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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23C
管理番号 1336436
審判番号 不服2016-17477  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-04 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2015-195005号「シール接着包装の生菌粉末ヨーグルトとその組合せ食品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 51173号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成27年9月9日の出願であって、平成27年12月28日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成28年2月15日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月12日付けで通知された最後の拒絶の理由に対して、平成28年6月7日付けで意見書が提出されたが、平成28年8月5日付けで拒絶査定され、これに対して平成28年11月4日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲と明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)と認められる。

「【請求項1】
2g?6gを1包としたシール接着包装の生菌粉末ヨーグルト。」

3 引用刊行物等
(1) 本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-98677号公報(以下「引用例1」という。)には、図1とともに次の事項が記載されている。

(1a) 「【請求項1】 酸度が1 %(乳酸換算)以上で10^(8 )/ml以上の乳酸菌を含有することを特徴とする乳酸菌強化型乾燥醗酵乳製品。」(下線は、当審で付与したものである。以下同様である。)

(1b) 「【0002】
【従来の技術】従来、醗酵乳製品として代表的なヨーグルトは、殺菌処理した乳原料に乳酸菌を加え、40℃前後の温度で6?8時間程度培養して製造されており、その製品はpH4.2 、酸度0.8 %(乳酸換算)、乳酸菌数1,000 万/ml程度である。最近は、そのヨーグルトの製品形状も、ハードタイプ、ソフトタイプ、ドリンクタイプ、フローズンタイプ、粉末タイプ等と多様になっている。そうした製品の多様さに応じて、醗酵乳製品の製造技術の開発も盛んに行われており、例えば特開昭59-205938号には、ヨーグルトに乳酸菌の活性を保護するための脱脂粉乳を添加し溶解せしめ、そのヨーグルトを凍結乾燥して水分を減少せしめた後、ペースト状とし、このペースト状ヨーグルトを急速凍結しつつ又は急速凍結した後に顆粒状に成形して凍結乾燥する顆粒状乾燥ヨーグルトの製造方法が提案されている。」

(1c) 「【0008】
【作用】本発明にあっては、殺菌した乳原料に乳酸菌を加えた後、所定の醗酵温度で通常のヨーグルト食品より遙かに長時間培養する。これにより乳酸菌数が通常のヨーグルト食品の10倍以上にもなり、直接賞味される食品としては酸味が強く適さないが、各種の食品に添加することで多量の乳酸菌を効率良く摂取することが可能になる。これにより、顕著な整腸作用を有する腸内のビヒズス菌の活性が高められてその増殖が促進される。すなわち、本発明の乳酸菌強化型醗酵乳製品は携帯、運搬に便利で、且つ保存性があり使い易い粉末状健康補助食品素材として極めて有用である。」

(1d) 「【0014】なお、オリゴ糖の添加は、醗酵乳を固形成分と液成分とに分別する前、すなわち醗酵処理直後の均質化工程で添加してもよい。その場合には、混合した均質品を引き続き濾過して固形成分を分別する作業がより容易になる利点がある。次いで、オリゴ糖を添加し均質化されたものを凍結乾燥、あるいは噴霧乾燥で急速乾燥して、粉末状ないし粒状の固形醗酵乳製品とする。特に、凍結乾燥法によれば、乳酸菌の生菌数を高レベルに維持することができ、本発明の意図する高乳酸菌数の製品が容易に製造可能である。必要に応じて粉末状のものを顆粒状や錠剤状等に賦型してもよい。」

(1e) 「【0018】その粉末を粒状に賦型し、包装して、携帯、運搬に便で、且つ保存性が良く使い易い粉末状健康補助食品素材として極めて有用な乳酸菌強化型乾燥醗酵乳製品を得た。一方、濾液の方は、メンブレンフィルタにより精密濾過し、次いでその濾液に醗酵乳酸、オリゴ糖、香料を添加して酸味、甘味、香りを調整した後、85±1℃で5分間加熱処理して殺菌し、ミネラル成分に富む液状醗酵乳製品を得た。
【0019】これらの製品は、例えばパン、ケーキ類、サラダドレッシング、各種飲料類、菓子類、パイ、その他の調理食品等、広範囲に及ぶ食品添加物として利用することができる。」

