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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1336111 |
審判番号 | 不服2017-3627 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-10 |
確定日 | 2018-01-23 |
事件の表示 | 特願2013-211873「クリーニング装置及びそれを備えた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月20日出願公開、特開2015- 75638、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月9日付けの特許出願であって、原審において平成28年1月29日付けで拒絶理由通知がされて、同年3月2日付けで手続補正がされた後、更に同年8月15日付けで特許法第17条の2第1項第3号に係る最後の拒絶理由通知がされ、同年9月14日付けで手続補正がされたが、当該手続補正に係る請求項1ないし8の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとして、平成29年2月24日付けで当該手続補正が却下されると共に、同日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同年3月7日。)がされ、これに対して、同年同月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されて、特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。 原査定時の請求項1、2、6に係る各発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同じく請求項3ないし5、7、8に係る各発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2012-198253号公報(引用文献1) 2.特開2004-317962号公報(引用文献2) 第3 審判請求時の補正について 以下のとおり、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項までに規定されている要件に違反するものではない。(下線は審決で付した。) 審判請求時にされた補正は、当該補正前の請求項1における「該シール部材の上方に間隔を隔てて配置され、前記クリーニング部材の回転中心よりも下方に接触する保護部材」という記載を、補正後において「該シール部材の上方に間隔を隔てて配置され、前記クリーニング部材の回転中心よりも下方であって前記クリーニング部材の下端部よりも上方に接触する保護部材」という記載とし、また、同じく当該補正前の「前記保護部材は、前記クリーニング部材に接触する先端部が屈曲した断面視L字状のシート材であり、」という記載を、補正後に「前記保護部材は、前記クリーニング部材に接触する先端部が屈曲した断面視L字状のシート材であり、 前記保護部材は、前記先端部が水平方向よりも上向きに傾斜した状態で前記クリーニング部材に線接触するように、L字状の長手方向が前記クリーニング部材と対向する前記ハウジングの内壁面に固定されており、 前記保護部材の前記L字状の長手方向が固定される前記ハウジングの内壁面は、前記クリーニング部材に近づく方向に下り勾配となっており、」という記載に補正するというものである。 これらの補正は、保護部材に関して、具体的に限定したものものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記の補正事項は、願書に最初に添付された明細書の段落【0029】、【0030】、【0037】、【0038】、及び図2ないし5に開示された事項の範囲において補正をするもので、新規事項を追加するものではない。 そして、以下の「第4 本願の発明」から「第6 対比・判断」までに示されているように、補正後の請求項1ないし8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願の発明 本願の請求項1ないし8に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成29年3月10日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 外周面にトナー像が担持される円筒状の像担持体の上方に配置され、前記像担持体との対向面に開口が形成されるハウジングと、 該ハウジングの開口部近傍に配置され、前記像担持体表面に接触しながら前記像担持体との当接面において同一方向に回転することで前記像担持体上に付着した残留トナーを前記像担持体の回転方向下流側に除去するクリーニング部材と、 前記像担持体の回転方向に対し前記クリーニング部材よりも下流側において前記像担持体の外周面に当接し、前記像担持体上に付着した残留トナーを除去するクリーニングブレードと、 