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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01L |
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管理番号 | 1336522 |
審判番号 | 不服2017-6715 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-10 |
確定日 | 2018-02-06 |
事件の表示 | 特願2016-502955「歪みゲージとして使用される複合材料」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/144532、平成28年 6月30日国内公表、特表2016-519291、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年3月14日(パリ条約による優先権主張 2013年3月15日(以下、「優先日」という。) 米国、2013年6月8日 米国、2013年9月19日 米国、2013年10月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月30日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月5日付けで手続補正がなされたが、平成29年1月5日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年5月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次の通りである。 この出願の請求項1-21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1-3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2009-139329号公報 2.特開2003-282983号公報 3.国際公開第2012/098840号 第3 本願発明 本願の請求項1-21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は、平成28年12月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 均一複合材料の非層状混合物を含む均一複合発泡体を備え、 前記均一複合材料の非層状混合物が、複数の空隙を有するポリマー材料と、前記ポリマー材料内に配置された複数の導電性充填材とを含有し、 前記複数の導電性充填材の配合量が、前記均一複合材料の1重量パーセント?25重量パーセントに相当し、 前記均一複合発泡体が、外部電流発生器を用いることなく、前記均一複合発泡体が変形されることに応じて圧電電圧を生成する、装置。 【請求項2】 前記複数の導電性充填材が複数の導電性ナノ粒子を含む、請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記複数の導電性充填材が導電性物質でコートされた繊維を含む、請求項1?2のいずれか1項に記載の装置。 【請求項4】 前記複数の導電性充填材が、複数の導電性コート付繊維と複数の導電性ナノ粒子との組み合わせを含む、請求項1に記載の装置。 【請求項5】 前記均一複合発泡体中に配置された少なくとも1本のプローブと、 前記少なくとも1本のプローブに連結された電圧検出器と、 前記電圧検出器に、動作可能に連結されたメモリーと、 を更に含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の装置。 【請求項6】 前記ポリマー材料内への前記複数の導電性充填材の配置が、量子トンネル効果に基づいて、圧縮歪みに対する前記圧電電圧を生成するナノ接合を規定することを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。 【請求項7】 前記圧電電圧が、歪み速度および変形に対応することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の装置。 【請求項8】 ポリマーの発泡体、および前記発泡体全体に配置された複数の導電性充填材を有する均一複合材料に対する衝撃に応じて生成した圧電電圧を第一軸に沿って検出することと、 前記圧電電圧に基づいて前記衝撃での変形を決定することとを含み、 前記複数の導電性充填材の配合量が、前記均一複合材料の1重量パーセント?25重量パーセントに相当し、 前記衝撃は前記第一軸とは異なる第二軸に沿っている、圧縮歪みを測定する方法。 【請求項9】 導電性充填材が導電性コート付繊維を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。 【請求項10】 前記均一複合材料が、民生装置においてパディングとして機能することを特徴とする、 請求項8?9のいずれか1項に記載の方法。 【請求項11】 前記材料が義肢の一部に用いられ、かつ、前記方法が前記衝撃の前記変形に関するフィードバックを使用者に提供することを更に含むことを特徴とする、請求項8?9のいずれか1項に記載の方法。 