これらの記載事項によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下この発明を「引用発明1」という。)。

「包装して、携帯、運搬に便で、且つ保存性が良く使い易い粉末状健康補助食品素材である乳酸菌強化型乾燥醗酵乳製品。」

(2) 同じく本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-83842号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2a) 「2.特許請求の範囲
1. ケフイア菌による牛乳の発酵生成物であり、かつ凍結乾燥された粉体状であることを特徴とする凍結乾燥ヨーグルト。」

(2b) 「3.発明の詳細な説明
〔発明の技術分野〕
本発明は凍結乾燥ヨーグルトとその製造方法に関し、より詳細には長期間、安定して保存することができる粉体状のヨーグルトと、その製造方法に関する。」

(2c) 「ケフイア菌微生物叢の組成には、乳酸連鎖球菌及び桿菌・酵母・酢酸菌などが含まれている。
また、ケフイア・スターターの乳酸連鎖球菌群には、ケフイア菌徽生物叢の一定かつ最大の活性部分をなし、発酵の始め数時間中のスターターの酸度を急速に高めるストレプトコッカス・ラクテイス(Str,Iactis)及びストレプトコッカス・クレモリス(Str,cremoris)、ロイコノストック・シトロバルム(Louconostoc citrovarum)、ロイコノストック・デキストラニクム(Leuconastoc dextranicum)及びストレプトコッカス・ジアセチラクテイス(Srt,diacetilactis)型の芳香生成連鎖球菌が入っている。」(2ページ左上欄12行?右上欄4行)

(2d) 「〔発明の効果〕
本発明の凍結乾燥ヨーグルトは、白色粉末状であり、取扱いが容易であると共に、長期間、安定に室温に保存することができる。
また、容易に顆粒状に加工することもでき、かつ乳状の芳香を有するので摂取が容易である。
従って本発明の凍結乾燥ヨーグルトは、たとえば適量に分割、包装した状態で健康食品として商品化することができる。
従来の凍結乾燥前のケフイアに見られたような、保存中に発生したCO_(2)による容器内圧の上昇は全く見られない。
更に注目すべきことは本発明の凍結乾燥ヨーグルトは、下記するような優れた生理活性効果を有する。」

これらの記載事項によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる(以下この発明を「引用発明2」という。)。

「適量に分割、包装した状態で健康食品として商品化された、ケフイア菌による牛乳の発酵生成物であり、かつ凍結乾燥された粉体状である凍結乾燥ヨーグルト。」


(3) 同じく本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-304725号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

(3a) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌の死菌と、乳酸菌の生菌と、酸味料とを含有する組成物からなり、牛乳、水又は豆乳を添加して、そのまま又は発酵させることにより、ヨーグルトとして食することができるようにしたことを特徴とするインスタントヨーグルト。
【請求項2】
前記組成物が所定量ずつ包装されており、1包内における乳酸菌の死菌の菌数が10億個から5兆個であり、乳酸菌の生菌の菌数が100万個以上である請求項1記載のインスタントヨーグルト。
【請求項3】
前記酸味料として、発酵乳酸パウダーとクエン酸との混合物を含有する請求項1又は2記載のインスタントヨーグルト。
【請求項4】
前記酸味料は、牛乳100mlを添加、混合したときのpHが、3.5?4.8の範囲になるように調製されている請求項1?3のいずれか1つに記載のインスタントヨーグルト。
【請求項5】
更に、脱脂粉乳、全脂粉乳、及び豆乳から選ばれた少なくとも一種を含有する請求項1?4のいずれか1つに記載のインスタントヨーグルト。
【請求項6】
乳酸菌の生菌以外の原料が顆粒化され、この顆粒と乳酸菌の生菌とが混合されている請求項1?6のいずれか1つに記載のインスタントヨーグルト。」