前記ハウジング内の廃トナーを回収して前記ハウジングの外部へ搬送する回収部材と、 前記像担持体の回転方向に対し前記ハウジングの上流側の開口縁に配設され、前記クリーニング部材よりも上流側において前記像担持体の外周面に接触することにより前記ハウジングと前記像担持体との隙間からの廃トナーの漏出を防止するシール部材と、 該シール部材の上方に間隔を隔てて配置され、前記クリーニング部材の回転中心よりも下方であって前記クリーニング部材の下端部よりも上方に接触する保護部材と、 を備え、 前記保護部材は、前記クリーニング部材に接触する先端部が屈曲した断面視L字状のシート材であり、 前記保護部材は、前記先端部が水平方向よりも上向きに傾斜した状態で前記クリーニング部材に線接触するように、L字状の長手方向が前記クリーニング部材と対向する前記ハウジングの内壁面に固定されており、 前記保護部材の前記L字状の長手方向が固定される前記ハウジングの内壁面は、前記クリーニング部材に近づく方向に下り勾配となっており、 前記先端部が前記シール部材と重なる位置に配置されるとともに、前記先端部にトナーが堆積することを特徴とするクリーニング装置。 【請求項2】 前記クリーニング部材に対する前記保護部材のオーバーラップ量が0.05?1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。 【請求項3】 前記クリーニング部材が、回転軸と、該回転軸の周面に放射状に立設された多数のブラシ繊維とを有するクリーニングブラシであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。 【請求項4】 前記ブラシ繊維の先端と接触するように配置され、前記クリーニングブラシに付着したトナーを払い落とすフリッカーを設けたことを特徴とする請求項3に記載のクリーニング装置。 【請求項5】 前記ハウジング内を前記クリーニングブラシの回転空間と前記回収部材によるトナーの回収経路とに区画する仕切部材を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のクリーニング装置。 【請求項6】 前記クリーニング部材が、前記像担持体表面の残留トナーを除去するとともに残留トナーを用いて前記像担持体表面を摺擦して研磨する摺擦ローラーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーニング装置。 【請求項7】 前記ハウジング内を前記摺擦ローラーの回転空間と前記回収部材によるトナーの回収経路とに区画するとともに前記摺擦ローラーの外周面に接触するように配置され、前記摺擦ローラーの外周面に付着したトナーを掻き落とすスクレーパーを設けたことを特徴とする請求項6に記載のクリーニング装置。 【請求項8】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のクリーニング装置が搭載された画像形成装置。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成24年10月18日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2012-198253号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも審決で付した。引用文献2についても同様である。) 「【0001】 本発明は、転写の際に像担持体の表面に残った残留トナー等を除去するクリーニング装置及びこれを搭載した画像形成装置に関するものである。」 「【0006】 ところで、クリーニング装置には、感光体ドラムの上方に配置される上面クリーニングレイアウトシステムがある。具体的には、クリーニングローラーを収容したハウジングが下方に向いて開口しており、クリーニングブレードはこの開口に設置される。換言すれば、クリーニングブレードで除去した残留トナーはハウジング内に集められるものの、その開口が下方を向いている。」 「【0010】 このように、上面クリーニングレイアウトシステムは、単にトナー受け部材を設置するのみでは、ハウジング内の残留トナーがハウジング外に飛散や落下するとの課題が依然として残されている。 そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、残留トナーや紙粉をトナー受け部材の先端付近に溜めず、ハウジング内の残留トナーによるクリーニング装置周辺の汚染を防止できるクリーニング装置及びこれを搭載した画像形成装置を提供することである。」 「【0011】 上記目的を達成するための第1の発明は、トナー像が形成される像担持体の表面に上方から圧接し、残留トナーを用いて像担持体表面を研磨するクリーニングローラーと、像担持体の回転方向でみて像担持体表面とクリーニングローラーとの当接位置よりも上流側にて、クリーニングローラーを収容したハウジングに設けられており、その先端が像担持体表面に当接してハウジング内の残留トナーによるハウジング外への飛散・落下を防止するトナー受け部材と、ハウジング内にてトナー受け部材の上方に近接して設けられており、その先端がクリーニングローラーに当接して残留トナーによるトナー受け部材への圧力を軽減する圧軽減部材とを具備する。」 