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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D |
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管理番号 | 1336451 |
審判番号 | 不服2017-291 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-10 |
確定日 | 2018-01-11 |
事件の表示 | 特願2011-172277「カード」拒絶査定不服審判事件〔平成25年2月21日出願公開,特開2013-35189〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件出願は,平成23年8月5日の出願であって,平成27年6月12日付けの拒絶理由の通知に対して同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成28年1月29日付けの拒絶理由の通知に対して同年4月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年10月28日付けで拒絶の査定がなされるとともに,同年4月11日付け手続補正書は却下された。 これに対し,平成29年1月10日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 2 平成29年1月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年1月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 補正の内容 平成29年1月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲は, 「【請求項1】 単層または複数層からなるカード基材と,該カード基材の片面または両面に厚みが0.5?8.0μmの範囲内である保護層を有するカードであって, 該保護層が,無機系材料または熱硬化性樹脂を主成分とし,粒径が0.1?10μmの範囲内である粒子を含む熱可塑性樹脂からなり,該粒子は保護層に用いられる樹脂よりも硬度が高いことを特徴とするカード。 【請求項2】 前記保護層を形成した側のカード表面にエンボス加工又は箔押し加工からなる成形加工部を有することを特徴とする請求項1記載のカード。 【請求項3】 前記無機系粒子がZrO2,SiO2,TiO2,Al2O3,Na2O,CaOのいずれかからなり,また熱硬化性樹脂がフェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,アルキド樹脂,ポリウレタン系樹脂のいずれかからなることを特徴とする請求項1?2のいずれかに記載のカード。 【請求項4】 前記保護層がカード基材側の第1の保護層と表面側の第2の保護層の2層からなり, 第1の保護層が,ZrO2,SiO2,TiO2,Al2O3,Na2O,CaOのいずれかからなる無機系粒子またはフェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,アルキド樹脂,ポリウレタン系樹脂のいずれかからなる熱硬化性樹脂を主成分とし,粒径が0.1?10μmの範囲内である粒子を含む熱可塑性樹脂からなり, 第2の保護層が,ZrO2,SiO2,TiO2,Al2O3,Na2O,CaOのいずれかからなる無機系粒子またはフェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,アルキド樹脂,ポリウレタン系樹脂のいずれかからなる熱硬化性樹脂を主成分とし,粒径が0.1?10μmの範囲内である粒子を含まない熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のカード。 【請求項5】 前記2層からなる保護層の全体の膜厚に対し第2の保護層の膜厚が60%以下であり, かつ第1の保護層に含まれる粒子が,第1の保護層と第2の保護層の境界にまたがって存在することを特徴とする請求項4に記載のカード。」と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。) 請求項1に係る補正 補正前(平成27年7月31日付け手続補正による補正)の請求項1に係る発明を特定するための必要な事項である「保護層」に関し,「厚みが0.5?8.0μmの範囲内」であることと,「保護層の主成分」に関し,「無機系材料または熱硬化性樹脂」とすることと,「(保護層が含む)粒子」に関し,「粒径が0.1?10μmの範囲内」であることを限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって,請求項1に係る本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものであって,特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について,以下検討する。 (2) 刊行物に記載された事項 平成28年1月29日付け拒絶の理由に引用し,本願の出願日前である平成22年8月12日に頒布された特開2010-173170号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は,磁気カード,ICカードなどのプラスチックカードに関し,たとえば,識別カード,外部端子付きICカード,磁気ストライプ付きクレジットカード,プリペイドカード,用途でいえば,運転免許証用カード,銀行カード,百貨店等の顧客認識カード,保険医療用カード等の個人識別カードまたは情報用カードや電子マネー用ICカード等の各種ICカード,電話用カード,乗物用カード,買物用カード等のプリペイドカード等のカードに関する。 【0002】 より詳しくは,これらのカードの製造時,実使用時にカード表面に発生するキズを低減させた表面耐擦傷性の向上したカードに関するものである。」 イ 「【0018】 以下,本発明の詳細を図面を参照して説明する。 図1は,本発明のカードの一例の構造を示す断面説明図である。このカードは,カード基材(1)上に,絵柄印刷層(2),透明保護層(3)を順次積層して構成されている。」 ウ 「【0020】 透明保護層(3)に用いることの出来る樹脂は塗工可能で透明な被膜を形成する熱可塑性樹脂から選ばれるが,ここでは透明性の高いアクリル樹脂を用いている。 【0021】 透明保護層(3)に添加するアルミナ粒子は保護層中の含有量が0.5%から5.0%の範囲において,粒径が10nm未満では透明保護層の表面硬度の向上は見られなかった。また,50nm以上では表面硬度は向上するが透明保護層の透明性が低下して下地の絵柄印刷層(2)の絵柄がぼやけて見える。 【0022】 透明保護層(3)に添加するアルミナ粒子の粒径は10nm以上50nm未満であることが望ましく,さらに保護層の透明性確保の観点からは10nm以上20nm未満であることがより望ましい。」 エ 「【0025】 カード基材(1)としては,エンボス加工により記号や文字などを立体的に刻印する適性等から硬質ポリ塩化ビニル樹脂製またはポリエステル樹脂製(PET-G)の多層シートが一般に用いられている。カード基材(1)の厚みは通常100?700μm程度である。」 オ 「<実施例1> 【0034】 厚み188μmの白色硬質ポリ塩化ビニルのカード基材(1)の表面にロールコータを用いてアクリル樹脂を主成分としアルミナ粒子を添加した塗工剤を塗工,乾燥して膜厚4μmの透明保護層(3)を形成した。 透明保護層(3)を形成する塗工剤としては,平均粒径25nmのアルミナ粒子を樹脂に対する添加量が3.0質量%となるように添加したアクリル樹脂を主成分とする塗工剤を用いた。」 カ 「【0050】 以上説明したように,本発明によれば,カード表面が他のものに接触して表面に擦過傷が付き,印刷や表示等が見えにくくなることを防止できる,耐擦傷性と透明性に優れた表面保護層を有するカードを提供することが出来た。」 刊行物1の上記記載事項を含め,刊行物1の全記載を総合すると,刊行物1には以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 「硬質ポリ塩化ビニル樹脂製またはポリエステル樹脂製(PET-G)の多層シートからなるカード基材(1)上に,絵柄印刷層(2),透明保護層(3)を順次積層して構成される耐擦傷性と透明性に優れた表面保護層を有するカードであって, 透明保護層(3)は,熱可塑性樹脂から選ばれた,例えばアクリル樹脂であって,アルミナ粒子が添加されるとともに,透明保護層(3)の膜厚は4μm,アルミナ粒子の粒径は10nm以上50nm未満であるカード。」 平成28年10月28日付け補正の却下の決定に引用し,本願の出願日前である平成10年4月14日に頒布された特開平10-95864号公報(以下「刊行物2」という。)には,次の事項が記載されている。 キ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,カード用ポリエステルオーバーシートに関するもので,詳しくは,識別カード,外部端子付きICカード,磁気ストライプ付きクレジットカード,プリペイドカード,さらに詳しくは,運転免許証用カード,銀行カード,百貨店等の顧客認識カード,保険医療用カード等の個人識別カードまたは情報用カードや電子マネー用ICカード等の各種ICカード,電話用カード,乗物用カード,買物用カード等のプリペイドカード用カード等のカード用ポリエステルオーバーシートに関するものである。」 ク 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は,耐擦傷性,鮮映性に優れ,各種カード用オーバーシートとして有用なポリエステルフィルムを提供することを解決課題とするものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは上記実情に鑑み鋭意検討を重ねた結果,ある特定の構成を持つポリエステルフィルムによれば,上記課題を容易に解決することができることを知見し,本発明を完成するに至った。すなわち,本発明の要旨は,モース硬度が7以上の粒子を0.3?4重量%含有し,表面粗度(Ra)が0.01?0.06μmであるポリエステルフィルムからなることを特徴とするカード用ポリエステルオーバーシートに存する。」 ケ 「【0008】本発明において,ポリエステルフィルムに含有される粒子のモース硬度は7以上である。この値が7未満の場合には,カードの耐擦傷性が悪化するので好ましくない。モース硬度が7以上の粒子としては,例えば,水晶(SiO_(2)),トパーズ(Al_(2)F_(2)SiO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),シリコンカーバイド(SiC),ダイヤモンド(C)等が挙げられるが,これらの中でも,酸化アルミニウムが汎用性,経済性の点で好ましい。」 