(3b) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、牛乳にラクトコッカス・クレモリス菌を添加し発酵して得られる、いわゆるカスピ海ヨーグルトは、食するまでに発酵作業を行う必要があり、いつでもどこでも手軽に食するわけにはいかなかった。
【0007】
また、前記特許文献1に記載されたような乳製品は、発酵させたヨーグルトを容器に充填したものであるため、日持ちがしないという問題点があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、日持ちがしやすく、いつでもどこでも手軽に食することができ、場合によっては、本格的なヨーグルト製品として味わうこともできるインスタントヨーグルトを提供することにある。」

(3c) 「【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、乳酸菌の死菌と、乳酸菌の生菌と、酸味料とを含有する組成物からなり、牛乳、水又は豆乳を添加して、そのまま又は発酵させることにより、ヨーグルトとして食することができるようにしたことを特徴とするインスタントヨーグルトを提供するものである。
【0010】
本発明によれば、乳酸菌の死菌と、乳酸菌の生菌と、酸味料とを含有する組成物からなるので、例えば粉末状等の乾燥物として調製することにより、従来のヨーグルトに比較して長期保存が可能となる。
【0011】
また、これに牛乳、水又は豆乳を添加することにより、乳酸菌を含有し酸味のあるヨーグルト様の飲食品を作ることができ、ヨーグルト様の飲食品をいつでもどこでも手軽に食することができる。」

(3d) 「【0023】
本発明において、酸味料としては、発酵乳酸パウダーとクエン酸との混合物を含有することが好ましい。ここで、発酵乳酸パウダーは、糖や乳等を原料として乳酸菌を発酵させて得られた発酵物を、スプレードライなどの方法で粉末化したものを意味する。好ましくは、砂糖などの糖質を原料として乳酸発酵させて得られるL型乳酸発酵液をパウダー化したものが用いられる。この場合、発酵乳酸は、発酵乳酸ナトリウム、発酵乳酸カルシウム等の塩類となっていてもよい。このような発酵乳酸パウダーとしては、例えばピューラック・ジャパン株式会社から販売されている市販品を用いることもできる。」

(3e) 「【実施例】
【0031】
下記組成により、酸味料を調製した。この酸味料を以下「FC MIX」とする。
・ 発酵乳酸パウダー(ピューラック・ジャパン製) 600g
・ クエン酸(無水) 90g
【0032】
また、下記組成の原料(1)?(4)を混合し、流動層造粒機または遠心転動造粒機などで平均粒径95%50メッシュパスの顆粒状に造粒し、これに原料(5)を混合した後、5g/包ずつ、アルミ箔でラミネートされたフィルムからなるスティック状又は三方シール状の袋に充填し、密封して包装した。
(1)FC MIX 8.1kg
(2)粉糖 30 kg
(3)香料(小川香料製 ヨーグルトコートン) 150g
(4)殺菌乳酸菌(商品名「EC-12」、コンビ株式会社製) 500g
(5)ヨーグルトスターター(コンビ株式会社製) 1.125g
【0033】
こうして得られた本発明のインスタントヨーグルト1包を、牛乳100mlに添加し、攪拌して溶解させた。この溶解液は、pH4.7以下になり、蛋白の等電点沈殿のため、粘度を帯びて、ヨーグルト様の物性及び風味を有していて、美味しく食することができた。この溶解液100ml中には、通常のヨーグルトや乳酸菌飲料中に存在する乳酸菌数を上回る2500億個以上の乳酸菌が含有されている。
【0034】
また、上記インスタントヨーグルト1包を、1Lパックの牛乳に添加すると、pHが6以上となり、単位体積当りの乳酸菌数は、通常のヨーグルトや乳酸菌飲料の1/100程度となった。しかし、この混合物を25?45℃に保温して、16?20時間放置したところ、十分に発酵して約1Lのヨーグルトを得ることができた。このヨーグルトは、大変美味しいものであった。」

これらの記載事項を参酌し、実施例に着目すると、引用例3には、次の発明が記載されていると認められる(以下この発明を「引用発明3」という。)。

「発酵乳酸パウダー及びクエン酸(無水)とからなる酸味料、粉糖、香料、殺菌乳酸菌並びにヨーグルトスターターからなるインスタントヨーグルトであって、
5g/包ずつ、アルミ箔でラミネートされたフィルムからなるスティック状又は三方シール状の袋に充填し、密封して包装された、インスタントヨーグルト。」