「【0026】 この画像形成部9の右方には露光部8やトナーコンテナ11が備えられており、図示しないコントローラーの信号に基づき、露光部8からは画像形成部9の感光体ドラム(像担持体)30に向けてレーザー光Lが照射され、静電潜像が現像される。また、トナーコンテナ11から図示しない補給経路を経由して現像部33にトナーが供給され、現像部33より感光体ドラム30に形成された静電潜像に対してトナーが現像される。」 「【0028】 ところで、上述した本実施例の感光体ドラム30は、例えばφ40mm程度の直径で形成され、その表面に非晶質シリコン系の層を有したa-Siドラムであり、装置本体2に回転自在に設置され、図示しない駆動モーターによって図1や図2の時計回りに駆動する。・・・」 「【0031】 本実施例のクリーニング装置40は、図1や図2に示されるように、感光体ドラム30の上部に配置されている(上面クリーニングレイアウトシステム)。 詳しくは、本実施例のクリーニング装置40は感光体ドラム30の回転方向でみて転写ローラー36との転写位置の下流側にて、この感光体ドラム30に向けて開口したハウジング41を備えており、このハウジング41の適宜位置に、クリーニングローラー44、クリーニングブレード46やトナー回収部50を有している。 【0032】 具体的には、ハウジング41は下向きに開口しており、用紙Pの搬送路に対峙する前壁42や、前壁42の反対側、例えば帯電器32の上方に後壁43を有し、図示しない側壁とともにハウジング41の開口を区画する。 本実施例のクリーニングローラー44は、ハウジング41の開口のうち前壁42近傍にて感光体ドラム30に上方から圧接しており、その摺擦面が感光体ドラム30の回転軸線方向に沿って延びている。 【0033】 また、このクリーニングローラー44は、例えばφ12mm程度の直径で形成された導電性発泡EPDM等のエチレンゴム製であり、図示しない駆動モーターによって図2の反時計回りに駆動し、トナー像が用紙Pに転写された後の感光体ドラム30の表面をトレール方向で摺擦研磨する。 これにより、クリーニングローラー44は、感光体ドラム30の非晶質シリコン系の層に付着する残留トナーなどを除去する。」 「【0035】 次に、クリーニングブレード46は、ハウジング51の下端に固定される亜鉛鋼板製の本体46aや、この本体46aに溶着されたポリウレタンゴム製のブレード部分46bからなり、このブレード部分46bのエッジが感光体ドラム30の回転方向でみてクリーニングローラー44の下流側に配置され、感光体ドラム18の回転軸線に沿って延びている。 【0036】 そして、このエッジが感光体ドラム30に対してカウンター方向で接し、感光体ドラム30の表面に付着した研磨剤を含む残留トナーなどを掻き取っている。 これらクリーニングローラー44やクリーニングブレード46によって感光体ドラム30の表面から掻き取られた残留トナーは、クリーニングローラー44の摺擦面に付着する。」 「【0039】 ・・・クリーニングローラー44から脱落した残留トナー等はトナー回収室50から回収される。詳しくは、トナー回収部50は、図2でみてハウジング41の後壁43近傍にスクリューを有する。 【0040】 このスクリューは感光体ドラム30の回転軸線方向に沿って延び、その先端が図示しない駆動モーターに連結されている。そして、この駆動モーターが駆動すると、ハウジング41内において、層規制ローラー48から右方に向けて排出された残留トナーは、スクリューを経由して回収容器(図示しない)に集められる。」 「【0041】 ところで、本実施例のクリーニング装置40はトナー受けシート(トナー受け部材)60を備えており、ハウジング41内の残留トナーがハウジング41外に漏れ出るのを防止する。 トナー受けシート60は、感光体ドラム30の回転方向でみてクリーニングローラー44と感光体ドラム30とのニップ領域よりも上流側にて、ハウジング41の前壁42に設けられる。 【0042】 具体的には、図3にも示されるように、ハウジング41の前壁42には断面視略L字状の保持板63が設置されている。この保持板63は、その上端64が前壁42に接合あるいは締結され、前壁42に沿って延びてからハウジング41の開口に向けて折れ曲がっており、この折れ曲がり部分に、前壁42の下端に対向する上面66と、感光体ドラム30に対向する下面67とを有している。 【0043】 本実施例のトナー受けシート60は、厚さ0.1mm程度の例えば熱可塑性ウレタンシートで形成され、クリーニングローラー44等と同様に、感光体ドラム30の回転軸線方向に沿って延びている。 このトナー受けシート60の根元側が例えば両面テープを用いて保持板63の下側から下面67に貼り付けられる。 【0044】 一方、トナー受けシート60の先端61は感光体ドラム30の表面に接触可能に構成されている。 