コ 「【0010】本発明におけるポリエステルフィルム中に含有されるモース硬度7以上の粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが,通常0.02?2μm,好ましくは0.02?1.5μm,さらに好ましくは0.02?1μmである。本発明でポリエステルに粒子を含有させる方法としては,特に限定されるものではなく,公知の方法を採用し得る。例えば,ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが,好ましくはエステル化の段階,もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し,重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い,エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法,または,混練押出機を用い,乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。」 サ 「【0012】本発明のポリエステルフィルムは,フィルムとして製膜できる厚さであればよいが,好ましくは10?200μm,さらに好ましくは25?180μmである。本発明において,ポリエステルフィルムは積層体であってもかまわない。この場合,上述の要件を満たす層がカードの外側,すなわちコアシートと貼り付けられる層の反対側となる。また,上述の要件を満たす層の全体の厚みに対する割合は通常1?90%,好ましくは1?60%,さらに好ましくは1?30%である。」 シ 「【0017】かくして得られたフィルムは,熱圧加工,ドライラミネーション等の方法によりコアシート上に印刷面保護等の目的で複合化され使用される。」 刊行物2の上記記載事項を含め,刊行物2の全記載を総合すると,刊行物2には以下の発明(以下,「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。 「コアシートに貼り付けられるポリエステルフィルムであって, 平均粒径が0.02?2μmのモース硬度が7以上の粒子として,例えば,水晶(SiO_(2)),トパーズ(Al_(2)F_(2)SiO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),シリコンカーバイド(SiC),ダイヤモンド(C)を含有する,10?200μmの厚さを有するポリエステルフィルムからなる,耐擦傷性,鮮映性に優れた各種カード用オーバーシート。」 (3) 対比 本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。 後者の「カード基材(1)」は,前者の「カード基材」に相当する。 以下同様に,「透明保護層(3)」は,「保護層」に, 「(透明保護層(3)の)膜厚」は,「(保護層の)厚み」に, 「アルミナ粒子」は,「無機系材料」に, 「熱可塑性樹脂」は,「熱可塑性樹脂」に,それぞれ相当する。 後者の「カード基材(1)」は,「硬質ポリ塩化ビニル樹脂製またはポリエステル樹脂製(PET-G)の多層シート」であるから,前者の「複数層からなるカード基材」に相当するといえる。 後者は「カード基材(1)上に,絵柄印刷層(2),透明保護層(3)を順次積層」したものであるから,前者の「カード基材の片面に保護層を有する」といえる。 後者の「(透明保護層(3)の)膜厚」は「4μm」であるから,前者の「(保護層の)厚み」として限定されている「0.5?8.0μm」の範囲内にある。 刊行物1発明において,アルミナ粒子とアクリル樹脂の具体的な硬度についての明記はないが,一般的な技術常識から,アルミナ粒子は透明保護層(3)に用いられるアクリル樹脂よりも硬度が高いことは自明である。 以上のことから,両者は, 〈一致点〉 「単層または複数層からなるカード基材と,該カード基材の片面または両面に厚みが0.5?8.0μmである保護層を有するカードであって, 該保護層が,無機系材料または熱硬化性樹脂を主成分とした粒子を含む熱可塑性樹脂からなり,該粒子は保護層に用いられる樹脂よりも硬度が高いカード。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 〈相違点〉 熱可塑性樹脂に含まれる無機系材料または熱硬化性樹脂の粒径に関して,本願補正発明では「0.1?10μmの範囲内」であるのに対して,刊行物1発明においては,「10nm以上50nm未満」,つまり「0.01μm以上0.05μm未満」である点。 (4) 判断 相違点について 刊行物2発明における「ポリエステルフィルム」は,コアシートに貼り付けられ,耐擦傷性,鮮映性に優れた各種カード用オーバーシートとして機能するから,本願補正発明における「保護層」に相当し,刊行物2発明における「モース硬度が7以上の粒子」は,例えば水晶(SiO_(2)),トパーズ(Al_(2)F_(2)SiO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),シリコンカーバイド(SiC),ダイヤモンド(C)であるから,本願補正発明における「無機系材料」といえる。 