4 対比
(1) 引用例1を主引用例として
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「粉末状健康補助食品素材である乳酸菌強化型乾燥醗酵乳製品」は、「粉末状」の「発酵乳製品」であるから、本願発明の「粉末ヨーグルト」に相当し、同様に、「包装して、携帯、運搬に便で、且つ保存性が良く使い易い」態様は、「1包」とされた態様に相当する。
引用発明1の「乳酸菌」は、発明の詳細な説明によると、「オリゴ糖の添加は、醗酵乳を固形成分と液成分とに分別する前、すなわち醗酵処理直後の均質化工程で添加してもよい。その場合には、混合した均質品を引き続き濾過して固形成分を分別する作業がより容易になる利点がある。次いで、オリゴ糖を添加し均質化されたものを凍結乾燥、あるいは噴霧乾燥で急速乾燥して、粉末状ないし粒状の固形醗酵乳製品とする。特に、凍結乾燥法によれば、乳酸菌の生菌数を高レベルに維持することができ」(上記(1d))るようにされており、生菌のものを含むことは明らかである。

ア 一致点
したがって、両者は、
「1包とした包装の生菌粉末ヨーグルト。」である点で一致し、次の点で相違している。

イ 相違点
[相違点1]
1包について、本願発明が、「2g?6g」としているのに対して、引用発明1は、そのような特定がなされていない点。

[相違点2]
包装について、本願発明は、「シール接着」されたものであるのに対して、引用発明1は、そのような特定がなされていない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用発明1は、「包装して、携帯、運搬に便で、且つ保存性が良く使い易い」ものであって、また、一般に、携帯に便であり、食品に添加するものの1包当たりの重量として、2g?6gの重量とすることは、包装される種々の内容物に対して採用されている本願出願前周知の事項である(例えば、引用例3の上記(3e)、原査定の拒絶の理由で引用された特開2012-217447号公報段落【0007】、【0009】、また、引用例を提示するまでもなく、本願出願前周知の事項であると認められる、市販のスティックシュガー、わさび、ふりかけ等の小袋の内容量参照。)。
そうすると、引用発明1においても、携帯に便な内容物の重量として、2g?6gとすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

[相違点2]について
1包の包装の態様として、シール接着によるものは、本願出願前周知の事項である(例えば、引用例3の上記(3e)、また、引用例を提示するまでもなく、本願出願前周知の事項であると認められる市販のスティックシュガー、わさび、ふりかけ等の小袋のシール接着の態様参照。)。
そして、引用発明1において、1包の包装の態様として、上記本願出願前周知の事項であるシール接着とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

そして、これらの相違点1及び2に係る効果をあわせてみても、引用発明1及び本願出願前周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 引用例2を主引用例として
本願発明と引用発明2とを対比すると、各文言の意味、機能又は作用等からみて、引用発明2の「凍結乾燥された粉体状である凍結乾燥ヨーグルト」は、本願発明の「粉末ヨーグルト」に相当し、同様に、「適量に分割、包装した状態で健康食品として商品化された」た態様は、「1包」として「包装」された態様に相当する。
引用発明2の「ケフイア菌による牛乳の発酵生成物であり、かつ凍結乾燥された粉体状」のものは、生菌を含むことは明らかであり、本願発明の「生菌粉末」に相当する。

ア 一致点
したがって、両者は、
「1包とした包装の生菌粉末ヨーグルト。」である点で一致し、次の点で相違している。

イ 相違点
[相違点3]
1包について、本願発明が、「2g?6g」としているのに対して、引用発明2は、そのような特定がなされていない点。

[相違点4]
包装について、本願発明は、「シール接着」されたものであるのに対して、引用発明2は、そのような特定がなされていない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
[相違点3]について
引用発明2は、「適量に分割、包装した状態で健康食品として商品化された」ものであり、また、1包として適量に分割して包装された健康食品を、消費者が携帯して用いることは、当業者において当然考慮されている事項である。
そして、携帯に便であり、食品に添加するものの1包当たりの重量として、2g?6gの重量とすることは、上記「[相違点1]について」で検討したとおり、本願出願前周知の事項である。
そうすると、引用発明2においても、携帯に便な内容物の重量として、2g?6gとすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