【請求項12】 外部計算器に、電圧を示すデータを伝送することと、 前記外部計算器において、前記衝撃での前記変形を決定することと、 を更に含む、請求項8?11のいずれか1項に記載の方法。 【請求項13】 前記材料の永久変形なしに、前記均一複合材料が最大60%の歪みを測定することを特徴とする、請求項8?12のいずれか1項に記載の方法。 【請求項14】 前記圧電電圧に基づいて、前記衝撃に対する歪み速度および変形を決定することを更に含む、請求項8?13のいずれか1項に記載の方法。 【請求項15】 複数の導電性充填材を、硬化されていないポリマーのマトリックス材料と混合することと、 前記導電性充填材および前記硬化されていないマトリックス材料の混合物中に空隙を形成することと、 前記空隙を有する、前記導電性充填材および前記硬化されていないマトリックス材料の混合物を硬化し、歪みセンサーとしての均一複合発泡体を形成することとを含み、 前記複数の導電性充填材の配合量が、前記均一複合発泡体の1重量パーセント?25重量パーセントに相当し、 前記均一複合発泡体が、外部電流発生器を用いることなく、圧縮に応じて圧電電圧を生成する、歪みセンサーを製造する方法。 【請求項16】 前記硬化されていないマトリックス材料が硬化されていないエラストマー性ポリマーであり、 前記方法が、前記導電性充填材および前記硬化されていないエラストマー性ポリマーの混合物を鋳型に導入することと、前記鋳型に導入された混合物量を制御することにより、既存製品中の既存エラストマー発泡体の係数と適合するように前記歪みセンサーの係数を調節することとを更に含み、 前記歪みセンサーが、前記既存製品中の前記既存エラストマー発泡体に替えて使用されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。 【請求項17】 前記均一複合発泡体を、複数の別個の歪みセンサーに切断することを更に含む、請求項15に記載の方法。 【請求項18】 前記歪みセンサーに対する衝撃に応じて生成した電圧を第一軸に沿って検出することと、前記生成した電圧に基づいて前記衝撃での変形を決定することとを更に含み、 前記衝撃が前記第一軸とは異なる第二軸に沿い、 前記生成した電圧が、検出および測定の繰り返し後も実質的に同じであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。 【請求項19】 前記電圧が、前記圧縮の変形と直線関係を有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。 【請求項20】 前記均一複合発泡体を、民生装置によって決定される形状に彫刻することを更に含む、 請求項15に記載の方法。 【請求項21】 前記均一複合発泡体が、民生装置内でパッディングとして機能することを特徴とする、 請求項15に記載の方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 a 「【0001】 本発明は、部材の変形等を検出可能なセンサ材料として用いられるエラストマー複合材料、およびそれを用いた変形センサに関する。」 b 「【0005】 (1)本発明のセンサ用エラストマー複合材料は、エラストマー発泡体と、該エラストマー発泡体中に配合されている導電性フィラーと、を有し、弾性変形可能であって、変形により電気抵抗が変化することを特徴とする(請求項1に対応)。 【0006】 本発明のセンサ用エラストマー複合材料(以下適宜、単に「エラストマー複合材料」と称す)では、母材としてエラストマー発泡体を使用する。本発明のエラストマー複合材料に歪みが加えられた場合、エラストマー発泡体中に形成されている小さな気泡(セル)が、緩衝材としての役割を果たす。つまり、セルにより歪みが吸収される。これにより、導電性フィラーと母材との界面における応力集中が緩和される。その結果、母材の破壊が抑制されると共に、導電性フィラーと母材との剥離が生じにくくなる。このため、繰り返し歪みが加わっても、電気抵抗の挙動が変化しにくい(再現性が高い)。このように、本発明のエラストマー複合材料によると、外部からの刺激に対する応答性が低下しにくく、耐久性の高いセンサを構成することができる。また、エラストマー発泡体の発泡倍率を調整することにより、センサの用途に応じて、エラストマー複合材料の硬度、導電性、変形に対する電気抵抗の挙動を適宜調整することが可能である。 【0007】 (2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記導電性フィラーは、前記エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されており、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する構成とするとよい(請求項5に対応)。 【0008】 上記本発明のエラストマー複合材料の一態様として、導電性フィラーが、エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている場合には、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。ここで、「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。また、「弾性変形」には、圧縮、伸張、曲げ等による変形がすべて含まれる。 