つまり、この先端61が感光体ドラム30の表面に当接すると、ハウジング41内、特に、前壁42とクリーニングローラー44との間に存在した残留トナーが感光体ドラム30の表面に向けて飛散や落下し難くなる。」 「【0045】 ここで、本実施例のクリーニング装置40は、トナー受けシート60の他、圧軽減シート(圧軽減部材)70も備えている。 本実施例の圧軽減シート70は、厚さ0.1mm程度の例えば高分子ポリエチレンシートで形成されており、感光体ドラム30の回転軸線方向に沿って延びている。 【0046】 これら圧軽減シート70とトナー受けシート60とは保持板63の厚み分だけ離れて対峙している。 そして、この圧軽減シート70の根元側は例えば両面テープを用いて保持板63の上側から上面66に貼り付けられ、圧軽減シート70の先端71はクリーニングローラー44の摺擦面に接触する。 【0047】 さらに、圧軽減シート70の先端71は、トナー受けシート60の先端61の上方を覆うように配置されている。つまり、圧軽減シート70は、トナー受けシート60を前壁42とクリーニングローラー44との間に存在した残留トナーから保護しており、トナー受けシート60は、前壁42とクリーニングローラー44との間に存在した残留トナーに押圧され難くなる。」 「【0058】 この圧軽減シート70は、残留トナーによるハウジング41内の圧力を受け止めている(図5)。よって、仮にハウジング41内の残留トナーの量が増加しても、トナー受けシート60の先端61は感光体ドラム30の表面を押し付けたままにならない。このため、感光体ドラム30の表面の残留トナーや紙粉がその先端61付近に溜まらず、これら残留トナーや紙粉はクリーニングローラー44に向かう。」 また、引用文献1の図2、3から、保持板63はハウジング41の開口に向けて水平方向よりも下向きに傾斜した状態で折れ曲がっていて、圧軽減シート70はこの下向きに傾斜した部分に貼り付けられることと、圧軽減シート70はクリーニングローラー44の回転中心よりも下方であって、クリーニングローラー44の下端部よりも上方に接触していることが看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定できる。 「画像形成装置に搭載するクリーニング装置40であって、 クリーニング装置40はφ40mm程度の直径で形成される像担持体(感光体ドラム30)の上部に配置され、感光体ドラム30に向けて下向きに開口したハウジング41を備えており、このハウジングにクリーニングローラー44、クリーニングブレード46やトナー回収部50を有しており、 更に、像担持体の回転方向でみて像担持体表面とクリーニングローラーとの当接位置よりも上流側にて、ハウジングに設けられており、その先端が像担持体表面に当接して、ハウジング内の残留トナーがハウジング外に漏れ出て飛散・落下するのを防止するトナー受けシート(トナー受け部材60)と、ハウジング内にてトナー受け部材の上方に近接して設けられており、その先端がクリーニングローラーに当接して残留トナーによるトナー受け部材への圧力を軽減する圧軽減シート(圧軽減部材70)とを具備し、 像担持体(感光体ドラム30)は、時計回りに駆動し、クリーニングローラー44は、反時計回りに駆動し、クリーニングローラー44は像担持体の表面に上方から圧接して、感光体ドラム30に付着する残留トナーなどを除去し、 クリーニングブレード46は像担持体(感光体ドラム30)の回転方向でみてクリーニングローラー44の下流側に配置されて、感光体ドラム30に対してカウンター方向で接し、感光体ドラム30の表面に付着した残留トナーなどを掻き取り、 トナー回収部50は駆動モーターに連結されているスクリューを有し、残留トナーは、スクリューを経由して回収容器に集められ、 トナー受けシート60は、感光体ドラム30の回転方向でみてクリーニングローラー44と感光体ドラム30とのニップ領域よりも上流側にて、ハウジング41の前壁42に設けられ、トナー受けシート60の先端61は感光体ドラム30の表面に接触可能に構成されており、また、圧軽減シート70の先端71は、トナー受けシート60の先端61の上方を覆うように配置されて、トナー受けシート60を前壁42とクリーニングローラー44との間に存在した残留トナーから保護しており、 ハウジング41の前壁42には断面視略L字状の保持板63が設置されていて、この保持板63は、その上端64が前壁42に沿って延びてからハウジング41の開口に向けて水平方向よりも下向きに傾斜した状態で折れ曲がっており、この折れ曲がり部分に、前壁42の下端に対向する上面66と、感光体ドラム30に対向する下面67とを有し、トナー受けシート60の根元側が保持板63の下側から下面67に貼り付けられ、圧軽減シート70とトナー受けシート60とは保持板63の厚み分だけ離れて対峙し、圧軽減シート70の根元側は保持板63の上側から上面66に貼り付けられ、圧軽減シート70はクリーニングローラー44の回転中心よりも下方であって前記クリーニングローラー44の下端部よりも上方に接触し、残留トナーによるハウジング41内の圧力を受け止める クリーニング装置。