[相違点4]について
1包の包装の態様として、シール接着によるものは、上記「[相違点2]について」で検討したとおり、本願出願前周知の事項である。
そして、引用発明2において、1包の包装の態様として、上記本願出願前周知の事項であるシール接着包装とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

そして、これらの相違点3及び4に係る効果をあわせてみても、引用発明2及び本願出願前周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2及び本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 引用例3を主引用例として
引用発明3の「発酵乳酸パウダー」は、「糖や乳等を原料として乳酸菌を発酵させて得られた発酵物を、スプレードライなどの方法で粉末化したもの」であって(上記(3d))、生菌を含んだものであることは明らかである。そうすると、引用発明3の「発酵乳酸パウダー及びクエン酸(無水)とからなる酸味料、粉糖、香料、殺菌乳酸菌並びにヨーグルトスターターからなるインスタントヨーグルト」は、本願発明の「生菌粉末ヨーグルト」に相当する。
また、引用発明3の「5g/包ずつ、アルミ箔でラミネートされたフィルムからなるスティック状又は三方シール状の袋に充填し、密封して包装された」ものは、本願発明の「2g?6gを1包とした」ものに相当する。

ア 一致点
したがって、両者は、
「2g?6gを1包とした包装の生菌粉末ヨーグルト。」である点で一致し、次の点で相違している。

イ 相違点
[相違点5]
包装について、本願発明は、「シール接着」されたものであるのに対して、引用発明3は、「アルミ箔でラミネートされたフィルムからなるスティック状又は三方シール状の袋に充填」するものの、充填した後の包装の「密封」手段については、特定がなされていない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
[相違点5]について
1包の包装の態様として、シール接着によるものは、上記「[相違点2]について」で検討したとおり、本願出願前周知の事項である。
そして、引用発明3において、1包の包装の密封に際して、上記本願出願前周知の事項であるシール接着とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

そして、相違点5に係る効果をみても、引用発明3及び本願出願前周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものではない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明3及び本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) なお、請求人は、(ア)「本願発明の請求項1の『1包2?6g+生菌粉末ヨーグルト+シール包装』は、他に類のない独自性を有しています。請求項1は、請求項2?7記載の主食的食品である牛乳、握り飯、弁当、パン、ピザ、即席麺を網羅して、各々の1食分との一体的組合せに利便的・経済的分量に限定していること、それは製造コスト低減、需要者に低価格で整腸作用機能付加価値を提供できる効果を含有しているものです。」及び(イ)「本願発明の核心的特徴は、請求項1記載の1包2?6gの生菌粉末ヨーグルトのシール包装を、主食的食品の包装外面に加熱に際して簡単に取り外しができるように貼り付けていることです。それによって粉末ヨーグルトの生菌活性は保たれます。」と主張している(平成28年11月4日付け審判請求書「3、立証の趣旨」の項)。
しかしながら、上記(ア)については、上記「4(1)」?「4(3)」において検討したとおりであるので、これを採用できない。
また、上記(イ)については、本願発明(請求項1)においては、「1包2?6gの生菌粉末ヨーグルトのシール包装を、主食的食品の包装外面に加熱に際して簡単に取り外しができるように貼り付けていること」は特定されておらず、本願発明について特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから、これを採用できない。
仮に、上記(イ)の主張を考慮したとしても、本願発明の「シール接着包装の生菌粉末ヨーグルト」自体は、上記「4(1)」?「4(3)」において検討したとおり、引用発明1、引用発明2又は引用発明3と、上記本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2又は引用発明3と、上記本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-31 
結審通知日 2017-11-07 
審決日 2017-11-20 
出願番号 特願2015-195005(P2015-195005)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 亜希子  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 山崎 勝司
井上 哲男
発明の名称 シール接着包装の生菌粉末ヨーグルトとその組合せ食品  

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