のみならず「2つの袋体」の内部にも中性子吸収体である水が満たされているのであるから、上記の周知の技術事項を適用すれば、当然に、円弧中心に設けた支持部材の取付孔は、水に囲まれた位置、すなわち、放射線減衰部に設けられることになる。
よって、引用発明に上記の周知技術を適用し、上記相違点1,2に係る本願補正発明の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
本願補正発明によってもたらされる作用効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年2月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年7月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成29年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成29年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成29年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、(a)「放射線減衰部は、流体を貯留し得る容器部を有し」ていることを減縮(付加)する補正事項、及び(b)取付孔について、「放射線減衰部に有し」ていることを限定する補正事項によって限定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定しものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成29年2月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(3)当審の判断」において記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-31 
結審通知日 2017-11-07 
審決日 2017-11-20 
出願番号 特願2012-125536(P2012-125536)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G21F)
P 1 8・ 121- Z (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 孝平関根 裕  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 松川 直樹
森林 克郎
発明の名称 放射線遮蔽ユニット及び放射線遮蔽モジュール  
代理人 小池 晃  

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