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成16年11月11日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2004-317962号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真法による画像形成装置に使用されるクリーニング装置に関する。」 「【0019】 本発明において、クリーニング装置1は、クリーニングハウジング5内にファーブラシ10とクリーニングブレード11とを備えており、ファーブラシ10は、感光体ドラム2の回転方向に対して、クリーニングブレード11よりも上流側に配置されている。 【0020】 クリーニングブレード11は、例えばポリウレタンゴムなどの弾性材料からなっており、ハウジング5内に取り付けられているホルダー13に装着されており、ブレード11の先端が感光体ドラム2表面に圧接されている。 【0021】 ファーブラシ10は、ブラシ先端が感光体ドラム2表面に当接するように設けられており、ニップ部で感光体ドラム2と同方向に回転するように構成されている。即ち、トナー像転写後の感光体ドラム2表面に付着残存しているトナー或いは紙粉等の異物は、先ずファーブラシ10によって解され、感光体ドラム2表面から浮いた状態となり、このようなトナー等は、次いで、クリーニングブレード11によって確実に掻き取られ、ハウジング5内に回収されるわけである。」 上記のとおり、引用文献2には、「電子写真法による画像形成装置に使用されるクリーニング装置において、ファーブラシ10とクリーニングブレード11とを備えており、トナー像転写後の感光体ドラム2表面に付着残存しているトナー或いは紙粉等の異物は、先ずファーブラシ10によって解され、感光体ドラム2表面から浮いた状態となり、このようなトナー等は、次いで、クリーニングブレード11によって確実に掻き取られる」という技術事項(以下「引用文献2記載の事項」という。)が記載されている。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 両者はいずれも画像形成装置に搭載する「クリーニング装置」である点において共通しており、後者の「像担持体(感光体ドラム30)」は、その形状や作用・機能等からみて、前者の「像担持体」に相当し、以下同様に、「ハウジング41」は「ハウジング」に、「クリーニングローラー44」は「クリーニング部材」に、「クリーニングブレード46」は「クリーニングブレード」に、「トナー回収部50」は「回収部材」に、それぞれ相当しており、上記の形状や作用・機能等のほか、それぞれの部材の装置内の配置は、上記の互いに相当するもの同士の間で変わるところがない。また、後者の「残留トナー」は、前者の「『残留トナー』及び『廃トナー』」に相当する。 更に、後者の「ハウジング内の残留トナーがハウジング外に漏れ出て飛散・落下するのを防止するトナー受けシート(トナー受け部材60)」は、前者の「前記ハウジングと前記像担持体との隙間からの廃トナーの漏出を防止するシール部材」に相当し、同様に「(トナー受けシート60を残留トナーから保護している)圧軽減シート70」は、「保護部材」に相当する。 また、後者のトナー受けシート60(シール部材)は、像担持体の回転方向でみて像担持体表面とクリーニングローラーとの当接位置よりも上流側にて、ハウジング、具体的にはハウジング41の前壁42に設置された断面視略L字状の保持板63に設けられて、その先端が像担持体表面に当接していることから、トナー受けシート60(シール部材)は、「感光体ドラム30の回転方向でみてクリーニングローラー44と感光体ドラム30とのニップ領域よりも上流側(像担持体の回転方向に対し前記ハウジングの上流側)の開口縁に配設され、感光体ドラム30の表面に接触(像担持体の外周面に接触)する」といえる。 また、後者の圧軽減シート70(保護部材)は、ハウジング41の前壁42に設置された断面視略L字状の保持板63の上側から上面66に貼り付けられたもので、圧軽減シート70と保持板63の下側から下面67に貼り付けられたトナー受けシート60とは保持板63の厚み分だけ離れて対峙しており、クリーニングローラー44の回転中心よりも下方であって前記クリーニングローラー44の下端部よりも上方に接触しているから、圧軽減シート70(保護部材)は、「トナー受け部材60(シール部材)の上方に間隔を隔てて配置され、クリーニングローラー44(クリーニング部材)の回転中心よりも下方であってクリーニングローラー44(クリーニング部材)の下端部よりも上方に接触する」といえる。 また、後者の圧軽減シート70(保護部材)は、ハウジング41の前壁42に設置された断面視略L字状の保持板63の上側から上面66に貼り付けられて、トナー受けシート60を前壁42とクリーニングローラー44との間に存在した残留トナーから保護しており、また、後者のトナー受けシート60(シール部材)は、像担持体の回転方向でみて像担持体表面とハウジングに有するクリーニングローラー(クリーニング部材)との当接位置よりも上流側にて、ハウジング、具体的にはハウジング41の前壁42に設置された断面視略L字状の保持板63に設けられていることから、圧軽減シート70(保護部材)は、「クリーニングローラー(クリーニング部材)と対向する前記ハウジングの内壁面に固定されている」といえる。 