また,刊行物2発明における「平均粒径が0.02?2μmのモース硬度が7以上の粒子」は,その粒径においても,本願補正発明の「粒径が0.1?10μm」と重複する数値範囲を有するものである。 そして,熱可塑性樹脂が含有する粒子の粒径は,例えば本願明細書の段落【0022】に記載された「取り扱いの困難性」,「鏡面光沢性」及び「磁気出力への影響」など,求められる性能が発揮できるように,当業者が適宜定める程度の設計的事項にすぎず,本願の発明の詳細な説明の記載(特に段落【0022】)を参酌しても,本願補正発明に限定された数値範囲による格別の臨界的効果を認めることはできない。 また,刊行物1発明も刊行物2発明も,耐擦傷性と透明性(鮮映性)に優れた保護層を有するカードである点で共通しており,無機系材料の粒径として,本願補正発明の数値限定である「0.1?10μm」の範囲と重複する,刊行物2発明の「0.02?2μm」を刊行物1発明に適用して,相違点に係る本願補正発明の構成とすることに,何ら技術的困難性はなく,本願補正発明において,格別の作用,効果が生じるとも認められないので,相違点に係る本願補正発明の構成は,刊行物1発明と刊行物2発明とから,当業者が容易に想到し得たものである。 以上のように,本願補正発明は,刊行物1発明,刊行物2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願補正発明は,平成29年1月10日付けの手続補正による補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても,特許法第29条第2項の規定により,その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5) 本願補正発明についてのまとめ したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1) 本願発明及び刊行物1に記載された発明 平成29年1月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,請求項に係る発明は,平成27年7月31日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。 そして,その請求項1により特定される発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 単層または複数層からなるカード基材と,該カード基材の片面または両面に保護層を有するカードであって, 該保護層が,無機系粒子または熱硬化性樹脂を主成分とする粒子を含む熱可塑性樹脂からなり,該粒子は保護層に用いられる樹脂よりも硬度が高いことを特徴とするカード。」 一方,原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-173170号公報(刊行物1)に記載された事項は,前記「2 (2)」に記載したとおりであり,刊行物1に記載された刊行物1発明は以下のとおりのものである。 刊行物1に記載された発明:「カード基材(1)上に,絵柄印刷層(2),透明保護層(3)を順次積層して構成される耐擦傷性と透明性に優れた表面保護層を有するカードであって, 透明保護層(3)は,熱可塑性樹脂から選ばれた,例えばアクリル樹脂であって,アルミナ粒子が添加されるとともに,透明保護層(3)の膜厚は4μm,アルミナ粒子の粒径は10nm以上50nm未満であるカード。」 (2) 対比・判断 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 後者の「カード基材(1)」は,前者の「カード基材」に相当する。 以下同様に,「透明保護層(3)」は,「保護層」に, 「アルミナ粒子」は,「無機系粒子」に, 「熱可塑性樹脂」は,「熱可塑性樹脂」に,それぞれ相当する。 後者の「カード基材(1)」は,「硬質ポリ塩化ビニル樹脂製またはポリエステル樹脂製(PET-G)の多層シート」であるから,前者の「複数層からなるカード基材」に相当するといえる。 後者は「カード基材(1)上に,絵柄印刷層(2),透明保護層(3)を順次積層」したものであるから,前者の「カード基材の片面に保護層を有する」といえる。 刊行物1発明において,アルミナ粒子とアクリル樹脂の具体的な硬度についての明記はないが,一般的な技術常識から,アルミナ粒子は透明保護層(3)に用いられるアクリル樹脂よりも硬度が高いことは自明である。 以上のことから,両者は, 「単層または複数層からなるカード基材と,該カード基材の片面または両面に保護層を有するカードであって, 該保護層が,無機系粒子または熱硬化性樹脂を主成分とする粒子を含む熱可塑性樹脂からなり,該粒子は保護層に用いられる樹脂よりも硬度が高いカード」である点で一致し,相違はない。 (3) むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-13 |
結審通知日 | 2017-11-14 |
審決日 | 2017-11-27 |
出願番号 | 特願2011-172277(P2011-172277) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B42D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫻井 茂樹 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 森次 顕 |
発明の名称 | カード |