【0009】 導電性フィラーが、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されると、エラストマー分を介した導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成される。これにより、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す。)、言い換えると、変形していない自然状態で、本発明のエラストマー複合材料は高い導電性を有する。一方、本発明のエラストマー複合材料が弾性変形すると、弾性変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。この理由は、次のように考えられる。 【0010】 図1、図2に、本発明のエラストマー複合材料の、荷重の印加前後における導電パスの変化をモデルで示す。ただし、図1、図2に示すのは、本発明のエラストマー複合材料の一例であり、導電性フィラーの充填状態、形状等を何ら限定するものではない。 【0011】 図1に示すように、エラストマー複合材料100において、導電性フィラー102の多くは、エラストマー発泡体101中に一次粒子の状態(略単独の状態)で存在している。なお、説明の便宜上、図1においてエラストマー発泡体101のセルは省略する(図2においても同じ)。また、導電性フィラー102の充填率は高く、最密充填に近い状態で配合されている。これにより、無荷重状態において、エラストマー複合材料100には、導電性フィラー102による三次元的な導電パスPが形成されている。よって、無荷重状態では、エラストマー複合材料100の電気抵抗は小さい。一方、図2に示すように、エラストマー複合材料100に荷重が印加されると、エラストマー複合材料100は弾性変形する(図2中の点線枠は、図1の無荷重状態を示している。)。ここで、導電性フィラー102は最密充填に近い状態で配合されているため、導電性フィラー102が移動できるスペースはほとんどない。よって、エラストマー複合材料100が弾性変形すると、導電性フィラー102同士が反発し合い、導電性フィラー102同士の接触状態が変化する。その結果、三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加する。」 c 「【0033】 導電性フィラーとしては、例えば、カーボンビーズが好適である。・・・」 d 表1及び表2に記載された実施例1-7における、エラストマー複合材料中のカーボンビース(導電性フィラー(段落【0033】))の配合割合は、次の通りである。 実施例1:120/(100+0.6+120+3)=0.54 (54重量%) 実施例2:120/(100+0.6+120+1)=0.54 (54重量%) 実施例3:120/(100+0.6+120+2)=0.54 (54重量%) 実施例4:120/(100+0.6+120+0.5)=0.54(54重量%) 実施例5:100/(100+0.6+100+1)=0.50 (50重量%) 実施例6:250/(100+40+5+1+3.5+1+250+12)=0.61 (61重量%) 実施例7:250/(100+40+5+1+3.5+1+250+12)=0.61 (61重量%) 上記a?dより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。 「エラストマー複合材料を用い(【0001】)、 センサ用エラストマー複合材料は(【0005】)、小さな気泡(セル)が形成されているエラストマー発泡体と(【0005】、【0006】)、該エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている導電性フィラーとを有し(【0005】、【0007】)、 導電性フィラーの配合量が、センサ用エラストマー複合材料の50?61重量パーセントに相当し(表1、表2)、 弾性変形可能であって、変形により電気抵抗が変化する(【0005】)、 変形センサ(【0001】)。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、電場配向により変形し得るポリウレタンエラストマーに、フラレノールが硬化剤として用いられて導入されているポリウレタンエラストマーからなるフィルムは、圧電効果を発揮することができ、且つポリウレタンエラストマーにより構成された圧電素子は、圧電素子として有効に利用することができることを見出し、本発明を完成させた。」 b 「【0027】[フラレノール導入ポリウレタンエラストマー]本発明では、ポリウレタンエラストマーにフラレノールが導入されていればよく、例えば、フラレノールは硬化剤として用いて、ポリウレタンエラストマーに導入することができる。すなわち、前述のように、ウレタンプレポリマーを、フラレノールと反応させて、フラレノール導入ポリウレタンエラストマーを調製することができる。フラレノールの割合としては、ウレタンプレポリマー全量(固形分)に対して0.05?2重量%(好ましくは0.08?1重量%、さらに好ましくは0.1?0.5重量%)程度の範囲から選択することができる。フラレノールの割合が、ウレタンプレポリマー全量(固形分)に対して0.05重量%より少なくても、2重量%を超えても、圧電性が低下する。