また、後者は、ハウジング41の前壁42には断面視略L字状の保持板63が設置されていて、この保持板63は、その上端64が前壁42に沿って延びてからハウジング41の開口に向けて水平方向よりも下向きに傾斜した状態で折れ曲がっているから、「圧軽減シート70(保護部材)が固定される前記ハウジングの内壁面は、前記クリーニングローラー44(クリーニング部材)に近づく方向に下り勾配となっている」といえる。 したがって、両者は、 「外周面にトナー像が担持される円筒状の像担持体の上方に配置され、前記像担持体との対向面に開口が形成されるハウジングと、 該ハウジングの開口部近傍に配置され、前記像担持体表面に接触しながら前記像担持体との当接面において同一方向に回転することで前記像担持体上に付着した残留トナーを前記像担持体の回転方向下流側に除去するクリーニング部材と、 前記像担持体の回転方向に対し前記クリーニング部材よりも下流側において前記像担持体の外周面に当接し、前記像担持体上に付着した残留トナーを除去するクリーニングブレードと、 前記ハウジング内の廃トナーを回収して前記ハウジングの外部へ搬送する回収部材と、 前記像担持体の回転方向に対し前記ハウジングの上流側の開口縁に配設され、前記クリーニング部材よりも上流側において前記像担持体の外周面に接触することにより前記ハウジングと前記像担持体との隙間からの廃トナーの漏出を防止するシール部材と、 該シール部材の上方に間隔を隔てて配置され、前記クリーニング部材の回転中心よりも下方であって前記クリーニング部材の下端部よりも上方に接触する保護部材と、 を備え、 保護部材は、前記クリーニング部材と対向する前記ハウジングの内壁面に固定されており、 前記保護部材が固定される前記ハウジングの内壁面は、前記クリーニング部材に近づく方向に下り勾配となっており、 先端部が前記シール部材と重なる位置に配置されるとともに、前記先端部にトナーが堆積するクリーニング装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明1では、保護部材は、「前記クリーニング部材に接触する先端部が屈曲した断面視L字状のシート材であり」、「前記先端部が水平方向よりも上向きに傾斜した状態」で、「L字状の長手方向が」ハウジングの内壁面に固定されるのに対し、引用発明では、圧軽減シート70は水平方向よりも下向きに傾斜した状態で貼り付けられる点。 [相違点2] 本願発明1において、保護部材の先端部がクリーニング部材に「線接触」するのに対し、引用発明において、圧軽減シート70(保護部材)の先端部はクリーニングローラー44(クリーニング部材)に接触するものの、線接触であるか否かは明確ではない点。 (2)相違点についての判断 上記の相違点1について検討する。 上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠はない。 なお、引用文献2記載の事項にも、上記の相違点1に係る「保護部材は、前記クリーニング部材に接触する先端部が屈曲した断面視L字状のシート材であり」、「前記先端部が水平方向よりも上向きに傾斜した状態」で、「L字状の長手方向」がハウジングの内壁面に固定されるという本願発明1の発明特定事項を開示あるいは示唆されていない。 したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2ないし本願発明8について 本願発明2ないし本願発明7は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明であり、また、本願発明8本願発明1ないし6に係るクリーニング装置が搭載された「画像形成装置」の発明であって、これらの発明も、本願発明1の上記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明、または引用発明及び引用文献2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について 上記「第6」のとおりであるから、本願発明1ないし8は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、また引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-05 |
出願番号 | 特願2013-211873(P2013-211873) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野口 聖彦、三橋 健二 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
黒瀬 雅一 藤本 義仁 |
発明の名称 | クリーニング装置及びそれを備えた画像形成装置 |
代理人 | 特許業務法人 佐野特許事務所 |