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「[0008] すなわち本発明は、テレフタル酸単位および/またはナフタレンジカルボン酸単位を50?100モル%含有するジカルボン酸単位と、炭素数4?18の脂肪族ジアミン単位を60?100モル%含有するジアミン単位とを含み、末端アミノ基含量([NH2])が5?60μモル/gであるポリアミド(A)、 カルボキシル基および/または酸無水物基を有する不飽和化合物により変性された変性樹脂(B)、並びに 導電フィラー(C)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、 前記ポリアミド(A)、前記変性樹脂(B)、および前記導電フィラー(C)の合計100質量部に対して、前記ポリアミド(A)を40?96.5質量部、前記変性樹脂(B)を3?30質量部、前記導電フィラー(C)を0.5?30質量部含み、かつ 前記ポリアミド(A)および前記変性樹脂(B)の合計1g中における、前記ポリアミド(A)の末端アミノ基のモル数(MI)と、前記変性樹脂(B)が有するカルボキシル基および酸無水物基のモル数(MII)との差(MI-MII)が、-5.0μモル以上4.0μモル未満であり、かつMIIが4.0μモルより大きいポリアミド樹脂組成物である。」 b 「[0038] 本発明において使用される導電フィラー(C)は、樹脂に導電性を付与する粒状、フレーク状および繊維状フィラーなどが挙げられる。例えば、炭素繊維、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属繊維、金属粉末、金属フレーク、金属酸化物粉末、金属被覆繊維などが挙げられる。中でも、低比重であり、導電性付与効果および補強効果のバランスに優れることから、炭素繊維、導電性カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「エラストマー発泡体」、「導電性フィラー」、「変形センサ」は、それぞれ、本願発明1の「ポリマー材料」、「導電性充填材」、「装置」に相当する。 イ 引用発明の「小さな気泡(セル)が形成されているエラストマー発泡体」は、本願発明1の「複数の空隙を有するポリマー材料」に相当する。 ウ 引用発明の「該エラストマー発泡体中に」「配合されている導電性フィラー」は、本願発明1の「前記ポリマー材料内に配置された複数の導電性充填材」に相当する。 エ 引用発明は「導電性フィラー」が、「エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている」のであるから、引用発明の「導電性フィラー」が配合された「エラストマー発泡体」は、複合材料の混合物であるといえ、図1及び2から非層状の混合物であることは明らかであるので、引用発明の「導電性フィラー」が配合された「エラストマー発泡体」は、本願発明1の「均一複合材料の非層状混合物」と、「複合材料の非層状混合物」である点で共通する。 上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「導電性フィラー」が配合された「エラストマー発泡体」が、「小さな気泡(セル)が形成されているエラストマー発泡体と、該エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている導電性フィラーとを有し」と、本願発明1の「前記均一複合材料の非層状混合物が、複数の空隙を有するポリマー材料と、前記ポリマー材料内に配置された複数の導電性充填材とを含有し」とは、「複合材料の非層状混合物が、複数の空隙を有するポリマー材料と、前記ポリマー材料内に配置された複数の導電性充填材とを含有し」の点で共通する。 オ 引用発明の「センサ用エラストマー複合材料」は、「導電性フィラー」が配合された「エラストマー発泡体」を有するのであるから、上記エを踏まえると、引用発明の「センサ用エラストマー複合材料」と、本願発明1の「均一複合材料の非層状混合物を含む均一複合発泡体」とは、「複合材料の非層状混合物を含む複合発泡体」である点で共通する。 カ 引用発明の「センサ用エラストマー複合材料」が、「弾性変形可能であって、変形により電気抵抗が変化する」ことと、本願発明1の「前記均一複合発泡体が、外部電流発生器を用いることなく、前記均一複合発泡体が変形されることに応じて圧電電圧を生成する」こととは、「複合発泡体が変形される」ことで共通する。 すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「複合材料の非層状混合物を含む複合発泡体を備え、 前記複合材料の非層状混合物が、複数の空隙を有するポリマー材料と、前記ポリマー材料内に配置された複数の導電性充填材とを含有し、 前記複合発泡体が変形される、装置。」 (相違点1) 本願発明1の「複合材料」及び「複合発泡体」が、「均一」であるのに対して、引用発明は、「導電性フィラー」が「エラストマー発泡体中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている」が、「導電性フィラー」が配合された「エラストマー発泡体」及び「センサ用エラストマー複合材料」が、均一であるか不明である点。 (相違点2) 本願発明1は、「複数の導電性充填材」の配合量が、均一複合材料の1重量パーセント?25重量パーセントに相当するのに対して、引用発明は、「導電性フィラー」の配合量が、センサ用エラストマー複合材料の50?61重量パーセントである点、 (相違点3) 複合発泡体が変形されることに応じて、本願発明1が、外部電流発生器を用いることなく、「圧電電圧」を生成するのに対して、引用発明は、「電気抵抗」が変化する点。 (2)判断 ア 相違点2について 事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。 引用発明は、変形していない自然状態で、エラストマー複合材料が高い導電性を有するように、導電性フィラーの配合量を、高充填率(センサ用エラストマー複合材料の50?61重量パーセント)にしているのであるから(上記「第4 1 b(段落【0009】)」)、導電性フィラーの配合量を低下させて、本願発明1のように1重量パーセント?25重量パーセントとする理由はない。 一方、引用文献3には、ポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド(A)、変性樹脂(B)、および導電フィラー(C)の合計100質量部に対して、導電フィラー(C)を0.5?30質量部とする技術が記載されているが(上記「第4 3 a」)、上記のように、引用発明は、変形していない自然状態で、エラストマー複合材料が高い導電性を有するように、導電性フィラーの配合量を50?61重量パーセントにしているのであるから、引用発明に、引用文献3に記載された技術を適用する理由はない。 また、引用文献2には、複数の導電性充填材の配合量を、均一複合材料の1重量パーセント?25重量パーセントにすることの記載はない。 したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 イ 相違点3について 次に、相違点3について検討する。 引用発明は、変形により電気抵抗が変化する、変形センサであるが、「圧電電圧」を生成することはない。 一方、引用文献2には、ポリウレタンエラストマーに、ウレタンプレポリマー全量(固形分)に対して0.05?2重量%のフラレノールを硬化剤として導入し、圧電効果を発揮させる技術が記載されているが(上記「第4 2」)、 引用発明のセンサ用エラストマー複合材料は、小さな気泡(セル)が形成されているエラストマー発泡体に、導電性フィラーを配合したものであり、エラストマー複合材料が弾性変形すると、導電性フィラー同士が反発し合い、導電性フィラー同士の接触状態が変化し、三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加することにより(上記「第4 1 b(段落【0011】)」)、変形により電気抵抗が変化する特性を得ているのであるから、引用発明に、引用文献2記載の圧電効果を発揮させる技術を適用する理由はない。 また、引用文献3には、均一複合発泡体が変形されることに応じて、圧電電圧を生成するのことの記載はない。 したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2-7について 本願発明1を直接または間接的に引用する本願発明2-7は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3 本願発明8について 本願発明8は、上記相違点2に係る本願発明1の「前記複数の導電性充填材の配合量が、前記均一複合材料の1重量パーセント?25重量パーセントに相当し」と同一の構成を備え、さらに、上記相違点3に係る本願発明1の「外部電流発生器を用いることなく、前記均一複合発泡体が変形されることに応じて圧電電圧を生成する」に対応する、「均一複合材料に対する衝撃に応じて生成した圧電電圧」の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 4 本願発明9-14について 本願発明8を直接または間接的に引用する本願発明9-14は、本願発明8をさらに限定した発明であるから、本願発明8と同じ理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 5 本願発明15について 本願発明15は、本願発明1に対応する製造方法の発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の「前記複数の導電性充填材の配合量が、前記均一複合発泡体の1重量パーセント?25重量パーセントに相当し」と同一の構成を備え、さらに、上記相違点3に係る本願発明1の「外部電流発生器を用いることなく、前記均一複合発泡体が変形されることに応じて圧電電圧を生成する」に対応する、「前記均一複合発泡体が、外部電流発生器を用いることなく、圧縮に応じて圧電電圧を生成する」の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 6 本願発明16-21について 本願発明15を引用する本願発明16-21は、本願発明15をさらに限定した発明であるから、本願発明15と同じ理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-21は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-22 |
出願番号 | 特願2016-502955(P2016-502955) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 濱本 禎広 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 須原 宏光 |
発明の名称 | 歪みゲージとして使用される複合材料 |
代理人 | 杉村 憲司 |